地 震 保 険 制 度 に 関 する プロジェクトチーム 報 告 書 について 大 臣 官 房 信 用 機 構 課 兼 政 策 金 融 課 信 用 機 構 課 長 栗 原 一 福 企 画 係 長 永 田 光 1.はじめに 平 成 23 年 3 月 11 日 に 発 生 した 東 日 本 大 震 災 等 を 踏 まえ 総 支 払 限 度 額 及 び 官 民 保 険 責 任 額 につ いて 早 急 に 改 定 を 行 うとともに 地 震 保 険 の 商 品 性 についても 検 討 を 行 うものとする とされた 特 別 会 計 改 革 の 基 本 方 針 ( 平 成 24 年 1 月 24 日 閣 議 決 定 )を 受 け 平 成 24 年 4 月 に 地 震 保 険 制 度 に 関 するプロジェクトチーム ( 以 下 PT )が 財 務 省 に 設 置 された PTには 関 連 分 野 の 専 門 家 有 識 者 がメンバーとして 参 画 しており 地 震 保 険 制 度 の 見 直 しについて 様 々な 角 度 から 議 論 が 行 わ れ 平 成 24 年 11 月 30 日 その 成 果 が 報 告 書 とし て 取 りまとめられたところである 本 稿 では 当 該 報 告 書 の 概 要 について 解 説 する 2. 報 告 書 の 概 要 報 告 書 では 地 震 保 険 制 度 の 見 直 しを 制 度 全 体 で 整 合 性 のとれたものにするため まず 制 度 の 目 的 や 役 割 といった 総 論 について 議 論 を 行 ってい る また 各 論 については 強 靭 性 商 品 性 保 険 料 率 が 議 論 されている それぞれの 論 点 は 1 喫 緊 の 課 題 2 速 やかに 対 応 すべき 課 題 3 引 き 続 き 議 論 すべき 課 題 に 分 けて 議 論 がなされている 喫 緊 の 課 題 としては 地 震 保 険 制 度 の 強 靭 性 に 係 る 論 点 が 挙 げられる 東 日 本 大 震 災 により 民 間 準 備 金 が 激 減 する 一 方 今 後 も 巨 大 地 震 の 発 生 が 懸 念 される 中 連 続 巨 大 地 震 によって 民 間 保 険 会 社 が 準 備 金 の 裏 付 けのないまま 保 険 責 任 を 負 い 保 険 金 支 払 いに 支 障 が 生 じるとともに 金 融 市 場 における 連 鎖 的 な 信 用 危 機 を 惹 起 する 惧 れが ある このような 事 態 を 回 避 するため 民 間 準 備 金 枯 渇 後 の 対 応 が 課 題 として 挙 げられている 速 やかに 対 応 すべき 課 題 は 喫 緊 の 課 題 よりやや 時 間 を 要 するものの 速 やかに 対 応 すべき 課 題 であり 商 品 性 や 保 険 料 率 に 関 する 見 直 しが 挙 げられる 地 震 保 険 料 率 は 文 部 科 学 省 の 下 の 地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 が 作 成 する 震 源 モデルを 基 礎 として 算 出 されるが 報 告 書 が 公 表 された 時 点 では 南 海 トラフの 見 直 しを 含 め 震 源 モデルの 改 定 作 業 中 であり 保 険 料 率 について 新 たな 震 源 モデルの 影 響 を 見 通 せる 状 況 ではなかった( 注 ) また 商 品 性 は 保 険 料 率 と 一 体 であり その 見 直 しは 料 率 改 定 と 同 時 に 行 う 必 要 がある そのため 商 品 性 及 び 保 険 料 率 については 見 直 しの 方 向 性 や 大 枠 が 示 されている 引 き 続 き 議 論 すべき 課 題 は その 実 現 のた めに 今 後 も 引 き 続 き 検 討 を 要 する 論 点 であり 付 保 割 合 100% 全 損 のみ 補 償 オプションや 立 地 割 増 割 引 の 導 入 等 が 挙 げられる 報 告 書 では その 実 現 の 前 提 となる 環 境 整 備 や 課 題 等 が 示 され ている 地 震 保 険 制 度 に 関 するプロジェクトチーム 報 告 書 の 本 文 については 以 下 の 財 務 省 HPを 参 照 されたい http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/jisinpt/report/20121130_00.html 20 ファイナンス 2013.2
税 務 統 計 から 見 た 震 災 後 の 東 北 の 姿 図 表 1 地 震 保 険 制 度 に 関 するプロジェクトチーム 報 告 書 のポイント 1. 総 論 地 震 保 険 制 度 の 役 割 地 震 保 険 は リスクに 備 えた 保 険 としての 側 面 と 社 会 的 な 連 帯 の 仕 組 みとしての 側 面 を 持 つが 双 方 のバランスが 重 要 地 震 保 険 は 国 の 信 用 力 が 裏 付 けだが その 信 用 力 にも 限 界 があることを 前 提 に 被 災 者 生 活 再 建 支 援 制 度 等 他 の 施 策 や 民 間 商 品 との 役 割 分 担 も 図 りつつ 制 度 設 計 を 考 える 必 要 官 民 負 担 のあり 方 地 震 保 険 は 民 の 負 担 力 を 超 えるところを 国 が 再 保 険 する 官 民 共 同 の 保 険 であり 民 間 も 保 険 責 任 を 負 う 現 行 の 基 本 的 枠 組 みを 維 持 ただし その 責 任 が 過 大 になると 金 融 市 場 における 連 鎖 的 な 信 用 危 機 を 惹 起 する 懸 念 があることから 民 間 が 過 大 な 負 担 にならないよう 配 慮 すべき 喫 緊 の 課 題 2. 強 靱 性 巨 大 地 震 で 民 間 準 備 金 が 激 減 した 場 合 補 正 等 で 民 間 保 険 責 任 を 減 額 する 必 要 連 続 巨 大 地 震 が 発 生 し 減 額 が 間 に 合 わなければ 民 間 は 準 備 金 の 裏 付 けのない 保 険 金 支 払 義 務 を 負 う 保 険 金 支 払 いに 支 障 が 生 じ るとともに 金 融 市 場 にお ける 連 鎖 的 な 信 用 危 機 を 惹 起 するリスク 民 間 準 備 金 枯 渇 後 の 対 応 巨 大 地 震 発 生 から 補 正 予 算 によるレイヤー 改 定 までの 間 をつなぐ 方 策 (レイヤー の 自 動 改 定 等 )について 検 討 の 上 早 急 に 導 入 すべき 震 源 モデルの 改 定 と 合 わせて 速 やかに 対 応 すべき 課 題 3. 商 品 性 4. 保 険 料 率 損 害 区 分 ( 全 損 半 損 一 部 損 ) 損 害 区 分 については 迅 速 な 支 払 のため3 区 分 としており 僅 かな 損 壊 割 合 の 差 で 保 険 金 に 大 きな 格 差 が 出 る 懸 念 格 差 縮 小 のため 損 害 区 分 の 細 分 化 が 考 えられるが 損 害 区 分 の 細 分 化 は 迅 速 性 への 悪 影 響 や 査 定 を 巡 る 苦 情 増 加 等 の 懸 念 の 解 消 が 前 提 損 害 査 定 方 法 の 見 直 し 結 果 次 第 では 細 分 化 の 可 能 性 が 開 けると 期 待 ( 損 害 査 定 方 法 の 見 直 し) 首 都 直 下 地 震 等 に 際 しても 査 定 の 迅 速 性 を 確 保 できるよ う 巨 大 地 震 を 想 定 した 新 たな 損 害 査 定 の 手 法 (オプシ ョン)について 要 検 討 住 宅 ローン 問 題 住 宅 ローンを 抱 える 被 災 者 の 負 担 を 緩 和 する 一 助 とするた め 金 融 機 関 損 害 保 険 会 社 及 び 宅 建 業 者 が 連 携 して 住 宅 ローン 債 務 者 に 対 して 地 震 保 険 への 加 入 を 促 進 すべき マンション 問 題 ( 付 属 物 の 損 害 査 定 ) マンションにはライフラインやエレベーター 等 の 付 属 物 に 損 害 が 生 じると 居 住 継 続 が 困 難 になる 固 有 の 特 性 戸 建 住 宅 との 公 平 性 や 査 定 の 迅 速 性 に 配 慮 しつつ マン ション 固 有 の 特 性 に 対 する 査 定 のあり 方 について 要 検 討 保 険 料 率 見 直 しの 前 提 保 険 料 率 は( 準 備 金 の 回 復 ではなく)あくまでも 将 来 の 地 震 リスクに 基 づくものでなければならな い 料 率 改 定 にあたり 改 定 理 由 について 加 入 者 へ の 十 分 な 説 明 が 必 要 等 地 区 分 現 行 制 度 ではリスクに 応 じて 等 地 区 分 ( 現 行 4 区 分 )による 料 率 格 差 があるが 震 源 モデル 見 直 し による 更 なる 格 差 拡 大 の 可 能 性 等 地 区 分 による 料 率 格 差 は 合 理 的 な 説 明 のつく 範 囲 で 平 準 化 の 方 向 で 見 直 すべき 耐 震 割 引 耐 震 化 のインセンティブ 強 化 のため 耐 震 割 引 に メリハリを 効 かせるべき ( 手 続 きの 簡 素 化 ) 制 度 の 活 用 を 促 進 するため 割 引 適 用 に 係 る 手 続 きの 簡 素 化 について 要 検 討 引 き 続 き 議 論 すべき 課 題 3. 商 品 性 付 保 割 合 リスク 量 等 の 増 大 を 回 避 しつつ 付 保 割 合 を 引 上 げる 一 方 策 として 付 保 割 合 100% 全 損 のみ オプションの 導 入 が 考 えられるが 消 費 者 に 困 難 な 選 択 を 迫 ることになりかねない 消 費 者 に 対 する 適 切 なリスクコ ンサルティング 等 の 環 境 整 備 を 進 めることを 前 提 に 検 討 4. 保 険 料 率 立 地 割 増 立 地 割 引 リスクコントロール 機 能 向 上 のためには 立 地 によるリスク( 地 盤 特 性 に よる 揺 れ 液 状 化 リスク 沿 岸 部 の 津 波 リスク 等 )を 料 率 に 反 映 させるこ とが 望 ましいが 立 地 による 料 率 格 差 について 契 約 者 の 納 得 感 が 得 られ るまでにリスク 算 出 の 信 頼 性 を 高 めることができるか 検 討 以 下 では 主 な 論 点 について 詳 しく 見 ていく ( 注 ) 平 成 24 年 12 月 21 日 東 日 本 大 震 災 をもたらした 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 を 新 たに 織 込 んだ 震 源 モデルが 公 表 された 平 成 25 年 1 月 末 現 在 南 海 トラフの 見 直 しを 含 んだ 震 源 モデルは 公 表 されていない (1) 総 論 昭 和 41 年 の 制 度 創 設 以 来 地 震 保 険 制 度 の 目 的 は 被 災 者 の 生 活 の 安 定 に 寄 与 すること ( 地 震 保 険 に 関 する 法 律 第 1 条 )とされている PTでは 制 度 創 設 当 初 の 目 的 が 現 在 でもなお 妥 当 であるか どうか 検 討 を 行 った 制 度 の 見 直 しにあたっては 消 費 者 のリスク 状 況 等 時 代 の 変 化 も 考 慮 する 必 要 があるが 報 告 書 では 法 律 上 の 目 的 を 変 える ことなく 変 化 に 対 応 することは 十 分 可 能 であると されている また PTでは 地 震 保 険 制 度 の 役 割 について 議 論 を 行 った 地 震 保 険 は 国 の 関 与 の 下 市 場 原 理 に 基 づく 保 険 の 論 理 だけでは 負 担 しきれな い 地 震 に 対 する 備 えを 社 会 的 な 連 帯 の 仕 組 みとして 提 供 しているものと 捉 えることができ る 報 告 書 では 地 震 保 険 の 制 度 設 計 にあたって は 保 険 連 帯 双 方 のバランスをとることが 重 要 であるとされている また 地 震 保 険 の 裏 付 けとなる 国 の 信 用 力 にも 限 界 があることを 前 提 に 被 災 者 生 活 再 建 支 援 制 度 等 他 の 施 策 や 民 間 保 険 商 品 との 役 割 分 担 を 図 る 必 要 があるとされて ファイナンス 2013.2 21
いる 地 震 保 険 は 頻 度 損 害 の 規 模 等 にバラツキが クがあることに 留 意 しなければならないとされて いる あるため 数 年 程 度 の 短 期 間 では 発 生 確 率 を 安 定 的 に 見 込 めず 損 害 が 時 に 異 常 巨 大 なものになる 可 能 性 があるという 地 震 リスクの 特 性 から 民 間 保 険 会 社 のみでは 提 供 されず 国 ( 地 震 再 保 険 特 別 会 計 )が 一 定 規 模 以 上 の 保 険 金 支 払 いを 再 保 険 することで 成 り 立 っている 国 による 再 保 険 の 際 の 官 民 の 保 険 責 任 の 負 担 割 合 は 官 民 保 険 責 任 の 構 造 (レイヤー)とされ 現 行 において 比 較 的 規 模 の 小 さな 地 震 は 全 額 民 間 ( 第 1レイヤー) 規 模 の 大 きな 地 震 は 官 民 半 々( 第 2レイヤー) 巨 大 地 震 は 基 本 的 に 国 が 負 担 するが 民 間 も 一 部 負 担 する( 第 3レイヤー)こととされている( 図 表 2 を 参 照 ) この 地 震 保 険 の 官 民 負 担 のあり 方 について PT では 保 険 責 任 を 国 に 一 元 化 し 民 間 保 険 会 社 は 販 売 査 定 保 険 金 支 払 いのみを 担 当 すべきとい う 意 見 もあったが 地 震 保 険 は 民 間 の 負 担 力 を 超 えるところを 国 が 再 保 険 する 官 民 共 同 の 保 険 とし て 十 分 に 機 能 を 発 揮 し 国 民 の 間 に 広 く 定 着 して きていることから 報 告 書 では 民 間 も 負 担 可 能 な 範 囲 で 保 険 責 任 を 負 うという 現 行 制 度 の 基 本 的 枠 組 みを 維 持 した 上 で 必 要 な 見 直 しを 行 うこと が 適 当 であるとされている また 第 3レイヤー について 民 間 保 険 会 社 が 行 う 損 害 査 定 や 保 険 金 支 払 いに 規 律 を 働 かせるために 必 要 な 程 度 を 超 え てその 責 任 が 過 大 になると 巨 大 地 震 発 生 時 に 金 融 市 場 における 連 鎖 的 な 信 用 危 機 を 惹 起 するリス (2) 強 靭 性 地 震 保 険 におけるレイヤーは 特 別 会 計 予 算 総 則 及 び 地 震 保 険 に 関 する 法 律 その 他 関 係 政 省 令 等 で 定 められており 巨 大 地 震 発 生 後 民 間 準 備 金 が 枯 渇 した 場 合 には 補 正 予 算 や 政 省 令 等 を 改 正 してレイヤーを 改 定 し 民 間 保 険 責 任 を 減 額 する 必 要 がある しかし 巨 大 地 震 による 民 間 準 備 金 の 枯 渇 後 次 の 巨 大 地 震 が 連 続 発 生 した 場 合 補 正 予 算 等 に よる 民 間 保 険 責 任 の 減 額 が 間 に 合 わなければ 民 間 保 険 会 社 は 準 備 金 の 裏 付 けのない 多 額 の 保 険 金 支 払 義 務 を 負 うことになり 保 険 金 支 払 いに 支 障 が 生 じるとともに 巨 額 債 務 を 抱 え 金 融 市 場 に おける 連 鎖 的 な 信 用 危 機 を 惹 起 する 惧 れがある 実 際 東 日 本 大 震 災 においては 震 災 後 最 初 の 補 正 の 機 会 であった 第 一 次 補 正 予 算 においてレイヤ ー 改 定 が 行 われたが 補 正 予 算 成 立 は5 月 2 日 で あり 3 月 11 日 の 発 災 から 約 1ヶ 月 半 を 要 してい る 報 告 書 では このような 事 態 を 回 避 するため 巨 大 地 震 発 生 から 補 正 予 算 等 によるレイヤー 改 定 までの 間 をつなぐ 具 体 的 な 方 策 が2つ 示 されてい る 第 一 に 民 間 準 備 金 が 枯 渇 した 場 合 に 補 正 予 算 によらない 自 動 的 なレイヤー 改 定 により 民 間 保 険 責 任 を 減 額 する 方 法 である これは 民 間 準 備 金 が 枯 渇 した 場 合 に 民 間 保 険 責 任 を 減 額 する 代 図 表 2 平 成 25 年 度 の 官 民 保 険 責 任 割 合 の 構 造 (レイヤー)( 案 ) わりにその 分 の 政 府 保 険 責 任 を 増 額 させ るものであり その 政 府 保 険 責 任 の 増 額 分 を 見 込 んだ 再 保 険 契 約 の 限 度 額 を あ らかじめ 特 別 会 計 予 算 総 則 に 盛 り 込 んで 国 会 の 議 決 を 得 ることによって 実 現 が 可 5 能 となる これについて PTでは 財 政 民 主 主 義 の 観 点 から 許 容 されるかという 民 間 懸 念 が 示 された 第 二 に 当 初 のレイヤーの 段 階 から 民 間 準 備 金 の 水 準 よりも 民 間 保 険 責 任 を 低 く 設 定 して 巨 大 地 震 の 発 生 により 準 22 ファイナンス 2013.2
税 務 統 計 から 見 た 震 災 後 の 東 北 の 姿 備 金 が 減 少 しても 次 の 巨 大 地 震 に 対 応 できるよう 保 険 金 の 支 払 能 力 に 余 力 (バッファー)を 持 たせ ておくという 方 法 である なお いずれの 方 法 も 補 正 予 算 までのつなぎと して 位 置 づけられるべきである また 民 間 保 険 責 任 を 準 備 金 の 範 囲 内 に 限 定 する 趣 旨 ではなく 準 備 金 枯 渇 後 においても 損 害 査 定 等 に 規 律 を 働 かせる 観 点 から 民 間 保 険 会 社 は 過 度 な 負 担 とな らない 範 囲 で 保 険 責 任 を 負 うこととされている 地 震 保 険 制 度 の 強 靭 性 向 上 は 喫 緊 の 課 題 とされ たことから 制 度 を 所 管 する 財 務 省 では 報 告 書 の 内 容 を 踏 まえて 早 急 に 対 応 を 行 い 平 成 25 年 度 予 算 において 第 二 の 方 法 である 保 険 金 の 支 払 能 力 に 余 力 を 持 たせておく 方 法 を 採 用 し 民 間 保 険 責 任 を 民 間 準 備 金 の 約 半 分 に 圧 縮 することとした 具 体 的 には 一 回 の 地 震 等 当 たりの 保 険 金 支 払 い について 850 億 円 までは 民 間 が 全 額 を 負 担 し( 第 1レイヤー) 850 億 円 を 超 え3,488 億 円 以 下 は 民 間 と 国 が 等 分 で 負 担 し( 第 2レイヤー) 3,488 億 円 を 超 え6 兆 2,000 億 円 までは 民 間 が 約 0.4% 国 が 約 99.6%の 割 合 で 負 担 する( 第 3レイヤー)こ とを 予 定 している( 図 表 2を 参 照 ) このほか 民 間 準 備 金 枯 渇 後 の 対 応 として PT では 政 府 による 資 金 のあっせん 融 通 に 係 る 現 行 努 力 規 定 ( 地 震 保 険 に 関 する 法 律 第 8 条 )の 義 務 規 定 化 等 が 検 討 された 報 告 書 では 補 正 予 算 までの 間 をつなぐ 方 策 を 講 じれば 政 府 による 資 金 支 援 について 新 たな 措 置 を 講 じる 必 要 性 は 減 じ るとされている (3) 商 品 性 商 品 性 については 強 靭 性 の 向 上 が 喫 緊 の 課 題 となっている 中 制 度 全 体 のリスク 量 が 増 大 し 過 度 な 負 担 とならないように 留 意 しつつ 地 震 保 険 の 普 及 拡 大 を 図 る 観 点 から 消 費 者 のニーズに 合 わせたものにしていくことが 必 要 であるとされ ている PTでは 商 品 魅 力 の 向 上 のため 損 害 区 分 の 細 分 化 等 について 議 論 された 地 震 保 険 においては 膨 大 な 件 数 の 損 害 査 定 を 迅 速 に 行 うため 地 震 に よる 損 害 を 全 損 ( 主 要 構 造 部 の 損 壊 割 合 50% 以 上 ) 半 損 ( 同 20% 以 上 50% 未 満 ) 一 部 損 ( 同 3 % 以 上 20% 未 満 )の3つに 区 分 しており 全 損 は 保 険 金 額 の 全 額 半 損 は50% 一 部 損 は5%を 支 払 うこととしている 現 行 制 度 では 僅 かな 損 壊 割 合 の 差 であっても 保 険 金 支 払 割 合 に 大 きな 格 差 が 生 じることがあり 保 険 契 約 者 の 不 満 の 原 因 に なっているため PTでは 保 険 金 支 払 割 合 の 格 差 を 縮 小 することを 目 的 として 損 害 区 分 を 細 分 化 することの 是 非 について 検 討 された 報 告 書 では 損 害 区 分 の 細 分 化 によって 損 害 査 定 に 必 要 な 時 間 が 増 え 迅 速 な 保 険 金 の 支 払 い に 影 響 を 及 ぼすことが 懸 念 されるほか 損 害 区 分 の 境 界 周 辺 で 発 生 することの 多 い 保 険 契 約 者 の 不 満 が 区 分 新 設 に 伴 い 境 界 が 増 えることで 却 って 増 加 しかねないという 懸 念 が 示 されている した がって 損 害 区 分 の 細 分 化 の 実 現 は 迅 速 性 への 悪 影 響 や 査 定 を 巡 る 苦 情 増 加 等 の 懸 念 の 解 消 が 前 提 とされた 首 都 直 下 地 震 等 の 巨 大 地 震 にも 対 応 できる 特 別 な 査 定 方 法 (オプション)が 実 施 でき れば 細 分 化 に 伴 う 査 定 の 迅 速 性 等 の 課 題 を 克 服 できる 可 能 性 が 開 けるとの 期 待 も 示 されている このほかにも 報 告 書 では 住 宅 ローン 問 題 とマ ンション 問 題 を 取 り 上 げている 住 宅 ローンによって 住 宅 購 入 資 金 を 調 達 した 被 災 者 は 地 震 で 住 宅 を 喪 失 しても 残 ったローン を 返 済 しつつ 新 たな 住 宅 の 手 当 てを 含 む 生 活 再 建 を 図 らなければならない(いわゆる 二 重 債 務 問 題 ) この 問 題 については 住 宅 ローン 債 務 者 が 住 宅 ローン 契 約 時 に ローンに 伴 うこのよう なリスクについて 適 切 な 認 識 のないまま 地 震 保 険 に 加 入 しないことが 問 題 の 根 幹 にあると 考 えられ る 報 告 書 では 金 融 機 関 損 害 保 険 会 社 及 び 宅 建 業 者 が 連 携 して 住 宅 ローン 債 務 者 に 対 して 地 震 保 険 の 加 入 を 促 進 すべき 旨 の 提 言 がなされてい る 次 にマンション 問 題 であるが マンションは 専 有 部 分 と 共 用 部 分 に 区 分 され 専 有 部 分 はマンション 所 有 者 が 地 震 保 険 に 加 入 し 共 用 部 分 はマンション 管 理 組 合 が 加 入 することにな ファイナンス 2013.2 23
(4) 保 険 料 率 る 現 状 では 共 用 部 分 の 加 入 率 は 低 水 準 であり 被 災 した 際 に 共 有 部 分 の 修 繕 費 を 捻 出 できず マ ンション 復 旧 の 妨 げになっているとの 指 摘 もあ る 報 告 書 では 損 害 保 険 会 社 とマンション 管 理 業 者 が 連 携 して マンション 管 理 組 合 に 対 して 共 用 部 分 の 地 震 保 険 への 加 入 を 促 進 すべき 旨 の 提 言 がなされている 財 務 省 では これらの 提 言 を 受 け 金 融 庁 と 国 土 交 通 省 に 対 して 所 管 する 各 業 界 団 体 を 通 じて 地 震 保 険 の 一 層 の 周 知 を 求 める 依 頼 文 書 を 発 出 し ており 平 成 24 年 12 月 金 融 庁 と 国 土 交 通 省 は 所 管 する 各 業 界 団 体 へ 地 震 保 険 の 周 知 を 求 める 依 頼 文 書 を 発 出 している マンション 問 題 については 附 属 物 の 損 害 査 定 に 係 る 論 点 も 議 論 されている マンションには ライフラインやエレベーター 等 の 附 属 物 に 損 害 が 生 じると 居 住 継 続 が 困 難 になるという 固 有 の 特 性 がある 地 震 保 険 においては 迅 速 性 の 観 点 から 主 要 構 造 部 を 対 象 として 損 害 査 定 が 行 われている が PTでは マンション 等 の 損 害 査 定 において ライフライン 等 の 附 属 物 を 対 象 に 加 えるべきか 検 討 した マンション 等 についてのみライフライン 等 を 査 定 対 象 に 加 えると 戸 建 住 宅 との 公 平 性 が 報 告 書 が 公 表 された 時 点 では 保 険 料 率 の 算 出 の 基 礎 となる 震 源 モデルの 改 定 結 果 が 出 ておら ず 南 海 トラフ 等 の 再 評 価 を 含 む 新 たな 震 源 モデ ルの 影 響 を 見 通 すことが 困 難 であった そのため 報 告 書 では 保 険 料 率 体 系 やリスクに 応 じた 割 引 制 度 等 の 大 枠 について 基 本 的 な 考 え 方 が 示 され ている また 保 険 料 率 は 準 備 金 の 水 準 に 関 わ らず あくまでも 将 来 の 地 震 リスクに 基 づくもの でなければならないとされ これが 地 震 保 険 料 率 見 直 しの 前 提 とされている 保 険 料 率 については 震 源 への 近 接 性 等 リス クに 応 じて 都 道 府 県 ごとに4つの 等 地 に 区 分 し 料 率 格 差 を 設 けているが 東 日 本 大 震 災 をはじめ 近 年 保 険 料 率 の 低 い 等 地 で 大 きな 被 害 の 地 震 が 頻 発 しており 短 期 的 に 見 れば 等 地 区 分 は 被 害 と 必 ずしも 一 致 していない( 図 表 3を 参 照 ) また 現 在 最 大 3 倍 以 上 ある 料 率 格 差 が 南 海 トラフ 等 の 再 評 価 を 踏 まえるとさらに 拡 大 する 可 能 性 も ある 報 告 書 では 社 会 的 連 帯 の 仕 組 みとし ての 役 割 も 期 待 される 地 震 保 険 において 極 端 な 料 率 格 差 は 適 当 でなく 今 回 の 料 率 改 定 にあたっ て 料 率 格 差 については 合 理 的 な 説 明 のつく 範 問 題 となり 他 方 戸 建 住 宅 の ライフライン 等 を 加 えれば 査 図 表 3 地 震 保 険 の 保 険 料 率 保 険 料 定 の 迅 速 性 に 甚 大 な 影 響 を 及 ぼ 等 地 区 分 都 道 府 県 ( 保 険 金 額 1,000 万 円 あたり) すと 予 想 される 報 告 書 では イ 構 造 ロ 構 造 岩 手 秋 田 山 形 福 島 栃 木 群 馬 ライフライン 等 の 附 属 物 を 査 定 1 等 地 富 山 石 川 福 井 鳥 取 島 根 山 口 5,000 円 10,000 円 対 象 に 加 えることについては 慎 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 鹿 児 島 重 であるべきと 指 摘 している 北 海 道 青 森 宮 城 新 潟 長 野 岐 阜 2 等 地 滋 賀 京 都 兵 庫 奈 良 岡 山 広 島 6,500 円 12,700 円 ただし エレベーターのような 高 層 マンション 特 有 の 設 備 に 限 り 査 定 対 象 にする 等 戸 建 住 宅 3 等 地 激 変 緩 和 1 大 分 宮 崎 沖 縄 埼 玉 大 阪 香 川 10,500 円 6,500 円 18,800 円 15,600 円 との 公 平 性 や 査 定 の 迅 速 性 に 配 激 変 緩 和 2 茨 城 山 梨 愛 媛 9,100 円 18,800 円 4 等 地 東 京 神 奈 川 静 岡 16,900 円 31,300 円 慮 しつつ 損 害 保 険 業 界 におい て 引 き 続 き 検 討 することが 求 められている 激 変 緩 和 1 激 変 緩 和 2 徳 島 高 知 千 葉 愛 知 三 重 和 歌 山 9,100 円 16,900 円 21,500 円 30,600 円 ( 注 1) イ 構 造 は 耐 火 建 築 物 準 耐 火 建 築 物 及 び 省 令 準 耐 火 建 築 物 ( 鉄 骨 造 コンクリー ト 造 等 ) ロ 構 造 はイ 構 造 以 外 の 建 物 ( 木 造 建 物 等 ) ( 注 2) 改 定 による 引 上 げ 率 を 最 大 30%とする 激 変 緩 和 措 置 により 同 じ 等 地 であっても 適 用 される 料 率 が 異 なる 府 県 が 存 在 する ( 注 3) 平 成 25 年 1 月 末 現 在 24 ファイナンス 2013.2
税 務 統 計 から 見 た 震 災 後 の 東 北 の 姿 囲 で 平 準 化 を 図 る 方 向 で 見 直 すべきとされた そ の 方 法 として 次 の2つが 議 論 されている 第 一 に 現 行 4 区 分 の 等 地 区 分 を 統 合 する 方 法 である ただし これについては 料 率 改 定 にあ たって 保 険 料 率 の 急 激 な 上 昇 を 避 けるため そ の 上 昇 率 の 上 限 を30%とする 激 変 緩 和 措 置 がとら れていることに 留 意 する 必 要 がある 保 険 料 率 の 上 昇 が30%の 上 限 にかかると 統 合 後 の 区 分 の 保 険 料 率 がそのまま 適 用 できず 区 分 内 にさらに 区 分 ができてしまう 可 能 性 がある 実 際 現 行 の4 等 地 区 分 においても 料 率 改 定 時 の 激 変 緩 和 措 置 に より 実 際 に 適 用 される 保 険 料 率 は8 通 りに 分 か れている 報 告 書 では 等 地 本 来 の 保 険 料 率 と 異 なる 料 率 が 適 用 される 都 道 府 県 が 増 えれば 料 率 体 系 がわかりにくくなり 保 険 料 率 の 持 つリスク 伝 達 機 能 が 低 下 するという 問 題 が 生 じることに 留 意 しなければならないとされている 第 二 に 純 保 険 料 率 のうち 全 国 一 律 で 負 担 して いる 割 合 を 引 上 げる 方 法 である 地 震 保 険 の 料 率 算 出 においては 日 本 国 内 は どこでもある 程 度 の 規 模 の 被 害 を 伴 う 地 震 が 発 生 する 危 険 性 があ る との 地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 の 見 解 を 踏 まえ 最 大 震 度 が 震 度 6 弱 以 下 となる 地 震 に 相 当 するリ スク 量 ( 全 地 震 のリスク 量 の 約 30%)については 全 国 一 律 に 負 担 を 求 めることとしている この 全 国 一 律 負 担 割 合 を 合 理 的 な 説 明 のつく 限 り 現 行 における 全 リスク 量 の30%からさらに 引 上 げる ことによって 料 率 格 差 の 平 準 化 を 図 ることも 可 能 である 報 告 書 では このように 等 地 区 分 間 の 料 率 格 差 を 平 準 化 するよう 方 向 性 を 示 す 一 方 耐 震 化 へ の 誘 因 づけや 地 震 保 険 の 加 入 促 進 を 図 る 観 点 か ら 建 物 の 耐 震 性 能 に 応 じた 保 険 料 の 割 引 制 度 に めりはりを 効 かせることを 求 めている 現 行 の 割 引 制 度 における 最 大 割 引 率 は30%であるが 専 門 的 知 見 によると 耐 震 性 の 高 い 建 物 と 低 い 建 物 の リスク 格 差 は30%では 収 まらないという 指 摘 もあ り 現 行 の 割 引 率 では 耐 震 化 のインセンティブ として 大 きな 効 果 を 期 待 できない 懸 念 がある 報 告 書 では 耐 震 性 を 的 確 に 反 映 させ 割 引 率 を 拡 大 させる 方 向 で 見 直 すことが 適 当 であるとされて いる また 現 行 では 割 引 制 度 の 利 用 が 極 めて 低 い 水 準 にとどまっており これは 割 引 適 用 のた めの 手 続 に 費 用 や 手 間 がかかり 申 請 が 少 ないこと が 要 因 と 考 えられる 報 告 書 では 手 続 の 簡 素 化 を 図 るよう 損 害 保 険 業 界 に 実 務 的 検 討 を 求 めてい る (5) 引 き 続 き 議 論 すべき 課 題 報 告 書 においては 地 震 保 険 制 度 の 目 的 や 役 割 から 損 害 査 定 方 法 等 の 事 務 的 な 論 点 に 至 るまで 実 に 幅 広 く 議 論 が 行 われている 最 後 に 引 き 続 き 議 論 すべき 課 題 とされた2つの 論 点 について 触 れることとしたい 第 一 に 商 品 性 に 係 る 論 点 としては 付 保 割 合 100% 全 損 のみ 補 償 オプションの 導 入 が 挙 げられる 現 行 では 付 帯 する 火 災 保 険 金 額 の 50%を 付 保 割 合 の 上 限 とする 制 限 があるため 地 震 保 険 の 保 険 金 だけでは 損 壊 した 財 産 の 全 面 的 な 回 復 を 図 ることは 困 難 であり いわゆる 二 重 債 務 問 題 の 解 消 に 不 十 分 との 指 摘 もある 他 方 付 保 割 合 の 引 上 げは 制 度 全 体 のリスク 量 や 保 険 料 負 担 の 増 大 に 直 結 する これを 回 避 しつつ 付 保 割 合 を 引 上 げる 方 策 として PTでは 補 償 を 全 損 のみ に 限 定 して 付 保 割 合 を100%とするオプシ ョンの 導 入 が 議 論 された このようなオプションの 導 入 は 住 宅 ローンの 存 在 等 消 費 者 が 自 らの 置 かれたリスク 状 況 に 応 じニーズにあった 商 品 を 選 択 することが 可 能 にな る 一 方 消 費 者 に 選 択 困 難 なものの 選 択 を 迫 るこ とになりかねない また 訴 訟 等 のトラブルや 損 害 査 定 等 の 現 場 に 混 乱 を 招 く 懸 念 がある 報 告 書 では 消 費 者 に 対 する 適 切 なリスクコンサルティ ング 等 の 環 境 整 備 を 進 めることを 前 提 に 今 後 の 課 題 として 検 討 するものとされている 第 二 に 保 険 料 率 に 係 る 論 点 としては 立 地 に よるリスク( 地 盤 特 性 による 揺 れ 液 状 化 リスク 沿 岸 部 の 津 波 リスク 等 )を 保 険 料 率 に 反 映 させる 制 度 ( 立 地 割 増 割 引 )の 導 入 が 挙 げられる 現 行 の 地 震 保 険 料 率 は 都 道 府 県 を 立 地 の 単 位 として ファイナンス 2013.2 25
おり 液 状 化 や 津 波 のリスクといった 都 道 府 県 内 で 更 に 異 なる 立 地 のリスクが 十 分 に 考 慮 されてい ない PTでは リスクの 高 い 地 域 から 安 全 な 地 域 へと 人 々を 誘 導 し 地 震 保 険 制 度 のリスクコント ロール 機 能 の 向 上 を 図 るためには 立 地 リスクの 相 違 をできる 限 り 保 険 料 率 に 反 映 させることが 望 ましいという 意 見 があった しかし リスクが 高 くても 住 まざるを 得 ない 事 情 もある 中 立 地 割 増 はリスクの 高 い 地 域 の 人 々を 地 震 保 険 から 実 質 的 に 排 除 することになりかねない また 同 一 県 内 の 隣 接 した 家 同 士 の 料 率 格 差 が 納 得 感 を 持 って 受 け 入 れられるか 懸 念 がある 報 告 書 では 立 地 割 増 割 引 の 導 入 について 保 険 契 約 者 の 納 得 感 が 得 られるまでにリスク 算 出 の 信 頼 性 を 高 めること ができるかという 点 も 含 め 今 後 の 課 題 として 検 討 するものとされている 3.おわりに PTでは 総 論 から 強 靭 性 商 品 性 保 険 料 率 に 至 る 地 震 保 険 制 度 全 体 について 詳 細 な 検 討 が 行 われ それぞれの 論 点 について 専 門 家 有 識 者 のメンバーの 方 々から 大 変 有 益 なご 指 摘 ご 意 見 を 頂 戴 し その 成 果 を 報 告 書 としてご 提 言 いただ いた 地 震 保 険 制 度 について 包 括 的 に 議 論 し そ の 課 題 を 網 羅 的 に 整 理 した 上 で 見 直 しの 方 向 性 が 提 言 されたのは 制 度 創 設 以 来 のことである 東 日 本 大 震 災 という 未 曾 有 の 災 害 を 受 け 地 震 国 日 本 の 安 心 の 拠 り 所 としての 地 震 保 険 制 度 の 重 要 性 は 益 々 高 まっており 制 度 を 所 管 する 財 務 省 では PTにおける 議 論 や 報 告 書 の 内 容 も 踏 まえな がら 地 震 保 険 をより 良 いものとすべく 関 係 各 所 とも 連 携 を 図 りながら 制 度 運 営 を 行 っていく ことになる 参 考 1 地 震 保 険 制 度 の 概 要 法 : 地 震 保 険 に 関 する 法 律 昭 和 四 十 一 年 五 月 法 律 第 七 十 三 号 保 険 会 社 等 が 負 う 地 震 保 険 責 任 を 政 府 が 再 保 険 することにより 地 震 保 険 の 普 及 を 図 り もって 地 震 等 による 被 災 者 の 生 活 の 安 定 に 寄 与 する 1. 制 度 の 趣 旨 ことを 目 的 とする ( 法 第 1 条 ) 地 震 噴 火 又 はこれらによる 津 波 ( 以 下 地 震 等 という )を 直 接 又 は 間 接 の 原 因 とする 火 災 損 壊 埋 没 又 は 流 出 による 損 害 ( 法 第 2 条 ) 2. 対 象 危 険 ( 注 )72 時 間 以 内 に 生 じた 2 以 上 の 地 震 等 は 一 括 して 1 回 の 地 震 等 とみなす( 但 し 被 災 地 域 が 全 く 重 複 しない 場 合 はこの 限 りでない) ( 法 第 3 条 ) 3. 対 象 物 件 住 宅 ( 店 舗 と 併 用 のものを 含 む) 家 財 (1 個 30 万 円 を 超 える 貴 石 等 の 贅 沢 品 を 除 く)( 法 第 2 条 施 行 規 則 第 1 条 ) 火 災 保 険 契 約 に 附 帯 ( 地 震 保 険 単 独 は 不 可 )( 法 第 2 条 ) 4. 契 約 方 法 ( 注 ) 火 災 保 険 契 約 に 原 則 自 動 附 帯 ( 選 択 により 附 帯 を 外 すことも 可 ) 5. 付 保 割 合 火 災 保 険 金 額 の 30%~ 50%の 範 囲 ( 法 第 2 条 ) 6. 保 険 金 限 度 額 住 宅 5,000 万 円 家 財 1,000 万 円 ( 施 行 令 第 2 条 ) 全 損 ( 建 物 主 要 構 造 部 損 壊 割 合 50% 以 上 ): 保 険 金 額 の 全 額 半 損 ( 同 20% 以 上 50% 未 満 ): 同 半 額 一 部 損 ( 同 3% 以 上 20% 未 満 ): 同 5% 7. 損 害 査 定 区 分 ( 施 行 令 第 1 条 ) 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 に 基 づく 警 戒 宣 言 が 発 せられたときは 同 法 に 基 づき 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 として 指 定 された 地 域 内 に 所 8. 加 入 制 限 在 する 保 険 の 目 的 について 地 震 保 険 契 約 を 締 結 することができない ( 法 第 4 条 の2) ( 注 ) 現 在 東 海 地 震 についてのみ 地 域 指 定 がなされている 保 険 料 率 は 収 支 の 償 う 範 囲 内 においてできる 限 り 低 いものでなければならない(= 利 潤 を 含 まない ノーロス ノープロフィットの 原 則 ) ( 法 第 5 条 ) 保 険 料 率 は 危 険 度 に 応 じて 地 域 別 ( 都 道 府 県 ) 構 造 別 ( 木 造 非 木 造 )に 設 定 耐 震 性 能 に 応 じた 割 引 あり 9. 保 険 料 10. 政 府 再 保 険 11. 総 支 払 限 度 額 12. 政 府 による 資 金 の 斡 旋 融 通 に 係 る 努 力 義 務 年 間 保 険 料 ( 地 震 保 険 の 保 険 金 額 1,000 万 円 あたり) 3 等 地 非 木 造 木 造 4 1 5,000 円 10,000 円 2 6,500 円 12,700 円 1 2 6,500 円 9,100 円 15,600 円 3 10,500 円 18,800 円 1 9,100 円 21,500 円 2 3 16,900 円 30,600 円 31,300 円 施 行 令 : 地 震 保 険 に 関 する 法 律 施 行 令 昭 和 四 十 一 年 五 月 政 令 第 百 六 十 四 号 施 行 規 則 : 地 震 保 険 に 関 する 法 律 施 行 規 則 昭 和 四 十 一 年 六 月 大 蔵 省 令 第 三 十 五 号 1 等 地 : 岩 手 秋 田 山 形 福 島 栃 木 群 馬 富 山 石 川 福 井 鳥 取 島 根 山 口 福 岡 佐 賀 長 崎 熊 本 鹿 児 島 2 等 地 : 北 海 道 青 森 宮 城 新 潟 長 野 岐 阜 滋 賀 京 都 兵 庫 奈 良 岡 山 広 島 大 分 宮 崎 沖 縄 3 等 地 :1 香 川 2 茨 城 山 梨 愛 媛 3 埼 玉 大 阪 4 等 地 : 1 徳 島 高 知 2 千 葉 愛 知 三 重 和 歌 山 3 東 京 神 奈 川 静 岡 耐 震 性 能 に 応 じた 割 引 として 耐 震 等 級 割 引 (10%~30%) 建 築 基 準 年 割 引 ( 現 行 建 築 基 準 法 施 行 ( 昭 和 56 年 6 月 ) 以 降 建 築 :10%) 免 震 建 築 物 割 引 (30%) 耐 震 診 断 割 引 (10%)がある 政 府 と 民 間 損 害 保 険 会 社 ( 再 保 険 会 社 )の 再 保 険 契 約 においては 1 回 の 地 震 等 当 たりの 官 民 保 険 責 任 額 を 定 める また 支 払 保 険 金 総 額 が 政 令 で 定 める 一 定 額 に 達 するまでは 全 額 民 間 負 担 とし 一 定 額 を 超 えると 政 令 で 定 める 割 合 で 官 民 それぞれ 負 担 するように 定 める( 政 府 保 険 責 任 額 については 国 会 の 議 決 を 得 る) ( 法 第 3 条 ) ( 注 ) 現 在 3 層 構 造 (レイヤー)で 官 民 保 険 責 任 額 を 定 めている 支 払 保 険 金 総 額 が 政 令 で 定 める 一 定 額 を 超 える 場 合 には 同 額 の 範 囲 内 に 支 払 保 険 金 総 額 が 収 まるように 支 払 保 険 金 をプロラタ 削 減 ( 法 第 4 条 施 行 令 第 4 条 ) ( 注 ) 総 支 払 限 度 額 は 関 東 大 震 災 級 地 震 再 来 を 前 提 として 算 出 政 府 は 地 震 保 険 契 約 による 保 険 金 支 払 いのため 特 に 必 要 があるときは 保 険 会 社 等 に 対 し 資 金 のあっせん 又 は 融 通 に 努 めるものとする ( 法 第 8 条 ) 26 ファイナンス 2013.2
税 務 統 計 から 見 た 震 災 後 の 東 北 の 姿 参 考 2 率 災 保 険 率 度 の 55 50 9.0 12,241 5,545 7.3 783 62 6.7 169 45 7.0 169 6.8 149 6.8 82 40 5.8 8.0 64 60 35 7.2 55 6.5 59 30 25 20 15 10 5 0 1966 S41 1968 S43 1970 S45 1972 S47 1974 S49 1976 S51 1978 S53 1980 S55 1982 S57 1984 S59 1986 S61 1988 S63 1990 H2 1992 H4 1994 H6 1996 H8 1998 H10 2000 H12 2002 H14 2004 H16 2006 H18 2008 H20 2010 H22 60,000 50,000 40,000 30,000 20,000 10,000 0 参 考 3 地 震 保 険 計 官 民 保 険 責 任 の( 平 成 25 年 度 ) ファイナンス 2013.2 27