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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

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32 農事組合法人法人用パンフ_24.2一部改正)

資 料 -6 平 成 20 年 度 第 2 回 北 陸 地 方 整 備 局 事 業 評 価 監 視 委 員 会 特 定 構 造 物 改 築 事 業 事 後 評 価 説 明 資 料 平 成 20 年 11 月 北 陸 地 方 整 備 局 -0-

Microsoft Word - jigyoukeikakusho.docx

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

スライド 1

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私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減


目 次 第 1. 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 等 1 (1) 土 区 画 整 理 事 業 の 名 称 1 (2) 施 行 者 の 名 称 1 第 2. 施 行 区 1 (1) 施 行 区 の 位 置 1 (2) 施 行 区 位 置 図 1 (3) 施 行 区 の 区 域 1 (4) 施

Microsoft Word - 目次.doc

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表紙

(Microsoft Word - \221\346\202P\202U\201@\214i\212\317.doc)

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公表表紙

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

Taro-H19退職金(修正版).jtd

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

1_2013BS(0414)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等


2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

17 外 国 人 看 護 師 候 補 者 就 労 研 修 支 援 18 看 護 職 員 の 就 労 環 境 改 善 運 動 推 進 特 別 20 歯 科 医 療 安 全 管 理 体 制 推 進 特 別 21 在 宅 歯 科 医 療 連 携 室 整 備 22 地 域 災 害 拠 点 病

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容 積 率 制 限 の 概 要 1 容 積 率 制 限 の 目 的 地 域 で 行 われる 各 種 の 社 会 経 済 活 動 の 総 量 を 誘 導 することにより 建 築 物 と 道 路 等 の 公 共 施 設 とのバランスを 確 保 することを 目 的 として 行 われており 市 街 地 環

●電力自由化推進法案

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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佐渡市都市計画区域の見直し

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する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

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目 次 1.はじめに 1 2. 花 粉 発 生 源 対 策 に 関 する 基 本 方 針 (1) 花 粉 発 生 源 対 策 の 現 状 と 課 題 2 (2) 花 粉 発 生 源 対 策 に 関 する 基 本 的 な 考 え 方 6 3. 花 粉 発 生 源 対 策 区 域 (1) 花 粉 症 対

スライド 1

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

市街化区域と市街化調整区域との区分

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Microsoft Word 印刷ver 本編最終no1(黒字化) .doc

損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

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総合評価点算定基準(簡易型建築・電気・管工事)

18 国立高等専門学校機構

Taro-08国立大学法人宮崎大学授業

市 の 人 口 密 度 は 5,000 人 を 超 え 図 4 人 口 密 度 ( 単 位 : 人 /k m2) に 次 いで 高 くなっている 0 5,000 10,000 15,000 首 都 圏 に 立 地 する 政 令 指 定 都 市 では 都 内 に 通 勤 通 学 する 人 口 が 多

Microsoft Word - H24様式(那珂市版).doc

別紙3


市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

(Microsoft Word - \220V\227v\215j\221S\225\266.DOC)

養 老 保 険 の 減 額 払 済 保 険 への 変 更 1. 設 例 会 社 が 役 員 を 被 保 険 者 とし 死 亡 保 険 金 及 び 満 期 保 険 金 のいずれも 会 社 を 受 取 人 とする 養 老 保 険 に 加 入 してい る 場 合 を 解 説 します 資 金 繰 りの 都

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321

3 職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 平 均 給 与 月 額

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回 答 Q3-1 土 地 下 落 の 傾 向 の 中 固 定 資 産 税 が 毎 年 あがるのはなぜですか? 質 問 : 土 地 下 落 の 傾 向 の 中 土 地 の 固 定 資 産 税 が 毎 年 あがるのはなぜですか? 答 : あなたの 土 地 は 過 去 の 評 価 替 えで 評 価 額 が

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

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m07 北見工業大学 様式①

退職手当とは

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税


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Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

積 載 せず かつ 燃 料 冷 却 水 及 び 潤 滑 油 の 全 量 を 搭 載 し 自 動 車 製 作 者 が 定 める 工 具 及 び 付 属 品 (スペアタイヤを 含 む )を 全 て 装 備 した 状 態 をいう この 場 合 に おいて 燃 料 の 全 量 を 搭 載 するとは 燃 料

別 表 1 土 地 建 物 提 案 型 の 供 給 計 画 に 関 する 評 価 項 目 と 評 価 点 数 表 項 目 区 分 評 価 内 容 と 点 数 一 般 評 価 項 目 立 地 条 件 (1) 交 通 利 便 性 ( 徒 歩 =80m/1 分 ) 25 (2) 生 活 利 便

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

個人住民税徴収対策会議

受 託 工 事 費 一 般 管 理 費 何 地 区 給 料 手 当 賞 与 引 当 金 繰 入 額 賃 金 報 酬 法 定 福 利 費 退 職 給 付 費 備 消 品 費 厚 生 福 利 費 報 償 費 旅 費 被 服 費 光 熱 水 費 燃 料 費 食 糧 費 印 刷 製 本 費 測 量 調 査

駐 車 場 管 理 規 程

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

01.活性化計画(上大久保)

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能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

第 1 条 適 用 範 囲 本 業 務 方 法 書 は 以 下 の 性 能 評 価 に 適 用 する (1) 建 築 基 準 法 施 行 令 ( 以 下 令 という ) 第 20 条 の7 第 1 項 第 二 号 表 及 び 令 第 20 条 の 8 第 2 項 の 認 定 に 係 る 性 能 評

2. 予 測 2.1. 予 測 項 目 予 測 項 目 は 以 下 のとおりとした 1 埋 設 廃 棄 物 の 掘 削 除 去 に 伴 う 廃 棄 物 2 造 成 等 の 施 工 の 一 時 的 な 影 響 による 建 設 工 事 に 伴 う 副 産 物 ( 建 設 発 生 土 建 設 廃 棄 物

目 次 高 山 市 連 結 財 務 諸 表 について 1 連 結 貸 借 対 照 表 2 連 結 行 政 コスト 計 算 書 4 連 結 純 資 産 変 動 計 算 書 6 連 結 資 金 収 支 計 算 書 7

平 成 26 年 度 第 3 回 農 商 工 等 事 業 計 画 認 定 事 業 一 覧 ( 別 紙 ) 農 商 工 等 事 業 計 画 :3 件 今 回 の 認 定 により 当 局 の 認 定 案 件 は121 件 ( 富 山 県 17 件 石 川 県 17 件 岐 阜 県 23 件 51 件 三

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

官報掲載【セット版】

2 平 均 病 床 数 の 平 均 病 床 数 では 療 法 人 に 対 しそれ 以 外 の 開 設 主 体 自 治 体 社 会 保 険 関 係 団 体 その 他 公 的 の 規 模 が 2.5 倍 程 度 大 きく 療 法 人 に 比 べ 公 的 病 院 の 方 が 規 模 の 大 き いことが

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Ⅱ. 有 機 稲 作 の 栽 培 技 術 解 説 目 1. 品 種 の 選 択 と 採 種 1) 品 種 の 選 択 63 (1) 品 種 選 択 と 早 晩 性 63 (2) 早 晩 性 における 中 生 種 の 位 置 づけ 63 (3) 品 種 選 択 の 留 意 事 項 63 2) 種 子 の 更 新 65 2. 育 苗 技 術 1) 播 種 までの 準 備 66 (1) 種 籾 の 調 整 消 毒 準 備 66 (2) 種 子 消 毒 の 仕 方 68 (3) 育 苗 用 土 の 準 備 70 (4)ムレ 苗 の 発 生 と 有 機 質 肥 料 の 関 係 70 (5) 育 苗 時 の 施 肥 量 73 2) 育 苗 法 74 (1) 有 機 育 苗 の 方 法 74 (2) 有 機 育 苗 の 苗 質 目 標 と 留 意 点 76 3. 土 づくり 技 術 1) 有 機 稲 作 の 土 づくり 77 (1) 土 づくりの 考 え 方 77 (2) 有 機 栽 培 へ 移 行 期 の 土 づくり 78 (3) 水 稲 の 生 育 収 量 と 地 力 窒 素 78 2) 堆 肥 の 利 用 と 土 づくり 79 (1) 堆 肥 の 特 性 と 利 用 上 の 留 意 点 79 (2) 堆 肥 の 製 造 法 と 留 意 点 82 3) 稲 わら 籾 殻 米 糠 の 利 用 と 土 づくり 83 (1) 収 穫 残 渣 利 用 の 考 え 方 83 (2) 収 穫 残 渣 利 用 の 留 意 事 項 83 4) 有 機 栽 培 田 と 生 物 多 様 性 84 (1) 有 機 栽 培 田 と 生 物 多 様 性 84 (2) 有 機 物 施 用 と 土 壌 単 収 への 影 響 84 5) 緑 肥 の 利 用 と 土 づくり 87 (1) 緑 肥 利 用 の 考 え 方 87 (2) 緑 肥 の 栽 培 と 鋤 込 み 90 (3) 緑 肥 導 入 利 用 上 の 留 意 事 項 93 6) 冬 期 湛 水 94 (1) 冬 期 湛 水 の 考 え 方 94 (2) 冬 期 湛 水 の 方 法 と 留 意 事 項 95 7) 排 水 対 策 95 (1) 排 水 保 水 対 策 の 考 え 方 95 (2) 排 水 対 策 の 方 法 と 留 意 事 項 95 4. 施 肥 管 理 技 術 1) 水 稲 の 養 分 吸 収 の 特 徴 96 2) 有 機 物 施 用 と 養 分 管 理 97 (1) 堆 肥 の 肥 効 率 97 (2) 土 壌 診 断 と 養 分 バランスの 是 正 98 (3) 追 肥 の 基 準 100 3) 有 機 栽 培 で 利 用 される 肥 料 等 の 特 性 100 次 4)ボカシの 作 り 方 使 い 方 103 (1)ボカシの 作 り 方 103 (2)ボカシの 使 い 方 103 5. 雑 草 防 除 技 術 1) 耕 種 的 除 草 の 考 え 方 105 2) 機 械 器 具 を 用 いた 除 草 106 (1) 考 え 方 と 適 用 場 面 106 (2) 攪 拌 型 機 械 の 初 期 除 草 の 方 法 107 (3) 器 具 を 用 いた 除 草 108 (4) 除 草 機 活 用 上 の 留 意 点 110 3)マルチ 除 草 111 (1) 紙 マルチ 除 草 111 (2) 布 ( 綿 )マルチ 除 草 113 (3) 活 性 炭 スラリー 除 草 113 4) 米 糠 除 草 屑 大 豆 除 草 114 (1) 米 糠 除 草 114 (2) 屑 大 豆 除 草 117 5) 生 物 除 草 119 (1)アイガモ 除 草 等 119 (2) 鯉 フナ 除 草 120 (3)スクミリンゴガイによる 除 草 120 (4) 浮 き 草 藻 類 の 活 用 121 (5)イトミミズ 類 による 除 草 121 (6) 緑 肥 被 覆 除 草 122 6. 栽 培 管 理 技 術 1) 耕 耘 法 123 (1) 耕 耘 方 法 と 有 機 物 分 解 123 (2) 耕 起 耕 耘 方 法 と 雑 草 抑 制 124 (3) 畝 立 耕 起 による 雑 草 抑 制 126 (4) 不 耕 起 127 2) 代 かき 技 術 128 (1) 代 かきの 考 え 方 と 方 法 128 (2) 代 かきの 留 意 事 項 130 3) 田 植 え 技 術 130 (1) 田 植 え 適 期 の 決 め 方 130 (2) 栽 植 密 度 設 定 の 留 意 事 項 131 7. 病 害 虫 防 除 技 術 1) 主 な 虫 害 の 発 生 生 態 と 対 策 132 (1)イネミズゾウムシ 132 (2)カメムシ 類 133 (3)トビイロウンカ 137 (4)コブノメイガ( 別 名 :ハマキムシ) 138 (5)フタオビコヤガ 139 2) 主 な 病 害 の 発 生 生 態 と 対 策 140 (1)いもち 病 140 (2) 苗 立 枯 病 142 (3) 紋 枯 病 143 62

1. 品 種 の 選 択 と 採 種 1) 品 種 の 選 択 (1) 品 種 選 択 と 早 晩 性 有 機 稲 作 では 風 土 に 適 した 品 種 の 栽 培 が 前 提 となり 出 穂 期 や 成 熟 期 を 基 準 にして 気 象 災 害 を 避 け 生 産 力 の 安 定 する 品 種 を 選 ぶ 初 期 生 育 が 不 十 分 なまま 出 穂 する 品 種 は 単 収 も 品 質 も 低 下 しやすい 気 候 が 順 調 であれば 地 域 の 日 照 や 地 力 を 最 大 限 利 用 できる 中 晩 生 種 ~ 晩 生 種 の 生 産 力 が 高 い ( 有 機 稲 作 の 基 本 技 術 図 Ⅰ -5 参 照 ) しかし 収 穫 期 の 台 風 秋 雨 による 倒 伏 や 排 水 不 良 あるいは 降 霜 による 登 熟 不 良 な ど 晩 生 種 には 一 定 のリスクが 伴 う 従 って 一 般 的 には 都 道 府 県 毎 に 定 めている 奨 励 品 種 の 中 で 同 じ 気 象 条 件 の 指 定 地 域 の 中 から 中 生 ~ 中 晩 生 品 種 を 選 択 する 同 じ 品 種 でも 栽 培 地 が 違 えば 早 晩 性 の 分 類 は 異 なる 例 えば 高 品 質 米 とされる コシヒカリ は 広 域 適 性 が 高 い 品 種 で 多 くの 府 県 で 奨 励 品 種 に 指 定 されているが 寒 冷 地 では 中 ~ 晩 生 に 分 類 され ( 表 Ⅱ-1) 中 間 地 ~ 温 暖 地 では 早 生 ~ 極 早 生 に 分 類 されている ( 表 Ⅱ-2) ここでい う 中 生 種 の 位 置 づけは 過 去 の 長 期 にわたる 標 準 的 な 作 付 時 期 を 基 準 にして 気 象 災 害 を 回 避 し 安 定 して 栽 培 出 来 る 出 穂 期 や 成 熟 期 を 基 本 として 決 められた 適 期 栽 培 を 可 能 とする 品 種 群 を 指 す 古 くから 地 域 の 基 準 となっている 中 生 種 は 概 ね 少 肥 適 応 性 を 持 ち 地 力 を 主 体 として 利 用 する 有 機 栽 培 で 籾 数 が 多 く 単 収 も 高 くなりやすい なお 有 機 栽 培 でも 作 付 けの 多 い コシヒカリ は いくつかの 点 で 有 機 栽 培 に 適 した 特 性 をもっ ている その 一 つは 古 い 時 代 の 育 成 の 選 抜 条 件 となった 少 肥 適 性 や 耐 冷 性 がある さらに 穂 数 よりも 穂 の 重 さで 収 量 が 増 える 穂 重 型 に 近 い 中 間 型 であり 地 力 窒 素 の 発 現 時 期 に1 穂 当 たり 籾 数 を 増 やせる 出 穂 以 降 の 活 性 が 高 い 特 性 がある これらは 有 機 栽 培 に 適 した 特 性 といえる 品 種 選 択 のポイントは 以 下 の 通 りである ⅰ. 有 機 稲 作 では 風 土 に 適 した 品 種 を 出 穂 期 や 成 熟 期 を 第 一 の 基 準 にして 都 道 府 県 ご とに 定 められた 奨 励 品 種 で 同 じ 気 象 条 件 の 指 定 地 域 の 中 から 中 生 ~ 中 晩 生 を 選 択 する ⅱ. 気 候 が 順 調 な 豊 作 年 であれば 中 晩 生 種 ~ 晩 生 種 の 生 産 力 が 高 い ⅲ. 偏 穂 重 ~ 穂 重 型 が 地 力 を 有 効 に 利 用 して 収 量 が 高 くなりやすい ⅳ. 早 生 極 早 生 品 種 で 穂 数 型 タイプの 草 型 や 耐 倒 伏 性 の 高 い 品 種 は 適 していないことが 多 い ⅴ. 穂 数 型 品 種 は 草 丈 が 短 く 分 げつが 増 え 多 肥 で 収 量 が 増 加 する 有 機 質 肥 料 で 初 期 生 育 が 抑 えられると 能 力 が 発 揮 出 来 ないので 草 丈 が 高 い 品 種 の 方 が 有 機 栽 培 に 適 している ⅵ. 広 域 適 応 性 のある コシヒカリ は 耐 寒 性 が 高 く 中 生 に 分 類 される 地 域 の 有 機 栽 培 に 適 し ている (2) 早 晩 性 における 中 生 種 の 位 置 づけ 近 年 慣 行 稲 作 では 農 薬 や 化 学 肥 料 の 使 用 量 が 減 少 傾 向 にあり 以 前 とは 栽 培 方 法 が 変 化 して いる また 乳 苗 や 稚 苗 を 利 用 し 除 草 剤 で 雑 草 害 を 抑 えるとともに 化 学 肥 料 で 地 力 不 足 を 補 える ので 作 付 時 期 が 前 進 し 早 生 品 種 が 増 加 している にもかかわらず 早 晩 性 の 分 類 基 準 はあまり 変 わっ ておらず 過 去 の 品 種 の 出 穂 期 や 成 熟 期 を 元 に 新 品 種 の 特 性 を 明 らかにする 奨 励 品 種 の 判 定 基 準 になっている 有 機 栽 培 では 少 し 生 育 時 期 がずれるが 標 準 品 種 は 水 稲 栽 培 の 歴 史 を 反 映 しており 早 晩 性 における 中 生 種 の 位 置 づけは 過 去 の 標 準 的 な 作 付 時 期 を 基 準 にしており 基 準 となる 奨 励 品 種 のデータは 有 機 栽 培 の 栽 培 基 準 として 役 に 立 つ また 基 準 となる 中 生 種 は 施 肥 に 依 存 しない 少 肥 適 応 性 を 持 ち 地 力 を 主 体 として 利 用 する 水 稲 栽 培 に 向 いている (3) 品 種 選 択 の 留 意 事 項 草 型 を 基 準 にするのは 地 力 の 発 現 量 (ソース) 63

表Ⅱ 1 特性表からみたコシヒカリあるいは中生品種の産地別扱い 䋨ㄘᨋ ዪ䇮ᐔᚑ㪈㪌ᐕ ផᅑ ቯ ᕈ 䈎䉌 䋩 ᵈ䋺 ಽ㶎䈲 と それに応じて生長する生育量 シンク との 穂数型品種は初期に多くの肥料で分げつが増 関係を一致させることを狙いとしている 地温 地 え収量を増加するが 分げつが不足すると草丈が 力窒素発現の有効温度 15 に制限される地力 短く小さくなることで 葉内の窒素濃度が高くなり ソースは 生育初期に増加する茎の数に比べ 病虫害が増えて健全な生育が出来ない 盛夏に増加する穂の重さを増大するシンクが有効 地力発現の下限温度は 稲作の栽培可能期間 に利用できる つまり 地力が発現する時期に茎 の大まかな目安である最低気温15 とも一致する の数が増加し 穂が重くなる偏穂重 穂重型のシ 寒冷地や早期栽培では特に留意する必要がある ンクを持つ品種が地力を有効に利用し 収量を高 が 地力発現の少ない時期の生育を順調にする めやすい ためには 耐寒性が高く 草丈が高く穂が重くな 64

表Ⅱ 2 特性表からみたコシヒカリあるいは中生品種の産地別扱い 続き 䋨ㄘᨋ ዪ䇮ᐔᚑ㪈㪌ᐕ ផᅑ ቯ ᕈ 䈎䉌 䋩 ᵈ䋺 ಽ㶎䈲 るほど適しており 短稈で穂数型の耐肥性や耐倒 栽培条件を基に 中生種を利用する基準や総合 伏性の高い品種は適さないものが多い 的な判断に基づいて 品種と栽培法の最適な組 合せを選択する また 多くの有機質肥料は化学肥料に比べ遅 効性であり 初期の栄養生長が制限されやすく 2 種子の更新 慣行栽培に比べて茎数と穂数の不足を招きやす い そういう観点からも 早生種は有機栽培に向 有機栽培に用いる種苗は 健全な種子を用い かない ただし 病虫害や気象災害の回避や て病虫害の発生のない種子を採取して 育苗した 雑草問題解決のために早生種を早期作付けする 苗を利用する 有機 JAS 規格では 原則として ことが有利な場合もある そのため 地力などの 有機農産物の生産の方法の基準に適合する種苗 65

を 使 用 すること などを 定 めており 基 本 的 には そのような 種 苗 が 市 販 されていないことから 可 能 な 限 りの 自 家 採 種 自 家 育 苗 が 求 められる また 有 機 JAS 規 格 には ただし 通 常 の 方 法 により 入 手 が 困 難 な 場 合 には 使 用 禁 止 資 材 を 使 用 さ れずに 生 産 されたもの ( 薬 剤 で 未 処 理 のもの) を 使 用 する それも 困 難 な 場 合 には 一 般 の 種 苗 を 使 用 しても 良 いが その 場 合 種 子 から 使 用 す るものは 種 子 から 苗 の 場 合 は 最 も 若 齢 の 苗 を 使 用 すること が 特 例 として 定 められており 販 売 流 通 する 種 苗 の 状 況 によっては 種 子 として 適 し た 栽 培 と 採 種 方 法 をとる 必 要 がある 種 子 栽 培 は 通 常 の 食 用 栽 培 に 加 えて 種 子 と しての 健 全 性 を 保 つため 罹 病 の 機 会 を 限 りなく 零 に 近 づける 必 要 がある さらに 自 然 交 雑 など の 影 響 に 配 慮 して 品 種 の 特 性 を 維 持 しつつ 病 虫 害 の 発 生 のない 籾 を 厳 選 して 利 用 する 種 採 り 場 としては 地 力 の 高 い 水 田 で 基 肥 を 減 らし 雑 草 害 や 病 虫 害 の 発 生 が 少 ない 圃 場 を 選 び でき るだけ 追 肥 を 行 わない 栽 培 で 異 品 種 が 混 入 した 場 合 には 株 毎 取 り 除 き 自 然 交 雑 種 や 異 系 統 を 取 り 除 き 品 種 特 性 を 維 持 する 必 要 がある 一 方 で 外 観 や 品 質 特 性 の 異 なる 交 雑 が 発 生 した 場 合 には それを 採 種 して 自 生 を 繰 り 返 すと 新 品 種 の 育 成 も 出 来 る ただし 品 種 固 定 には 10 回 ほどの 選 抜 採 種 が 必 要 であり 購 入 品 種 の 特 性 を 維 持 する 以 上 に 厳 密 な 保 存 や 選 別 管 理 が 必 要 であるが 採 種 圃 場 を 決 めて 有 機 栽 培 による 自 家 採 種 を 進 める 方 法 もある イネ 科 種 子 の 共 生 微 生 物 が 遺 伝 的 な 形 質 発 現 に 影 響 することが 知 られている ( 図 Ⅱ-1) また 有 機 栽 培 の 継 続 によって 生 産 される 種 子 には 細 胞 内 や 表 面 に 共 生 する 微 生 物 の 窒 素 固 定 活 性 が 高 かったり ( 平 野 ら 2001) 放 線 菌 などの 病 害 抑 制 活 性 が 高 い 菌 が 多 い ( 安 藤 高 橋 2011) など 有 用 な 共 生 微 生 物 の 影 響 が 現 れることも 報 告 され ており 採 種 環 境 を 有 機 的 に 管 理 することが 有 益 な 場 合 が 認 められている その 意 味 で 多 少 の 異 系 混 入 を 犠 牲 にしても 生 態 的 に 安 定 した 種 子 の 利 用 を 優 先 する 方 が 効 果 的 と 判 断 される 場 合 は 採 種 圃 場 を 決 めて 品 種 特 性 が 崩 れないように 自 家 採 種 を 行 うことも1つの 選 択 肢 となる 2. 育 苗 技 術 1) 播 種 までの 準 備 有 機 栽 培 向 けの 育 苗 技 術 はまだ 開 発 途 上 にあ るが 本 項 では 失 敗 しやすい 低 温 期 の 育 苗 と 有 機 育 苗 で 難 しいマット 苗 の 中 苗 育 苗 を 中 心 に 育 苗 用 土 の 配 合 や 資 材 の 利 用 について 解 説 する また 本 田 での 稲 の 健 全 な 生 育 には 根 張 りが 重 要 であるが 田 植 機 に 適 した 健 全 な 苗 姿 は 根 張 り を 抑 えて 地 上 部 を 充 実 させる 必 要 があり 養 分 を 十 分 に 供 給 することで そうした 育 苗 が 可 能 になる 本 来 の 稲 の 幼 植 物 の 能 力 を 抑 え 田 植 え 以 降 の 活 着 や 健 全 な 生 育 を 優 先 した 特 殊 な 生 育 状 況 が 求 められる 本 項 では 平 箱 で 育 苗 した 合 理 的 な 生 育 姿 を 目 標 に 播 種 量 を 160g ( 稚 苗 ) 80g ( 中 苗 ) 40g ( 成 苗 ) とした 時 の 苗 の 姿 を 図 Ⅱ-2を 目 安 に 生 育 させる 目 標 におく 図 Ⅱ-1 エンドファイトの 菌 糸 (ペレニアルライグラス 種 子 ) ( 宮 崎 2011) 注 : 湖 粉 細 胞 の 間 隙 に 糸 くずのように 見 えるのが エンドファイト (1) 種 籾 の 調 整 消 毒 準 備 1 種 籾 予 措 の 考 え 方 縦 目 篩 いや 比 重 選 によって 充 実 した 種 籾 を 選 び 種 播 きまでに 種 子 重 量 の 25% の 吸 水 を 行 い 66

稚 苗 中 苗 成 苗 図 Ⅱ-2 平 箱 (マット 苗 ) 育 苗 による 有 機 苗 の 目 標 草 姿 と 葉 齢 等 の 数 え 方 注 : 不 完 全 葉 は 本 葉 とせずに 葉 齢 を 数 える 図 Ⅱ-3 鳩 胸 状 態 の 籾 断 面 胚 芽 が 1mm 程 度 に 膨 らんだ 種 子 ( 鳩 胸 状 態 : 図 Ⅱ-3) を 準 備 する この 行 程 を 予 措 (よそ) と 呼 び 水 稲 の 通 常 の 播 種 技 術 の 一 部 である こ の 段 階 は 病 原 菌 の 繁 殖 にも 好 都 合 な 条 件 にな るので 慣 行 栽 培 では 殺 菌 を 行 う 有 機 栽 培 では 自 家 採 種 の 種 子 を 使 うことが 多 く 種 籾 の 収 穫 調 製 段 階 から 病 原 菌 の 繁 殖 には 注 意 する 相 対 湿 度 が 70% を 超 えると 病 気 の 発 生 や 種 の 質 が 低 下 するので 留 意 する 収 穫 後 の 乾 燥 の 基 準 である 籾 水 分 15% は 品 質 を 保 持 し 病 原 菌 や 害 虫 の 繁 殖 を 抑 える 保 管 の 基 準 であるが 種 子 が 休 眠 して 発 芽 を 抑 え 品 質 ( 生 命 力 ) を 室 温 で 2 ~ 3 年 保 つ 基 準 であ る 通 常 は 一 定 の 温 度 を 保 った 冷 蔵 保 存 をするが 種 子 の 寿 命 の 観 点 からは さらに 低 湿 度 低 温 ( 冷 凍 ) での 保 管 の 方 がよい 2 吸 水 から 催 芽 の 温 度 籾 重 量 に 対 し 吸 水 で 25~35% 増 加 す る が 15% の 吸 水 で 胚 が 動 き 始 め 25% の 吸 水 で 発 芽 可 能 となる 発 芽 可 能 温 度 は 10~45 の 範 囲 内 で 低 温 でも 数 日 かければ 発 芽 し 吸 水 か ら 鳩 胸 状 態 までに 平 均 温 度 の 日 積 算 温 度 で 100 日 (2400 時 ) かかる 発 芽 を 揃 えるため 低 温 で 充 分 吸 水 させる (70~75 日 経 過 ) 目 安 と して 吸 水 の 段 階 では 10 前 後 の 低 い 温 度 で 7 日 間 15 で 5 日 を 超 えないように 発 芽 直 前 の 状 態 にした 後 100 日 の 残 りで 発 芽 を 揃 わせ 25 ~ 30 の 最 適 温 度 で 1 日 (24 時 間 ) 温 度 を 加 える のが 最 適 な 催 芽 行 程 となる ( 図 Ⅱ-4) 3 予 措 までの 病 気 予 防 対 策 有 機 育 苗 では 種 子 伝 染 性 病 害 のうち いもち 病 を 除 き ムレ 苗 症 状 を 起 こす 苗 立 枯 病 が 最 も 問 題 となり 次 いでばか 苗 病 の 抑 制 が 重 要 で その 他 の 慣 行 栽 培 の 育 苗 で 防 除 対 象 となる 病 害 は あま り 問 題 視 されていない 保 菌 籾 が 混 入 すると 予 措 の 段 階 で 急 激 に 繁 殖 し 発 病 しやすいので 予 措 や 出 芽 までの 不 安 定 な 時 期 はできるだけ 短 期 間 に 終 らせるか 清 潔 な 環 境 ( 清 流 の 利 用 など) で 行 う 必 要 がある 67

2 種子消毒の仕方 ①健全な種子確保と塩水選 有機稲作では自家採種をする場合が多いが 病気のない健全な種籾の採種を心掛ける このた め 通常の栽培に比べ疎植にし ケイ酸不足が 起きないようにして病害虫の発生を避け 籾の充 実度を高める また 脱穀時に籾が傷つくと保管 の際にカビが侵入するので 種籾の収穫調製作 業は丁寧に行う 図Ⅱ 4 吸水状態での温度と発芽までの時間 自家採種を行った種籾は風選で調整し 米選 松尾 1956 から作図 機などの網目篩 2.2mm で篩い分けする 網 育苗段階では病原菌が増えないように健全な環 目篩いでほとんど選別できるが さらに塩水選で 境を維持することが大事で 表Ⅱ 3にばか苗病 沈下した種籾を洗浄し水気をきる 塩水には市販 に対する化学的殺菌の代替法を示しているが 未 の食塩を使用し 比重 1.13 粳用 の塩水は水 殺菌で育苗を行う有機育苗では 乾熱や温湯に 18L に対し食塩 4.8kg を目安に溶かして作る 実 よる殺菌効果は認められるものの 生育の改善効 際には 比重計で正確に計る 果はほとんどない 阿部ら 2009 そこで 健全 より充実度を高めるには 比重 1.15 が良いとい な育苗環境や床土により 多様な微生物が病原 う意見もある 充実した種籾ほど発芽後の生育が 菌の密度や活動を低下させるように心掛け 有機 良好で 種由来の養分も多くなるので離乳期の段 JASで許容されるトリコデルマ剤もあるが 種子消 階では特に生育に差がつきやすい だた 充実 毒は病気蔓延後の補完的な対処法として考えてお した種籾ほど吸水に時間がかかり 瘠せた籾は短 きたい 従って 床土材料の微生物性にも留意し い時間で発芽するので 催芽を揃える意味で種 て 病原菌密度を増加させないことが重要である 子選別程度に留意し 吸水方法を合わせる 表Ⅱ 3 有機育苗におけるばか苗と生育に及ぼす籾殻と種子に対する殺菌処理の効果 阿部ら 2009 68

2 温 湯 消 毒 温 湯 消 毒 は 古 くからある 技 術 で ばか 苗 病 やい もち 病 などの 種 子 伝 染 性 病 害 全 般 に 効 果 がある 小 規 模 な 場 合 には 家 庭 の 風 呂 場 を 利 用 してもいい が 温 度 制 御 が 難 しく 失 敗 の 原 因 になる また 高 温 すぎると 発 芽 率 が 落 ち 低 温 では 充 分 な 殺 菌 効 果 が 得 られない 正 しい 温 度 計 を 使 い 発 芽 率 を 保 持 するか 農 家 個 々でも 利 用 できる 専 用 の 温 湯 処 理 装 置 ( 写 真 Ⅱ- 1) が 市 販 されているので 利 用 する 近 年 では 環 境 保 全 型 農 業 の 一 環 で 種 子 の 殺 菌 剤 消 毒 を 廃 止 し JA やカントリーエレベー ター 利 用 の 単 位 で 温 湯 消 毒 器 の 導 入 が 進 んでい るので JAS 有 機 の 種 籾 供 給 先 としての 連 携 体 制 の 構 築 が 望 まれる 塩 水 選 後 1 時 間 以 内 あるいは 風 乾 後 に 温 湯 60 で 10 分 もしくは 58 で 20 分 間 の 温 湯 に 浸 ける 温 湯 後 はただちに 流 水 などで 熱 をとれば 90% 程 度 の 発 芽 率 を 保 ち 病 害 (ばか 苗 いもち 苗 立 枯 細 菌 病 ) の 抑 制 効 果 がある ( 井 上 2005) 3 微 生 物 による 種 子 消 毒 有 機 JAS 許 容 農 薬 である 微 生 物 農 薬 として 浸 種 時 にトリコデルマ ( 商 品 名 エコホープ) 液 に 浸 し ばか 苗 病 の 予 防 ができる 床 土 表 面 に 緑 色 の 苔 様 のものが 発 生 すると 病 害 抑 制 効 果 がある トリコ デルマの 菌 糸 がばか 苗 菌 に 接 触 して 溶 解 する ことで 制 菌 作 用 を 示 す ( 写 真 Ⅱ-2) 浸 種 後 積 算 100~120 日 で 水 分 25% まで 吸 水 し 鳩 胸 状 態 になる 浸 種 水 は 更 新 し 低 温 ( 目 標 10 以 下 ) 写 真 Ⅱ-2 トリコデルマと 溶 解 するばか 苗 菌 (barは10μm) (クミアイ 化 学 工 業 ( 株 )HP) で 吸 水 を 完 了 させる 吸 水 後 28~30 で 催 芽 す る 鳩 胸 状 態 になれば 播 種 日 まで 冷 蔵 保 存 する 4 催 芽 時 の 酢 による 制 菌 作 用 の 利 用 温 湯 処 理 (60 10 分 ) 済 みの 種 籾 を 2.5% の 食 酢 液 中 で 32 24 時 間 浸 漬 催 芽 すること により 水 稲 の 各 種 種 子 伝 染 性 病 害 を 防 除 で き イネ 褐 条 病 に 対 して 卓 効 がある ( 関 原 向 畠 2005) 富 山 県 の 関 原 らは 一 部 地 域 で 普 及 して きている 温 湯 処 理 が 細 菌 性 病 害 に 対 して 保 菌 率 が 高 い 場 合 に 効 力 不 足 な 事 例 があり 特 にイネ 褐 条 病 に 防 除 効 果 が 低 いことから 食 酢 の 催 芽 時 併 用 処 理 法 を 開 発 した ( 図 Ⅱ-5) 本 法 を 利 用 する 際 の 留 意 点 は 以 下 の 通 りである ⅰ. 減 農 薬 栽 培 等 を 志 向 する 農 業 者 での 防 除 対 策 に 活 用 できる ⅱ. 食 酢 は 市 販 の 穀 物 醸 造 酢 ( 酸 度 4.2% うち 酢 酸 成 分 約 80%) を 使 用 する ⅲ. 種 籾 に 付 着 する 食 酢 液 は 催 芽 後 洗 い 流 す 必 要 はなく そのまま 播 種 できる ⅳ. 食 酢 処 理 後 の 廃 液 は ph を 重 曹 で 中 性 とする 写 真 Ⅱ-1 温 湯 消 毒 器 ( 催 芽 器 兼 用 タイプ) (( 株 )タイガーカワシマHP) 図 Ⅱ-5 催 芽 時 における 食 酢 濃 度 と 苗 立 率 の 関 係 ( 富 山 県 2005 年 ) 注 : 温 湯 処 理 (60 10 分 ) 後 に 催 芽 処 理 (32 24 時 間 ) し 搬 出 11 日 後 に 調 査 供 試 品 種 は コシヒカリ 69

などの 処 理 をして 排 出 する (3) 育 苗 用 土 の 準 備 有 機 JAS に 適 合 した 育 苗 用 土 の 市 販 も 一 部 で 始 まっているが 品 質 保 持 の 関 係 で 受 注 製 造 で あったり 供 給 地 が 限 られているなどの 問 題 がある そこで 市 販 の 培 土 利 用 や 自 作 培 土 製 造 に 当 たっ ての 留 意 点 を 提 示 する 1 市 販 の 無 肥 料 培 土 を 原 土 として 利 用 する 場 合 育 苗 用 の 床 土 として 通 常 市 販 されている 無 肥 料 培 土 が 有 機 栽 培 でも 使 える これは 土 壌 を 乾 燥 して 回 転 篩 でゴミを 取 り 除 く 関 係 で 滅 菌 された 粒 状 の 形 態 になっている 採 取 地 が 山 であるため 古 くは 山 土 と 呼 ばれ 製 法 上 焼 き 土 や 無 肥 料 培 土 と 呼 ばれる 用 土 の 材 料 になる 原 土 は 乾 熱 した 粒 状 の 山 土 ( 褐 色 森 林 土 ) で 有 機 物 が 混 ざっていない 心 土 が 良 い 酸 性 で 養 分 供 給 力 が 高 いことが 一 般 的 な 用 土 の 条 件 であるが 無 肥 料 床 土 を 購 入 す る 場 合 でも メーカーにより 採 取 地 が 異 なり 用 土 の 特 性 も 大 きく 異 なる 比 較 的 新 しい 地 層 の 例 えば 黒 ボク 土 の 心 土 を 採 取 すると 養 分 が 少 なく 生 育 は 劣 るが 病 気 は 予 防 できる 一 般 に 硫 酸 を 使 って 原 土 のp H を 5.0 以 下 にして 苗 立 ち 枯 れを 抑 えている 有 機 栽 培 では 有 機 JAS 許 容 資 材 で ある 硫 黄 粉 末 が 利 用 できる 病 気 の 予 防 には 土 の ph が 4.5~5.5 が 良 く 乾 熱 で 雑 草 種 子 や 病 原 菌 密 度 を 低 くすることで 安 全 となる この 販 売 原 土 に 施 肥 をして 用 いるが 保 肥 力 は 低 く 水 溶 性 の 養 分 が 過 剰 になる 場 合 が 多 く EC が 高 くなり 発 芽 や 根 伸 びを 抑 えやすいの で 注 意 する 育 苗 箱 に 2cm 厚 に 土 を 入 れ 水 1.5L を 灌 水 後 12 秒 以 下 で 水 位 が 2mm 以 下 になる 透 水 性 が 望 ましい 透 水 性 改 善 に 必 要 な 堆 肥 ピー トモス 燻 炭 を 加 えて 利 用 する 場 合 には ph が 高 く なるので 注 意 する 2 有 機 育 苗 に 向 いた 用 土 ( 原 土 ) 作 り 通 常 の 土 づくりの 延 長 線 上 で 自 家 の 畑 や 水 田 で 肥 沃 な 土 づくりを 行 い そこから 採 土 して 有 機 質 肥 料 を 混 合 して 熟 成 させ 水 分 や 粒 度 を 調 整 し て 育 苗 用 土 を 自 家 で 製 造 する 方 が 手 間 はかか るが 有 機 育 苗 が 安 定 して 行 える 生 物 活 性 を 高 めて 病 害 抑 制 を 図 る 視 点 から 床 土 を 酸 性 や 無 菌 状 況 にしない 病 害 抑 制 法 もある 山 土 の 中 でも 風 乾 させボロボロと 崩 れる 三 紀 土 と いう 比 較 的 古 い 地 層 の 土 壌 は 有 機 育 苗 に 適 す るとされている 窒 素 含 量 が 低 く 分 解 しにくい 籾 殻 粉 砕 物 は 育 苗 用 土 に 混 合 する 資 材 として 有 用 である 籾 殻 粉 砕 物 はくん 炭 水 苔 (ピートモス) とともに 透 水 性 を 改 良 し 保 肥 力 を 高 める また 床 土 の 有 効 態 ケイ 酸 濃 度 を 高 めると 水 稲 の 耐 病 性 を 高 める 苗 のケイ 酸 含 有 率 を 移 植 時 点 で 5% にすれば 育 苗 中 も 本 田 でもいもち 病 の 予 防 に 有 効 であるとされている ( 荒 井 2005) なお 鋸 屑 を 利 用 したキノコの 廃 菌 床 や 広 葉 樹 を 原 木 とした 椎 茸 採 取 後 の 廃 ホダ 木 を1 年 以 上 堆 肥 化 した 資 材 は p H4 程 度 と 酸 性 が 強 く 用 土 に 混 合 する 透 水 性 改 善 の 材 料 として 適 している 有 機 質 肥 料 を 土 に 混 合 して 分 解 が 進 み 熟 成 し た 良 質 な 用 土 になるまでに およそ 半 年 20 で 150 日 ( 積 算 温 度 3000 日 ) 程 度 かかる 堆 肥 化 による 発 熱 で 分 解 期 間 は 短 縮 するが 土 壌 の 団 粒 化 など 物 理 性 の 改 善 には 半 年 以 上 の 熟 成 期 間 が 必 要 である 有 機 物 の 無 機 化 で 発 現 したアン モニアが 酸 化 されて 硝 酸 態 に 変 わるとp H は 低 下 するが その 途 中 N 2O として 逃 げ 硝 酸 態 として 水 に 溶 け 出 して 損 失 しやすい 表 Ⅱ-4に 床 土 の 良 否 を 判 定 するチエックポイ ントを 示 す (4)ムレ 苗 の 発 生 と 有 機 質 肥 料 の 関 係 1 育 苗 時 の 有 機 質 肥 料 の 留 意 点 自 作 用 土 の 原 料 とする 水 田 や 畑 の 表 土 には 有 機 質 肥 料 や 有 機 物 を 混 和 しなくても 様 々な 有 機 物 が 含 まれているため 土 を 播 種 箱 に 詰 めて 出 芽 機 に 入 れ 発 芽 に 適 した 水 分 で 30 以 上 の 温 度 条 件 下 に 置 くと 土 壌 中 の 有 機 物 が 分 解 を 始 める また 播 種 前 の 用 土 に 有 機 質 肥 料 を 混 合 すると 急 激 に 分 解 して 発 芽 障 害 を 起 こすので 育 苗 前 に 熟 成 期 間 を 設 け 混 合 後 150~600 日 の 急 激 に 70

表Ⅱ 4 床土の良否を判定するチェックポイント 㩷 分解する危険期を避ける 有機物は 土壌水分が 35% 飽和容水量の 60 70% 前後の時に分解が速まり 温度は出芽 に適した 32 で分解が早く 新鮮な有機物は土 と混合後 600 日 が発熱などの分解ピークとなる 温度 10 で 60 日かかり 30 だと 20 日で分解の ピークを迎え 稚苗の育苗日数に相当する 発芽 期にこのような有機物の分解時に遭遇すると 出 芽機内で発芽障害が起こり 籾が地表面に飛び 出す根上がり現象が見られる 有機物の分解は 温度だけでなく 水分管理 図Ⅱ 6 有機質資材混合後の生育と障害の状況 や土の酸度などと密接に関連している 有機質肥 岩石 2003 から作図 料の蛋白質が分解してアンモニアが発現するが 湛水下では 分解が遅れ酸素不足で硝酸態窒素 ②有機質肥料の分解に伴うムレ苗症状の発生 に変わりにくい 平均 20 で育苗した場合 最初 播種直前に有機質肥料を混合した場合 過湿 有機化による無機態窒素が減少し 図Ⅱ 6の① 条件下で 30 近くにして積み重ねて出芽させると の線 その後養分を増やしながら発根や発芽を 外側よりも中心部分の苗が酸欠や有機酸 アンモ 阻害しムレ苗の発生原因となる 図Ⅱ 6の②の ニアガスなどの障害を受け生育が遅れ 回復でき 線 分解のピークを過ぎると障害発生は次第に ずにムレ苗になる 出芽後から 2 葉展開までに湛 抑えられるが 直前混合に比べ 30 日を経過しても 水して過湿にすると 有機酸の代謝が進まず酸素 生育が良くなるわけではない 長期熟成により土 不足が起こり障害が強く現れる 播種直前に有機 壌の団粒化が進むことで 徐々に苗の生育量が 質肥料を混合すると 3 葉から 4 葉頃に分解のピー 増加してくる 図Ⅱ 6の③の線 クを終えるので 中苗の育苗では大きな影響を受 ける 71

有 機 質 肥 料 を 直 前 に 施 用 する 場 合 土 と 均 質 に 混 ざりにくく 根 傷 みで 水 分 吸 収 が 阻 害 され また 乾 燥 害 も 加 わって 部 分 的 に 肥 料 分 が 多 く 生 育 が 部 分 的 に 抑 制 されるムレ 苗 症 状 を 助 長 す る 土 壌 ph は 分 解 により 発 生 した 有 機 酸 が ph を 下 げ 無 機 化 したアンモニアが ph を 高 め さらに 時 間 が 経 過 して 硝 化 が 起 こると 再 び ph は 低 下 す る 有 機 質 肥 料 を 混 ぜてから 硝 酸 が 出 るまでにか なり 時 間 がかかるため 多 くの 有 機 質 入 り 育 苗 用 土 のpHは 高 くなりやすく 発 病 が 助 長 される また ムレ 苗 は 寒 地 寒 冷 地 や 低 温 期 の 育 苗 で 温 度 差 の 激 しい 管 理 を 行 うと 発 生 しやすい これ は 有 機 物 分 解 の 問 題 が 低 温 期 に 起 きやすいことと 関 係 している ムレ 苗 症 状 を 起 こしやすい 離 乳 期 の 苗 (2 葉 ~3 葉 期 ) に 11 の 低 温 処 理 を 12 日 間 与 えて 根 の 生 理 活 性 について 維 持 と 回 復 程 度 を 調 べた 結 果 湛 水 に 比 べ 湿 潤 ( 最 大 容 水 量 の 70%) な 水 分 条 件 で 活 性 が 高 く 維 持 され 回 復 程 度 も 大 きかった ( 楊 2002 年 ) つまり 過 湿 な 条 件 は 有 機 物 分 解 に 伴 う 障 害 を 助 長 し 水 分 管 理 がムレ 苗 発 生 に 強 い 影 響 を 与 える 3ムレ 苗 の 防 止 法 ムレ 苗 防 止 の 最 善 策 は 事 前 に 用 土 の 熟 成 期 間 を 設 け 安 定 した 状 態 の 用 土 を 使 うことである 有 機 物 の 分 解 には ph が 高 い 方 が 良 く 肥 料 の 分 解 を 進 めた 後 で ph を 低 下 させても 良 いが ph を 最 初 から 下 げると 分 解 が 不 十 分 な 育 苗 用 土 になり 問 題 を 起 こす そこで 育 苗 用 土 の 製 造 は p H を 上 げる 分 解 熟 成 段 階 と p H を 下 げる 2 段 階 に 分 けて 行 う 播 種 前 に 箱 土 に 混 合 できる 有 機 物 は 難 分 解 のピートモスや 籾 殻 粉 砕 物 籾 殻 くん 炭 な どに 限 られる あとは 液 肥 の 追 肥 により 養 分 を 補 給 する 方 が 安 全 である 米 糠 は 分 解 中 の 障 害 が 大 きく 養 分 供 給 源 と しては 窒 素 含 量 が 高 い 魚 粉 などの 方 が 安 全 であ る 米 糠 を 使 用 する 場 合 には 土 と 均 等 に 混 ぜに くいので 育 苗 する 箱 数 分 の 米 糠 を 全 体 の 1 ~ 3 割 程 度 の 原 土 に 加 えて 前 年 から 熟 成 させ 水 分 30% 温 度 20 以 上 で 50 日 間 経 過 させることを 2 回 以 上 繰 り 返 し 発 酵 させ 最 後 に 全 ての 土 を 加 えて 水 分 を 調 整 しても 再 発 酵 しないことを 確 認 しな がら 進 める 長 期 熟 成 が 必 要 なので 何 らかの 問 題 で 発 酵 が 途 中 で 止 まっていないかを 見 極 めるた め 菜 種 の 発 芽 テスト 等 で 障 害 の 出 ないことを 確 認 する 事 前 の 熟 成 は 堆 積 温 度 と 日 数 で 計 算 で きるが 乾 燥 などで 分 解 が 止 まることもあり 長 期 熟 成 に 必 要 な 水 分 温 度 環 境 を 整 える 必 要 がある できれば 箱 土 への 有 機 質 肥 料 の 施 肥 やプール 育 苗 をやめ 地 床 へ 出 根 させる 折 衷 方 式 に 切 り 替 える 地 床 へ 出 根 させる 折 衷 方 式 は 箱 の 下 の 床 土 に 根 を 張 らせるので 遮 根 シートは 使 わない また 根 を 箱 下 の 床 土 に 伸 ばせるので 育 苗 箱 の 用 土 に 多 くの 肥 料 を 必 要 とせず 有 機 質 肥 料 分 解 による 障 害 を 回 避 できる 次 善 の 策 としては 有 機 質 肥 料 の 混 合 を 避 けて 育 苗 箱 の 底 にCN 比 の 低 い 魚 粉 などを 敷 くように 散 布 し 上 から 土 を 詰 めて 種 籾 を 播 種 すれば 障 害 は 軽 減 する 湛 水 で 分 解 を 遅 らせることも 効 果 的 な ため 早 めに 湛 水 して 急 激 な 有 機 物 分 解 を 抑 えて 生 育 障 害 を 抑 える しかし 苗 の 活 性 を 高 めるに は 湿 潤 状 態 が 良 く 中 苗 を 育 成 するには 3 葉 の 離 乳 期 の 水 管 理 ( 後 述 ) が 重 要 なポイントになる どうしても 有 機 質 肥 料 を 利 用 する 場 合 は 多 量 の 粉 体 での 混 合 は 危 険 を 伴 うので 液 肥 資 材 を 利 用 して 追 肥 を 行 う 温 暖 地 では 中 途 半 端 に 分 解 を 進 めるより 播 種 直 前 に 新 鮮 な 有 機 質 肥 料 を 混 合 し た 方 が 急 激 な 分 解 による 障 害 を 避 けられる また 有 機 肥 料 の 直 前 混 合 後 に 畑 水 分 状 態 では 分 解 が 進 み 窒 素 の 取 込 みが 起 き また カビが 生 え 土 が 水 をはじき 保 水 力 が 低 下 するという 問 題 が 起 こるの で むしろ 強 制 的 に 湛 水 するプール 育 苗 でカビ を 抑 え 急 激 な 分 解 を 抑 制 した 方 がよい 箱 育 苗 で 5 葉 ( 成 苗 ) までの 均 一 な 健 苗 を 育 てるには 播 種 量 を 乾 燥 籾 40g 以 下 に 落 とし 欠 株 がでないように 精 密 に 播 種 し 箱 下 の 床 土 に 根 を 張 らせたり 追 肥 をしたりする 3~4 葉 期 に 順 調 に 出 葉 することを 成 功 の 目 安 にして 籾 からの 養 分 吸 収 が 終 わり 土 から 養 分 吸 収 が 順 調 に 開 始 する ように 配 慮 して 老 化 を 防 ぐように 養 水 分 を 供 給 す る 分 解 のピークが 過 ぎ 4 葉 の 展 開 が 停 滞 して 老 72

中 苗 図 Ⅱ-7 中 苗 の 目 標 草 姿 ( 注 ) 3.4 葉 苗 丈 14cm 1 本 当 たり 乾 物 重 30mg N 含 有 率 2.6% 化 が 進 むよりは 3 葉 前 の 稚 苗 で 移 植 した 方 が 田 植 え 後 の 生 育 は 順 調 になる (5) 育 苗 における 施 肥 量 の 目 安 と 追 肥 平 箱 1 枚 当 たりの 有 機 質 肥 料 の 施 用 量 の 目 安 は 全 窒 素 量 で 稚 苗 育 苗 で 1.5g 中 苗 で 2.5g 成 苗 で 3.5g 程 度 とする プール 育 苗 など 床 土 の 中 へ 根 を 伸 ばせない 育 苗 法 では 4 葉 以 上 の 苗 を 苗 箱 の 用 土 で 育 てるには 1 箱 当 たり 有 機 質 肥 料 の 窒 素 施 用 量 は 中 苗 で 3g 成 苗 で 4.5g 程 度 の 供 給 が 適 当 である 窒 素 含 量 が 2%の 米 糠 を 用 土 に 使 う 時 は 前 年 から 土 と 混 合 し 熟 成 させるが 1 箱 当 たり 150g の 米 糠 ( 窒 素 3g 相 当 ) を 熟 成 させ ると 良 質 の 床 土 となる 活 着 しやすさや 田 植 機 での 植 えやすさを 考 慮 す ると 根 が 多 く 張 った 黄 色 く 硬 い 苗 より 根 が 少 な くかろうじてマットを 形 成 する 程 度 の 青 く 柔 らかい 苗 に 分 があり 窒 素 分 の 潤 沢 な 供 給 が 必 要 となる 稚 苗 ほど 窒 素 含 有 率 が 高 く 葉 色 は 濃 く 苗 が 育 つ に 従 い 漸 次 色 が 淡 くなりやすい もともと 成 苗 が 最 も 窒 素 含 有 率 が 低 くなるが 1 本 当 たりの 窒 素 吸 収 量 は 成 苗 が 稚 苗 の 倍 以 上 となる ( 図 Ⅱ-8) 有 機 質 肥 料 の 発 酵 障 害 を 回 避 するためにも 出 芽 後 の 追 肥 技 術 が 重 視 される 長 期 熟 成 させ た 培 土 が 無 い 場 合 の 次 善 の 策 として 追 肥 主 体 で 養 分 を 補 う 方 が 安 全 である 追 肥 にはボカシの 浸 出 液 (20 倍 の 水 で 浸 出 する) や アミノ 酸 態 の 液 肥 など 速 効 性 のものを 使 う ボカシの 場 合 の 目 安 は 窒 素 5% 程 度 でよく 発 酵 したボカシ 1kg を 20L の 水 に 浸 け 3~6 時 間 浸 出 させると 1L の 溶 液 当 たり 1g の 窒 素 が 含 まれる 計 算 となる ( 加 藤 2003) フィッシュソリブル ( 魚 煮 汁 液 ) は 漁 港 周 辺 で 生 産 される 優 良 な 窒 素 肥 料 で アミノ 酸 態 で 全 窒 素 6% 相 当 が 含 まれ 尿 素 に 比 べ 水 稲 の 生 育 が 良 好 となる ( 岩 石 2003) 地 床 へ 出 根 させる 方 式 であれば 特 別 に 施 肥 をしなくとも 箱 の 外 に 根 を 伸 ばすことで 苗 の 生 育 に は 追 肥 的 な 効 果 をもたらす この 場 合 苗 の 初 期 栄 養 は 種 籾 から 供 給 され 窒 素 肥 料 を 追 肥 して 箱 下 に 根 を 伸 ばす 育 苗 方 式 の 場 合 より 肥 料 の 必 要 量 は 低 下 する 図 Ⅱ-8の 硫 安 を 施 肥 した 試 験 結 果 によれば 籾 からの 窒 素 供 給 量 は 稚 苗 が 41% 中 苗 が 28% 図 Ⅱ-8 箱 下 に 根 を 伸 ばす 育 苗 方 式 で 吸 収 した 窒 素 と 由 来 ( 三 枝 1999から 作 図 ) 73

成 苗 が22%となっており また 苗 が 大 きくなるほど 土 由 来 の 窒 素 栄 養 の 割 合 は 増 え 稚 苗 が 23% 中 苗 が 27% 成 苗 が 30% となっている この 施 肥 ( 硫 安 ) 由 来 の 吸 収 窒 素 量 と 施 肥 量 とを 比 べると すべて 施 肥 量 が 多 くなっているが 田 植 機 稲 作 で 使 われる 育 苗 箱 の 中 は 空 間 や 養 水 分 が 限 られ 苗 が 育 つ 限 界 が 決 まる 根 が 絡 みあったルートマッ トができないと 田 植 機 に 乗 せられないが 田 植 機 でうまく 植 えるには 根 の 絡 み 具 合 はほどほどが 良 く 根 伸 びが 小 さい 苗 の 活 着 が 勝 る 窒 素 量 だ けでなく 他 の 成 分 も 含 めて 田 植 えがしやすい 苗 姿 を 目 指 して 最 適 な 追 肥 量 を 調 整 する 2) 育 苗 法 (1) 有 機 育 苗 の 方 法 本 項 では 3.5 葉 以 上 の 中 苗 育 苗 を 目 標 にした 用 土 の 準 備 と 養 分 供 給 や 病 気 の 発 生 防 止 に 関 連 した 技 術 上 の 留 意 点 を 示 す 大 きく 健 康 な 苗 ほど 有 機 栽 培 での 雑 草 制 御 や 病 虫 害 対 策 に 有 利 であり 生 育 も 安 定 する 初 期 除 草 を 円 滑 に 進 めるには 中 苗 以 上 が 適 している が 中 苗 は 老 化 苗 となる 危 険 性 が 高 く 稚 苗 に 比 べより 高 度 な 技 術 が 要 求 される 育 苗 で 重 視 すべき 時 期 は ⅰ) 発 芽 から 出 芽 揃 い 期 ⅱ)2 葉 展 開 期 ( 緑 化 期 ) ⅲ)4 葉 展 開 期 である 特 に 4 葉 の 展 開 期 は 籾 の 胚 乳 養 分 が 枯 渇 する 離 乳 期 に 当 たり 4 葉 目 の 展 開 が 中 苗 以 上 の 育 苗 で 失 敗 と 成 功 の 分 かれ 目 となる 低 温 期 の 育 苗 を 省 力 的 に 行 える 管 理 技 術 として 考 案 されたハウス 内 でのプール 育 苗 法 は 保 温 と 灌 水 が 容 易 にできる 有 機 栽 培 に 有 効 な 技 術 であ る また プール 育 苗 は 畑 苗 代 と 水 苗 代 の 長 所 を 取 り 入 れて 技 術 化 された 折 衷 苗 代 の 管 理 法 にも 通 じるところが 多 く 各 自 の 装 備 や 環 境 に 合 わせて 応 用 がきくが そのことが 中 苗 育 苗 での 勘 違 いや 失 敗 の 原 因 になるので 詳 細 に 解 説 する 1 平 置 き 出 芽 とプール 育 苗 床 の 準 備 置 き 床 の 準 備 として 地 面 を 水 平 にし 苗 箱 の 搬 入 搬 出 がしやすいように 通 路 を 確 保 しつつ プー ル 育 苗 床 を 準 備 する 厚 めのポリ ( 農 ポリ) や 耐 水 性 シート (ブルーシート) の 下 に 枠 をあてて 畦 代 わりにして プールに 水 を 貯 められるようにする ハウス 内 のプール 育 苗 は 寒 冷 地 では 湛 水 す ることで 保 温 でき 生 育 停 滞 が 置 きにくい ただし 置 き 床 へ 根 を 張 らせられないので 育 苗 後 半 (3 ~5 葉 期 ) の 養 分 をより 多 く 補 給 する 必 要 がある また 水 張 りまでは 温 度 や 水 分 の 変 動 が 大 きいの で 出 芽 から 緑 化 期 の 温 度 管 理 や 水 管 理 は 折 衷 苗 代 よりもていねいに 管 理 する 必 要 がある 2~3 葉 期 の 低 温 を 予 防 するため 平 置 き 出 芽 では 保 温 シートを 取 り 除 く 時 期 を 遅 らせ 出 芽 機 を 利 用 した 場 合 は 緑 化 のできるシート ( 太 陽 シートな ど) で 保 温 を 行 う ( 写 真 Ⅱ-3) 2 播 種 量 稚 苗 植 えの 慣 行 栽 培 に 比 べ 有 機 栽 培 で 進 め る 中 苗 や 成 苗 植 えでは 箱 当 たり 播 種 量 が 半 分 から 4 分 の 1 と 薄 播 きになる ただし 分 げつ 不 足 の 水 田 では 播 種 量 や 箱 数 を 多 くして 植 込 み 苗 を 増 やす 冷 涼 な 地 域 の 中 苗 育 苗 の 例 では 坪 70 株 1 株 苗 数 を 3~5 本 を 目 標 に 箱 当 たり 籾 100g の 播 種 で 10a 当 たり 25 箱 を 用 意 する ( 寒 冷 地 では 坪 80 株 35 箱 ) 通 常 中 間 地 では 坪 60 株 1 株 苗 数 2~3 本 を 目 標 に 箱 当 たり 籾 80g で 20 箱 とするが 温 暖 地 で 分 げつ 過 剰 の 場 合 には 坪 50 株 1 株 苗 数 を 1~2 本 を 目 標 に 籾 40g の 成 苗 植 えで 25 箱 を 用 意 する 播 種 量 を 少 なくすることで 稚 苗 育 苗 (150g 播 種 ) に 比 べると 中 成 苗 では 植 え 込 み 本 数 が 圧 倒 的 に 少 なくなる ( 表 Ⅱ-5) ちなみに ポット 写 真 Ⅱ-3 出 芽 緑 化 ( 太 陽 シート)の 状 況 ( 提 供 : ( 財 ) 自 然 農 法 センター) 74

育 苗 (みのる 産 業 ) の 場 合 は 1 ポット 当 たり3~ 4 粒 播 種 で 1 箱 35g 程 度 になる 1 箱 100g のすじ 播 き 播 種 機 で 乾 籾 を 精 密 に 播 種 した 場 合 でも か き 取 りする 籾 は 3~5 粒 が 8 割 を 占 め 1~7 粒 まで 数 がばらついている ( 図 Ⅱ-9) 苗 立 ち 率 が 9 ~ 8 割 に 低 下 すると 標 準 のかき 取 り 幅 では 3 本 植 えの 割 合 が 増 加 する 3 低 温 と 過 湿 を 避 ける 出 芽 から 緑 化 までの 管 理 1.5 葉 期 の 緑 化 完 了 までは 適 湿 適 温 管 理 を 目 標 として できるだけ 速 やかに 終 了 する 温 度 の 急 激 な 変 化 を 極 力 避 け 乾 燥 させてはいけない が 過 湿 が 問 題 となるので 水 管 理 に 注 意 する ブルーシートを 貼 ったプール 育 苗 では 特 に 水 が 抜 けないため 過 湿 になりやすい 種 播 き 後 出 芽 ま での 灌 水 は 散 水 できる 播 種 機 では 厳 密 に 水 量 を 調 整 し 手 灌 水 の 場 合 は 箱 の 保 水 量 ( 水 はけ) を 確 認 して 1 箱 当 たり 0.8~1.0L 程 度 で 緑 化 期 ま でを 経 過 させる 平 置 き 出 芽 などで 出 芽 までに 時 間 がかかり 乾 燥 した 場 合 でも 緑 化 終 了 までは プールに 湛 水 せず 前 項 の 有 機 質 肥 料 の 影 響 を 考 慮 して 水 量 をこまめに 調 節 して 手 灌 水 で 調 整 する 低 温 期 の 育 苗 では 加 温 出 芽 が 必 要 で ハウス 内 で 苗 箱 を 保 温 するなど 地 域 によっては2 葉 期 まで 加 温 する 必 要 がある ( 写 真 Ⅱ-4) 太 陽 シー トで 無 加 温 出 芽 する 場 合 には ハウス 内 を 最 高 50 程 度 まで 上 げることで 苗 箱 が 25~30 近 くに なり 適 温 で 無 加 温 出 芽 ができるが 夜 温 の 低 下 で 1~2 日 のうちに 出 芽 する 加 温 出 芽 に 比 べて 4 ~7 日 程 度 の 日 数 が 必 要 となる プールにして 保 温 するのは できれば 1.5 葉 期 を 過 ぎるのが 良 く 霜 が 降 りるような 地 域 ( 時 期 ) では 緑 化 が 済 んで も 太 陽 シートなどの 被 覆 で 1.5 葉 期 まで 長 めに 保 温 し 被 覆 を 除 くと 同 時 に 湛 水 して 保 温 する 42~3 葉 期 ( 離 乳 期 )のプールの 管 理 緑 化 後 2 葉 展 開 始 めから 箱 下 まで 湛 水 する ( 写 真 Ⅱ-5) 急 激 な 高 温 や 乾 燥 を 避 けるため 風 下 側 のハウスの 片 側 を 開 けて 管 理 するなどの 工 夫 を 図 Ⅱ-9 精 密 播 種 の1 株 籾 数 のバラツキ (( 財 ) 自 然 農 法 センター 元 データから 作 図 ) 写 真 Ⅱ-4 スチームで 加 温 する 積 み 重 ね 出 芽 の 状 況 ( 提 供 : ( 財 ) 自 然 農 法 センター) 表 Ⅱ-5 寒 冷 地 における 播 種 量 の 目 安 と 箱 数 に 対 する 栽 植 密 度 及 び 株 当 たり 本 数 75

写 真 Ⅱ-5 1.5 葉 期 に 入 水 を 開 始 プール 育 苗 の 水 管 理 の 状 況 ( 提 供 : ( 財 ) 自 然 農 法 センター) し 高 温 時 にはサイドのビニールを 全 開 する 急 激 な 高 温 や 乾 燥 を 避 けるためハウス 片 側 を 解 放 し 風 が 通 り 抜 けないようにハウス 内 の 温 度 を 下 げて 調 整 する 潅 水 は 午 前 中 に 行 い 夕 方 萎 れが 起 こ らないならそのまま 経 過 させ 夕 方 に 溢 液 がみら れず 乾 燥 する 場 合 は 日 中 や 夕 方 でも 灌 水 をする 2 葉 展 開 始 めからプールを 湛 水 し 高 温 時 には サイドのビニールを 全 開 する 最 低 10 以 下 最 高 38 以 上 にならないように 水 を 張 り 保 温 する プールの 水 温 が 上 がるまで 朝 方 は 温 度 を 高 める (35 以 上 にしない) 以 後 水 がなくなったら 概 ね 3~7 日 おきに 入 水 する ハウス 内 の 温 度 と 水 温 は 外 側 は 低 く 生 育 が 遅 れ るので 箱 を 移 動 して 生 育 を 揃 え 箱 下 にダンボー ルなどを 敷 いて 箱 の 中 央 へ 液 肥 を 行 き 渡 らせる などの 手 当 てを 行 う 3 葉 期 までは 夕 方 以 降 保 温 し 朝 方 は 湿 度 を 高 く 暖 かにして 午 後 は 涼 しく 乾 燥 させるように 管 理 する 53 葉 ~5 葉 期 の 管 理 苗 は 4.5 葉 で 草 丈 15cm 程 度 基 部 から 2 葉 の 葉 鞘 までは 4cm 程 度 と 短 めにして 太 く 育 てる 4 葉 から 下 葉 が 黄 化 して 老 化 しやすく 根 が 硬 くなり 植 傷 みが 起 こりやすくなる また 4 葉 の 展 開 が 遅 れて 老 化 すると 活 着 に 日 数 がかかるため 老 化 前 に 田 植 えを 行 う 必 要 がある 育 苗 期 間 は 播 種 量 と 出 芽 までの 温 度 経 過 により 大 きく 異 なるが 乾 籾 160g 播 種 の 稚 苗 で 20~23 日 80g の 中 苗 で 30~ 35 日 40gの 成 苗 で 35~40 日 を 目 安 とする 4 葉 期 からは 徐 々に 外 気 の 夜 温 に 近 づけて 管 理 し 苗 を 順 化 する 寒 冷 地 ではあまり 必 要 がない が 温 暖 地 では 田 植 え 前 の 1 週 間 程 度 は 外 気 に 馴 らす また 田 植 え 2 日 前 頃 には 落 水 し 苗 箱 を 軽 くし 運 びやすくする (2) 有 機 育 苗 の 苗 質 目 標 と 留 意 点 見 掛 けが 丈 夫 で 根 がたくさん 出 ている 苗 は 良 さ そうに 見 えるが 育 苗 用 の 平 箱 を 使 った 機 械 田 植 では 根 を 切 断 して 植 え 付 けるため 根 張 りはあまり 強 くない 苗 が 活 着 も 順 調 で 適 している 葉 齢 が 進 み 生 育 が 停 滞 しないことが 重 要 で 老 化 して 硬 く なった 苗 より 素 直 に 育 った 苗 なら 柔 らかくても 良 い 田 植 機 で 使 う 深 さ 2~4cm の 箱 育 苗 は 根 域 が 制 限 されることから 健 康 に 育 てる 薄 播 きやポット 育 苗 が 推 奨 される ただ 雑 草 群 落 を 凌 駕 するため 写 真 Ⅱ-6 100g 播 きの2.5 葉 期 ( 左 ) と60g 播 きの5.5 葉 期 ( 右 ) ( 提 供 : ( 財 ) 自 然 農 法 センター) 76

成 苗 まで 育 つ 薄 播 き 疎 植 では 育 苗 箱 数 を 増 やす 必 要 がある 労 力 や 生 育 問 題 の 少 ない 稚 苗 がよ り 健 全 な 苗 で 移 植 出 来 る 場 合 は 活 着 を 優 先 して 段 階 的 に 育 苗 技 術 を 変 えていく ハウス 内 プール 育 苗 は 低 温 期 や 寒 地 ~ 寒 冷 地 の 育 苗 に 適 している 平 箱 40g 播 きに 比 べてポット 育 苗 では 用 土 が 少 ないため 床 土 に 根 を 広 げる 折 衷 苗 代 が 適 している プール 育 苗 は 難 しい 暖 かい 時 期 や 暖 地 での 育 苗 は 容 易 であり 露 地 折 衷 苗 代 がよく プール 育 苗 は 適 さない 3. 土 づくり 技 術 1) 有 機 稲 作 の 土 づくり (1) 土 づくりの 考 え 方 水 稲 の 有 機 栽 培 では 地 力 窒 素 を 主 体 にして 稲 体 の 健 全 な 生 育 を 図 る 必 要 があることから 土 づくりは 極 めて 重 要 な 役 割 をもつ 有 機 稲 作 にお いて 一 定 水 準 の 収 量 を 上 げるには 従 来 の 土 壌 の 化 学 性 や 物 理 性 の 改 善 を 主 眼 にしてきた 土 づく りを 一 歩 進 め 生 物 性 の 改 善 及 び 耕 種 管 理 手 法 や 透 排 水 性 の 改 善 も 含 め 水 稲 の 生 育 に 望 ま しい 生 態 系 づくりを 進 める 必 要 がある 慣 行 栽 培 の 化 学 肥 料 主 体 の 養 分 供 給 システム から 地 力 発 現 による 養 分 供 給 システムに 移 行 す るには 土 壌 動 物 や 微 生 物 を 含 めた 有 用 生 物 の 維 持 繁 殖 を 促 して 養 分 の 保 持 や 放 出 などを 気 候 条 件 に 合 わせて 調 節 する 機 能 の 役 割 が 期 待 される 有 機 栽 培 の 継 続 圃 場 では 堆 肥 や 有 機 質 肥 料 の 施 用 により 水 田 の 表 層 に 土 の 性 状 がクリーム 状 の いわゆる トロトロ 層 が 形 成 され イトミミ ズ 等 の 土 壌 動 物 藻 や 水 草 等 の 水 生 生 物 の 増 加 並 びに 土 壌 の 微 生 物 性 が 高 まって 土 壌 養 分 の 発 現 や 雑 草 抑 制 が 行 いやすくなるなどの 現 象 が 指 摘 されている このような 土 づくり 効 果 を 実 現 するため 有 機 稲 作 では 例 えば 以 下 のような 対 策 が 行 われている 稲 わら 籾 殻 冬 季 雑 草 等 の 有 機 物 を 鋤 込 むとともに 有 機 物 の 場 合 は 堆 肥 等 を 投 入 し ている 有 機 物 の 分 解 促 進 や 根 の 健 全 な 生 育 を 促 す ため 透 排 水 性 が 不 良 な 圃 場 ではその 改 善 を 図 っている 地 域 や 圃 場 作 付 体 型 にもよるが レンゲ ヘアリーベッチ 等 の 緑 肥 作 物 を 積 極 的 に 活 用 している 地 力 窒 素 の 発 現 しにくい 時 期 には 速 効 性 有 機 質 肥 料 の 活 用 を 図 っている 有 機 物 を 発 酵 させて 田 植 え 後 の 田 面 に 施 用 している 土 壌 養 分 の 状 況 を 客 観 的 に 判 断 するために 土 壌 診 断 を 行 い その 結 果 に 基 づいて 対 策 を 行 っている 有 機 稲 作 では 有 機 物 資 材 の 利 用 もさることな がら 例 えば 以 下 のような 耕 耘 管 理 の 仕 方 圃 場 条 件 の 改 善 が 図 られている 耕 耘 管 理 作 業 は 土 壌 特 性 を 踏 まえ 透 排 水 性 などの 物 理 性 や 養 分 供 給 量 などの 化 学 性 を 水 稲 生 育 に 適 する 状 態 に 近 づける ように 努 めている 特 に 耕 耘 代 かきで 土 壌 の 物 理 性 を 改 善 し また 有 機 質 資 材 肥 料 によって 土 壌 の 化 学 性 物 理 性 を 改 善 させるとともに 土 壌 の 物 理 性 も 向 上 させてい る 湿 田 では 透 排 水 性 の 改 善 により 微 生 物 活 性 を 高 め 窒 素 などの 養 分 の 可 給 化 を 進 め 水 稲 の 生 育 改 善 に 役 立 てている 田 植 え 時 期 の 土 の 硬 さは 活 着 に 大 きく 影 響 す るので 砕 土 にも 配 慮 している 粗 大 有 機 物 を 埋 め 込 む 荒 起 こし または 荒 代 かき 後 地 表 を 浅 く 攪 拌 する 植 え 代 かきによ り 発 酵 を 促 進 させて 未 分 解 の 稲 わらなどを 原 因 とする 還 元 障 害 を 回 避 している 中 干 しなど 落 水 による 田 面 の 乾 燥 は 機 械 作 業 の 際 の 地 耐 力 増 強 に 役 立 てる 狙 いもある 77

が 水 稲 に 適 した 肥 効 制 御 や 土 壌 硬 度 水 はけ 水 持 ちを 整 える 機 能 を 重 視 し 実 施 して いる また 土 づくりによる 雑 草 制 御 機 能 を 重 視 し 例 えば 以 下 のようなことに 配 慮 している 有 機 稲 作 田 で 優 占 するコナギを 抑 制 するた め 稲 わらや 米 糠 などの 収 穫 残 さの 春 鋤 込 みを 避 け 秋 からの 鋤 込 みによる 土 づくりで 稲 わらの 分 解 促 進 に 努 めている 有 機 栽 培 への 転 換 初 期 は 土 壌 の 微 生 物 活 性 が 低 く 稲 わらなどの 分 解 能 力 が 不 十 分 なた め 本 来 生 育 特 性 の 異 なるノビエとコナギが 共 に 優 占 して 水 稲 の 初 期 生 育 を 妨 げることが あるが ヒエの 発 生 を 助 長 する 速 効 的 な 養 分 供 給 を 控 えている 田 植 え 以 降 も 未 分 解 の 稲 わらが 多 いほどコ ナギが 大 きく 育 ちやすいので ( 三 木 岩 石 2009) 土 づくりにより 微 生 物 活 性 を 高 め 稲 わらの 分 解 能 力 を 高 めている (2) 有 機 栽 培 へ 移 行 期 の 土 づくり 有 機 稲 作 が 安 定 的 に 営 まれるまでには 通 常 4 ~5 年 かかるとされているが (( 財 ) 日 本 土 壌 協 会 2009) この 期 間 をいかに 短 縮 し 生 産 を 安 定 化 させていくかは 土 づくりの 大 きな 課 題 である 有 機 栽 培 への 移 行 期 間 に 起 きている 稲 作 の 状 況 や 対 処 の 仕 方 を 挙 げれば 以 下 の 通 りである ⅰ. 有 機 栽 培 に 移 行 後 1~ 2 年 間 は 多 量 の 無 機 養 分 の 残 効 により 未 熟 な 堆 肥 施 用 や 肥 効 の 劣 る 有 機 資 材 施 用 でも 障 害 がなく 初 期 生 育 が 過 剰 となる 場 合 がある 地 力 の 低 い 水 田 で 初 期 生 育 量 を 高 くして 追 肥 を 省 くと 籾 数 や 登 熟 歩 合 が 低 下 しやすい ⅱ. 有 機 栽 培 へ 移 行 する 初 期 段 階 においては 地 力 窒 素 を 増 やすため 土 壌 分 析 結 果 などを 参 考 にして 堆 肥 などの 肥 料 効 果 が 小 さい 粗 大 有 機 物 の 投 入 を3 年 間 程 度 は 継 続 すると 良 い 転 換 初 期 に 大 量 の 有 機 物 の 鋤 込 みを 数 年 繰 り 返 すと 微 生 物 の 多 様 性 とバイオマスが 高 まり 土 壌 の 有 機 物 分 解 の 活 性 が 高 まる ⅲ. 寒 冷 地 では 稲 わらの 分 解 がよく 進 むように 秋 の 段 階 から 圃 場 の 乾 燥 を 進 め 浅 い 耕 転 に より 稲 わらと 土 を 良 くなじませておくと 地 力 の 促 進 効 果 があり 田 植 え 後 の 雑 草 抑 制 にも 繋 がる ⅳ. 窒 素 やその 他 の 養 分 過 剰 を 避 けるため 畜 糞 由 来 の 堆 肥 の 投 入 で 腐 植 を 増 やすよりも 裏 作 に 緑 肥 作 物 を 組 み 込 んだ 作 物 栽 培 と 作 物 残 渣 の 還 元 により 腐 植 を 増 加 させた 方 がよい ⅴ. 緑 肥 物 栽 培 と 作 物 根 による 土 壌 構 造 の 改 良 を 狙 って 根 で 耕 す いわゆる 根 耕 を 進 めて 土 壌 機 能 の 増 進 を 図 るとよい ⅵ. 有 機 物 資 材 としては 運 搬 コストをかけない で 土 づくりが 可 能 なライ 麦 レンゲ ヘアリーベッ チなどの 緑 肥 作 物 の 栽 培 を 行 う 裏 作 緑 肥 の 栽 培 は 養 水 分 の 吸 収 により 土 壌 構 造 が 発 達 し 土 壌 機 能 の 活 性 化 が 図 られるという 利 点 もある ⅶ. 寒 冷 地 で 緑 肥 を 栽 培 する 場 合 には 播 種 時 期 が 限 られ 積 雪 や 低 温 耐 性 をもつ 緑 肥 草 種 は 限 られるので しばしば 未 成 熟 のまま 鋤 き 込 ま れることになるが レンゲなどは 窒 素 過 剰 になり やすいので 注 意 を 要 する ⅷ. 有 機 栽 培 への 移 行 後 3~4 年 頃 から 初 期 生 育 が 緩 慢 となり 地 温 上 昇 とともに 地 力 窒 素 が 発 現 して 後 期 生 育 が 盛 んになる 傾 向 が 見 られる そうした 生 育 の 傾 向 を 予 測 して 施 肥 量 を 考 える ⅸ. 有 機 栽 培 に 切 り 換 えて 3 年 目 を 迎 えるまでに 優 占 しやすい 雑 草 種 が 変 化 するため 従 来 の 栽 培 管 理 の 延 長 では 雑 草 の 繁 茂 と 種 子 の 蓄 積 に 繋 がりやすい 状 況 に 応 じた 対 応 と 徹 底 した 雑 草 防 除 対 応 ができるように 計 画 する (3) 水 稲 の 生 育 収 量 と 地 力 窒 素 1 水 稲 と 地 力 窒 素 水 稲 は 地 力 窒 素 の 依 存 度 が 高 い 作 物 である 水 稲 の 生 育 に 必 要 な 窒 素 は 地 力 窒 素 ( 土 壌 中 の 有 機 態 窒 素 のうち 微 生 物 によって 分 解 され 無 機 化 (アンモニア 態 硝 酸 態 ) あるいは 低 分 子 化 して 有 効 化 する 窒 素 ) に 依 存 する 割 合 が 高 い 78

表Ⅱ 6 元肥窒素の利用率 前田 1984 重窒素により求めた水稲の元肥窒素の利用率 壌を 30 4 週間培養して発現してくる無機態窒 は これまでの試験結果からほぼ 30 40% の範 素量で地力窒素を測定する項目 腐植含量 囲にとどまり 水稲の生育に必要な窒素成分の大 全窒素含量が低かった また 灰色低地土の水 半を地力窒素に依存している 表Ⅱ 6 前田 田の高収量農家と比べても可給態窒素 腐植含 1984 量 全窒素含量が低かった これらから 単収の 低さの大きな要因として窒素肥沃度の低さが指摘 一般に水稲に吸収される窒素は 地力窒素か ら60 70% 施肥窒素から40 30%とされている される 地力窒素の発現量は地温の影響が大きく 地力 2 堆肥の利用と土づくり 窒素は 15 以上で発現し始めてきて 20 25 で最も多く発現してくるとされている こうした地力 本項は 第3部 大豆の有機栽培技術 と共 窒素の発現量の多少は水稲の収量に大きく影響 通する解説である する ②地力窒素の相違による収量格差 1 堆肥の特性と利用上の留意点 水稲の生産安定と土づくりの課題を明らかにす 地力窒素の発現に大きく関係してくるのは土壌 るため 雑草防除が安定的に行えている有機稲 中の有機物含量 腐植含量 である 堆肥等の 作農家を対象に 単収の異なる圃場について比 有機物を連用すると地力窒素の発現が大きくなる 較調査を行った 表Ⅱ 7 この調査の結果 収 また 堆肥は作物に養分を供給するとともに 土 量の高い農家 は十分な堆肥や有機質肥料を施 壌の物理性 化学性 生物性を改善し 総合的 用しているのに対し 収量の低い農家 では堆 な地力向上を図ることができ 作物の安定生産に 肥や有機質肥料の施用量が少なかった また 寄与する 収量の低い農家は 有機質資材の肥効が足りず このため 腐植含量の低い慣行水田から有機 目標とする籾数が確保しにくい とコメントしている 栽培へ転換する際や借地により有機稲作を行なう 単収の低い有機稲作農家は 可給態窒素 土 際には 初期段階においては大量の堆肥の投入 表Ⅱ 7 10a 当たり収量の高い有機稲作農家と劣る農家の収量と窒素肥沃度 ㊂䈱㜞䈇 ㄘኅ 79

を 行 って 地 力 を 高 める 必 要 があり 実 際 そのように 行 う 農 家 が 多 い 1 堆 肥 の 特 性 堆 肥 の 主 な 特 性 は 次 の 通 りである ⅰ. 養 分 の 供 給 堆 肥 には 窒 素 リン 酸 カリウム カルシウム マグネシウムなどの 多 量 要 素 だけでなく 鉄 亜 鉛 銅 マンガン ホウ 素 などの 微 量 要 素 が 比 較 的 バ ランス 良 く 含 まれている そのため 作 物 に 対 する 総 合 的 な 養 分 供 給 源 になるが 化 学 肥 料 と 異 なる 点 は 窒 素 などの 養 分 供 給 が 緩 効 なこと 連 年 施 用 でその 効 果 が 累 積 していくことである ⅱ. 土 の 物 理 性 化 学 性 の 改 善 堆 肥 を 連 用 すると 土 壌 有 機 物 含 量 が 増 加 し 土 壌 の 物 理 性 が 改 善 される このため 堆 肥 連 用 区 では 化 学 肥 料 区 と 比 べ 土 壌 中 の 全 窒 素 全 炭 素 CEC など 地 力 関 係 項 目 の 値 が 上 昇 してくる 特 に 地 力 窒 素 の 発 現 が 収 量 向 上 に 寄 与 してい る 土 壌 中 における 有 機 物 の 分 解 過 程 では 微 生 物 による 分 解 を 受 けにくい 土 壌 特 有 の 腐 植 物 質 が 形 成 される この 腐 植 物 質 及 び 微 生 物 や 根 から 分 泌 される 粘 質 物 が 接 着 剤 となり 土 壌 粒 子 が 互 いに 結 合 して 直 径 数 ミリ 程 度 の 土 壌 団 粒 を 形 成 す る 土 壌 の 団 粒 化 が 進 むと 粒 子 間 の 隙 間 の 堆 積 割 合 ( 孔 隙 率 ) が 増 大 する 孔 隙 率 が 大 きい ほど 土 壌 は 柔 らかく 耕 耘 が 容 易 になり 作 物 の 根 も 伸 張 し 易 くなる また 団 粒 間 には 比 較 的 大 きな 孔 隙 が 形 成 され 過 剰 な 水 が 排 水 されるため 通 気 性 が 良 好 になり 作 物 根 の 伸 張 が 確 保 され る このため 堆 肥 連 用 により 土 壌 孔 隙 率 は 増 加 し 根 の 活 性 も 化 学 肥 料 区 と 比 べ 高 まる 例 が 多 く これが 単 収 向 上 に 寄 与 している ⅲ. 土 壌 の 生 物 性 の 改 善 堆 肥 を 施 用 すると これを 餌 として 土 壌 中 ではミ ミズやダニなどの 活 動 が 活 発 になり 堆 肥 自 体 が 土 中 で 物 理 的 に 微 小 化 分 散 されて 微 生 物 によ る 化 学 分 解 を 受 けやすい 性 状 になる また 堆 肥 中 には 多 くの 微 生 物 が 含 まれており 堆 肥 中 の 有 機 物 が 餌 になるため 土 壌 微 生 物 の 数 は 大 幅 に 増 加 する こうして 土 壌 生 物 の 活 動 が 盛 んになる と 施 用 した 有 機 物 だけでなく それまでに 土 壌 中 に 蓄 積 されていた 有 機 物 の 分 解 も 促 進 される これによって 窒 素 をはじめ 多 くの 養 分 が 放 出 され る さらに 放 出 された 窒 素 の 一 部 は 増 殖 した 微 生 物 の 菌 体 に 取 り 込 まれ 再 び 土 壌 中 に 蓄 積 され 長 期 間 にわたって 土 壌 窒 素 を 放 出 するようになる そして 堆 肥 の 施 用 により 有 機 物 の 分 解 に 関 与 する 土 壌 動 物 糸 状 菌 放 線 菌 細 菌 などの 多 様 な 生 物 群 が 棲 息 するようになる また これらの 生 物 群 はそのサイズに 応 じて 団 粒 内 外 に 主 要 な 棲 息 の 場 を 確 保 し 生 物 相 の 多 様 性 が 維 持 され 土 壌 の 生 物 的 緩 衝 能 が 増 大 する 2 堆 肥 の 種 類 と 成 分 特 性 堆 肥 の 原 料 は 従 来 稲 わら 等 作 物 残 渣 と 家 畜 糞 を 原 料 としたものが 主 体 であったが 近 年 は 原 料 が 多 様 化 してきている 最 近 では 平 成 13 年 に 食 品 リサイクル 法 が 制 定 され 食 品 残 渣 の 堆 肥 化 が 推 進 されるようになり 食 品 リサイクル 堆 肥 も 多 く なってきている 現 在 最 も 生 産 量 の 多 いのは 家 畜 糞 関 係 の 堆 肥 である 平 成 11 年 に 家 畜 排 せつ 物 法 が 施 行 さ れて 野 積 み 等 不 適 切 なふん 尿 の 処 理 が 禁 止 さ れたことにより 堆 肥 化 が 進 められ 家 畜 糞 堆 肥 の 利 用 促 進 に 取 り 組 まれている 現 在 生 産 販 売 されている 主 な 堆 肥 には 次 のようなものがある 家 畜 糞 関 係 : 牛 糞 堆 肥 豚 糞 堆 肥 鶏 糞 堆 肥 各 畜 種 のブレンド 堆 肥 食 品 関 係 : 食 品 リサイクル 堆 肥 ( 原 料 中 10% 以 上 食 品 残 渣 を 含 むものを 言 う) 林 業 関 係 : バーク 堆 肥 各 種 原 料 の 混 合 堆 肥 堆 肥 は 種 類 によって 肥 料 成 分 の 高 い 堆 肥 と 低 い 堆 肥 がある 成 分 の 高 い 堆 肥 は 豚 糞 堆 肥 鶏 糞 堆 肥 などで 肥 料 的 効 果 が 高 い また 成 分 の 低 い 堆 肥 としては バーク 堆 肥 牛 糞 堆 肥 など であり 土 壌 の 物 理 性 改 良 効 果 が 高 い ⅰ. 家 畜 糞 関 係 等 の 堆 肥 家 畜 糞 堆 肥 の 成 分 は 近 年 飼 料 等 の 関 係 か ら 全 体 として 高 くなってきている 家 畜 糞 堆 肥 の 種 80

③堆肥の品質 類によって肥料成分等に次のような特色がある 畜産経営の規模拡大の中で十分な糞尿処理が 牛糞堆肥 加里がやや高い 有機物分解は できず これまで未熟なままの堆肥が多く出回るな やや遅い どによって作物に生育障害が発生したり 悪臭等 豚糞堆肥 リン酸が高い 有機物分解はや 環境問題が発生するなどの問題があった 近年 や速い 堆肥の品質向上が叫ばれ 改善が図られてきて 鶏糞堆肥 リン酸が高い 有機物分解はや いるが まだ 十分でないものもある また 最近 や速い 採卵鶏堆肥についてはカルシウム 堆肥原料が多様化してきている中で 食品リサイ が高い 採卵鶏糞で発酵処理を行っているも クル堆肥が多く出回るようになってきている 食品 のは窒素成分が低い 残渣は油分等が多く 好気発酵がしにくいことも 畜種別の堆肥の平均的な成分は表Ⅱ 8の通り あって 現在 品質に問題のあるものもある である このため 品質の良い堆肥を入手することが重 ⅱ 食品 林業関係等の堆肥 要である 一般的には堆肥の品質として次のよう 食品関係 林業関係 排水汚泥関係等の堆肥 な品質項目が重視される は それぞれに成分的に特色がある 腐熟度 雑草種子混入や臭いに関係 食品リサイクル堆肥 窒素が多く リン酸 取扱性 乾燥度合い 固まりの大きさ等機械 加里は低い 有機物分解は平均的 散布のしやすさ バーク堆肥 窒素 リン酸 加里全てが低い 肥料成分の安定性 施肥設計時に関係 有機物分解は遅い 土壌物理性改良効果 重視する利用目的に よる それぞれの堆肥の平均的な成分は表Ⅱ 9 表Ⅱ 10 の通りである 表Ⅱ 8 畜種別の全国の堆肥の主要成分 財 畜産環境整備機構 2005 表Ⅱ 9 食品リサイクル堆肥の主要成分 ( 平均 ) 財 日本土壌協会 2006 表Ⅱ 10 バーク堆肥の主要成分 ( 平均 ) 81

有 機 農 業 においては こうした 一 般 的 な 堆 肥 の 品 質 とともに 重 金 属 等 の 混 入 チェックも 必 要 であ る 豚 や 鶏 の 飼 育 の 際 には 飼 料 添 加 物 として 銅 や 亜 鉛 を 添 加 している 場 合 があり それが 糞 に 混 入 してくる わずかな 量 であれば 作 物 に 障 害 はな いが 一 部 にはかなり 多 く 含 まれている 場 合 が 見 られる そこで 豚 糞 堆 肥 鶏 糞 堆 肥 を 入 手 する 際 には その 成 分 含 量 をチェックする 必 要 がある 肥 料 取 締 法 では 次 のような 場 合 には 堆 肥 に 銅 亜 鉛 の 成 分 表 示 が 義 務 づけられている 豚 糞 を 原 料 に 使 っており 現 物 1kg 当 たり 300mg 以 上 の 銅 を 含 んでいる 場 合 の 銅 濃 度 豚 糞 または 鶏 糞 を 原 料 に 使 っており 現 物 1kg 当 たり 900mg 以 上 の 亜 鉛 を 含 んでいる 場 合 の 亜 鉛 濃 度 また 畜 産 において 抗 生 物 質 を 使 用 している 場 合 があり 一 般 には 堆 肥 で 検 出 されることはない が 抗 生 物 質 の 利 用 状 況 を 把 握 しておくことも 重 要 である 4 堆 肥 利 用 上 の 留 意 点 堆 肥 の 施 用 に 当 たっては 以 下 のような 点 に 注 意 する ⅰ. 排 水 不 良 水 田 では 有 機 物 の 分 解 が 遅 れ 生 育 後 半 に 窒 素 が 発 現 するため 倒 伏 の 程 度 も 高 まり 登 熟 が 悪 く 収 量 が 低 下 する こうした 水 田 での 堆 肥 施 用 量 は 乾 田 の 半 分 程 度 の 量 にする 必 要 がある ⅱ. 稲 作 への 堆 肥 施 用 量 は 通 常 1 ~ 2t/10a であ るが 過 剰 に 施 用 したり 窒 素 成 分 の 高 い 堆 肥 を 通 常 量 施 用 すると 過 繁 茂 になり 倒 伏 の 危 険 が 増 し 収 量 が 低 下 するので 注 意 する ⅲ. 堆 肥 の 肥 料 効 果 を 重 視 する 場 合 は 春 施 用 に する 一 般 に 堆 肥 は 稲 刈 り 後 に 施 用 するが 秋 施 用 するのは 土 壌 の 腐 植 含 量 等 の 増 加 を ねらいとする 場 合 や 物 理 性 の 改 良 を 目 的 とする 場 合 であり 肥 料 効 果 については 田 植 えまでに かなり 流 亡 する このため 鶏 糞 堆 肥 豚 糞 堆 肥 のように 肥 料 成 分 の 高 い 堆 肥 を 肥 料 養 分 の 目 的 で 施 用 する 場 合 には 代 掻 き 前 に 施 用 する (2) 堆 肥 の 製 造 法 と 留 意 点 有 機 栽 培 農 家 の 中 には 安 心 できる 堆 肥 で 農 産 物 を 生 産 するために 自 ら 材 料 を 入 手 して 堆 肥 を 製 造 する 場 合 もある 堆 肥 に 用 いる 有 機 質 資 材 の 種 類 や 堆 肥 化 の 方 法 はいろいろある 堆 肥 化 の 方 法 としては, 昔 からの 堆 積 方 式 ロータリー 撹 拌 方 式 スクープ 方 式 などがある 小 規 模 であれば 有 機 物 を 堆 積 し シャベルローダー 等 で 撹 拌 する 方 式 が 適 当 である 有 機 質 資 材 は 地 域 で 入 手 し やすいもので 行 うのが 適 当 であるが 堆 肥 化 は 好 気 性 微 生 物 による 有 機 物 の 分 解 作 用 であるので 通 気 性 を 良 くする 籾 殻 落 葉 などの 資 材 を 混 合 す ることが 重 要 である 堆 肥 化 過 程 の 微 生 物 作 用 によって 堆 肥 の 品 質 に 悪 影 響 を 与 える 要 因 を 除 くとともに 水 分 調 整 や 悪 臭 物 質 の 生 成 を 抑 制 し 取 扱 い 易 くして 有 効 かつ 安 全 な 資 材 にする 必 要 がある 堆 肥 化 の 主 な 目 的 や 製 造 プロセスは 以 下 の 通 り である 1 堆 肥 化 の 目 的 ⅰ. 作 物 の 生 育 にとって 有 機 物 の 分 解 過 程 で 出 て くる 有 害 な 有 機 酸 等 を 分 解 し 無 害 なものとする ⅱ. 発 酵 熱 により 病 原 菌 や 雑 草 の 種 子 等 を 死 滅 さ せる ⅲ. 発 酵 によって 悪 臭 をなくすとともに 含 水 率 を 下 げ 保 存 性 や 取 扱 性 を 良 くする 2 堆 肥 化 のプロセス 堆 肥 化 の 一 般 的 なプロセスは 図 Ⅱ-10 の 通 りで ある 牛 糞 等 に 籾 殻 などを 加 え 有 機 物 を 適 当 な 水 分 条 件 堆 積 条 件 で 堆 積 すると まず 低 分 子 の 糖 アミノ 酸 脂 肪 酸 などの 易 分 解 性 有 機 物 が 消 失 し この 過 程 でフェノール 化 合 物 などの 植 物 生 育 阻 害 物 質 も 分 解 する 堆 積 物 の 温 度 が 下 がり 始 めたら 切 り 返 しを 行 い 酸 素 を 供 給 し 続 けると 次 いで ヘミセルロース セルロース さらにリグニンが 分 解 する 切 り 返 しを 行 っても 余 り 堆 積 物 の 温 度 が 上 がらなくなったら 完 成 である これらの 過 程 で 炭 素 は 二 酸 化 炭 素 として 大 気 中 に 失 われるが 窒 素 の 相 当 部 分 は 微 生 物 に 取 り 82

図 Ⅱ-10 堆 肥 化 過 程 の 模 式 図 ( 例 ) ( 新 畜 産 環 境 保 全 指 導 マニュアル(2011)) 込 まれて 残 存 するため 炭 素 率 (C / N 比 ) は 次 第 に 低 下 し 土 壌 に 施 用 しても 急 激 な 微 生 物 の 増 殖 や 作 物 の 窒 素 飢 餓 を 生 じない 安 定 した 堆 肥 化 物 となる また 微 生 物 の 増 殖 に 伴 う 発 熱 によっ て 堆 積 物 中 の 温 度 は 60~70 にも 達 するため 雑 草 種 子 や 有 害 微 生 物 が 死 滅 する さらに 有 機 物 の 分 解 が 促 進 されて 悪 臭 物 質 の 生 成 は 抑 制 され 取 扱 い 性 も 向 上 する 3 良 い 堆 肥 を 製 造 するための 留 意 点 堆 肥 化 がうまくいかない 要 因 として 多 いのは 初 期 の 温 度 が 上 がらないということである この 原 因 として 原 料 の 水 分 調 整 がうまくいかず 好 気 発 酵 がスムースに 進 んでいかないことが 多 い 通 気 が 良 くなり 好 気 発 酵 するための 原 料 の 比 重 調 整 は0.7 以 下 にするとよい (10 lのバケツで 水 分 を 含 む 原 料 の 重 さ6.5kg 以 下 に 調 整 する) また 発 酵 途 中 で 温 度 が 上 がり 過 ぎて 水 分 が 低 下 すると 微 生 物 の 活 動 が 低 下 し 発 酵 が 停 止 状 態 になることもある こうした 場 合 には 水 分 を 加 え る 必 要 がある 3) 稲 わら 籾 殻 米 糠 の 利 用 と 土 づくり (1) 収 穫 残 渣 利 用 の 考 え 方 有 機 稲 作 での 有 機 質 資 材 の 利 用 は 基 本 的 に は 収 穫 残 渣 となる 稲 わら 籾 殻 米 糠 の 全 量 還 元 を 前 提 とし 寒 地 や 湿 田 の 場 合 には 一 部 を 事 前 に 分 解 させてから 圃 場 に 還 元 す る 方 法 を 工 夫 する 寒 冷 地 で 安 定 している 有 機 栽 培 水 田 の 例 を 示 すと 秋 に 稲 わらとともにわず かの 有 機 質 肥 料 を 鋤 き 込 んで 分 解 を 進 め 田 植 え 後 14 日 程 度 を 目 安 に 地 表 面 に 10a 当 たり 窒 素 3kg 相 当 の 米 糠 あるいは 菜 種 油 粕 を2 回 程 (それぞれ 80kg 程 度 ) 施 用 する 移 行 時 には 米 糠 合 計 で 窒 素 10kg 相 当 を 施 用 す るが 分 解 を 促 すための 秋 の 稲 わら 堆 肥 や 有 機 質 肥 料 の 窒 素 施 肥 効 果 は 収 穫 時 の 必 要 施 肥 量 の 計 算 には 入 れ ない 10a の 乾 燥 稲 わらが 600kg に 対 して 分 解 を 進 めるために 全 窒 素 3kg 相 当 の 有 機 質 肥 料 か 土 壌 100g 当 たり 3mg の 無 機 態 窒 素 が 分 解 に 必 要 となる 収 穫 時 の 診 断 によって 土 壌 中 の 無 機 態 窒 素 や 有 効 態 リン 酸 の 含 有 量 が 稲 わら 分 解 に 不 足 する 場 合 には 有 機 質 肥 料 の 散 布 が 分 解 の 促 進 や 地 力 増 強 にわずかながら 貢 献 する 有 機 物 は C/N 比 20 程 度 を 境 に それより 高 い 稲 わらや 籾 殻 は 土 づくり 材 料 ( 土 壌 腐 植 ) となり 低 い 米 糠 は 養 分 補 給 材 料 ( 可 給 態 成 分 ) になる どちらの 材 料 も 栽 培 期 間 中 での 急 激 な 分 解 を 起 こ さないことと 土 づくり 材 料 は 特 に 非 作 付 期 間 中 に 十 分 分 解 熟 成 する 準 備 期 間 を 設 ける (2) 収 穫 残 渣 利 用 の 留 意 事 項 土 壌 中 の 酸 素 不 足 で 有 機 物 の 分 解 が 停 滞 す るので 排 水 が 悪 い 地 域 や 湿 田 では 日 減 水 深 を 目 安 として 極 く 浅 い 代 かきや 代 かきを 省 略 し 耕 耘 自 体 を 省 いて 稲 わらを 表 面 に 残 すようにする 10mm 程 度 の 日 減 水 深 であれば 不 耕 起 移 植 を 行 うことも 可 能 である 特 に 地 下 水 位 が 高 く 用 水 温 度 の 高 い 地 域 では 日 減 水 深 を 高 めるため 代 かきや 耕 耘 を 省 いて 有 機 物 の 分 解 を 進 め 生 産 83

力 を 高 めながら 土 づくりを 進 める 稲 わら 還 元 の 目 安 は 田 植 え 時 期 までに 収 穫 し た 稲 わら 重 量 の 5~6 割 以 上 が 分 解 し 減 少 する 状 態 であり 玄 米 目 標 収 量 が500kgの 水 田 では 代 かき 時 の 土 壌 中 の 残 存 有 機 物 が 200~300g/ m2 程 度 を 目 標 にする 収 穫 後 田 植 えまでの 非 作 付 期 間 中 の 積 算 温 度 が 1000~1200 を 下 回 る 地 域 で は 収 穫 残 渣 をすべて 持 ち 出 して 堆 肥 化 を 進 める その 熟 成 堆 肥 を 収 穫 直 後 に 圃 場 に 還 元 することが 望 ましく 耕 畜 連 携 による 堆 肥 と 稲 わらの 交 換 方 式 がとれれば より 合 理 的 である ただし 牛 糞 由 来 の 厩 肥 にはカリウムが 豚 糞 や 鶏 糞 由 来 の 厩 肥 にはリン 酸 やカルシウムが 過 剰 に 含 まれるので 過 剰 蓄 積 に 注 意 を 払 う リン 酸 分 が 不 足 する 痩 せた 水 田 では 米 糠 や 鶏 糞 豚 糞 の 発 酵 堆 肥 を 施 用 すると 可 給 態 リン 酸 が 増 加 する 米 糠 を 乳 酸 菌 や 酵 母 で 発 酵 させたボ カシ 肥 料 は フィチン 態 のリン 酸 が 水 溶 性 リン 酸 に 変 化 して 利 用 しやすくなる ( 加 藤 2003) 4) 有 機 栽 培 田 と 生 物 多 様 性 有 機 栽 培 では 化 学 合 成 農 薬 や 化 学 肥 料 を 用 いず 有 機 物 を 施 用 するため 慣 行 栽 培 田 に 比 べ て 土 壌 微 生 物 の 多 様 性 活 性 が 高 いとされている これが 生 態 系 と 調 和 した 形 で 有 機 栽 培 が 営 める 一 つの 要 因 になっている そのため 最 近 ( 独 ) 中 央 農 業 研 究 センターで 開 発 した 炭 素 資 化 量 連 続 測 定 装 置 で 土 壌 の 微 生 物 多 様 性 活 性 値 (*) の 測 定 を 行 なった 測 定 結 果 によると 有 機 栽 培 圃 場 の 微 生 物 多 様 性 活 性 値 は 慣 行 栽 培 圃 場 や 転 換 中 の 圃 場 と 比 較 して 高 い 傾 向 が 見 られた しかし 有 機 物 施 用 の 方 法 によってその 効 果 は 異 なる (1) 有 機 栽 培 田 と 生 物 多 様 性 慣 行 栽 培 田 と 有 機 栽 培 田 との 稲 の 姿 生 物 多 (*) 微 生 物 多 様 性 活 性 値 : 微 生 物 活 性 値 は 土 壌 や 堆 肥 の 有 機 物 分 解 反 応 の 立 ち 上 がりの 早 さ 分 解 速 度 分 解 量 を 総 合 的 に 数 値 化 したもので 微 生 物 の 炭 素 源 資 化 反 応 の 多 様 性 と 鋭 敏 性 を 評 価 したものである 様 性 の 違 いなどについて 埼 玉 県 小 川 町 T 氏 圃 場 等 で 調 査 を 行 った 結 果 は 以 下 の 通 りである 1 有 機 稲 作 田 の 稲 の 姿 と 生 き 物 の 特 徴 水 田 の 土 壌 の 種 類 が 灰 色 低 地 土 である 埼 玉 県 小 川 町 において 有 機 稲 作 田 と 隣 接 する 慣 行 栽 培 田 とで 稲 の 生 育 状 況 生 物 多 様 性 の 状 況 を 調 査 した 有 機 稲 作 田 は 10 年 来 有 機 水 稲 を 栽 培 しており 水 田 にはカブトエビが 生 息 し 水 草 も 水 田 一 面 を 覆 い 生 物 相 が 多 様 である また 有 機 稲 作 田 は 灰 色 低 地 土 でトロトロ 層 が 形 成 しにく い 土 壌 であるが 堆 肥 の 施 用 と 米 糠 抑 草 の 米 糠 施 用 によりトロトロ 層 が 形 成 され 田 植 後 の 水 田 は 濁 っており 隣 接 の 慣 行 水 田 ではこうした 状 況 は まったく 観 察 されなかった また 有 機 栽 培 の 水 稲 の 茎 は 太 く 葉 色 の 退 化 は 遅 く 収 穫 直 前 まで 光 合 成 が 盛 んな 様 相 で あった ( 写 真 Ⅱ-7 写 真 Ⅱ-8) カブトエビはこの 地 域 に 生 息 するが この 有 機 稲 作 田 には 特 に 多 く 生 息 している その 要 因 とし て 秋 冬 作 にキャベツを 栽 培 し その 残 渣 を 水 田 に 鋤 込 んだことが 挙 げられる カブトエビはそれを 餌 として 繁 殖 している 2 土 壌 中 の 微 生 物 多 様 性 有 機 稲 作 田 と 慣 行 稲 作 田 とで 微 生 物 多 様 性 活 性 値 比 較 調 査 を 行 なった 結 果 有 機 栽 培 歴 10 年 の 水 田 の 微 生 物 多 様 性 活 性 値 が 1,371,983 に 対 し 慣 行 栽 培 田 の 微 生 物 多 様 性 活 性 値 は 634,099と 半 分 程 度 であった ( 表 Ⅱ-11) (2) 有 機 物 施 用 と 土 壌 単 収 への 影 響 有 機 物 施 用 による 土 壌 の 微 生 物 多 様 性 化 学 性 と 水 稲 の 単 収 などの 違 いについて 栃 木 県 野 木 町 T 氏 圃 場 で 調 査 を 行 った 栃 木 県 野 木 町 の T 氏 は 有 機 稲 作 の 規 模 拡 大 を 進 めてきた 中 で 有 機 歴 年 数 の 異 なる 圃 場 がある 圃 場 は 全 て 黒 ボク 土 で 比 較 的 トロトロ 層 ができやすい 圃 場 であるが トロトロ 層 ができなかったり 生 物 の 種 類 が 少 ない 圃 場 がある また 水 稲 の 収 量 にも 格 差 がある このため 有 機 栽 培 への 転 換 中 の 圃 場 も 含 めこうした 特 徴 のある 圃 場 間 で 土 壌 の 84

状況 収量 土壌の腐植含量 土壌微生物多 ①圃場別の土壌 水稲生育評価と土づくり対策 様性の相違点を調査した なお T 氏の雑草抑 有機稲作年数が異なり 土壌のトロトロ層形成 制はよくできており 栽培管理はほぼ同一である 状態等の異なる圃場の状況は表Ⅱ 12 の通りで ある 痩せ地ではトロトロ層ができにくく 収量が 写真Ⅱ 7 有機栽培水稲 左 は慣行栽培水稲 右 と比較して色落ちが遅い 写真Ⅱ 8 有機栽培水稲 左 は慣行栽培水稲 右 と比較して茎は太く 下葉の枯上がりが少ない 表Ⅱ 11 有機栽培水田と慣行栽培水田の微生物多様性 活性値 財 日本土壌協会 2009 表Ⅱ 12 圃場別の土壌と水稲生育評価と土づくり対策 85

低 いという 特 徴 がある また 有 機 9 年 No.21 水 田 は 土 壌 分 析 の 結 果 有 効 態 リン 酸 が 2mg/100g と 極 めて 少 なく これが 緑 藻 類 水 草 等 の 発 生 やトロトロ 層 形 成 に 影 響 していると 考 えられた 2 土 壌 の 腐 植 含 量 と 水 稲 単 収 収 量 の 異 なる 圃 場 毎 に 腐 植 含 量 や 全 窒 素 含 量 などを 測 定 した 結 果 腐 植 含 量 等 が 水 稲 の 収 量 と 密 接 に 関 係 していた T 氏 の 圃 場 では 腐 植 含 量 が 10% 程 度 で 450 kg /10a 程 度 の 安 定 した 単 収 が 得 られているが それ 以 下 であると 収 量 が 低 下 し ている また 腐 植 含 量 が 12% 程 度 になるとやや 倒 伏 する 傾 向 が 見 られ 適 正 な 腐 植 含 量 は 10% 程 度 と 考 えられた 食 味 も 腐 植 含 量 の 低 い 圃 場 で 低 く 11% 程 度 の 腐 植 含 量 のある 水 田 で 高 かった ( 表 Ⅱ-13) 腐 植 含 量 は 土 壌 の 種 類 によって 異 なり 地 温 によって 水 稲 の 収 量 への 影 響 の 度 合 いが 異 なるの で 同 一 地 域 の 同 じ 土 壌 の 種 類 で 比 較 し 地 力 窒 素 の 高 まりの 目 安 とするのが 適 当 である 3 水 田 の 特 徴 と 土 壌 中 の 微 生 物 多 様 性 微 生 物 多 様 性 活 性 について 比 較 調 査 を 行 なっ た 結 果 有 機 栽 培 歴 が 長 く 腐 植 含 量 の 高 い 圃 場 の 微 生 物 多 様 性 活 性 値 の 値 が 高 かった また 有 機 栽 培 への 転 換 期 間 中 の 水 田 は 有 機 栽 培 田 と 比 べて 微 生 物 多 様 性 活 性 値 が 低 かった ( 表 Ⅱ -14) さらに 微 生 物 多 様 性 活 性 値 は 除 草 剤 等 農 薬 を 使 用 していると 低 いことから 慣 行 栽 培 から 転 換 期 間 中 の 水 田 は 腐 植 含 量 が 低 く 農 薬 の 影 響 がまだ 残 っているため 微 生 物 多 様 性 活 性 値 が 低 かったと 考 えられる なお 有 機 9 年 (No21) の 圃 場 は 有 機 歴 は 長 いものの 微 生 物 多 様 性 活 性 値 が 低 かったが この 圃 場 の 有 効 態 リン 酸 は 低 く 藻 類 等 の 発 生 トロトロ 層 の 形 成 が 悪 かった このことから 有 効 態 リン 酸 が 生 き 物 や 生 き 物 が 関 わるトロトロ 層 形 成 に 影 響 していると 考 えられる このため 微 生 物 多 様 性 活 性 値 は 有 機 栽 培 水 田 の 熟 成 度 合 いを 判 断 する 目 安 になると 考 え られるが これが 有 機 物 の 分 解 能 の 向 上 トロ トロ 層 の 形 成 藻 等 有 用 水 生 植 物 の 形 成 等 とどの ような 関 連 があるかの 検 証 は 今 後 の 課 題 である 表 Ⅱ-13 有 機 水 稲 黒 ボク 土 水 田 の 地 力 窒 素 関 係 項 目 の 分 析 結 果 と 収 量 品 質 表 Ⅱ-14 有 機 水 稲 年 数 の 異 なる 圃 場 での 微 生 物 多 様 性 活 性 値 86

5) 緑 肥 の 利 用 と 土 づくり 水 田 での 緑 肥 利 用 は 以 前 からの 技 術 で 地 域 ごとに 緑 肥 の 種 類 や 播 種 時 期 鋤 込 み 時 期 など の 最 適 化 がある 程 度 行 われてきている 特 にレン ゲは 栽 培 経 験 も 蓄 積 されており 比 較 的 導 入 しや すい 技 術 である 緑 肥 は 水 稲 収 穫 直 前 または 収 穫 後 に 播 種 を すれば 特 別 な 管 理 をすることなく 生 育 し 春 先 の 適 当 な 時 期 にトラクターで 鋤 込 んだり カバーク ロップとして 活 用 でき 土 壌 に 有 機 物 を 供 給 する 最 も 手 軽 な 手 段 である 特 にマメ 科 緑 肥 は 窒 素 固 定 を 行 うため 窒 素 供 給 能 力 が 高 く 水 稲 作 では 緑 肥 だけで 十 分 な 窒 素 供 給 が 可 能 である また リン 酸 等 の 土 壌 中 で 不 可 給 態 化 した 養 分 の 可 給 化 効 果 も 期 待 される 水 田 での 緑 肥 利 用 技 術 は 大 きく 鋤 込 み と カバークロップ ( 草 生 マル チやリビングマルチと 同 義 ) に 分 かれるが 緑 肥 鋤 込 みの 方 が 知 見 の 集 積 が 多 く 導 入 も 容 易 なた め 本 項 では 主 に 緑 肥 鋤 込 み 技 術 に 重 点 を 置 く (1) 緑 肥 利 用 の 考 え 方 緑 肥 は 非 作 物 栽 培 期 間 に 裏 作 として 栽 培 し 作 物 栽 培 開 始 前 に 鋤 込 むことにより 多 量 の 有 機 物 が 土 壌 中 に 供 給 され 有 機 物 施 用 効 果 による 総 合 的 な 地 力 改 善 効 果 を 目 的 として 導 入 される 緑 肥 に 含 まれる 養 分 は マメ 科 草 種 の 窒 素 は 後 作 の 水 稲 栽 培 に 十 分 な 量 を 有 し 適 切 な 管 理 を 行 えば 窒 素 施 肥 は 不 要 になる 可 能 性 が 高 い しかし その 他 養 分 は 不 足 することもあるため 土 壌 分 析 により 必 要 な 追 肥 が 必 要 になる 緑 肥 利 用 の 利 点 と 問 題 点 は 以 下 の 通 りである 1 利 点 ⅰ. 養 分 供 給 緑 肥 に 蓄 積 された 養 分 は 鋤 込 み 後 の 土 壌 微 生 物 分 解 により 無 機 化 あるいは 低 分 子 化 され 作 物 が 吸 収 できる 形 態 に 変 化 し 土 壌 中 に 放 出 さ れ 作 物 にとり 有 効 な 養 分 となる また 養 分 供 給 速 度 は 化 学 肥 料 に 比 べ 緩 効 で 養 分 バランス もとれているため 作 物 根 へのストレスが 少 ない ⅱ. 窒 素 固 定 マメ 科 植 物 の 緑 肥 では 根 粒 菌 が 共 生 して 窒 素 固 定 を 行 い 水 稲 1 作 に 必 要 十 分 量 の 窒 素 量 を 容 易 に 供 給 できるため 窒 素 肥 料 の 施 用 を 省 略 できる ⅲ. 省 力 省 資 源 省 コスト 緑 肥 は 圃 場 で 多 量 の 有 機 物 を 生 産 するため 堆 肥 製 造 の 材 料 場 所 時 間 労 力 コストは 不 要 であり 製 造 した 堆 肥 を 搬 送 し 土 壌 に 散 布 する 必 要 がない ⅳ. 環 境 保 全 と 土 壌 養 分 の 有 効 活 用 緑 肥 は 生 育 期 間 中 に 前 作 の 残 効 養 分 を 吸 収 し 裸 地 管 理 にすれば 降 雨 により 溶 脱 や 流 亡 する 硝 酸 態 窒 素 や 陽 イオンを 圃 場 内 に 保 持 でき さらに 土 壌 の 風 食 や 水 食 を 抑 制 できるため 環 境 保 全 機 能 もある また 土 壌 下 層 に 蓄 積 した 微 量 要 素 等 の 養 分 を 溶 解 吸 収 し 地 上 部 に 蓄 積 し 後 作 の 水 稲 が 吸 収 しやすくなり 土 壌 養 分 の 効 率 的 な 活 用 が 可 能 となる ⅴ. 景 観 形 成 や 生 態 系 保 全 レンゲ クローバー ナタネ ヘアリーベッチな ど 水 稲 の 裏 作 に 用 いる 緑 肥 は 春 先 に 開 花 する 草 種 が 多 い 水 田 でこれら 緑 肥 が 開 花 すると 美 し い 景 観 が 生 まれ グリーンツーリズムなどへの 利 用 で 農 村 の 活 性 化 に また ミツバチ 等 訪 花 昆 虫 の 餌 場 となるほか 多 くの 生 物 の 生 息 場 所 として 生 物 多 様 性 の 向 上 に 繋 がる ⅵ. 土 壌 物 理 性 の 改 善 緑 肥 が 土 壌 中 に 根 系 を 発 達 させた 後 鋤 込 み 処 理 等 により 枯 死 すると 根 が 分 解 し 根 のあっ た 場 所 に 空 洞 (マクロポア) が 生 じ 土 壌 の 通 気 性 や 透 水 性 が 改 善 される 湿 田 特 に 水 稲 の 不 耕 起 栽 培 田 では 深 根 性 の 緑 肥 を 利 用 すると 効 果 が 高 い 2 問 題 点 ⅰ. 肥 効 コントロールが 必 要 緑 肥 の 生 育 は 環 境 要 因 特 に 気 象 や 土 壌 状 態 により 大 きく 変 動 し 鋤 込 み 時 の 生 育 量 や 生 育 ステージも 毎 年 変 動 する そのため 緑 肥 に 蓄 積 された 養 分 量 や 分 解 特 性 も 毎 年 異 なるため 鋤 込 87

み 時 期 や 鋤 込 み 後 の 土 壌 管 理 により 肥 効 をコント ロールする 必 要 がある マメ 科 緑 肥 を 利 用 して 過 剰 な 窒 素 供 給 を 行 うと 倒 伏 や 食 味 低 下 病 害 虫 の 被 害 を 受 けるリスクが 高 くなる 一 方 緑 肥 が 生 育 不 良 の 場 合 は 水 稲 栽 培 中 に 有 機 質 肥 料 の 追 肥 を 行 う 必 要 がある ⅱ. 未 熟 有 機 物 施 用 に 伴 う 障 害 緑 肥 を 鋤 込 むと 土 壌 微 生 物 により 急 速 に 緑 肥 の 分 解 が 始 まる この 時 に 発 生 する 微 生 物 の 代 謝 産 物 は 植 物 根 にとり 有 害 なものが 多 いため 鋤 込 み 後 は 通 常 2 週 間 程 度 放 置 し 有 害 物 質 濃 度 を 低 下 させてから 代 かき 作 業 を 始 める 代 かきの 際 湛 水 すると 今 度 は 酸 化 還 元 電 位 が 低 下 し 有 機 酸 などが 発 生 し 水 稲 の 生 育 を 抑 制 する この 障 害 程 度 は 寒 冷 地 の 排 水 不 良 田 では 被 害 を 受 け やすいが 温 暖 地 の 水 田 では 被 害 を 受 けにくく 発 生 した 有 機 酸 で 雑 草 抑 制 効 果 が 見 られることも ある ⅲ. 細 断 が 必 要 な 草 種 レンゲやクローバーなど 草 丈 が 低 く 剛 性 も 低 い 草 種 はロータリー 耕 やプラウ 耕 で 鋤 込 めるが バイオマス 量 が 多 く 剛 性 の 高 い 草 種 のヘアリー ベッチ エンバク イタリアンライグラス 等 の 草 種 は 予 めハンマーナイフモア 等 で 細 断 後 に 鋤 込 む 必 要 がある 細 断 断 片 化 により ロータリーの 爪 軸 への 緑 肥 巻 き 付 きがなくなり 緑 肥 鋤 込 み 量 の 平 準 化 が 行 える ⅳ.1 年 2 作 が 不 可 能 暖 地 では 1 年 2 作 が 可 能 な 地 帯 で 緑 肥 栽 培 を 行 うと 小 麦 大 麦 裸 麦 ハクサイ キャベツ タマネギ ソラマメ 等 の 冬 作 物 の 栽 培 ができず こ の 間 の 換 金 作 物 の 栽 培 ができない 3 緑 肥 の 選 定 方 法 と 利 用 上 の 留 意 点 緑 肥 草 種 は 気 象 条 件 栽 培 時 期 土 壌 の 乾 湿 緑 肥 病 害 虫 生 育 量 窒 素 固 定 量 鋤 込 み 方 法 景 観 配 慮 等 の 条 件 を 総 合 的 に 判 断 し 適 切 な 草 種 を 選 ぶ 必 要 がある 辻 (2002) は 有 機 栽 培 に 限 定 はしていないが 水 稲 裏 作 に 適 した 緑 肥 品 種 の 栽 培 特 性 ( 図 Ⅱ-11) 及 び 開 花 鋤 込 み 期 ( 表 Ⅱ-15) をまとめている 有 機 稲 作 で は 基 本 的 に 田 植 え 時 に 施 肥 が 不 要 なため 窒 素 固 定 を 行 うマメ 科 草 種 が 適 している しかし 未 利 用 有 機 物 資 源 が 豊 富 にあり 緑 肥 と 併 用 する 状 況 下 では イネ 科 草 種 の 選 択 も 有 用 性 が 高 い マメ 科 緑 肥 利 用 で 重 要 なのは 生 育 量 や 窒 素 固 定 量 開 花 時 期 である 水 稲 移 植 時 期 に 合 わ せて 鋤 込 み 時 期 緑 肥 開 花 時 期 を 逆 算 して 推 定 し 緑 肥 草 種 を 選 択 する ⅰ.レンゲ マメ 科 草 種 で 正 式 和 名 は ゲンゲ 学 名 は 表 Ⅱ-15 秋 播 き 用 緑 肥 作 物 景 観 緑 肥 作 物 の 栽 培 特 性 ( 辻 2002) 88

図 Ⅱ-11 秋 播 き 用 緑 肥 作 物 景 観 緑 肥 作 物 の 播 種 期 及 び 開 花 鋤 込 み 期 ( 一 般 地 : 関 東 平 地 標 準 ) ( 辻 2002) Astragalus sinicus L. である 中 国 大 陸 から 導 入 さ れ 古 くから 水 田 の 緑 肥 として 用 いられてきた ミ ツバチの 主 要 な 蜜 源 植 物 としても 利 用 されている 昭 和 前 半 までは 広 く 栽 培 されていたが 化 学 肥 料 の 普 及 で 衰 退 した 沖 縄 と 北 海 道 を 除 く 暖 地 から 寒 冷 地 まで 広 く 栽 培 されている 長 い 栽 培 の 歴 史 の 中 で 在 来 種 あるいは 銘 柄 が 分 化 し 現 在 では 収 量 の 高 い 晩 生 の 岐 阜 レンゲ ( 岐 阜 系 ) さらに 北 陸 地 方 で 耐 寒 性 の 耐 雪 性 を 改 良 された 中 生 の 富 農 選 24 号 が 奨 励 品 種 となっている 初 期 生 育 時 は 湿 害 が 根 粒 菌 の 着 生 を 妨 げるので 特 に 水 稲 の 後 作 では 排 水 を 十 分 に 行 なう 播 種 量 は 10a 当 たり 2 ~ 4kg 程 度 レンゲの 栽 培 歴 がない 場 合 には 根 粒 菌 を 接 種 する ( 奥 村 2005a) ⅱ.シロクローバー 和 名 はシロツメクサで 学 名 は Trifolium repens L. である 明 治 時 代 以 降 に 牧 草 として 導 入 され 全 国 的 に 広 がった 多 年 生 のマメ 科 牧 草 で 原 産 地 は 地 中 海 沿 岸 地 域 とされている 現 在 では 温 帯 地 域 を 中 心 に 北 極 圏 から 熱 帯 高 地 まで 世 界 中 に 分 布 している 我 が 国 でも 北 海 道 から 沖 縄 まで 分 布 し 蛋 白 質 やミネラルに 富 み 根 粒 菌 が 固 定 し た 窒 素 による 肥 料 節 減 効 果 もあるため 混 播 草 地 で 利 用 されている また 公 園 芝 生 あるいは 道 路 法 面 や 路 肩 の 土 壌 保 全 植 物 としても 使 われる 適 地 は 湿 潤 な 温 暖 地 から 寒 冷 地 まで 幅 広 く 適 応 する が 夏 期 の 干 ばつには 弱 い 土 壌 への 適 応 性 も 高 いが 酸 性 土 や 排 水 の 悪 い 土 壌 には 適 さない 写 真 Ⅱ-9 レンゲ ( 提 供 : 上 野 秀 人 氏 ) 写 真 Ⅱ-10 シロクローバー ( 提 供 : 上 野 秀 人 氏 ) 89

品 種 は 葉 の 大 きさに 基 づいて 大 葉 型 (ラジノ タイプ) 中 葉 型 (コモン 型 ) 及 び 小 葉 型 (ワイ ルドタイプ) に 分 類 される 大 葉 型 の 主 な 普 及 品 種 は カリフォルニアラジノ ルナメイ などがある 競 合 力 が 強 いため 再 生 力 の 強 いオーチャードグ ラスと 混 播 されることが 多 い 中 葉 型 では マキバ シロ ソーニャ フィア が 代 表 的 な 品 種 でチ モシー ペレニアルライグラス メドーフェスクなど と 採 草 あるいは 採 草 放 牧 兼 用 で 混 播 利 用 される 小 葉 型 では ノースホワイト タホラ リベン デル などがあり 混 播 で 放 牧 利 用 されることが 多 い マメ 科 牧 草 の 中 では 土 壌 ph や 水 分 に 対 する 適 応 性 が 比 較 的 高 いが ph は 5.5~6.5 程 度 に 石 灰 質 資 材 などで 矯 正 する 必 要 がある ( 奥 村 2005b) ⅲ.ヘアリーベッチ ヘアリーベッチ (Vicia villosa Roth) はヨーロッ パ 原 産 で ソラマメやカラスノエンドウの 仲 間 であ り 明 治 時 代 に 牧 草 として 導 入 された 花 がフジ に 似 ているのでシラゲクサフジまたはナヨクサフジ の 和 名 がある 秋 播 で 春 先 から 初 夏 に 圃 場 を 全 面 被 覆 し 雑 草 をほぼ 完 璧 に 抑 制 し 草 高 は 50~ 100cm にもなる 開 花 後 は 一 斉 に 枯 れて 敷 わら 状 になり 窒 素 固 定 能 力 が 高 く 緑 肥 効 果 も 高 いため 果 樹 園 や 休 耕 地 の 雑 草 管 理 に 最 適 とされている ヘアリーベッチはマメ 科 で 最 高 の 窒 素 固 定 能 力 が あり 通 常 10a 当 たり 10~25kg の 窒 素 固 定 を 行 う 四 国 農 試 での 測 定 記 録 では 40kg も 固 定 した 記 録 がある アレロパシー 物 質 であるシアナミドを 生 成 し 雑 草 抑 制 作 用 を 有 する 最 近 は 多 くの 種 苗 写 真 Ⅱ-11 ヘアリーベッチ ( 提 供 : 上 野 秀 人 氏 ) 会 社 から 早 生 種 のヘアリーベッチが まめ 助 まめっこ まめ 太 郎 寒 太 郎 藤 えもん な どの 名 前 で 販 売 されており これら 品 種 は 後 作 の 水 稲 栽 培 のために 春 先 早 く 枯 れることが 望 まし い 場 合 には 適 している 雑 草 抑 制 効 果 は 従 来 の 品 種 に 比 べて 劣 り アレロパシー 活 性 もやや 弱 い また 雪 の 下 でも 越 冬 できないことがあるので 注 意 が 必 要 である 太 平 洋 側 の 温 暖 な 地 域 や 西 日 本 でも 播 種 時 期 が 遅 れると 雑 草 抑 制 力 が 低 下 す る 傾 向 があるので 東 日 本 では 9 月 下 旬 ~10 月 西 日 本 では 11 月 頃 までに 播 種 することが 推 薦 され る ( 藤 井 1995) (2) 緑 肥 の 栽 培 と 鋤 込 み 1 播 種 緑 肥 は 湿 害 に 弱 いものが 多 いため 水 田 に 緑 肥 を 導 入 する 場 合 には 注 意 を 要 する 湿 田 では 暗 渠 排 水 や 溝 切 りなどの 明 渠 を 設 け 水 分 が 過 剰 にならないように 注 意 する 基 本 的 に 水 稲 収 穫 後 に 土 壌 を 荒 起 こしして 乾 燥 させた 後 にロータリー 耕 で 土 粒 子 を 砕 土 してから 播 種 し 軽 い 覆 土 を 行 うと 発 芽 率 が 高 い しかし レンゲやクローバーを 水 稲 立 毛 中 に 播 種 する 場 合 は 特 別 な 準 備 は 不 用 である 収 穫 前 に 水 田 土 壌 を 乾 かし 地 耐 力 がある 程 度 高 まっ た 時 点 で 動 力 播 種 機 やブロードキャスターで 散 播 し 水 稲 収 穫 後 に 稲 わらで 被 覆 すれば 十 分 な 個 体 密 度 が 得 られる しかし ヘアリーベッチなど の 大 型 種 子 や 水 分 吸 収 に 時 間 がかかり 発 芽 し にくい 種 子 を 播 種 する 場 合 は 播 種 後 に 浅 いロー タリー 耕 で 覆 土 を 行 い さらに 鎮 圧 することで 催 芽 率 が 高 まる 播 種 時 期 は9~10 月 が 中 心 であるが シロクロー バーやヘアリーベッチは 早 期 に 播 種 すると 初 期 生 育 が 良 く 冬 季 の 雑 草 を 抑 制 することもできると ともに 翌 春 のバイオマス 量 も 高 くなりやすい 2 緑 肥 の 鋤 込 み レンゲやシロクローバー 等 の 剛 性 の 低 い 草 種 は ロータリー 耕 だけでも 鋤 込 み 可 能 であるが ヘアリーベッチやイネ 科 牧 草 等 の 剛 性 の 高 い 草 種 90