平 成 28 年 3 月 24 日 日 本 学 術 会 議 会 長 大 西 隆 殿 日 本 学 術 会 議 第 23 期 1 年 目 ( 平 成 26 年 10 月 ~ 平 成 27 年 9 月 ) の 活 動 状 況 に 関 する 評 価 外 部 評 価 有 識 者 尾 池 和 夫 ( 座 長 ) 喜 田 宏 ( 座 長 代 理 ) 荒 川 研 清 原 慶 子 田 中 里 沙 林 隆 之 今 般 日 本 学 術 会 議 の 活 動 に 対 する 外 部 評 価 の 依 頼 を 受 けた 我 々は この1 年 間 の 活 動 状 況 を 日 本 学 術 会 議 の 年 次 報 告 書 提 言 等 を 基 に 日 本 学 術 会 議 会 長 副 会 長 と 意 見 交 換 して 把 握 し 第 23 期 1 年 目 ( 平 成 26 年 10 月 ~ 平 成 27 年 9 月 ) における 日 本 学 術 会 議 の 活 動 状 況 に 関 する 評 価 を 別 紙 のとおり 取 りまとめた 平 成 26 年 10 月 からの1 年 は 日 本 学 術 会 議 にとっては 半 数 の 会 員 及 び 連 携 会 員 の 改 選 により 新 たに 第 23 期 の 活 動 を 開 始 した 1 年 目 に 当 たり 第 23 期 の 日 本 学 術 会 議 がどのような 活 動 を 行 っていくか 方 針 について 検 討 を 行 っていた 時 期 である 今 後 この1 年 間 の 検 討 を 踏 まえ 第 23 期 の 日 本 学 術 会 議 は 益 々 活 発 に 活 動 していくものと 考 えられる また 第 23 期 中 の 平 成 28 年 度 には 政 府 の 科 学 技 術 基 本 計 画 が 第 5 期 国 立 大 学 の 中 期 目 標 中 期 計 画 が 第 3 期 を 迎 えること から 科 学 技 術 のあり 方 を 考 える 好 機 であり 今 後 日 本 学 術 会 議 に 期 待 される 役 割 は 一 層 増 すことが 予 想 される この 評 価 結 果 が 我 が 国 の 科 学 者 コミュニティの 代 表 機 関 としての 日 本 学 術 会 議 の 今 後 の 活 動 に 活 かされ 更 なる 発 展 に 資 することを 期 待 する 1
( 別 紙 ) 1. 全 般 的 評 価 平 成 26 年 10 月 から 平 成 27 年 9 月 に 至 る 第 23 期 1 年 目 の 活 動 は 平 成 27 年 6 月 8 日 付 け 文 部 科 学 大 臣 通 知 国 立 大 学 法 人 等 の 組 織 及 び 業 務 全 般 の 見 直 しについて ( 以 下 6.8 通 知 という )への 対 応 若 手 アカデミーの 発 足 科 学 研 究 の 健 全 性 や 大 学 教 育 の 分 野 別 質 保 証 のための 取 組 み 前 期 から 注 力 してきた 東 日 本 大 震 災 復 興 支 援 の 継 続 等 幅 広 く 多 岐 に 渡 っている また 平 成 27 年 3 月 に 内 閣 府 特 命 担 当 大 臣 ( 科 学 技 術 政 策 )の 下 で 取 りまとめられた 報 告 書 日 本 学 術 会 議 の 今 後 の 展 望 について ( 日 本 学 術 会 議 の 新 たな 展 望 を 考 える 有 識 者 会 議 )( 以 下 有 識 者 会 議 報 告 書 という )において 指 摘 された 事 項 についても 実 施 又 は 改 善 に 向 けて 着 実 に 取 り 組 んでいると 認 められ この1 年 間 の 学 術 会 議 の 活 動 は 概 ね 高 く 評 価 することが できる 一 方 で 昨 今 の 取 組 の 中 には 以 下 のような 活 動 面 組 織 面 での 課 題 があり 学 術 会 議 の 活 動 がより 一 層 意 義 深 いものとなるために これらについての 改 善 の 方 向 性 を 提 案 するので それを 反 映 して 活 動 されることを 期 待 する 2. 日 本 学 術 会 議 の 課 題 と 今 後 の 解 決 への 提 案 今 後 日 本 学 術 会 議 の 活 動 をより 一 層 積 極 的 かつ 効 果 的 なものにしていくために 以 下 のとおり 提 案 する (1) 日 本 学 術 会 議 に 求 められる 役 割 について 学 術 会 議 は 人 文 社 会 科 学 も 含 め あらゆる 学 問 分 野 から 選 出 された 会 員 連 携 会 員 で 構 成 されているが この 分 野 横 断 的 な 組 織 であることこそが 学 術 会 議 の 強 みである そのため 学 術 会 議 に 求 められる 役 割 とは その 強 みを 最 大 限 活 かし 大 所 高 所 の 見 地 から 長 期 的 な 展 望 に 立 った 俯 瞰 的 学 際 的 な 活 動 を 時 宜 を 得 て 行 うことである しかし 昨 今 の 活 動 の 中 には 各 学 会 でも 議 論 できるような 専 門 的 各 論 的 な ものも 多 く 見 受 けられるが こういった 活 動 は 分 野 横 断 的 な 組 織 であるという 強 みを 十 分 に 発 揮 したものとはいえない 各 学 会 で 議 論 できることは 各 学 会 に 任 せ 学 術 会 議 の 活 動 は その 強 みを 活 かし 分 野 横 断 的 で 社 会 的 に 取 り 組 む 必 要 が ある 課 題 に 特 化 すべきである 取 り 組 むべき 課 題 の 選 択 と 集 中 を 徹 底 すること により 今 後 学 術 会 議 からインパクトのある 提 言 等 の 意 思 の 表 出 が 行 われること を 期 待 する また 意 思 の 表 出 については 単 に 数 を 増 やすだけでは 個 々の 提 言 等 が 希 釈 され 1
てしまう 恐 れがあるので 勧 告 や 要 望 といった より 強 い 意 思 の 表 出 を 発 出 するこ とも 効 果 的 である 意 思 の 表 出 に 当 たっては 状 況 や 内 容 に 応 じて 積 極 的 にメリ ハリをつけることを 検 討 されたい (2) 時 宜 を 得 た 活 動 を 行 うための 体 制 の 強 化 について 審 議 の 開 始 時 期 や 意 思 の 表 出 に 当 たっては 時 宜 を 得 て 行 うことが 極 めて 重 要 で あるにも 関 わらず 学 術 会 議 の 活 動 の 中 には 時 機 を 失 したものも 見 受 けられる 例 えば 人 文 社 会 科 学 系 学 部 廃 止 の 議 論 は 6.8 通 知 の1 年 前 には 国 立 大 学 法 人 評 価 委 員 会 で 審 議 されており 学 術 会 議 内 においても より 早 期 に 審 議 を 開 始 し 意 見 表 明 を 行 うことができたと 思 われる また 第 5 期 科 学 技 術 基 本 計 画 に 対 する 提 言 国 立 大 学 の 第 3 期 中 期 目 標 計 画 への 対 応 についても 政 策 の 流 れを 踏 まえ 先 を 見 越 して 審 議 を 開 始 していれば 学 術 会 議 からより 一 層 の 時 宜 を 得 た 提 言 が 発 出 することができたと 思 われる 意 義 深 い 活 動 を 行 っているにも 関 わらず 時 機 を 失 したがために 学 術 会 議 の 提 言 等 が 政 策 に 必 ずしも 反 映 されないことがあ っては 非 常 に 残 念 なことである 時 宜 を 得 た 提 言 を 行 うためには 近 年 の 政 策 決 定 の 流 れが 非 常 に 早 いことを 念 頭 に 常 日 頃 より 政 策 や 学 術 の 動 向 等 を 的 確 に 把 握 することに 努 めるとともに 科 学 者 の 研 究 教 育 現 場 での 実 情 や 認 識 などを 踏 まえたエビデンスをベースとす ることが 必 要 である そのために 情 報 収 集 を 行 った 上 で 現 象 エビデンスその 他 を 把 握 し 調 査 分 析 を 行 うための 学 術 調 査 員 を 増 強 する 等 引 き 続 き 人 材 確 保 に 努 力 すべきである 学 術 会 議 が 取 り 組 むべき 課 題 を 把 握 するには 会 長 は 関 係 機 関 の 長 として 総 合 科 学 技 術 イノベーション 会 議 の 議 員 を 務 めているので 会 長 が 得 た 総 合 科 学 技 術 イノベーション 会 議 の 情 報 等 を 活 用 することも 考 えられる また 論 説 委 員 等 のメディアとの 懇 親 の 場 も 学 術 会 議 が 取 り 組 むべき 課 題 を 把 握 する 上 で 役 立 つと 思 われるので これまで 以 上 に 積 極 的 に 懇 談 の 場 を 設 けるべきである (3) 会 議 体 の 整 理 合 理 化 重 点 化 連 携 会 員 の 削 減 等 のスリム 化 について 400 以 上 の 会 議 体 約 2,100 名 の 会 員 連 携 会 員 という 規 模 は 学 術 会 議 の 本 来 的 使 命 を 果 たすための 組 織 としては 大 きすぎるといえる 組 織 の 規 模 が 大 きくな りすぎると 活 動 が 分 散 化 され 重 要 課 題 の 議 論 が 不 十 分 になる 懸 念 がある また 組 織 の 規 模 の 大 きさの 割 には 相 対 的 に 意 思 の 表 出 の 件 数 が 少 なく アウトプット が 限 られている 印 象 も 否 めない 毎 年 財 政 難 に 直 面 していることも 踏 まえると 学 術 会 議 には 課 題 に 優 先 順 位 を 付 け 各 学 会 で 対 応 可 能 な 専 門 的 事 項 を 扱 う 会 議 体 や 意 思 の 表 出 の 見 込 みの 無 い 会 議 体 については 廃 止 する 等 思 い 切 った 整 理 合 理 化 を 行 う 必 要 がある また 会 員 連 携 会 員 に 関 しては 学 術 を 俯 瞰 して 判 断 できる 人 物 が 総 合 的 に 判 断 して 活 動 を 行 うことを 踏 まえると 必 ずしも 全 ての 学 問 分 野 の 専 門 家 を 入 れる 必 要 は 無 2
いと 考 えられる ましてや これだけ 多 くの 会 員 連 携 会 員 がいるにも 関 わらず さらに 専 門 的 分 野 を 補 う 特 任 連 携 会 員 は 基 本 的 に 不 要 である 学 術 会 議 の 存 在 感 を 高 めるためにも 会 議 体 の 廃 止 を 含 めた 抜 本 的 な 整 理 合 理 化 や 重 点 化 連 携 会 員 数 会 議 体 数 の 削 減 による 組 織 のスリム 化 特 任 連 携 会 員 の 選 任 の 限 定 化 につい て 検 討 を 行 い 実 行 に 移 すべきである また コストを 削 減 する 観 点 や 社 会 とのコミュニケーションを 充 実 させる 観 点 からも テレビ 会 議 やネット 配 信 等 の 情 報 通 信 技 術 をより 一 層 活 用 することも 必 要 である (4)スクラップアンドビルドの 制 度 導 入 とコンプライアンス 体 制 の 構 築 の 検 討 に ついて 学 術 会 議 の 目 的 に 合 致 した 真 に 重 要 な 課 題 の 審 議 や 意 思 の 発 出 に 重 点 を 絞 る ためにも 会 議 体 の 設 置 や 継 続 に 関 しては 学 術 会 議 が 行 うべきものか 否 かを 検 証 評 価 するプロセスを 構 築 することが 重 要 である そして 新 たな 会 議 体 の 設 置 に 際 しては スクラップアンドビルドの 制 度 を 導 入 すべきである 例 えば 時 限 設 置 の 委 員 会 は 期 間 中 の 活 動 に 集 中 し 安 易 な 継 続 を 避 け 提 言 が 出 せない 又 は 活 動 できない 会 議 体 を 見 極 め 廃 止 すること 新 たな 会 議 体 を 設 置 するためには 既 存 の 会 議 体 を 廃 止 することを 原 則 とし 徹 底 されたい また 様 々なことが 起 こりうる 今 日 においては 財 政 難 の 検 証 や 予 算 執 行 が 適 切 に 行 われているか 否 か 意 思 の 表 出 に 係 る 活 動 をしっかりと 行 っているか 否 かを チェックするためにも コンプライアンス 対 応 を 行 う 体 制 を 構 築 しておくことが 重 要 である 例 えば 上 述 のようにスクラップアンドビルドによって 組 織 を 整 理 し た 上 でコンプライアンス 委 員 会 を 立 ち 上 げる 等 コンプライアンス 体 制 を 速 やか に 構 築 すべきである なお コンプライアンス 体 制 の 構 築 に 当 たっては 次 代 を 担 う 若 手 人 材 の 起 用 を 図 ることも 検 討 されたい (5) 地 方 での 活 動 の 強 化 について 地 方 メディアとの 連 携 や 情 報 交 換 等 地 方 メディアとの 接 点 を 意 識 的 に 増 やし たり 地 方 でシンポジウムを 開 催 したり 会 長 自 らが 講 演 を 行 う 機 会 を 設 けるな ど 東 京 の 人 が 地 方 に 聞 きに 行 きたいと 思 えるイベントを 開 催 する 等 見 える 形 で の 活 動 を 行 っていただきたい 学 術 会 議 には 昭 和 63 年 の 閣 議 決 定 に 基 づく 横 浜 市 への 移 転 問 題 があるが 有 識 者 会 議 報 告 書 において 現 在 地 よりも 適 した 移 転 場 所 を 見 出 すことは 難 しい と 指 摘 されているように 安 易 に 移 転 を 考 えず むしろ 学 術 会 議 が 地 方 に 出 て 活 動 し 地 方 での 活 動 の 熱 量 が 東 京 に 劣 らないくらい 活 発 になることこそが 地 方 へ 移 転 するよりも 遥 かに 効 果 があることを 認 識 すべきで ある また 地 方 でのシンポジウムや 地 区 会 議 主 催 の 学 術 講 演 会 等 と 併 せて 地 方 メデ ィアの 論 説 委 員 や 記 者 との 懇 談 会 を 開 催 すべきであり そのための 予 算 が 確 保 で 3
きるよう 特 別 枠 の 活 用 等 を 含 め 検 討 すべきである (6) 協 力 学 術 研 究 団 体 との 関 係 について 協 力 学 術 研 究 団 体 数 が 2,000 を 超 えることは 大 変 素 晴 らしいが 学 術 会 議 と 各 学 会 との 関 係 性 や 双 方 のメリットが 明 確 ではない 部 分 もある 今 後 実 績 の 伴 った 活 動 を 行 うためにも 各 学 会 から 学 術 会 議 に 対 し 自 発 的 な 活 動 報 告 を 義 務 付 ける 制 度 を 導 入 することや 学 術 会 議 を 通 じた 連 携 体 の 発 足 等 による 幅 広 い 専 門 の 学 会 同 士 の 連 携 を 推 進 すること 等 コストを 下 げつつも 双 方 のパートナーシップを 高 める 工 夫 が 必 要 である (7)ダイバーシティ( 多 様 性 )の 確 保 について 若 手 アカデミーの 発 足 や 男 女 共 同 参 画 に 係 る 提 言 の 発 出 等 学 術 会 議 は 若 手 人 材 や 女 性 の 活 動 支 援 について 積 極 的 であり ダイバーシティ( 多 様 性 )に 先 駆 的 に 取 り 組 んでいるといえる 今 後 活 動 に 参 加 している 若 手 女 性 の 生 の 声 が 反 映 される 仕 組 みがつくられることを 期 待 する そのためにも こういった 活 動 に 十 分 な 予 算 が 確 保 できるよう 特 別 枠 の 活 用 等 を 含 め 検 討 すべきである (8)G サイエンス 学 術 会 議 等 の 国 際 活 動 について 学 術 会 議 は 日 本 のアカデミックな 唯 一 の 窓 口 であるという 意 識 を 持 ち 世 界 に 向 けての 発 信 そして 現 代 社 会 の 中 で 変 化 しうる 国 内 外 の 社 会 的 な 課 題 に 対 し て 提 言 等 を 行 うべきである G サイエンス 学 術 会 議 のような 世 界 全 体 の 平 和 人 類 共 通 の 課 題 へ 取 り 組 む 国 際 会 議 において 学 術 会 議 が 責 任 を 持 つことは 我 が 国 としても 非 常 に 重 要 なことである また 国 際 的 な 独 自 のネットワークを 広 げる だけでなく 学 術 会 議 のフィルターを 通 して 社 会 に 還 元 して 欲 しい 今 後 も 持 続 可 能 な 社 会 ための 研 究 等 分 野 横 断 的 総 合 的 な 問 題 について 今 まで 国 際 社 会 に 向 けて 発 信 してきた 活 動 経 験 を 活 かし 学 術 会 議 が 学 問 の 中 立 的 自 立 的 な 団 体 とし て 責 任 を 果 たすことを 期 待 する (9) 広 報 について 学 術 会 議 の 活 動 は 多 岐 にわたっていて 複 雑 であり また 会 議 体 の 名 称 も 長 く 名 称 だけではどのような 活 動 をしている 会 議 体 か 分 からず テーマも 理 解 しづら い 研 究 者 の 観 点 つまり 送 り 手 の 論 理 ではなく 広 報 の 観 点 つまり 受 け 手 であ る 国 民 の 論 理 で 見 直 して 整 理 することが 有 効 である そのためにも 例 えば メデ ィアから 見 た 学 術 会 議 のイメージを 把 握 する 公 聴 の 機 会 をつくることを 検 討 され たい また 広 報 のためのスタッフを 増 強 するよう 引 き 続 き 検 討 すべきである 4