Sports Medicine Research Center, Keio Univ. No.15 おもな 活 動 報 告 10 月 法 政 大 学 第 二 中 学 校 駅 伝 選 手 メディカルチェック 大 学 蹴 球 部 体 脂 肪 率 測 定 大 学 スキー 部 VO 2 体 脂 肪 率 測 定 強 くなるためのスポーツ 医 学 基 礎 講 座 スポーツと 栄 養 : 強 くなるために 何 を いつ どれくらい 食 べればいいの? (10/30) 11 月 国 民 体 育 大 会 冬 季 神 奈 川 県 代 表 選 手 健 康 診 断 強 くなるためのスポーツ 医 学 基 礎 講 座 実 践 : 一 人 暮 らしでも 作 れるアスリートメニュー (11/27) 12 月 幕 内 力 士 体 脂 肪 率 測 定 ( 両 国 ) 大 学 競 走 部 VO 2 測 定 大 学 女 子 バスケットボール 部 血 液 検 査 VO 2 体 脂 肪 率 測 定 ( 研 究 ) 法 政 大 学 第 二 中 駅 伝 選 手 メディカルチェック 強 くなるためのスポーツ 医 学 基 礎 講 座 実 践 : 体 脂 肪 率 を 測 って 体 組 成 を 知 ろう (12/11) ト ピ ッ ク ス 体 育 会 学 生 を 対 象 とした 血 液 検 査 のご 報 告 スポーツ 医 学 研 究 センターでは 2013 年 度 体 育 会 学 生 を 対 象 とした 血 液 検 査 を 6 月 3 日 4 日 6 日 7 日 の 4 日 間 で 実 施 しました これは 塾 内 のスポーツ 選 手 が 安 全 にスポーツ に 取 り 組 み そして 最 高 のパフォーマンスを 発 揮 することを 目 的 に スポーツ 医 学 研 究 センターが 開 設 当 初 より 継 続 している サポート 業 務 のひとつです この 検 査 は 貧 血 関 連 項 目 として 末 梢 血 ( 白 血 球 数 赤 血 球 数 ヘモグロビン(Hb) 量 ヘマ トクリット 値 など)と 血 清 鉄 値 のチェックを 行 い 肝 機 能 を 中 心 とした 生 化 学 項 目 (GOT GPT CK LDH)のチェックも 行 います 本 年 度 は 38 部 1278 名 (うち 男 子 944 名 女 子 334 名 )に 血 液 検 査 を 行 いました このうち 貧 血 関 連 項 目 が 基 準 値 を 満 たし 当 センターの 判 定 基 準 で 貧 血 に 関 して 異 常 は 認 めら れない と 判 定 された 学 生 は 男 子 889 名 (94%) 女 子 300 名 (90%) でした 一 方 貧 血 ( 男 Hb<12.5mg /dl 女 Hb<11.0mg /dl) が 認 められ 呼 び 出 し 指 示 を 出 した 学 生 は 男 子 4 名 (0.4%) 女 子 7 名 (2.3%)でした 呼 び 出 しに 応 じた 学 生 には 保 健 師 による 食 事 生 活 習 慣 の 改 善 指 導 また 貧 血 の 程 度 に 応 じて 慶 應 義 塾 大 学 スポーツ 医 学 研 究 センター ニューズレター 第 15 号 [2014 年 2 月 発 行 ] 医 師 による 医 療 機 関 の 紹 介 保 健 管 理 センターでの 鉄 剤 処 方 を 行 いました 投 薬 治 療 までは 必 要 としない 軽 度 の 鉄 欠 乏 性 貧 血 または Hb 低 下 ( 男 12.5 Hb<13.5mg /dl 女 11.0 Hb < 11.5mg /dl)と 判 定 された 学 生 は 男 子 15 名 (1.6%) 女 子 3 名 (0.8%)でした この 軽 度 鉄 欠 乏 性 貧 血 者 については 食 事 での 鉄 分 の 摂 取 を 心 がけるよう 文 書 にて 注 意 を 促 し 鉄 分 が 多 く 含 まれる 食 材 などを 記 載 したリーフレットを 添 付 しまし た また Hb は 十 分 量 を 満 たしていても 血 清 鉄 値 が 低 下 し ている 貧 血 予 備 軍 ( 男 Fe<50 μ g/dl 女 Fe<40 μ g/dl) が 男 子 36 名 (3.8%) 女 子 24 名 (7.2%)に 見 られ このまま 放 置 すれば 貧 血 に 進 む 可 能 性 があるとして 食 事 での 鉄 分 摂 取 を 心 がけるよう 文 書 で 注 意 を 促 しました その 他 貧 血 関 連 以 外 の 項 目 では 当 センターの 判 定 基 準 に 従 って 呼 び 出 し 保 健 師 による 面 接 を 行 い 食 事 指 導 や 再 検 査 などのフォローアップを 行 いました 今 年 度 の 血 液 検 査 では 小 食 や 欠 食 減 量 のための 食 事 制 限 が 原 因 と 思 われる 貧 血 が 目 立 ちました 昼 食 夕 食 をサンドイッ チひとつで 済 ませ 体 育 会 の 練 習 をこなしていたり 無 理 な 食 事 制 限 をして 体 重 を 落 とそうとしていたりと 運 動 が 直 接 の 原 因 というよりも 栄 養 不 足 による 貧 血 といえました 最 近 大 学 が 安 価 で 朝 食 を 提 供 し 朝 食 の 大 切 さを 伝 えようという 啓 発 活 動 が 話 題 になっています このように 一 般 の 学 生 においても 欠 食 は 健 康 を 損 ねると 懸 念 されています 定 期 的 に 運 動 を 行 っ ている 体 育 会 学 生 には 食 事 を 疎 かにせず 運 動 量 に 見 合 った 栄 養 を 摂 ることが 貧 血 の 予 防 やケガの 防 止 に 繋 がることを 理 解 して 欲 しいと 思 います 今 後 も 定 期 的 な 血 液 検 査 を 含 め 体 育 会 学 生 向 け 教 育 プログラム 強 くなるためのスポーツ 医 学 基 礎 講 座 ではスポーツ 栄 養 に 関 する 講 座 を 充 実 させ 塾 内 スポー ツ 選 手 が 安 全 に 充 実 した 競 技 生 活 を 過 ごせるように サポート 体 制 を 整 えていきたいと 思 っております メディカルチェックと 運 動 処 方 作 成 終 了 のお 知 らせ 慶 應 義 塾 健 康 保 険 組 合 被 保 険 者 を 対 象 にした メディカル チェックと 運 動 処 方 作 成 は 誠 に 勝 手 ながら 本 年 度 3 月 いっ ぱいで 終 了 させていただきます 教 職 員 のみなさまが 運 動 を 行 うにあたり 必 要 なサポートは 引 き 続 き ご 要 望 にあわせた 内 容 でご 提 案 させていただきます 運 動 をこれから 始 めたい 運 動 を 始 めるにあたり 健 康 面 で 不 安 のある 方 は どうぞお 気 軽 にご 相 談 ください
特 集 開 催 報 告 2013 年 度 公 開 講 座 スポーツと 健 康 生 活 習 慣 とがん 予 防 表 記 の 講 座 が 2013 年 9 月 28 日 ( 土 ) 午 後 1:30 3:30 三 田 キャンパス 西 校 舎 527 教 室 にて 開 催 されました 公 開 講 座 スポーツと 健 康 は 健 康 との 関 わりの 中 で スポーツ ないし 身 体 を 動 かすこと 全 般 を 広 くとらえ 日 々の 生 活 の 中 で 役 に 立 つ 知 識 や 実 践 方 法 を 学 んでいただくことを 目 的 に 開 催 しています 今 年 度 は 生 活 習 慣 とがん をテーマに スポーツを 広 くとらえ がんの 発 症 と 身 体 活 動 や 食 生 活 といっ た 生 活 習 慣 との 関 連 ついて 取 り 上 げました 95 名 の 参 加 者 に お 集 まりいただき 前 半 は 津 金 昌 一 郎 先 生 による がんを 遠 ざける 生 活 習 慣 後 半 は 小 熊 祐 子 准 教 授 による スポーツで がんを 予 防 できるのか? が 行 われました 以 下 より 各 講 演 のまとめを 掲 載 し 2013 年 度 公 開 講 座 の 報 告 集 とさせてい ただきます セッション 1 がんを 遠 ざける 生 活 習 慣 国 立 がん 研 究 センター がん 予 防 検 診 研 究 センター センター 長 兼 予 防 研 究 グループ 長 津 金 昌 一 郎 はじめに 皆 さん 本 日 の 講 演 では これを 守 れば 絶 対 にがんになら ないといった 類 いのすごい 予 防 法 を 期 待 されているかもしれ ませんが 残 念 ながらそのようなものはありません そもそ もがんになることは 一 種 の 老 化 現 象 なので これを 避 けるこ とはできないのです ただ 食 べ 物 や 生 活 習 慣 に 注 意 するこ とで がんになる 確 率 を 下 げることはできます タイトルの 中 で がんを 遠 ざける という 表 現 を 用 いたのものそういう 意 味 なのです せっかく 一 度 の 人 生 なのですから がんにも なりたくないけど できれば 好 きなものを 食 べて 好 きなこ とをしたいものです 世 の 中 にはがん 予 防 に 関 するいろいろ な 情 報 があふれていますが 誤 った 情 報 に 惑 わされて 変 な ものにお 金 をかけたり わざわざ 不 味 いものを 食 べたりする 必 要 はありません 本 日 の 講 演 では 国 立 がん 研 究 センター の 職 員 としてお 伝 えできる 科 学 的 に 分 かっている 情 報 を 提 供 します ですから 今 日 の 話 に 関 しては 信 じてもらってい いのですが 科 学 的 に 分 かっていることの 多 くは 当 たり 前 ことであり ですから 僕 の 話 はちょっとつまらないかもしれ ません( 笑 ) 日 本 人 とがん 日 本 人 の 死 因 のデータをみてみると 他 の 疾 患 に 比 べがん が 右 肩 上 がりで 増 えていることが 分 かります( 図 1) 2011 年 のデータでは 総 死 亡 の 30% を 占 め 年 間 36 万 人 が 亡 くなっ ています これはがんになる 要 因 が 巷 にあふれてきたからで はなく 日 本 人 の 人 口 構 成 が 高 齢 化 したためです そもそも がんは 年 齢 とともに 発 生 率 が 増 加 します がん 罹 患 率 がん 死 亡 率 をみても 40 歳 代 まではほとんどがんになる 人 はいませ 図 1 主 要 死 因 別 粗 死 亡 率 年 次 推 移 (1947 年 2011 年 )
んが それ 以 降 がんの 発 生 率 は 上 昇 し 80 歳 代 では 男 性 の 3 人 に 1 人 女 性 の 4 人 に 1 人 ががんになります つまりが んになることは 年 をとったことの 代 償 と 考 えてよいでしょう 今 日 現 象 だけをみると 周 囲 にがんで 亡 くなる 方 は 多 い 印 象 があるかもしれません しかし これはがんになりやすくなっ たり がんが 治 りにくくなったのではなく 皆 が 年 をとれる ようになったからです つまり 以 前 は 他 の 病 気 で 死 んでし まい がんになれるまで 長 生 きできなかったのです 一 方 総 数 ではなく 年 齢 別 の 死 因 割 合 でみてみると いわゆる 働 き 盛 りの 世 代 では 半 分 以 上 ががんが 原 因 で 亡 くなっています これは 社 会 的 にも 大 変 インパクトが 大 きいといえるでしょう これらの 世 代 では 特 にがんを 遠 ざけることが 重 要 になると 同 時 に 定 期 的 ながん 検 診 による 早 期 発 見 早 期 治 療 に 務 める 必 要 があるのです 表 1 がん 対 策 :がんで 死 なないために 表 2 がんになりやすい 生 活 習 慣 生 活 環 境 がんで 死 なないために 将 来 がんになるとしてもがんで 死 なないようにするため の 対 策 を( 表 1)に 示 します 特 に 有 効 性 が 確 立 されているが ん 検 診 は 積 極 的 に 受 けるべきです 一 方 有 効 性 が 確 認 され ていないような 余 計 な 検 診 を 受 けすぎたり 前 立 腺 がんなど がんと 共 存 しながら 天 寿 を 全 う 出 来 るようなものを 無 理 矢 理 見 つけ 出 して 徹 底 的 に 治 療 するというやり 方 はちょっと 考 え ものかもしれません がんにならないようにするためには 生 活 習 慣 や 生 活 環 境 の 改 善 が 重 要 であることは 言 うまでもありませんが その 根 拠 を 示 すためには 科 学 的 データが 必 要 です がん 予 防 の 確 からしさを 調 べるには 数 多 くのヒトを 対 象 とした 研 究 ( 疫 学 研 究 )が 必 須 であり なおかつ 複 数 の 研 究 で 一 致 した 結 果 が 得 られていなく てはなりません 例 えば そのような 生 活 習 慣 を 実 践 してもらっ た 人 たちのがんのリスクが 実 践 しなかった 人 達 とくらべて 低 くなった とか そのような 生 活 習 慣 を 持 つ 人 たちのがんの リスクが そうでない 人 たちと 比 べて 低 い ということを 示 す ことが 必 要 なのです 同 時 に 動 物 実 験 でも 同 じような 結 果 が 得 られていること また その 要 因 ががんのリスクを 上 げたり 下 げたりするメカニズムが 科 学 的 に 説 明 可 能 であって 初 めて 確 からしさ が 証 明 できるのです さて このような 条 件 を 満 たす 研 究 を 経 て 今 日 がんになりやすい 生 活 習 慣 生 活 環 境 がいくつかわかってきました( 表 2) たばことがん たばこが 肺 がんのリスクになることはみなさん 知 っている と 思 いますが たばこが 関 与 するがんは 肺 がんだけではあり ません 子 宮 体 がんと 甲 状 腺 がんを 除 いたほとんどすべての がんの 発 生 率 をたばこは 上 げます 肺 がんに 限 らず 何 らか のがんになる 確 率 は 男 性 において 1.6 倍 に 上 昇 します 見 方 を 変 えると もし たばこが 無 くなったら 男 性 の 全 がんの 30% がこの 世 から 無 くなるのです ちなみに 女 性 ではそもそ も 喫 煙 率 が 低 いので 全 がんにたばこが 与 える 影 響 は 4% 程 度 です 具 体 例 で 示 してみると 40 歳 の 時 点 でがんでない 男 性 喫 煙 者 100 人 と 男 性 非 喫 煙 者 100 人 を 追 跡 してみると 74 歳 の 時 点 では 非 喫 煙 者 のうち 20 人 ががんになり うち 1 人 が 肺 がんになります 一 方 喫 煙 者 では 32 人 ががんになり う ち 5 人 が 肺 癌 になるのです 最 近 では 受 動 喫 煙 ( 本 人 は 喫 煙 しなくても 周 囲 で 喫 煙 して いる 人 の 煙 を 吸 い 込 むこと)もリスクとして 注 目 されていま すが 受 動 喫 煙 により 肺 癌 はもちろんのこと 喉 頭 がん 咽 頭 がんのリスクを 上 げることがはっきりとわかっています 喫 煙 をしていない 女 性 約 3 万 人 を 13 年 間 追 跡 調 査 した 結 果 で は 夫 が 20 本 / 日 以 上 喫 煙 する 場 合 肺 がん 発 生 率 は 夫 が 喫 煙 しない 場 合 と 比 べて 約 2 倍 になります これから 推 測 すると たばこを 吸 わない 女 性 が 肺 がんになった 場 合 100 人 中 32 人 は 夫 のたばこが 原 因 で 肺 がんになったと 計 算 されます この ように 受 動 喫 煙 の 悪 影 響 はスゴイので がん 予 防 のためには 自 分 が 吸 わないことはもちろん 他 人 のたばこの 煙 も 可 能 な 限 り 避 けることが 重 要 なのです 最 近 中 国 から 飛 来 する PM2.5 の 健 康 への 悪 影 響 が 心 配 されていますが 日 常 生 活 に おいては 完 全 分 煙 環 境 で 禁 煙 席 に 座 っていても 室 内 の PM2.5 濃 度 は 環 境 基 準 を 超 えるのが 実 態 ですし 居 酒 屋 などで 喫 煙
者 と 同 席 している 環 境 での PM2.5 濃 度 は 簡 単 に 北 京 レベルか それ 以 上 になるのです 多 くの 国 ではすでに 人 前 でタバコを することは 法 律 で 禁 止 されており そういう 意 味 では 日 本 は 非 常 に 珍 しい 国 と 言 えるでしょう ところで わが 国 におけるタバコの 消 費 量 は 1970 年 代 をピー クに 減 りつつあります その 効 果 が 出 始 めるのは 遅 れること だいたい 20 年 と 言 われますが 事 実 1990 年 代 半 ばをピーク に 日 本 人 の 肺 がんの 年 齢 調 整 死 亡 率 は 減 り 続 けています タ バコをやめることの 効 用 は 肺 がんに 限 ったものではありませ ん タバコがなくなることによって 男 性 におけるがん 全 体 の 発 生 率 は 確 実 に 30% は 減 ることを 覚 えておいてください 飲 酒 とがん お 酒 を 飲 み 過 ぎると 体 内 のお 酒 の 通 り 道 すなわち 口 腔 咽 頭 喉 頭 食 道 大 腸 のがんのリスクが 上 がります( 胃 がん はあまり 関 係 ない) そのほか 肝 臓 がん 膵 臓 がん 乳 がん のリスクも 上 昇 します がん 全 体 で 見 ると 日 本 酒 換 算 で 毎 日 3 合 以 上 飲 み 続 けるとがんの 発 症 リスクは 約 1.6 倍 となり た ばこによるリスク 上 昇 とほぼ 同 程 度 になります 一 方 2 合 未 満 ではがんのリスクが 上 がるかどうかははっきりとしません お 酒 とタバコの 大 きな 違 いは タバコが 百 害 あって 一 利 無 しで あるのに 対 し お 酒 の 場 合 適 度 の 飲 酒 は 心 筋 梗 塞 や 脳 梗 塞 の リスクを 減 らす 効 果 がある 点 です 具 体 的 には 1 日 あたりエタ ノール 換 算 で 23g(ほぼ 日 本 酒 1 合 に 相 当 ) 一 週 間 あたり では 150g が 許 容 される 範 囲 です 巷 では 赤 ワインがいいと か 焼 酎 がいいとか いろいろな 話 がありますが お 酒 の 種 類 はあまり 関 係 なく あくまで 摂 取 するエタノールの 量 が 重 要 で す したがって ウイスキーのように 濃 い 酒 は 少 ししか 飲 めな いし(ダブル 1 杯 ) ビールのように 薄 い 酒 であればそれなり の 量 ( 大 びん 1 本 ) 飲 んでもいいことになります ただし 飲 酒 量 にかかわらず お 酒 を 飲 むことで 脳 出 血 や 高 血 圧 のリスク は 上 がりますからこの 点 は 注 意 して 下 さい これは 肺 炎 など 感 染 症 による 死 亡 リスクが 高 くなるからです 一 般 には BMI=22 が 理 想 とされますが これらのデータから 見 る 限 り 特 に 中 高 年 では BMI は 23-27 の 範 囲 が 適 正 の 値 よ うに 思 えます(つまり 多 少 太 っていても 大 丈 夫 ) 米 国 の 場 合 は BMI>30 のような 高 度 肥 満 者 の 割 合 が 34% なので 国 民 全 体 を 痩 せさせることでがんを 減 らすメリットが 期 待 できます が 日 本 人 の 場 合 は BMI>30 の 割 合 は 中 高 年 者 で 3% 程 度 な ので 高 度 肥 満 者 以 外 の 大 多 数 の 国 民 はがん 死 亡 に 関 してい うと 体 重 はあまり 気 にしないでよく 痩 せ 過 ぎの 人 はむし ろ 栄 養 をきちんと 摂 って 体 重 を 増 やした 方 がいいと 言 えます 適 切 な 栄 養 摂 取 により 体 の 免 疫 状 態 が 良 好 に 保 たれることが がん 予 防 に 役 立 つと 考 えられます ところで 喫 煙 者 がタバコをやめると 体 重 が 増 えるので 吸 い 続 けた 方 が 良 いんだと 言 い 訳 する 人 がいますが そのよう なことはありません 極 端 に 痩 せている 場 合 を 除 き 非 喫 煙 者 のがん 死 亡 リスクが 喫 煙 者 の 死 亡 リスクを 上 回 ることはな いのです( 図 2) したがって タバコを 止 めたことで 体 重 が 増 えたとしても タバコを 止 めたことのメリットの 方 が 上 回 ると 考 えてください ただし 糖 尿 病 は 別 です 糖 尿 病 は 痩 せれば 痩 せるほど 病 気 のリスクは 下 がります したがって 将 来 どうしても 糖 尿 病 になりたくなければ 痩 せることに 一 生 懸 命 になるべきですが そのかわり 他 の 病 気 になるリ スクが 上 がるので どのあたりでバランスを 取 るか 判 断 は 難 しいところでしょう 食 事 内 容 とがん 世 間 ではいろいろと 言 われていますが これまでの 科 学 的 研 究 の 結 果 では これを 摂 っていればがんにならないという 単 一 の 食 品 栄 養 素 は 分 かっていません 一 方 摂 りすぎる とがんのリスクを 上 げる 可 能 性 がある 食 品 中 の 成 分 あるい は 調 理 保 存 の 過 程 で 生 成 される 化 学 物 質 などが 確 認 されて います したがってリスクを 分 散 させるためにも 偏 らない バランスの 取 れた 食 事 を 心 がけることが 重 要 なのです( 当 た 肥 満 やせとがん 肥 満 の 人 は 肝 臓 がん 膵 臓 がん 胆 管 がん 食 道 腺 がん 大 腸 がん 閉 経 後 の 乳 がん 一 方 やせの 人 は 肺 がん 閉 経 前 の 乳 がんになりやすいというデータが 出 ています 乳 がん に 関 して 言 うと 閉 経 前 後 で なり 易 い 人 の 体 型 が 反 対 になっ ています したがって 若 いときに 痩 せていて 中 年 になっ て 体 重 が 増 えるといったパターンが 一 番 いけないわけです 体 格 指 数 である BMI と 死 亡 リスク( 全 死 因 )の 関 係 を 男 性 16 万 人 女 性 19 万 人 という 日 本 人 の 大 規 模 集 団 で 追 跡 してみ ると 男 性 においても 女 性 においても BMI27 を 超 えると(30 を 超 えると 顕 著 に) 早 死 にするリスクが 高 くなります 一 方 男 性 女 性 ともに 痩 せすぎていても 死 亡 率 は 上 昇 しますが 図 2 BMI とがん 死 亡 リスクとの 関 連 日 本 の 7 つのコホート 研 究 のプール 解 析
り 前 でつまらないことですが ) わが 国 の 食 習 慣 において 特 に 注 意 が 必 要 なのは 塩 分 です 日 本 人 を 対 象 にしたコホート 研 究 ( 前 向 き 研 究 )では 塩 分 塩 蔵 食 品 の 摂 取 量 が 多 い 人 ほど 胃 がんになりやすいことが 示 されています 塩 (ナトリウム)そのものより たぶん 塩 気 が 濃 いもの( 漬 け 物 塩 蔵 魚 や 干 物 たらこ 等 )を 胃 の 中 に 入 れることがいけないようです これら 濃 い 塩 分 により 胃 の 粘 膜 の 状 態 が 変 化 し ピロリ 菌 に 感 染 し 易 くなったり ピロ リ 菌 の 感 染 がある 状 態 で 発 癌 を 促 進 することが 考 えられます 厚 生 労 働 省 から 出 されている 日 本 人 の 食 事 摂 取 基 準 によれば 食 塩 は 1 日 あたり 男 性 9g 女 性 7.5g 未 満 とすること(ちな みに 現 在 の 20 歳 以 上 の 平 均 1 日 食 塩 摂 取 量 は 男 性 11.4g, 女 性 9.8g) 特 に 高 塩 分 食 品 ( 塩 辛 練 りウニなど)は 週 1 回 以 内 に 控 えることが 望 ましいとされています また 減 塩 は 脳 卒 中 高 血 圧 やその 結 果 として 発 症 する 循 環 器 疾 患 のリスクを 下 げ ます われわれ 日 本 人 は 胃 がんや 脳 卒 中 の 発 生 が 諸 外 国 に 比 べ 多 いとされていますが これは 日 本 食 による 塩 分 摂 取 過 多 が 関 係 していると 考 えられ この 点 は 日 本 食 の 唯 一 の 欠 点 と も 言 えるかもしれません 野 菜 果 物 の 摂 取 とがんとの 関 連 をみてみると 野 菜 では 口 腔 咽 頭 喉 頭 食 道 胃 のがんを 果 物 ではこれらに 加 え 肺 がんを 予 防 する 効 果 が 複 数 の 疫 学 研 究 で 示 されてきまし た 食 道 がんは お 酒 とたばこによるリスクが 上 がる 代 表 的 ながんですが 喫 煙 者 で 酒 を 毎 日 2 合 以 上 飲 む 人 は 酒 もた ばこもやらない 人 に 比 べ 食 道 がんになるリスクが 7.67 倍 高 くなります ここで 酒 たばこをやる 人 が 頑 張 って 野 菜 や 果 物 を 沢 山 食 べた 場 合 ある 程 度 リクスは 軽 減 し 2.86 倍 ま で 下 がりますが それでも 酒 タバコがゼロよりは 高 い 状 況 にかわりありません 推 奨 量 としては 野 菜 果 物 で 1 日 400g を 目 指 したいところです 国 民 栄 養 調 査 の 結 果 では 若 い 世 代 は 300g / 日 しか 摂 れていないようなので もう 少 し 野 菜 果 物 の 摂 取 を 心 がけた 方 がいいでしょう 一 方 加 工 肉 赤 肉 ( 牛 豚 羊 の 肉 )の 摂 取 量 が 多 いと 大 腸 がんになりやすいことが 多 くの 欧 米 の 研 究 で 確 認 されて います 日 本 人 男 女 約 80000 人 を 8-11 年 間 追 跡 したデータ でも 同 じ 様 な 結 果 が 得 られており 男 性 では 肉 類 を 総 量 で 約 140g/ 日 女 性 では 赤 肉 で 100g/ 日 よりも 多 く 食 べると 結 腸 がんのリスクが 1.4 1.5 倍 高 くなるようです 国 際 的 に 推 奨 されている 肉 の 摂 取 総 量 は 生 肉 換 算 で 90g/ 日 ですが 現 在 の 日 本 人 の 平 均 摂 取 量 はこれよりも 少 なく 59g/ 日 です 日 本 人 で 肉 を 摂 りすぎている 人 はおよそ 20% 前 後 と 推 測 されるので 国 民 の 80% は 肉 の 摂 取 に 関 してはあまり 気 にしなくてよいと 言 えるでしょう 飽 和 脂 肪 酸 はがんよりも 脳 血 管 障 害 や 循 環 器 疾 患 との 関 係 が 注 目 されていますが 飽 和 脂 肪 酸 を 摂 りすぎるとこれらの 疾 患 のリスクが 上 がるのはハンバーグとかステーキをたくさ ん 食 べているアメリカ 人 での 話 であって 日 本 人 においては 脳 卒 中 のリクスは 飽 和 脂 肪 酸 の 摂 取 量 が 多 い 方 がむしろ 低 い 心 筋 梗 塞 発 症 率 は 飽 和 脂 肪 酸 の 摂 取 量 とともにわずかに 上 が る 傾 向 がありますが 心 筋 梗 塞 発 生 率 そのものが 低 いので( 米 国 の 1/2-1/3) 全 体 でみたときの 影 響 は 少 ないと 言 えます それよりも 元 々の 発 症 率 が 高 い 脳 卒 中 を 減 らすことの 方 が 集 団 でみた 場 合 のインパクトは 大 きいので その 点 では 飽 和 脂 肪 酸 はある 程 度 摂 った 方 が 良 いでしょう 具 体 的 には 飽 和 脂 肪 酸 20g/ 日 が 最 もリスクが 少 なくなるので 牛 乳 を 毎 日 200g, 肉 を 2 日 に 1 回 150g が 推 奨 される 摂 取 量 です ここま で 飽 和 脂 肪 酸 摂 取 が 許 容 されることは 意 外 に 思 われるかもし れません これは 日 本 人 の 場 合 欧 米 人 と 比 べて 魚 の 摂 取 量 が 多 いことに 関 係 しています 魚 を 多 く 摂 取 すると 心 筋 梗 塞 のリスクは 減 ります 一 方 魚 ばかり 食 べて 肉 を 食 べないと 脳 卒 中 のリスクは 高 まります これは 過 去 の 日 本 で 脳 卒 中 が 多 かった 理 由 の 一 つですが その 後 食 生 活 が 変 化 し 肉 を 食 べ るようになった しかし 魚 を 食 べる 習 慣 も 残 っているので この 両 者 が 絶 妙 にバランスし 日 本 を 世 界 一 の 長 寿 国 へと 導 いたのではないかと 推 測 できます 古 来 の 日 本 食 は 濃 い 塩 分 の 食 品 が 多 く また 炭 水 化 物 中 心 の 食 事 であり 必 ずしも 優 れたものだったとは 言 えません しかし その 後 の 適 度 に 西 洋 化 され 肉 牛 乳 野 菜 果 物 の 摂 取 量 が 多 くなったことは 古 来 のバランスの 偏 った 日 本 食 をちょうどいい 形 で 中 和 し 今 日 世 界 一 の 健 康 食 へと 進 化 させたわけです その 他 食 物 繊 維 ( 大 腸 がんの 予 防 ) 大 豆 イソフラボン( 乳 がんの 予 防 ) コーヒー( 肝 臓 がん 膵 臓 がん 子 宮 体 がんの 予 防 ) 緑 茶 ( 胃 がんの 予 防 )などはがんの 予 防 要 因 となる 可 能 性 が 示 されているので これらの 食 品 は 不 足 しないように 心 がける 一 方 動 物 実 験 では 焦 げた 物 ががんのリスクを 上 げることが 示 されているので 炭 のように 焦 げた 焼 き 肉 等 を 過 度 にとることは 避 けた 方 がいいでしょう(サンマの 焼 け 焦 げ 程 度 なら 問 題 なし) サプリメントとがん がん 循 環 器 疾 患 糖 尿 病 などの 疾 患 予 防 効 果 が 証 明 され たサプリメントは 現 状 では 無 いか あったとしてもその 効 果 は 極 めて 限 定 的 です 一 方 通 常 の 食 事 からは 摂 取 できない ような 高 用 量 のβカロチンやビタミン E をサプリメントとし て 摂 ることは 逆 にがんや 健 康 障 害 のリスクを 上 げることがわ かっています ビタミン E は 一 時 老 化 予 防 薬 などともては やされたこともありましたが 国 際 的 なデータをみてみると 高 用 量 のビタミン E を 摂 取 した 場 合 むしろ 寿 命 は 短 くなる ようです ですから 街 中 で 売 っている 高 用 量 ビタミン E の サプリメントを 熱 心 に 摂 ることはお 金 の 無 駄 であるばりでな く 早 死 ににつながる 可 能 性 があると 言 えましょう
まとめ 今 日 の 話 で 強 調 したい 点 は 何 を 摂 れば(すれば) 大 丈 夫 とか 何 を 摂 っては(しては)ダメというはことではなく 予 防 効 果 を 得 るための 最 適 量 を 意 識 することが 重 要 ということ です( 図 3) つまり たばこと 食 塩 を 除 けば 多 すぎても 少 なすぎてもリスクが 上 昇 することを 理 解 しておいてください たばこについては 吸 っていいことは 何 も 無 いのでやめてくだ さい 塩 分 も 少 ないほどいいのですが あまり 少 ないと 食 事 がまずくなるので 適 量 にする サプリメントはあくまで 不 足 しているものを 補 うという 目 的 で 利 用 してもらい 摂 り 過 ぎは 健 康 リスクを 上 げる 危 険 があるということです たばこを 吸 わない 節 酒 塩 蔵 品 控 えめ 身 体 活 動 を 高 く 保 つ 適 正 体 重 の 維 持 以 上 5 つの 健 康 習 慣 について それ を 守 っている 数 が 多 いほどがんのリスクは 段 階 的 に 下 がりま す 例 えば 65 歳 の 人 が 今 後 10 年 間 にがんになる 確 率 を 推 定 してみると 5 つの 健 康 習 慣 すべてを 満 たしている 人 は 約 12% であるのに 対 し 5 つともない 人 は 約 22%になってしまいます 図 3 摂 取 量 と 効 果 の 関 係 われわれ 国 立 がん 研 究 センターの HP でも 将 来 がんになるリ スクを 推 定 するツール 等 がんに 関 する 様 々な 情 報 を 提 供 し ています 是 非 参 考 にしてみてください (http://ganjoho.ncc.go.jp/public/pre_scr/prevention/evidence_ based.html) セッション 2 スポーツでがんを 予 防 できるのか? 慶 應 義 塾 大 学 スポーツ 医 学 研 究 センター 大 学 院 健 康 マネジメント 研 究 科 准 教 授 小 熊 祐 子 後 半 では スポーツを 身 体 を 動 かすこと 全 般 ; 身 体 活 動 (physical activity) と 広 くとらえ がん 予 防 のエビデンスと 実 践 法 についてお 話 していきたいと 思 います 今 までの 研 究 成 果 の 蓄 積 から 身 体 活 動 ががん 予 防 に 効 果 的 であることがわかってきています 国 際 的 には 世 界 がん 研 究 基 金 / 米 国 がん 研 究 協 会 が 2007 年 に 食 物 栄 養 身 体 活 動 とがん 予 防 世 界 的 展 望 ( 第 2 版 ) を 示 しており その 後 もウェブ 上 で 情 報 を 更 新 しています 1) 近 年 出 されたアメリカ がん 協 会 のガイドライン 2) 等 もあわせると 身 体 活 動 のがん 予 防 としてエビデンスがあるものは 結 腸 がん 乳 がん 子 宮 体 がん( 子 宮 内 膜 がん) 進 行 期 の 前 立 腺 がんです 特 に 結 腸 が んについてはそのエビデンスは 確 実 と 判 断 されています これ 以 外 のがんについてまだ 不 十 分 であるものの 予 防 効 果 が 期 待 できるものもあります また 身 体 活 動 は 心 疾 患 高 血 圧 糖 尿 病 骨 粗 鬆 症 メンタル 面 認 知 症 といったほかの 健 康 問 題 にも 効 果 的 であることがわかっており 推 進 することが 望 ま れます( 図 1 2) 日 本 においてはどうでしょうか 国 立 がん 研 究 センター 予 防 研 究 グループ 津 金 先 生 のところで 日 本 人 のエビデンスを アップデートされています(http://epi.ncc.go.jp/can_prev/index. html) 身 体 活 動 については 結 腸 がんはほぼ 確 実 乳 がんは 可 能 性 あり 今 のところ 全 がん 肺 がん 直 腸 がん 子 宮 頸 がん 子 宮 体 がん 卵 巣 がんについては データ 不 十 分 という 判 断 です 身 体 活 動 ががん 予 防 に 働 くメカニズムについては 全 体 像 が 解 明 されているわけではありませんが 正 常 細 胞 ががん 化 する プロセスのどこかに 関 与 しており がん 全 般 に 共 通 するものと 部 位 別 に 特 徴 のあるものとが 考 えられています ( 図 3) 図 1
では 身 体 活 動 とがん 予 防 のエビデンスの 元 となった 疫 学 研 究 多 くの 人 を 対 象 にして 疾 病 の 原 因 と 結 果 の 因 果 関 係 を 明 確 にしようとする 研 究 の 結 果 を 紹 介 します まず エビデンスが 確 実 と 考 えられている 大 腸 がんの 疫 学 研 究 結 果 です 研 究 は 今 までに 60 以 上 あり 強 固 なエビデンス があります 最 も 非 活 動 的 な 群 に 比 し 活 動 的 な 群 では 大 腸 が ん 発 症 のリスクはだいたい 20-25% 低 減 することがわかってい ます 最 初 は 欧 米 の 白 人 男 性 を 対 象 とした 研 究 が 多 かったので すが 今 では 女 性 でも アジア オーストラリアでも 同 等 の 結 果 が 認 められています 日 本 でも 8 つの 大 規 模 研 究 の 結 果 を まとめた 論 文 がでています また 用 量 反 応 関 係 というのですが 身 体 活 動 の 量 が 多 いほ ど その 後 の 発 症 リスクが 下 がる 傾 向 について 約 半 数 の 研 究 で 検 討 されており そのうち 2/3 でその 傾 向 を 認 めています すなわち 必 要 な 身 体 活 動 量 としては 1 日 30-60 分 息 がは ずんでくるくらいの 中 等 度 の 身 体 活 動 をほぼ 毎 日 行 うのがよい ということ 用 量 反 応 関 係 があるので 目 安 量 より 少 なくとも やらないよりはずっといいし さらに 多 く 行 えると 効 果 的 であ るといえます より 強 度 の 高 い 方 が 好 ましいのかどうかはまだ はっきりしていません 1つ 代 表 的 な 研 究 例 を 紹 介 しましょう ハーバード 大 学 卒 業 生 を 対 象 とした 研 究 で 30-79 歳 の 男 性 17148 名 を 1965 年 から 1988 年 まで 経 過 を 追 っています 3) 身 体 活 動 量 を 最 初 の 時 点 と 1977 年 の 時 点 でアンケートに 答 えていただく 形 で 把 握 して います その 結 果 2 回 のアンケートでずっと 活 動 量 の 高 いま まだった 群 と ずっと 低 いままだった 群 と 比 較 し 大 腸 ( 結 腸 ) がんのリスクが 半 分 ほどになっています( 図 5) 直 腸 がんで はこの 関 係 は 認 められませんでした 日 本 でも JPHC 研 究 等 で 同 様 の 結 果 が 出 されています 4) 乳 がん( 女 性 )では 60 あまりの 研 究 が 欧 米 アジア オー ストラリアを 中 心 に 各 地 でなされており 効 果 が 認 められてい ます 目 安 量 は 同 様 に 30-60 分 / 日 中 等 度 の 身 体 活 動 をほ ぼ 毎 日 行 うことであり 用 量 ー 反 応 関 係 も 認 めています 特 に 閉 経 後 の 乳 がんで 関 連 が 強 いようです 子 宮 体 がん( 子 宮 内 膜 がん)では 20 以 上 の 研 究 があり リスクは 20-30% 減 肥 満 やホルモン 補 充 療 法 の 影 響 も 考 えら れています 前 立 腺 がんについては 40 以 上 の 研 究 が 欧 米 アジア 中 心 に 行 われています 結 果 をゆがめる 原 因 として 1990 年 代 に 普 及 したスクリーニング 検 査 の 影 響 があります すなわち 運 動 をよくしている 方 は 全 般 的 に 健 康 意 識 が 高 いので 健 康 診 断 受 診 率 も 高 い 傾 向 があり この 時 期 の 早 期 がん 発 見 につなが り 身 体 活 動 量 の 多 い 人 であたかもがん 発 症 が 多 くなった 結 果 が 出 ている 可 能 性 があります 進 行 性 がんに 限 ると 身 体 活 動 の 予 防 効 果 がいえそうです さて では 実 際 どれくらいの 身 体 活 動 を 行 えばいいのでしょ うか 2013 年 3 月 に 健 康 づくりのための 身 体 活 動 指 針 (ア 図 2 図 3 図 4 図 5
クティブガイド) が 厚 生 労 働 省 から 出 されていますので 紹 介 します これは がんだけでなく 生 活 習 慣 病 運 動 器 障 害 や 認 知 症 予 防 と 身 体 活 動 体 力 との 関 連 を 検 討 した 疫 学 研 究 の 結 果 を 網 羅 的 に 収 集 まとめたものを 基 盤 に 一 般 の 方 にもわかり やすく 目 安 をまとめたものです ( 図 6) 18-64 歳 では 中 等 度 ( 早 足 歩 きくらい) 以 上 の 強 度 で 1 日 合 計 60 分 高 齢 の 方 では 強 度 は 問 わず 1 日 合 計 40 分 の 身 体 活 動 を 行 うこと 生 活 の 中 で 移 動 家 事 仕 事 で 行 ってもい いし 運 動 で 行 ってもいい 体 力 アップのためには 筋 力 トレー ニングやスポーツも 含 めて 行 うことをすすめています 今 回 強 調 しているのが プラステン というメッセージで す 先 ほど 紹 介 したように 身 体 活 動 の 健 康 面 への 効 果 は 用 量 反 応 効 果 があることをふまえ まずは 1 日 10 分 でもいいので 現 状 より+α 行 うことを 強 調 したわけです また その 方 の 準 備 状 況 すなわち 全 く 運 動 に 興 味 関 心 がない 方 であれば ま ずは 運 動 の 効 果 に 気 づき 生 活 に 取 り 入 れる 余 地 のあること に 気 づいてもらう(1) そして 少 しでもいいのでまずは 始 め てもらう(2) 推 奨 量 に 達 することを 目 標 に 量 を 増 やす(3) 既 に 推 奨 量 に 達 している 人 は つながる (4) すなわち 体 を 動 かすことの 楽 しさや 喜 びを 共 有 し 周 囲 の 人 の 活 動 量 アップ につなげる また 自 身 の 継 続 にもつながります また じっ としている 時 間 座 位 活 動 じっと 座 っている 時 間 英 語 だと sedentary といいますが 多 いことが 身 体 活 動 とは 独 立 して 疾 患 の 発 症 等 に 関 連 していることが 着 目 されています がんで も 大 腸 がん 子 宮 体 がん 卵 巣 がん 前 立 腺 がん がんによ る 死 亡 について その 関 連 が 示 されています 活 動 量 を 増 やす こととあわせて なるべくじっとしている 時 間 を 減 らすこと 図 6 健 康 づくりのための 身 体 活 動 指 針 (アクティブガイド)のメッセージ( 一 部 抜 粋 ) 分 断 することも 考 えることが 大 事 です 以 上 まとめを 図 7 に 示 しました 参 考 文 献 1)World Cancer Research Fund/American Institute for Cancer Research. Food, nutrition, physical activity, and the prevention of cancer; a global perspective. Washington DC; 2007. 2)Kushi LH, et al.: American Cancer Society Guidelines on nutrition and physical activity for cancer prevention: reducing the risk of cancer with healthy food choices and physical activity. CA Cancer J Clin 62:30-67, 2012. 3)Lee IM, et al.: Physical activity and risk of developing colorectal cancer among college alumni. J Natl Cancer Inst 83:1324-1329, 1991. 図 7 4)Lee KJ, et al.: Physical activity and risk of colorectal cancer in Japanese men and women: the Japan Public Health Center-based prospective study. Cancer Causes Control 18:199-209, 2007. Newsletter No.15 慶 應 義 塾 大 学 スポーツ 医 学 研 究 センター ニューズレター 第 15 号 慶 應 義 塾 大 学 スポーツ 医 学 研 究 センター Sports Medicine Research Center, Keio University 発 行 日 :2 014 年 2 月 2 8 日 代 表 : 戸 山 芳 昭 223-8521 横 浜 市 港 北 区 日 吉 4-1-1 慶 應 義 塾 大 学 スポーツ 医 学 研 究 センター TEL:045-566-1090 FAX:045-566-1067 http://sports.hc.keio.ac.jp/