芳 賀 正 憲 新 国 立 競 技 場 の 建 設 費 は 2012 年 デザイン 公 募 時 の 目 標 が1300 億 円 でしたが 採 用 された 案 では 設 計 業 者 の 見 積 もりが3000 億 円 を 超 え その 後 修 正 を 重 ねましたが 最 終 的 に 目 標 値 をはるかにオーバーすることが 確 実 になり 2015 年 7 月 白 紙 撤 回 仕 切 り 直 しとなりました 推 進 組 織 が 烏 合 の 衆 で プロジェクトマネジメントが 欠 落 して いたことが 原 因 でした 新 国 立 競 技 場 の 建 設 費 については 仕 切 り 直 しされましたが その200 倍 もの 大 規 模 予 算 が 現 在 もなお きわめて 杜 撰 不 適 切 に 計 画 実 行 されつつあります 東 日 本 大 震 災 からの 復 興 と 福 島 原 発 事 故 への 対 応 です 一 橋 大 学 大 学 院 教 授 齊 藤 誠 氏 の 精 緻 な 分 析 に よると 前 者 の 予 算 は 被 災 の 実 態 に 対 してあまりにも 過 大 であり 一 方 後 者 では 国 民 に 分 かりにくい 形 で きわめて 姑 息 な 対 応 がなされつつあります 齊 藤 誠 氏 は 著 書 震 災 復 興 の 政 治 経 済 学 ( 日 本 評 論 社 )で 東 日 本 大 震 災 からの 復 興 政 策 と 福 島 第 一 原 発 事 故 に 起 因 する 賠 償 や 廃 炉 の 基 本 方 針 の 意 思 決 定 プロセスを 厳 し く 問 い 直 されています 得 られた 情 報 を 十 分 そしゃくせず わずか 数 か 月 で 多 くの 重 要 事 項 が 拙 速 に 決 められ 将 来 世 代 にこれで 責 任 がもてるのかという 強 い 問 題 意 識 がありまし た 発 災 直 後 から 得 られた 乏 しいが 貴 重 なデータから 合 理 的 な 政 策 に 結 びつく 意 思 決 定 が 可 能 であったか 検 証 し 拙 速 に 決 定 された 政 策 の 矛 盾 をいかに 解 消 していくか また 将 来 非 常 時 に 合 理 的 な 政 策 をいかに 決 定 していくか 提 起 されています 齊 藤 氏 の 著 書 は 東 日 本 大 震 災 と 原 発 事 故 の 貴 重 な 経 験 に 学 び 非 常 時 対 応 の 社 会 シス テムのあり 方 実 は 当 事 者 として 本 来 日 常 化 していなければならない 情 報 行 動 のあり 方 を 問 いかける 政 治 家 官 僚 学 者 ジャーナリストはもちろん 広 く 一 般 市 民 も 熟 読 して おくべき 重 要 文 献 と 思 われます 2011 年 3 月 11 日 発 生 した 東 日 本 大 震 災 の 復 興 予 算 は 5 年 間 19 兆 円 という 膨 大 な 金 額 に 決 定 同 年 7 月 29 日 に 公 表 されました 予 算 を 決 定 する 根 拠 として [5 年 間 の 復 興 予 算 規 模 ] [ストック 被 害 額 ] という 阪 神 淡 路 大 震 災 のロジックが 踏 襲 されたことが 復 興 対 策 本 部 の 議 事 録 から 確 認 で きます ここでストックとは 建 物 ライフライン 施 設 河 川 道 路 港 湾 等 社 会 基 盤 施 設 などを 指 します 19 兆 円 という 金 額 を 決 めるに 際 し 発 災 からわずか12 日 後 3 月 23 日 に 内 閣 府 の 経 済 財 政 分 析 担 当 が 公 表 したストック 被 害 額 推 計 値 が 決 定 的 な 影 響 力 をもちました この - 1 / 6 -
推 計 では ケース1の 場 合 被 害 額 総 計 が16 兆 円 (うち 建 物 11 兆 円 ) ケース2で25 兆 円 (うち 建 物 20 兆 円 )になっています ケース1とケース2のちがいは ケース1で は 建 物 損 壊 率 を 津 波 被 災 地 域 で 阪 神 淡 路 大 震 災 の2 倍 程 度 非 津 波 被 災 地 域 で 同 程 度 とし ているのに 対 して ケース2では 津 波 被 災 地 域 の 建 物 被 害 をより 深 刻 に 想 定 しているこ とです 内 閣 府 の 防 災 担 当 が 同 年 6 月 24 日 に 公 表 したストック 被 害 額 推 計 値 が16.9 兆 円 だ ったことも 経 済 財 政 分 析 担 当 の 少 なくとも16 兆 円 という 値 の 妥 当 性 を 裏 づける 結 果 になりました 5 年 間 19 兆 円 という 値 は 内 閣 府 の 出 した16 兆 ~16.9 兆 円 に ケース2の 25 兆 円 という 値 を 加 味 して 決 定 されたと 考 えられますが しかしこれらの 値 は 被 害 の 実 態 に 対 してあまりにも 過 大 です 齊 藤 誠 氏 が 建 物 被 災 状 況 GISデータ 消 防 庁 被 害 報 建 築 着 工 統 計 調 査 等 から 減 損 も 考 慮 して 推 計 した 値 では 全 国 建 物 被 害 額 は 4.0 兆 円 でした 被 害 の91.5%が 津 波 被 災 地 域 に 集 中 していたと 推 定 されています 齊 藤 氏 は 内 閣 府 の 経 済 財 政 分 析 担 当 が 阪 神 淡 路 大 震 災 の 事 例 を 参 照 した 方 法 は 次 の 3つの 意 味 で 不 適 切 だったと 考 えています (1) 今 般 の 大 津 波 による 建 物 被 害 規 模 が 阪 神 淡 路 大 震 災 によるそれより はるかに 甚 大 と 想 定 したが 必 ずしもそうではなかった (2) 津 波 の 被 害 を 受 けなかった 地 域 においても 阪 神 淡 路 大 震 災 と 同 程 度 の 建 物 被 害 を 想 定 したが 実 際 には 被 災 3 県 の 津 波 被 災 地 域 に 建 物 被 害 は 集 中 していた (3) 被 災 3 県 の 津 波 被 災 市 町 村 の 建 物 損 壊 率 について 過 大 な 想 定 をしていた 実 際 に は 突 出 して 高 くはなかった 問 題 は 復 興 予 算 を 決 定 する2011 年 7 月 までに 的 確 な 実 態 認 識 が 可 能 であったか どうかです 齊 藤 氏 は 次 のようなデータから それが 十 分 可 能 であったことを 示 されてい ます 阪 神 淡 路 大 震 災 で 全 壊 住 家 棟 数 は 兵 庫 県 内 で10.4 万 棟 でした 消 防 庁 被 害 報 によると 東 日 本 大 震 災 の 場 合 全 壊 住 家 棟 数 は 次 のとおりでした 2011 年 3 月 31 日 1.0 万 棟 4 月 28 日 7.7 万 棟 5 月 26 日 10.3 万 棟 6 月 30 日 10.6 万 棟 7 月 28 日 11.1 万 棟 このデータを 見 ると2011 年 6 月 末 の 時 点 で 東 日 本 大 震 災 による 全 壊 住 家 棟 数 が 阪 神 淡 路 大 震 災 の10.4 万 棟 を 大 きく 超 えることはないことが 推 測 できました 阪 神 淡 路 大 震 災 の 被 災 地 域 には 共 同 住 宅 が 多 く また 地 域 的 に 建 物 の 経 済 評 価 も 高 いことから - 2 / 6 -
東 日 本 大 震 災 の 建 物 ストック 被 害 額 は 阪 神 淡 路 大 震 災 の6.3 兆 円 を 上 限 とするのが 妥 当 であり ケース1で11 兆 円 と 推 定 するのは 明 らかに 過 大 でした ケース2の20 兆 円 は 論 外 です また 同 じく 消 防 庁 被 害 報 を 見 ることにより 建 物 被 害 が 岩 手 宮 城 福 島 3 県 の 津 波 被 災 市 町 村 に 集 中 していたことが 2011 年 4 月 末 ~5 月 末 に 十 分 把 握 可 能 でした 建 物 損 壊 率 ( 人 口 1 万 人 当 たりの 全 壊 住 家 棟 数 )も 人 口 を 市 区 町 村 レベルでそろえる と 阪 神 淡 路 大 震 災 に 比 べて 東 日 本 大 震 災 の 方 が むしろ 低 めだということが 分 かります 内 閣 府 ( 経 済 財 政 分 析 担 当 )の 過 大 な 推 計 被 害 総 額 (ケース1の16 兆 円 ケース2の 25 兆 円 )が 見 直 されることなく 5 年 間 19 兆 円 という 巨 額 予 算 の 決 定 に 至 ったこと は 著 しく 妥 当 性 を 欠 いていたと 言 うべきでしょう 復 興 予 算 の 策 定 と 実 行 に 際 しては 被 害 額 の 推 計 以 外 にも 重 大 な 錯 誤 がありました 1つは 被 災 地 域 が 大 震 災 の 前 から 人 口 の 減 少 少 子 高 齢 化 経 済 の 縮 小 が 進 んでい て 本 来 は コンパクトなまちづくり 産 業 用 地 や 農 地 の 縮 小 港 湾 の 集 約 のような ダウンサイジングをめざした 復 興 が 進 められるべきだったのに 復 興 政 策 を 推 進 する 主 体 が 市 町 村 とされたため 住 民 の 既 得 権 の 復 旧 が 優 先 され 過 剰 投 資 が 避 けられなかったこ とです あと1つは 大 震 災 後 のマクロ 経 済 状 況 が 物 価 の 下 落 という 意 味 でも 雇 用 の 悪 化 とい う 意 味 でも デフレ 状 況 にはなかったにもかかわらず 民 主 自 民 両 政 権 とも 深 刻 なデ フレ という 判 断 をして 自 民 党 が 政 権 につくとともに 復 興 の 加 速 の 名 のもとに 合 理 的 な 説 明 がいっさいないまま 19 兆 円 の 復 興 予 算 が25 兆 円 に 拡 大 したことです 実 績 ではさらに 増 加 27.5 兆 円 にまで 拡 大 しました 新 国 立 競 技 場 の 問 題 をあれほど 大 きく 取 り 上 げたマスメディアが それより2ケタ 以 上 大 きい 復 興 予 算 のずさんな 管 理 を 追 及 することがないのは 不 思 議 です 政 治 家 官 僚 学 者 ジャーナリストの 自 省 と 行 動 を 期 待 したいところです 原 発 事 故 の 対 応 が 不 十 分 なものになったのは 事 故 の 責 任 の 所 在 が 当 初 あいまいだった ためです 1961 年 に 制 定 された 原 子 力 損 害 の 賠 償 に 関 する 法 律 によると 原 発 の 運 転 で 生 じた 損 害 賠 償 について 原 子 力 事 業 者 に 無 過 失 で 無 限 の 責 任 を 課 しています ただし そ の 損 害 が 異 常 に 巨 大 な 天 災 地 変 又 は 社 会 的 動 乱 によって 生 じたものであるときは この 限 りでない というただし 書 がついています 東 日 本 大 震 災 に 対 して 政 府 は 早 い 段 階 で ただし 書 を 適 用 しないことを 決 めました 免 責 された 東 電 に 対 して 過 失 責 任 を 問 う 訴 訟 が 乱 立 するのを 避 けたかった また 政 府 に 被 害 者 救 済 の 全 責 任 が 生 じることを 回 避 したかったためとされています - 3 / 6 -
その 結 果 損 害 賠 償 は 東 電 が 最 終 的 に 負 担 することが 前 提 で 政 府 は 原 賠 法 の 別 の 条 文 に 則 り 東 電 に 対 して 必 要 な 援 助 を 行 なうことを 基 本 方 針 としました 財 政 資 金 によって 東 電 を 救 済 するという 印 象 を 与 えないため 政 府 の 東 電 に 対 する 支 援 スキームは 国 民 に 分 かりにくいものになりました 驚 くべきことに 今 回 の 原 発 事 故 は 東 電 に 責 任 があることが 大 前 提 であるにもかかわら ず 損 害 賠 償 と 除 染 費 用 の 大 半 は 東 電 とその 株 主 金 融 機 関 など 債 権 者 ではなく 国 の 一 般 会 計 ( 納 税 者 )と 全 国 の 電 力 利 用 者 つまり 国 民 みんなで 支 払 っているのです 東 電 に 責 任 があることが 建 前 とされながら 実 質 的 にはただし 書 が 適 用 され 損 害 が 異 常 に 巨 大 な 天 災 地 変 によって 生 じたものと 見 なされているのです 東 電 のバランスシートによると 2011 年 3 月 末 時 点 で 損 害 賠 償 負 担 5.0 兆 円 廃 炉 負 担 5.0 兆 円 と 仮 置 きすると 負 債 は23.2 兆 円 におよび 8.4 兆 円 の 債 務 超 過 になります 損 害 賠 償 負 担 と 廃 炉 負 担 の 合 計 10.0 兆 円 のうち 純 資 産 に 相 当 する1.6 兆 円 だけ 株 主 が 負 担 また 3 月 下 旬 経 産 省 事 務 次 官 が 全 国 銀 行 協 会 の 会 長 に 東 電 への 緊 急 融 資 に 対 して 政 府 保 証 の 言 質 を 与 えたことから 債 権 者 の 負 担 はゼロになりました 8.4 兆 円 の 債 務 超 過 分 を 負 担 するため 2011 年 9 月 原 子 力 損 害 賠 償 支 援 機 構 ( 原 賠 機 構 )が 設 立 されました 本 来 は 東 電 の 責 任 である 超 過 債 務 の 大 半 を 国 ( 納 税 者 )や 全 国 の 電 力 利 用 者 が 負 担 し ている 実 態 を 見 えにくくするため 原 賠 機 構 は 非 常 に 複 雑 な 仕 組 みになっています 表 面 的 には 原 賠 機 構 が 東 電 に 代 わって 損 害 賠 償 資 金 を 調 達 し 東 電 や 他 の 電 力 会 社 が 負 担 金 の 形 で 毎 年 返 済 していくと 見 なされていますが 実 際 に 東 電 の 損 害 賠 償 資 金 を 調 達 している のは 国 のエネルギー 対 策 特 別 会 計 です 東 電 に 対 する 交 付 資 金 の 上 限 は 当 初 損 害 賠 償 のみが 対 象 で5 兆 円 でしたが 2013 年 12 月 除 染 費 用 や 放 射 性 廃 棄 物 の 中 間 貯 蔵 施 設 建 設 費 用 も 含 め 9 兆 円 に 引 き 上 げら れました これに 対 する 返 済 は 次 のように 行 われることになっています (1) 国 の 一 般 会 計 ( 納 税 者 )が 中 間 貯 蔵 施 設 建 設 費 1.1 兆 円 と エネルギー 対 策 特 別 会 計 の 借 入 金 利 息 を 負 担 します (2) 東 電 をはじめ 全 国 の 電 力 会 社 は 電 気 料 金 を 値 上 げし 毎 年 1630 億 円 程 度 返 済 します (3) 東 電 が 毎 年 の 利 益 の 中 から 500 億 円 程 度 返 済 します (4) 原 賠 機 構 が 東 電 への 出 資 で 取 得 した 株 の 売 却 益 で 除 染 費 用 の2.5 兆 円 を 負 担 し ます - 4 / 6 -
この 方 式 では 利 息 を 含 め9.1 兆 円 の 返 済 のうち 東 電 の 株 主 負 担 は14% 国 ( 納 税 者 )は 一 般 会 計 を 通 じて11% 全 国 の 電 力 利 用 者 は48%を 負 担 することになります 実 際 には 株 の 売 却 益 が2.5 兆 円 に 達 することは ほとんど 期 待 できません そのと き 国 ( 納 税 者 )と 全 国 の 電 力 利 用 者 の 負 担 は あわせて82%に 達 することが 予 想 され ています 東 電 の 株 主 や 債 権 者 ではなく 国 民 がこれだけ 負 担 する 方 式 になっていることは 現 実 には 今 回 の 原 発 事 故 が 東 電 の 責 任 ではなく 大 津 波 が 想 定 外 で 防 ぎようがなかったという 暗 黙 の 了 解 が 関 係 者 の 間 でなされていたからと 考 えられます しかも これまでの 検 討 には 廃 炉 費 用 が 含 まれていません 現 在 東 電 の 資 金 繰 りはきわめてひっぱくしており 廃 炉 費 用 の 積 み 立 てはほとんどでき ていません このまま 推 移 すると 廃 炉 のため 再 び 原 賠 機 構 のような 枠 組 みをつくり さ らに 大 きな 国 民 負 担 を 求 めていくことが 必 至 になります しかし 今 回 の 原 発 事 故 の 責 任 が 建 前 として 東 電 にあるだけでなく 現 実 にも 東 電 にあ ることが 明 確 なら 損 害 賠 償 や 廃 炉 費 用 の 最 終 的 な 負 担 の 枠 組 みはまったく 別 の 形 になり ます 実 際 2011 年 12 月 に 公 表 された 政 府 事 故 調 の 中 間 報 告 書 2012 年 7 月 の 最 終 報 告 書 には 福 島 の 原 発 事 故 が あらかじめ 想 定 された 範 囲 と 規 模 のものであり 現 場 がどのようにふるまうべきか 行 動 規 範 も 定 められていたのに 現 場 も 本 社 もそれを 認 識 せず 逸 脱 した 行 動 をとって 過 酷 事 故 に 至 ったことが 示 されています 事 故 の 責 任 が 現 実 に 東 電 にある 以 上 今 後 東 電 の 株 主 や 債 権 者 にも 応 分 の 負 担 を 求 めていくべきでしょう 東 日 本 大 震 災 では 関 係 者 の 情 報 行 動 に 多 くの 誤 りがあり 被 害 が 拡 大 し また 不 適 切 な 政 策 立 案 がなされました 建 物 などのストック 被 害 が 過 大 に 推 計 され 過 剰 な 予 算 が 編 成 されました 背 景 には 公 共 事 業 に 関 する 利 権 復 活 の 思 惑 があったとされています 福 島 第 一 原 発 が 大 津 波 に 襲 われたとき 現 場 の 責 任 者 が 直 面 する 状 況 を 想 定 外 と 突 き 放 し 失 意 のどん 底 に 陥 り 非 常 時 対 応 マニュアルの 選 択 を 誤 り 逸 脱 した 行 動 をとって 過 酷 事 故 を 招 いてしまいました 政 府 は 福 島 の 原 発 事 故 を 実 質 的 には 想 定 外 の 大 津 波 によるものとして 取 り 扱 い 東 電 の 株 主 や 債 権 者 を 免 責 国 民 に 大 半 の 負 担 を 転 嫁 する きわめて 姑 息 な 枠 組 みをつくり 上 げました また 政 府 は 原 発 事 故 による 被 害 が 甚 大 であったにもかかわらず 軽 微 である かのように 取 り 繕 い 2011 年 12 月 には 野 田 首 相 が 冷 温 停 止 と 事 故 の 収 束 を 宣 言 2 013 年 9 月 には 安 倍 首 相 がIOCの 総 会 で 汚 染 水 は 完 全 に 制 御 されている と 演 説 し ました これらの 背 景 としては 東 電 のステイクホルダ たちに 原 発 事 故 に 対 する 責 任 をできるだけ 回 避 しようとする 底 意 があったことが 考 えられます - 5 / 6 -
さまざまな 主 体 のそうした 失 意 思 惑 底 意 に 対 峙 し 拮 抗 するのには 手 許 にあるデ ータや 資 料 を 最 大 限 活 用 し 持 てる 知 識 を 最 大 限 動 員 して 直 面 する 困 難 な 状 況 に 対 する 意 思 決 定 の 客 観 性 や 合 理 性 を 維 持 しようとする 知 的 な 実 践 しかないのでないだろうか そ うした 知 的 な 実 践 こそが さまざまな 主 体 の 利 益 や 欲 望 を 乗 り 越 える 重 要 な 契 機 となるの でないか 私 的 な 利 害 に 抗 する 知 的 な 実 践 こそが 非 常 時 における 公 的 な 秩 序 を 形 成 する ことに 資 するのでないだろうか ここでは そうした 知 的 な 実 践 を 重 んじる 精 神 を 公 的 な 精 神 と 呼 んでみたい 私 たちは 今 般 の 大 震 災 をして 公 的 な 精 神 を 取 り 戻 す 重 要 な 契 機 としていかなけれ ばならないのであろう そのように 考 えていくことこそが 今 般 の 震 災 復 興 政 策 と 原 発 危 機 対 応 のとてつもなく 大 きい おそらくは 取 り 返 しのつかない 失 敗 から 得 られるもっと も 重 要 な 教 訓 なのだと 思 う と 齊 藤 誠 氏 は 述 べています 先 にも 記 したように 齊 藤 誠 著 震 災 復 興 の 政 治 経 済 学 ( 日 本 評 論 社 )は 東 日 本 大 震 災 と 原 発 事 故 の 貴 重 な 経 験 に 学 び 非 常 時 対 応 の 社 会 システムのあり 方 実 は 当 事 者 と して 本 来 日 常 化 していなければならない 情 報 行 動 のあり 方 を 問 いかける 政 治 家 官 僚 学 者 ジャーナリストはもちろん 広 く 一 般 市 民 にとっても 必 読 の 重 要 文 献 と 思 われます この 連 載 では 情 報 と 情 報 システムの 本 質 に 関 わるトピックを 取 り 上 げていきます 皆 様 からも ご 意 見 を 頂 ければ 幸 いです - 6 / 6 -