野村資本市場研究所|税制上の電子経済への対応を巡るOECDと日本の議論(PDF)



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税 制 上 の 電 子 経 済 への 対 応 を 巡 る OECD と 日 本 の 議 論 板 津 直 孝 要 約 1. 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 の 普 及 さらにソフトウェア 音 楽 書 籍 などデジタル 財 で の 取 引 が 普 及 してきたことにより 税 法 上 の 課 題 とりわけ 国 外 事 業 者 の 所 在 地 特 定 を 巡 る 問 題 が 顕 著 になっている 2. OECDは 多 国 籍 企 業 の 利 益 移 転 活 動 を 巡 る 国 際 課 税 制 度 の 整 備 という 観 点 から 電 子 経 済 における 直 接 税 間 接 税 のあり 方 を 検 討 しており 2014 年 9 月 に 電 子 経 済 の 課 税 上 の 課 題 への 対 処 に 係 る 報 告 書 を 公 表 した 行 動 計 画 の 中 では 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 に 係 る 付 加 価 値 税 の 中 立 性 維 持 のため 原 産 地 原 則 ではなく 仕 向 地 原 則 を 適 用 するよう 提 言 している 3. 日 本 の 政 府 税 調 は OECDによる 報 告 書 の 趣 旨 を 踏 まえ 電 子 商 取 引 への 消 費 課 税 に 関 する 制 度 改 革 を 2015 年 度 税 制 改 正 に 反 映 した 海 外 から 消 費 者 に 直 接 電 子 配 信 に よってサービス 提 供 が 行 われるB2C 取 引 は 国 外 事 業 者 による 消 費 税 の 徴 収 がないこ とで 国 内 事 業 者 との 不 公 正 な 競 争 を 生 じさせているからである 今 回 の 消 費 税 の 課 税 の 見 直 しは 電 子 経 済 への 具 体 的 な 税 制 上 の 対 応 の 始 まりであるといえよう Ⅰ. 電 子 商 取 引 の 拡 大 と 国 際 的 な 税 制 上 の 課 題 1. 増 加 する 通 信 アクセス 経 路 総 数 と 電 子 商 取 引 の 拡 大 OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 )が 取 りまとめた OECD Communications Outlook 2013 による と 2011 年 の OECD 地 域 の 音 声 通 信 を 含 む 通 信 アクセス 経 路 総 数 1 は 20 億 6,600 万 件 で モバイル 契 約 がアクセス 経 路 の 65.4%を 占 めている( 図 表 1) OECD 諸 国 全 体 の 平 均 的 な モバイルインターネットアクセス 2 契 約 率 は 2009 年 の 23.1%から 2012 年 6 月 には 56.6% へと 上 昇 した 3 1 2 電 子 通 信 のアクセス 経 路 の 合 計 (アナログ 回 線 ISDN 回 線 ケーブルモデム 光 ファイバー モバイル 等 ) 携 帯 端 末 からのインターネット 接 続 3 OECD, OECD Communications Outlook 2013, July 11, 2013. http://www.oecd.org/sti/broadband/oecd-communications-outlook-19991460.htm 1

( 百 万 件 ) 2500 図 表 1 OECD 諸 国 における 通 信 アクセス 経 路 数 2000 1500 1000 500 ISDN ファイバー ケーブル DSL アナログ モバイル 0 ( 暦 年 ) ( 出 所 )OECD OECD Communications Outlook 2013 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 インターネットの 普 及 により 利 用 者 は 容 易 に 国 境 を 越 えてさまざまな 電 子 商 取 引 をす 4 ることができるようになった 取 引 内 容 においても これまでの 有 形 資 産 からデジタル 財 での 取 引 が 普 及 するようになり 税 法 上 電 子 商 取 引 でデジタル 財 を 提 供 する 国 外 事 業 者 の 所 在 地 特 定 がますます 困 難 になっている 2. 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 と 税 制 上 の 新 たな 課 題 国 境 をまたがる 商 取 引 に 対 応 して 従 来 は 租 税 条 約 や 移 転 価 格 税 制 を 代 表 とする 二 重 課 税 の 解 消 が 議 論 の 中 心 とされてきたが 近 年 においては 多 国 籍 企 業 が 各 国 の 税 制 の 違 い や 優 遇 税 制 を 使 い 分 けることで 二 重 非 課 税 の 問 題 5 や 国 際 的 な 税 法 上 の 競 争 条 件 の 不 公 平 性 6 が 生 じている これらの 問 題 は 国 際 的 な 電 子 商 取 引 拡 大 によって 加 速 している 税 法 上 特 に 大 きな 課 題 は 2 点 である 第 一 に 外 国 法 人 及 び 非 居 住 者 の 物 理 的 な 拠 点 を 有 しない 恒 久 的 施 設 (PE: Permanent Establishment)に 係 る 国 内 源 泉 所 得 の 課 税 のあり 方 第 二 に 海 外 から 消 費 者 に 直 接 提 供 される 電 子 商 取 引 に 対 する 付 加 価 値 税 のあり 方 である 1)PE に 係 る 国 内 源 泉 所 得 の 課 税 国 境 を 越 えた 商 取 引 に 対 する 課 税 には 居 住 地 国 課 税 と 源 泉 地 国 課 税 という 二 つの 国 の 課 税 権 行 使 が 考 えられる PE は このような 課 税 権 行 使 が 重 複 することを 排 除 する 制 度 で あると 同 時 に 電 子 商 取 引 において PE をどのように 定 義 するかで 課 税 権 の 行 使 国 が 決 定 される PE は 外 国 法 人 及 び 非 居 住 者 が 事 業 を 遂 行 するのに 介 在 させている 固 定 的 な 事 業 の 場 所 と 一 般 的 に 定 義 づけられており PE なければ 課 税 なし が 国 際 的 課 税 原 則 であ る 一 方 で 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 は 物 理 的 な 拠 点 を 介 在 しないことがあるため こう 4 インターネットにより 直 接 配 信 されるソフトウェアや 映 像 等 のコンテンツを 含 む 情 報 等 5 多 国 籍 企 業 の 国 際 的 取 引 における 課 税 において 源 泉 地 国 と 居 住 地 国 の 双 方 において 不 課 税 となる 問 題 6 国 際 的 な 取 引 業 者 が 国 内 事 業 者 と 比 較 して 競 争 上 の 優 位 を 税 法 上 得 ることで 生 じる 不 公 平 性 2

した 物 理 的 に 存 在 しない 拠 点 を PE とみなすこと つまり 事 業 を 行 う 一 定 の 場 所 とし て 定 義 づけることができるのかという 課 題 がある 2) 電 子 商 取 引 における 付 加 価 値 税 のあり 方 付 加 価 値 税 の 課 税 原 則 には 一 般 的 に 原 産 地 原 則 と 仕 向 地 原 則 とがある 原 産 地 原 則 は 生 産 地 を 課 税 管 轄 地 とし 仕 向 地 原 則 は 消 費 地 を 課 税 管 轄 地 とする 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 は 現 地 法 人 を 介 在 させず 海 外 から 国 境 を 越 えて 広 く 消 費 者 に 直 接 電 子 配 信 によっ てサービス 提 供 が 行 われるため 役 務 の 提 供 された 場 所 が 明 確 でないことから 原 産 地 原 則 を 採 っている 国 もある この 場 合 原 産 地 原 則 の 適 用 は 消 費 に 対 する 課 税 という 付 加 価 値 税 の 基 本 原 則 と 国 際 取 引 に 対 する 中 立 性 原 則 を 損 なう 可 能 性 があるため 問 題 となる 日 本 においても 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 に 対 しては 原 産 地 原 則 が 適 用 されていること から 国 外 事 業 者 から 日 本 の 消 費 者 へ 直 接 電 子 配 信 される 電 子 商 取 引 が 不 課 税 となること で 国 内 事 業 者 との 関 係 で 税 法 上 非 中 立 性 が 生 じ また 最 終 消 費 への 付 加 価 値 課 税 が 困 難 な 状 況 である こうした 課 題 に 対 して 日 本 では 後 述 する BEPS に 係 る OECD と G20 の 共 同 プロジェクトに 基 づく 国 際 協 調 体 制 を 踏 まえ 2015 年 度 税 制 改 正 において 消 費 税 の 領 域 で 整 備 が 進 められた Ⅱ. 電 子 商 取 引 の 課 税 に 係 る OECD の 議 論 1.BEPS とは 上 記 のように 一 国 のみで 対 応 を 図 ることに 限 界 がある 国 際 課 税 制 度 上 の 問 題 に 対 して OECD は 2012 年 6 月 に G20 とともに 税 源 浸 食 と 利 益 移 転 (BEPS:Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトを 始 動 させた BEPS は 多 国 籍 企 業 が 利 益 を 海 外 に 移 すことで 納 税 額 を 大 幅 に 削 減 場 合 によっては ほぼゼロにする 活 動 のことを 指 している こうした 企 業 行 動 は 政 府 にとって 収 入 の 喪 失 を もたらし 財 源 として 法 人 税 依 存 度 が 高 い 開 発 途 上 国 への 潜 在 的 な 影 響 が 特 に 大 きいとされ ている とはいえ 大 半 の BEPS は 現 行 ルールの 下 では 合 法 的 な 活 動 であり 問 題 は 国 際 課 税 制 度 そのものにある そこで OECD は 現 行 の 国 際 課 税 制 度 の 不 備 を 是 正 するために 2013 年 7 月 19 日 税 源 浸 食 と 利 益 移 転 に 関 する 行 動 計 画 (Action Plan on Base Erosion and Profit Shifting)を 公 表 し 行 動 計 画 毎 の 詳 細 を 順 次 発 表 することとした 公 表 されている 15 の 行 動 計 画 の 概 要 は 図 表 2 の 通 りである 国 際 的 に 開 かれたネットワークであるインターネット 環 境 を 通 じて 提 供 される 電 子 商 取 引 は BEPS をより 容 易 なものとしており BEPS に 関 する 行 動 計 画 の 中 でも 第 一 次 提 言 である 電 子 経 済 に 係 る 課 題 への 対 応 がとりわけ 注 目 されるようになっている 3

図 表 2 税 源 浸 食 と 利 益 移 転 に 関 する 行 動 計 画 の 概 要 行 動 計 画 1 : 電 子 経 済 の 課 税 上 の 課 題 への 対 処 行 動 計 画 2 : 他 国 で 相 応 の 課 税 がなされない 一 国 での 控 除 等 に 終 止 符 を 打 つハイブリッ ド ミスマッチの 効 果 の 無 効 化 行 動 計 画 3 : 外 国 子 会 社 合 算 税 制 ( 一 定 以 下 の 課 税 しか 受 けていない 外 国 子 会 社 への 利 益 移 転 を 防 ぐため 外 国 子 会 社 の 利 益 を 親 会 社 の 利 益 に 合 算 する 税 制 )の 強 化 行 動 計 画 4 : 支 払 利 子 等 の 損 金 算 入 を 通 じた 税 源 浸 食 の 制 限 行 動 計 画 5 : 知 的 財 産 の 優 遇 税 制 に 焦 点 を 当 てた 有 害 な 税 制 慣 行 の 防 止 行 動 計 画 6 : 租 税 条 約 濫 用 の 防 止 行 動 計 画 7 : PE 認 定 の 人 為 的 回 避 の 防 止 行 動 計 画 8-10 : 無 形 資 産 リスク 及 び 資 本 その 他 のハイリスク 取 引 に 関 する 移 転 価 格 ガイ ドラインの 改 訂 と 策 定 行 動 計 画 11 : BEPS の 規 模 や 経 済 的 効 果 の 指 標 を 政 府 から OECD に 集 約 し 分 析 する 方 法 を 策 定 行 動 計 画 12 : タックス プランニングの 報 告 義 務 行 動 計 画 13 : 移 転 価 格 関 連 の 文 書 化 の 再 検 討 行 動 計 画 14 : 国 際 税 務 の 紛 争 を 国 家 間 の 相 互 協 議 や 仲 裁 により 効 果 的 に 解 決 する 方 法 を 策 定 行 動 計 画 15: 多 国 間 協 定 の 開 発 ( 出 所 )OECD 資 料 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 2.BEPS に 対 する 行 動 計 画 の 第 一 次 提 言 OECD は 2014 年 9 月 16 日 BEPS に 対 する 行 動 計 画 の 第 一 次 提 言 として 電 子 経 済 の 課 税 上 の 課 題 への 対 処 (Action 1: Addressing the Tax Challenges of the Digital Economy) に 係 る 報 告 書 を 発 表 した この 報 告 書 は 電 子 商 取 引 により 他 国 から 遠 隔 で 販 売 サー ビス 提 供 等 の 経 済 活 動 ができることに 鑑 みて 電 子 経 済 における 直 接 税 間 接 税 のあり 方 を 検 討 するために 作 成 されたものである この 報 告 書 では 電 子 経 済 のもたらす 幅 広 い 課 税 上 の 課 題 が 大 きく 以 下 のとおり 集 約 されている 7 物 理 的 拠 点 を 有 しない 電 子 経 済 において PE をどのように 定 義 するか 国 内 の 物 理 的 な 拠 点 を 介 在 しないでサービス 提 供 を 行 う 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 等 について 国 外 事 業 者 の 事 業 所 得 に 対 する PE に 基 づいた 現 行 の 課 税 制 度 をどのよ うに 考 えるのか ビッグデータ 等 8 から 得 ている 経 済 的 利 益 に 対 する 課 税 についてどのように 考 える か 企 業 が 他 国 の 顧 客 利 用 者 等 のデータの 大 量 の 収 集 から 得 ている 経 済 的 利 益 に 対 し て 企 業 が 収 集 したデータの 価 値 に 着 目 することなどで 顧 客 利 用 者 等 の 所 在 地 国 による 課 税 を 考 える 7 8 玉 木 林 太 郎 (OECD 事 務 次 長 ) OECD/G20 BEPS プロジェクトの 現 状 2014 年 9 月 22 日 http://www.oecd.org/tokyo/newsroom/documents/20140922dsgtamaki-ppt-beps.pdf 事 業 に 役 立 つ 知 見 を 導 出 するためのデータ 等 で 典 型 的 なデータベースソフトウェアが 把 握 し 蓄 積 し 運 用 し 分 析 できる 能 力 を 超 えたサイズのデータ 等 4

新 たなビジネスモデルから 生 じる 所 得 を 租 税 条 約 等 の 適 用 上 どのように 分 類 するか クラウド サービスの 対 価 等 について 事 業 所 得 や 使 用 料 等 の 所 得 分 類 ごとに 課 税 関 係 を 規 定 する 租 税 条 約 等 の 適 用 上 どのように 分 類 するか 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 における 付 加 価 値 税 の 徴 収 をどのように 確 保 するか 電 子 商 取 引 において 海 外 から 消 費 者 に 直 接 電 子 配 信 によってサービス 提 供 が 行 われ る B2C 9 取 引 に 対 して 仕 向 地 原 則 をベースに 付 加 価 値 税 の 徴 収 確 保 を 考 える 電 子 商 取 引 については 直 接 税 及 び 間 接 税 の 双 方 に 関 してそのあり 方 が 検 討 されており 日 本 からの 視 点 で 言 うと 国 外 より 日 本 の 消 費 者 に 対 して 電 子 商 取 引 によりデジタル 財 の 提 供 が 行 われた 場 合 に 国 外 事 業 者 の 当 該 提 供 に 対 して 法 人 税 及 び 消 費 税 が 課 税 できるか が 問 題 となる 本 報 告 書 では こうした 議 論 を 踏 まえ 税 源 浸 食 と 利 益 移 転 の 機 会 につながる 主 な 要 因 が 分 析 されており これらの 要 因 に 対 して 各 国 の 政 府 が 対 応 策 を 講 じることを 呼 び 掛 け ている 3. 国 境 を 越 えた 電 子 商 取 引 に 係 る 付 加 価 値 税 の 課 税 の 議 論 課 税 ベースの 広 い 消 費 課 税 である 付 加 価 値 税 の 課 税 のあり 方 について 検 討 をする 際 には 上 述 の BEPS に 対 する 行 動 計 画 の 第 一 次 提 言 とともに OECD が 2014 年 4 月 に 公 表 した 国 際 付 加 価 値 税 / 物 品 サービス 税 ガイドライン (International VAT/GST Guidelines)が 参 考 に なる この 第 2 章 国 境 を 越 えた 取 引 に 関 わる 付 加 価 値 税 の 中 立 性 (Neutrality of Value Added Taxes in the Context of Cross-Border Trade)では 国 際 取 引 における 中 立 性 が 示 されて いる Guideline 2.4 課 税 のレベルに 関 して 税 が 課 され 又 は 徴 収 される 課 税 管 轄 地 の 国 内 事 業 者 と 比 較 して 国 外 事 業 者 は 不 利 にも 有 利 にも 扱 われるべきではない これは 仕 向 地 原 則 (Destination Principle)の 適 用 によって 達 成 される Guideline 2.5 国 外 事 業 者 が 回 収 できない 付 加 価 値 税 を 負 わないことを 確 保 するた めに 課 税 管 轄 地 はさまざまな 方 法 から 選 択 することができる Guideline 2.6 国 外 事 業 者 に 対 して 特 別 な 税 務 執 行 上 の 要 請 が 必 要 であると 考 えら れる 場 合 それらの 要 請 は 事 業 者 に 対 して 不 均 衡 又 は 不 適 切 なコンプライアンス 負 担 を 負 わせるべきではない ここで 注 目 すべき 点 は 国 内 事 業 者 と 国 外 事 業 者 に 対 する 付 加 価 値 税 の 中 立 性 原 則 の 達 成 には 原 産 地 原 則 ではなく 仕 向 地 原 則 の 適 用 が 必 要 になるということである とりわけ 海 外 から 消 費 者 に 直 接 電 子 配 信 によってサービス 提 供 が 行 われる B2C 取 引 の 場 合 国 外 事 9 Business to Consumer, 企 業 が 一 般 消 費 者 を 対 象 に 商 取 引 を 行 うビジネス 形 態 5

業 者 による 消 費 者 からの 付 加 価 値 税 の 徴 収 がないことで 生 産 地 を 課 税 管 轄 地 とする 原 産 地 原 則 は 国 内 事 業 者 との 不 公 正 な 競 争 を 生 じさせるからである 例 えば インターネッ トを 通 じて 電 子 書 籍 を 購 入 する 場 合 原 産 地 原 則 の 下 では 国 外 事 業 者 からの 購 入 につい ては 付 加 価 値 税 の 課 税 がなく 国 内 事 業 者 からの 購 入 については 同 一 の 電 子 書 籍 であっ ても 付 加 価 値 税 が 徴 収 される この 場 合 消 費 に 対 する 課 税 という 付 加 価 値 税 の 基 本 原 則 も 損 なうことになる 4. 今 後 の 課 題 BEPS の 行 動 計 画 は 順 次 詳 細 が 公 表 されており 残 された 課 題 や 2015 年 に 議 論 されるそ の 他 の 行 動 に 関 連 する 課 題 については 引 き 続 き OECD において 議 論 が 行 われる 今 後 行 動 計 画 の 具 体 的 な 詳 細 のうち 国 内 法 租 税 条 約 の 改 正 が 求 められるものにつ いては G20 でのコミットに 基 づき 各 国 において 順 次 検 討 を 開 始 することとなる 一 国 のみで 国 際 課 税 制 度 の 対 応 を 図 ることに 限 界 があるこうした 課 題 については 多 国 籍 企 業 の 租 税 回 避 に 対 処 する 国 際 協 調 体 制 が 必 要 であり 各 国 の 税 務 当 局 間 の 一 層 の 協 調 と 協 働 そしてグローバルな 実 施 を 監 視 するための 体 制 が 求 められる 国 内 税 制 は 各 国 の 政 策 を 反 映 し それぞれの 国 において 固 有 に 定 められてきた 側 面 がある しかし 企 業 や 個 人 の 事 業 投 資 活 動 が 主 に 国 内 において 完 結 している 時 代 が 終 わり 多 国 籍 企 業 による 国 際 的 な 活 動 の 活 発 化 とインターネット 環 境 を 通 じて 容 易 に 国 境 を 越 えて 電 子 商 取 引 が 行 える 時 代 となった 今 国 際 的 に 調 整 された 課 税 制 度 の 動 向 を 踏 まえる 形 で 国 内 税 制 を 改 正 する ことが 各 国 当 局 に 求 められているといえよう Ⅲ. 日 本 における 2015 年 度 税 制 改 正 と 消 費 税 課 税 の 見 直 し 1. 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 日 本 の 税 制 改 正 の 背 景 1) 日 本 における 電 子 経 済 の 課 税 上 の 課 題 への 対 処 10 2015 年 度 税 制 改 正 において 改 正 対 象 となった 国 境 を 越 えた 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 対 する 消 費 課 税 は 上 述 した OECD による BEPS プロジェクト 電 子 経 済 の 課 税 上 の 課 題 への 対 処 の 趣 旨 を 十 分 に 踏 まえ 日 本 の 消 費 税 体 系 において 国 内 外 の 事 業 者 間 の 競 争 条 件 の 公 平 性 の 確 保 を 目 指 すものである 消 費 税 の 課 税 対 象 となる 取 引 には 国 内 において 事 業 者 が 行 った 資 産 の 譲 渡 等 である 国 内 取 引 と 保 税 地 域 から 引 き 取 られる 外 国 貨 物 である 輸 入 取 引 がある 国 内 取 引 について は 資 産 の 譲 渡 等 が 国 内 で 行 われたかどうかの 内 外 判 定 によるが インターネット 環 境 を 通 じて 提 供 される 電 子 商 取 引 はサービス 提 供 の 場 所 が 明 確 でないことから 消 費 税 法 施 行 令 6 条 2 項 7 号 により 役 務 の 提 供 者 の 事 務 所 等 の 所 在 地 が 課 税 管 轄 地 とされ 国 外 事 業 10 電 子 書 籍 音 楽 広 告 の 配 信 等 の 電 気 通 信 回 線 を 介 して 行 われる 一 定 の 役 務 の 提 供 6

者 であるため 課 税 対 象 外 となっていた また 輸 入 取 引 については 国 外 事 業 者 による 役 務 提 供 や 無 形 資 産 取 引 は 税 関 を 通 過 しないで 取 引 ができることから 税 関 における 管 理 の 対 象 外 であり 消 費 税 が 課 税 されないこととされていた したがって 国 際 的 な 電 子 商 取 引 において 国 内 事 業 者 の 役 務 の 提 供 に 消 費 税 が 課 税 される 一 方 で 国 外 事 業 者 の 役 務 の 提 供 は 不 課 税 になる 非 中 立 性 が 生 じていたといえよう 上 記 の 点 を 踏 まえ 2015 年 度 税 制 改 正 では 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 内 外 判 定 基 準 の 見 直 しがされた 具 体 的 には その 役 務 の 提 供 が 消 費 税 の 課 税 対 象 となる 国 内 取 引 に 該 当 するか 否 かの 判 定 基 準 が 役 務 の 提 供 を 行 う 者 の 事 務 所 等 の 所 在 地 から 役 務 の 提 供 を 受 ける 者 の 住 所 地 等 に 見 直 された 2) 日 本 の 電 子 商 取 引 市 場 の 実 態 経 済 産 業 省 が 2015 年 5 月 に 公 表 した 平 成 26 年 度 我 が 国 経 済 社 会 の 情 報 化 サービス 化 に 係 る 基 盤 整 備 ( 電 子 商 取 引 に 関 する 市 場 調 査 ) 報 告 書 によると 日 本 でも 電 子 商 取 引 の 市 場 規 模 が 急 速 に 拡 大 していることが 確 認 できる (1) 日 本 の 消 費 者 向 け 電 子 商 取 引 (B2C-EC) 市 場 規 模 2014 年 の 日 本 国 内 の B2C-EC 市 場 規 模 は 12.8 兆 円 ( 前 年 比 14.6% 増 )まで 拡 大 してい る 全 ての 商 取 引 金 額 ( 商 取 引 市 場 規 模 )に 対 する 電 子 商 取 引 市 場 規 模 の 割 合 を 指 す EC 化 率 は B2C-EC で 4.37%( 前 年 比 0.52 ポイント 増 )と 増 加 傾 向 にあり 商 取 引 の 電 子 化 が 進 展 している( 図 表 3) (2) 日 本 米 国 中 国 3 ヵ 国 相 互 間 の 越 境 B2C-EC 市 場 規 模 2014 年 の 越 境 B2C-EC 市 場 規 模 は 日 米 中 3 ヵ 国 合 計 で 2 兆 2,573 億 円 その 内 日 本 の 消 費 者 による 米 国 及 び 中 国 事 業 者 からの 越 境 B2C-EC 市 場 規 模 は 2,086 億 円 ( 前 年 比 8.9% 増 )となった 日 米 中 3 ヵ 国 相 互 間 の 消 費 者 向 け 越 境 EC 市 場 の 中 では 中 国 の 消 費 者 による 購 入 額 が 最 大 の 規 模 となっている( 図 表 4) 経 済 産 業 省 の 試 算 によると 日 本 米 国 中 国 の 越 境 B2C-EC 推 計 市 場 規 模 は 2014 年 から 2018 年 までの 間 に 日 本 は 約 1.4 倍 米 国 は 約 1.6 倍 中 国 は 約 2.3 倍 の 規 模 となり 日 米 中 3 ヵ 国 間 における 越 境 B2C-EC による 購 入 総 額 合 計 は 2018 年 までに 約 4.4 兆 円 に まで 拡 大 する 可 能 性 があると 推 計 されている( 図 表 5) この 国 外 事 業 者 から 日 本 の 消 費 者 に 直 接 電 子 配 信 によってサービス 提 供 が 行 われる B2C-EC 取 引 が 2015 年 度 税 制 改 正 における 消 費 税 法 改 正 の 焦 点 のひとつとなった 7

図 表 3 日 本 の B2C-EC の 市 場 規 模 及 び EC 化 率 の 推 移 ( 億 円 ) 140,000 120,000 100,000 80,000 60,000 40,000 20,000 0 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 EC 市 場 規 模 EC 化 率 5.00% 4.50% 4.00% 3.50% 3.00% 2.50% 2.00% 1.50% 1.00% 0.50% 0.00% ( 出 所 ) 経 済 産 業 省 平 成 25 年 度 我 が 国 経 済 社 会 の 情 報 化 サービス 化 に 係 る 基 盤 整 備 ( 電 子 商 取 引 に 関 する 市 場 調 査 ) 報 告 書 及 び 平 成 26 年 度 我 が 国 経 済 社 会 の 情 報 化 サービス 化 に 係 る 基 盤 整 備 ( 電 子 商 取 引 に 関 する 市 場 調 査 ) 報 告 書 よ り 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 図 表 4 2014 年 越 境 B2C-EC 市 場 規 模 ( 単 位 : 億 円 ) 国 越 境 B2C-EC による 購 入 額 ( 消 費 者 ) 日 本 経 由 米 国 経 由 中 国 経 由 合 計 日 本 1,889 197 2,086 米 国 4,868 3,266 8,134 中 国 6,064 6,290 12,354 ( 出 所 ) 経 済 産 業 省 平 成 26 年 度 我 が 国 経 済 社 会 の 情 報 化 サービス 化 に 係 る 基 盤 整 備 ( 電 子 商 取 引 に 関 する 市 場 調 査 ) 報 告 書 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 図 表 5 2018 年 越 境 B2C-EC 市 場 規 模 ポテンシャル ( 単 位 : 億 円 ) 国 越 境 B2C-EC による 購 入 額 ( 消 費 者 ) 日 本 経 由 米 国 経 由 中 国 経 由 合 計 日 本 2,647 276 2,923 米 国 7,803 5,235 13,038 中 国 13,943 14,463 28,406 ( 出 所 ) 経 済 産 業 省 平 成 26 年 度 我 が 国 経 済 社 会 の 情 報 化 サービス 化 に 係 る 基 盤 整 備 ( 電 子 商 取 引 に 関 する 市 場 調 査 ) 報 告 書 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 2. 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 消 費 課 税 見 直 しの 内 容 国 境 を 越 えた 役 務 の 提 供 に 係 る 消 費 税 の 課 税 の 見 直 しとして 2015 年 度 税 制 改 正 におけ る 改 正 の 要 点 は 以 下 のとおりである 8

電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 内 外 判 定 基 準 の 見 直 し 国 外 事 業 者 が 行 う 事 業 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 課 税 方 式 の 見 直 し 国 外 事 業 者 が 行 う 消 費 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 仕 入 税 額 控 除 の 制 限 登 録 国 外 事 業 者 制 度 の 創 設 1) 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 内 外 判 定 基 準 の 見 直 し 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 が 消 費 税 の 課 税 対 象 となる 国 内 取 引 に 該 当 するかどうかの 判 定 基 準 が 役 務 の 提 供 を 行 う 者 の 事 務 所 等 の 所 在 地 から 役 務 の 提 供 を 受 ける 者 の 住 所 等 に 改 正 された 国 内 外 の 事 業 者 間 の 競 争 条 件 の 公 平 性 を 確 保 するために 行 われた 今 回 の 改 正 により 日 本 の 消 費 税 課 税 における 内 外 判 定 基 準 は 原 産 地 原 則 から 仕 向 地 原 則 へと 大 きく 転 換 した といえる この 考 え 方 は BEPS に 対 する 行 動 計 画 の 第 一 次 提 言 にある 電 子 経 済 の 課 税 上 の 課 題 への 対 処 を 踏 まえ OECD が 2014 年 4 月 に 公 表 した 国 際 付 加 価 値 税 / 物 品 サ ービス 税 ガイドライン に 則 したものである 具 体 的 に 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 課 税 関 係 を 示 したものが 図 表 6 である 図 表 6 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 消 費 税 : 改 正 前 及 び 改 正 後 の 課 税 関 係 国 内 国 外 1 事 業 者 3 5 消 費 者 2 4 事 業 者 消 費 者 改 正 前 改 正 後 1 国 内 取 引 : 課 税 国 外 取 引 : 不 課 税 2 国 外 取 引 : 不 課 税 国 内 取 引 : 課 税 3 国 内 取 引 : 課 税 国 外 取 引 : 不 課 税 4 国 外 取 引 : 不 課 税 国 内 取 引 : 課 税 5 国 内 取 引 : 課 税 国 内 取 引 : 課 税 改 正 前 の1 及 び3は 輸 出 免 税 の 適 用 有 ( 出 所 ) 国 税 庁 国 境 を 越 えた 役 務 の 提 供 に 係 る 消 費 税 の 課 税 の 見 直 し 等 について より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 上 記 のとおり 改 正 前 と 改 正 後 では 仕 向 地 原 則 の 適 用 により 原 則 として 正 反 対 の 課 税 関 係 となるため 外 国 事 業 者 のみならず 日 本 企 業 も 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 業 務 プロセスを 見 直 す 必 要 がある 2) 課 税 方 式 の 見 直 し(リバ-スチャージ 方 式 の 導 入 ) 事 業 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 及 び 消 費 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 の いずれに 該 当 するかによって 2015 年 度 税 制 改 正 では 課 税 方 式 が 異 なる すなわち 国 外 事 業 者 が 行 う 事 業 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 においては 役 務 の 提 供 を 受 けた 9

国 内 事 業 者 に 申 告 納 税 義 務 (リバースチャージ 方 式 )があり 消 費 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 においては 国 外 事 業 者 に 申 告 納 税 義 務 ( 国 外 事 業 者 申 告 納 税 方 式 )が 課 され る 国 内 事 業 者 が 受 ける 役 務 の 提 供 には 事 業 者 向 け と 消 費 者 向 け の 2 つの 区 分 があ ることから 注 意 が 必 要 である 2 つの 役 務 の 提 供 の 定 義 は 以 下 のとおりである( 図 表 7 参 照 ) 事 業 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 役 務 の 性 質 又 は 当 該 役 務 の 提 供 に 係 る 取 引 条 件 等 から 見 て 当 該 役 務 の 提 供 を 受 け る 者 が 通 常 事 業 者 に 限 られるものが 該 当 する 消 費 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 事 業 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 以 外 のもの 広 く 消 費 者 を 対 象 に 提 供 されてい る 配 信 等 や ホームページ 等 で 事 業 者 を 対 象 に 販 売 することとしているものであっ ても 消 費 者 をはじめとする 事 業 者 以 外 の 者 からの 申 込 みが 行 われた 場 合 に その 申 込 みを 事 実 上 制 限 できないものである 図 表 7 事 業 者 向 け と 消 費 者 向 け の 課 税 方 式 事 業 者 向 け に 係 る 課 税 方 式 消 費 者 向 け に 係 る 課 税 方 式 国 内 国 外 国 内 国 外 事 業 者 役 務 の 提 供 < 納 税 義 務 者 > 事 業 者 消 費 者 事 業 者 事 業 者 役 務 の 提 供 < 納 税 義 務 者 > 申 告 納 税 申 告 納 税 税 務 署 税 務 署 ( 出 所 ) 国 税 庁 国 境 を 越 えた 役 務 の 提 供 に 係 る 消 費 税 の 課 税 の 見 直 し 等 について より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 消 費 税 はその 特 徴 として 多 段 階 課 税 のプロセスを 経 ることから B2C 取 引 だけではなく 国 外 事 業 者 から 国 内 消 費 者 への 最 終 消 費 に 至 るまでの B2B 取 引 にも 仕 向 地 原 則 を 考 慮 す る 必 要 がある 役 務 の 提 供 を 受 けた 国 内 事 業 者 に 申 告 納 税 義 務 があるリバースチャージ 方 式 の 導 入 により 改 正 前 においては 不 課 税 であった 国 内 取 引 が 改 正 後 は 課 税 取 引 となるた め 日 本 企 業 は 事 業 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 係 る 申 告 納 税 に 至 る 業 務 プロセス を 整 備 する 必 要 がある 10

3. 予 想 される 影 響 と 残 された 課 題 1) 仕 入 税 額 控 除 と 登 録 国 外 事 業 者 制 度 から 見 る 課 題 日 本 の 税 務 当 局 から 見 ると 国 外 事 業 者 に 申 告 納 税 義 務 が 課 される 消 費 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 においては 国 外 事 業 者 による 申 告 納 税 をいかに 確 保 するかが 課 題 となる 国 外 事 業 者 による 申 告 納 税 がなく 国 内 事 業 者 が 仕 入 税 額 を 控 除 すると 税 源 浸 食 が 発 生 するからである 2015 年 度 税 制 改 正 では 国 外 事 業 者 が 行 う 消 費 者 向 け 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 につ いては 経 過 措 置 により 当 分 の 間 当 該 役 務 の 提 供 を 受 けた 国 内 事 業 者 において 仕 入 税 額 控 除 が 制 限 される 現 状 では 国 外 事 業 者 に 自 発 的 な 申 告 納 税 を 促 すことには 限 界 があ り 今 後 の 検 討 事 項 となるが 登 録 国 外 事 業 者 制 度 11 の 創 設 により 国 外 事 業 者 が 登 録 国 外 事 業 者 である 場 合 には 国 内 事 業 者 における 仕 入 税 額 控 除 の 対 象 となる 一 方 電 気 通 信 利 用 役 務 の 国 外 からの 取 引 規 模 が 大 きい 日 本 企 業 にとっては 国 外 事 業 者 からの 役 務 の 提 供 に 対 して 消 費 税 を 負 担 したにも 係 わらず 仕 入 れのために 支 払 った 消 費 税 額 を 差 し 引 く 仕 入 税 額 控 除 が 制 限 されてしまい 納 付 消 費 税 額 が 増 加 するような 事 態 は 避 けたいところである 国 外 事 業 者 による 自 発 的 な 申 告 納 税 の 定 着 には コンプライアンスコスト 負 担 の 軽 減 と インセンティブへの 配 慮 が 一 般 的 に 挙 げられる 前 者 に 対 応 する 施 策 として 登 録 国 外 事 業 者 制 度 の 創 設 がある この 制 度 の 導 入 によって 登 録 国 外 事 業 者 については 仕 入 税 額 控 除 の 対 象 となることから 国 外 事 業 者 が 日 本 の 消 費 者 向 けに 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 を 拡 大 したいと 考 えた 場 合 取 引 先 である 日 本 企 業 が 仕 入 税 額 控 除 の 制 限 を 受 けないように 登 録 国 外 事 業 者 制 度 を 利 用 することが 必 要 とされる 一 定 規 模 の 国 外 事 業 者 であれば こ れがビジネス 戦 略 上 のインセンティブとなり ゆえに 国 外 事 業 者 による 申 告 納 税 が 促 進 す ることが 期 待 される ただし 適 正 な 仕 入 税 額 控 除 のために 日 本 企 業 は 国 外 事 業 者 が 登 録 国 外 事 業 者 であるか 否 かの 確 認 が 必 要 になる 2) 内 外 判 定 基 準 の 改 正 による 日 本 企 業 への 影 響 について 消 費 税 法 における 内 外 判 定 基 準 の 改 正 により 仕 向 地 原 則 の 適 用 から 改 正 前 と 改 正 後 では 原 則 として 課 税 関 係 が 正 反 対 となる また 改 正 前 では 輸 出 免 税 の 適 用 があったこと ( 図 表 6 の1 及 び3)を 考 慮 すると 課 税 範 囲 は 広 がることになる 日 本 企 業 としては 国 外 から 電 子 商 取 引 等 で 提 供 を 受 けている 役 務 を 特 定 し リバース チャージ 方 式 または 国 外 事 業 者 申 告 納 税 方 式 のいずれの 対 象 になるかを 検 討 する 新 たな 対 応 が 求 められる 同 時 に 仕 向 地 原 則 の 適 用 によって 予 想 される 影 響 は 日 本 企 業 の 国 外 支 店 の 取 り 扱 いである その 役 務 の 提 供 が 消 費 税 の 課 税 対 象 となる 国 内 取 引 に 該 当 するか 否 かの 判 定 基 準 が 役 11 所 定 の 要 件 を 満 たす 事 業 者 で 登 録 国 外 事 業 者 の 登 録 を 受 けようとする 者 は 登 録 国 外 事 業 者 の 登 録 申 請 書 に 所 定 の 事 項 を 記 載 の 上 納 税 地 を 所 轄 する 税 務 署 長 を 通 じて 国 税 庁 長 官 に 当 該 申 請 書 を 提 出 する 必 要 がある 11

務 の 提 供 を 行 う 者 の 事 務 所 等 の 所 在 地 から 役 務 の 提 供 を 受 ける 者 の 住 所 地 等 に 見 直 されたことに 伴 い 日 本 企 業 の 海 外 支 店 取 引 は 本 店 が 日 本 にある 限 り 国 内 取 引 となる 法 人 の 場 合 役 務 の 提 供 を 受 ける 者 の 住 所 地 等 は 本 店 又 は 主 たる 事 務 所 の 所 在 地 とな るからである( 消 費 税 法 第 4 条 第 3 項 第 3 号 消 費 税 法 基 本 通 達 5-7-15 の 2) したがって 日 本 に 本 店 がある 法 人 の 海 外 支 店 が 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 を 受 けた 場 合 は 提 供 者 が 国 内 国 外 いずれの 事 業 者 であっても 国 内 取 引 に 該 当 し 消 費 税 が 課 される Ⅳ.おわりに 上 記 のように 2012 年 に OECD による BEPS プロジェクトが 始 動 し 行 動 計 画 の 検 討 が 順 次 進 んでいることを 踏 まえ 日 本 も 2015 年 度 税 制 改 正 として 付 加 価 値 税 の 領 域 で 整 備 が 進 んだ 国 際 的 な 動 きに 則 した 日 本 の 対 応 が 見 て 取 れる ただし 国 境 を 越 えた 電 気 通 信 利 用 役 務 の 提 供 に 対 する 消 費 税 の 課 税 の 見 直 しは 電 子 経 済 への 具 体 的 な 税 制 上 の 対 応 の 始 まりに 過 ぎない 早 急 に 対 応 する 必 要 がある 付 加 価 値 税 に 続 いて 今 後 は 直 接 税 であ る 法 人 税 についての 検 討 が 具 体 的 に 進 められることとなろう 金 融 資 本 市 場 のグローバル 化 が 進 んだ 現 在 電 子 経 済 の 影 響 は 金 融 サービスにおいて も 大 きな 変 化 を 求 めてきている 金 融 機 関 が 電 気 通 信 回 線 を 介 して 金 融 商 品 及 びサービス を 提 供 し 利 用 者 が 金 融 機 関 の 従 事 者 と 直 接 対 面 又 は 意 思 疎 通 することなく 自 動 化 され た 方 式 によりこれを 利 用 することが 一 般 化 すると 国 際 課 税 制 度 における OECD の 協 調 体 制 のように 利 用 者 保 護 の 観 点 から 監 督 行 政 上 の 対 応 において 国 際 的 な 監 督 当 局 間 の 連 携 強 化 が 必 要 とされる しかしながら 多 くの 国 で 現 行 の 金 融 関 連 規 制 はこのような 電 子 媒 体 による 国 境 を 越 えた 取 引 を 想 定 していない さらに IT を 活 用 した 金 融 分 野 である FINTECH 12 に 関 連 したベンチャー 企 業 の 間 では インターネット 上 の 仮 想 通 貨 であるビットコイン(Bitcoin)を 活 用 して 新 たな 金 融 サービ スの 創 出 を 目 指 す 動 きも 活 発 化 している しかし ビットコインに 係 る 税 務 上 の 取 扱 いに ついては 各 国 の 見 解 がバラバラであるのが 現 状 である 税 務 上 の 取 扱 いを 検 討 するうえ で まずは ビットコインの 法 律 上 の 位 置 付 けを 明 確 にする 必 要 がある これらに 共 通 するのは 国 際 的 な 電 子 取 引 のフレームワークの 構 築 には 一 国 のみで 対 応 を 図 ることに 限 界 があるという 課 題 であり 今 後 は 国 際 機 関 の 主 導 による 各 国 の 協 調 連 携 体 制 の 構 築 が 一 層 求 められよう 12 Finance と Technology を 組 み 合 わせた 造 語 12