地 域 金 融 機 関 のビジネスモデル 改 革 地 方 金 融 機 関 の 連 携 と 保 険 サービスの 提 供 地 方 金 融 機 関 の 連 携 と 保 険 サービスの 提 供 井 上 武 要 約 1. 日 本 では 少 子 高 齢 化 とともに 年 金 や 医 療 介 護 といった 自 助 努 力 による 老 後 の 準 備 や 生 前 の 保 障 に 対 するニーズが 拡 大 している さらに 相 続 や 資 産 承 継 の 増 加 によって 円 滑 な 世 代 間 の 資 産 移 転 へのニーズも 高 まっており 保 険 サービスに 求 められる 消 費 者 の 期 待 が 大 きく 変 化 してきている 2. ニーズが 多 様 化 複 雑 化 する 中 で 保 険 サービスの 提 供 においては 従 来 の 保 険 の 知 識 に 加 えて 契 約 者 の 将 来 キャッシュフローや 資 産 状 況 の 把 握 など 総 合 的 な 金 融 コンサルティングの 能 力 が 求 められるようになっている 3. 地 方 においては 生 命 保 険 会 社 に 加 えて これまでも 農 協 や 郵 便 局 によって 保 険 サービスが 提 供 されてきたが 変 化 する 新 たなニーズに 応 えるためには 地 域 の 金 融 サービスで 最 大 のシェアを 握 り 金 融 知 識 情 報 を 豊 富 に 有 する 地 方 銀 行 による 本 格 的 なバンカシュアランスの 展 開 が 期 待 される 4. 地 方 金 融 機 関 が 効 率 的 にバンカシュアランスを 展 開 する 方 法 としては 欧 州 の 例 に 見 るように 広 域 連 携 を 利 用 した 共 同 子 会 社 の 利 用 や 農 協 や 郵 便 局 などと の 業 態 を 越 えた 連 携 も 検 討 に 値 しよう Ⅰ 少 子 高 齢 化 とともに 変 化 する 保 険 へのニーズ 日 本 では 少 子 高 齢 化 が 進 展 していく 中 で 公 的 年 金 や 医 療 制 度 など 社 会 保 障 制 度 の 改 革 も 進 められる 方 向 にある そうした 中 年 金 や 医 療 介 護 など 自 助 努 力 による 老 後 の 準 備 が 今 後 もますます 重 要 となってきている また 高 齢 化 に 伴 って 増 加 する 相 続 や 事 業 承 継 によって 計 画 的 かつ 円 滑 な 世 代 間 の 資 産 移 転 へのニーズも 高 まっている 金 融 の 分 野 では 既 存 の 商 品 や 新 たな 商 品 サービスの 開 発 によって こうしたニーズ の 変 化 に 応 えていくことが 課 題 となっている 生 命 保 険 業 界 もその 中 の 一 つであり 医 療 保 険 や 年 金 など 生 前 給 付 型 の 商 品 や 相 続 資 産 承 継 に 合 わせた 保 険 商 品 の 販 売 などを 強 化 する 方 向 にある これらの 商 品 の 販 売 においては 契 約 者 の 将 来 キャッシュフローや 資 産 状 況 の 把 握 など がこれまで 以 上 に 重 要 となる このため 販 売 担 当 者 は 保 険 の 専 門 家 であるだけでなく 金 融 の 知 識 を 持 ち 合 わせた 総 合 的 な 金 融 コンサルティングの 能 力 が 求 められるようになって 97
野 村 資 本 市 場 クォータリー 2014 Autumn きている 生 命 保 険 会 社 の 営 業 員 数 は 1990 年 代 後 半 に 大 型 の 経 営 破 たんが 相 次 いだことや 景 気 低 迷 を 受 け 保 険 市 場 が 縮 小 したことから ここ 20 年 の 間 でほぼ 半 減 する 状 況 となってい る また 営 業 基 盤 となる 機 関 数 の 減 少 率 は 金 融 セクターの 中 でも 最 も 高 くなっている ( 図 表 1 参 照 ) 営 業 員 の 全 体 的 な 高 齢 化 も 指 摘 される 中 特 に 近 年 では 人 口 の 減 少 率 の 高 い 地 域 ほど 営 業 員 数 が 大 きく 減 少 する 状 況 となっている( 図 表 2 参 照 ) 生 命 保 険 商 品 に 対 する 新 たな 期 待 が 高 まる 中 で 特 に 地 方 においては ニーズの 変 化 に 対 応 できる 高 度 な 人 材 をどのように 確 保 するかが 保 険 業 界 にとっての 重 要 な 課 題 となって いる 図 表 1 金 融 機 関 の 店 舗 数 生 命 保 険 会 社 の 営 業 員 数 の 推 移 (1993 年 =100) 110 100 90 80 70 60 50 40 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 大 手 銀 行 地 銀 第 2 地 銀 信 金 信 組 労 金 農 協 ゆうちょ 証 券 会 社 生 命 保 険 会 社 店 舗 全 合 計 生 命 保 険 会 社 ( 営 業 員 ) ( 注 ) 1. 1993 年 を 100 として 指 数 化 証 券 以 外 は 各 年 の 3 月 末 の 値 証 券 は 12 月 末 の 値 2. 店 舗 数 は 本 支 店 及 びその 他 営 業 所 の 合 計 農 協 は 貯 金 業 務 を 営 む 本 所 事 務 所 の 合 計 ゆうちょは 郵 便 局 で 銀 行 代 理 業 務 を 営 む 営 業 所 または 事 業 所 数 と 郵 便 局 が 再 委 託 している 営 業 所 または 事 務 所 数 を 含 む 生 命 保 険 会 社 は 支 社 数 機 関 数 ( 支 部 営 業 所 レベル)の 合 計 ( 出 所 ) 金 融 ジャーナル 金 融 マップ 日 本 証 券 業 協 会 会 員 の 都 道 府 県 別 営 業 所 数 一 覧 保 険 研 究 所 インシュアランス 統 計 号 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 98
地 方 金 融 機 関 の 連 携 と 保 険 サービスの 提 供 図 表 2 保 険 会 社 営 業 員 数 と 人 口 増 減 の 関 係 10% 5% 神 奈 川 東 京 過 去 5 年 間 の 生 命 保 険 会 社 実 働 営 業 員 数 の 増 減 率 0% 5% 10% 15% 福 島 島 根 山 口 岩 手 徳 島 宮 崎 愛 媛 秋 田 青 森 和 歌 山 高 知 北 海 道 石 川 京 都 群 馬 栃 木 茨 城 長 野 兵 庫 三 重 長 崎 佐 賀 広 島 鳥 取 新 潟 山 梨 岐 阜 福 井 岡 山 静 岡 鹿 児 島 富 山 宮 城 福 岡 熊 本 山 形 大 分 香 川 奈 良 滋 賀 千 葉 埼 玉 大 阪 沖 縄 愛 知 20% 6% 4% 2% 0% 2% 4% 6% 相 関 係 数 =0.760550 過 去 5 年 間 の 人 口 増 減 率 ( 注 ) 1. 営 業 員 数 は 2008 年 3 月 末 から 2013 年 3 月 末 にかけての 増 減 率 人 口 は 2008 年 10 月 1 日 か ら 2013 年 10 月 1 日 にかけての 増 減 率 2. は 日 本 創 成 会 議 人 口 減 少 問 題 検 討 分 科 会 ストップ 少 子 化 地 方 元 気 戦 略 ( 平 成 26 年 5 月 8 日 )において 都 市 部 への 人 口 移 動 が 収 束 しない 前 提 で 20~39 歳 女 性 の 数 が 2040 年 までに 半 分 以 下 となる 自 治 体 の 数 の 割 合 が 70% 以 上 となる 都 道 府 県 は 同 50% 以 上 70% 未 満 の 都 道 府 県 は 同 50% 未 満 福 島 県 については 同 数 値 は 不 明 ( 出 所 ) 保 険 研 究 所 インシュアランス 統 計 号 総 務 省 人 口 推 計 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 Ⅱ 地 方 銀 行 によるバンカシュアランスへの 期 待 地 方 において 人 材 の 候 補 として 期 待 されるのが 地 方 銀 行 や 第 二 地 銀 信 用 金 庫 信 用 組 合 農 協 ゆうちょ 銀 行 といった 地 方 金 融 機 関 の 職 員 である 新 たなニーズに 必 要 とな る 金 融 知 識 を 豊 富 に 有 し さらに 顧 客 の 資 産 状 況 についてもメイン バンクとして 一 定 の 情 報 を 持 っているからである 銀 行 の 窓 口 で 個 人 向 けの 生 命 保 険 商 品 の 販 売 いわゆるバンカシュアランスが 日 本 にお いて 本 格 的 に 開 始 されたのは 2005 年 12 月 1 からである このため 消 費 者 が 金 融 機 関 の 窓 口 で 保 険 を 購 入 することが 普 及 したのはここ 10 年 の 出 来 事 のようにとらえられがちで ある しかし 農 協 やゆうちょ 銀 行 を 含 めると 実 は 日 本 では 従 来 からバンカシュアラン スがかなり 浸 透 している 状 況 にあるともいえる 1 銀 行 による 保 険 販 売 の 解 禁 は 2001 年 4 月 からで 当 初 は 団 体 信 用 生 命 保 険 長 期 火 災 保 険 住 宅 関 連 債 務 返 済 支 援 保 険 海 外 旅 行 傷 害 保 険 に 限 定 されていたが 徐 々に 取 扱 商 品 の 種 類 が 緩 和 されていった 2002 年 10 月 には 個 人 年 金 保 険 財 形 保 険 年 金 払 積 立 傷 害 保 険 財 形 傷 害 保 険 2005 年 12 月 には 一 時 払 い 終 身 保 険 一 時 払 い 養 老 保 険 積 立 火 災 保 険 積 立 傷 害 保 険 及 びその 他 貯 蓄 型 の 商 品 について 解 禁 され 2007 年 12 月 に 全 面 解 禁 された 99
野 村 資 本 市 場 クォータリー 2014 Autumn 個 人 保 険 の 保 有 契 約 件 数 で 見 ると ほとんどの 都 道 府 県 において 郵 便 局 で 販 売 される かんぽ 及 び 農 協 で 販 売 される JA 共 済 の 合 計 のシェアが 2-3 割 に 達 している 預 貯 金 にお けるゆうちょ 銀 行 と 農 協 の 合 計 のシェアとほぼ 同 じような 状 況 ともいえよう( 図 表 3 参 照 ) したがって 特 にかんぽや JA 共 済 のシェアが 高 い 地 方 の 消 費 者 にとっては 金 融 機 関 の 担 当 者 から 保 険 を 購 入 するということ 自 体 には それほどの 抵 抗 がないものと 想 像 される 実 際 にかんぽや JA 共 済 による 個 人 保 険 や 個 人 年 金 の 販 売 シェアが 高 い 地 域 ほど 貯 蓄 に 占 める 保 険 の 割 合 が 高 いという 関 係 も 見 られ 保 険 商 品 が 地 方 において 重 要 な 貯 蓄 手 段 の 一 つとなっていることが 伺 える( 図 表 4) 図 表 3 農 協 と 郵 便 局 が 預 貯 金 と 個 人 保 険 に 占 めるシェア 45% 40% 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 0% 東 京 大 阪 神 奈 川 千 葉 埼 玉 愛 知 京 都 福 岡 沖 縄 奈 良 兵 庫 青 森 宮 城 栃 木 群 馬 北 海 道 静 岡 富 山 大 分 鳥 取 滋 賀 茨 城 三 重 岡 山 長 崎 広 島 岐 阜 石 川 山 梨 熊 本 福 井 徳 島 山 形 和 歌 山 山 口 佐 賀 鹿 児 島 高 知 新 潟 岩 手 愛 媛 香 川 秋 田 福 島 宮 崎 長 野 島 根 全 国 農 協 ( 預 金 ) ゆうちょ( 預 金 ) 農 協 ( 個 人 保 険 ) かんぽ( 個 人 保 険 ) ( 注 ) 1. 2013 年 3 月 末 2. 個 人 保 険 は 保 有 契 約 金 額 によるシェア かんぽには 旧 簡 易 保 険 の 契 約 も 含 まれる ( 出 所 ) 金 融 ジャーナル 金 融 マップ 2014 年 版 保 険 研 究 所 インシュアランス 統 計 号 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 貯 蓄 に 占 める 生 命 保 険 の 割 合 (2009 年 ) 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 図 表 4 貯 蓄 に 占 める 生 命 保 険 の 割 合 とかんぽ 及 び JA 共 済 のシェアとの 関 係 大 阪 東 京 埼 玉 奈 良 千 葉 兵 庫 神 奈 川 愛 知 三 重 沖 縄 宮 城 青 森 佐 賀 鹿 児 島 宮 崎 岩 手 長 崎 山 形 秋 田 島 根 貯 蓄 に 占 める 生 命 保 険 の 割 合 (2009 年 ) 35% 30% 25% 20% 15% 10% 5% 青 森 宮 城 大 阪 東 京 埼 玉 千 葉 奈 良 兵 庫 愛 知 神 奈 川 三 重 沖 縄 宮 崎 佐 賀 鹿 児 島 長 崎 山 形 岩 手 秋 田 島 根 0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 相 関 係 数 =0.497786 個 人 保 険 に 占 めるかんぽとJA 共 済 の 合 計 シェア (2008 年 ) 0% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 相 関 係 数 =0.551564 個 人 年 金 に 占 めるかんぽとJA 共 済 の 合 計 シェア (2008 年 ) ( 注 ) 1. 個 人 保 険 は 保 有 契 約 金 額 個 人 年 金 は 保 有 契 約 件 数 2. 貯 蓄 に 占 める 生 命 保 険 の 割 合 は 2 人 以 上 世 帯 の 数 値 で 2009 年 11 月 末 の 値 3. の 違 いについては 図 表 2 の 注 を 参 照 ( 出 所 ) 総 務 省 平 成 21 年 全 国 消 費 実 態 調 査 保 険 研 究 所 インシュアランス 統 計 号 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 100
地 方 金 融 機 関 の 連 携 と 保 険 サービスの 提 供 一 方 で これまで 地 方 においてバンカシュアランスを 展 開 してきたかんぽ 及 び JA 共 済 が 今 後 高 齢 化 とともに 地 方 において 急 速 に 変 化 していく 消 費 者 の 保 険 ニーズに 十 分 に 応 えられるかどうかはわからない かんぽには 現 状 では 契 約 金 額 や 商 品 種 類 に 制 限 があり JA 共 済 は 営 業 拠 点 である 店 舗 が 急 速 に 減 少 してきている 状 況 にある 個 人 保 険 と 年 金 の 保 有 契 約 件 数 を 見 ると かん ぽは 両 商 品 ともここ 10 年 で 大 幅 な 減 少 となっており JA 共 済 は 足 元 では 伸 びてはいるも のの 地 方 銀 行 や 信 用 金 庫 の 窓 販 を 活 用 している 民 間 保 険 会 社 との 差 が 開 いている( 図 表 5 参 照 ) こうした 中 預 金 や 貸 出 などの 金 融 サービスにおいて 地 方 で 最 大 のシェアを 握 っている 地 方 銀 行 が 顧 客 ニーズに 沿 った 真 のバンカシュアランスを 本 格 的 に 提 供 していくことの 意 義 は 大 きいものと 思 われる 現 在 銀 行 による 保 険 の 窓 口 販 売 の 中 心 となっているのは 変 額 年 金 や 定 額 年 金 さら に 一 時 払 い 終 身 保 険 である 定 額 年 金 では 生 命 保 険 会 社 全 体 の 販 売 の 2 割 変 額 年 金 では 9 割 弱 を 占 め 終 身 保 険 を 含 む 死 亡 保 険 でも 1 割 弱 を 占 めるようになっている( 図 表 6 参 照 ) 銀 行 が 提 供 する 貯 蓄 商 品 との 親 和 性 が 高 い 商 品 から 徐 々に 浸 透 し 今 後 銀 行 の 行 員 の 保 険 に 対 する 知 識 の 向 上 とともに 様 々なニーズに 合 わせた 保 険 商 品 の 販 売 も 増 加 し ていくことが 期 待 される 図 表 5 個 人 保 険 個 人 年 金 の 保 有 契 約 件 数 の 推 移 (2003 年 =100) 160 140 120 100 80 60 40 20 0 民 間 生 保 ( 個 人 保 険 ) 民 間 生 保 ( 個 人 年 金 ) JA 共 済 ( 個 人 保 険 ) JA 共 済 ( 個 人 年 金 ) かんぽ( 個 人 保 険 ) かんぽ( 個 人 年 金 ) ( 注 ) 2003 年 を 100 として 指 数 化 かんぽには 旧 簡 易 保 険 の 契 約 も 含 まれる ( 出 所 ) 保 険 研 究 所 インシュアランス 統 計 号 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 図 表 6 銀 行 による 保 険 の 窓 口 販 売 が 商 品 毎 の 新 契 約 件 数 全 体 に 占 める 割 合 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 死 亡 保 険 0.5% 0.4% 1.1% 3.7% 8.0% 養 老 保 険 等 0.0% 0.0% 0.1% 1.1% 3.0% 定 額 年 金 22.3% 14.2% 19.0% 22.4% 23.9% 変 額 年 金 78.6% 78.3% 83.1% 86.2% 88.4% 医 療 保 険 等 0.0% 0.1% 1.9% 2.2% 2.0% ( 注 ) 個 人 保 険 個 人 年 金 の 新 契 約 件 数 で 転 換 を 含 んだ 数 値 ( 出 所 ) 金 融 庁 銀 行 等 による 保 険 募 集 に 関 するモニタリング 結 果 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 101
野 村 資 本 市 場 クォータリー 2014 Autumn 図 表 7 銀 行 による 保 険 販 売 に 対 する 制 限 措 置 構 成 員 契 約 規 制 ( 施 行 規 則 第 234 条 第 1 項 第 2 号 監 督 指 針 Ⅱ-3-3-2) 自 社 及 びグループ 会 社 等 の 役 員 や 従 業 員 に 対 して 生 命 保 険 契 約 の 申 込 みをさせること または 既 に 成 立 している 生 命 保 険 契 約 を 消 滅 させる 行 為 を 禁 止 ただし 医 療 保 険 や 介 護 保 険 等 の 第 三 分 野 商 品 ( 死 亡 保 険 金 が 入 院 給 付 額 の100 倍 を 超 えない)は 対 象 外 グループ 会 社 等 とは 資 本 関 係 人 的 関 係 その 他 設 立 の 経 緯 や 取 引 関 係 からみて 法 人 代 理 店 ( 銀 行 )と 密 接 な 関 係 を 有 する 法 人 事 業 性 融 資 の 貸 出 先 法 人 への 募 集 制 限 ( 施 行 規 則 第 212 条 第 3 項 第 1 号 監 督 指 針 Ⅱ-3-3-9-4) 募 集 制 限 先 は 事 業 性 資 金 の 貸 出 先 である 法 人 その 代 表 者 個 人 事 業 主 従 業 員 が20 人 以 下 の 企 業 の 役 員 及 び 従 業 員 従 業 員 数 が21 人 以 上 50 人 以 下 の 貸 出 先 である 法 人 の 役 員 及 び 従 業 員 の 場 合 は 生 存 または 死 亡 保 険 の 保 険 金 額 は1000 万 円 以 下 診 断 等 給 付 金 ( 一 時 金 )は1 保 険 事 故 につき100 万 円 以 下 診 断 等 給 付 金 ( 年 金 )は 月 換 算 金 額 5 万 円 以 下 入 院 給 付 金 は 日 額 5000 円 以 下 ( 特 定 の 疾 病 の 場 合 は1 万 円 以 下 ) 手 術 給 付 金 は1 手 術 につき20 万 円 以 下 ( 特 定 の 疾 病 の 場 合 は40 万 円 以 下 ) ただし 住 宅 ローン 関 連 保 険 個 人 年 金 保 険 財 形 保 険 個 人 契 約 の 一 時 払 い 終 身 保 険 一 時 払 い 養 老 保 険 は 対 象 外 ( 出 所 ) 金 融 庁 規 則 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 一 方 で 銀 行 によってより 本 格 的 な 保 険 サービスが 地 方 部 で 展 開 されるためには 保 険 業 法 改 正 時 に 銀 行 の 業 務 上 の 立 場 等 を 利 用 した 圧 力 販 売 を 排 除 するために 導 入 された 保 険 販 売 制 限 の 見 直 しも 検 討 が 必 要 になるだろう 現 在 銀 行 の 保 険 の 窓 販 に 対 しては 自 行 及 びグループ 会 社 等 の 役 職 員 に 対 して 保 険 が 販 売 できない 構 成 員 契 約 規 制 と 貸 出 などで 付 き 合 いのある 小 規 模 な 事 業 法 人 の 役 職 員 に 対 して 保 険 の 販 売 が 制 限 される 事 業 性 融 資 の 貸 出 先 法 人 への 募 集 制 限 という 二 つの 販 売 制 限 がかけられている( 図 表 7 参 照 ) 構 成 員 契 約 規 制 におけるグループ 会 社 等 の 定 義 は 資 本 関 係 だけでなく 人 的 関 係 や 設 立 経 緯 取 引 関 係 など 非 常 に 幅 広 く 設 定 さ れている 地 方 金 融 機 関 は 地 域 経 済 において 重 要 な 役 割 を 担 っており 地 域 におけるネッ トワークも 複 雑 で 広 範 囲 に 及 ぶ また 地 方 金 融 機 関 の 融 資 先 には 小 規 模 な 事 業 者 も 多 い 現 在 販 売 の 主 流 となっている 個 人 年 金 や 一 時 払 い 終 身 保 険 医 療 保 険 などは 販 売 制 限 の 対 象 外 であるが 相 続 や 資 産 承 継 などより 複 雑 なニーズに 対 して 金 融 と 保 険 を 融 合 した サービスを 展 開 していく 上 では 販 売 制 限 が 大 きな 制 約 となり 得 る 販 売 制 限 の 当 初 の 目 的 である 銀 行 による 圧 力 販 売 はもちろん 排 除 されなければならないが 一 律 の 販 売 制 限 では なく 既 存 の 金 融 ADR 制 度 ( 金 融 分 野 における 裁 判 外 紛 争 解 決 制 度 )を 活 用 するなど より 柔 軟 な 制 度 への 移 行 が 望 まれる Ⅲ 欧 州 では 銀 行 グループが 保 険 事 業 を 保 有 銀 行 による 保 険 販 売 は 世 界 的 に 見 ても 決 して 珍 しいものではなく 特 に 銀 行 による 保 険 業 務 を 認 めるユニバーサル バンク 制 度 を 採 用 してきた 欧 州 においては 販 売 ルート の 半 分 以 上 が 銀 行 という 国 も 多 い( 図 表 8 9 参 照 ) また アジアにおいても 中 国 や 韓 102
地 方 金 融 機 関 の 連 携 と 保 険 サービスの 提 供 図 表 8 欧 州 における 生 命 保 険 のチャネル 毎 の 販 売 シェア(2011 年 保 険 料 収 入 ベース) 直 販 代 理 人 ブローカー バンカシュアランス その 他 ポルトガル 3.8% 17.3% 1.2% 77.5% 0.2% トルコ 10.5% 13.7% 0.6% 75.2% 0.0% イタリア 9.5% 16.4% 1.0% 73.1% 0.0% スペイン 6.8% 13.1% 8.4% 69.0% 2.7% フランス 17.0% 7.0% 12.0% 61.0% 3.0% オーストリア 23.2% 4.0% 16.7% 51.7% 4.4% ベルギー 17.5% 5.6% 32.3% 44.0% 0.7% マルタ 1.3% 63.0% 3.2% 32.5% 0.0% ポーランド 34.6% 25.8% 1.9% 30.0% 7.7% ルクセンブルグ 11.4% 60.0% 3.7% 25.0% 0.0% ドイツ 3.4% 49.8% 24.4% 19.8% 2.6% クロアチア 39.4% 34.3% 2.5% 19.3% 4.5% スウェーデン 17.0% 5.0% 31.0% 14.0% 33.0% ルーマニア 10.6% 55.0% 20.8% 13.6% 0.0% スロベニア 4.4% 78.8% 9.5% 7.3% 0.0% ( 注 ) 2011 年 スペインとルーマニアは 2010 年 ドイツ スウェーデン 英 国 は 新 契 約 ( 出 所 ) 欧 州 保 険 協 会 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 図 表 9 世 界 のバンカシュアランスのランキング(2012 年 保 険 料 収 入 ベース) 順 位 会 社 名 本 店 所 在 国 収 入 保 険 料 (10 億 USドル) 1 Crédit Agricole フランス 290 2 ING Group オランダ 261 3 BNP Paribas フランス 255 4 Bradesco ブラジル 211 5 Crédit Mutuel フランス 152 6 Lloyds Banking Group 英 国 131 7 Société Générale フランス 131 8 HSBC 英 国 130 9 農 業 銀 行 韓 国 91 10 Intesa Sanpaolo イタリア 73 11 KBC Group ベルギー 73 12 Groupe BPCE フランス 71 13 Nordea Group スウェーデン 71 14 ANZ オーストラリア 62 15 RBS Group 英 国 59 16 BBVA スペイン 54 17 OCBC シンガポール 53 18 Desjardins Group カナダ 51 19 Banco do Brasil ブラジル 49 20 UniCredit イタリア 48 小 計 2,316 その 他 世 界 上 位 125 位 以 内 のリテール バンキング グループ 1,055 合 計 3,370 ( 注 ) 2012 年 農 業 銀 行 Banco do Brasil は 2011 年 の 値 ( 出 所 )Finaccord 資 料 より 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 国 台 湾 やマレーシア シンガポールなどで 銀 行 窓 販 が 進 展 している そうしたバンカシュアランスが 浸 透 している 国 においては 金 融 グループの 内 部 に 保 険 会 社 を 抱 え 自 ら 保 険 引 受 事 業 を 行 うケースも 多 い また 貯 蓄 銀 行 や 信 用 金 庫 といった 地 方 の 金 融 機 関 がグループを 形 成 し グループに 商 品 を 提 供 する 保 険 子 会 社 を 共 同 で 保 有 するケースも 見 られる 例 えば 世 界 のバンカシュアランスの 順 位 2 で 1 位 にランクされ 2 2012 年 保 険 料 収 入 ベース 103
野 村 資 本 市 場 クォータリー 2014 Autumn る( 図 表 9 参 照 )フランスの 金 融 グループのクレディ アグリコルは 39 の 地 域 金 庫 に よって 保 有 される 全 国 機 関 であり その 傘 下 に 生 命 保 険 会 社 の Predica 損 害 保 険 会 社 の Pacifica 信 用 保 険 会 社 の CACI を 抱 え 7,000 を 超 える 支 店 に 保 険 を 提 供 している 3 社 を 合 わせた 保 険 料 収 入 は 欧 州 の 保 険 会 社 グループの 中 で 第 9 位 の 規 模 で フランスでは アクサ CNP に 次 ぐ 第 3 位 である この 他 にも フランスの 19 の 庶 民 銀 行 (Banque Populare)と 17 の 貯 蓄 銀 行 (Caisses d Epargne)に 保 有 される BPCE グループ 3 ドイツの 貯 蓄 銀 行 423 行 がグループとなって いる 貯 蓄 銀 行 グループ 同 じくドイツの 1,078 の 信 用 組 合 に 保 有 される DZ バンク グ ループ オランダの 129 の 農 林 系 金 融 機 関 に 保 有 されるラボバンク グループなどがグ ループ 傘 下 にサービスを 提 供 する 保 険 会 社 を 抱 えている 日 本 において 全 国 の 農 協 が 全 国 共 済 農 業 協 同 組 合 連 合 会 (JA 共 済 )の 共 済 を 取 り 扱 い 郵 便 局 がかんぽ 生 命 の 保 険 を 取 り 扱 うのと 類 似 した 形 態 だともいえよう Ⅳ 効 率 的 効 果 的 な 保 険 サービスの 提 供 へ 向 けて 現 在 窓 販 解 禁 以 降 に 保 険 の 取 り 扱 いを 開 始 した 銀 行 や 信 用 金 庫 は 複 数 の 生 命 保 険 会 社 から 商 品 を 供 給 される 形 で 保 険 を 販 売 している 保 険 を 販 売 することで 手 数 料 を 収 入 と して 得 ており 低 金 利 の 環 境 下 預 貸 業 務 の 収 入 が 低 迷 する 中 で 重 要 な 収 益 源 にもなっ ている 複 数 の 会 社 の 商 品 を 取 り 扱 うことで 消 費 者 のニーズに 最 も 適 した 商 品 を 選 択 して 提 供 できるというメリットがある 一 方 で 商 品 の 設 計 や 販 売 後 のアフターケアの 多 くを 他 の 機 関 に 依 存 する 状 況 となる このことから 自 らコントロールが 効 かない 形 で 不 測 のリスク を 被 ることもありうる 例 えば 2000 年 代 半 ばに 変 額 年 金 がブームとなった 際 には そ の 後 株 価 の 低 迷 によって 最 低 保 証 リスクに 直 面 した 保 険 会 社 が 相 次 いで 販 売 を 停 止 した り 市 場 から 撤 退 する 動 きが 出 て 商 品 を 販 売 した 預 金 者 からの 問 い 合 わせなどへの 対 応 が 必 要 となった 先 述 したように 今 後 日 本 においては 総 合 的 な 金 融 コンサルティング サービスの 一 環 として 保 険 や 年 金 商 品 が 重 要 な 役 割 を 果 たすことが 予 想 されるため 保 険 の 販 売 にお いて 銀 行 の 窓 販 が 日 本 においても 主 流 となっていく 可 能 性 は 高 い 短 期 間 のうちに 年 金 保 険 の 販 売 の 8 割 を 銀 行 が 担 う 状 況 となっていることにもその 潮 流 が 現 れていると 言 え よう こうした 中 自 らの 顧 客 に 合 わせた 商 品 設 計 の 柔 軟 性 を 確 保 し また 保 険 の 引 き 受 け から 得 られる 収 益 を 享 受 するために 金 融 機 関 が 自 ら 保 険 会 社 を 保 有 し 保 険 事 業 に 乗 り 出 すという 選 択 肢 も 考 えられよう 保 険 事 業 は 規 模 の 経 済 が 働 くビジネスであり 地 方 の 金 3 子 会 社 の 他 に Caisses d Epargne は 保 険 料 収 入 で 欧 州 第 8 位 フランス 第 2 位 の CNP からも 保 険 商 品 の 供 給 を 受 けている CNP はフランスの 郵 便 貯 金 銀 行 (La Banque Postale)にも 保 険 商 品 を 供 給 しており Ciasees d Epargne と 郵 便 貯 金 銀 行 が 共 同 で CNP に 対 して 36.3%を 出 資 している 104
地 方 金 融 機 関 の 連 携 と 保 険 サービスの 提 供 図 表 10 地 方 銀 行 9 行 による 地 域 再 生 活 性 化 ネットワーク( 協 定 書 )による 主 な 連 携 内 容 (1) 各 種 金 融 手 法 を 活 用 した 資 金 の 供 給 および M&A 事 業 承 継 等 のスポンサー 紹 介 やビジネスマッチ ング 業 務 を 含 む 情 報 の 提 供 (2) 各 行 が 保 有 するグループ 会 社 機 能 の 提 供 に 関 して 相 互 に 連 携 して 検 討 協 力 するとともに (3)これらの 業 務 機 能 提 供 に 係 るノウハウの 共 有 高 度 化 を 図 ることを 目 的 とした 参 加 行 間 の 情 報 交 換 会 や 共 同 研 修 の 開 催 を 通 じて 専 門 人 材 の 育 成 交 流 などにも 取 組 む ( 注 ) ネットワーク 参 加 行 は 北 海 道 銀 行 七 十 七 銀 行 千 葉 銀 行 八 十 二 銀 行 静 岡 銀 行 京 都 銀 行 広 島 銀 行 伊 予 銀 行 福 岡 銀 行 の 計 9 行 ( 出 所 ) 静 岡 銀 行 ニュース リリースより 野 村 資 本 市 場 研 究 所 作 成 融 機 関 が 行 う 際 には 欧 州 の 例 のように 広 域 にわたる 連 携 を 利 用 することも 効 率 的 である 現 在 地 域 経 済 の 活 性 化 を 目 的 に 地 方 銀 行 の 連 携 や 再 編 が 議 論 されており 2014 年 1 月 28 日 には 大 手 地 銀 9 行 による 地 域 再 生 活 性 化 ネットワーク が 締 結 された 業 務 提 携 の 内 容 は 顧 客 企 業 の 相 互 の 紹 介 を 通 じた M&A やビジネスマッチング さら にそれらに 付 随 した 金 融 サービスの 提 供 といった どちらかというと 銀 行 の 投 融 資 ビジネ スが 中 心 となっているが( 図 表 10 参 照 ) 保 険 サービスなど 金 融 の 一 部 のファンクショ ンを 共 有 化 し 効 率 的 に 地 方 において 総 合 金 融 サービスを 展 開 していくという 連 携 の 姿 も あり 得 るのではなかろうか また 現 在 農 協 改 革 の 一 環 として 農 協 が 提 供 してきた 信 用 事 業 及 び 共 済 事 業 の 改 革 も 議 論 されている その 中 では 他 業 態 との 連 携 を 容 易 にするために 系 統 上 位 機 関 を 株 式 会 社 化 することも 検 討 されている 4 さらに 地 方 にユニバーサル 展 開 するゆうちょ 銀 行 の 親 会 社 である 日 本 郵 政 の 上 場 準 備 も 着 々と 進 められている 地 方 の 金 融 機 関 は 高 齢 化 の 進 展 などによって 事 業 の 効 率 化 が 必 要 となる 一 方 で 地 方 経 済 の 活 性 化 へ 向 けたより 一 層 の 貢 献 が 求 められている フランスの Caisses d Epargne と 郵 便 貯 金 銀 行 のように 互 い のネットワークを 生 かすために 業 態 を 越 えた 連 携 を 行 うということも 今 後 の 検 討 に 値 する のではなかろうか 4 規 制 改 革 会 議 規 制 改 革 に 関 する 第 2 答 申 ~ 加 速 する 規 制 改 革 ~ (2014 年 6 月 13 日 ) P60 を 参 照 105