需 給 とも 好 調 なホテルマーケットの 見 通 し 投 資 調 査 第 1 部 客 員 研 究 員 岡 村 七 月 今 ホテルマーケットが 熱 い 日 本 人 の 国 内 旅 行 需 要 が 消 費 税 率 の 引 き 上 げの 影 響 による 落 ち 込 みから 回 復 する 中 外 国 人 観 光 客 が 過 去 に 例 を 見 ない 勢 いで 増 加 し 東 京 や 大 阪 では 曜 日 によってはホテルの 宿 泊 予 約 が 困 難 な 状 況 になっている 堅 調 な 需 要 を 受 けて 供 給 サイドでは 新 規 開 業 リブランド 増 改 築 などの 動 きが 活 発 化 しており ホテルの 客 室 総 数 は 増 加 基 調 にあるが 需 要 の 増 勢 ペースを 踏 まえると 需 給 バランスは 好 調 に 推 移 する 見 通 しである 宿 泊 需 要 の 1 割 ながら 増 勢 著 しい 外 国 人 客 国 内 の 宿 泊 施 設 (ホテル 旅 館 等 )における 2014 年 の 延 べ 宿 泊 者 数 は 前 年 比 1.6% 増 の 4 億 7,400 万 人 泊 1 日 あたりに 換 算 すると 約 130 万 人 泊 である 宿 泊 需 要 の 約 9 割 を 国 内 客 が 占 めており 仮 に 日 本 人 全 員 が 宿 泊 施 設 に 宿 泊 したと 仮 定 すると 1 人 あたり 年 間 3.4 泊 に 相 当 する 国 内 客 需 要 は 2014 年 に 消 費 率 引 き 上 げの 影 響 で 一 時 弱 含 んだが 景 況 感 の 改 善 や 株 高 による 資 産 効 果 また 円 安 の 影 響 で 海 外 旅 行 を 国 内 旅 行 に 振 りかえる 動 きもあり 活 動 的 で 消 費 力 の 高 いアクティブシニア 層 が 牽 引 して 好 調 である しかし 増 勢 が 著 しいのは 宿 泊 需 要 全 体 に 占 める 割 合 が 約 1 割 の 外 国 人 客 で 2012 年 から 2014 年 の 2 年 間 の 増 加 率 は 国 内 客 の 4%に 対 し 外 国 人 客 は 70%となっ ている 図 表 1 国 内 宿 泊 施 設 における 延 べ 宿 泊 者 数 の 内 訳 ( 目 的 別 内 訳 は 推 計 値 ) 図 表 2 国 内 宿 泊 施 設 における 延 べ 宿 泊 者 数 の 推 移 (12 カ 月 移 動 平 均 ) 国 内 客 全 体 の32% 国 内 客 ( 百 万 人 泊 / 月 ) 外 外 国 人 客 ( 十 万 人 泊 / 月 ) 国 内 客 (ビジネス) 28.6% 2014 年 延 べ 宿 泊 者 数 約 4 億 7,400 万 人 泊 外 国 人 客 9.5% 観 光 81.1% 60 国 内 客 ( 左 軸 ) 50 外 国 人 客 ( 右 軸 ) 40 30 60 50 40 30 国 内 客 全 体 の68% 国 内 客 ( 観 光 ) 62.0% ビジネス 11.5% その 他 20 10 2011 年 12 月 2012 年 3 月 2012 年 6 月 2012 年 9 月 2012 年 12 月 2013 年 3 月 2013 年 6 月 2013 年 9 月 2013 年 12 月 2014 年 3 月 2014 年 6 月 2014 年 9 月 2014 年 12 月 2015 年 3 月 2015 年 6 月 2015 年 9 月 20 10 出 所 ) 観 光 庁 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 旅 行 観 光 消 費 動 向 調 査 日 本 政 府 観 光 局 (JNTO) 日 本 の 国 際 観 光 統 計 をもとに 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 作 成 注 1) 延 べ 宿 泊 者 数 ( 総 数 )と 日 本 人 外 国 人 の 比 率 は 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 による 実 績 値 注 2) 目 的 別 の 内 訳 比 率 は 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 が 推 計 出 所 ) 観 光 庁 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 をもとに 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 作 成 注 )2015 年 は 速 報 値 1
観 光 立 国 実 現 に 向 けた 施 策 が 奏 功 円 安 も 追 い 風 < 年 間 1 千 万 人 達 成 からほどなく 2 千 万 人 到 達 も 目 前 > 日 本 政 府 が 観 光 立 国 宣 言 を 発 してビジット ジャパン キャンペーンを 開 始 した 2003 年 の 訪 日 外 国 人 客 数 は 年 間 約 500 万 人 であった 世 界 金 融 危 機 と 東 日 本 大 震 災 の 影 響 で 客 数 を 1,000 万 人 に 倍 増 させるのに 10 年 を 要 し 目 標 達 成 は 3 年 遅 れたが 次 の 目 標 として 掲 げられた 2020 年 に 2,000 万 人 は 2016 年 に 前 倒 しで 達 成 することが 確 実 視 されており 現 在 目 標 の 上 方 修 正 が 審 議 されている 観 光 立 国 実 現 に 向 けた 政 府 の 強 力 な 施 策 推 進 の 中 でもビザ 緩 和 措 置 ( 免 除 数 次 ビザ 発 行 発 給 要 件 緩 和 )がと りわけ 大 きな 成 果 をあげており 現 在 対 象 国 はアジアの 主 要 国 をほぼカバーするまでに 至 っている 2015 年 には 2005 年 に 全 土 に 対 して 団 体 観 光 ビザの 発 給 を 開 始 して 以 来 段 階 的 に 発 給 要 件 を 緩 和 してきた 中 国 に 対 して 数 次 ビザ( 有 効 期 限 内 に 何 度 でも 出 入 国 可 能 )の 発 給 開 始 等 が 実 施 された < 訪 日 外 国 人 の 8 割 がアジアから> 2015 年 に 日 本 を 訪 れた 外 国 人 は 中 国 (25%) 韓 国 (20%) 台 湾 (19%)の 上 位 3 カ 国 で 全 体 の 6 割 を 占 め そ の 他 の 国 々を 含 めたアジア 全 体 では 8 割 に 達 する その 背 景 には 前 述 のビザ 緩 和 措 置 に 加 えて アジアにおける LCC(ローコストキャリア)の 普 及 および 航 空 規 制 の 緩 和 措 置 を 受 けて 国 内 各 地 の 空 港 で 国 際 線 の 路 線 および 座 席 数 が 増 加 したことや アジア 諸 国 における 経 済 成 長 に 伴 う 海 外 旅 行 需 要 の 拡 大 がある また 近 年 の 増 勢 の 強 まりに は 2012 年 末 の 第 2 次 安 倍 内 閣 発 足 後 のアベノミクスによる 円 安 の 進 行 も 追 い 風 となっており これによってアジアの みならず 欧 米 からの 旅 行 者 も 確 実 に 増 加 している 図 表 3 訪 日 目 的 別 訪 日 外 国 人 客 数 の 推 移 ( 万 人 ) 2,500 2,000 観 光 客 商 用 客 前 年 比 47.1% 増 その 他 1,973.7 1,500 ビジット ジャパン キャンペーン 開 始 1 千 万 人 突 破 1,000 500 0 2000 年 2001 年 2002 年 2003 年 2004 年 2005 年 2006 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 出 所 ) 日 本 政 府 観 光 局 (JNTO) 資 料 をもとに 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 作 成 注 )2015 年 は JNTO 推 計 値 2
ホテルの 客 室 稼 働 率 は 過 去 最 高 水 準 < 外 国 人 宿 泊 需 要 の 7 割 が 主 要 6 都 道 府 に 集 中 > 2014 年 の 外 国 人 延 べ 宿 泊 者 数 は 東 京 が 突 出 して 多 く これに 大 阪 北 海 道 京 都 千 葉 沖 縄 を 加 えた 6 都 道 府 で 全 体 の 7 割 を 占 めている 現 在 のところ 外 国 人 需 要 の 恩 恵 を 大 きく 享 受 しているのは LCC 国 際 線 が 就 航 する 空 港 周 辺 やゴールデンルート( 成 田 ~ 関 空 )にある 一 部 の 都 道 府 である これらの 都 道 府 は 宿 泊 需 要 に 占 める 外 国 人 比 率 が 高 い 図 表 4 国 内 宿 泊 施 設 における 外 国 人 宿 泊 者 比 率 ( 上 位 10 都 道 府 ) 2014 年 の 外 国 人 宿 泊 者 比 率 25% 20% オレンジ 色 はLCC 国 際 線 就 航 空 港 のある 都 道 府 ( ) 内 は 就 航 本 数 15% 10% 全 国 平 均 9.5% 5% 0% 東 京 都 大 阪 府 京 都 府 千 葉 北 海 道 山 梨 沖 縄 岐 阜 愛 知 福 岡 (6) (54) (40) (7) (9) (25) (10) 出 所 ) 観 光 庁 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 をもとに 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 作 成 < 東 京 大 阪 京 都 の 客 室 稼 働 率 は 世 界 的 にも 高 水 準 > ホテルの 客 室 稼 働 率 が 過 去 最 高 水 準 を 更 新 している 東 京 大 阪 京 都 ではマーケット 平 均 としては 上 限 の 85~ 90%に 達 しており これは 世 界 的 にみても 非 常 に 高 い 客 室 の 高 稼 働 を 受 けて ADR 1 RevPAR 2 も 上 昇 しており 足 元 の 大 阪 の ADR は 世 界 金 融 危 機 前 の 水 準 を 2 割 以 上 上 回 っている 東 京 はそこまでの 回 復 には 至 っていないも のの 客 室 稼 働 率 が 高 止 まりして ADR の 上 昇 速 度 が 強 まっている 1 Average Daily Rate: 平 均 客 室 販 売 単 価 2 Revenue Par Available Rooms: 1 日 の 販 売 可 能 客 室 数 あたり 客 室 売 上 高 図 表 5 ホテルの 客 室 稼 働 率 の 推 移 客 室 稼 働 率 全 国 東 京 都 大 阪 府 京 都 府 90% 85% 80% 75% 70% 65% 2011 年 10 月 ~ 2012 年 9 月 2012 年 10 月 ~ 2013 年 9 月 2013 年 10 月 ~ 2014 年 9 月 2014 年 10 月 ~ 2015 年 9 月 出 所 ) 観 光 庁 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 をもとに 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 作 成 注 ) 客 室 稼 働 率 は ビジネスホテルとシティホテルの 平 均 3
東 京 を 中 心 にホテルの 新 規 供 給 が 増 加 < 外 資 系 ホテル 開 業 の 動 きは 東 京 から 地 方 都 市 へ> 好 調 な 国 内 外 需 要 を 受 けてホテル 運 営 のパフォーマンスが 改 善 していることからホテルオペレーターの 新 規 開 業 意 欲 が 旺 盛 になっており 東 京 を 中 心 にホテルの 新 規 供 給 が 活 発 化 している また 異 業 種 からの 参 入 の 動 きもみら れる 他 方 外 資 系 ホテルの 開 業 の 動 きは 外 国 人 需 要 も 厚 い 京 都 などの 地 方 都 市 に 広 がりつつある 愛 知 の 中 部 国 際 空 港 の 隣 接 地 に 開 業 予 定 のスプリング サニー ホテルズ&リゾーツは 中 国 の 春 秋 航 空 (LCC)を 傘 下 に 持 つ 春 秋 集 団 が 日 本 のサンフロンティア 不 動 産 と 提 携 してホテル 事 業 に 参 入 する 第 1 号 で 今 後 日 本 国 内 でチェーン 展 開 を 図 っていく 予 定 である 新 規 開 発 によるホテルの 開 業 は 用 地 取 得 コストと 建 築 コストの 高 騰 でハードルが 上 がっていることから 既 存 ホテ ルのリブランド 化 による 再 生 供 給 やオフィス 等 の 他 用 途 からのコンバージョン カプセルホテル( 旅 館 業 法 では 簡 易 宿 所 )の 供 給 等 も 増 加 しており この 傾 向 は 今 後 も 続 くと 考 えられる 図 表 6 ホテルの 開 業 客 室 数 (リブランド 含 む) 開 業 時 期 全 国 東 京 大 阪 京 都 2014 年 約 13,000 約 4,000 約 1,000 約 1,000 2015 年 約 13,000 約 6,000 約 1,000 約 700 2016 年 16,926 4,383 926 681 2017 年 14,497 3,611 1,359 432 2018 年 1,823 1,300 - - 2019 年 ~ 3,050 200 - - 未 定 6,675 452 300 - 図 表 7 海 外 資 本 による 今 後 のホテル 開 業 計 画 ホテル 名 所 在 地 開 業 時 期 客 室 数 アマネム 三 重 2016 年 28 フォーシーズンズホテル 京 都 京 都 府 2016 年 124 スプリング サニー ホテルズ&リゾーツ 愛 知 2016~2017 年 250~300 シェラトン 沖 縄 サンマリーナリゾート 沖 縄 2016 年 200 パークハイアットニセコ HANAZONO 北 海 道 2019 年 100 ザ リッツ カールトンリザーブ 北 海 道 2020 年 までに 50 ストック 2014 年 度 末 834,588 98,644 57,147 23,650 出 所 ) オータパブリケイションズ 週 刊 ホテルレストラン 厚 生 労 働 省 資 料 (ストック)をもとに 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 作 成 4
< 需 給 バランスは 好 調 に 推 移 する 見 通 し> 今 後 の 見 通 しは 需 要 については 国 内 人 口 の 減 少 と 超 高 齢 化 社 会 の 到 来 で 中 長 期 的 には 弱 含 む 国 内 客 需 要 を 外 国 人 需 要 が 補 っていくことが 期 待 される 外 国 人 需 要 を 国 連 世 界 観 光 機 関 (UNWTO)による 世 界 の 観 光 需 要 の 見 通 しをもとに 足 元 のトレンドよりも 保 守 的 に 見 積 もっても 需 要 の 総 量 は 緩 やかに 増 加 することが 見 込 まれる 一 方 の 供 給 は 近 年 ホテルの 客 室 ストックの 純 増 が 年 1~2%で 推 移 してきたのに 対 し リブランドを 含 む 2014~2016 年 の 開 業 実 績 予 定 が 全 国 で 年 2% 前 後 東 京 では 4~6%の 水 準 である 需 要 の 増 勢 ペースを 踏 まえると 供 給 過 剰 に 至 る 兆 候 はみられず 全 般 的 に 需 給 バランスは 緩 むことなく 好 調 に 推 移 する 見 通 しである 図 表 8 総 延 べ 宿 泊 数 の 予 測 シミュレーション 結 果 ( 百 万 人 泊 ) 550 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0 国 内 ビジネス 国 内 観 光 訪 日 外 国 人 2014 2020 2025 2030 実 績 値 推 計 ( 千 人 泊 ) 2014 2020 2025 2030 国 内 ビジネス 135,000 135,000 135,000 135,000 国 内 観 光 294,000 293,000 283,000 272,000 訪 日 外 国 人 客 45,000 79,200 95,500 115,300 計 474,000 507,200 513,500 522,300 出 所 )2014 年 は 観 光 庁 宿 泊 旅 行 統 計 調 査 2020 年 以 降 は 三 井 住 友 トラスト 基 礎 研 究 所 が 推 計 お 問 い 合 わせ 投 資 調 査 第 1 部 https://www.smtri.jp/contact/form-investment/investment.html 5
1. この 書 類 を 含 め 当 社 が 提 供 する 資 料 類 は 情 報 の 提 供 を 唯 一 の 目 的 としたものであり 不 動 産 および 金 融 商 品 を 含 む 商 品 サービスまたは 権 利 の 販 売 その 他 の 取 引 の 申 込 み 勧 誘 あっ 旋 媒 介 等 を 目 的 としたも のではありません 銘 柄 等 の 選 択 投 資 判 断 の 最 終 決 定 またはこの 書 類 のご 利 用 に 際 しては お 客 さまご 自 身 でご 判 断 くださいますようお 願 いいたします 2. この 書 類 を 含 め 当 社 が 提 供 する 資 料 類 は 信 頼 できると 考 えられる 情 報 に 基 づいて 作 成 していますが 当 社 はその 正 確 性 および 完 全 性 に 関 して 責 任 を 負 うものではありません また 本 資 料 は 作 成 時 点 または 調 査 時 点 において 入 手 可 能 な 情 報 等 に 基 づいて 作 成 されたものであり ここに 示 したすべての 内 容 は 作 成 日 にお ける 判 断 を 示 したものです また 今 後 の 見 通 し 予 測 推 計 等 は 将 来 を 保 証 するものではありません 本 資 料 の 内 容 は 予 告 なく 変 更 される 場 合 があります 3. この 資 料 の 権 利 は 当 社 に 帰 属 しております 当 社 の 事 前 の 了 承 なく その 目 的 や 方 法 の 如 何 を 問 わず 本 資 料 の 全 部 または 一 部 を 複 製 転 載 改 変 等 してご 使 用 されないようお 願 いいたします 4. 当 社 は 不 動 産 鑑 定 業 者 ではなく 不 動 産 等 について 鑑 定 評 価 書 を 作 成 交 付 することはありません 当 社 は 不 動 産 投 資 顧 問 業 者 または 金 融 商 品 取 引 業 者 として 投 資 対 象 商 品 の 価 値 または 価 値 の 分 析 に 基 づく 投 資 判 断 に 関 する 助 言 業 務 を 行 います 当 社 は 助 言 業 務 を 遂 行 する 過 程 で 不 動 産 等 について 資 産 価 値 を 算 出 する 場 合 があります しかし この 資 産 価 値 の 算 出 は 当 社 の 助 言 業 務 遂 行 上 の 必 要 に 応 じて 行 うもの であり ひとつの 金 額 表 示 は 行 わず 複 数 幅 分 布 等 により 表 示 いたします 6