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Transcription:

日 刊 建 設 産 業 新 聞 : 平 成 8 年 5 月 5 日 掲 載 次 世 代 の 耐 震 設 計 法 : 地 震 リスクを 考 える 武 蔵 工 業 大 学 教 授 吉 川 弘 道 篠 塚 研 究 所 主 席 研 究 員 中 村 孝 明 リスク とは 将 来 における 不 確 かな 損 失 あるいは 不 利 益 と 定 義 できる これを 定 量 的 に 記 述 すると 被 害 の 発 生 確 率 とそのときの 被 害 規 模 との 合 積 と 表 され 様 々な 意 思 決 定 に 利 用 される 工 学 的 指 標 となる 特 に 地 震 リスクは 既 にいくつかの 分 野 にて 試 算 / 活 用 されている さらに リスクマネジメントはリスク 指 標 を 活 用 した 総 合 的 な 地 震 防 災 計 画 を 立 案 / 実 行 するための 枠 組 みであり リスク 解 析 がコア 技 術 になる 地 震 リスク 解 析 は リスクの 定 量 化 (Risk Quantification)であるとともに 耐 震 設 計 を 超 える 合 理 的 な 耐 震 性 能 指 標 となり 得 るもので 次 世 代 の 耐 震 設 計 法 として 期 待 できる 前 半 では リスク 解 析 とリスクマネジメントを 簡 単 に 紹 介 し 後 半 では 地 震 リスクの 利 用 実 態 と 耐 震 性 能 指 標 について 考 察 する リスク 解 析 とリスクマネジメント リスク って 何 だろう? リスクという 言 葉 は 日 常 においても 頻 繁 に 使 われが 一 体 リスク って 何 だろう? 百 科 事 典 から 引 用 す ると 予 測 できない 危 険 (リスクが 大 きい) 2 保 険 者 の 担 保 責 任 ( 大 辞 林 )のように 説 明 される これに 呼 応 して リスキー(risky: 危 険 な 冒 険 的 な きわどい)なる 用 語 もたびたび 用 いられ 日 常 的 に 馴 染 み のある 言 葉 であろう 特 に リスクということばは 滅 多 に 起 こらないが もし 起 きると 大 変 なことになる ということが 言 外 にあり このことが 重 要 な 意 味 合 いを 示 唆 する さて これらを 広 義 のリスク と 考 え 工 学 的 に 定 義 される 狭 義 のリスク が 重 要 となり ここに 紹 介 したい 狭 義 のリスクは 次 のような 宝 くじの 例 を 見 れば 容 易 に 理 解 できる 例 えば 次 の2つの 一 等 賞 金 があった とする( 実 在 しない 想 定 例 題 である) 等 賞 金 2 億 円 発 行 2 千 万 本 のうち 3 本 当 選 2 等 賞 金 億 円 発 行 6 百 万 本 のうち 2 本 当 選 購 入 者 は 賞 金 額 に 目 を 奪 われ 勝 ちであるが 冷 静 に 考 えると 両 者 の 期 待 値 は 2 3本 8 3 億 円 = (2 0 ) = 30円 2千 万 本 2 0 2 7 2本 8 2 億 円 = ( 0 ) = 33円 6 6百 万 本 6 0 となること 単 純 に 算 定 される すなわち 期 待 値 から 見 ると 2の 方 が 上 回 ることが 客 観 的 に 判 断 できる(た だし 宝 くじ2の 購 入 者 は この 33 円 を 受 け 取 ることはない 多 分 はずれ であり 極 々 稀 に 一 億 円 が 当 ることに 注 意 されたい) これを 地 震 リスクに 置 き 換 えれば 地 震 の 発 生 確 率 と 地 震 発 生 による 損 傷 または 被 害 をセットで 示 すことであ る

例 えば 地 域 における 今 後 30 年 間 において 2500 戸 が 半 壊 する 確 率 は 2.5% 橋 梁 は 単 年 度 で 20 万 円 の 損 傷 が 見 込 まれる さて 以 上 のような 前 段 のもと 地 震 リスクを 構 造 物 の 損 傷 期 待 値 として 表 すと 次 式 のように 明 確 に 定 義 される リスク(Risk)= 地 震 の 発 生 確 率 (Hazard) 被 害 の 発 生 確 率 (Vulnerability) そのときの 被 害 額 (Consequence) () 単 純 に 表 現 すれば リスク= 発 生 確 率 影 響 度 と 明 快 に 説 明 できる これを 数 学 的 に 表 現 すると 次 式 で 示 される 地 震 リスク R = 損 失 の 発 生 する 確 率 p 損 失 の 規 模 D (2) R = k j= ( p j D j ) ただし j= k p j = (3) ここで 大 切 なことは 高 耐 震 性 とは 被 害 の 発 生 確 率 は 極 めて 小 さいが 一 旦 被 災 すると 大 きな 損 傷 を 受 け かつ 運 行 停 止 など 社 会 的 な 影 響 が 大 きいことを 想 定 するものである 従 来 型 の 耐 震 設 計 は これだけの 地 震 に 耐 えられる ことを 照 査 するものであり 地 震 リスクは これだけ 壊 れるかもしれない ことを 示 すものと 説 明 できる 地 震 リスク 解 析 の 成 果 次 に 地 震 リスク 解 析 によって 得 られる 成 果 (product) を 紹 介 しよう リスク 解 析 には 信 頼 性 理 論 に 基 づくやや 面 倒 な 数 学 的 な 処 理 が 必 要 とするが 本 稿 ではこれを 省 略 して 主 要 な 結 果 を 例 示 したい 地 震 ロス 関 数 と 地 震 リスク 曲 線 図 は 構 造 物 の 地 震 ロス 関 数 (Seismic Loss Function)を 模 式 的 に 示 すものであり 地 震 動 規 模 に 対 する 構 造 物 の 損 傷 程 度 を 対 応 させたものである ここでは 地 震 動 規 模 として 最 大 基 盤 加 速 度 を 損 傷 レベルを 損 失 額 (または 再 調 達 価 格 )にて 例 示 している すなわち 地 震 ロス 関 数 によって どのくらいの 加 速 度 が 入 力 し たら どれくらいの 損 害 を 被 るか を 端 的 に 説 明 してくれる 図 地 震 ロス 関 数 (Seismic Loss Function) 2

そして 地 震 動 規 模 を 消 去 して 地 震 損 傷 レベル( 損 失 額 )の 発 生 確 率 ( 超 過 確 率 )を 求 め これを 地 震 リスク 曲 線 (Seismic Risk Curve)と 呼 ぶ 図 2では リスクカーブを 模 式 的 に 表 したもので 例 えば 損 失 額 00 万 円.5% 損 失 額 000 万 円 0.% となっている このようにして 地 震 による 損 失 レベルが 直 接 的 に 求 まることが 特 徴 である 地 震 リスク 曲 線 には もはや 基 盤 加 速 度 に 代 表 される 地 震 規 模 は 直 接 現 れないので 例 えば 他 の 災 害 ハザード( 洪 水 地 滑 り 津 波 )と 同 等 に 比 較 し また 対 象 構 造 物 が 同 じであれば 合 算 できる 図 2 地 震 リスク 曲 線 (Seismic Risk Curve) 損 傷 期 待 値 図 3では 対 象 施 設 の 損 傷 期 待 値 の 算 定 手 順 を 示 している これは 建 設 地 点 の 地 震 ハザード 曲 線 ( 同 図 (a)) と 対 象 施 設 の 地 震 ロス 関 数 ( 同 図 (b))との 合 積 をとり 損 傷 期 待 値 密 度 関 数 ( 同 図 (c))を 算 定 している 図 (c)のような 期 待 値 の 密 度 関 数 ed は 予 想 される 大 小 様 々な 地 震 動 ( 例 えば 最 大 加 速 度 PGA:α)に 対 するリスクの 大 きさを 表 すもので その 面 積 ED は ( 年 間 の) 損 傷 期 待 値 の 総 和 になり これが 狭 義 の 地 震 リスクを 定 量 的 に 表 したものである(リスクの 定 量 化 /Risk Quantification) 3

図 3 損 傷 期 待 値 の 算 定 手 順 4

地 震 リスクマネジメントへの 展 開 さて 以 上 のような 地 震 リスク 解 析 による 定 量 的 客 観 的 な 情 報 をもとに 災 害 防 止 のための 具 体 的 かつ 効 果 的 な 施 策 を 講 ずることができる このような 総 合 的 な 防 災 対 策 を 地 震 リスクマネジメント(Seismic Risk Management:SRM 略 す) と 呼 び その 考 え 方 と 適 用 例 を 紹 介 しよう リスクマネジメントの 考 え 方 と 実 践 方 法 は 多 くの 提 案 があるが ここでは これらの 共 通 的 な 流 れを 例 示 したい これは3つのステップにて 構 成 され 次 にように 説 明 できる Step リスクの 認 識 : 対 象 施 設 にどのようなリスク すなわち 危 険 因 子 が 存 在 するかを 確 認 することから 始 まる(ここで 言 うリスク は 広 義 のリスクである) そして 特 定 されたハザードによる 具 体 的 な 被 害 / 損 害 の 可 能 性 を 分 析 する SRM では まず 隠 れたリスクを 顕 在 化 させることから 始 まり この Step は 大 切 な 出 発 点 となる Step 2 リスクの 把 握 : 次 に 対 象 地 域 にどの 程 度 の 自 然 災 害 が 生 じ その 災 害 が 生 じた 時 にどの 程 度 の 被 害 が 生 じるか 定 量 的 に 分 析 / 調 査 する 地 震 リスクの 場 合 先 述 した 各 関 数 や 指 標 が この Step 2 にて 活 かされる すなわち ハザ ード 曲 線 によって 当 該 地 域 の 地 震 規 模 を 表 すことができ 地 震 ロス 関 数 によって 地 震 発 生 時 の 被 害 を 定 量 化 で きる また 地 震 による 損 失 は 物 的 被 害 に 加 えて 営 業 損 失 インフラ 機 能 の 喪 失 地 域 社 会 への 影 響 など あらゆる 不 測 の 事 態 を 想 定 しなければならない Step 3 リスク 対 策 の 実 行 : リスクの 全 貌 が 詳 らかになれば 今 度 はリスクを 軽 減 するための 対 策 を 立 案 し 実 行 策 を 選 定 することが 最 終 的 な 段 階 となる(SRM では リスクが 軽 微 なので このままで 大 丈 夫 (リスクの 保 有 ) ということもあり 得 る) リスク 低 減 は 従 来 のような 耐 震 補 強 にとどまらず リスクの 保 有 および 損 害 保 険 のようなファ イナンスによる 転 嫁 など 防 災 対 策 の 選 択 肢 は 多 岐 に 渉 る 図 4 地 震 リスクマネジメントの 構 成 と 手 順 5

地 震 リスクと 耐 震 性 能 指 標 様 々な 耐 震 性 能 指 標 建 物 の 耐 震 性 能 を 示 す 指 標 は 多 様 である 例 えば 耐 震 偽 造 問 題 でも 話 題 となった 保 有 水 平 体 力 と 必 要 保 有 水 平 耐 力 との 比 あるいは 古 い 耐 震 基 準 で 設 計 された 建 物 の 耐 震 改 修 を 促 すための 耐 震 改 修 促 進 法 に 基 づ く Is 値 (seismic Index of Structure)などがある ところが 住 宅 の 購 入 を 考 えている 個 人 建 物 を 売 買 する 当 事 者 さらには 必 要 な 資 金 を 融 資 する 金 融 機 関 などは これら 指 標 を 専 門 家 の 間 で 交 わされる 暗 号 のようなも のと 受 け 止 めている このため 現 行 の 耐 震 基 準 を 満 たしている 耐 震 基 準 の 0.5 の 耐 力 しかない とい った 画 一 的 で 不 明 瞭 な 情 報 を 受 け 入 れるしかない 一 方 平 成 2 年 には 住 宅 の 品 質 確 保 の 促 進 等 に 関 する 法 律 に 基 づく 耐 震 等 級 が 登 場 した 等 級 は ~3 で 表 示 され 等 級 2 は 現 行 基 準 の.25 倍 等 級 3 は.5 倍 の 耐 震 性 能 を 有 することになっている 等 級 を 取 得 することで 安 心 感 は 得 られものの 大 地 震 が 発 生 した 際 の 被 害 状 況 や 損 害 額 を 示 すものではなく 必 ずしも 十 分 なものではない 耐 震 性 能 指 標 としての PML 不 動 産 証 券 化 に 関 する 法 整 備 が 進 み 不 動 産 収 益 を 原 資 とする 様 々な 金 融 商 品 が 組 成 されると 共 に 多 くの 資 金 が 不 動 産 事 業 に 流 れている 一 方 で 広 域 被 害 を 引 き 起 こす 地 震 災 害 が 発 生 すると 優 良 資 産 が 都 市 域 に 集 中 している 実 情 もあり 投 資 資 金 の 多 くを 失 う 可 能 性 がある そこで 不 動 産 調 査 の 項 目 に PML(Probable Maximum Loss)と 呼 ばれる 耐 震 性 能 を 示 す 指 標 が 設 けられている これは 地 震 リスク 情 報 の 一 つであり 対 象 施 設 あるいは 施 設 群 に 対 し 最 大 の 損 失 をもたらす 再 現 期 間 475 年 相 当 の 地 震 が 発 生 し その 場 合 の 90% 非 超 過 確 率 に 相 当 する 物 的 損 失 額 の 再 調 達 価 格 に 対 する 割 合 と 定 義 されている 補 足 説 明 すると 再 調 達 価 格 はその 建 物 を 再 建 するのに 必 要 な 金 額 再 現 期 間 475 年 相 当 の 地 震 は 兵 庫 県 南 部 地 震 まではいかないまで も かなり 大 きな 地 震 である 90% 非 超 過 確 率 に 相 当 する 物 的 損 失 額 は 建 物 の 被 害 額 を 予 測 する 際 のばらつ きを 見 込 んだ 上 で 最 悪 の 損 害 額 を 示 している この 損 害 額 には 建 物 の 構 造 主 体 に 加 え 電 気 衛 生 空 調 な どの 諸 設 備 エレベータや 内 外 装 など 地 震 による 被 害 金 額 の 全 てが 含 まれている 必 要 に 応 じて 地 震 火 災 や 液 状 化 被 害 などを 含 めることもできる このため 投 資 家 は 投 資 した 不 動 産 価 値 が 地 震 によってどの 程 度 毀 損 するかをダイレクトに 知 ることができる 例 えば PML20%と 評 価 された 場 合 建 物 の 価 格 が20 億 円 であれ ば 地 震 により 最 悪 4 億 円 毀 損 することになる 言 い 換 えれば 4 億 円 程 度 の 補 修 費 を 見 込 んでおく 必 要 があ ることを 知 る 地 震 被 害 の 大 きさを 金 銭 価 値 として 示 すことは 地 震 保 険 の 付 保 や 耐 震 補 強 などの 対 策 を 費 用 対 効 果 の 視 点 から 検 討 することができるようになる 例 えば 補 強 対 策 を 検 討 する 場 合 補 強 後 の PML 値 の 低 下 分 と 補 強 費 用 を 秤 に 掛 けることができる 地 震 保 険 では 保 険 金 の 上 限 を 決 める 目 安 を 知 ることができる 現 在 PML は 耐 震 性 能 の 指 標 として 証 券 化 不 動 産 以 外 にも 通 常 の 売 買 や 保 有 資 産 の 耐 震 補 強 の 判 断 などに も 利 用 されている 最 近 では 建 物 の 設 計 時 に PML が 何 % 以 下 になるように 設 計 してほしい など 施 工 主 の 要 求 事 項 の 一 つに 組 み 入 れられるケースも 増 えている PML の 利 用 が 拡 大 している 背 景 には 難 解 な 耐 震 性 能 を 一 般 の 人 にも 理 解 できる 金 銭 価 値 で 示 すことで 情 報 としての 利 活 用 が 格 段 に 増 加 したことを 指 摘 する ことができる 次 世 代 の 耐 震 設 計 法 と 言 われるリスク 規 範 型 設 計 は PML の 登 場 により 現 実 の 設 計 法 として 具 現 化 しつつある 6

地 震 リスクの 課 題 と 今 後 地 震 リスクの 評 価 方 法 は 被 害 の 統 計 データをベースとした 純 統 計 的 な 方 法 と 前 述 した 耐 震 工 学 構 造 工 学 信 頼 性 工 学 などの 知 見 や 技 術 をベースとした 解 析 的 な 方 法 とに 分 けられる 前 者 は 類 型 化 された 建 物 の 平 均 的 な 被 害 率 を 評 価 するもので 広 域 被 害 想 定 や 複 数 の 建 物 をまとめて 評 価 する 場 合 に 有 効 である 後 者 は 対 象 建 物 の 設 計 図 面 や 構 造 計 算 書 地 盤 情 報 に 基 づいた 固 有 の 耐 震 性 能 に 基 づくため 個 別 の 施 設 や 建 物 のリス クを 評 価 するのに 適 している しかしながら PML 評 価 の 実 務 では 純 統 計 的 な 方 法 なのか 解 析 的 な 方 法 なのかは 不 明 確 なまま 評 価 する 側 の 技 術 や 誠 意 を 信 頼 した 上 で ブラックボックス 的 な 扱 いを 半 ば 容 認 して いるのが 実 態 である これでは 第 三 者 による 検 証 ができず 情 報 としての 客 観 性 信 憑 性 に 欠 ける また 金 銭 対 価 が 難 しい 人 命 や 歴 史 的 建 造 物 については 非 可 逆 的 な 問 題 ( 再 生 できない 問 題 )として 評 価 の 対 象 外 とされている 現 状 の PML は 評 価 方 法 に 多 少 の 混 乱 が 見 られものの 市 民 権 を 得 ている 実 態 を 勘 案 すると リスク 規 範 型 設 計 を 視 野 に 入 れた 技 術 面 法 制 面 での 整 備 を 真 剣 に 検 討 する 時 期 にきていると 考 える 本 文 は 耐 震 設 計 の 最 新 の 話 題 として 地 震 リスクの 入 門 編 をまとめたものですが 詳 細 については 著 者 らの 出 版 図 書 および 公 開 WEBを 参 照 ください 第 著 者 : 吉 川 弘 道 鉄 筋 コンクリートの 解 析 と 設 計 ( 第 2 版 - 限 界 状 態 設 計 法 と 性 能 設 計 法 -) 丸 善 出 版 もっと 知 りたいコンクリート 講 座 http://c-pc8.civil.musashi-tech.ac.jp/rc/ 鉄 筋 コンクリート 構 造 物 の 耐 震 設 計 講 座 http://www.civil-eye.com/report/kouza/yoshikawa/overview.htm 第 2 著 者 : 中 村 孝 明 星 谷 勝 中 村 孝 明 : 構 造 物 の 地 震 リスクマネジメント 山 海 堂 中 村 孝 明 : 確 率 論 的 資 産 マネジメント- 民 間 資 本 から 社 会 資 本 へ- 最 新 建 設 技 術 シリーズ 第 2 巻 山 海 堂 7