意 見 陳 述 2012 年 8 月 6 日 醍 醐 聰 ( 東 京 大 学 名 誉 教 授 ) 参 議 院 : 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 に 関 する 特 別 委 員 会 中 央 公 聴 会 1
Ⅰ. 附 則 第 18 条 2 項 の 解 釈 概 念 図 消 費 税 増 税 前 消 費 税 増 税 後 消 費 税 収 10 兆 円 消 費 税 収 社 会 保 障 支 出 社 会 保 障 支 出 20 兆 円 20 兆 円 26 兆 円 その 他 の 財 源 その 他 の 支 出 30 兆 円 その 他 の 支 出 その 他 の 財 源 20 兆 円 24 兆 円 30 兆 円 (+4 兆 円 ) 2
* 附 則 第 18 条 の 2 の 解 釈 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 の 実 施 等 により 財 政 による 機 動 的 対 応 が 可 能 となる 中 で 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 の 意 味 閣 法 第 72 号 による 消 費 税 法 の 改 正 を 指 す 財 政 による 機 動 的 対 応 が 可 能 となる 消 費 税 増 税 によって 財 政 的 に 余 裕 が 生 じる という 意 味 と 解 される * 附 則 第 18 条 2 と 消 費 税 増 税 分 はすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てるという 政 府 見 解 は 両 立 するか? ケースⅠ 消 費 税 増 税 分 (ここでは 10 兆 円 )をすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てた 場 合 増 税 後 の 社 会 保 障 経 費 < 増 税 後 の 消 費 税 収 であれば 消 費 税 増 税 分 は 他 の 用 途 ( 以 下 戦 略 的 経 費 と 呼 ぶ)に 充 てることが 可 能 になる しかし この 仮 定 は 1 消 費 税 増 税 後 に 社 会 保 障 給 付 を 抑 制 し 経 費 を 削 減 すれば 増 税 後 の 社 会 保 障 経 費 < 増 税 後 の 消 費 税 収 という 関 係 が 成 り 立 たつ 3
2しかし それなら 増 税 後 の 消 費 税 収 増 税 後 の 社 会 保 障 費 経 費 となるよう 増 税 額 を 圧 縮 しておくのが 道 理 3それをしないで 消 費 税 増 税 分 の 一 部 に 余 裕 ができたとして 社 会 保 障 経 費 以 外 の 経 費 に 充 てるのでは 消 費 税 増 税 分 はすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てる (= 社 会 保 障 の 安 定 財 源 の 確 保 等 を 図 るため)という 法 案 の 趣 旨 とも 政 府 見 解 とも 相 容 れ ず 国 民 にまやかしの 説 明 をしたことになる ケースⅡ 消 費 税 増 税 分 (ここでは 10 兆 円 )はすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てるが そ の 充 当 額 を 社 会 保 障 経 費 の 伸 び 以 内 にとどめる 場 合 例 えば 増 税 額 (10 兆 円 )< 社 会 保 障 経 費 の 伸 び(6 兆 円 )の 場 合 1 増 減 後 の 財 源 と 使 途 のストック ベースの 対 応 でみると 消 費 税 はすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てた 形 になるが 増 税 によるキャッシュ フローの 使 途 でいうと 消 費 税 増 税 額 10 兆 円 のうち 4 兆 円 は 社 会 保 障 経 費 以 外 の 経 費 に 充 てる ことにな る 2 ページの 概 念 図 はこのケースを 想 定 したもの 4
消 費 税 増 税 分 (10 兆 円 )の 使 途 : 6 兆 円 社 会 保 障 経 費 に 充 当 4 兆 円 その 他 の 経 費 ( 附 則 第 18 条 2 に 列 挙 された 戦 略 的 経 費?)に 充 当 2そうなると この 場 合 も 消 費 税 増 税 分 はすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てる という 政 府 見 解 と 相 容 れず 社 会 保 障 の 安 定 財 源 の 確 保 等 を 図 る 税 制 の 抜 本 的 な 改 革 という 法 案 の 題 目 それ 自 体 とも 相 容 れない ケースⅢ 消 費 税 増 税 とは 別 に 新 規 の 財 源 ( 国 債 増 発 など)を 調 達 し それを 附 則 第 18 条 2 の 戦 略 的 経 費 に 充 てる 場 合 1この 場 合 は 消 費 税 増 税 分 はすべて 社 会 保 障 経 費 に 充 てる という 政 府 見 解 と 附 則 第 18 条 2 が 齟 齬 を 来 すことはない 2しかし 消 費 税 増 税 とは 無 関 係 の 財 源 を 調 達 することによって 財 政 による 機 動 的 対 応 が 可 能 になる というのであれば そうした 文 言 を 消 費 税 改 革 法 案 の 附 則 に 盛 り 込 むのは 法 案 の 文 言 として 失 当 である このように 国 語 的 にも 瑕 疵 のある 5
附 則 を 含 んだ 法 案 だとすれば 当 該 附 則 を 削 除 するか 法 案 提 出 者 に 差 し 戻 して 文 言 の 是 正 を 要 求 するのが 責 任 ある 国 会 審 議 である 3 仮 に 本 法 案 とは 別 に 附 則 第 18 条 2 に 記 載 された 戦 略 的 経 費 に 充 てるため に 国 債 を 増 発 することを 予 定 しているのであれば 国 債 等 の 長 期 債 務 残 高 の 累 増 を 根 拠 に 財 政 再 建 待 ったなし を 大 義 名 分 にして 消 費 税 増 税 を 訴 えた 政 府 の 言 動 に 背 反 するものであり 国 民 に 対 する 信 義 にもとる 行 為 である 6
Ⅱ. 税 の 正 義 に 背 く 消 費 税 増 税 * 税 の 正 義 とは: 税 の 財 源 調 達 機 能 に 配 意 しながら 応 能 原 則 にもとづいて 税 の 所 得 再 分 配 機 能 を 確 保 すること (1)3 党 協 議 を 経 て 所 得 税 相 続 税 の 改 正 に 係 る 規 定 が 全 て 削 除 された 消 費 税 法 等 の 一 部 を 改 正 する 等 の 法 律 消 費 税 法 の 一 部 を 改 正 する 等 の 法 律 所 得 税 改 正 事 項 の 削 除 原 法 案 でも 微 改 正 に 過 ぎなかった 事 項 ( 課 税 所 得 5,000 万 円 超 の 税 率 を 40%か ら 45%への 引 き 上 げ)さえも 3 党 協 議 を 経 て 削 除 された 相 続 税 改 正 事 項 の 削 除 1 基 礎 控 除 の 引 下 げ(5,000 万 円 +1,000 万 円 法 定 相 続 人 数 5,000 万 円 +600 万 円 法 定 相 続 人 数 ) 規 定 の 削 除 2 税 率 構 造 の 見 直 し 規 定 ( 最 高 税 率 を 50% 55%へ 引 上 げ)の 削 除 7
(2) 課 税 の 現 状 申 告 納 税 者 の 所 得 税 負 担 率 と 株 式 譲 渡 所 得 の 割 合 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 26.4 28.3 22.4 2.6 4.6 7.6 10.6 0.1 0.3 0.4 0.6 1.2 1.9 3.7 90.9 67.4 43.1 24.9 33.9 22.9 22.3 15.8 20 13.5 所 得 税 負 担 率 株 式 譲 渡 所 得 の 割 合 財 務 省 参 考 資 料 ( 所 得 税 ) 平 成 23 年 12 月 20 日 第 5 回 社 会 保 障 税 一 体 改 革 作 業 チーム 資 料 より 作 成 8
合 計 課 税 価 格 階 級 区 分 相 続 税 の 合 計 課 税 価 格 階 級 別 の 課 税 状 況 等 ( 平 成 21 年 分 ) 件 数 納 付 税 額 平 均 件 数 累 積 割 合 税 額 累 積 割 合 課 税 価 格 (a) 平 均 納 付 税 額 (b) 負 担 割 合 (b)/(a) ~1 億 円 10,750 23.1% 131 億 円 1.1% 8,383 万 円 122 万 円 1.5% ~2 億 円 21,783 70.1 1,263 12.0 13,926 580 4.2 ~3 億 円 6,601 84.3 1,346 23.6 24,127 2,039 8.5 ~5 億 円 4,280 93.5 2,175 42.3 37,916 5,082 13.4 ~7 億 円 1,369 96.4 1,375 54.1 58,469 10,045 17.2 ~10 億 円 842 98.2 1,454 66.7 82,838 17,268 20.8 ~20 億 円 639 99.6 2,079 84.6 134,401 32,538 24.2 ~100 億 円 168 100.0 1,424 96.8 293,220 84,788 28.9 100 億 円 超 6 100.0 369 100.0 1,796,017 615,750 34.3 合 計 46,438 11,618 21,765 2,502 11.5 国 税 庁 統 計 年 報 書 より 9
* 合 計 所 得 が 1 億 円 を 超 える 段 階 から 合 計 所 得 に 対 する 所 得 税 負 担 率 が 逓 減 して いる その 主 な 理 由 は 高 額 所 得 層 において 低 率 分 離 課 税 扱 いされている 株 式 譲 渡 所 得 の 占 める 比 重 が 高 いことにある * 相 続 税 の 平 均 課 税 価 格 (2 億 1,765 万 円 )は 所 得 税 に 比 準 すると 40%の 最 高 税 率 が 適 用 される 水 準 であるが 実 際 の 平 均 負 担 割 合 ( 平 均 納 付 額 / 平 均 課 税 価 格 ) は 11.5%にとどまっている また 100 億 円 超 の 課 税 価 格 の 納 税 者 の 場 合 でも 負 担 割 合 は 34.3%にとどまり 法 定 最 高 税 率 よりも 約 16 ポイントも 低 い その 主 な 理 由 は 基 礎 控 除 が 他 の 所 得 種 類 における 各 種 控 除 と 比 べて 突 出 して 多 いこ とにある (3) 政 府 の 公 式 見 解 我 が 国 の 所 得 税 については 中 堅 所 得 層 の 負 担 累 増 感 を 解 消 する 等 の 観 点 から 昭 和 60 年 代 以 降 税 率 構 造 の 大 幅 な 累 進 緩 和 を 実 施 してきた 他 方 で 近 年 の 給 与 所 得 者 の 所 得 構 造 の 実 態 を 見 ると 平 成 9 年 以 降 構 造 変 化 が 認 められる す 10
なわち 平 均 的 な 所 得 水 準 が 下 落 するとともに その 分 布 についても 全 体 として 下 方 へシフトしている こうした 中 で 特 に 高 い 所 得 階 層 の 割 合 は 近 年 むしろ 高 まっており 格 差 が 拡 大 する 傾 向 がみられる このような 所 得 構 造 が 変 化 する 一 方 で 税 率 構 造 の 累 進 性 が 低 下 したままであることにより 所 得 税 による 所 得 再 分 配 機 能 は 近 年 低 下 している 今 後 消 費 税 率 の 引 上 げにより 税 制 全 体 とし ての 累 進 性 がさらに 低 下 することも 踏 まえれば 所 得 税 については 高 い 所 得 層 に 負 担 を 求 めるなど 所 得 再 分 配 機 能 の 回 復 を 図 る 改 革 を 進 める 必 要 がある ( 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2012 年 2 月 17 日 閣 議 決 定 ) *3 党 合 意 を 経 た 消 費 税 改 正 法 案 修 正 案 ( 閣 法 第 72 号 )は こうした 閣 議 決 定 を 全 面 的 に 反 故 にし 資 産 課 税 の 所 得 再 分 配 機 能 はもとより 財 源 調 達 機 能 も 劣 化 さ せるもの これほど 不 条 理 な 法 案 を 採 決 することは 税 の 正 義 に 反 すると 同 時 に わが 国 の 税 制 に 一 層 深 刻 な 歪 みをもたらす 11
下 線 部 分 に 関 する 注 所 得 税 は 景 気 の 変 動 に 弱 い という 言 説 について 所 得 税 収 の 減 少 ( 13.2 兆 円 ): 1991 年 度 (ピーク 時 )26.7 兆 円 2011 年 度 当 初 予 算 13.5 兆 円 要 因 : 11995 年 の 税 制 改 革 による 制 度 減 税 ( 累 進 性 の 緩 和 人 的 控 除 給 与 所 得 控 除 の 引 上 げ) 21999 年 の 税 制 改 革 による 最 高 税 率 の 引 き 下 げによる 制 度 減 税 3 所 得 税 から 住 民 税 への 税 源 移 譲 による 制 度 的 減 収 (2007 年 から) 合 計 2.4 兆 円 0.3 兆 円 3.0 兆 円 5.7 兆 円 ( 減 収 額 合 計 の 43.2%) *この 5.7 兆 円 は 消 費 税 の 10%への 増 税 によって 見 込 まれる 粗 税 収 (13.5 兆 円 )の 42% 正 味 の 増 収 (10.2 兆 円 =13.5 兆 円 -0.8 兆 円 -2.5 兆 円 )の 56%にあたる 結 論 : この 間 の 所 得 税 の 税 収 減 の 43%は 制 度 減 税 によりもので 景 気 の 影 響 ではない 12
Ⅲ. 転 嫁 ( 損 税 )の 問 題 を 放 置 した 消 費 税 増 税 の 不 条 理 1. 転 嫁 の 実 態 ~ 今 後 消 費 税 率 が 引 き 上 げられた 場 合 に 販 売 価 格 に 転 嫁 できるか~ 売 上 高 ほ とん ど 転 嫁 で き ないと 思 う 仕 入 段 階 の 消 費 税 の 半 分 程 度 しか 転 嫁 できないと 思 う すべてを 転 嫁 できると 思 う 1 億 円 超 164 社 (20.7%) 79 社 (10.0%) 408 社 (51.6%) 5,000 万 ~1 億 円 142 社 (25.5%) 47 社 (8.4%) 244 社 (43.8%) 3,000~5,000 万 円 167 社 (25.0%) 102 社 (15.3%) 232 社 (34.7%) 2,000~3,000 万 円 163 社 (26.2%) 103 社 (16.6%) 220 社 (35.4%) 1,000~2,000 万 円 340 社 (40.7%) 168 社 (20.1%) 332 社 (39.7%) 500~1,000 万 円 703 社 (45.7%) 196 社 (12.7%) 377 社 (24.5%) 500 万 円 以 下 385 社 (55.1%) 78 社 (11.2%) 142 社 (20.3%) 日 本 商 工 会 議 所 全 国 商 工 会 連 合 会 全 国 中 小 企 業 団 体 中 央 会 全 国 商 店 街 振 興 組 合 連 合 会 の 2011 年 実 態 調 査 より 作 成 13
2. 転 嫁 できない 消 費 に 関 する 課 税 の 現 状 *50,000 円 で 仕 入 れた 製 品 を 税 抜 き 価 格 60,000 円 で 販 売 したと 仮 定 ( 仕 入 段 階 で 負 担 した 消 費 税 :50,000 円 0.05=2,500 円 * 税 務 上 の 取 り 扱 い 60,000 円 を 税 込 み 価 格 それを 1.05 で 割 り 戻 した 57,143 円 を 税 抜 き 価 格 とみなさ れ それに 0.05 を 乗 じた 2,857 円 を 消 費 者 から 預 かった 消 費 税 額 とみなされる 納 税 すべき 消 費 税 額 =2,857 円 -2,500 円 =357 円 ( 自 腹 を 切 る 損 税 ) * 担 税 力 ( 預 かった 消 費 税 )のない 者 へのいわれのない 課 税 3. 適 正 な 転 嫁 に 向 けた 政 府 の 対 策 * 独 占 禁 止 法 下 請 法 の 特 例 に 係 る 必 要 な 法 制 上 の 措 置 を 講 ずる 旨 の 規 定 を 追 加 す る ( 三 党 合 意 ) (1) 小 売 段 階 での 消 費 者 への 転 嫁 の 場 合 消 費 税 法 が 事 業 者 から 消 費 者 にその 税 金 の 適 正 な 転 嫁 がなされることを 予 定 し 14
ているということはできるが 同 法 が 消 費 者 に 事 業 者 に 対 する 消 費 税 の 支 払 義 務 を 課 したものとか 若 しくは 事 業 者 に 消 費 者 に 対 する 私 法 上 の 請 求 権 として 転 嫁 請 求 権 を 認 めたものとまで 解 することが 出 来 ない ( 大 阪 地 裁 平 成 2 年 8 月 3 日 判 決 ) 経 済 的 実 質 的 にみて 事 業 者 が 納 税 義 務 を 負 う 消 費 税 の 負 担 が その 消 費 税 相 当 分 が 商 品 の 販 売 価 格 に 上 乗 せされるという 形 で その 商 品 を 購 入 する 消 費 者 に 転 嫁 されることが 予 定 されている( 税 制 改 革 法 11 条 )に 過 ぎない ( 東 京 地 裁 平 成 4 年 3 月 24 日 判 決 ) * 消 費 税 は 経 済 実 態 としては 販 売 価 格 要 素 の 一 部 に 過 ぎず 事 業 者 の 価 格 決 定 に 行 政 が 介 入 して 税 率 通 りの 消 費 税 を 上 乗 せすべきとかどうとか 言 える 問 題 ではない *デフレ 経 済 下 では 顧 客 離 れを 恐 れて 事 業 者 が 消 費 税 増 税 分 を 転 嫁 したくてもで きないのが 実 情 15
(2) 下 請 企 業 から 親 企 業 への 転 嫁 の 場 合 * 下 請 代 金 支 払 遅 延 防 止 法 の 運 用 で 対 処 * 公 正 取 引 委 員 会 消 費 税 率 の 引 上 げ 及 び 地 方 消 費 税 の 導 入 に 伴 う 転 嫁 表 示 に 関 する 独 占 禁 止 法 及 び 関 係 法 令 の 考 え 方 (1996 年 12 月 25 日 ) 下 請 法 に 違 反 する 行 為 の 未 然 防 止 に 向 けた 公 取 の 取 り 組 み 1 下 請 法 に 関 する 講 習 会 説 明 会 (2010 年 度 には 47 都 道 府 県 58 会 場 で 実 施 ) 2 下 請 法 に 関 する 窓 口 相 談 移 動 相 談 の 実 施 3 親 事 業 者 に 対 する 法 遵 守 のための 年 末 要 請 ( 同 上 35,000 名 宛 てに 要 請 ) 4 優 越 的 地 位 の 濫 用 に 関 する 独 禁 法 の 考 え 方 の 策 定 公 表 5 優 越 的 地 位 の 濫 用 に 関 する 実 態 調 査 ( 小 売 納 入 業 者 に 対 する 書 面 調 査 ) どれも 実 効 性 を 期 待 できない 啓 蒙 啓 発 活 動 * 経 産 省 / 中 小 企 業 庁 の 対 業 界 行 政 1 下 請 適 正 取 引 等 の 推 進 のためのガイドライン ベストプラクティス 集 16
望 ましい 企 業 間 取 引 事 例 を 示 し 両 者 の win-win の 関 係 づくりをめざす 苦 しいときこそ それをともに 乗 り 切 る 共 存 共 栄 のための 運 命 共 同 体 との 認 識 を 持 つ コスト 増 加 分 をきちんと 転 嫁 できるしくみは 重 要 だが 国 際 競 争 のなかでた だ 転 嫁 するのではなく 下 請 事 業 者 と 親 事 業 者 が 改 善 提 案 を 共 有 し コスト を 低 減 できるような 生 産 性 向 上 を 図 り その 成 果 をシェアするような 関 係 を 構 築 し 2 自 動 車 産 業 適 正 取 引 ガイドライン (2007 年 策 定 ) 買 いたたきといわれる 紛 争 行 為 は 往 々にして 成 果 の 分 配 などをめぐる 当 事 者 同 士 のあいだの 意 見 の 食 い 違 い 認 識 の 格 差 を 埋 めるための 相 互 協 議 双 方 納 得 感 のある 結 論 * 法 の 目 的 から 逸 脱 した 業 界 行 政 ( 目 的 ) 第 1 条 この 法 律 は, 下 請 代 金 の 支 払 遅 延 等 を 防 止 することによつ て 親 事 業 者 の 下 請 事 業 者 に 対 する 取 引 を 公 正 ならしめるとともに 下 請 事 17
業 者 の 利 益 を 保 護 し もつて 国 民 経 済 の 健 全 な 発 達 に 寄 与 することを 目 的 と する 親 事 業 者 と 下 請 事 業 者 は 対 等 の 交 渉 力 を 持 つパートナーではない 実 態 は 消 費 税 引 上 げ 分 だけの 買 いたたきであっても 双 方 の 合 意 により 消 費 税 引 上 げ 分 と 同 額 だけ 原 価 低 減 が 達 成 された と 申 し 立 てたら それでお しまいになる 産 業 振 興 を 担 う 経 産 省 が その 外 局 の 中 小 企 業 庁 を 通 じて 独 禁 法 を 補 完 す る 下 請 法 を 担 うのは 利 益 相 反 公 正 な 下 請 取 引 の 監 視 指 導 は 公 取 委 に 一 元 化 すべき < 以 下 は 時 間 の 制 約 上 今 日 の 意 見 陳 述 では 省 かせていただきます 質 疑 におきまして 取 り 上 げていただけましたら ご 説 明 いたします > 18
意 見 要 旨 1 本 来 の 一 体 改 革 とは 真 逆 の 一 体 改 悪 * 本 来 の 一 体 改 革 : 雇 用 と 社 会 保 障 の 拡 充 を 通 じて 民 富 を 涵 養 し 国 の 税 収 に 結 び 付 けること * 今 般 の 一 体 改 革 : 民 富 を 縮 小 させつつ 国 富 を 増 やそうとする 無 理 筋 の 増 税 策 ~ 民 富 まずして 国 富 まず~ 2そもそも 論 を 棚 上 げにしたままの 消 費 税 増 税 * 増 収 というとなぜ 即 増 税 なのか? 税 外 財 源 の 拡 充 がどれほど 追 求 されたのか? * 増 税 というと なぜ 消 費 税 増 税 オンリ-なのか? 所 得 税 の 累 進 機 能 の 復 元 相 続 税 の 課 税 の 適 正 化 の 回 復 はすべて 先 送 り 19
不 安 定 雇 用 を 放 置 したままの 増 税 1.パート 労 働 者 の 雇 用 環 境 * 非 正 規 労 働 者 の 推 移 ( 総 務 省 労 働 力 調 査 ) 1985 年 655 万 人 ( 全 体 の 16.4%) 2011 年 1,733 万 人 ( 同 35.2%)うち 女 性 1,188 万 人 ( 同 54.7%) 男 性 の 非 正 規 の 43.6%は 家 計 の 主 たる 稼 ぎ 手 ( 厚 労 省 平 成 18 年 パートタイム 労 働 者 総 合 実 態 調 査 ) * 非 正 規 労 働 者 の 年 収 ( 前 掲 労 働 力 調 査 括 弧 内 は 下 位 からの 累 計 ) ~100 万 円 100~199 万 円 200~299 万 円 男 女 正 規 1.3% 5.8%(7.1%) 15.2%(22.3%) 非 正 規 27.8% 30.3%(58.1%) 21.6%(79.7%) 正 規 5.5% 19.3%(24.8%) 28.5%(53.3%) 非 正 規 47.8% 37.8%(85.6%) 10.4%(96.0%) 20
*10%に 引 き 上 げられた 場 合 の 消 費 税 負 担 率 ( 対 年 収 比 ) 2 人 以 上 の 世 帯 : 年 収 200 万 円 以 下 7.5%(11.9 万 円 ) 単 身 世 帯 : 年 収 100 万 円 以 下 11.6%(8.5 万 円 ) ( 総 務 省 家 計 調 査 2010 年 より 計 算 醍 醐 聰 消 費 増 税 の 大 罪 61~62 頁 ) * 正 社 員 転 換 措 置 の 実 施 割 合 ( 労 働 力 調 査 2011 年 12 月 末 現 在 ) 従 業 員 100~299 人 の 事 業 所 60.5% 1,000 人 以 上 の 事 業 所 47.0% * 非 正 規 労 働 者 の 厚 生 年 金 加 入 政 府 の 当 初 目 標 ( 安 心 3 本 柱 ) 370 万 人 厚 生 年 金 保 険 法 改 正 法 案 段 階 (2012 年 4 月 国 会 提 出 ) 45 万 人 3 党 合 意 後 25 万 人 標 準 報 酬 月 額 の 下 限 の 引 上 げ 5.4 万 円 7.8 万 円 8.8 万 円 * 総 人 件 費 に 占 める 社 会 保 険 料 拠 出 額 の 割 合 日 本 の 事 業 主 負 担 率 の 絶 対 水 準 でも 被 用 者 負 担 率 との 対 比 でも 高 くはない 21
事 業 主 負 担 被 用 者 負 担 ドイツ 16.5% 17.4% フランス 29.7% 9.6% イギリス 9.9% 8.5% スウェ-デン 23.9% 5.3% アメリカ 8.7% 5.2% 日 本 12.4% 11.7% OECD, News Release, 2012.4.25 より 作 成 2. 高 齢 者 の 継 続 雇 用 * 高 齢 者 雇 用 確 保 措 置 ( 高 齢 者 等 の 雇 用 の 安 定 等 に 関 する 法 律 第 9 条 ) 93.1%の 企 業 が 勤 務 延 長 制 度 または 再 雇 用 制 度 を 採 用 希 望 者 全 員 を 適 用 対 象 にしている 企 業 勤 務 延 長 制 度 の 場 合 52.3% 再 雇 用 制 度 の 場 合 41.1% 22
その 他 は 事 業 主 が 定 めた 基 準 に 適 合 する 者 全 員 企 業 による 選 別 の 余 地 * 労 働 保 険 特 別 会 計 / 雇 用 勘 定 / 高 齢 者 等 雇 用 安 定 促 進 費 の 不 用 額 2008 年 度 71 億 円 (9.0%) 2009 年 度 1,002 億 円 (55.4%) 2010 年 度 263 億 円 (20.7%) * 改 正 案 8 月 2 日 衆 議 院 本 会 議 可 決 事 業 主 が 定 めた 基 準 に 適 合 する 者 の 規 定 を 削 除 適 用 時 期 : 平 成 37 年 3 月 31 日 までは 従 来 の 措 置 を 有 効 とする 12 年 先 へ 適 用 を 延 期 できるのでは 目 下 の 高 齢 者 の 厳 しい 雇 用 環 境 の 改 善 に 対 して 実 効 性 を 持 たない 3. 肩 車 型 社 会 論 のまやかし * 現 在 : 騎 馬 戦 型 2.6 人 の 現 役 が 1 人 の 高 齢 者 を 支 える 社 会 (1/2.6=0.38) *2060 年 : 肩 車 型 1.2 人 の 現 役 が 1 人 の 高 齢 者 を 支 える 社 会 (1/1.2=0.83) このままでは 現 役 の 負 担 は 約 2.2 倍 (0.83/0.38)になる? *この 場 合 の 扶 養 比 率 の 算 定 式 : 老 年 人 口 / 生 産 年 齢 人 口 23
1 分 子 の 誤 り: 扶 養 される 人 口 = 全 人 口 ( 年 少 人 口 + 生 産 年 齢 人 口 + 老 年 人 口 ) これで 再 計 算 すると 現 在 1:1.69 2060 年 1:2.13 社 会 的 扶 養 比 率 の 変 化 2.13/1.69 1.26 2 分 母 の 誤 り: 扶 養 する 人 口 には 労 働 力 率 を 加 味 すべき 60 歳 前 後 の 男 性 /40~50 歳 代 の 女 性 の 労 働 力 率 の 上 昇 予 測 これで 再 計 算 すると 現 在 1:1.88 2050 年 1:2.05 社 会 的 扶 養 比 率 の 変 化 2.05/1.88 1.09 *そもそも 論 : 就 業 率 各 人 の 扶 養 能 力 を 示 す 所 得 を 度 外 視 して 自 然 年 齢 で 扶 養 する 者 とされる 者 を 輪 切 りにしても 実 態 を 表 さない * 下 線 部 分 こそ 国 の 雇 用 政 策 の 課 題 であり 政 治 のミッションである * 政 治 が 担 うべき 課 題 を 棚 上 げして 政 府 自 らが 悲 観 的 将 来 像 を 喧 伝 する 意 図 は? * 現 役 世 代 の 負 担 を 誇 張 し 将 来 世 代 につけを 回 さないとの 理 由 で 消 費 増 税 待 った なし と 迫 るのは 丁 寧 な 説 明 ではなく まやかしの 強 迫 的 説 明 であり 社 会 保 障 の 世 代 間 共 助 の 理 念 に 政 府 自 らが 水 をさす さもしい 喧 伝 である 24
4. 社 会 保 障 を 置 き 去 りにした 消 費 税 増 税 は 許 されない * 社 会 保 障 制 度 改 革 推 進 法 案 要 綱 二 基 本 的 な 考 え 方 1. 自 助 共 助 及 び 公 助 が 最 も 適 切 に 組 み 合 わされるよう 留 意 しつつ 国 民 が 自 立 した 生 活 を 営 むことができるよう 家 族 相 互 及 び 国 民 相 互 の 助 け 合 いの 仕 組 み を 通 じてその 実 現 を 支 援 していくこと 2. 社 会 保 障 の 機 能 の 充 実 と 給 付 の 重 点 化 及 び 運 営 の 効 率 化 とを 同 時 に 行 い 税 金 や 社 会 保 険 料 を 納 付 する 者 の 立 場 に 立 って 負 担 の 増 大 を 抑 制 しつつ 持 続 可 能 な 制 度 を 実 現 すること * 衆 議 院 一 体 改 革 特 別 委 員 会 (2012 年 6 月 11 日 )における 質 疑 金 子 一 義 議 員 : ずっと 私 はここに 座 っておりまして 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 というんですけれども どうも 社 会 保 障 改 革 のところの 議 論 が 空 回 りしち ゃっている 何 が 残 ってくるかというと 結 局 消 費 税 の 増 税 という 増 税 法 案 に なってしまうのではないかという 意 識 がどうしても 否 めないんです 野 田 内 閣 総 理 大 臣 : 私 は 自 助 という 精 神 は 大 事 だと 思 います だけれ 25
ども 自 助 を 実 現 する 環 境 が 今 あるのかどうか 残 念 ながら 正 規 よりも 非 正 規 の 雇 用 がある 中 で そこで 家 庭 を 持 って 結 婚 したいという 自 助 の 気 持 ちでこ れまでは 行 われてきたことが 実 現 できない 環 境 が 一 方 であります あるいは 先 ほど 副 総 理 もお 答 えになっていましたが 核 家 族 が 進 んでまいり ました 子 供 はお 母 さんが 育 てる 基 本 だとおっしゃいます そうでしょう だ けれども その 相 談 相 手 も 今 いない 中 で 自 助 の 基 盤 が 崩 れているところをどう やって 立 て 直 すかということ それができなかったことが 少 子 化 に 歯 止 めがきか なかったんじゃないでしょうか そのことも 真 摯 に 反 省 をしながら 自 助 と 共 助 公 助 の 組 み 合 わせは 大 事 だと 思 いますが むしろ 自 助 の 実 現 ができるような 環 境 整 備 基 盤 整 備 をするという 視 点 が 大 事 ではないかと 思 います 社 会 保 障 制 度 改 革 推 進 法 案 は 野 田 首 相 の 懸 念 を 黙 殺 する 社 会 保 障 抑 制 法 案 社 会 保 障 を 空 回 り させたまま 消 費 税 増 税 を 採 決 するのは 一 体 改 革 に 逆 行 する 国 民 の 期 待 への 背 信 行 為 26
消 費 税 増 税 に 代 わる 財 源 の 提 言 ( 私 見 ) 1. 所 得 税 の 累 進 性 の 復 元 による 増 収 2.0 兆 円 説 明 : 1 税 率 の 引 上 げ おおむね 消 費 税 創 設 時 に 戻 す ただし 課 税 所 得 500~700 万 円 ( 年 収 ベースでは 675~1,000 万 円 ) まで 遡 り 順 次 各 ブラケットにつき 20% 25% 23% 35% 33% 45% 40% 55% 60% 70% へ 引 き 上 げる 2 現 在 低 率 で 分 離 課 税 扱 いされている 金 融 所 得 等 もすべて 総 合 課 税 とする 2. 法 人 税 の 5% 減 税 の 中 止 1.2 兆 円 説 明 : 1 経 済 界 が 減 税 要 求 の 根 拠 とする 税 率 の 差 による 法 人 活 動 の 海 外 移 転 は 根 拠 が 乏 しく 減 税 による 雇 用 の 拡 大 等 の 効 果 も 27
立 証 されていない 3. 特 別 会 計 の 積 立 金 決 算 剰 余 金 の 活 用 8.0 兆 円 説 明 : 12010 年 度 末 現 在 の 特 別 会 計 全 体 の 積 立 金 合 計 182 兆 円 のうち 年 金 給 付 の 財 源 として 留 保 すべき 128 兆 円 を 除 いた 54 兆 円 の うちの 40 兆 円 と 2010 年 度 の 特 別 会 計 の 決 算 剰 余 金 合 計 のう ち 翌 年 度 に 繰 り 越 された 歳 出 および 支 払 備 金 として 翌 年 度 の 歳 入 に 繰 り 入 れをする 必 要 がある 額 を 除 く 20 兆 円 を 合 わせ た 60 兆 円 を 国 債 の 繰 上 げ 償 還 に 充 当 それによって 軽 減 さ れる 翌 年 度 以 降 の 国 債 の 利 払 費 相 当 の 財 源 1.0 兆 円 2 現 在 の 予 算 規 模 を 前 提 して 活 用 可 能 な 特 別 会 計 の 恒 常 的 不 用 額 ( 過 去 5 ヶ 年 の 最 低 額 ) 7.0 兆 円 4. 医 薬 品 メーカーに 異 常 な 高 利 益 をもたらしている 薬 価 の 2 割 引 下 げ 0.9 兆 円 説 明 : 28
1 日 本 の 相 対 薬 価 (2011 年 現 在 )は 対 アメリカ 1.14 倍 対 ドイ ツ 1.49 倍 対 フランス 2.65 倍 対 イギリス 2.66 倍 と 極 めて 高 い 水 準 にある( 後 掲 全 国 保 険 医 団 体 連 合 会 日 本 の 薬 価 プロ ジェクト 2011 の 公 表 資 料 による) 2わが 国 医 薬 品 メ-カ-の 売 上 高 営 業 利 益 率 (2004~2010 年 度 平 均 )は 14.9%で 製 造 業 平 均 (3.7%)を 大 きく 超 える 異 常 に 高 い 水 準 にある その 大 半 の 要 因 は 異 常 に 低 い 売 上 高 原 価 率 (2010 年 度 決 算 でいうと 全 製 造 業 平 均 が 83.2%であるのに 対 して 医 薬 品 製 造 業 平 均 は 45.9% 武 田 薬 品 工 業 は 22.4%)にある 3このことは 現 在 の 公 定 薬 価 を 例 えば 2 割 引 き 下 げても たとえ ば 武 田 薬 品 工 業 だけで 2010 年 度 分 で 約 983 億 円 の 薬 剤 費 の 削 減 が 可 能 になる それでも 同 社 の 2010 年 度 の 売 上 高 営 業 利 益 は 2,513 億 円 営 業 利 益 率 は 19.3%で 資 本 金 100 億 円 以 上 の 製 造 業 企 業 の 平 均 売 上 高 利 益 率 1.7%を 大 きく 超 える 29
4 全 国 保 険 医 団 体 連 合 会 日 本 の 薬 価 プロジェクト 2011 が 2011 年 3 月 に 公 表 した 試 算 によると 後 発 品 のない 先 発 医 薬 品 の 価 格 を 2 割 下 げることによって 0.9 兆 円 の 財 源 が 生 まれる 合 計 12.1 兆 円 むすび 以 上 述 べて 来 た 種 々の 理 由 により 消 費 税 法 の 一 部 を 改 正 する 等 の 法 律 案 修 正 案 は 多 くの 重 大 な 瑕 疵 と 不 条 理 を 含 んでおり 本 参 議 院 で 採 決 するには 到 底 審 議 が 尽 く されていない よって 私 は 本 法 案 ( 修 正 案 )を 廃 案 とし 先 送 りされた 所 得 税 相 続 税 ほか 資 産 課 税 の 抜 本 的 な 見 直 しを 国 の 税 源 を 涵 養 するという 意 味 ももつ 社 会 保 障 と 雇 用 環 境 の 抜 本 的 な 改 革 と 併 せ 改 めて 集 中 的 精 力 的 に 審 議 されるよう 強 く 要 望 する 30