GSS1602_P024-034.indd



Similar documents
<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

Microsoft Word - 奨学金相談Q&A.rtf

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情


容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

平成24年度 業務概況書

Microsoft Word )40期決算公開用.doc

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

第一部【証券情報】


<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>


1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

別紙3

Microsoft Word - 全国エリアマネジメントネットワーク規約.docx

●電力自由化推進法案

(4) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている.

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

m07 北見工業大学 様式①

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

第 40 回 中 央 近 代 化 基 金 補 完 融 資 推 薦 申 込 み 公 募 要 綱 1 公 募 推 薦 総 枠 30 億 円 一 般 物 流 効 率 化 促 進 中 小 企 業 高 度 化 資 金 貸 付 対 象 事 業 の 合 計 枠 2 公 募 期 間 平 成 28 年 6 月 20

公表表紙

平 成 27 年 度 第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 の 運 用 資 産 額 は 2 兆 4,339 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +2.05%となりました 実 現 収 益 率 は +1.19%です

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

財政再計算結果_色変更.indd

募集新株予約権(有償ストック・オプション)の発行に関するお知らせ

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

第 3 四 半 期 運 用 状 況 の 概 要 第 3 四 半 期 末 の 運 用 資 産 額 は 2,976 億 円 となりました 第 3 四 半 期 の 修 正 総 合 収 益 率 ( 期 間 率 )は +1.79%となりました なお 実 現 収 益 率 は +0.67%です 第 3 四 半 期

一般競争入札について

18 国立高等専門学校機構

波佐見町の給与・定員管理等について

企業結合ステップ2に関連するJICPA実務指針等の改正について③・資本連結実務指針(その2)

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

消 費 ~ 軽 減 率 消 費 の 軽 減 率 制 度 が 消 費 率 10% 時 に 導 入 することとされています 平 成 26 年 4 月 1 日 平 成 27 年 10 月 1 日 ( 予 定 ) 消 費 率 5% 消 費 率 8% 消 費 率 10% 軽 減 率 の 導 入 平 成 26

Microsoft Word - H20中小会計指針新旧対照表 doc

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>


Taro-H19退職金(修正版).jtd

スライド 1

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

3 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 概 要 (1) 価 格 カルテル 山 形 県 の 庄 内 地 区 に 所 在 する5 農 協 が, 特 定 主 食 用 米 の 販 売 手 数 料 について, 平 成 23 年 1 月 13 日 に 山 形 県 酒 田 市 所 在 の 全 国 農 業 協

1_2013BS(0414)

二 資本金の管理

第316回取締役会議案

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

<4D F736F F F696E74202D2082C882E982D982C DD8ED88EE688F882CC82B582AD82DD C668DDA9770>

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

内 において 管 理 されている 上 場 株 式 等 のうち 非 課 税 管 理 勘 定 に 係 るもの( 新 規 投 資 額 で 毎 年 80 万 円 を 上 限 とします )に 係 る 配 当 等 で 未 成 年 者 口 座 に 非 課 税 管 理 勘 定 を 設 けた 日 から 同 日 の 属

c. 投 資 口 の 譲 渡 に 係 る 税 務 個 人 投 資 主 が 投 資 口 を 譲 渡 した 際 の 譲 渡 益 は 株 式 等 に 係 る 譲 渡 所 得 等 として 原 則 20%( 所 得 税 15% 住 民 税 5%)の 税 率 による 申 告 分 離 課 税 の 対 象 となりま

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 実施について.doc

1. 決 算 の 概 要 法 人 全 体 として 2,459 億 円 の 当 期 総 利 益 を 計 上 し 末 をもって 繰 越 欠 損 金 を 解 消 しています ( : 当 期 総 利 益 2,092 億 円 ) 中 期 計 画 における 収 支 改 善 項 目 に 関 して ( : 繰 越

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

16 日本学生支援機構

Microsoft Word - 【第17期】有価証券報告書(課税上の取り扱い)

<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

<4D F736F F D2095BD90AC E937890C590A789FC90B382CC8EE582C893E09765>

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

(Microsoft Word - \213\213\227^\201E\222\350\210\365\212\307\227\235\214\366\225\\\201iH \)\201iHP\227p\201j.doc)

<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>

Microsoft Word - 目次.doc

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 2 年 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 ( 注 ) 給 料 月 額 は 給 与 抑 制 措 置 を 行 う 前 のものです ( 単 位 : ) 3 職 員 の 平 均 給 与 月

本 校 の 沿 革 昭 和 21 年 昭 和 49 年 昭 和 54 年 昭 和 60 年 平 成 9 年 平 成 11 年 平 成 18 年 北 海 道 庁 立 農 業 講 習 所 として 発 足 北 海 道 立 農 業 大 学 校 に 改 組 修 業 年 限 を1 年 制 から2 年 制 に 改

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

< E95FB8CF689638AE98BC689FC90B390A CC8CA992BC82B582C982C282A282C E90E096BE8E9E8E9197BF2E786477>

養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

Microsoft Word - 【QA】外貨MMF受付停止.doc

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

1. 本 市 の 保 育 所 運 営 費 と 保 育 料 の 現 状 2 (1) 前 回 (5/29 5/29) 児 童 福 祉 専 門 分 科 会 資 料 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区 分 別 軽 減 率 国 基 準 に 対 する 本 市 の 保 育 料 階 層 区

12FBI特会vol1_01編.indd

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

1 書 誌 作 成 機 能 (NACSIS-CAT)の 軽 量 化 合 理 化 電 子 情 報 資 源 への 適 切 な 対 応 のための 資 源 ( 人 的 資 源,システム 資 源, 経 費 を 含 む) の 確 保 のために, 書 誌 作 成 と 書 誌 管 理 作 業 の 軽 量 化 を 図

スライド 1

1. 前 払 式 支 払 手 段 サーバ 型 の 前 払 式 支 払 手 段 に 関 する 利 用 者 保 護 等 発 行 者 があらかじめ 利 用 者 から 資 金 を 受 け 取 り 財 サービスを 受 ける 際 の 支 払 手 段 として 前 払 式 支 払 手 段 が 発 行 される 場 合

< 目 次 > 1 軽 四 輪 車 等 に 係 る 税 率 引 上 げ Q1 1 軽 四 輪 車 等 についてなぜ 標 準 税 率 を 引 き 上 げることにしたのですか? 3 Q1 2 自 家 用 乗 用 車 については 税 率 を 1.5 倍 に 引 き 上 げ それ 以 外 ( 貨 物 用 営

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>


1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

<4D F736F F D208C6F89638FEE95F182A082EA82B182EA C82542E646F6378>

< F2D91E F18BDF91E389BB955C8E D8E9689EF2E>

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

Transcription:

論 文 中 国 株 式 市 場 における 増 資 形 態 の 特 殊 性 同 志 社 大 学 経 済 学 研 究 科 教 授 新 関 三 希 代 同 志 社 大 学 経 済 学 研 究 科 後 期 課 程 兪 傑 1.はじめに 中 国 株 式 市 場 では 経 済 発 展 に 伴 う 資 金 需 要 の 大 幅 な 伸 びを 背 景 に 有 償 増 資 が 活 発 に 行 われている 日 本 や 米 国 においては 大 規 模 な 有 償 増 資 の 多 くが 公 募 増 資 によって 行 われ ているが 中 国 では 第 三 者 割 当 増 資 によって 実 施 されている 2005 年 10 の 新 証 券 法 によって 上 場 企 業 の 第 三 者 割 当 増 資 に 関 す る 規 定 が 整 備 されてから 2013 年 までに 上 海 深 圳 証 券 取 引 所 A 株 株 式 市 場 および 新 興 目 次 1.はじめに 2.IPOの 制 度 の 変 遷 と 概 況 3. 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 4. 第 三 者 割 当 増 資 の 実 証 分 析 5.おわりに 市 場 で 行 われた 第 三 者 割 当 増 資 は1,168 件 に 達 し 資 金 調 達 額 は21,301 億 元 にも 上 ってい る( 図 表 3 参 照 ) これは 公 募 増 資 による 資 金 調 達 額 の10 倍 になっており 普 通 株 式 の 新 規 発 行 総 額 の 約 8 割 を 占 める 水 準 に 達 して いる 一 方 新 規 公 開 増 資 (IPO)は2013 年 まで に1,160 件 に 達 し 資 金 調 達 額 は17,876 億 元 に も 上 っている( 図 表 2 参 照 ) しかし リー マンショック 後 の 中 国 株 式 市 場 の 低 迷 を 背 景 にIPOは 規 制 され 2013 年 におけるIPOの 件 数 は0 件 になっている とりわけ 中 国 A 株 株 式 市 場 でのIPOの 一 時 停 止 は 第 三 者 割 当 増 資 の 件 数 を 急 増 させることになった 資 本 市 場 が 整 備 されている 日 本 や 米 国 において このようなIPOの 停 止 ( 規 制 )は 考 えにくい 状 況 である 本 稿 では 中 国 特 有 の 増 資 形 態 IPOと 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 について 説 明 す る 24

( 図 表 1)IPO 制 度 の 変 遷 期 間 制 度 中 国 証 券 監 督 委 員 会 の 役 割 上 場 実 績 1980 年 代 半 ば ~1992 年 末 1993 年 ~ 1995 年 1996 年 ~ 2000 年 2001 年 ~ 2004 年 2004 年 ~ 規 則 無 審 批 制 枠 管 理 審 批 制 指 標 管 理 許 可 制 通 道 制 株 式 市 場 の 集 中 管 理 が 行 われる 1992 年 10 国 務 院 証 券 委 員 会 中 国 証 券 監 督 委 員 会 が 誕 生 する 政 府 が 毎 年 発 行 株 数 を 計 画 管 理 する 1993 年 は50 億 株 1995 年 は55 億 株 を 発 行 できることを 規 定 する 1996 年 は150 億 株 1997 年 は300 億 株 を 発 行 できること を 規 定 する 1997 年 7 1 日 証 券 法 を 実 施 する 総 合 型 の 証 券 会 社 に 規 模 に 応 じた 通 道 ( 主 幹 事 とし て 上 場 を 担 当 できる 会 社 数 ) を 与 える 許 可 制 新 規 上 場 の 是 非 を 個 別 に 審 査 認 可 する 保 証 推 薦 制 ( 資 料 ) 中 国 証 券 監 督 委 員 会 上 海 証 券 取 引 所 深 圳 証 券 取 引 所 のホームページより 作 成 1991 年 12 までに 中 国 全 国 の 株 式 会 社 は3,220 社 内 株 式 公 開 発 行 の 会 社 は89 社 1992 年 12 までに 上 海 深 圳 取 引 所 の 上 場 会 社 は53 社 発 行 済 株 式 数 は73.21 億 株 政 府 は 約 200 社 の 企 業 を 指 定 し 上 場 枠 を 与 える 資 金 調 達 額 は 約 400 億 元 政 府 は1,000 社 の 国 有 企 業 の 上 場 枠 を 決 定 する 業 界 大 手 企 業 の 上 場 を 優 先 させ 約 700 社 が 上 場 資 金 調 達 額 は4,000 億 元 超 上 場 会 社 は 約 200 社 資 金 調 達 額 は2,000 億 元 超 2013 年 までに 上 場 会 社 は1,160 社 資 金 調 達 額 は1 兆 7,876 億 元 さらに 中 国 における 第 三 者 割 当 増 資 の 多 くは 発 行 価 格 が 市 場 価 格 以 上 となるプレミ アム 状 態 で 実 施 されている( 図 表 9 参 照 ) これは 約 9 割 がディスカウント 状 態 で 実 施 されている 日 本 や 米 国 の 第 三 者 割 当 増 資 とは 大 きく 異 なる 点 である このような 特 殊 な 第 三 者 割 当 増 資 の 実 施 が 中 国 株 式 市 場 に 与 える 影 響 はどのようなものか 実 証 的 に 解 明 する 2.IPOの 制 度 の 変 遷 と 概 況 中 国 の 新 規 上 場 (IPO)の 制 度 は 図 表 1 のように ルールなし 政 府 主 導 そし て 政 府 審 査 認 可 という 三 つの 段 階 に 分 け られる 第 一 段 階 は 1980 年 代 の 半 ばから 中 国 証 券 監 督 委 員 会 が 設 立 された1992 年 10 ま でである この 時 期 は 新 規 上 場 に 関 する 具 体 的 なルールがなく 上 場 する 企 業 の 所 在 地 における 地 方 政 府 主 導 で 行 われていた 各 地 方 政 府 には 統 一 の 審 査 基 準 がなく 審 査 の 一 貫 性 に 欠 ける 問 題 が 深 刻 になっていた そこ で 新 規 上 場 のルール 作 りが 急 務 となり 中 国 証 券 監 督 委 員 会 が 誕 生 した 第 二 段 階 は 1993 年 から2000 年 までの 期 間 である 中 国 証 券 監 督 委 員 会 の 誕 生 によって 地 方 政 府 が 主 導 した 新 規 上 場 は 中 央 政 府 に よる 集 中 管 理 となった 具 体 的 に 政 府 は 国 有 企 業 の 中 で 標 的 企 業 を 選 出 し 発 行 株 数 や 公 募 価 格 まで 決 めていた この 段 階 で 約 900 社 の 国 有 企 業 が 上 場 し 資 金 調 達 額 は 約 5,000 億 元 となった しかし 政 府 が 選 んだ 企 業 しか 上 場 は 許 されず 業 績 悪 化 による 資 金 繰 りが 苦 しい 国 有 企 業 を 救 う 手 段 として 頻 繁 に 使 われていた そのため 市 場 の 効 率 性 が 低 下 し 中 国 株 式 市 場 の 発 展 にダメージを 与 えることになった 第 三 段 階 は2001 年 以 降 である とりわけ 大 きな 転 換 点 が2004 年 にある 2001 年 から 2004 年 までに 新 規 上 場 市 場 の 効 率 性 向 上 を 図 るため それまで 政 府 に 決 定 権 があった 発 行 25

( 図 表 2) 新 規 上 場 の 状 況 上 海 メインボード 深 圳 メインボード 中 小 板 創 業 板 年 度 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 2005 3 29 0 0 12 29 0 0 2006 13 1,180 0 0 52 161 0 0 2007 23 4,380 0 0 100 391 0 0 2008 5 734 0 0 71 301 0 0 2009 9 1,251 0 0 54 424 36 204 2010 26 1,920 0 0 204 2,028 117 963 2011 38 1,014 0 0 115 1,019 128 791 2012 25 356 0 0 55 349 74 351 2013 0 0 0 0 0 0 0 0 合 計 142 10,864 0 0 663 4,702 355 2,310 比 率 (%) 12.24 60.77 0.00 0.00 57.16 26.30 30.60 12.92 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベースより 作 成 規 模 ( 発 行 株 数 や 公 募 価 格 )に 関 して 国 有 証 券 会 社 が 決 定 できるようになった 具 体 的 に 政 府 は 証 券 会 社 の 規 模 に 応 じて 各 証 券 会 社 の 上 場 担 当 枠 を 決 めた 2004 年 以 降 こ の 枠 が 撤 廃 され 証 券 会 社 の 保 証 推 薦 ( 日 本 の 主 幹 事 にあたる)による 上 場 に 転 換 した このように 自 由 化 された 中 国 IPO 市 場 は 大 き く 発 展 し 2005 年 から2013 年 までに1,160 社 が 上 場 し その 資 金 調 達 額 は1 兆 7,876 億 元 に 達 した 図 表 2は 中 国 株 式 市 場 における 新 規 上 場 の 概 況 を 市 場 別 にまとめている 2005 年 以 降 大 型 IPOは 上 海 メインボード( 日 本 の 東 証 1 部 にあたる)に 上 場 中 小 ベンチャー 企 業 のIPOは 深 圳 取 引 所 傘 下 の 中 小 板 創 業 板 ( 日 本 のマザーズにあたる)に 上 場 している IPO 制 度 の 自 由 化 は 中 小 企 業 の 資 金 調 達 の 追 い 風 となり 2005 年 から2013 年 までの 中 小 板 創 業 板 のIPOの 件 数 は 全 体 の9 割 弱 を 占 めた ただし 発 行 審 査 委 員 会 の 限 られたメ ンバー(メインボード:25 名 創 業 板 :35 名 ) での 審 査 数 には 限 りがあり 現 状 では 上 場 を 希 望 する 多 くの 企 業 が 審 査 待 ちの 状 態 にあ る 実 際 2015 年 7 の 時 点 で563 社 の 企 業 が 審 査 会 議 の 待 機 状 態 にある こうした 状 況 は IPO 行 列 問 題 として 指 摘 されてきた 多 くの 企 業 を 上 場 させることが 資 金 面 でマー ケットに 悪 影 響 を 及 ぼしていたことから 2005 年 以 降 上 場 の 一 時 停 止 が4 回 も 行 われ ていた こ の IPO 行 列 問 題 を 解 消 す る た め 2015 年 6 に 中 国 証 券 監 督 委 員 会 は 登 録 制 改 革 を 検 討 することを 発 表 した 登 録 制 改 革 の 実 施 により 新 規 上 場 における 審 査 は 市 場 に 委 ねられた これにより 審 査 の 効 率 化 が 実 現 され 適 切 な 資 金 配 分 を 促 すことが 図 られた しかし 登 録 制 改 革 の 実 施 には 証 券 法 の 改 正 が 必 要 となり 現 在 中 国 証 券 監 督 26

( 図 表 3) 三 つの 増 資 の 概 況 第 三 者 割 当 増 資 公 募 増 資 株 主 割 当 増 資 年 度 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 2005 1 127 3 267 3 6 2006 49 809 6 102 2 4 2007 145 2,634 30 675 7 228 2008 107 1,646 28 518 9 152 2009 117 2,674 13 232 10 106 2010 153 2,985 10 377 18 1,438 2011 175 3,530 10 289 15 422 2012 155 3,374 6 115 7 121 2013 266 3,522 5 70 13 476 合 計 1,168 21,301 111 2,645 84 2,953 比 率 (%) 85.69 79.19 8.15 9.84 6.16 10.97 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベースより 作 成 委 員 会 がどこまで 権 限 を 縮 小 するかが 注 目 さ れている IPOの 一 時 停 止 は 2012 年 11 から2014 年 1 までの14ヶ 間 が 最 も 長 いものであっ た リーマンショック 後 上 海 指 数 は2009 年 6 の3,400ポイントから2012 年 11 の2,000 ポイントまで 大 きく 下 落 した その 間 上 場 待 ちの 企 業 が800 社 にも 上 り 新 規 上 場 によ る 株 式 市 場 の 拡 大 がさらなる 株 価 下 落 を 招 く リスクが 生 じていた このリスクを 回 避 する ため 中 国 証 券 監 督 委 員 会 は 新 規 公 開 の 企 業 に 対 するより 厳 しい 精 査 を 行 い 実 質 的 に 新 規 上 場 をストップさせた 3. 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 図 表 3は 2005 年 から2013 年 にかけての 中 国 A 株 株 式 市 場 で 行 われた 第 三 者 割 当 増 資 公 募 増 資 そして 株 主 割 当 増 資 の 概 況 をまと めている 2005 年 に 第 三 者 割 当 増 資 に 関 する 法 律 が 整 備 されて 以 降 件 数 や 調 達 資 金 額 が 著 しく 伸 びていることが 確 認 できる ( 注 1) 2008 年 にリーマンショックの 影 響 を 受 けてや や 減 少 しているが 2009 年 以 降 再 び 増 加 傾 向 を 示 している これに 対 して 公 募 増 資 の 件 数 等 は リーマンショック 以 降 回 復 の 様 子 が 見 られない また 株 主 割 当 増 資 の 件 数 等 は 増 加 と 減 少 の 変 動 が 大 きい 2013 年 ま で に 第 三 者 割 当 増 資 の 件 数 は 1,168 件 に 上 り 増 資 額 は21,301 億 元 ( 約 408,445 億 円 )に 達 している これらはいず れも 全 体 の 約 8 割 を 占 めており 有 償 増 資 の 多 くが 第 三 者 割 当 増 資 で 行 われていることが わかる 日 本 においても2005 年 から2013 年 に かけての 第 三 者 割 当 増 資 の 件 数 は 合 計 で 996 件 と 全 体 の 約 7 割 を 占 めている しかし その 調 達 額 ( 合 計 で44,290 億 円 )は 有 償 増 資 全 体 の3 割 弱 にすぎない これは 米 国 と 27

( 図 表 4) 第 三 者 割 当 増 資 の 特 徴 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベースより 作 成 同 様 日 本 においての 大 規 模 な 資 金 調 達 が 公 募 増 資 ( 調 達 額 の 合 計 は78,640 億 円 )によっ て 実 施 されていることを 意 味 している ( 注 2) 中 国 における 公 募 増 資 の 調 達 額 合 計 が2,645 億 元 ( 約 50,718 億 円 )であることから 増 資 規 模 において 公 募 増 資 と 第 三 者 割 当 増 資 が 日 本 と 中 国 で 対 称 的 になっていることがわか る 中 国 においては 公 募 増 資 に 関 して 厳 格 な 規 制 が 存 在 する ( 注 3) そのため 日 本 や 米 国 で 行 われているような 公 募 増 資 の 案 件 を 実 施 することができず 代 替 手 段 として 第 三 者 割 当 増 資 を 用 いた 資 金 調 達 が 行 われている つまり 中 国 では 広 く 一 般 投 資 家 からの 資 金 調 達 が 可 能 な 場 合 であっても 第 三 者 割 当 増 資 で 資 金 調 達 が 行 われている さらに 2013 年 の 第 三 者 割 当 増 資 の 件 数 は 2012 年 の155 件 より111 件 も 増 加 している そ のうち 機 関 投 資 家 による 引 き 受 けの 件 数 は 37 件 から73 件 に 倍 増 している これは 上 述 のように2012 年 11 から2014 年 1 にかけ て 中 国 A 株 株 式 市 場 でIPOが 長 期 間 停 止 し たことによる 影 響 である 中 国 証 券 監 督 委 員 会 は 約 800 社 の 企 業 を 新 規 上 場 させた 場 合 の 更 なる 市 場 の 混 乱 を 避 けるため IPOを 一 時 停 止 させたのである このようなベア 市 場 環 境 の 下 ファンドは 運 用 パフォーマンスを 向 上 させるべく 第 三 者 割 当 増 資 に 積 極 的 に 参 加 した また IPO 申 し 込 み 専 門 ファンドも 第 三 者 割 当 増 資 の 引 き 受 けに 方 針 を 転 じた これによって 第 三 者 割 当 増 資 の 実 施 がさら に 増 加 していった 図 表 4は 2006 年 から2013 年 までの 第 三 者 割 当 増 資 の 一 件 当 たりの 発 行 金 額 と 株 式 発 行 率 を 示 している 一 件 当 たりの 株 式 発 行 率 は 各 年 度 いずれも30%を 上 回 っており 2011 年 と2012 年 は50%を 超 えている 一 方 日 本 や 米 国 の 場 合 は 一 件 当 たりの 株 式 発 行 率 が 約 20 28

( 図 表 5) 市 場 別 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 上 海 メインボード 深 圳 メインボード 中 小 板 創 業 板 年 度 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 2006 26 439 20 352 3 18 0 0 2007 99 2,009 38 588 8 37 0 0 2008 62 1,013 35 545 10 88 0 0 2009 73 1,883 27 678 17 114 0 0 2010 74 1,812 37 863 42 310 0 0 2011 81 2,065 39 1,065 55 399 0 0 2012 74 2,056 38 899 38 405 5 14 2013 115 1,975 55 961 75 511 21 75 合 計 604 13,253 289 5,950 248 1,881 26 89 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベースより 作 成 ( 図 表 6) 業 種 別 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 製 造 業 通 信 情 報 不 動 産 業 棚 卸 小 売 業 年 度 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 2006 26 457 3 36 9 144 2 18 2007 70 903 10 58 25 251 4 39 2008 49 485 11 110 16 498 6 88 2009 51 619 10 183 19 589 8 120 2010 81 988 19 332 4 59 10 165 2011 88 1,471 24 201 7 196 12 217 2012 72 959 24 270 2 24 9 125 2013 146 1,862 51 449 0 0 8 64 合 計 583 7,744 152 1,638 82 1,761 59 835 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベースより 作 成 %であり 中 国 第 三 者 割 当 増 資 の 規 模 が 大 き いことがわかる そして 中 国 第 三 者 割 当 増 資 の 金 額 は 一 件 当 たり10 億 元 ( 約 180 億 円 ) を 超 え 日 本 の 約 4 倍 になっている 図 表 5は 市 場 別 に 第 三 者 割 当 増 資 の 件 数 と 金 額 を 示 している 2006 年 から2013 年 まで に 上 海 深 圳 メインボードにおける 増 資 件 数 は8 割 弱 金 額 は9 割 強 になっている 上 海 深 圳 メインボードの 上 場 企 業 には 大 手 企 業 が 多 く そのような 企 業 が 第 三 者 割 当 増 資 の 主 役 となった また 一 件 当 たりの 調 達 金 額 は 上 海 深 圳 取 引 所 に 上 場 している 企 業 が20 億 元 を 超 えており 中 小 板 は 平 均 7.6 億 元 そして 創 業 板 は3.4 億 元 となっている また 2009 年 10 設 立 された 創 業 板 は 2012 年 から 第 三 者 割 当 増 資 の 案 件 が 出 ており 件 数 と 金 額 の 急 増 が 目 立 っている 図 表 6の 業 種 別 件 数 や 金 額 から 中 国 にお 29

プロジェクト 投 資 ( 図 表 7) 資 金 用 途 別 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 企 業 買 収 経 営 統 合 運 転 資 金 資 本 金 充 当 資 本 再 構 成 業 界 転 換 ローン 返 済 年 度 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 2006 33 210 11 506 2 72 3 21 0 0 2007 80 603 47 1,080 2 225 14 464 1 2 2008 52 670 42 682 1 116 9 143 2 22 2009 57 795 40 1,302 5 357 10 186 4 31 2010 87 1,145 42 787 5 624 6 220 9 169 2011 101 893 59 1,938 2 324 10 361 1 3 2012 62 813 62 1,495 11 627 12 219 6 174 2013 119 1,176 94 1,518 28 502 10 163 10 68 合 計 591 6,304 397 9,307 56 2,847 74 1,778 33 469 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベース 上 海 深 圳 取 引 所 の 開 示 情 報 より 作 成 ( 図 表 8) 割 当 先 別 第 三 者 割 当 増 資 の 概 況 大 株 主 のみ 機 関 投 資 家 のみ 関 連 会 社 のみ 大 株 主 機 関 投 資 家 関 連 会 社 個 人 投 資 家 を 含 む 年 度 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 件 数 金 額 ( 億 元 ) 2006 10 431 21 191 1 14 10 139 0 0 2007 32 622 50 943 4 28 43 911 4 29 2008 35 651 23 257 4 149 25 424 15 117 2009 28 911 19 322 5 126 16 404 47 904 2010 18 285 33 834 9 289 34 1,024 58 544 2011 13 616 38 585 9 182 43 1,374 69 714 2012 25 840 37 719 11 178 34 1,156 44 428 2013 31 287 73 769 8 98 59 1,331 91 691 合 計 192 4,643 294 4,621 51 1,064 264 6,763 328 3,426 ( 資 料 ) 上 海 万 得 信 息 技 術 株 式 会 社 のデータベース 上 海 深 圳 取 引 所 の 開 示 情 報 より 作 成 ける 第 三 者 割 当 増 資 は 製 造 業 の 上 場 企 業 が 中 心 になっていることがわかる 中 国 上 場 企 業 の 半 数 が 製 造 業 であることから その 資 金 需 要 は 旺 盛 である また 通 信 情 報 業 界 の 発 展 に 伴 う 資 金 調 達 は 大 幅 に 増 加 している 2006 年 のわずか3 件 から2013 年 にはその17 倍 の51 件 にも 達 し 増 資 金 額 も 約 13 倍 に 伸 びて いる 一 方 で 2000 年 代 中 国 経 済 を 支 えた 不 動 産 業 は 購 入 制 限 や 頭 金 の 比 率 の 引 き 上 げ 等 の 厳 しい 政 策 の 影 響 を 受 け 2010 年 から 増 資 の 規 模 が 激 減 し 2013 年 には1 件 も 実 施 さ れていない 図 表 7の 資 金 使 途 別 件 数 や 金 額 から 調 達 した 資 金 の 主 な 使 い 道 は プロジェクト 投 資 と 企 業 買 収 経 営 統 合 であることがわかる 両 者 合 計 の 件 数 と 金 額 は 全 体 の7 割 以 上 を 占 めている また リーマンショック 後 の 中 国 経 済 減 速 の 下 調 達 した 資 金 を 運 転 資 金 30

( 図 表 9) 発 行 価 格 と 市 場 価 格 の 関 係 ディスカウント 市 場 価 格 プレミアム 合 計 上 海 証 券 取 引 所 での 件 数 34 11 30 75 深 圳 証 券 取 引 所 での 件 数 6 11 10 27 新 興 市 場 での 件 数 10 4 24 38 合 計 件 数 50 26 64 140 比 率 (%) 35.71 18.57 45.71 100.00 資 本 金 に 充 当 し ローンを 返 済 するケースが 大 幅 に 増 加 している 図 表 8は 割 当 先 別 の 件 数 や 金 額 を 示 して いる 中 国 において 第 三 者 割 当 増 資 は 主 に 大 株 主 機 関 投 資 家 そして 関 連 会 社 が 単 独 または 合 同 で 引 き 受 けている 三 者 単 独 ま たは 合 同 で 受 けた 件 数 と 金 額 は 全 体 の8 割 以 上 を 占 めている これは 大 株 主 の 持 株 比 率 上 昇 によるコーポレート ガバナンスの 改 善 機 関 投 資 家 招 致 によるモニタリング 機 能 の 強 化 そして 関 連 会 社 の 吸 収 合 併 による 同 業 競 争 回 避 による 企 業 価 値 向 上 の 効 果 を 示 唆 する また 個 人 投 資 家 を 含 むケースの 増 加 が 目 立 っているが これは 2005 年 9 か ら 始 まった 株 式 分 置 改 革 による 上 場 企 業 株 式 の 全 流 通 が 原 因 だと 思 われる 株 式 分 置 改 革 とは 国 家 中 央 企 業 の 持 株 国 家 株 そして 国 家 法 人 株 といった 非 流 通 株 ( 売 買 制 限 される 株 )を 市 場 で 流 通 できるようにする 改 革 である 4. 第 三 者 割 当 増 資 の 実 証 分 析 2008 年 1 1 日 から2010 年 9 30 日 まで 上 海 深 圳 証 券 取 引 所 で 公 表 されている 適 時 開 示 情 報 から 得 られる140 件 の 第 三 者 割 当 増 資 に 関 して 増 資 実 施 が 中 国 株 式 市 場 に 与 え るインパクトを 実 証 分 析 する ( 注 4) 新 株 の 発 行 価 格 と 増 資 実 施 時 の 市 場 価 格 と の 関 係 を 見 てみると 図 表 9のように6 割 超 がプレミアム 状 態 ( 市 場 価 格 と 等 しいケース を 含 む)になっていることがわかる なお プレミアム 率 (( 発 行 価 格 - 市 場 価 格 ) 市 場 価 格 )の 標 本 平 均 は9.3%であり 最 大 値 は 148.09%と 市 場 価 格 の 約 2.5 倍 もの 価 格 で 新 株 を 引 き 受 けていた 中 国 の 第 三 者 割 当 増 資 に おいては 市 場 価 格 の90% 以 上 の 価 格 で 新 株 を 発 行 しなくてならないという 規 制 がある この 規 制 を 考 慮 したとしても 市 場 価 格 より 安 い 価 格 で 新 株 が 発 行 される 日 本 や 米 国 のケ ースとは 大 きく 異 なる 中 国 特 有 の 増 資 形 態 で ある これは 広 く 一 般 投 資 家 から 公 募 増 資 という 形 で 目 標 資 金 を 十 分 調 達 できる 割 高 な 価 値 を 有 する 企 業 であっても 第 三 者 割 当 増 資 を 用 いて 資 金 調 達 を 行 っていることを 示 し ている そもそも 第 三 者 割 当 増 資 は 資 金 調 達 を 行 う 企 業 が 特 定 の 第 三 者 にあらかじめ 決 められ 31

( 図 表 10) 市 場 別 の 平 均 累 積 超 過 収 益 率 の 推 移 た 価 格 と 枚 数 で 新 株 を 引 き 受 けてもらう 増 資 形 態 である この 増 資 によって 市 場 には 二 つの 負 のインパクトを 与 えることになる 第 一 に 増 資 を 行 う 企 業 が 割 当 先 となる 株 主 を 選 ぶことができ 割 当 を 受 けない 既 存 株 主 の 所 有 権 が 希 薄 化 するという 不 利 益 が 生 じる 第 二 に 発 行 金 額 や 発 行 価 格 等 の 増 資 に 関 す る 条 件 が 企 業 経 営 者 と 特 定 の 割 当 先 の 相 対 交 渉 で 決 定 されるため 一 般 投 資 家 には 不 透 明 な 新 株 発 行 となる しかしながら 中 国 株 式 市 場 において 第 三 者 割 当 増 資 は 正 のインパクトを 与 えること が 確 認 できる 図 表 10は 第 三 者 割 当 増 資 の 実 施 を 公 表 した 日 (アナウンスメント 日 :t) の 前 後 10 日 間 の 累 積 超 過 収 益 率 の 推 移 を 市 場 平 均 別 で 示 している ( 注 5) どの 市 場 におい てもアナウンスメント 日 の4 日 前 から 正 の 平 均 累 積 超 過 収 益 率 が 確 認 され 第 三 者 割 当 増 資 を 実 施 する 企 業 の 株 価 が 上 昇 していること がわかる これは 上 場 企 業 の 第 三 者 割 当 増 資 が 市 場 に 正 のインパクト 正 のアナウンス メント 効 果 を 与 えることを 示 している この 正 のアナウンスメント 効 果 は 日 本 や 米 国 の 第 三 者 割 当 増 資 のケースでも 確 認 され ているが ( 注 6) 中 国 においてはさらに 特 徴 的 な 累 積 超 過 収 益 率 の 推 移 が 見 られる 図 表 11は プレミアム 状 態 とディスカウント 状 態 別 の 平 均 累 積 超 過 収 益 率 の 推 移 をアナウンス メント 日 前 後 30 日 で 示 したものである どち らも 平 均 累 積 超 過 収 益 率 がアナウンスメント 日 の4 日 前 から 正 となっているが アナウン スメント 日 以 降 の 推 移 は 対 照 的 である プレ ミアム 状 態 で 実 施 される 第 三 者 割 当 増 資 に 関 しては 30 日 後 でも 市 場 に 好 感 されて 正 の 累 積 超 過 収 益 率 が 確 認 される 一 方 ディスカ ウント 状 態 で 実 施 される 第 三 者 割 当 増 資 は3 日 後 から 株 価 が 下 落 し 20 日 後 には 負 の 累 積 超 過 収 益 率 となっている 中 国 においては 新 株 の 転 売 に 関 する 規 制 が 日 本 や 米 国 より 厳 しく 1 年 間 はその 譲 渡 32

( 図 表 11) 発 行 価 格 別 の 平 均 累 積 超 過 収 益 率 の 推 移 が 禁 止 されている さらに 割 当 先 が 大 株 主 や 外 国 人 投 資 家 の 場 合 3 年 間 譲 渡 が 禁 止 さ れている したがって 新 株 を 引 き 受 けた 投 資 家 は この 短 期 の 株 価 上 昇 によるキャピタ ル ゲインとプレミアム 分 ( 発 行 価 格 - 市 場 価 格 )を 相 殺 することはできない 市 場 価 格 以 上 で 新 株 を 引 き 受 ける 投 資 家 は 増 資 を 実 施 する 企 業 の 将 来 パフォーマンスを 評 価 して いることになる これは 他 の 一 般 投 資 家 に 企 業 価 値 向 上 の 保 証 を 与 えることになり よ り 強 い 正 のインパクトを 与 えていると 考 えら れる 実 際 プレミアム 状 態 の 第 三 者 割 当 増 資 は 主 に 企 業 買 収 経 営 統 合 を 目 的 とした 資 金 調 達 であることが 期 待 されている 対 照 的 に ディスカウント 状 態 での 増 資 は 運 転 資 金 資 本 金 充 当 のための 資 金 調 達 であると みなされている ( 注 7) 5.おわりに 本 稿 は 中 国 株 式 市 場 で 実 施 される 増 資 の 多 くが 第 三 者 割 当 増 資 で 行 われるという 特 殊 性 を 説 明 した これは 日 本 や 米 国 が 公 募 増 資 の 形 態 で 行 うような 案 件 も 中 国 では 第 三 者 割 当 増 資 という 形 態 で 行 われていることを 意 味 している また 中 国 証 券 監 督 委 員 会 によ る 市 場 調 整 新 規 公 開 増 資 (IPO)の 一 時 停 止 による 影 響 も 第 三 者 割 当 増 資 の 件 数 を 増 大 させることになっている 中 国 特 有 のこれら 増 資 形 態 の 概 況 を 整 理 し 中 国 企 業 の 資 金 調 達 の 現 状 を 理 解 することは 現 在 の 日 本 経 済 と 中 国 経 済 の 密 接 な 関 係 からも 非 常 に 意 味 の あることである また 中 国 においての 第 三 者 割 当 増 資 は 発 行 価 格 が 市 場 価 格 以 上 となるプレミアム 状 態 のものが 多 く その 公 表 が 株 式 市 場 に 正 の インパクトを 与 えることを 実 証 的 に 示 した 33

第 三 者 割 当 増 資 の 実 施 を 公 表 する 前 後 で 当 該 企 業 の 累 積 超 過 収 益 率 は 平 均 的 に 正 の 値 に なっていた とりわけ プレミアム 状 態 で 増 資 が 実 施 される 企 業 の 場 合 公 表 後 30 日 を 経 ても 正 の 累 積 超 過 収 益 率 が 推 計 されている これは 増 資 を 行 う 企 業 の 将 来 的 な 企 業 価 値 向 上 を 期 待 した 市 場 の 反 応 と 解 釈 できる 以 上 日 本 や 米 国 では 見 られない 中 国 特 有 の 第 三 者 割 当 増 資 に 関 して 実 証 的 に 分 析 を 行 ってきた 今 後 長 期 的 な 観 点 から 中 国 株 式 市 場 における 増 資 形 態 と 将 来 パフォーマ ンス 企 業 価 値 との 関 係 性 日 本 市 場 への 影 響 を 分 析 していくことにする [ 参 考 文 献 ] W r u c k, K. ( 1 9 8 9 ) E q u i t y O w n e r s h i p Concentration and Firm Value:Evidence from Private Equity Financing, Journal of Financial Economics, 1989(23),pp.3-28. Hertzel, M., and R. Smith(1993) Market Discounts and Shareholder Gains for Placing Equity Privately, Journal of Finance,1993(48), pp.459-485. Kato, K., and J. Schallheim(1993) Private Equity Financings in Japan and Corporate Grouping(Keiretsu), Pacific-Basin Finance Journal,1993(1),pp.287-307. 新 関 三 希 代 兪 傑 (2012) 中 国 における 第 三 者 割 当 増 資 の 実 分 析, 経 済 学 論 叢,2012(64), pp.105-152. り 収 集 している ( 注 3) 公 募 増 資 ができる 上 場 企 業 は 直 近 3 年 間 の 加 重 平 均 自 己 資 本 利 益 率 が6% 以 上 でなければな らない また 直 近 24ヵ 以 内 に 公 募 増 資 を 行 っ た 場 合 当 年 の 営 業 利 益 が 前 年 の50% 以 上 である こと 等 の 規 制 がある ( 注 4) データは データ 情 報 会 社 Windから 収 集 して いる 分 析 対 象 は 上 海 深 圳 証 券 取 引 所 A 株 株 式 市 場 と 新 興 市 場 で 行 ったケースのみであり B 株 の 第 三 者 割 当 増 資 のケース 増 資 発 表 後 に 新 株 の 発 行 を 中 止 したケース 複 数 回 実 施 したケース そして 発 行 に 関 する 全 てのデータが 収 集 できなか ったケースは 除 外 している ( 注 5) 累 積 超 過 収 益 率 の 算 出 方 法 は 新 関 兪 (2012) を 参 照 ( 注 6) Wruck(1989) Hertzel and Smith(1993) そしてKato and Schallheim(1993) 等 参 照 ( 注 7) 累 積 超 過 収 益 率 と 資 金 用 途 との 関 係 増 資 を 実 施 した 企 業 のパフォーマンスと 株 価 の 長 期 的 関 係 については 現 在 執 筆 中 の 論 文 で 紹 介 する 1 ( 注 1) 新 関 兪 (2012)において 中 国 株 式 市 場 に おける 公 募 増 資 第 三 者 割 当 増 資 そして 株 主 割 当 増 資 に 関 する 制 度 の 変 遷 がまとめられている ( 注 2) データは 東 京 証 券 取 引 所 のホームページよ 34