重 篤 副 作 用 疾 患 別 対 応 マニュアル 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 による 喘 息 発 作 (アスピリン 喘 息 解 熱 鎮 痛 薬 喘 息 アスピリン 不 耐 喘 息 鎮 痛 剤 喘 息 症 候 群 ) 平 成 18 年 10 月 厚 生 労 働 省
本 マニュアルの 作 成 に 当 たっては 学 術 論 文 各 種 ガイドライン 厚 生 労 働 科 学 研 究 事 業 報 告 書 独 立 行 政 法 人 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 の 保 健 福 祉 事 業 報 告 書 等 を 参 考 に 厚 生 労 働 省 の 委 託 により 関 係 学 会 においてマニュアル 作 成 委 員 会 を 組 織 し 社 団 法 人 日 本 病 院 薬 剤 師 会 とともに 議 論 を 重 ねて 作 成 されたマニュア ル 案 をもとに 重 篤 副 作 用 総 合 対 策 検 討 会 で 検 討 され 取 りまとめられたものであ る 社 団 法 人 日 本 呼 吸 器 学 会 マニュアル 作 成 委 員 会 石 坂 彰 敏 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 呼 吸 器 内 科 教 授 金 澤 實 埼 玉 医 科 大 学 呼 吸 器 内 科 教 授 久 保 惠 嗣 信 州 大 学 医 学 部 内 科 学 第 一 講 座 教 授 河 野 修 興 広 島 大 学 大 学 院 分 子 内 科 学 教 授 酒 井 文 和 東 京 都 立 駒 込 病 院 放 射 線 診 療 科 医 長 榊 原 博 樹 藤 田 保 健 衛 生 大 学 医 学 部 呼 吸 器 内 科 アレルギー 科 教 授 谷 口 正 実 国 立 病 院 機 構 相 模 原 病 院 臨 床 研 究 センター 共 同 研 究 部 長 巽 浩 一 郎 千 葉 大 学 医 学 部 呼 吸 器 内 科 助 教 授 土 橋 邦 生 群 馬 大 学 医 学 部 保 健 学 科 基 礎 理 学 療 法 学 講 座 教 授 貫 和 敏 博 東 北 大 学 加 齢 医 学 研 究 所 呼 吸 器 腫 瘍 研 究 分 野 教 授 橋 本 修 日 本 大 学 医 学 部 呼 吸 器 内 科 講 師 福 田 悠 日 本 医 科 大 学 解 析 人 体 病 理 学 主 任 教 授 本 田 孝 行 信 州 大 学 医 学 部 病 態 解 析 診 断 学 講 座 助 教 授 ( 敬 称 略 ) 社 団 法 人 日 本 病 院 薬 剤 師 会 飯 久 保 尚 東 邦 大 学 医 療 センター 大 森 病 院 薬 剤 部 室 長 井 尻 好 雄 大 阪 薬 科 大 学 臨 床 薬 剤 学 教 室 助 教 授 大 嶋 繁 城 西 大 学 薬 学 部 医 薬 品 情 報 学 講 座 助 教 授 小 川 雅 史 大 阪 市 立 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 副 部 長 大 浜 修 医 療 法 人 医 誠 会 都 志 見 病 院 副 薬 局 長 笠 原 英 城 日 本 橋 ファーマ 柳 屋 ビル 薬 局 小 池 香 代 名 古 屋 市 立 大 学 病 院 薬 剤 部 主 幹 後 藤 伸 之 名 城 大 学 薬 学 部 医 薬 品 情 報 学 研 究 室 教 授 鈴 木 義 彦 国 立 国 際 医 療 センター 薬 剤 部 副 薬 剤 部 長 高 柳 和 伸 京 都 大 学 医 学 部 附 属 病 院 薬 剤 部 濱 敏 弘 癌 研 究 会 有 明 病 院 薬 剤 部 長 1
林 昌 洋 国 家 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 虎 の 門 病 院 薬 剤 部 長 ( 敬 称 略 ) 重 篤 副 作 用 総 合 対 策 検 討 会 飯 島 正 文 昭 和 大 学 病 院 院 長 医 学 部 皮 膚 科 教 授 池 田 康 夫 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 長 市 川 高 義 日 本 製 薬 工 業 協 会 医 薬 品 評 価 委 員 会 PMS 部 会 運 営 幹 事 犬 伏 由 利 子 消 費 科 学 連 合 会 副 会 長 岩 田 誠 東 京 女 子 医 科 大 学 病 院 神 経 内 科 主 任 教 授 医 学 部 長 上 田 志 朗 千 葉 大 学 大 学 院 薬 学 研 究 院 医 薬 品 情 報 学 教 授 笠 原 忠 共 立 薬 科 大 学 薬 学 部 生 化 学 講 座 教 授 栗 山 喬 之 千 葉 大 学 医 学 研 究 院 加 齢 呼 吸 器 病 態 制 御 学 教 授 木 下 勝 之 社 団 法 人 日 本 医 師 会 常 任 理 事 戸 田 剛 太 郎 財 団 法 人 船 員 保 険 会 せんぽ 東 京 高 輪 病 院 院 長 山 地 正 克 財 団 法 人 日 本 医 薬 情 報 センター 理 事 林 昌 洋 国 家 公 務 員 共 済 組 合 連 合 会 虎 の 門 病 院 薬 剤 部 長 松 本 和 則 国 際 医 療 福 祉 大 学 教 授 森 田 寛 お 茶 の 水 女 子 大 学 健 康 管 理 センター 所 長 座 長 ( 敬 称 略 ) 2
本 マニュアルについて 従 来 の 安 全 対 策 は 個 々の 医 薬 品 に 着 目 し 医 薬 品 毎 に 発 生 した 副 作 用 を 収 集 評 価 し 臨 床 現 場 に 添 付 文 書 の 改 訂 等 により 注 意 喚 起 する 警 報 発 信 型 事 後 対 応 型 が 中 心 である しかしながら 1 副 作 用 は 原 疾 患 とは 異 なる 臓 器 で 発 現 することがあり 得 ること 2 重 篤 な 副 作 用 は 一 般 に 発 生 頻 度 が 低 く 臨 床 現 場 において 医 療 関 係 者 が 遭 遇 する 機 会 が 少 ないも のもあること などから 場 合 によっては 副 作 用 の 発 見 が 遅 れ 重 篤 化 することがある 厚 生 労 働 省 では 従 来 の 安 全 対 策 に 加 え 医 薬 品 の 使 用 により 発 生 する 副 作 用 疾 患 に 着 目 した 対 策 整 備 を 行 うとともに 副 作 用 発 生 機 序 解 明 研 究 等 を 推 進 することにより 予 測 予 防 型 の 安 全 対 策 へ の 転 換 を 図 ることを 目 的 として 平 成 17 年 度 から 重 篤 副 作 用 総 合 対 策 事 業 をスタートしたところ である 本 マニュアルは 本 事 業 の 第 一 段 階 早 期 発 見 早 期 対 応 の 整 備 (4 年 計 画 )として 重 篤 度 等 か ら 判 断 して 必 要 性 の 高 いと 考 えられる 副 作 用 について 患 者 及 び 臨 床 現 場 の 医 師 薬 剤 師 等 が 活 用 する 治 療 法 判 別 法 等 を 包 括 的 にまとめたものである 記 載 事 項 の 説 明 本 マニュアルの 基 本 的 な 項 目 の 記 載 内 容 は 以 下 のとおり ただし 対 象 とする 副 作 用 疾 患 に 応 じて マニュアルの 記 載 項 目 は 異 なることに 留 意 すること 患 者 の 皆 様 へ 患 者 さんや 患 者 の 家 族 の 方 に 知 っておいて 頂 きたい 副 作 用 の 概 要 初 期 症 状 早 期 発 見 早 期 対 応 のポイントをできるだけわかりやすい 言 葉 で 記 載 した 医 療 関 係 者 の 皆 様 へ 早 期 発 見 と 早 期 対 応 のポイント 医 師 薬 剤 師 等 の 医 療 関 係 者 による 副 作 用 の 早 期 発 見 早 期 対 応 に 資 するため ポイントになる 初 期 症 状 や 好 発 時 期 医 療 関 係 者 の 対 応 等 について 記 載 した 副 作 用 の 概 要 副 作 用 の 全 体 像 について 症 状 検 査 所 見 病 理 組 織 所 見 発 生 機 序 等 の 項 目 毎 に 整 理 し 記 載 した 3
副 作 用 の 判 別 基 準 ( 判 別 方 法 ) 臨 床 現 場 で 遭 遇 した 症 状 が 副 作 用 かどうかを 判 別 ( 鑑 別 )するための 基 準 ( 方 法 )を 記 載 した 判 別 が 必 要 な 疾 患 と 判 別 方 法 当 該 副 作 用 と 類 似 の 症 状 等 を 示 す 他 の 疾 患 や 副 作 用 の 概 要 や 判 別 ( 鑑 別 ) 方 法 について 記 載 した 治 療 法 副 作 用 が 発 現 した 場 合 の 対 応 として 主 な 治 療 方 法 を 記 載 した ただし 本 マニュアルの 記 載 内 容 に 限 らず 服 薬 を 中 止 すべきか 継 続 すべきかも 含 め 治 療 法 の 選 択 については 個 別 事 例 において 判 断 されるものである 典 型 的 症 例 本 マニュアルで 紹 介 する 副 作 用 は 発 生 頻 度 が 低 く 臨 床 現 場 において 経 験 のある 医 師 薬 剤 師 は 少 ないと 考 えられることから 典 型 的 な 症 例 について 可 能 な 限 り 時 間 経 過 がわかるように 記 載 した 引 用 文 献 参 考 資 料 当 該 副 作 用 に 関 連 する 情 報 をさらに 収 集 する 場 合 の 参 考 として 本 マニュアル 作 成 に 用 いた 引 用 文 献 や 当 該 副 作 用 に 関 する 参 考 文 献 を 列 記 した 4
非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 による 喘 息 発 作 英 語 名 :Asthmatic attack due to NSAIDs(non-steroidal anti-inflammatory drugs) 同 義 語 :アスピリン 喘 息 解 熱 鎮 痛 薬 喘 息 アスピリン 不 耐 喘 息 NSAIDs 過 敏 喘 息 鎮 痛 剤 喘 息 症 候 群 A. 患 者 の 皆 様 へ ぜんそく 喘 息 発 作 は 医 薬 品 によって 引 き 起 こされる 場 合 もあります こうえんしょうやく えぬせいど 主 にアスピリンなどの 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 (NSAIDs )あるいは げねつちんつうやく 解 熱 鎮 痛 薬 でみられ また 一 般 用 医 薬 品 のかぜ 薬 などでもみられるこ とがあるので 何 らかのお 薬 を 服 用 していて 次 のような 症 状 が 見 ら れた 場 合 には 放 置 せずに 医 師 薬 剤 師 に 連 絡 してください のど 息 苦 しい 息 をするとき 喉 がゼーゼー ヒューヒュー 鳴 る 受 診 する 際 には 服 用 した 医 薬 品 をお 持 ちください なお 喘 息 の 治 療 中 で あらかじめ 吸 入 や 緊 急 時 の 医 薬 品 の 服 用 など 指 示 された 処 置 がある 方 は まずそれをおこなってください 患 者 さんご 自 身 またはご 家 族 による 気 づき が 副 作 用 の 早 期 発 見 早 期 対 応 ( 治 療 )につながることをご 理 解 いただき 本 マニュアルを 参 考 に 副 作 用 が 疑 われる 場 合 には 医 師 薬 剤 師 に 連 絡 してください 5
えぬせいど ぜんそく 1. NSAIDs による 喘 息 発 作 ほっさ とは? こうえんしょうやく アスピリンに 代 表 される 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 (NSAIDs)あ げねつちんつうやく ぜんそく るいは 解 熱 鎮 痛 薬 によって 発 作 が 引 き 起 こされる 喘 息 です アス ピリン 喘 息 とも 呼 ばれます しかし アスピリンだけでなく ピリ ン 系 非 ピリン 系 に 関 わらずほとんどの 解 熱 鎮 痛 薬 が 原 因 となりま す 医 療 機 関 で 処 方 される 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 だけでなく 一 般 用 医 薬 品 のかぜ 薬 や 解 熱 鎮 痛 薬 の 多 くにアスピリンなどの 非 ステ ロイド 性 抗 炎 症 薬 が 含 まれています また ほとんどの 痛 み 止 めの ざやく 坐 薬 塗 り 薬 貼 り 薬 などにも 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 が 含 まれて います 症 状 は 特 徴 的 であり 典 型 的 な 発 作 では 原 因 となる 医 薬 品 を 服 ぜんめい (ゼーゼ 用 して 短 時 間 で 鼻 水 鼻 づまりが 起 こり 次 に 咳 喘 鳴 こきゅうこんなん ーやヒューヒュー) 呼 吸 困 難 が 出 現 し 徐 々にあるいは 急 速 に 悪 化 します 意 識 がなくなったり 窒 息 したりする 危 険 性 もあり 時 こうちょう はきけ に 顔 面 の 紅 潮 や 吐 気 腹 痛 下 痢 などを 伴 います 軽 症 例 で 半 日 程 度 重 症 例 で 24 時 間 以 上 続 くこともありますが 合 併 症 を 起 こさ ない 限 り 原 因 となった 医 薬 品 が 体 内 から 消 失 すれば 症 状 はなくな ります 注 )のみ 薬 だけでなく 坐 薬 や 外 用 薬 で 症 状 が 現 れることもありますが 症 状 の 発 現 までに 時 間 がかかり 薬 と 症 状 の 因 果 関 係 が 分 かりにくいこ ともあります また アスピリン 喘 息 のうち その 約 半 数 は 患 者 本 人 も 担 当 医 も 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 が 原 因 であることに 気 づいていないと 言 わ 6
れています アスピリン 喘 息 には 特 徴 があり 以 下 のような 方 はア スピリン 喘 息 の 可 能 性 が 高 いとされています 成 人 になってから 喘 息 を 発 症 した 方 女 性 ( 男 女 比 4:6 程 度 でやや 女 性 に 多 い) びえん 通 年 性 の 鼻 炎 症 状 ( 鼻 水 鼻 づまり)のある 方 まんせいふくびくうえん ちくのうしょう 慢 性 副 鼻 腔 炎 ( 蓄 膿 症 )や 鼻 ポリープを 合 併 している また はその 手 術 を 受 けたことのある 方 きゅうかくいじょう むきゅうかくしょう 嗅 覚 異 常 無 嗅 覚 症 ( 臭 いを 感 じない)の 合 併 のある 方 アレルギー 検 査 の 結 果 が 陰 性 ( 非 アトピー 型 )の 方 季 節 に 関 係 なく 喘 息 発 作 が 起 こる 方 まっしょうけつこうさんきゅうぞう た 著 明 な 末 梢 血 好 酸 球 増 多 ( 一 部 の 血 球 の 増 加 )がみられる 場 合 2. 早 期 発 見 と 早 期 対 応 のポイント 息 苦 しい 息 をするとき 喉 がゼーゼー ヒューヒュー 鳴 る などの 症 状 に 気 づいた 場 合 で 医 薬 品 を 服 用 している 場 合 には 医 師 に 連 絡 して 速 やかに 救 急 外 来 を 受 診 してください 受 診 する 際 には 服 用 した 医 薬 品 をお 持 ちください なお 喘 息 の 治 療 中 で あ らかじめ 吸 入 や 緊 急 時 の 医 薬 品 の 服 用 など 指 示 された 処 置 があ る 方 は まずそれをおこなってください かびんしょう 喘 息 と 診 断 されたら 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 (NSAIDs) 過 敏 症 を 合 併 していないか 主 治 医 に 検 討 を 依 頼 して 下 さい アスピリン 喘 息 の 可 能 性 がある 場 合 は 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 の 服 用 を 避 け てください その 他 にも 避 けるべき 医 薬 品 などがありますので 医 師 の 指 導 を 受 けてください 7
( 参 考 ) 専 門 病 院 においては 他 の 医 療 機 関 向 けの 紹 介 状 や アスピリ ぜんそく ン 喘 息 カード のようなものを 作 成 しているところもあります 医 療 施 設 を 受 診 したり 薬 局 で 医 薬 品 を 購 入 したりする 時 これ ぜんそく らを 活 用 するなど 自 分 が アスピリン 喘 息 ( 疑 い) であること を 医 師 又 は 薬 剤 師 に 伝 えてください 8
B. 医 療 関 係 者 の 皆 様 へ 1. 早 期 発 見 と 早 期 対 応 予 防 のポイント 成 人 気 管 支 喘 息 の 中 にはアラキドン 酸 シクロオキシゲナーゼ(COX) 阻 害 作 用 をもつアスピリン 様 薬 物 = 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 (non-steroidal antiinflammatory drugs, NSAIDs)を 投 与 されることにより 喘 息 発 作 を 主 体 とする 激 しい 過 敏 反 応 が 誘 発 される 患 者 群 が 存 在 する 1) 一 般 にアスピリン 喘 息 と 呼 称 されるが アスピリンの 他 にほとんど 全 ての NSAIDs で 過 敏 反 応 が 誘 発 されることを 忘 れてはならない アスピリン 喘 息 患 者 には アラキドン 酸 代 謝 経 路 上 あるいはアラキドン 酸 代 謝 産 物 が 関 わる 生 体 反 応 に 何 らかの 異 常 があり それが NSAIDs による COX 阻 害 (おそらく COX-1 阻 害 )で 顕 在 化 し 過 敏 反 応 として 現 われてくるものと 考 えられる 過 敏 反 応 のトリガーとしては 防 御 因 子 としてのプロスタグランジン E2 (PGE2)の 減 少 というステップが 重 要 であり 最 終 メディエーターとしてはシ ステイニル ロイコトリエン(cysLTs=LTC4,LTD4,LTE4)が 重 要 な 役 割 を 演 じているものと 考 えられている 2) しかし その 間 の 機 序 ( 関 与 する 細 胞 やメ ディエータなど)に 関 しては 不 明 な 点 が 多 い( 図 1) アスピリン 喘 息 は 成 人 喘 息 の 約 10%を 占 めると 言 われているが その 4 割 は 潜 在 しており 不 幸 にして NSAIDs を 投 与 されることにより 初 めて 過 敏 症 をも つことが 明 らかとなる 5) その 際 に 患 者 に 重 大 な 健 康 被 害 の 発 生 する 恐 れがあ り 気 管 支 喘 息 患 者 に NSAIDs を 投 与 する 際 には 注 意 が 必 要 である アスピリン 喘 息 は 鼻 ポリープ 慢 性 副 鼻 腔 炎 などの 鼻 副 鼻 腔 疾 患 を 合 併 す ることが 多 く 昔 から 喘 息 アスピリン 過 敏 鼻 ポリープはアスピリン 喘 息 の 3 主 徴 といわれてきた 確 かに 他 のタイプの 喘 息 と 比 べると 鼻 副 鼻 腔 疾 患 の 合 併 頻 度 が 高 いが 3 者 の 関 連 性 については 明 らかでない NSAIDs による 不 幸 な 事 例 を 回 避 するだけでなく 適 切 な 管 理 により 喘 息 を 良 好 にコントロールするためにも 潜 在 しているアスピリン 喘 息 を 可 能 な 限 り 正 しく 認 識 しておく 必 要 がある 9
12-HPETE 12-LO 15-HPETE 15-LO 15-HETE 5-HETE 5-HPETE LTA4 5-LO 膜 リン 脂 質 Phospholipase A2 アラキドン 酸 COX-1, COX-2 FLAP NSAID PGG2 COX1, COX2 PGH2 LXA4 LXB4 LTB4 LTC4,LTD4,LTE4 PGE2 PGI2 PGF2α PGD2 TXA2 図 1 アラキドン 酸 の 主 要 代 謝 経 路 とアスピリン 喘 息 にみられる 異 常 アラキドン 酸 は 細 胞 膜 ( 核 膜 )のリン 脂 質 のグリセロール 骨 格 第 2 位 の 位 置 に 組 み 込 まれている. 細 胞 に 対 する 刺 激 に 応 じて, 主 としてフォスフォリパーゼ A2 の 作 用 によりリン 脂 質 から 切 断 され 遊 離 し, 直 ちにシクロ オキシゲナーゼ(COX)や 5-リポキシゲナーゼ(LO)の 基 質 となる.COX には COX-1 と COX-2 という2つのアイ ソザイムが 存 在 し, 生 理 的 な 機 能 を 担 う PG を 産 生 するのは 前 者 であり, 後 者 は 炎 症 細 胞 などに 誘 導 されて 炎 症 を 惹 起 する PG を 産 生 する.この 他 にもいくつかの 酵 素 的 および 非 酵 素 的 な 代 謝 経 路 がある. 最 近 の 知 見 として アスピリン 喘 息 には 15-hydroxyeicosatetraenoic acid(15-hete)の 過 剰 産 生 3) やリポキシン A4 (LXA4)の 減 少 4) など COX や 5-リポキシゲナーゼ(5-LO) 以 外 のアラキドン 酸 代 謝 経 路 にも 異 常 が 存 在 する と 報 告 されている.アスピリン,インドメタシンなどの 非 ステロイド 性 抗 炎 症 剤 (non-steroidal anti-inflammatory drugs, NSAID)は 主 として COX-1 活 性 を 阻 害 する.FLAP(5-lipoxygenase activating protein)は 5-リポキシゲナーゼ(5-LO)が 細 胞 質 から 細 胞 膜 へ 移 行 する 際 に 必 要 な 蛋 白 質 である. PG: prostaglandin, TX: thromboxane, LT: leukotriene, HPETE: hydroperoxyeicosatetraenoic acid, HETE:hydroxyeicosatetraenoic acid., 15-HETE: 15-hydroxyeicosatetraenoic acid, LXA4 and LXB4: lipoxine A4 and lipoxine B4. : 増 加, : 減 少. 10
(1)アスピリン 喘 息 患 者 に NSAIDs で 発 作 を 誘 発 しないために: 潜 在 症 例 を 見 出 すためのポイント 6) アスピリン 喘 息 はやや 女 性 に 多 く ほとんどが 20 歳 代 後 半 から 50 歳 代 前 半 に 発 症 する 小 児 喘 息 の 既 往 を 持 つ 者 は 少 ない 初 診 時 ( 確 定 診 断 前 )に は 重 症 者 が 6 割 を 占 めるが 確 定 診 断 されて 自 己 管 理 を 指 導 すると 軽 症 化 す る 症 例 が 多 い ただし ステロイド 依 存 症 例 が 半 数 近 くを 占 め 他 のタイプ と 比 べるとやはり 重 症 者 が 多 い ある 報 告 では 慢 性 鼻 炎 を 持 つ 者 が 84%を 占 め しかも 鼻 症 状 の 重 いもの が 多 いとされ また 鼻 茸 は 72%の 患 者 にみられるが 非 アスピリン 喘 息 にも 8% 程 度 の 頻 度 で 認 められ 結 局 鼻 茸 を 合 併 する 喘 息 患 者 の 約 半 数 がアスピリ ン 喘 息 であるといえる 慢 性 副 鼻 腔 炎 はほとんど 全 て(97%)のアスピリン 喘 息 患 者 に 認 められるが 非 アスピリン 喘 息 患 者 も 30~40%が 慢 性 副 鼻 腔 炎 を 合 併 しており アスピリン 喘 息 を 診 断 するための 所 見 としては 特 異 性 に 欠 ける 嗅 覚 障 害 を 合 併 する 頻 度 が 高 いのもアスピリン 喘 息 の 特 徴 である 末 梢 血 中 の 好 酸 球 比 率 は 他 のタイプの 喘 息 と 変 わらないが 副 腎 皮 質 ステ ロイド 剤 や β 刺 激 薬 を 使 用 する 前 には 好 酸 球 が 多 い 症 例 もみられる アトピ ー 型 喘 息 を 合 併 する 症 例 が 2 割 程 度 存 在 するために 一 部 IgE レベルの 高 い 症 例 がある 以 上 のように 鼻 副 鼻 腔 疾 患 の 合 併 頻 度 が 著 しく 高 いという 特 徴 などが あり ある 程 度 アスピリン 喘 息 を 疑 うことはできるが 確 定 診 断 のためには 負 荷 試 験 が 必 要 である 複 数 の 特 徴 が 揃 えば 明 らかな NSAIDs 過 敏 歴 がなくても とりあえず ア スピリン 喘 息 として 扱 うことが 適 当 である NSAIDs を 副 作 用 なく 服 用 できた ことが 確 認 できたとしても それが 鼻 副 鼻 腔 症 状 や 喘 息 を 発 症 する 以 前 の 場 合 その 後 のアスピリン 耐 性 ( 安 全 性 )を 担 保 するものではない NSAIDs 過 敏 性 は 後 天 的 に 獲 得 されるものであり 通 常 は 鼻 副 鼻 腔 症 状 や 喘 息 症 状 の 出 現 と 同 時 か 数 年 遅 れて 明 らかとなるためである 以 上 のように,NSAIDs による 過 敏 症 の 既 往 の 確 認 と 臨 床 像 からアスピリン 喘 息 の 可 能 性 を 考 えることが 予 防 にとって 極 めて 大 切 である (2) 喘 息 患 者 に NSAIDs を 投 与 する 際 の 注 意 と 問 題 点 11
1 NSAIDs による 発 作 の 誘 発 歴 がある 場 合 病 歴 上 NSAIDs による 発 作 の 誘 発 歴 があっても 実 際 にはそのうちの 20~ 30%はアスピリン 喘 息 ではないとされている 7) 自 然 増 悪 や 同 時 に 服 用 した 抗 生 物 質 などに 対 する 過 敏 反 応 をアスピリン 喘 息 と 誤 診 したものである し かし 負 荷 試 験 をしない 限 りは 確 定 することが 出 来 ないため アスピリン 喘 息 として 扱 うことになる 消 炎 鎮 痛 剤 のうち COX 阻 害 作 用 をもたない 塩 基 性 薬 剤 を 考 慮 する なお 選 択 的 COX-2 阻 害 薬 (rofecoxib,celecoxib) 8,9) は 日 本 におい ては 販 売 されていない( 平 成 18 年 3 月 時 点 ) 2 NSAIDs の 服 用 歴 がない 場 合 上 に 述 べた 臨 床 像 を 参 考 にする エックス 線 写 真 を 含 めた 耳 鼻 科 的 診 断 で 副 鼻 腔 炎 が 否 定 でき その 他 のアスピリン 喘 息 の 特 徴 がなければ アスピリ ン 喘 息 を 否 定 しても 良 いと 思 われる 3 喘 息 発 症 前 に NSAIDs を 副 作 用 なしに 服 用 できた 場 合 多 くのアスピリン 喘 息 患 者 は 喘 息 発 症 前 には NSAIDs を 服 用 可 能 である 10) NSAIDs 過 敏 性 は 後 天 的 に 発 現 してくるものであり 喘 息 の 発 症 と 同 時 か 喘 息 より 先 に 現 れることの 多 い 鼻 炎 副 鼻 腔 炎 の 発 症 と 共 に NSAIDs 過 敏 性 を 獲 得 するようである したがって 喘 息 発 症 前 の 状 況 は 参 考 にはならず 上 記 の2に 準 じて 対 処 する 4 喘 息 発 症 後 に NSAIDs を 副 作 用 なしに 服 用 できた 場 合 ほとんどのアスピリン 喘 息 患 者 は 喘 息 の 発 症 時 にはすでに NSAIDs 過 敏 性 を 獲 得 している したがって このようなケースではアスピリン 喘 息 を 否 定 しても 良 いと 思 われる (3)NSAIDs による 過 敏 症 状 の 早 期 診 断 のポイント NSAIDs 使 用 後 の 急 激 な 喘 息 発 作 と 鼻 症 状 の 悪 化 ( 鼻 汁 や 鼻 閉 )は 本 症 を 強 く 疑 う ただし 以 下 のような 場 合 は NSAIDs による 過 敏 症 状 でない 可 能 性 を 考 える a) 誘 発 症 状 出 現 のタイミングが 合 致 しない 場 合 b) 発 作 が 軽 い 場 合 c) 鼻 症 状 を 伴 わない 喘 息 発 作 だけの 場 合 注 射 薬 坐 薬 > 内 服 薬 > 貼 付 薬 塗 布 薬 の 順 で 症 状 が 早 くかつ 強 く 起 こ 12
ることを 認 識 する また NSAIDs を 含 んだ 点 眼 薬 も 原 因 となりうることを 念 頭 に 置 く (4) 早 期 対 応 のポイント 1 基 本 的 には 通 常 の 急 性 喘 息 発 作 に 対 する 対 応 と 同 じであるが エピネフ リンの 筋 注 ~ 皮 下 注 が 有 効 であることと ステロイドの 急 速 静 注 は 危 険 で あることを 十 分 に 理 解 しておく ( 注 ) ( 注 ) 静 注 用 副 腎 皮 質 ホルモン 製 剤 にはコハク 酸 エステル 型 (ヒドロコルチゾン メチルプレドニ ゾロンなど)とリン 酸 エステル 型 (デキサメタゾン ベタメタゾンなど)がある このうち コ ハク 酸 エステル 型 のものをアスピリン 喘 息 に 急 速 静 注 すると 高 頻 度 で 喘 息 発 作 の 誘 発 や 喘 息 症 状 の 増 悪 がみられる 11) リン 酸 エステル 型 の 製 剤 はそのような 危 険 性 は 少 ないが 溶 液 にパラ ベン(パラオキシ 安 息 香 酸 エステル: 防 腐 剤 )や 亜 硫 酸 塩 ( 安 定 化 剤 )が 含 まれている 場 合 には これらで 一 部 の 患 者 に 症 状 の 増 悪 がみられる 急 速 静 注 を 避 ければそのような 危 険 性 は 少 なくな る 経 口 ステロイドにはこのような 危 険 性 はない 2 NSAIDs 使 用 後 数 時 間 は 急 速 に 症 状 が 悪 化 しやすいことから 迅 速 な 対 応 が 必 要 である 3 まず Spo 2 をモニターし 十 分 な 酸 素 投 与 をし エピネフリン 筋 肉 内 注 射 (0.1~0.3 ml)を 試 みる エピネフリンは 皮 下 注 射 よりも 筋 肉 内 注 射 の ほうが 即 効 性 がある 4 その 後 末 梢 静 脈 を 確 保 する 5 重 症 発 作 の 場 合 は 救 命 救 急 施 設 へ 搬 送 する 6 エピネフリンは 喘 息 症 状 だけでなく 鼻 消 化 器 皮 膚 などすべての NSAIDs 過 敏 症 状 に 奏 効 するため 積 極 的 に 用 いる 禁 忌 でなければ 2~3 回 繰 り 返 し 用 いても 良 い 7 ステロイド+アミノフィリンは 通 常 の 喘 息 発 作 と 同 様 に 点 滴 で 用 いる 特 に 静 注 用 ステロイドは その 急 速 投 与 で 発 作 の 悪 化 をきたしやすいため 急 速 静 注 してはいけない 8 鼻 閉 や 顔 面 潮 紅 皮 疹 を 認 める 症 例 では 抗 ヒスタミン 薬 の 点 滴 内 追 加 も 考 慮 する(これらの 症 状 の 発 症 にはヒスタミンも 関 与 するため) 9 内 服 可 能 であれば ただちに 抗 ロイコトリエン 薬 を 内 服 させる 10 最 初 の 数 時 間 を 乗 り 越 えれば 原 因 NSAIDs の 薬 理 学 的 効 果 の 消 退 ととも に 発 作 も 改 善 してくる (5) 患 者 側 のリスク 因 子 普 段 の 喘 息 のコントロールが 不 十 分 な 例 や 喘 息 発 作 を 繰 り 返 している 重 症 例 が NSAIDs で 誘 発 された 場 合 は 非 常 に 重 篤 な 発 作 につながりやすい 13
(6) 原 因 薬 に 関 連 したリスク 因 子 1 坐 薬 や 注 射 薬 は 急 激 な 発 作 をまねきやすい 2 解 熱 鎮 痛 効 果 の 強 い 薬 剤 COX-1 阻 害 作 用 が 強 い NSAIDs(インドメタシン やアスピリン)は 重 症 発 作 を 誘 発 しやすい 3 長 時 間 効 果 のある NSAIDs では 誘 発 症 状 が 遷 延 化 する 2. 副 作 用 の 概 要 (1) 自 覚 症 状 原 因 となる NSAIDs 服 用 から 通 常 1 時 間 以 内 に 鼻 閉 鼻 汁 に 続 き 咳 息 苦 しさ 時 に 嘔 気 や 腹 痛 下 痢 などの 腹 部 症 状 が 出 現 する (2) 他 覚 所 見 NSAIDs 使 用 後 1 時 間 以 内 に 鼻 閉 強 い 喘 息 発 作 や 咳 嗽 を 認 める 誘 発 症 状 が 強 い 例 では 頚 部 から 顔 面 の 潮 紅 消 化 器 症 状 を 認 めやすいが 皮 疹 は 少 ない 過 敏 症 状 は 軽 症 例 では 約 半 日 重 症 例 では 24 時 間 以 上 続 くが 症 状 のピークは 原 因 となる NSAID の 効 果 発 現 時 間 である ただし 血 管 浮 腫 などの 皮 疹 例 は その 発 現 が 遅 れ 持 続 も 長 い (3) 臨 床 検 査 成 績 急 性 期 には 通 常 の 検 査 で 行 うべき 項 目 はなく 急 性 喘 息 発 作 同 様 に 治 療 が 優 先 される 喘 息 発 作 が 重 症 であるため 動 脈 血 の 炭 酸 ガス 分 圧 の 上 昇 に 注 意 する 過 敏 症 状 に 関 与 する 主 たるメディエーターは cyslts であり そ の 代 謝 産 物 である 尿 中 LTE4 の 著 増 を 認 める (4) NSAIDs 過 敏 性 獲 得 機 序 現 時 点 では 不 明 である 家 族 内 発 症 はまれである (5) NSAIDs 過 敏 反 応 の 機 序 PG 合 成 酵 素 である COX-1 が 阻 害 されることにより 過 敏 症 状 が 誘 発 される すなわち,COX-1 阻 害 で 内 因 性 の PGE2 が 減 少 し 何 らかの 機 序 によりマスト 細 胞 が 活 性 化 され cyslts の 過 剰 産 生 が 生 じ 過 敏 症 状 が 発 現 すると 考 えら れている したがって COX-1 阻 害 作 用 の 強 い NSAIDs ほど 過 敏 症 状 を 誘 発 し やすく かつ 誘 発 症 状 は 強 度 である 14
(6) 薬 剤 ごとの 過 敏 症 状 の 差 1 解 熱 鎮 痛 効 果 の 強 い 薬 剤 すなわち COX-1 阻 害 作 用 の 強 い NSAIDs ほど 激 烈 な 副 作 用 を 生 じやすい 2 吸 収 の 早 い NSAIDs ほど 急 激 な 過 敏 症 状 をもたらす 3 NSAIDs のもつ 共 通 の 薬 理 作 用 である COX-1 阻 害 により 生 じる 副 作 用 の ため 原 因 となる NSAIDs に 化 学 構 造 式 上 の 共 通 点 はない (7) 副 作 用 の 発 現 頻 度 アスピリン 喘 息 は 例 外 なく NSAIDs で 過 敏 症 状 を 呈 する (8) アスピリン 喘 息 の 頻 度 成 人 喘 息 の 約 10%とされるが 喘 息 が 重 症 になるほど 頻 度 は 高 まる 対 象 母 集 団 によって 頻 度 は 異 なり, 以 下 のようにまとめることができる. 1 小 児 喘 息 患 者 :まれ 2 思 春 期 発 症 の 喘 息 患 者 : 少 ない 3 成 人 発 症 の 喘 息 患 者 : 約 10% 4 重 症 成 人 喘 息 患 者 :30% 以 上 5 鼻 茸 および 副 鼻 腔 炎 を 有 する 喘 息 患 者 :50% 以 上 3.NSAIDs 過 敏 (アスピリン 喘 息 )の 診 断 手 順 (1)NSAIDs に 関 係 したと 思 われる 喘 息 発 作 の 判 別 ( 鑑 別 ): 以 下 の4 点 を 満 たせば NSAIDs 過 敏 (アスピリン 喘 息 )と 確 定 してよい 1 COX-1 阻 害 作 用 をもつ NSAIDs 投 与 後 の 喘 息 発 作 2 鼻 症 状 ( 鼻 閉 鼻 汁 ) 悪 化 を 伴 う 3 中 発 作 以 上 の 喘 息 発 作 である 4 NSAIDs 投 与 から 1~2 時 間 以 内 に 発 作 が 始 まっている(ただし 貼 付 薬 と 塗 布 薬 は 除 く) (2)NSAIDs による 負 荷 試 験 NSAIDs 過 敏 症 に 関 する 病 歴 は 不 確 実 であり 偽 陽 性 や 偽 陰 性 が 少 なくな い 確 定 診 断 には NSAIDs を 用 いた 負 荷 試 験 が 必 要 になる 本 邦 ではスルピ リンあるいはトルメチンを 用 いた 吸 入 負 荷 試 験 の 行 われることが 多 い 吸 入 負 荷 試 験 は 実 施 に 要 する 時 間 が 短 く 全 身 性 の 過 敏 反 応 を 起 こすことが 少 な いという 利 点 があるが 気 道 以 外 の 症 状 が 誘 発 されにくいし 非 特 異 的 な 気 道 刺 激 による 反 応 が 出 やすいという 欠 点 をもつ 15
一 方 内 服 負 荷 試 験 は NSAIDs の 通 常 の 投 与 ルートに 沿 った 負 荷 方 法 であ るが 実 施 には 数 日 を 要 し 全 身 反 応 の 惹 起 される 危 険 性 が 少 なくない 何 れにしても 過 敏 症 状 を 誘 発 することになり 有 益 性 が 危 険 性 を 上 回 ると 判 断 される 場 合 にのみ 最 大 限 の 注 意 を 払 って 実 施 されるべきである 4. 判 別 ( 鑑 別 )が 必 要 な 疾 患 (1)たまたま NSAIDs を 使 用 していた 際 の 喘 息 発 作 : 常 に 鑑 別 が 問 題 となるが 通 常 は 3.(1)の2 3 4を 満 たさないことが 多 い (2)NSAIDs アレルギー: 特 定 の NSAIDs に 対 してのみアレルギー 症 状 を 発 現 する 場 合 を 指 す 過 去 に 原 因 となる NSAIDs の 使 用 歴 があり 感 作 された 結 果 生 じるアレルギー 反 応 である 誘 発 症 状 はアナフィラキシー 症 状 や 皮 疹 が 主 体 となるが もともと 気 道 過 敏 性 を 有 する 例 では 喘 息 発 作 も 誘 発 さ れるため 鑑 別 は 難 しい (3) 皮 疹 型 NSAIDs 不 耐 症 :アスピリン 喘 息 と 同 じく COX-1 阻 害 作 用 の 強 い NSAIDs で 蕁 麻 疹 / 血 管 浮 腫 を 生 じるが 気 道 症 状 は 少 ない 5. 治 療 方 法 (1) 急 性 期 (NSAIDs 誘 発 時 ) 通 常 の 急 性 喘 息 発 作 と 同 様 であるが 急 激 に 悪 化 するため 以 下 の 治 療 を 順 番 に 迅 速 に 行 う 救 急 対 応 や 入 院 が 不 可 能 な 施 設 では 以 下 の1 2を 行 った 後 に 専 門 施 設 に 転 送 する 1 十 分 な 酸 素 化 2 エピネフリンの 早 期 および 繰 り 返 しの 投 与 ( 筋 肉 内 注 射 ) 3 アミノフィリンと 副 腎 皮 質 ステロイドの 点 滴 ただし ステロイドの 急 速 静 注 は 禁 忌 またステロイドはリン 酸 エス テルタイプのものを 用 いる 4 抗 ヒスタミン 薬 の 点 滴 投 与 5 抗 ロイコトリエン 薬 の 内 服 ( 可 能 ならば) (2) 慢 性 期 ( 長 期 管 理 ) 1 通 常 の 慢 性 喘 息 と 同 様 吸 入 ステロイド 薬 が 基 本 となる 2 他 のタイプの 喘 息 と 比 べて, 本 症 に 比 較 的 有 効 性 が 高 いのは 抗 ロイコト リエン 薬 12) クロモリンである 3 鼻 茸 や 副 鼻 腔 炎 の 治 療 ( 内 視 鏡 下 手 術 点 鼻 ステロイド)は 喘 息 症 状 も 安 定 化 させる 16
4 不 注 意 や 誤 って NSAIDs が 投 与 されることを 防 ぐために, 病 状 説 明 書 や 患 者 カードを 携 帯 させる( 参 考 3 参 照 ) 6. 典 型 症 例 の 概 要 ( 図 2 3) アスピリン 喘 息 患 者 の 多 くは 30~40 歳 代 に 嗅 覚 低 下 を 初 発 症 状 とする 鼻 ポリープ 及 び 副 鼻 腔 炎 症 状 で 発 症 し その 2~3 年 以 内 に 長 引 く 乾 性 咳 嗽 や 典 型 的 喘 息 発 作 を 生 じてくる 吸 入 ステロイドを 中 心 とした 喘 息 治 療 を 開 始 す ると 下 気 道 症 状 は 安 定 化 するが 好 酸 球 性 中 耳 炎 や 好 酸 球 性 胃 腸 炎 を 併 発 す る 症 例 も 少 なくない( 図 2) 内 服 負 荷 試 験 によると,アスピリン 喘 息 患 者 の 多 くはアスピリン 100 mg 以 下 で 発 作 が 誘 発 される ほとんどの 例 で 鼻 閉 鼻 汁 などの 鼻 症 状 が 先 行 し 次 に 喘 息 発 作 が 生 じてくる 誘 発 症 状 が 強 い 場 合 には 顔 面 ~ 頚 部 の 潮 紅 と 眼 球 結 膜 の 充 血 や 消 化 器 症 状 ( 腹 痛 下 痢 嘔 気 )を 伴 うことがある 何 れの 症 状 も エピネフリンの 筋 注 ~ 皮 下 注 が 奏 効 する 過 敏 症 状 が 最 大 となる 時 間 は 原 因 となった NSAIDs の 最 大 効 果 発 現 時 間 におおむね 一 致 する( 図 3) 嗅 覚 低 下 鼻 閉 鼻 汁 から 咳 喘 息 発 作 吸 入 ステロイド 胃 腸 炎 中 耳 炎 0 1 2 3 4 5 6( 年 ) 図 2 典 型 的 なアスピリン 喘 息 の 臨 床 経 過 (37 歳, 女 性 例 ) 17
FEV 1 (%) 0-10 -20-30 アスピリン 50mg エピネフリン 0.1mg 皮 下 注 鼻 汁 鼻 閉 顔 面 頚 部 紅 潮 結 膜 充 血 腹 痛 0 1 2 3 4 5 6 7 8 ( 時 ) 図 3 アスピリン 内 服 後 の 症 状 所 見 の 典 型 的 な 時 間 経 過 7.その 他 早 期 発 見 早 期 対 応 に 必 要 な 事 項 (1) 患 者 への 説 明 及 び 医 療 関 係 者 への 説 明 アスピリン 喘 息 と 診 断 されていても 患 者 への 説 明 が 不 十 分 であったり 医 療 関 係 者 の 理 解 不 足 から NSAIDs による 発 作 を 起 こしてしまう 症 例 がある 注 意 喚 起 のため 患 者 への 説 明 に 注 意 文 書 また 医 療 者 向 けに 患 者 カードを 用 いることも 有 用 と 考 える( 参 考 3) (2) 重 篤 な 喘 息 発 作 とアスピリン 喘 息 わが 国 における 喘 息 患 者 の 死 亡 総 数 は 1990 年 代 前 半 までは 年 間 約 6,000 人 程 度 で 推 移 していたが その 後 徐 々に 減 少 し 2004 年 には 3,283 人 ( 人 口 10 万 対 男 2.6, 女 2.6)にまで 減 少 した 日 本 アレルギー 学 会 会 員 を 対 象 にしたアンケート 調 査 によると 1998 年 か ら 2003 年 の 6 年 間 に 回 答 のあった 喘 息 死 399 症 例 の 原 因 としては 感 冒 を 含 む 気 道 感 染 症 が 最 も 多 く 次 いで 過 労 ストレスの 順 であった NSAIDs の 投 与 が 死 亡 の 原 因 とされるのは 4~5%( 死 亡 原 因 の 第 9 位 )である 13) 1986 年 から 1997 年 の 間 に 喘 息 発 作 で ICU を 受 診 した 265 症 例 のうち,34 症 例 (12.8%)が NSAIDs による 誘 発 であり 致 死 的 喘 息 発 作 として 人 工 呼 吸 管 理 を 受 けた 21 症 例 のうち 8 症 例 (38%)が NSAIDs によるものであった 18
と 報 告 されている 14) 突 発 的 な 重 症 喘 息 発 作 の 原 因 として NSAIDs があり 得 ることを 十 分 認 識 すべきである 8. 引 用 文 献 参 考 資 料 引 用 文 献 1) 榊 原 博 樹, 末 次 勸 :アスピリン 喘 息 呼 吸 12: 990-1001 (1993) 2) Cowburn AS, Sladek K, Soja J, et al. : Overexpression of leukotriene C4 synthase in bronchial biopsies from patients with aspirin-intolerant asthma. J Clin Invest. 101: 834-846 (1998) 3) Kowalski ML, Ptasinska A, Bienkiewicz B, et al. : Differential effects of aspirin and misoprostol on 15-hydroxyeicosatetraenoic acid generation by leukocytes from aspirin-sensitive asthmatic patients. J Allergy Clin Immunol. 112: 505-512 (2003) 4) Sanak M, Levy BD, Clish CB, et al. : Aspirin-tolerant asthmatics generate more lipoxins than aspirin-intolerant asthmatics. Eur Respir J 16: 44-49 (2000) 5) 榊 原 博 樹, 末 次 勸 : 気 管 支 喘 息 の 病 型 分 類 とアスピリン 喘 息 日 本 胸 疾 会 誌 33( 第 35 回 総 会 記 録 ):106-115 (1995) 6) 榊 原 博 樹 : 喘 息 の 特 殊 病 態 アスピリン 喘 息 日 本 内 科 学 会 雑 誌 85: 227-233 (1996) 7) Spector SL, Wangaard CH, Farr RS. : Aspirin and concomitant idiosyncrasies in adult asthmatic patients. J Allergy Clin Immunol. 64: 500-506 (1979) 8) Stevenson DD, Simon RA. : Lack of cross-reactivity between rofecoxib and aspirin in aspirin-sensitive patients with asthma. J Allergy Clin Immunol. 108: 47-5 (2001) 9) Gylfors P, Bochenek G, Overholt J, et al. : Biochemical and clinical evidence that aspirin-intolerant asthmatic subjects tolerate the cyclooxygenase 2-selective analgetic drug celecoxib. J Allergy Clin Immunol. 111: 1116-1121 (2003) 10) 鈴 木 真 砂 アスピリン 喘 息 の 背 景 因 子 に 関 する 臨 床 的 研 究 - 特 に 鼻 疾 患 を 中 心 として- 藤 田 学 園 医 学 会 誌 学 位 論 文 集 8: 149-185 (1989) 12) Taniguchi M, Sato A, Hayakawa H, et al. : Aspirin-induced asthmatics show cross-sensitivity to steroid succinate esters. Am Rev Respir Dis. 143: A30 (1991) 13) Dahlen SE, Malmstrom K, Nizankowska E, et al. : Improvement of aspirin-intolerant asthma by montelukast, a leukotriene antagonist. A randomized, double-blind, placebo-controlled trial. Am J Respir Crit Care Med. 165: 9-14 (2002) 14) Nakazawa T, Dobashi K. : Current asthma deaths among adults in Japan. Allergology International. 53: 205-209 (2004) 15) 浅 本 仁, 川 上 明, 佐 藤 晋, 佐 々 木 義 行 : 非 ステロイド 系 抗 炎 症 薬 による 致 死 的 喘 息 発 作 症 例 の 臨 床 的 検 討 アレルギー 48: 1230-1237 (1999) 参 考 資 料 19
1) 日 本 病 院 薬 剤 会 編 : 重 大 な 副 作 用 回 避 のための 服 薬 指 導 情 報 集 ( 第 1 集 ) 薬 事 時 報 社 136-138 (1997) 2) 独 立 行 政 法 人 医 薬 品 医 療 機 器 総 合 機 構 (PMDA) 医 薬 品 医 療 機 器 情 報 提 供 ホームページ (http://www.info.pmda.go.jp/) 20
参 考 1 薬 事 法 第 77 条 の4の2に 基 づく 副 作 用 報 告 件 数 ( 医 薬 品 別 ) 注 意 事 項 1) 薬 事 法 第 77 条 の4の2の 規 定 に 基 づき 報 告 があったもののうち 報 告 のあった 医 薬 品 ( 原 則 として 上 位 5 位 )を 列 記 したもの 注 ) 件 数 とは 症 例 数 ではなく 報 告 された 副 作 用 の 延 べ 数 を 集 計 したもの 例 えば 1 症 例 で 肝 障 害 及 び 肺 障 害 が 報 告 された 場 合 には 肝 障 害 1 件 肺 障 害 1 件 として 集 計 2) 薬 事 法 に 基 づく 副 作 用 報 告 は 医 薬 品 の 副 作 用 によるものと 疑 われる 症 例 を 報 告 するものであるが 医 薬 品 との 因 果 関 係 が 認 められないものや 情 報 不 足 等 により 評 価 できないものも 幅 広 く 報 告 されている 3) 報 告 件 数 の 順 位 については 各 医 薬 品 の 販 売 量 が 異 なること また 使 用 法 使 用 頻 度 併 用 医 薬 品 原 疾 患 合 併 症 等 が 症 例 により 異 なるため 単 純 に 比 較 できないことに 留 意 すること 4) 副 作 用 名 は 用 語 の 統 一 のため ICH 国 際 医 薬 用 語 集 日 本 語 版 (MedDRA/J)ver. 9.0 に 収 載 されてい る 用 語 (Preferred Term: 基 本 語 )で 表 示 している 年 度 副 作 用 名 医 薬 品 名 件 数 平 成 16 年 度 ( 平 成 17 年 7 月 集 計 ) 喘 息 ジクロフェナクナトリウム ロキソプロフェンナトリウム アスピリン その 他 4 2 2 105 鎮 痛 剤 喘 息 症 候 群 合 計 113 ロキソプロフェンナトリウム 1 ケトプロフェン 1 ジクロフェナクナトリウム 1 フルルビプロフェン 1 合 計 4 参 考 2 ICH 国 際 医 薬 用 語 集 日 本 語 版 (MedDRA/J)ver. 9.0 における 主 な 関 連 用 語 一 覧 日 米 EU 医 薬 品 規 制 調 和 国 際 会 議 (ICH)において 検 討 され 取 りまとめられた ICH 国 際 医 薬 用 語 集 (MedDRA) は 医 薬 品 規 制 等 に 使 用 される 医 学 用 語 ( 副 作 用 効 能 使 用 目 的 医 学 的 状 態 等 )につ いての 標 準 化 を 図 ることを 目 的 としたものであり 平 成 11 年 12 月 28 日 付 け 医 薬 安 第 164 号 医 薬 審 第 1843 号 厚 生 省 医 薬 安 全 局 安 全 対 策 課 長 審 査 管 理 課 長 通 知 ICH 国 際 医 薬 用 語 集 日 本 語 版 (MedDRA/J) の 使 用 について により 薬 事 法 に 基 づく 副 作 用 等 報 告 において その 使 用 を 推 奨 してい るところである 21
名 称 喘 息 PT: 基 本 語 (Preferred Term) 喘 息 LLT: 下 層 語 (Lowest Level Term) アレルギー 性 喘 息 喘 息 喘 息 増 悪 気 管 支 喘 息 外 因 性 喘 息 喘 息 発 作 喘 息 発 作 誘 発 気 管 支 喘 息 気 管 支 炎 様 喘 息 喘 息 性 気 管 支 炎 慢 性 閉 塞 性 喘 息 ( 閉 塞 性 肺 疾 患 を 伴 う) 喘 息 増 悪 外 因 性 喘 息 慢 性 喘 息 喘 息 様 状 態 薬 物 誘 発 性 喘 息 咳 喘 息 鎮 痛 剤 喘 息 症 候 群 PT: 基 本 語 (Preferred Term) 鎮 痛 剤 喘 息 症 候 群 LLT: 下 層 語 (Lowest Level Term) アスピリン 喘 息 アスピリン 感 受 性 喘 息 ウィダール 症 候 群 アスピリン 感 受 性 喘 息 鎮 痛 剤 喘 息 症 候 群 サムター 症 候 群 英 語 名 Asthma Allergic asthma Asthma Asthma aggravated Asthma bronchial Asthma extrinsic Asthmatic attack Asthmatic attack induced Br. asthma Bronchitic asthma Bronchitis asthmatic Chronic obstructive asthma (with obstructive pulmonary disease) Exacerbation of asthma Extrinsic asthma Asthma chronic Asthma-like condition Drug-induced asthma Cough variant asthma Analgesic asthma syndrome Aspirin asthma Aspirin-sensitive asthma Widal syndrome Asthma aspirin-sensitive Analgesic asthma syndrome Samter's syndrome 22
参 考 3 患 者 への 説 明 文 書 ( 専 門 病 院 における 具 体 的 事 例 ) 解 熱 鎮 痛 薬 に 過 敏 な 喘 息,いわゆる アスピリン 喘 息 と 診 断 された 患 者 様 へ あなたは 解 熱 鎮 痛 薬 に 過 敏 な 喘 息,いわゆる アスピリン 喘 息 ( 確 定, 疑 い)と 診 断 されています. あらゆる 種 類 (ピリン, 非 ピリンに 関 係 なく)の 解 熱 鎮 痛 薬 で 強 い 喘 息 発 作 を 起 こす 危 険 性 があり ます. 喘 息 発 作 が 起 こる 原 因 は 明 らかではありませんが,これらの 薬 がもつ 共 通 の 薬 理 作 用 によるものと 考 えられています.いわゆるピリンアレルギーとは 異 なります. 体 質 が 遺 伝 することはありません.. 最 も 気 をつけなければならないのは 自 己 判 断 で 薬 を 使 用 しないことです. 主 治 医 以 外 の 医 療 施 設 ( 内 科 だけでなく, 外 科, 整 形 外 科, 耳 鼻 科, 歯 科 などすべての 科 )を 受 診 したり, 一 般 薬 局 で 薬 を 購 入 する 際 には, 必 ず 別 にお 渡 しする アスピリン 喘 息 患 者 カード あるいは 診 療 を 担 当 される 方 々 へ 主 治 医 からのお 願 い を 提 示 して あなたがアスピリン 喘 息 であることを 告 げて 発 作 を 起 こす 危 険 のある 薬 の 投 与 を 避 けるようにしてもらってください 解 熱 鎮 痛 薬 は のみ 薬 だけではありません 坐 薬 や 貼 り 薬 塗 り 薬 注 射 薬 などの 剤 型 があり 発 作 の 原 因 や 症 状 の 悪 化 につながります これら 全 てを 使 用 しないようにしましょう 解 熱 鎮 痛 薬 以 外 の 薬 ( 例 えば 抗 生 物 質 胃 腸 薬 去 痰 薬 抗 ヒスタミン 薬 抗 アレルギー 薬 漢 方 薬 血 圧 の 薬 など)は 安 全 に 使 用 できます ただし 総 合 感 冒 薬 (かぜ 薬 )は 解 熱 鎮 痛 薬 を 含 んでお り 危 険 ですので 避 けて 下 さい この 体 質 は 残 念 ながら ほぼ 一 生 続 くことが 知 られています 喘 息 などの 症 状 が 良 くなっていても 解 熱 鎮 痛 薬 は 使 ってはいけません 香 辛 料 着 色 料 防 腐 剤 酸 化 防 止 剤 を 摂 ることで 病 状 が 悪 くなることがあるため 日 常 生 活 では 香 辛 料 の 多 い 食 品 や 保 存 の 効 く 加 工 食 品 着 色 の 強 い 食 品 はなるべくお 避 けください また 練 り 歯 磨 きや 化 粧 品 香 水 の 匂 いなどでも 発 作 がでたり 症 状 が 悪 化 することがあります 発 作 が 悪 化 した 時 の 我 慢 のしすぎは 禁 物 です また 自 己 判 断 での 薬 の 使 い 方 ( 特 に 気 管 支 拡 張 剤 の 吸 入 のしすぎ)も 危 険 な 発 作 につながります 喘 息 発 作 が 悪 化 したときは まず 主 治 医 から 行 うよ うに 指 導 されている 処 置 法 があれば 早 めに 行 いましょう 発 作 が 治 まりにくい 時 は 直 ぐに 医 療 施 設 を 受 診 して 適 切 な 処 置 を 受 けるようにしましょう 不 明 の 点 があれば 主 治 医 に 相 談 してよく 説 明 を 受 けるようにしましょう 発 行 日 : 年 月 日 主 治 医 名 : 施 設 名 : 診 療 科 : 住 所 : 電 話 : Fax : 23
アスピリン 喘 息 患 者 カード 診 療 を 担 当 される 方 々へ: 主 治 医 からのお 願 い このカードを 持 参 した 患 者 樣 は 解 熱 鎮 痛 薬 ( 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 :NSAID)に 過 敏 な 喘 息,いわゆる アスピリン 喘 息 ( 確 定 疑 い)です 患 者 樣 氏 名 : 生 年 月 日 : 年 月 日 住 所 : 診 察 券 番 号 : 緊 急 時 の 連 絡 先 ( 親 戚 など): あらゆる 解 熱 鎮 痛 薬 の 投 与 で 強 い 喘 息 発 作 が 生 じるため 解 熱 鎮 痛 薬 を 含 んだ 内 服 薬 坐 薬 注 射 薬 貼 付 薬 塗 布 薬 点 眼 薬 などは 全 て 禁 忌 です 総 合 感 冒 薬 も 危 険 です 解 熱 鎮 痛 薬 以 外 の 薬 ( 例 えば 抗 生 物 質 抗 菌 剤 去 痰 剤 気 管 支 拡 張 剤 胃 腸 薬 内 服 用 ステロイド ブスコパンなどの 鎮 痙 薬 降 圧 剤 など)は 一 般 の 喘 息 と 同 程 度 に 安 全 に 使 用 できます 発 作 時 には 裏 面 の 処 置 を 参 考 にして 下 さい アスピリン 喘 息 カード( 表 )( 専 門 病 院 における 具 体 的 事 例 ) アスピリン 喘 息 患 者 カード 診 療 を 担 当 される 方 々へ: 主 治 医 からのお 願 い 喘 息 発 作 で 受 診 された 場 合 は 以 下 の 処 置 を 目 安 に 治 療 をお 願 いします ただし 静 注 用 ステロイド 特 にコハク 酸 エステル 型 (ソルコーテフ サクシゾン 水 溶 性 プレドニン ソルメドロールな ど)を 使 用 される 場 合 は 急 速 静 注 で 発 作 が 憎 悪 しやすいため 点 滴 で 用 いるか 内 服 薬 で 対 処 し てください 軽 度 の 発 作 ( 息 苦 しいが 横 になれる) 吸 入 : 生 食 2ml+メプチン0.5ml,20 30 分 ごとに 反 復 下 記 点 滴 も 考 慮 中 等 度 以 上 の 発 作 ( 息 苦 しくて 横 になれない) 上 記 吸 入 と 酸 素 吸 入 点 滴 :ソリタT3 200ml+ネオフィリン1A+リンデロンあるいはデカドロン2 6mg エピネフリン 0.3mg 皮 下 注 あるいは 筋 注 を 考 慮 この 患 者 樣 についてご 不 明 の 点 がございましたら 下 記 にご 連 絡 下 さい 主 治 医 名 : 施 設 名 : 診 療 科 : 住 所 : 電 話 : ファックス: 発 行 日 : 年 月 日 アスピリン 喘 息 カード( 裏 ) ( 専 門 病 院 における 具 体 的 事 例 ) 24
医 療 施 設 への 説 明 文 書 ( 専 門 病 院 における 具 体 的 事 例 ) 診 療 を 担 当 される 方 々へ ー 主 治 医 からのお 願 いー この 用 紙 を 持 参 された 患 者 樣 は アスピリン 喘 息 です. この 用 紙 を 持 参 された 患 者 樣 は, 解 熱 鎮 痛 薬 ( 非 ステロイド 性 抗 炎 症 薬 :NSAIDs)に 過 敏 な 喘 息, いわゆる アスピリン 喘 息 ( 確 定, 疑 い)の 診 断 をうけています. 貴 施 設 を 受 診 された 際 はこの 用 紙 の 記 載 内 容 にご 留 意 くださるようお 願 いいたします. 患 者 樣 氏 名 : 生 年 月 日 : 年 月 日 住 所 : 電 話 : 診 察 券 の 番 号 : 緊 急 時 の 連 絡 先 ( 親 戚 など): 電 話 : ほとんどの NSAIDs で 強 い 喘 息 発 作 が 生 じるため,NSAIDs を 含 んだ 内 服 薬, 坐 薬, 注 射 薬, 貼 付 薬, 塗 布 薬, 点 眼 薬 などは 全 て 禁 忌 です.また 総 合 感 冒 薬 も 危 険 です. 他 にこの 方 は( )に 対 しても 過 敏 反 応 を 起 こします. 疼 痛 時 は 塩 基 性 鎮 痛 薬 ( 例 えば,ソランタール,ペントイル)やペンタゾシンは 比 較 的 安 全 に 使 用 できます. 発 熱 時 は 氷 冷 以 外 に 安 全 な 方 法 はありません. NSAIDs 以 外 の 薬 ( 例 えば 抗 生 物 質, 抗 菌 剤, 去 痰 剤, 気 管 支 拡 張 剤, 胃 腸 薬, 内 服 用 ステロイド, ブスコパンなどの 鎮 痙 薬, 降 圧 剤 など)は 一 般 の 喘 息 患 者 さんと 同 程 度 に 安 全 に 使 用 できます. 普 段 の 使 用 薬 : 合 併 症 : ピークフロー 最 良 値 : l/ 分 喘 息 発 作 時 の 対 処 喘 息 発 作 で 受 診 された 場 合 は 以 下 の 処 置 を 目 安 に 治 療 をお 願 いします.ただし 静 注 用 ステロイド, 特 にコハク 酸 エステル 型 (ソルコーテフ,サクシゾン, 水 溶 性 プレドニン,ソルメドロールなど) を 使 用 される 場 合 は, 急 速 静 注 で 発 作 が 憎 悪 しやすいため, 点 滴 で 用 いるか 内 服 薬 で 対 処 してくだ さい. (1) 軽 度 の 発 作 ( 息 苦 しいが 横 になれる.ピークフローが ): 吸 入 : 生 食 2ml+メプチン 0.5ml,20 30 分 ごとに 反 復 下 記 点 滴 も 考 慮 (2) 中 等 度 以 上 の 発 作 ( 息 苦 しくて 横 になれない.ピークフローが 以 下 ): 上 記 吸 入 と 酸 素 吸 入 点 滴 :ソリタ T3 200ml+ネオフィリン1A+リンデロンあるいはデカドロン2 6mg エピネフリン 0.3mg 皮 下 注 あるいは 筋 注 を 考 慮 この 患 者 さんについてご 不 明 の 点 がございましたら 下 記 にご 連 絡 下 さい. 発 行 日 : 年 月 日 主 治 医 名 : 施 設 名 : 診 療 科 : 住 所 : 電 話 : Fax: 25