1. 総 論 ドイツ 中 小 企 業 研 究 所 (IfM)によれば 約 35 万 社 ある 輸 出 企 業 のうち 98%を 中 小 企 業 が 占 める ドイツには 法 令 などで 定 められた 中 小 企 業 の 画 一 的 な 定 義 は 存 在 せず 各 経 済 機 関 が 独 自 の 定



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東京都立産業技術高等専門学校

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3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

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基 準 地 価 格 3 年 に1 度 審 議 直 近 ではH23 年 12 月 に 審 議 土 地 評 価 替 えの 流 れと 固 定 資 産 評 価 審 議 会 基 準 地 とは 土 地 評 価 の 水 準 と 市 町 村 間 の 均 衡 を 確 保 するための 指 標 となるものであり 各 市

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Transcription:

国 際 競 争 力 あるドイツ 中 小 企 業 の 戦 略 に 迫 る デュッセルドルフ 事 務 所 欧 州 ロシア CIS 課 リーマンショックに 端 を 発 する 金 融 危 機 の 影 響 で 欧 州 各 国 の 景 気 は 冷 え 込 んだ その 中 で ドイツの 景 気 はアジアなどの 新 興 国 への 輸 出 を 背 景 に 2010 年 半 ばに 逸 早 く 回 復 し た ドイツの 輸 出 主 導 経 済 は 大 企 業 だけでなく ミッテルシュタンド (Mittelstand)と 呼 ばれる 中 小 企 業 が 支 えている 日 本 では これから 景 気 の 回 復 が 見 込 まれ 中 小 企 業 の 海 外 市 場 開 拓 の 機 運 が 再 度 高 まるとみられる 中 その 国 際 展 開 の 参 考 に 資 するため 海 外 販 路 開 拓 に 成 功 するドイツ 中 小 企 業 の 取 り 組 みを 紹 介 する ( 本 稿 はジェトロ センサー2011 年 10 月 号 ~2012 年 3 月 号 に 連 載 したものと 同 じ 内 容 で ある) 目 次 1. 総 論... 2 2. ドイツ 中 小 企 業 の 海 外 展 開 事 例 に 学 ぶ... 4 (1) べグラ- 国 内 に 生 産 拠 点 を 残 し 国 外 市 場 を 攻 める... 4 (2) テュンカース マシネンバウ-イノベーション 力 で 業 界 トップに... 7 (3) テンテ インターナショナル- 異 文 化 対 忚 力 が 勝 因... 10 (4) ベコテクノロジーズ- 絆 が 支 える 組 織 力 で 世 界 に 挑 む... 13 (5) IDS イメージング ディベロップメント システムズ- 大 胆 な 発 想 を 力 に.. 16 3. まとめ... 19 免 責 条 項 ジェトロは 本 レポートの 記 載 内 容 に 関 して 生 じた 直 接 的 間 接 的 損 害 及 び 利 益 の 喪 失 に ついては 一 切 の 責 任 を 負 いません これは たとえジェトロがかかる 損 害 の 可 能 性 を 知 らされていても 同 様 とします 本 レポートの 無 断 転 載 を 禁 じます 1

1. 総 論 ドイツ 中 小 企 業 研 究 所 (IfM)によれば 約 35 万 社 ある 輸 出 企 業 のうち 98%を 中 小 企 業 が 占 める ドイツには 法 令 などで 定 められた 中 小 企 業 の 画 一 的 な 定 義 は 存 在 せず 各 経 済 機 関 が 独 自 の 定 義 を 持 つ 表 1 のとおり 概 して 日 本 の 中 小 企 業 の 定 義 よりも 広 い 範 囲 を 指 すこ とに 留 意 が 必 要 だが 日 本 と 同 様 に 企 業 の 大 半 が 中 小 企 業 ( 主 に 製 造 業 )だ IfM の 2007 年 の 報 告 書 によれば 当 時 貿 易 を 行 う 中 小 企 業 の 大 半 にとって 貿 易 相 手 国 は EU 域 内 に 留 まっていた しかし 最 近 は 中 国 など EU 域 外 の 新 興 市 場 にも 目 を 向 け ているようだ 最 近 の 中 小 企 業 の 国 際 展 開 について ドイツ 中 小 企 業 連 盟 日 本 代 表 ミヒャ エル A.ミュラー 氏 は まずは EU 域 内 でシェアを 取 り その 後 米 国 や 中 国 へ 展 開 するパ ターンが 多 い 特 に 中 国 市 場 に 対 する 期 待 は 強 い と 解 説 する ドイツの 中 小 企 業 が 活 発 に 海 外 展 開 を 行 っている 背 景 の 一 つには 恵 まれた 外 部 環 境 が ある ミュラー 氏 によれば ドイツで ミッテルシュタンド は ドイツ 経 済 を 支 える 基 盤 というイメージがあるため 大 手 でも 自 らを ミッテルシュタンド であると 自 負 す る 企 業 があるという これは 人 材 確 保 の 面 でも 活 きており 優 秀 な 理 系 学 生 が 自 分 の 技 量 を 活 かせるとして 大 企 業 ではなく 中 小 企 業 に 就 職 することは 珍 しくなく 文 系 の 学 生 も 日 本 ほど 大 企 業 志 向 ではないという また ドイツに 限 ったことではないが 隣 国 と 陸 続 き なため 外 国 との 人 の 行 き 来 も 盛 んで また 企 業 内 に 外 国 人 の 同 僚 がいることは 通 常 の ことで 英 語 能 力 は 全 般 的 に 日 本 に 比 して 高 いという しかし 外 部 環 境 に 恵 まれていても 企 業 自 身 の 魅 力 や 競 争 力 を 持 ち 販 路 開 拓 しなけ れば 国 内 外 の 競 争 に 勝 つことはできない ミュラー 氏 によれば かつてはドイツにも 大 手 メーカーから 提 供 される 図 面 に 基 づき 生 産 を 請 け 負 う 下 請 け 専 門 業 者 が 多 くいたという しかし EU 拡 大 に 伴 い そうした 下 請 け 業 務 は 徐 々にコストの 安 い 中 東 欧 などの 業 者 に 委 託 されるようになり 淘 汰 が 進 んだ そ の 結 果 特 殊 な 専 門 分 野 で 独 自 技 術 を 持 つ 中 小 企 業 が 多 く 生 き 残 った という 日 本 市 場 開 拓 に 成 功 しているドイツ 中 小 企 業 ( 主 に 製 造 業 )も レーザー 技 術 など 日 本 メーカーが 持 たない 独 自 のコア 技 術 特 殊 技 術 を 持 つところが 多 いという 日 本 にも 独 自 技 術 を 有 する 中 小 企 業 は 多 い ドイツも 日 本 も 中 小 企 業 は 資 金 力 が 限 られ 大 企 業 のように 多 額 の 投 資 して 海 外 市 場 を 開 拓 するのは 難 しい また 特 に 海 外 市 場 では 知 名 度 が 限 られる 中 で 販 路 開 拓 も 共 通 する 課 題 だ 2

表 1.ドイツと 日 本 の 中 小 企 業 の 定 義 数 の 違 い ドイツ 日 本 中 小 企 業 の 定 義 従 業 員 数 500 名 以 下 かつ 従 業 員 数 300 名 以 下 年 間 売 上 高 5,000 万 ユーロ または ( 約 56 億 円 ) 以 下 資 本 金 3 億 円 以 下 ( 原 則 連 結 ベース) ( 注 2) ( 注 1) 中 小 企 業 数 約 330 万 社 約 419.8 万 社 ( 注 3) ( 注 4) 全 企 業 に 占 める 中 小 企 業 の 割 合 約 99.7% 約 99.7% ( 参 考 ) 人 口 ( 注 5) 約 8,180 万 人 約 1 億 2,751 万 人 注 2. 製 造 業 の 場 合 注 1.ドイツ 中 小 企 業 研 究 所 (ifm)の 定 義 注 3.ドイツ 中 小 企 業 連 盟 'BVMW) 会 員 数 注 4. 個 人 事 業 者 を 含 む 2006 年 調 査 時 点 注 5.いずれも2009 年 値 注 6. 中 小 企 業 実 態 基 本 調 査 ( 平 成 22 年 度 版 )より 試 算 すると 日 本 の 中 小 企 業 の1 社 あたりの 平 均 売 上 高 は1 億 3,623 万 円 ( 製 造 業 に 限 ると25 億 1,245 万 円 ) ( 出 所 )ifm BVMW ドイツ 統 計 局 中 小 企 業 庁 総 務 省 統 計 局 3

2. ドイツ 中 小 企 業 の 海 外 展 開 事 例 に 学 ぶ (1) べグラ- 国 内 に 生 産 拠 点 を 残 し 国 外 市 場 を 攻 める 設 立 :1913 年 ' 社 名 ベントゲン&グラ から 2002 年 ベグラ に 変 更 ( 本 社 :ゾーリンゲン 市 'ノルトライン ヴェストファーレン 州 ( 従 業 員 数 :134 人 主 力 商 品 : 自 動 車 用 青 銅 軸 受 銅 金 型 鋳 造 COMPANY PROFILE ベグラ 取 引 先 :フォルクスワーゲン ダイムラー マン シーメンス アルストムなど170 社 'うち44 社 が 外 国 企 業 ( 国 外 売 上 高 : 全 売 上 高 に 占 める 割 合 は 約 40% '2010 年 ( 主 な 国 外 の 販 売 先 地 域 : 欧 州 米 国 南 米 中 東 アジア 取 得 認 証 :ISO9001 ISO14001 など URL:http://www.boegra.com/ べグラ(BOEGRA)は 自 動 車 のエンジンなどに 使 われる 青 銅 軸 受 製 造 と 銅 金 型 鋳 造 に 特 化 したドイツの 中 小 企 業 だ フォルクスワーゲン(VW)の 一 部 車 種 では コネクティングロ ッド 軸 受 というエンジンの 中 核 部 品 の 全 てを 同 社 製 が 占 めるほど 銅 加 工 において 高 い 技 術 力 を 持 つ この 技 術 力 を 強 みに 顧 客 は 欧 米 中 東 アジアと 世 界 に 広 がる ドイツ 自 動 車 メーカーの 生 産 拠 点 が 国 外 に 拡 大 する 中 同 社 は 生 産 拠 点 を 国 外 に 移 転 せず 国 際 市 場 を 開 拓 し 続 ける その 手 法 や 成 功 の 秘 訣 について 輸 出 担 当 のアンドレアス プルグ 氏 と 法 務 人 事 マーケティング 担 当 のクリスティアン シュナイダー 氏 に 聞 いた 1 耐 久 性 に 優 れた 軸 受 の 希 尐 メーカー 自 動 車 エンジン 用 のコネクティングロッドは エンジンのピストン 運 動 を 回 転 運 動 に 変 換 する 重 要 な 部 品 で エンジン 部 品 の 中 でも 特 に 負 荷 のかかる 部 品 である このため そ の 軸 受 には 極 めて 高 い 耐 久 性 が 求 められる ベグラは 金 型 鋳 造 でこの 軸 受 を 製 造 している 大 手 自 動 車 メーカーがひしめくドイツで も 大 量 生 産 できる 企 業 は 同 社 を 含 め 2 社 しかない ベグラの 軸 受 は 板 を 巻 いて 溶 接 した 軸 受 より 高 価 格 だが その 優 れた 耐 久 性 が 評 価 され VW に 年 間 1,000 万 個 納 入 されてい る 特 にターボディーゼル 車 (1.6 1.9 2.0 リットル)では 同 社 製 品 が 100%を 占 める ドイツ 自 動 車 メーカーを 陰 で 支 えるキープレイヤーなのだ 2 生 産 拠 点 は 国 内 に 残 す べグラは 納 品 先 のドイツ 自 動 車 メーカーが 生 産 拠 点 を 国 外 に 移 転 したことに 加 え 02 年 に 共 同 出 資 者 が 交 代 したこともあり それまで 欧 州 域 内 の 販 売 を 主 にしていた 戦 略 を 転 4

換 した 近 年 はブラジル 中 東 など 市 場 潜 在 力 のある 新 興 国 や 市 場 規 模 の 大 きい 日 本 に 目 を 向 け 始 めている 納 入 先 の 自 動 車 メーカーの 国 外 生 産 が 加 速 しているが ベグラは 生 産 拠 点 をドイツ 国 内 に 留 める 全 て 自 社 内 で 製 造 することで 知 的 財 産 流 出 のリスクを 極 小 化 している 知 的 財 産 権 保 護 の 観 点 からドイツ 国 内 での 生 産 を 好 む 中 小 企 業 は 多 い ベグラ はまさにそうした 企 業 の 一 つだ 販 売 面 でも 自 社 の 販 売 会 社 を 国 外 に 持 つことはしない 欧 州 域 外 では 代 理 店 や 外 国 企 業 との 戦 略 的 提 携 を 組 む 手 法 を 取 る 現 在 は 中 国 インド ブラジル 米 国 エジプトに 販 売 代 理 店 などがある 販 売 代 理 店 にも 製 品 についての 定 期 的 な 研 修 を 実 施 しているが データや 技 術 的 ノウハウの 伝 達 には 限 度 を 設 けている 一 般 的 に 代 理 店 を 通 じたビジネスは 自 社 拠 点 を 作 らなくて 済 むコスト 上 のメリットが ある 例 えば 文 化 や 言 語 などの 障 害 を 現 地 人 材 を 雇 用 せずに 克 服 できる しかし ビジ ネスの 成 否 が 代 理 店 の 能 力 次 第 になってしまうことや 顧 客 との 距 離 が 遠 くなることで ニ ーズの 把 握 が 遅 れるという 弱 点 もある そのためベグラは 新 規 顧 客 の 開 拓 を 代 理 店 任 せにはしていない VW など 既 に 国 外 に 拠 点 を 持 つ 大 手 納 品 先 とのコンタクトを 活 用 したり 企 業 訪 問 や 見 本 市 への 出 展 を 通 じ 直 接 コンタクト 先 の 開 拓 を 行 うことで 代 理 店 経 由 ビジネスの 弱 点 をカバーしている 輸 出 担 当 のアンドレアス プルグ 氏 は 今 すぐビジネスにつながらなくても 将 来 のビジネス 機 会 になる 可 能 性 がある コンタクト 先 の 開 拓 や 根 回 しは 大 変 重 要 と 語 る 3 イノベーション 力 が 成 功 の 鍵 ベグラ 製 品 の 最 大 の 売 りの 一 つは 耐 久 性 昨 今 自 動 車 エンジンの 小 型 化 が 進 み コネ クティングロッド 用 軸 受 への 負 荷 が 増 しているため 従 来 の 軸 受 より 高 い 耐 久 性 が 求 めら れている ベグラ 製 品 のように 高 い 耐 久 性 を 持 つ 部 品 を 作 れる 企 業 はほとんどない わが 社 のビジ ネス 機 会 はますます 加 速 する とプルグ 氏 は 自 信 を 示 す しかし 既 存 の 技 術 力 に 安 住 しているわけではない ベグラが 見 せる 市 場 動 向 に 俊 敏 な 反 忚 も 海 外 市 場 での 成 功 の 秘 訣 といえそうだ これまでエンジン 用 の 軸 受 の 一 部 に 鉛 を 使 用 するのが 一 般 的 だったが EU は 11 年 より 自 動 車 業 界 に 対 し エンジン エアコンコン プレッサーなど 自 動 車 用 部 品 に 鉛 を 使 わないよう 義 務 付 けた 近 年 日 本 企 業 を 含 めて 各 社 が 鉛 不 使 用 の 軸 受 の 開 発 販 売 を 行 っている ベグラは かねてより 鉛 不 使 用 製 品 にも 強 いため 規 制 も 追 い 風 になっている 5

現 在 同 社 では 研 究 機 関 と 共 同 でナノテクノロジー 分 野 での 研 究 開 発 プロジェクトを 実 施 しており 他 社 に 技 術 面 でさらに 差 をつけたい 考 えだ 4 苦 境 を 経 験 し 納 入 先 多 角 化 に 取 り 組 む 他 社 の 追 随 を 許 さぬ 技 術 力 を 有 し 大 手 自 動 車 メーカーを 中 心 に 世 界 中 に 顧 客 に 持 つとは いえ 経 営 が 順 風 満 帆 だったわけではない 売 上 高 は 07 年 に 約 2,480 万 ユーロと 過 去 最 高 を 記 録 したが 金 融 危 機 による 自 動 車 産 業 の 深 刻 な 不 況 のあおりを 受 けた 09 年 の 売 上 高 は 1,431 万 ユーロへと 激 減 した 他 産 業 への 販 路 シフトなどいろいろ 試 してみたが 危 機 の 影 響 は 全 業 種 に 及 んだため 最 終 的 に 人 員 削 減 を 余 儀 なくされた とプルグ 氏 は 振 り 返 る 操 業 時 間 の 短 縮 や 大 幅 な 人 員 削 減 を 行 い 管 理 費 を 抑 えることで 危 機 を 乗 り 切 った 自 動 車 産 業 の 業 績 回 復 に 伴 い 10 年 の 売 上 高 は 1,835 万 ユーロと 前 年 を 28% 上 回 った 11 年 には 金 融 危 機 前 の 売 上 高 ( 約 2,480 万 ユーロ) 水 準 にまで 回 復 する 見 込 みだ 法 務 人 事 マーケティング 担 当 のクリスティアン シュナイダー 氏 は 売 上 高 年 間 10 ~ 15% 増 という 健 全 な 成 長 を 目 指 している と 述 べている 現 在 は 業 績 が 回 復 しているとはいえ 金 融 危 機 の 際 の 反 省 から 自 動 車 分 野 への 依 存 度 を 段 階 的 に 下 げ リスク 分 散 を 図 る 中 長 期 的 な 目 標 として 他 業 種 分 野 での 販 路 拡 大 を 進 めている 10 年 時 点 で 全 売 上 高 に 占 める 自 動 車 分 野 の 割 合 は 約 7 割 残 りの 3 割 は 電 気 電 子 や 機 械 など 30 業 種 に 分 かれる 他 業 種 で 自 動 車 と 同 様 の 受 注 量 を 達 成 するのは 難 し い だが 魅 力 的 な 業 種 の 顧 客 を 開 拓 するため 企 業 業 績 および 製 品 品 質 の 向 上 に 努 力 を 続 ける とプルグ 氏 は 意 気 込 む 卓 越 した 技 術 力 に 加 え 他 社 に 常 に 先 行 しようとする 積 極 性 さらにリスクを 最 小 限 に 抑 える 機 敏 な 対 忚 力 などが 同 社 の 強 さを 支 えている 6

(2) テュンカース マシネンバウ-イノベーション 力 で 業 界 トップに COMPANY PROFILE テュンカース マシネンバウ 設 立 :1962 年 本 社 :ラーティンゲン 'ノルトライン ヴェストファーレン 州 ( 従 業 員 数 : 約 600 人 'うち 約 300 人 が 国 外 拠 点 ( 主 力 商 品 :ファクトリーオートメーション 製 品 小 型 運 搬 車 抗 打 機 紙 工 機 械 取 引 先 :フォルクスワーゲン ダイムラー ルノー ゼネラルモーターズ ティッセンクルップ クーカほか 多 業 種 から 数 百 社 国 外 売 上 高 : 全 売 上 高 に 占 める 割 合 は 約 34% '2010 年 ( 主 な 国 外 の 販 売 先 地 域 :: 中 国 米 国 ブラジル メキシコ フランス スペイン イタリア 取 得 認 証 ::ISO9001'VDA 6.4( URL:http://www.tuenkers.com/ テュンカース マシネンバウ(Tünkers Maschinenbau 以 下 テュンカース)は 主 に 自 動 車 工 場 で 使 用 されるロボットの 部 品 を 製 造 販 売 する 中 小 企 業 だ 製 品 開 発 力 と 提 案 力 の 兼 備 いわばイノベーション 力 を 武 器 に 欧 州 のほぼ 全 ての 自 動 車 メーカーへの 納 入 実 績 を 持 つ 積 極 的 な 国 外 展 開 や 柔 軟 な 雇 用 制 度 の 活 用 国 外 拠 点 の 従 業 員 への ドイツ 魂 の 浸 透 も 成 功 要 因 となっている 販 売 製 品 管 理 担 当 オリバー ビ リューニンク 氏 に 聞 いた 1 産 業 ロボットメーカー 最 大 手 から 表 彰 テュンカースの 優 位 性 は そのイノベーション 力 だ 同 社 は 自 動 車 産 業 用 ロボットの 部 品 をはじめとするファクトリーオートメーション(FA) 部 品 を 製 造 販 売 している そも そも FA 部 品 は 納 入 先 の 工 場 に 合 わせて 個 々に 異 なるものを 作 る 必 要 があるため 完 全 なオーダーメードで 開 発 生 産 される 自 動 車 生 産 ラインの 溶 接 などを 行 うロボットに 取 り 付 ける 部 品 を 開 発 する 場 合 を 例 にと ってみよう 生 産 ラインという 限 られたスペースの 中 で 取 り 付 ける 産 業 用 ロボットに 完 全 に 適 合 し 高 精 度 または 難 易 度 の 高 い 加 工 ができる 製 品 を 開 発 しなければならない 顧 客 のニーズを 十 分 に 把 握 した 上 での 提 案 力 が 必 要 となる FA 部 品 のサプライヤーにとって は 発 注 元 である 産 業 用 ロボットメーカーや 自 動 車 メーカーに 自 社 製 品 の 優 位 性 をいか に 効 果 的 にアピールできるかが 勝 負 だ この 点 で 同 社 のイノベーション 力 は 大 きな 強 みと なっている 同 社 はフォルクスワーゲン ダイムラー ルノーのほか 欧 州 のほぼ 全 ての 自 動 車 メーカ ーの 生 産 ラインに 納 入 している 2008 年 にはドイツの 産 業 用 ロボットメーカー 最 大 手 クー カから 品 質 コスト 納 期 が 高 く 評 価 され 優 秀 サプライヤー 賞 を 受 賞 している ドイ ツ 自 動 車 産 業 の FA 部 品 業 界 を 支 えるトッププレイヤーだ 7

近 年 の 自 動 車 業 界 では 環 境 配 慮 型 製 品 の 開 発 がますます 重 視 されている 同 社 はエネ ルギー 効 率 の 高 い 製 品 エコクランプ を 開 発 した 同 製 品 は 圧 搾 空 気 クランプの 一 種 で ロボットに 取 り 付 けて 部 品 を 固 定 する 締 め 具 省 エネによる CO2 削 減 コスト 削 減 を 売 り にしている また 部 品 だけではなく 完 成 品 も 製 造 している 電 動 立 ち 乗 り 二 輪 車 では 米 国 の セ グウェイ より 低 価 格 の MOVI を また 空 港 内 で 使 用 する 電 動 スクーターなどを 開 発 し 製 造 販 売 している する 締 め 具 省 エネによる CO2 削 減 コスト 削 減 を 売 りにしている 2 従 業 員 の 15%を 中 国 に 知 的 財 産 権 保 護 の 観 点 から 生 産 拠 点 をドイツ 国 内 に 残 す 中 小 企 業 が 多 い 中 で テュンカ ースは 中 国 ブラジル 米 国 などに 生 産 拠 点 を 置 く 特 に 中 国 では 製 品 の 種 類 を 拡 充 す るとともに 品 質 を 高 め 成 長 する 中 国 市 場 でのシェア 拡 大 を 目 指 す そのため 全 従 業 員 の 約 15%に 相 当 する 90 人 を 配 置 し 現 地 生 産 と 販 売 を 行 っている ビリューニンク 氏 は 生 産 拠 点 を 国 外 に 積 極 的 に 配 置 する 理 由 として 国 外 市 場 を 開 拓 す る 時 現 地 の 大 企 業 から 生 産 拠 点 の 設 立 を 求 めるられことは 珍 しくない と 語 り 現 地 側 からの 要 請 があったことを 示 唆 する 開 発 提 案 力 が 求 められる 産 業 では 顧 客 の 近 くに 工 場 を 置 くことが 重 要 なのだろう 知 的 財 産 権 保 護 について 同 社 は 特 許 取 得 以 上 の 対 策 は 講 じていない FA 部 品 のサプ ライヤーは 限 られている 偽 物 が 出 ても 当 社 製 品 に 比 べて 务 っているため すぐ 分 かる 尐 数 の 偽 物 なら 無 視 している という 3 積 極 的 な 国 外 展 開 が 不 況 時 に 奏 功 国 外 売 上 が 全 売 上 高 に 占 める 割 合 は 10 年 時 点 で 約 34% 11 年 には 50%に 達 する 見 込 みだ この 積 極 的 な 国 外 展 開 は 08 年 9 月 以 降 の 世 界 的 な 金 融 危 機 において リスクヘッ ジの 機 能 を 果 たした 金 融 危 機 で 自 動 車 産 業 は 大 きな 打 撃 を 受 けた 同 社 は 売 上 高 の 9 割 を 自 動 車 産 業 が 占 め るにもかかわらず 影 響 は 尐 なかった 金 融 危 機 の 影 響 を 最 も 受 けた 時 期 は 国 によって 違 った 例 えば 中 国 経 済 への 影 響 は 欧 州 より 遅 く しかもより 限 定 的 だったため ドイツと 中 国 に 主 要 拠 点 を 置 く 当 社 は 金 融 危 機 を 大 きな 損 害 なく 乗 り 越 えられた (ビリューニンク 氏 ) 国 外 展 開 が 奏 功 した 結 果 だ また ドイツの 多 くの 企 業 は 超 過 勤 務 時 間 の 一 部 を 残 業 代 として 支 払 う 代 わりに 休 8

暇 に 振 り 替 える 制 度 を 導 入 している それによって 実 質 的 に 賃 金 支 払 い 額 を 抑 えること もできる この 制 度 の 活 用 も 金 融 危 機 下 の 不 況 を 克 服 した 要 因 の 一 つだった 同 社 の 競 争 力 は イノベーション 力 に 加 え 積 極 的 な 国 外 展 開 や 柔 軟 な 雇 用 制 度 にもありそうだ 同 社 の 売 上 高 は 04 年 の 6,500 万 ユーロから 10 年 には 9,000 万 ユーロと ほぼ 1.5 倍 になった 12 年 までに 1 億 2,000 万 ユーロまで 伸 ばすことを 目 指 す 中 国 ブラジル 米 国 の 自 社 拠 点 に 加 え スウェーデン オーストラリア 单 アフリカ 共 和 国 などに 販 売 代 理 店 を 置 く 現 在 同 社 が 狙 うのは 経 済 成 長 が 著 しいアジア 市 場 だ 中 国 に 自 社 拠 点 を 構 える 一 方 自 動 車 産 業 の 市 場 潜 在 性 の 高 いタイ インドネシア マレ ーシアの 市 場 開 拓 に 取 り 組 んでいる マレーシアでは 自 動 車 産 業 のパートナーを 探 して いたという 代 理 店 を 取 引 先 から 紹 介 してもらった 話 はとんとん 拍 子 に 進 み 半 年 程 度 で 販 売 代 理 店 の 開 設 にこぎつけた 潜 在 需 要 がある 地 域 の 開 拓 はスピードが 勝 負 小 回 り が 利 く 中 小 企 業 の 強 みを 生 かし 即 断 即 決 で 進 めたようだ 一 方 自 動 車 市 場 の 大 きさに 着 目 して 長 年 市 場 開 拓 に 取 り 組 んでいる 日 本 で 思 うよ うな 成 果 が 上 がっていない 日 本 の 自 動 車 産 業 における 大 企 業 とサプライヤー 間 の 強 い 連 帯 感 は 評 価 すべきだが 国 外 企 業 にとっては 進 出 が 難 しくなる (ビリューニンク 氏 )ため だ 国 外 市 場 の 開 拓 はコストがかさむため 現 地 の 取 引 先 企 業 代 理 店 のほか ドイツ 商 工 会 議 所 など 公 的 機 関 を 活 用 し コストを 抑 制 しながら 市 場 潜 在 性 や 競 争 状 況 を 分 析 してい るという 4 ドイツ 魂 の 浸 透 を テュンカースが 国 外 拠 点 で 重 視 しているのは 人 材 育 成 だ 国 外 の 主 要 ポスト 採 用 も 主 に 現 地 で 行 っている 現 地 採 用 を 通 じて 文 化 や 言 葉 の 壁 が 乗 り 越 えられるからだ 採 用 に 際 しては 専 門 知 識 だけでなく 異 文 化 に 対 する 適 忚 能 力 も 重 視 する 採 用 後 は 管 理 職 だけでなく 営 業 担 当 者 やエンジニアなど 幅 広 い 従 業 員 の 研 修 をドイ ツ 本 社 で 実 施 する 研 修 では 経 営 方 針 にとどまらず 正 確 性 几 帳 面 さ 組 織 力 という いわゆる ドイツ 魂 を 直 接 教 え 込 む ただし 教 育 は 一 方 向 ではなく 双 方 が 学 ぶ 場 だ 国 外 従 業 員 への 研 修 は 国 内 従 業 員 にとって 各 地 の 商 習 慣 や 文 化 の 違 いを 学 ぶ 重 要 な 機 会 となる 経 営 理 念 の 浸 透 も 重 要 だが 国 外 拠 点 の 優 れたアイデンティティーを 保 つことも 大 事 お 互 いの 長 所 でお 互 いの 短 所 を 補 いながら 成 長 していくよう 努 めている というのが 同 社 の 人 材 育 成 に 対 する 姿 勢 だ 9

(3) テンテ インターナショナル- 異 文 化 対 応 力 が 勝 因 COMPANY PROFILE テンテ インターナショナル 設 立 :1923 年 本 社 :ケルン 'ノルトライン ヴェストファーレン 州 ( 従 業 員 数 :969 人 'うち550 人 が 国 外 拠 点 ( 主 力 商 品 : 一 般 産 業 用 医 療 用 工 業 用 重 量 物 用 キャスター 取 引 先 :ルフトハンザ ドイツ 航 空 メディカルケア パラマウントベッド フレゼニウスリモワ フィリップス 国 外 売 上 高 : 全 売 上 高 に 占 める 割 合 は 約 70% '2010 年 ( 主 な 国 外 の 販 売 先 地 域 ::フランス デンマーク オランダ 英 国 米 国 南 アフリカ 共 和 国 日 本 中 国 取 得 認 証 ::ISO9001 URL:http://www.tente.com テンテ インターナショナル(Tente International 以 下 テンテ)は キャスター( 車 輪 ) の 隠 れた 世 界 的 メーカーで 世 界 100 カ 国 地 域 に 顧 客 を 持 つ 製 品 の 用 途 は 一 般 産 業 用 医 療 用 工 業 用 重 量 物 用 と 多 岐 にわたる 従 業 員 の 異 文 化 対 忚 能 力 を 若 いうちから 養 うことに 力 を 入 れ 世 界 各 地 の 顧 客 ニーズを 他 社 より 早 く 把 握 して 製 品 開 発 につなげて いる 成 功 の 秘 訣 について テンテ 傘 下 の 中 核 会 社 であるテンテ ローレン 取 締 役 のパウ ル ムッツ 氏 に 聞 いた 1 医 療 用 ベッドで 世 界 シェア 8 割 ベッドや 台 車 などのキャスターは 通 常 見 えるところに 付 いている このため 顧 客 から は 導 電 性 といった 製 品 の 材 質 や 耐 久 性 のほか 形 や 色 など 最 終 消 費 者 の 好 みに 合 わせた 外 観 デザインへの 要 求 も 高 い テンテは 固 定 式 キャスター( 回 転 しない 車 輪 ) 分 野 では 業 界 をリードする 技 術 力 を 持 ち デザイン 力 も 高 い ドイツの 著 名 デザイナーが 加 盟 する 団 体 ドイツデザイナーズクラブ やユニバーサルデザイン 協 会 などから 多 数 の 賞 を 受 賞 して いることから その 実 力 が 分 かる キャスターの 分 野 でも 環 境 配 慮 型 製 品 へのニーズが 高 まっているが 同 社 は 環 境 配 慮 型 の 材 料 のみを 使 用 することを 方 針 に 掲 げる 欧 州 では 発 がん 性 などが 疑 われている 多 環 芳 香 族 炭 化 水 素 (PAHs)を 含 む 物 質 の 使 用 などを 避 けている 最 終 消 費 者 のニーズにきめ 細 かく 対 忚 するため 技 術 者 とデザイナー さらには 販 売 先 も 協 力 する 例 えば 医 療 用 ベッドのキャスターは 通 常 四 つだが 五 つ 目 の 駆 動 キャスタ ーをベッド 下 中 央 に 設 置 することを 考 案 し 介 護 者 がベッドをより 操 作 しやすくした ベ ッドを 移 動 しやすくしたい という 介 護 の 現 場 からの 声 に 対 忚 した 結 果 だ このような 事 例 を 積 み 重 ねることで 現 在 医 療 用 ベッドのキャスター 分 野 で 世 界 の 約 80%のシェアを 10

占 める 同 社 の 国 際 展 開 は 70 年 代 にさかのぼる 单 アフリカ 共 和 国 に 初 の 国 外 拠 点 を 設 立 80 年 代 にはドイツの 競 合 企 業 を 買 収 し 欧 州 における 販 売 網 を 拡 大 冷 戦 終 結 後 の 90 年 代 には 旧 東 ドイツに 支 店 網 を 広 げた 近 年 はロシア ポーランドとバルト 三 国 に 支 店 を 開 設 し 東 欧 市 場 の 開 拓 に 力 を 入 れている 日 本 との 関 係 は 長 く 60 年 代 からパラマウントベッド との 取 引 がある 2005 年 には 東 京 に 支 店 を 設 立 し 日 本 市 場 に 本 格 参 入 した 2 若 いうちから 異 文 化 対 応 能 力 を 育 成 キャスターの 用 途 は 多 様 だ 世 界 各 国 の 顧 客 の 細 かいニーズを 他 社 に 先 駆 けて 把 握 する には 従 業 員 の 国 外 での 現 場 感 覚 が 必 要 不 可 欠 だ 国 外 市 場 での 現 場 感 覚 を 養 うために 従 業 員 の 異 文 化 対 忚 能 力 の 育 成 に 注 力 している ドイツでは 義 務 教 育 終 了 後 基 幹 学 校 や 実 科 学 校 などの 職 業 高 校 に 通 う 学 生 は 通 学 と 並 行 して 職 業 訓 練 を 行 う 職 業 訓 練 を 受 けた 企 業 に 卒 業 後 そのまま 就 職 するケースも 珍 しくない この 制 度 を 利 用 して セールス 部 門 では 職 業 訓 練 生 のときから 外 国 人 顧 客 と の 商 談 に 積 極 的 に 同 行 させるほか 外 国 人 顧 客 や 外 国 人 学 生 向 け 自 社 工 場 見 学 の 案 内 役 を させる こうして 外 国 人 との 触 れ 合 いの 機 会 を 作 り 他 国 のビジネス 習 慣 や 言 語 能 力 の 育 成 を 図 っている 若 手 に 対 する 異 文 化 対 忚 能 力 の 育 成 は 研 修 だけにとどまらない 欧 州 の 国 際 見 本 市 は 日 本 の 多 くのそれとは 異 なり 具 体 的 な 商 談 をまとめる 最 も 重 要 な 営 業 の 現 場 でもある 新 製 品 紹 介 の 場 としてだけではなく 外 国 における 顧 客 を 積 極 的 に 開 拓 する 真 剣 勝 負 の 場 として 捉 える 今 年 同 社 としては 初 めて ドイツの 国 際 見 本 市 の 自 社 ブースで 職 業 訓 練 生 に 営 業 活 動 をさせた 国 際 的 なビジネス 環 境 で 責 任 ある 仕 事 をさせることが 目 的 だった 優 秀 な 従 業 員 を 確 保 するために 企 業 の 社 会 的 責 任 (CSR) 活 動 を 活 用 している 学 校 や 大 学 に 対 する 技 術 教 育 支 援 など 教 育 機 関 と 技 術 関 連 の 協 力 プロジェクトを 積 極 的 に 行 う このような 活 動 を 通 じ 技 術 に 関 心 のある 若 者 と 交 わる 機 会 を 設 けると 同 時 に 優 秀 な 若 者 に 自 社 への 関 心 を 持 ってもらう 協 力 プロジェクト 対 象 校 を 卒 業 した 後 同 社 への 就 職 を 志 望 する 学 生 は 尐 なくない 優 秀 な 学 生 を 確 保 し 早 くから 異 文 化 対 忚 能 力 を 磨 き 外 国 市 場 で 顧 客 ニーズを 現 場 感 覚 で 把 握 できる 人 材 を 育 てる これが 技 術 力 やデザイン 力 とともに 高 い 世 界 シェアを 実 現 する 原 動 力 だ 11

3 支 店 の 独 立 性 を 重 視 国 外 の 新 規 市 場 に 進 出 する 際 は まず 同 社 が 持 つ 顧 客 ネットワークを 活 用 して 新 規 取 引 先 を 探 す その 上 で 現 地 代 理 店 を 通 じて 販 売 に 着 手 する 代 理 店 を 選 ぶ 基 準 は 同 業 他 社 製 品 は 扱 わず テンテの 製 品 のみを 販 売 する 意 志 を 持 つ 代 理 店 にこだわる 代 理 店 は 参 入 の 初 期 段 階 では 国 外 進 出 の 鍵 となるが 成 長 するためには 支 店 を 開 設 するなど 市 場 への 直 接 的 なアクセスが 必 要 となる (ムッツ 氏 ) その 際 も 現 地 代 理 店 を 切 り 捨 てるようなことはせず 支 店 の 開 設 を 共 同 で 行 うことも 珍 しくない 支 店 運 営 に 当 たっては 支 店 の 独 立 性 自 主 性 を 重 んじる 支 店 の 収 益 は 支 店 の 職 員 採 用 や 施 設 設 備 の 増 設 などに 再 投 資 し 支 店 を 拡 充 していく 本 社 は 追 加 投 資 を 行 わずに 支 店 が 自 立 して 成 長 していくモデルを 作 ることで 本 社 にとって 金 銭 的 なリスクを 最 低 限 にとどめるのだ この 海 外 拠 点 の 運 営 手 法 も 同 社 の 特 徴 の 一 つだろう 各 支 店 の 独 立 性 が 高 い 一 方 で 支 店 間 での 従 業 員 の 交 流 を 実 施 している 6 週 間 という 短 期 間 だが 社 内 の 人 材 交 流 を 図 る この 取 り 組 みは 専 門 知 識 の 蓄 積 言 語 能 力 の 向 上 にも 大 きく 貢 献 する また 世 界 各 地 の 経 営 幹 部 やセールス 部 門 長 が 年 一 回 一 堂 に 会 し て 経 営 方 針 やセールスの 新 戦 略 について 討 議 する 各 層 で 社 内 人 脈 の 構 築 を 図 り グルー プとしての 一 体 化 を 促 している 4 柔 軟 な 労 働 制 度 と 国 際 展 開 で 危 機 克 服 世 界 中 に 販 売 拠 点 を 置 いているものの 生 産 ラインのオートメーション 化 を 進 め キャ スターの 約 9 割 をドイツ 国 内 で 生 産 する 製 品 の 一 部 とはいえ 生 産 拠 点 を 国 外 に 置 くこと は 知 的 財 産 流 出 のリスクを 伴 うと 考 えるからだ 近 年 中 国 デンマーク 米 国 フラ ンス ブラジルで 同 社 の 特 許 が 無 断 使 用 された 製 品 が 出 回 る 問 題 に 直 面 した 中 小 企 業 にとって それはビジネス 面 においても 金 銭 面 においても 大 きなリスクだ 特 許 を 取 得 し ていれば 弁 護 士 を 通 じて 特 許 侵 害 で 訴 えることができる 結 果 として 低 コストの 知 財 対 策 だった と ムッツ 氏 は 自 身 の 経 験 を 振 り 返 る 同 社 の 09 年 の 売 上 高 は 金 融 危 機 の 影 響 により 1 億 1,600 万 ユーロと 20% 下 落 した 売 上 高 利 益 とも 大 幅 に 落 ち 込 んだものの 労 働 時 間 口 座 制 度 ( 超 過 勤 務 手 当 てを 休 暇 に より 充 当 )や 操 業 時 間 短 縮 制 度 などの 柔 軟 な 労 働 制 度 を 活 用 し 赤 字 転 落 を 免 れた ムッツ 氏 は 国 際 展 開 も 危 機 回 避 に 役 立 ったとする 多 様 化 した 製 品 ポートフォリオと 国 際 販 売 網 により ある 市 場 の 不 調 を 違 う 市 場 の 好 調 で 補 うことができた 一 つの 市 場 に 集 中 する 企 業 に 比 べ その 点 が 強 みになった という 12

世 界 経 済 の 回 復 とともに テンテグループの 11 年 の 売 上 高 は 1 億 5,000 万 ユーロと 08 年 水 準 まで 復 調 した 同 社 は 短 中 期 的 な 目 標 を 売 上 高 で 年 率 5% 増 という 着 実 な 水 準 に 置 いている (4) ベコテクノロジーズ- 絆 が 支 える 組 織 力 で 世 界 に 挑 む COMPANY PROFILE ベコテクノロジーズ 設 立 :1982 年 本 社 :ノイス'ノルトライン ヴェストファーレン 州 ( 従 業 員 数 :375 人 'うち 約 3 分 の1 が 国 外 拠 点 ( 主 力 商 品 :コンプレッサーの 周 辺 機 器 ' 凝 縮 液 排 出 装 置 油 水 分 離 装 置 フィルターなど( 主 な 国 外 の 販 売 先 地 域 :: 欧 州 米 国 アジア 中 東 オセアニア アフリカ 取 得 認 証 :ISO9001:2008 URL:http://www.beko.de ベコテクノロジーズ( 以 下 ベコ)は コンプレッサーから 出 る 凝 縮 液 を 排 出 する 装 置 を 世 界 で 初 めて 電 子 制 御 化 したメーカーとして 知 られる 従 業 員 375 人 の 中 規 模 企 業 なが ら 1982 年 の 創 業 当 初 から 国 外 市 場 を 視 野 に 入 れる 世 界 16 カ 所 に 自 社 の 販 売 拠 点 を 独 米 印 の 3 カ 国 に 生 産 拠 点 を 持 つグローバル 企 業 に 成 長 した 日 本 法 人 の 代 表 取 締 役 ティ ム バーバー 氏 に 戦 略 を 聞 いた 1 創 業 時 から 国 外 市 場 に 着 目 空 気 圧 を 利 用 する 生 産 工 程 に 不 可 欠 のコンプレッサー 例 えば 自 動 車 の 塗 装 工 程 で 塗 料 を 噴 射 する 機 械 などに 使 われている これらの 工 程 で 空 気 を 圧 縮 した 後 空 気 中 の 水 蒸 気 が 液 化 ( 凝 縮 液 )する 場 合 がある コンプレッサー 中 に 凝 縮 液 が 残 留 すると その 水 分 で 高 価 な 機 械 を 損 傷 するほか 生 産 工 程 に 液 が 入 り 込 んで 製 品 にダメージを 与 えるリスク がある このため 発 生 した 凝 縮 液 をコンプレッサーから 排 出 する 必 要 がある 排 出 を 効 率 的 に 行 わないと 圧 縮 した 空 気 が 漏 れ 機 械 の 性 能 が 落 ち 無 駄 な 電 力 を 消 費 することに なるのだ 70 年 代 のオイルショックの 影 響 でエネルギー 価 格 が 高 止 まりしていた 80 年 代 初 頭 電 力 消 費 量 の 多 いコンプレッサーの 省 エネ 化 に 商 機 を 見 いだしたのが ベコ 創 業 者 のベアト ールド コッホ 氏 である 同 氏 はコンプレッサーから 出 る 凝 縮 液 の 排 出 装 置 を 電 子 制 御 化 し 凝 縮 液 が 所 定 水 準 までたまった 時 点 で 自 動 的 に 排 出 するシステムを 世 界 で 初 めて 開 発 した 排 水 の 頻 度 は 必 要 最 小 限 に 抑 えられ 圧 縮 空 気 の 漏 れを 極 力 なくすことでコンプレ 13

ッサーの 性 能 向 上 と 省 エネに 貢 献 した このシステムにはドイツだけでなく 国 外 でも 需 要 があり 創 業 直 後 の 80 年 代 から 欧 州 米 国 アジアの 順 に 販 売 エリアを 拡 大 していった 創 業 者 は 明 確 なビジョンを 持 っていた 省 エネの 重 要 性 はドイツだけでなく 世 界 でも 認 識 されており 世 界 にビジネス 機 会 があると 見 通 していた (バーバー 氏 ) 創 業 当 初 から 国 外 市 場 をも 視 野 に 入 れた 戦 略 を 持 っていたということだ ドイツ 最 大 手 の 信 用 調 査 会 社 ホッペンシュテットの 企 業 格 付 けで 同 社 は 最 上 位 にラン クされている(ドイツ 国 内 対 象 450 万 社 のうち 3% 程 度 が 最 上 位 を 取 得 ) 10 年 秋 には ドイツ 主 要 紙 ディ ヴェルト とコンサルティング 会 社 ミュンヘン ストラテジーグル ープが 企 業 収 益 の 伸 びなどに 基 づいてランク 付 けした 成 長 するドイツ 中 小 企 業 TOP100 にも 入 った 2 世 界 規 模 で 結 束 力 醸 成 を 図 る 国 外 を 含 めた 総 従 業 員 は 375 人 だが 15 カ 国 地 域 の 国 外 支 店 と 3 カ 国 の 工 場 多 数 の 販 売 代 理 店 を 持 つ アジアでは タイを 統 括 拠 点 に 日 本 韓 国 中 国 インドに 支 社 を 置 き 23 カ 国 地 域 ( 中 東 と 中 央 アジアを 含 む)に 代 理 店 を 持 つ 国 外 展 開 の 際 は 極 力 代 理 店 を 通 さず 支 社 による 直 接 営 業 の 体 制 を 取 っている 代 理 店 を 買 収 して 支 社 化 する 事 例 も 多 いという 日 本 支 社 (02 年 設 立 )にはバーバー 氏 を 含 む 5 人 の 従 業 員 を 配 置 直 接 販 売 と 代 理 店 を 介 した 販 売 を 併 用 している 国 内 外 の 販 売 生 産 拠 点 網 を 限 られた 人 数 で 効 率 的 に 運 営 するには 強 い 組 織 力 が 求 め られる まず 同 社 が 取 り 組 むのは 世 界 レベルで 従 業 員 と 会 社 の 結 束 を 強 める 日 々の 社 風 作 り だ 支 社 長 など 幹 部 に 限 らず 国 外 支 社 の 従 業 員 を 積 極 的 にドイツ 本 社 や 他 の 支 社 に 研 修 や 営 業 会 議 参 加 などで 出 張 させる 各 地 の 職 場 の 雰 囲 気 を 肌 で 感 じさせ 同 僚 と 交 流 させ るためだ 10 年 8 月 に 拡 張 した 本 社 には 在 外 従 業 員 を 含 めた 研 修 を 行 う 複 数 のセミナー ルームが 備 えられている また 年 に 数 回 発 行 される 社 報 ( 対 外 公 表 )には 新 製 品 の 紹 介 記 事 などとともに 従 業 員 の 自 己 紹 介 コーナーがある さらに 経 営 陣 が 海 外 駐 在 員 に も 常 に 気 を 配 ることを 心 掛 けている 東 日 本 大 震 災 の 後 経 営 トップが 自 ら 毎 日 電 話 をく れた (バーバー 氏 ) これらは 日 々のささいな 取 り 組 みだが 国 外 を 含 めた 組 織 全 体 の 結 束 力 強 化 につながっているようだ ドイツ 中 小 企 業 連 盟 の 報 告 書 中 小 企 業 (Mittelstand)の 専 門 性 の 高 い 労 働 力 ~ 企 業 の 成 功 レシピ~ (11 年 6 月 )の 中 で 同 社 は 有 能 な 従 業 員 を 社 内 にとどまらせている 成 功 14

例 として 取 り 上 げられている 過 去 数 年 ベコは 専 門 性 の 高 い 人 材 の 欠 如 に 直 面 してい た 企 業 価 値 を 高 めることで 有 能 な 従 業 員 を 維 持 することを 考 えた 具 体 的 には 企 業 が 成 長 するに 従 って 新 規 の 国 外 市 場 開 拓 を 目 指 し その 中 で 有 能 な 社 員 にビジネスキャ リアを 伸 ばすことにつながるチャンスを 積 極 的 に 与 えた また 同 社 は 家 族 と 職 場 の 結 び 付 きにも 着 目 し フレキシブルな 労 働 体 系 を 積 極 的 に 取 り 入 れた ( 同 報 告 書 )とある 国 外 従 業 員 を 含 めて チーム 意 識 を 醸 成 し 国 外 市 場 を 視 野 に 入 れた 企 業 戦 略 を 有 能 な 人 材 と 共 有 する この 全 体 としてのモチベーション 向 上 につなげる 取 り 組 みが 国 際 化 を 支 える 基 礎 となっている 3 国 外 拠 点 に 売 り 上 げ 以 外 の 貢 献 を 求 める 国 外 の 販 売 拠 点 は 売 り 上 げだけでなくユニークな 貢 献 をも 求 められる 顧 客 の 要 求 レ ベルが 世 界 でも 最 も 高 いといわれる 日 本 からは 日 本 市 場 で 求 められるニーズについてド イツ 本 社 の 開 発 部 門 にフィードバックしている 確 かに 多 くの 分 野 において 世 界 で 日 本 市 場 の 要 求 レベルが 最 も 高 いと 耳 にする 日 本 市 場 での 要 求 に 忚 じて 開 発 した 製 品 スペックが 国 外 市 場 では 過 剰 品 質 とされる 実 態 もある 日 本 のスペックは 高 すぎる のではなく 時 として( 世 界 に 比 べて) 早 すぎ る のだ とバーバー 氏 はいう 95 年 に 来 日 し 途 中 バンコク 駐 在 を 挟 んだものの 日 本 のビジネスに 精 通 する 同 氏 ならではの 見 解 だ 4 国 際 化 で 最 先 端 を 知 る 国 外 市 場 を 目 指 す 同 社 と 同 規 模 の 日 本 企 業 に 対 して バーバー 氏 は 業 界 のリーダーに なるには 世 界 に 対 してオープンになり 常 に 世 界 の 最 先 端 に 身 を 置 く 必 要 がある と 指 摘 日 本 企 業 の 多 くが 本 社 と 海 外 拠 点 または 顧 客 とのコミュニケーションのために 翻 訳 通 訳 作 業 をしながら 市 場 開 拓 を 行 っている 実 態 について それでは 国 外 市 場 はいつまでたっ ても その 他 の 市 場 と 社 内 で 認 識 されるだろう 大 きなマンデート( 権 限 )を 持 った 英 語 のできる 人 材 を 登 用 し 海 外 市 場 を 積 極 的 に 開 拓 する 姿 勢 が 必 要 と 苦 言 を 呈 する また 企 業 の 国 際 化 については 当 社 では 早 くからドイツ 人 以 外 の 人 材 を 登 用 してきた 今 はドイツ 本 社 に 中 国 人 スタッフもいる 新 製 品 に 対 する 彼 らの 反 忚 やコメントは 10 ペ ージにおよぶ 中 国 市 場 リポートに 勝 る 価 値 がある という 15

(5) IDS イメージング ディベロップメント システムズ- 大 胆 な 発 想 を 力 に COMPANY PROFILE IDS イメージング ディベロップメント システムズ 設 立 :1997 年 本 社 :オーバースルム 'バーデン ビュルテンブルク 州 ( 従 業 員 数 :105 人 主 力 商 品 : 産 業 用 デジタルカメラ ソフトウエア 主 な 国 外 の 販 売 先 地 域 :: 欧 州 米 国 日 本 中 国 韓 国 台 湾 メキシコ オーストラリアなど 取 得 認 証 :ISO9001 ISO14001 URL:http://www.ids-imaging.jp 産 業 用 カメラメーカーの IDS イメージング ディベロップメント システムズ( 以 下 IDS)は 1997 年 に 従 業 員 2 人 で 創 業 した 他 社 に 先 駆 けて 取 り 組 んだ USB( 汎 用 接 続 規 格 )カメラで 技 術 的 優 位 を 確 立 わずか 14 年 間 で 従 業 員 105 人 売 上 高 は 20 万 ユー ロが 2,600 万 ユーロに 拡 大 した 欧 米 日 の 3 大 主 要 市 場 に 拠 点 を 構 える 同 社 の 強 みと 国 際 戦 略 について 日 本 支 社 代 表 取 締 役 クリスティアン ファン デル プルグ 氏 に 聞 いた 1 USB に 賭 ける USB カメラとは 工 場 生 産 ラインの 随 所 に 設 置 される 産 業 用 カメラの 一 つで USB ケ ーブルを 使 ってパソコンにつなぐ 産 業 用 カメラは 例 えば 自 動 車 工 場 で 部 品 が 正 確 な 位 置 に 適 切 に 取 り 付 けられているか 食 品 工 場 で 異 物 が 混 入 していないか 包 装 容 器 の 印 刷 は 正 確 な 位 置 になされているかなどを 確 認 するために 利 用 される 産 業 用 カメラはアナログ 式 とデジタル 式 に 大 別 される さらに 様 式 によって データの 転 送 速 度 とケーブルの 長 さなどの 特 徴 が 異 なる データ 転 送 の 速 度 が 速 いほど 1 秒 間 に 多 くの 写 真 を 撮 影 してパソコンで 処 理 できる ケーブルの 長 さはカメラとパソコンの 距 離 を 意 味 し 工 場 の 機 械 配 置 によっては この 距 離 を 長 くせざるを 得 ない 場 合 もある USB カメラはデジタル 式 だが 日 本 では 従 来 は 使 い 勝 手 がよくデジタル 式 より 画 質 が 良 いアナログ 式 の 人 気 が 高 かった しかしカメラで 撮 影 したデータをパソコンに 取 り 入 れ る 部 分 に いったん 写 真 データを 受 け 止 める 画 像 入 力 ボードが 必 要 なため デジタル 式 1 より 価 格 が 高 くなる 最 近 は 低 価 格 や 利 便 性 の 向 上 から 徐 々にデジタル 式 のシェアが 上 昇 している 日 本 以 外 では すでにデジタル 式 が 主 流 だ デジタル 式 の 中 には USB カメ ラのほか ケーブルを 100 メートルまで 延 ばせる GigE カメラ 転 送 容 量 が 比 較 的 大 きい Camera Link カメラがある IDS は デジタルカメラの 中 でも USB カメラと GigE カメラに 特 化 して 開 発 販 売 を 行 っている 中 でも 産 業 用 としての USB カメラの 潜 在 性 には 他 社 に 先 駆 けて 着 目 してき 1 デジタル 式 でもカメラ リンク 方 式 は 画 像 入 力 ボードが 必 要 16

た USB2.0 規 格 が 2000 年 に 発 表 されて 間 もない 03 年 には USB2.0 カメラを 製 品 化 当 時 の USB カメラは 一 般 消 費 者 が 趣 味 で 使 うもの と 思 われていただけに その 時 点 で USB カメラに 賭 ける 選 択 は 大 胆 な 決 断 だった 経 営 陣 は USB カメラの 将 来 性 に 強 い 信 念 を 持 っていた 日 本 メーカーは 最 近 USB カメ ラの 開 発 を 本 格 的 に 始 めたばかり わが 社 は 7 年 前 に 開 発 を 始 めており 他 社 を 品 質 と 経 験 面 でリードしている (ファン デル プルグ 氏 )という USB カメラの 将 来 性 に 着 目 した 経 営 者 には 先 見 の 明 があったわけだ 11 年 11 月 にドイツ シュトゥットガルトで 開 催 された 欧 州 最 大 の 産 業 用 カメラ 見 本 市 VISION 2011 では 世 界 で 初 めて 8 台 の USB3.0 カメラを 1 台 のパソコンにつなげ て 画 像 処 理 を 可 能 にするシステムを 発 表 した USB カメラより 高 価 で 画 像 入 力 ボードが 必 要 な Camera Link カメラでしかできなかった 技 術 を USB カメラを 用 いて 実 現 したのだ それを USB3.0 カメラで 可 能 にするには 高 度 なソフトウエア 技 術 が 必 要 だった 同 社 の 先 進 性 を 示 す 事 例 だろう 2 在 庫 を 極 小 化 IDS は 経 営 陣 がほとんどの 株 を 所 有 する 非 上 場 会 社 だ 株 主 の 思 惑 に 影 響 されずに 思 いきりのよい 経 営 判 断 が 下 せる ファン デル プルグ 氏 はそれを 強 みの 一 つに 挙 げる 従 業 員 数 の 内 訳 は 開 発 製 造 事 務 がほぼ 3 分 の 1 ずつ 本 社 工 場 の 製 造 部 門 のスタ ッフは 30 人 余 で 1,400 種 類 もの 製 品 を 全 て 生 産 している 従 業 員 数 に 対 して 製 品 の 種 類 が 多 いことが 分 かる 在 庫 を 極 力 尐 なくして 過 剰 在 庫 のリスクを 抑 える 一 方 大 量 受 注 が あれば 生 産 ラインの 稼 働 時 間 を 増 やす 1 週 間 のリードタイムで 顧 客 に 届 ける 仕 組 みを 確 立 している ドイツの 雇 用 システムは 時 に 硬 直 的 と 指 摘 されるが 10 年 前 に 比 べて 従 業 員 は 労 働 時 間 を 弾 力 的 に 調 整 することに 寛 容 になっている (ファン デル プルグ 氏 )と いう 繁 忙 期 には 生 産 ラインの 稼 働 時 間 を 増 やす 一 方 リーマンショックの 影 響 を 受 けた 09 年 などは 稼 働 時 間 を 減 らし 従 業 員 に 休 暇 取 得 を 奨 励 した 解 雇 者 を 出 さずにリーマン ショックを 乗 り 切 ったという 3 国 外 営 業 支 援 拠 点 を 設 立 創 業 当 初 から 世 界 市 場 での USB カメラなどの 需 要 を 見 据 えた 製 品 開 発 を 行 い 国 外 市 場 でも 代 理 店 網 を 拡 大 しながら 販 売 活 動 を 展 開 してきた しかし 国 外 市 場 での 販 売 を 代 理 店 に 任 せていたため 販 売 は 思 うように 伸 びなかった この 反 省 から 07 年 米 ボストン 17

10 年 東 京 11 年 には 仏 パリに 営 業 支 援 の 拠 点 となる 支 社 を 置 いた 日 本 支 社 は 代 理 店 への 技 術 サポートや 製 品 補 充 を 支 援 するが 販 売 業 務 には 携 わらず 日 本 の 代 理 店 3 社 が 行 う 技 術 サポートは ファン デル プルグ 氏 が 日 本 台 湾 韓 国 中 国 にある 販 売 代 理 店 を 回 って 技 術 面 の 支 援 や 研 修 を 実 施 している 新 製 品 が 開 発 された 直 後 に 重 点 的 に 行 うほか オンラインでも 代 理 店 の 販 売 能 力 向 上 を 図 っている 国 外 拠 点 の 従 業 員 はボス トンが 3 人 パリと 東 京 は 1 人 ずつと 尐 人 数 に 抑 えているものの 国 外 代 理 店 を 近 くで 支 援 する 体 制 を 築 いたことで 国 外 の 売 上 高 が 増 加 結 果 として 11 年 の 販 売 台 数 は 過 去 最 高 の 6 万 5,000 人 に 達 した 4 外 国 語 能 力 を 採 用 条 件 に IDS の 本 社 は シュトゥットガルトから 40 キロほど 離 れた 人 口 約 1 万 4,000 人 の 小 さ な 町 にある 同 社 では 社 員 に 最 低 1 ~ 2 カ 国 語 の 外 国 語 を 話 せる 人 材 を 採 用 している 日 本 の 中 小 企 業 では 海 外 担 当 者 数 人 のみが 英 語 を 話 すというケースがほとんどだろう IDS では 社 員 全 員 が 国 外 企 業 とのコミュニケーションを 取 れる 体 制 を 築 くことで 常 に 世 界 市 場 を 見 据 えたビジネスをしやすくしている USB カメラが 産 業 用 カメラとして 利 用 できることが 世 界 的 に 認 知 される 前 から その 将 来 性 を 見 いだしていた 発 想 力 そしてその 発 想 を 競 争 力 に 変 えるために 他 社 をリードす る 製 品 開 発 や 国 際 ビジネスに 対 忚 する 体 制 作 りをしてきた これらが 同 社 の 強 さといえ そうだ 18

3. まとめ 2011 年 10 月 号 から 5 回 にわたり 国 際 展 開 に 成 功 しているドイツ 中 小 企 業 の 事 例 を 紹 介 した ドイツ 国 内 での 製 造 へのこだわり 販 売 代 理 店 と 自 社 拠 点 の 併 用 など 各 社 個 別 の 特 徴 が 見 られる 一 方 で 共 通 点 も 多 かった 生 産 拠 点 をドイツに 残 す 紹 介 した 5 社 ( 表 )のうち 4 社 は 生 産 拠 点 をドイツ 国 内 のみに 保 有 している テュン カース だけが 中 国 ブラジル 米 国 などの 顧 客 の 近 くに 生 産 拠 点 を 持 つ 製 品 特 性 上 顧 客 の 個 別 のニーズに 忚 じる 必 要 があるためだ 4 社 が 生 産 拠 点 をドイツに 残 す 理 由 として 挙 げたのは 中 国 などにおける 知 的 財 産 権 保 護 の 問 題 への 懸 念 と メード イン ジャーマニー(ドイツ 製 ) のブランド 力 を 維 持 すること だ 代 理 店 ビジネスのデメリットを 克 服 生 産 拠 点 をドイツに 残 す 一 方 で 各 社 とも 欧 州 米 国 アジア 中 单 米 など 幅 広 い 国 地 域 で 販 売 している 中 小 企 業 が 開 設 できる 国 外 拠 点 やその 従 業 員 の 規 模 は 自 ずと 限 られ るので 各 社 とも 代 理 店 網 拡 大 を 中 心 に 新 規 市 場 開 拓 を 図 っている 代 理 店 の 良 し 悪 しに よってビジネスの 成 否 が 左 右 されたり 顧 客 との 距 離 が 遠 くなることでニーズが 把 握 しづ らくなるなどのデメリットがある その 対 策 として ベグラ は 代 理 店 のある 国 でも 自 ら 顧 客 を 訪 問 したり 見 本 市 に 出 展 するなどしてデメリットをカバーしている また IDS は 国 外 市 場 での 販 売 を 代 理 店 任 せ にしたことで 売 り 上 げが 伸 びなかった そこで 主 要 市 場 に 営 業 支 援 拠 点 を 置 き 周 辺 国 を 含 めた 代 理 店 への 研 修 や 製 品 調 達 の 支 援 をするこ とで 国 外 市 場 での 売 上 高 増 に 結 び 付 けている IDS の 国 外 拠 点 は 営 業 を 行 わないため 駐 在 員 は 2 ヵ 所 が 1 人 1 ヶ 所 が 3 人 と 最 小 限 にとどめている 国 際 人 財 による 強 固 なチーム 作 り 多 くの 国 外 販 売 代 理 店 や 自 社 の 国 外 拠 点 を 限 られた 人 数 で 運 営 しなければならない 中 小 企 業 には 国 外 拠 点 を 含 めた 世 界 規 模 での 高 い 組 織 力 が 求 められる この 点 で 特 筆 すべき は ベコ だ ドイツ 国 内 外 の 従 業 員 375 人 で 15 カ 国 地 域 の 営 業 拠 点 と 3 カ 国 の 工 場 多 数 の 販 売 代 理 店 を 運 営 している 支 社 長 など 幹 部 に 限 らず 国 外 支 社 の 従 業 員 を 積 極 的 19

にドイツ 本 社 や 他 の 支 社 に 研 修 や 営 業 会 議 参 加 などのために 出 張 させる 東 日 本 大 震 災 の 時 には 経 営 陣 自 らが 日 本 に 派 遣 されている 駐 在 員 に 毎 日 電 話 をかけ ケアするなど 従 業 員 に 対 する 気 遣 いを 忘 れない 日 々の 取 り 組 みがチーム 意 識 を 醸 成 し 有 能 な 人 材 の 流 出 抑 制 と 国 外 拠 点 を 含 めた 全 社 的 な 企 業 戦 略 の 共 有 につなげている 国 際 担 当 者 を 特 定 せず 全 社 的 に 国 際 ビジネスができる 体 制 を 作 るのも 今 回 紹 介 した 5 社 の 多 くに 共 通 する 特 徴 だ IDS は 1~2 の 外 国 語 を 話 せることを 採 用 条 件 とし テュンカ ースは 採 用 時 に 異 文 化 対 忚 能 力 を 重 視 する テンテ は 職 業 訓 練 生 の 頃 から 外 国 企 業 と の 商 談 に 同 席 させたり 国 際 見 本 市 会 場 での 営 業 活 動 をさせて 異 文 化 対 忚 能 力 を 養 っ ている ベコが 日 本 市 場 は 世 界 で 最 も 要 求 レベルが 高 い と 評 価 するように 日 本 の 中 小 企 業 の 技 術 はドイツのそれに 勝 るとも 务 らない 企 業 が 持 つ 資 金 や 人 材 が 限 られる 中 で その 製 品 を 国 外 で 販 売 する 体 制 作 りや 国 外 市 場 を 念 頭 に 置 いた 経 営 発 想 などの 点 で ドイツ 中 小 企 業 から 学 ぶべきところがありそうだ その 多 くは 突 飛 なアイデアではなく 取 り 入 れ 易 いものである 20

アンケート 返 送 先 FAX: 03-3582-5569 e-mail:ord@jetro.go.jp 日 本 貿 易 振 興 機 構 海 外 調 査 部 欧 州 ロシア CIS 課 宛 ジェトロアンケート 調 査 タイトル: 国 際 競 争 力 あるドイツ 中 小 企 業 の 戦 略 に 迫 る ジェトロでは ドイツ 中 小 企 業 の 戦 略 調 査 を 目 的 に 本 調 査 を 実 施 いたしました 報 告 書 をお 読 みいただいた 後 是 非 アンケートにご 協 力 をお 願 い 致 します 今 後 の 調 査 テーマ 選 定 などの 参 考 にさせていただきます 質 問 1: 今 回 本 報 告 書 で 提 供 させていただきました 国 際 競 争 力 あるドイツ 中 小 企 業 の 戦 略 に 迫 る について どのように 思 われましたでしょうか?( をひとつ) 4: 役 に 立 った 3:まあ 役 に 立 った 2:あまり 役 に 立 たなかった 1: 役 に 立 たなかった 質 問 2:1 使 用 用 途 2 上 記 のように 判 断 された 理 由 3その 他 本 報 告 書 に 関 するご 感 想 をご 記 入 下 さい 質 問 3: 今 後 のジェトロの 調 査 テーマについてご 希 望 等 がございましたら ご 記 入 願 います お 客 様 の 会 社 名 等 をご 記 入 ください ( 任 意 記 入 ) 会 社 団 体 名 ご 所 属 企 業 団 体 個 人 部 署 名 お 名 前 ご 提 供 頂 いたお 客 様 の 個 人 情 報 については ジェトロ 個 人 情 報 保 護 方 針 (http://www.jetro.go.jp/privacy/)に 基 づき 適 正 に 管 理 運 用 させていただき ます また 上 記 のアンケートにご 記 載 いただいた 内 容 については ジェトロの 事 業 活 動 の 評 価 及 び 業 務 改 善 事 業 フォローアップのために 利 用 いた します ~ご 協 力 有 難 うございました~