地 域 中 小 企 業 集 積 創 造 的 発 展 支 援 促 進 事 業 58 環 境 対 応 革 ( 非 クロム 鞣 し 系 およびクロム 鞣 し 系 )の 製 品 化 研 究 安 藤 博 美, 松 本 誠, 礒 野 禎 三, 岸 部 正 行, 杉 本 太, 西 森 昭 人, 志 方 徹 中 国 を 中 心 とする 東 南 アジア 諸 国 からの 革 製 品 の 輸 入 が 非 常 に 増 加 している このような 状 況 に 対 応 するため 増 加 する 海 外 製 品 と 差 別 化 した 革 素 材 の 開 発 が 急 務 であ る さらに 国 内 市 場 ではカバン 袋 物 および 靴 等 の 軽 量 革 製 品 が 要 望 され ソフトで 軽 量 な 革 の 製 造 技 術 が 業 界 から 要 望 されている そこで 本 研 究 では 1 機 能 性 に 優 れた 軽 くてソフトな 革 の 開 発 と2エコレザーの 製 品 化 と 二 次 加 工 上 の 評 価 について 検 討 することを 目 的 とし た これらの 得 られた 結 果 をエコレザー 等 の 製 革 技 術 の 改 善 に 生 かすことにより 市 場 適 合 型 の 製 革 技 術 を 開 発 できる 2.1 ソフト 軽 量 革 の 開 発 2.1.1 脱 毛 処 理 条 件 の 検 討 北 米 産 塩 蔵 成 牛 皮 を 用 いて 表 1に 示 した4 種 類 の 条 件 で 石 灰 漬 脱 毛 処 理 を 行 った すなわち 一 般 的 に 皮 革 製 造 工 程 で 行 われている 処 方 ( 標 準 処 方 ) 硬 い 傾 向 が 強 い 処 方 (ハード 処 方 ) ソフト 傾 向 が 強 い 処 方 (ソフト 処 方 )および 軽 量 化 処 方 を 行 った いずれも 微 粒 子 状 石 灰 を 用 い 標 準 処 方 は 酵 素 を 用 いた ハード 処 方 は 水 硫 化 ナトリウムの 使 用 量 が 少 なく 酵 素 を 使 用 しなかった ソフト 処 方 は 微 粒 子 状 石 灰 と 酵 素 を 多 くし 軽 量 化 処 方 は 水 硫 化 ナトリウムを 少 なく 微 粒 子 状 石 灰 を 多 く 使 用 した 石 灰 裸 皮 の 分 割 厚 さは3.5mmであり 同 一 分 割 厚 さか ら 以 後 の 処 理 (クロム 鞣 し 再 鞣 し 染 色 加 脂 空 干 表 1 脱 毛 時 の 各 種 薬 品 の 使 用 量 の 比 較 標 準 ハード ソフト 軽 量 化 処 方 処 方 処 方 処 方 酵 素 0.3 0 0.5 0.3 硫 化 ナトリ 1.0 1.0 1.0 1.0 ウム 水 硫 化 ナト 1.5 1.0 1.5 1.0 リウム 微 粒 子 1.5 1.5 3.0 2.5 石 灰 ( 原 料 皮 に 対 する 割 合 を 百 分 率 (%)で 示 した) し 味 取 り バイブレーション トグル 張 り 乾 燥 )を 行 った 2.1.2 分 析 および 試 験 方 法 脱 毛 皮 中 の 全 灰 分 はJIS K6550に 準 じ 測 定 し 見 掛 け 比 重 は 試 験 片 の 表 面 積 と 厚 さ 質 量 から 計 算 で 求 めた 2.2 エコレザーの 製 品 化 2.2.1 クロム 革 および 非 クロム 系 エコレザーの 購 入 および 調 製 カバン 用 および 袋 物 用 のクロム 革 と 非 クロム 系 エコレ ザーは 市 販 品 を 購 入 した 婦 人 靴 用 のクロム 革 および 非 クロム 系 エコレザーは 当 センターにおいて 調 製 した 2.2.2 分 析 および 試 験 方 法 購 入 および 試 作 革 の 液 中 熱 収 縮 温 度 はJIS K6550に 準 じ 測 定 し 溶 出 クロムは 試 料 2gに 対 して 酸 性 汗 液 100ml を 加 え 1 時 間 抽 出 した 後 のクロム 量 をICP 装 置 で 分 析 した 遊 離 ホルムアルデヒドはJIS L 1041の6.3.1 b) B 法 2,4-ペンタンジオン(アセチルアセトン) 法 に 従 い 測 定 した 2.2.3 革 製 品 の 試 作 カバン 袋 物 および 婦 人 靴 は 専 門 業 者 に 委 託 して 加 工 を 行 った なお 各 専 門 業 者 から 加 工 上 の 問 題 点 につい て 聞 き 取 り 調 査 を 行 った 3.1 ソフト 軽 量 革 の 開 発 3.1.1 脱 毛 皮 中 の 全 灰 分 ソフト 軽 量 化 に 及 ぼす 脱 毛 条 件 について 検 討 した 皮 線 維 のほぐれ 程 度 を 比 較 するため 石 灰 裸 皮 の 分 割 前 の 皮 中 の 全 灰 分 の 測 定 結 果 を 図 1に 示 した その 結 果 一 夜 後 の 全 灰 分 は 標 準 処 方 ソフト 処 方 および 軽 量 化 処 方 に 多 く ハード 処 方 に 少 ない 傾 向 がみられた これは 硫 化 物 が 少 なく 酵 素 を 使 用 しないことにより 石 灰 の 浸 透 が 少 なく 皮 繊 維 のほぐれが 少 なくなったものと 考 え られた 3.1.2 試 作 革 の 試 験 結 果 軽 量 性 については 見 掛 け 比 重 の 測 定 を 行 った その 結 果 標 準 処 方 が0.63 ハード 処 方 が0.59 ソフト 処 方 が 0.61および 軽 量 化 処 方 が0.52であった 軽 量 化 処 方 が 革 の 軽 量 化 に 効 果 があり その 他 の 脱 毛 はほぼ 同 程 度 であ った - 83 -
全 灰 分 (%) 5.0 4.5 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 A B1B2B3 C1C2C3 D1D2D3 E1E2E3 図 1 全 灰 分 の 変 化 A: 水 戻 し 皮 B: 標 準 処 方 C:ハード 処 方 D:ソフト 処 方 E: 軽 量 化 処 方. 数 字 の1 2および3はそれぞれ 脱 毛 止 め 後 一 夜 後 脱 灰 後 を 示 す クロム 革 と 非 クロム 系 エコレザーとは 明 らかに 差 異 がみ られた なお 皮 工 支 試 作 の 革 は 非 クロム 系 エコレザー とクロム 革 の 差 は 少 なかった 3.2.2 製 品 化 例 婦 人 靴 袋 物 およびカバンの 試 作 結 果 を 写 真 1~3に 示 した 加 工 委 託 業 者 における 聞 き 取 り 調 査 の 結 果 婦 人 靴 のクロム 革 は 伸 びがあり 銀 面 の 色 がやや 薄 色 にな り エコレザーは 伸 びが 少 なく 製 品 革 の 色 は 変 わらな かった しかし 同 じ 仕 様 の 靴 について 製 靴 面 におい てクロム 革 と 非 クロム 系 エコレザーの 差 異 はみられなか った カバンおよび 袋 物 についても 同 じ 仕 様 の 革 製 品 について 加 工 上 の 差 異 は 見 られなかった 3.2 クロム 革 と 非 クロム 系 エコレザーを 用 いた 製 品 化 3.2.1 購 入 及 び 試 作 革 の 分 析 カバン 用 袋 物 用 クロム 革 と 非 クロム 系 エコレザーお よび 当 センターにおいて 試 作 した 婦 人 靴 用 クロム 革 と 非 クロム 系 エコレザーの 分 析 結 果 を 表 2に 示 した 写 真 1 試 作 した 婦 人 靴 写 真 2 試 作 した 袋 物 カバン 用 クロム 革 カバン 用 エコレザー 袋 物 用 クロム 革 袋 物 用 エコレザー 皮 工 支 クロム 革 皮 工 支 エコレザー 表 2 革 の 分 析 結 果 クロム 含 有 量 溶 出 クロム 遊 離 ホル ムアルデ 液 中 熱 収 縮 温 度 ヒド (%) (mg/kg) (mg/kg) ( ) 3.5 52 23 108 - - 90 79 3.8 39 22 110 - - 20 80 3.2 32 検 出 限 界 以 下 113-18 160 103 なお 表 中 のエコレザーは 非 クロム 系 である クロム 革 について クロム 含 有 量 は3.2~3.8%の 範 囲 であり 一 般 的 なクロム 含 有 量 である 溶 出 クロムではSGラベ ル*( 有 害 物 質 検 査 済 み) 基 準 をクリヤーしていた 遊 離 ホルムアルデヒドは 1 点 を 除 いて 成 人 用 のSGラベル 基 準 値 (150mg/kg)を 満 たしている 液 中 熱 収 縮 温 度 は *1995 年 1 月 に 第 三 者 機 関 のドイツ 靴 研 究 所 が2つの 専 門 機 と 協 同 で 行 った 革 および 靴 毛 皮 専 用 の 有 害 物 質 検 査 済 みラベル 写 真 3 試 作 したカバン 1) ソフト 軽 量 革 について 4 種 類 の 脱 毛 条 件 について 検 討 を 行 い 軽 量 化 処 方 による 脱 毛 が 製 品 革 の 軽 量 化 に 効 果 的 であった 2) エコレザーの 製 品 化 について カバン 袋 物 および 婦 人 靴 ともに 同 じ 仕 様 でクロム 革 および 非 クロム 系 エ コレザーを 用 いた 製 品 の 加 工 上 の 問 題 点 はみられなか った 以 上 の 結 果 をエコレザー 等 の 製 革 技 術 の 改 善 に 生 かす ことにより 市 場 適 合 型 の 製 革 技 術 を 開 発 するとともに 製 品 化 が 行 えた 1) 兵 庫 県 立 工 業 技 術 センター 研 究 報 告 書,13,53(2004) 2) 平 成 17 年 度 環 境 対 応 革 開 発 実 用 化 研 究 報 告 書, 日 本 皮 革 技 術 協 会,9(2006) ( 文 責 安 藤 博 美 ) ( 校 閲 中 川 和 治 ) - 84 -
技 術 改 善 研 究 59 耐 熱 性 の 良 いエコレザーの 開 発 礒 野 禎 三, 西 森 昭 人, 杉 本 太, 安 藤 博 美, 志 方 徹 人 と 環 境 に 優 しいエコレザーが 注 目 を 集 めている エ コレザーは Ecology と Leather を 合 成 した 言 葉 で Human Ecology(HE) Production Ecology(PE) Disposal Ecology(DE) の 3 要 素 から 成 っている 当 センターではエコレザーを HE = クロム 溶 出 と 遊 離 FA が 少 ない PE = クロム 排 出 量 が 少 ない DE = クロム 含 有 量 が 少 ない 革 と 考 え 製 造 技 術 の 開 発 を 行 ってきた エコレザーの 製 造 方 法 としては 様 々な 方 法 が 開 発 さ れているが クロム 鞣 剤 を 使 用 しないノンクロムのエコ レザーは 耐 熱 性 が 低 く 兵 庫 県 産 革 の 主 要 な 用 途 である 靴 用 には 向 いていない そこで クロム 鞣 剤 の 使 用 量 を 少 なくし クロム 鞣 剤 の 削 減 分 をホルムアルデヒド(FA) で 補 填 するコンビネーション 鞣 しによる 靴 用 エコレザー の 開 発 を 平 成 15 年 度 から 行 ってきた 1) 平 成 16 年 度 は クロム 鞣 剤 使 用 量 を3%とし FA の 使 用 量 が 鞣 しや 製 品 革 の 品 質 に 及 ぼす 影 響 について 検 討 した その 結 果 溶 出 クロム 量 は 通 常 のクロム 鞣 しより 削 減 でき FA8%と クロム 鞣 剤 3%を 使 用 してコンビネーション 鞣 しを 行 え ば 通 常 のクロム 鞣 剤 8%で 鞣 しを 行 った 革 とほぼ 同 等 の 品 質 の 革 が 得 られた 2) そこで 本 年 度 は より 溶 出 クロム 量 やクロム 排 出 量 を 少 なくするために FA の 使 用 量 を8%とし クロム 鞣 剤 の 使 用 量 が 鞣 しや 製 品 革 の 品 質 に 及 ぼす 影 響 について 検 討 を 行 った 原 皮 としては オランダ 産 キップ 皮 (16kg)を 用 い 常 法 による 水 漬 脱 毛 石 灰 漬 脱 灰 酵 解 及 び 浸 酸 を 行 ったものを 使 用 した 浸 酸 皮 は 背 線 を 中 心 に 左 右 に 分 割 した 一 方 の 背 を 常 法 によるクロム 鞣 し(クロム 鞣 剤 使 用 量 8%)を 行 い 対 照 革 とし 他 の 背 をコンビネー ション 鞣 し 実 験 に 供 した コンビネーション 鞣 しは 表 1 に 示 す 処 方 で 行 った FA の 使 用 量 は8%とし クロム 鞣 剤 使 用 量 を1,2, 3%とした 本 年 度 は より 鞣 しを 進 行 させるために 鞣 し 終 了 時 の 温 度 を 従 来 より7 高 い 42 とした また 1 実 験 当 り 半 裁 4 枚 ( 右 背 2 枚 左 背 2 枚 )の 皮 を 使 用 し た 鞣 し 後 1.3mm にシェービングし アクリル 系 樹 脂 鞣 剤 と 植 物 タンニンによる 再 鞣 し 染 色 加 脂 を 行 った 図 1にクロム 含 有 量 の 変 化 を 示 す クロム 含 有 量 はク ロム 鞣 剤 の 添 加 量 に 比 例 して 直 線 的 に 増 加 したが 2% 使 用 時 には 対 照 革 の 3.1~3.6%の 1/3 3% 使 用 時 で 1/2 であった 次 に 耐 熱 性 の 目 安 である 液 中 熱 収 縮 温 度 (Ts)の 変 化 を 図 2に 示 す 1% 使 用 時 に 97 2% 使 用 時 にはク 表 1 コンビネーション 鞣 し 工 程 工 程 % 薬 品 温 度 ( ) 処 理 時 間 浸 酸 80 水 (20 ) 20 7 塩 化 ナトリウム 10 分 間 ホルムアルデヒド 鞣 し 8 ホルムアルデヒド(1:10) 20 3 時 間 0.1 炭 酸 水 素 ナトリウム(1:20) 25 3 時 間 0.1 炭 酸 水 素 ナトリウム(1:20) 30 3 時 間 ph=3.4 35 OVN クロム 鞣 し 1,2,3 クロム 鞣 剤 38 3 時 間 0.2 炭 酸 水 素 ナトリウム(1:20) 42 3 時 間 30 分 毎 に 0.2% 追 加 ph 3.8 まで 42 3 時 間 OVN 42 30 分 間 排 浴 馬 掛 け シェービング - 85 -
クロム 含 有 量 (%) 2 1.5 1 0.5 0 0 1 2 3 クロム 鞣 剤 使 用 量 (%) 図 1 クロム 鞣 剤 使 用 量 がクロム 含 有 量 に 及 ぼす 影 響 Ts( ) 溶 出 クロム 量 (mg/kg) 120 110 100 90 80 70 60 50 0 1 2 3 クロム 鞣 剤 使 用 量 (%) 図 2 クロム 鞣 剤 使 用 量 が Ts に 及 ぼす 影 響 50 40 30 20 10 0 0 1 2 3 クロム 鞣 剤 使 用 量 (%) 図 3 クロム 鞣 剤 使 用 量 が 溶 出 クロム 量 に 及 ぼす 影 響 クロム 濃 度 (mg/l) 500 400 300 200 100 0 0 1 2 3 クロム 鞣 剤 使 用 量 (%) 図 4 クロム 鞣 剤 使 用 量 が 排 水 中 のクロム 濃 度 に 及 ぼす 影 響 ロム 鞣 しの 最 低 の 目 安 である 100 を 超 える 106 とな り 3% 使 用 時 には 通 常 のクロム 鞣 革 に 近 い 108 と なった 靴 用 革 の 規 格 である JIS K 6551 では クロム 鞣 し 革 の 鞣 しの 程 度 をクロム 含 有 量 で 規 定 し 通 常 の 甲 革 では 2.5% 以 上 特 に 耐 熱 性 を 要 するものでは 3.0% 以 上 を 要 求 している 本 コンビネーション 鞣 し 法 では クロム 鞣 剤 を2% 使 用 するとクロム 含 有 量 は 1.1%であるが 通 常 の 甲 革 に 要 求 される 耐 熱 性 が 得 られた また 特 に 耐 熱 性 が 要 求 される 場 合 においてもクロム 鞣 剤 3%を 使 用 すれば クロム 含 有 量 は 1.6%であるが 要 求 される 耐 熱 性 が 得 られると 考 えられる 次 に 溶 出 クロム 量 の 変 化 を 図 3に 示 すが 2% 使 用 時 には 18mg/kg 3% 使 用 時 でも 対 照 革 の 40~50mg/kg の 1/2 以 下 である 21mg/kg であった 排 水 中 のクロム 濃 度 を 図 4に 示 すが 対 照 革 の 2500 ~4000mg/L より 大 きく 改 善 されていることがわかる 通 常 クロム 鞣 し 排 液 は 他 の 工 程 の 排 水 で 50 倍 程 度 に 希 釈 されるとされており クロム 鞣 剤 2% 使 用 時 の 76mg/L は 50 倍 希 釈 で 1.5mg/L となり 水 質 汚 濁 防 止 法 の 排 水 基 準 を 満 足 できると 考 えられた 4 名 の 専 門 家 による 官 能 検 査 を 行 った 結 果 クロム 鞣 剤 を3% 使 用 した 革 は 昨 年 度 と 同 じく 通 常 のクロム 鞣 し 革 とほぼ 同 等 の 評 価 が 得 られた 1% 使 用 した 革 は 明 らかに 通 常 のクロム 革 とは 異 なっていた 2% 使 用 し た 革 は 充 実 性 に 問 題 はあるが 再 鞣 しの 処 方 等 を 少 し 検 討 すれば 実 用 化 が 可 能 であるとの 評 価 が 得 られた クロム 鞣 剤 と FA を 併 用 したコンビネーション 鞣 しに ついて クロム 鞣 剤 使 用 量 の 影 響 を 検 討 した 結 果 1. Ts は クロム 鞣 剤 を 2% 以 上 使 用 すれば 甲 革 に 必 要 な 100 を 超 える 106 となった 2. 溶 出 クロム 量 は 大 きく 削 減 することができた 3. 遊 離 FA は 成 人 用 の 規 制 値 である 75mg/kg 以 下 で あった 4. 鞣 し 排 水 中 のクロム 濃 度 も 大 きく 削 減 でき 2% 以 下 では 排 水 規 制 値 の 2mg/L を 満 足 できると 考 えら れた 5. クロム 鞣 剤 を 2% 以 上 使 用 すると 通 常 のクロム 革 に 近 い 風 合 いが 得 られ 本 コンビネーション 鞣 し 技 術 は 実 用 化 が 可 能 であると 考 えられた 1) 礒 野 禎 三, 杉 本 太, 中 川 和 治, 奥 村 城 次 郎, 兵 庫 県 立 工 業 技 術 センター 研 究 報 告 書,13,120(2004) 2) 礒 野 禎 三, 杉 本 太, 奥 村 城 次 郎, 志 方 徹, 兵 庫 県 立 工 業 技 術 センター 研 究 報 告 書,14,100(2005) ( 文 責 礒 野 禎 三 ) ( 校 閲 安 藤 博 美 ) - 86 -
技 術 改 善 研 究 繊 維 性 高 分 子 の 材 料 化 技 術 に 関 する 研 究 60 回 収 牛 毛 ケラチン 由 来 の 生 分 解 性 紫 外 線 カットフィルム 製 造 技 術 の 開 発 松 本 誠, 杉 本 太, 中 川 和 治 皮 革 製 造 における 排 水 処 理 コストは 高 く 特 に 皮 革 汚 泥 の 処 理 コストが 高 いため 汚 泥 量 の 削 減 が 要 望 され ている 牛 毛 の 回 収 もその 有 力 な 手 段 の 一 つであり 回 収 した 牛 毛 の 利 用 方 法 の 開 発 が 期 待 されている 我 々は 回 収 した 牛 毛 を 有 効 利 用 すべく 農 業 用 や 建 材 用 の 生 分 解 性 紫 外 線 カットフィルムの 製 造 を 検 討 してきた 1) し かし 従 来 法 はNaOHによる 処 理 で 低 分 子 化 するため 作 製 したケラチンフィルムの 機 械 的 強 度 等 が 劣 り 高 分 子 量 の 可 溶 化 ケラチンを 得 ることが 課 題 であった そこで 牛 毛 を 可 溶 化 する 際 にバッチ 式 高 温 高 圧 水 処 理 を 行 うことによって 高 分 子 量 の 可 溶 化 ケラチンを 得 る 技 術 について 検 討 した 2) その 結 果 水 のみを 溶 媒 とする 可 溶 化 条 件 ( 処 理 温 度 保 持 時 間 )と 牛 毛 からの 可 溶 化 ケラチンの 分 子 量 分 布 との 関 係 について 明 らかに した しかし 溶 解 率 が 低 く 高 分 子 量 の 可 溶 化 ケラチ ンが 少 なかった そこで 今 年 度 は 溶 解 率 を 改 善 し 高 分 子 量 の 可 溶 化 ケラチンを 得 ることを 目 的 とした シナーゼ チトクロ-ム C アプロチニン グリシン を 用 いた また 比 較 のために 前 報 1) と 同 じアルカリ 処 理 で 得 られた 溶 解 物 の 測 定 も 行 った カラムはファルマ シア 製 のセファデックス HR75を 用 い 0.2Mリン 酸 ナ トリウム 溶 液 (ph6.8)を 溶 離 液 とし 流 量 は0.75ml/min であった 検 出 には 紫 外 線 吸 光 度 検 出 器 (210nm)を 用 い た 3.1 牛 毛 の 溶 解 率 に 及 ぼす 尿 素 の 影 響 尿 素 添 加 量 と 溶 解 率 の 関 係 を 図 1に 示 す 尿 素 を 添 加 するほど 溶 解 率 が 高 くなるが 添 加 量 を100mg 以 上 で は 溶 解 率 が 約 71%となり これ 以 上 添 加 量 が 増 加 して も 溶 解 率 は 上 昇 しなかった 2.1 牛 毛 試 料 の 調 製 3) バーバー 法 で 牛 毛 を 回 収 した 回 収 した 牛 毛 は 水 洗 し 脱 脂 後 粉 砕 して 用 いた 2.2 牛 毛 の 高 温 高 圧 水 処 理 ブールドン 管 式 圧 力 計 安 全 弁 バルブを 装 備 したス テンレススチール 製 の 反 応 容 器 ( 内 容 積 50cm 3, 耐 圧 45MPa, 耐 熱 温 度 450 )に2.1で 回 収 した 牛 毛 0.25g 蒸 留 水 20ml 尿 素 あるいはアンモニアを 所 定 量 加 え 容 器 ごと 600 の 電 気 炉 に 挿 入 した 175 に 到 達 後 30 分 間 保 持 その 後 すぐ 反 応 容 器 を 電 気 炉 から 取 り 出 して 水 冷 し 室 温 に 戻 した 高 温 高 圧 水 処 理 で 得 られた 反 応 液 をろ 過 し ろ 液 からの 乾 燥 物 の 重 量 を 測 定 した 牛 毛 の 重 量 に 対 する 乾 燥 物 の 重 量 比 から 溶 解 率 を 求 め た 2.3 反 応 液 のpH 測 定 phメータ F-11( 堀 場 製 作 所 製 )を 用 いて ph 測 定 を 行 った 2.4 反 応 液 の 分 子 量 分 布 測 定 ゲル 浸 透 クロマトグラフ(GPC)により 高 温 高 圧 水 処 理 で 得 られた 反 応 液 中 に 溶 解 している 成 分 の 分 子 量 分 布 を 推 定 した 分 子 量 標 準 物 質 にはエノラーゼ ミオキ 図 1 溶 解 率 に 及 ぼす 尿 素 添 加 量 の 影 響 尿 素 添 加 量 とpHの 関 係 を 図 2に 示 す 高 温 高 圧 水 処 理 を 行 う 前 のpHは6~7とほぼ 中 性 であった しかし 処 理 後 のpHは8 以 上 とアルカリ 性 になり 尿 素 添 加 量 が 増 加 するほど phは 高 くなったが 100mg 以 上 添 加 しても phは 上 昇 しなくなった これは 高 温 高 圧 水 処 理 を 行 うことによって 尿 素 が98% 以 上 分 解 して アミ ン 類 などのアルカリ 性 物 質 に 変 化 したことによるものと 考 えられた 100mg 以 上 添 加 してもpHが 上 昇 しなくな ったのは 高 温 高 圧 水 処 理 によって 牛 毛 の 主 成 分 であ るケラチンが 分 解 され 反 応 液 中 に 溶 出 している 可 溶 化 ケラチンが 両 性 電 解 質 として 働 き phの 上 昇 を 妨 げて いることによるものと 考 えられた 牛 毛 に 含 まれるメラニンは アルカリ 性 で 溶 出 する 尿 素 を 添 加 した 場 合 未 添 加 で 処 理 して 得 られる 茶 褐 色 の 反 応 液 よりも 色 が 濃 くなっている 従 って これは 牛 毛 に 含 まれるメラニンがアルカリ 性 の 反 応 液 中 により 多 く 溶 出 していることによるものだと 考 えられた - 87 -
図 2 phに 及 ぼす 尿 素 添 加 量 の 影 響 図 4 phに 及 ぼすアンモニア 添 加 量 の 影 響 3.2 牛 毛 の 溶 解 率 に 及 ぼすアンモニアの 影 響 アンモニア 添 加 量 と 溶 解 率 の 関 係 を 図 3に 示 す アン モニアを 添 加 するほど 溶 解 率 が 高 くなり 添 加 量 25mg で 溶 解 率 は78%になった しかし それ 以 上 添 加 量 を 増 加 しても 溶 解 率 は 上 昇 しなかった 尿 素 あるいはアンモニアを 添 加 した 場 合 未 添 加 での 処 理 やアルカリ 処 理 よりも 高 分 子 量 の 成 分 を 多 く 得 るこ とができた これは 未 添 加 で 処 理 すると 主 に 毛 髄 質 が 分 解 され 毛 表 皮 や 毛 皮 質 が 分 解 されず 残 っていること から 高 分 子 量 と 考 えられる 毛 表 皮 や 毛 皮 質 が 十 分 に 可 溶 化 されていないことによるものと 考 えられた アルカ リ 処 理 では 毛 表 皮 や 毛 皮 質 が 分 解 されるが 高 分 子 量 成 分 がさらに 分 解 されるため その 収 率 の 低 下 を 招 いたと 考 えられた 図 3 溶 解 率 に 及 ぼすアンモニア 添 加 量 の 影 響 アンモニア 添 加 量 とpHの 関 係 を 図 4に 示 す 高 温 高 圧 水 処 理 を 行 う 前 のpHは 約 12であるが 処 理 後 のpH は 約 10になった アンモニア 添 加 量 を 増 やしても ph はあまり 変 化 しなかった これは 尿 素 で 処 理 した 時 と 同 様 に 高 温 高 圧 水 処 理 によって 牛 毛 が 分 解 され 反 応 液 中 に 溶 出 していた 可 溶 化 ケラチンが 両 性 電 解 質 であり phの 上 昇 を 妨 げていることによるものと 考 えられた アンモニアで 処 理 した 場 合 尿 素 で 処 理 した 時 よりも 茶 褐 色 の 反 応 液 は 濃 くなってくる これは 尿 素 で 処 理 し たときよりも phが 高 いためメラニンがより 多 く 溶 け 出 していることによるものだと 考 えられた 3.3 各 処 理 条 件 における 高 分 子 量 画 分 の 収 率 GPC で 測 定 して 分 子 量 6 万 以 上 に 相 当 すると 思 われ る 画 分 を 高 分 子 量 画 分 とし 下 記 の 式 により 高 分 子 量 画 分 の 収 率 を 求 めた 各 処 理 条 件 における 高 分 子 量 画 分 の 収 率 を 図 5に 示 す 未 添 加 で 処 理 した 場 合 分 子 量 は 6 万 以 下 であった 高 分 子 量 画 分 の 収 率 (%) = 溶 解 率 (%) 高 分 子 量 画 分 の 割 合 (%)/100 図 5 各 処 理 条 件 における 高 分 子 量 画 分 (6 万 以 上 )の 収 率 尿 素 もしくはアンモニアを 添 加 することによって 溶 解 率 と 高 分 子 量 成 分 の 収 率 を 改 善 することができた こ の 処 理 方 法 で 得 た 高 分 子 量 の 可 溶 化 ケラチンを 用 いてフ ィルム 強 度 のさらなる 改 善 を 図 る 予 定 である 1) 松 本 誠, 西 森 昭 人, 杉 本 太, 奥 村 城 次 郎, 中 川 和 治, 皮 革 科 学,51(2),78 (2005). 2) 松 本 誠, 杉 本 太, 中 川 和 治, 毛 利 信 幸, 兵 庫 県 立 工 業 技 術 センター 研 究 報 告 ( 平 成 17 年 版 ),14 48 (2005). 3) 中 川 和 治, 松 本 誠, 角 田 和 成, 皮 革 科 学,47(4), 242 (2002). ( 文 責 松 本 誠 ) ( 校 閲 安 藤 博 美 ) - 88 -
経 常 研 究 61 動 的 粘 弾 性 法 によるエコレザーの 耐 久 性 評 価 技 術 の 開 発 岸 部 正 行, 礒 野 禎 三 近 年 地 球 環 境 に 優 しい 商 品 に 関 心 が 高 まっており 皮 革 工 業 においてもクロム 鞣 し 革 から 非 クロム 鞣 し 革 (エコレザー)へと 生 産 の 力 点 が 移 行 しつつある しか し 現 在 開 発 されているエコレザーはクロム 鞣 し 革 と 比 較 して 物 性 面 特 に 耐 熱 性 や 耐 老 化 性 等 の 耐 久 性 において 劣 っており クロム 革 に 取 って 代 るまでに 至 っていない のが 現 状 である そこで 耐 久 性 に 優 れたエコレザーの 開 発 を 支 援 するため 皮 革 の 物 性 と 鞣 製 条 件 との 関 連 を 系 統 的 に 研 究 する 手 法 が 必 要 となった その 研 究 法 とし て 繰 返 し 加 えた 微 小 歪 と 応 力 の 関 係 を 少 数 試 料 で 経 時 的 に 測 定 する 計 測 法 が 有 効 であることを 見 出 し 動 的 粘 弾 性 法 による 耐 久 性 評 価 技 術 の 構 築 を 図 った 2.1 試 料 革 試 料 革 は 鞣 剤 としてクロム 鞣 剤 単 独 クロム 鞣 剤 とホ ルムアルデヒド 系 鞣 剤 との 併 用 植 物 タンニンと 合 成 鞣 鞣 剤 を 併 用 して それぞれクロム 革 (5 試 料 ) セミク ロム 革 (5 試 料 ) 非 クロム 革 (4 試 料 )を 調 製 した 2.2 動 的 粘 弾 性 測 定 動 的 粘 弾 性 測 定 は 固 体 粘 弾 性 測 定 装 置 (レオロジ 社 製 DEV Ⅳ 型 )を 用 いて 測 定 モード: 圧 縮 測 定 温 度 範 囲 :-100~200 周 波 数 :100Hz 動 的 歪 :2μmの 条 件 で 貯 蔵 圧 縮 弾 性 率 (E ) 損 失 圧 縮 弾 性 率 (E ) 及 び 力 学 的 損 失 (Tanδ)を 測 定 した 2.3 ジャングルテスト 試 料 革 のJIS 部 位 (30 30cm)から 採 取 した10 本 の 試 料 片 からランダムサンプリングして2 組 に 分 けた 1 組 (5 本 )をコントロール 試 料 とし 残 りの1 組 (5 本 ) をジャングルテスト( 温 度 50 相 対 湿 度 95% 48hr) 用 試 料 とした コントロール 試 料 及 びジャングルテスト を 受 けた 試 料 に 対 して 動 的 粘 弾 性 測 定 及 び 引 張 強 さ 測 定 (JIS K 6550)を 行 った 3.1 ジャングルテスト 前 後 における 引 張 強 さの 変 動 ジャングルテストとしては 比 較 的 緩 やかな 条 件 下 であ るが テストを 受 けた 革 の 引 張 強 さ(TS)はクロム 革 セミクロム 革 そして 非 クロム 革 によらずテスト 前 に 比 べ て 大 きく 低 下 するのが 観 察 された TSの 低 下 率 (ΔTS)は 6~22%であった 一 方 テスト 前 後 においてE E そ してTanδの 動 的 粘 弾 性 指 標 も 大 きく 変 動 していること が 分 った(logΔE :0.1~1.0) 測 定 した14 試 料 のE はテスト 後 程 度 の 差 はあるがほ とんどの 場 合 低 下 するのが 観 察 された( 図 1) ジャング ルテスト 後 に 起 きるE の 低 下 は 熱 水 蒸 気 の 作 用 による 皮 コラーゲン 線 維 の 切 断 線 維 間 及 び 線 維 内 の 架 橋 の 崩 壊 及 びコラーゲン 線 維 束 径 の 低 下 等 に 起 因 すると 考 えられ る ジャングルテスト 前 後 におけるΔTSとΔE ΔE 及 びΔTanδとの 相 関 を 温 度 範 囲 -100~200 に 渡 って 調 べ た その 結 果 ΔTSはΔE と 高 い 相 関 を 示 すが ΔE 及 び ΔTanδとの 相 関 は 高 くないことが 分 った ΔTSとΔE との 相 関 は 測 定 温 度 範 囲 20~50 におけるΔE の 値 と 高 く 相 関 することが 分 った loge' 9 8 7 6 5 ジャングルテスト 前 ジャングルテスト 後 -100-50 0 50 100 150 200 温 度 ( ) 図 1 非 クロ ム 革 の 貯 蔵 弾 性 率 の 温 度 分 散 クロム 鞣 し セミクロム 鞣 し 及 び 非 クロム 鞣 し 等 の 鞣 製 法 の 違 いがジャングルテストに 及 ぼす 影 響 を 調 べた その 結 果 クロム 鞣 革 については 大 きくΔE が 変 動 して もΔTSは 余 り 変 らないが 非 クロム 革 及 びセミクロム 革 については 僅 かなΔE の 変 動 によってΔTSが 変 化 するこ とを 認 めた 1.ジャングルテスト 前 後 の 革 について 行 った 引 張 強 さ 測 定 及 び 動 的 粘 弾 性 測 定 からΔTSとΔE との 間 に 高 い 相 関 があることを 認 めた 2.ΔTSとΔE との 間 の 相 関 は 鞣 製 法 の 違 いによって 著 しく 異 なることが 分 った 3.ΔE を 小 さくする 鞣 し 条 件 を 検 索 することによって 耐 久 性 に 優 れたエコレザーの 開 発 が 期 待 できる ( 文 責 岸 部 正 行 ) ( 校 閲 中 川 和 治 ) - 89 -
経 常 研 究 62 鞣 し 工 程 におけるクリーン 技 術 開 発 (3) 杉 本 太, 西 森 昭 人 鞣 し 後 の 未 固 着 のクロムを 分 離 回 収 することを 目 的 と して これまでにカゼインを 泡 沫 剤 に 用 いた 泡 沫 分 離 処 理 により クロム 単 独 溶 液 を 分 離 回 収 できることを 明 ら かにした 1) また クロムを 含 む 試 水 に 塩 化 ナトリウム を 共 存 させ 4g/Lカゼイン 溶 液 1mLを 加 えてクロムのフ ロックを 生 成 させた 後 エタノール1mLを 試 水 に 加 えて 泡 沫 分 離 処 理 を 行 うと 100g/Lの 塩 化 ナトリウムの 濃 度 においてもクロムの 泡 沫 除 去 に 影 響 を 及 ぼさないことも 報 告 した 1) 本 報 では 塩 化 ナトリウム 以 外 の 共 存 塩 の 影 響 や 鞣 し 排 液 を 用 いた 泡 沫 処 理 によるクロムの 分 離 効 果 の 向 上 を 目 標 とした 泡 沫 分 離 処 理 装 置 を 図 1に 示 す 泡 沫 流 量 計 P エアーポンプ リアクター 図 1 泡 沫 分 離 処 理 装 置 3.1 クロムの 泡 沫 分 離 に 及 ぼす 共 存 塩 の 影 響 クロム(100mg/L)を 含 む 試 水 に 共 存 塩 (カルシウム 塩, マグネシウム 塩, 炭 酸 塩, 炭 酸 水 素 塩, 硫 酸 塩 )を 単 独 に 加 えて 4g/Lカゼイン 溶 液 1mLの 下 で 泡 沫 処 理 を 行 った その 結 果 カルシウム 塩 3.8g/L,マグネシウム 塩 100mg/L, 炭 酸 塩 50mg/L, 炭 酸 水 素 塩 100mg/L 以 下 の 濃 度 で ほぼ100%のクロム 除 去 率 が 得 られた 硫 酸 塩 の 場 合 は 50g/Lの 添 加 においてもクロムの 泡 沫 除 去 に 影 響 を 及 ぼ さなかった なお 炭 酸 塩 や 炭 酸 水 素 塩 については 試 水 を40 3 時 間 の 前 処 理 を 行 えば クロム 除 去 率 は 共 存 塩 の 添 加 濃 度 が50g/Lの 場 合 でも ほぼ 完 全 にクロム が 除 去 できることがわかった 3.2 クロムの 泡 沫 分 離 に 及 ぼすpHの 影 響 クロムを 含 む 試 水 のpHを3~12に 調 節 し 4g/Lカゼイ ン 溶 液 1mLの 下 で 泡 沫 処 理 を 行 い クロムの 泡 沫 分 離 に 及 ぼすpHの 影 響 を 調 べた その 結 果 ph7~10の 範 囲 で 99% 以 上 のクロム 除 去 率 が 得 られ このpH 範 囲 でクロム は 分 離 除 去 できることがわかった そこで ph 制 御 のし 易 さも 考 慮 してpHを9とした 3.3 クロム 鞣 し 排 液 中 のクロムの 泡 沫 分 離 処 理 クロム 濃 度 2230mgCr/Lの 鞣 し 排 液 を50あるいは75mL 取 り phを9に 調 節 してクロムのフロックを 生 成 させる カゼイン 溶 液 を 所 定 量 添 加 した 後 エタノール1mLを 加 え 水 で 全 量 を200mLとして 泡 沫 処 理 を 行 った 結 果 を 表 1に 示 す 50mLの 試 料 量 においては カゼイ ン 溶 液 を5または10mL 添 加 すると 92% 以 上 のクロムが 除 去 できた 75mLの 試 料 量 においては 添 加 するカゼイン 量 を 増 加 させることでクロム 除 去 率 は 増 加 したが 50mL の 試 料 量 の 場 合 と 同 様 に カゼインの 添 加 量 の 増 加 と 共 に 泡 沫 率 も 上 昇 するため 残 液 量 は 減 少 する したがっ て 実 排 液 中 のクロム 濃 度 に 応 じてカゼインを 添 加 する には 生 成 するカゼインの 泡 沫 量 により 制 約 があるもの の 本 報 の 泡 沫 分 離 処 理 は500mg/L 程 度 のクロム 濃 度 で 分 離 除 去 できるものと 考 えられる 表 1 鞣 し 排 液 の 泡 沫 分 離 処 理 結 果 鞣 し 排 液,mL 50 50 75 75 75 4g/Lカセ イン 溶 液,mL 5 10 5 10 20 処 理 液 のCr,mg/L 43.8 5.6 222 147 58.8 クロム 除 去 率,% 92.2 99.0 73.5 82.4 93.0 泡 沫 率, % 64 79 83 80 80 1) カルシウム 塩 3.8g/L,マグネシウム 塩 100mg/L, 炭 酸 塩 50mg/L, 炭 酸 水 素 塩 100mg/L 以 下 の 試 料 への 共 存 で ほぼ 完 全 にクロムは 除 去 できた 一 方 硫 酸 塩 は 50g/Lの 添 加 においてもクロムの 泡 沫 除 去 に 影 響 を 及 ぼさなかった 2) クロム 鞣 し 排 液 の 泡 沫 処 理 によるクロム 除 去 能 を 調 べた 結 果 500mg/L 程 度 のクロムを 含 む 試 料 におい ても 泡 沫 除 去 できることがわかった 1) 杉 本 太, 兵 庫 県 立 工 業 技 術 センター 研 究 報 告 ( 平 成 17 年 版 ),14,101(2005). ( 文 責 杉 本 太 ) ( 校 閲 中 川 和 治 ) - 90 -
経 常 研 究 63 乾 燥 状 態 における 皮 革 の 耐 熱 性 の 評 価 方 法 の 開 発 西 森 昭 人, 礒 野 禎 三 皮 革 の 耐 熱 性 評 価 は 主 に JIS K 6550 の 液 中 熱 収 縮 温 度 (Ts) により 行 われている この 方 法 では 革 を 24 時 間 以 上 純 水 中 に 静 置 し 充 分 に 水 に 馴 染 ませた 後 に 水 中 で 加 熱 して 収 縮 開 始 温 度 を 測 定 している しかし 実 際 の 製 品 製 造 工 程 下 ではそのような 場 合 は 希 である そこ で 我 々は 皮 革 の 実 際 の 製 靴 条 件 での 耐 熱 性 を 評 価 す るのに 適 した 方 法 を 検 討 している 昨 年 の 研 究 報 告 1) で は 液 中 熱 収 縮 温 度 DSC による 熱 分 析 加 熱 水 蒸 気 お よび 乾 燥 空 気 による 熱 処 理 における 革 の 変 形 について 調 べ 乾 燥 状 態 と 湿 潤 状 態 では 変 形 への 耐 熱 性 に 大 きな 違 いがあることが 分 かった 今 回 は 乾 燥 雰 囲 気 中 での 熱 処 理 が 革 の 硬 さや 引 張 強 さ 等 の 物 性 に 及 ぼす 影 響 につい て 比 較 検 討 を 行 った 硬 さや 引 張 強 さなどの 物 性 は 革 製 品 の 製 造 工 程 に 関 係 する 重 要 な 因 子 である また 革 の 熱 重 量 分 析 の 結 果 も 併 せて 報 告 する 2.1 試 料 実 験 には クロム 鞣 剤 3%とホルムアルデヒド2%を 用 いてコンビネーション 鞣 しを 行 った 革 ( 以 下 革 C Ts=100 )と その 参 照 としてクロム 鞣 剤 8%を 用 いて 通 常 の 方 法 で 鞣 した 革 ( 以 下 革 R Ts=114 )を 使 用 し た それぞれ JIS K 6550 に 従 って 20 65%RH で 48 時 間 以 上 静 置 した 後 に 以 下 の 測 定 を 行 った 2.2 測 定 2.2.1 硬 さ 変 化 高 温 処 理 用 の 恒 温 装 置 で 試 験 片 を 100 および 150 の 乾 燥 雰 囲 気 でそれぞれ 10 分 間 処 理 し その 前 後 での 銀 面 の 硬 さをスプリング 式 硬 さ 試 験 機 (Durometer Hardness Type A: 図 1)を 用 いて 測 定 した 2.2.2 引 張 試 験 硬 さ 変 化 を 測 定 した 試 料 に ついて 引 張 試 験 を 行 った 図 1 硬 さ 試 験 機 2.2.3 熱 重 量 分 析 室 温 から 300 の 温 度 領 域 で 毎 分 10 の 加 熱 速 度 で 重 量 減 少 を 測 定 した 3.1 硬 さ 変 化 熱 処 理 による 硬 さの 変 化 を 表 1に 示 す 表 1 熱 処 理 による 硬 さの 変 化 硬 さ 処 理 温 度 未 処 理 100 150 革 C 62 66 67 革 R 54 60 65 革 C では 100 を 超 えた 温 度 では 硬 さの 変 化 がほぼ 終 了 していることが 分 かった 革 R は 100 を 超 えても 更 に 変 化 しており Ts の 結 果 と 対 応 している 3.2 引 張 試 験 熱 処 理 による 引 張 強 さの 変 化 を 表 2に 示 す 引 張 強 さ の 変 化 に 大 きな 差 は 見 られなかった 表 2 熱 処 理 による 引 張 強 さの 変 化 引 張 強 さ(MPa) 処 理 温 度 未 処 理 100 150 革 C 19 20 23 革 R 18 17 22 3.3 熱 重 量 分 析 両 方 の 試 料 ともに 78 にピークのある 吸 熱 が 観 測 さ れた また 室 温 から 100 付 近 までの 重 量 減 少 と 170 を 超 えてからのなだらかな 重 量 減 少 が 見 られ 革 C と R との 間 に 差 違 はほとんど 見 られなかった 引 張 試 験 や 熱 重 量 分 析 では2つの 革 の 熱 処 理 による 物 性 変 化 に 大 差 は 無 かった しかし 簡 便 に 測 定 することの できる 硬 さの 変 化 には その 測 定 結 果 に 違 いが 見 られ 革 の 耐 熱 性 を 評 価 する 際 に 使 える 可 能 性 がある 今 後 は 革 の 種 類 と 試 験 点 数 を 更 に 増 やしてデータを 蓄 積 し 検 討 を 進 める 必 要 がある 1) 西 森 昭 人, 礒 野 禎 三, 兵 庫 県 立 工 業 技 術 センター 研 究 報 告,14,102,(2005) ( 文 責 西 森 昭 人 )( 校 閲 礒 野 禎 三 ) - 91 -