大 涌 谷 周 辺 の 火 山 活 動 について 2015 年 5 月 20 日 2015 年 5 月 3 日 7 時 8 分 9 番 ホールにて 5 月 20 日 現 在 大 涌 谷 火 口 周 辺 の 入 山 規 制 (レ ベル2)が 続 いています 箱 根 山 の 火 山 活 動 に ついてご 理 解 を 得 ておくことも 大 切 かと 考 え このペーパーを 用 意 しました 大 涌 谷 周 辺 の 火 山 史 倶 楽 部 のランドマークとなっている 冠 ヶ 岳 は およそ 3,000 年 前 に 形 成 された 溶 岩 ドームで す 粘 性 の 高 い 溶 岩 がムクムクと 地 上 に 上 がっ て 来 たもので この 噴 火 が 箱 根 山 でマグマの 噴 出 を 伴 う 最 後 の 噴 火 です 箱 根 山 は 火 山 として の 年 齢 が 高 く 大 規 模 な 噴 火 のリスクは 低 いと いわれています 最 近 の 研 究 で 冠 ヶ 岳 の 噴 火 の 後 5 回 の 水 蒸 気 爆 発 があったことが 分 かってきました 水 蒸 気 爆 発 は 噴 火 堆 積 物 が 少 なく 痕 跡 を 探 ることは 難 しいのですが 詳 細 な 地 質 調 査 の 結 果 3,000 年 前 と 2,000 年 前 に 神 山 から 北 東 に 延 びる 尾 根 で 噴 火 が 起 き 最 近 では 鎌 倉 時 代 に 3 回 の 噴 火 があったことが 分 かりました 3,000 年 前 の 噴 火 の 降 下 火 山 灰 は 神 山 南 東 部 から 湖 尻 にか けて 確 認 され 2,000 年 前 のものは 火 口 から 半 径 1km のところで 層 厚 5cm 程 度 であったと 推 定 されています また 神 山 山 頂 の 北 東 斜 面 の 極 めて 狭 い 範 囲 に 火 砕 サージの 痕 跡 も 確 認 されま した 鎌 倉 時 代 の 噴 火 の 規 模 は 極 めて 小 さく 降 下 火 山 灰 は 大 涌 谷 の 現 噴 気 地 帯 を 中 心 とした 200 ~ 500m の 範 囲 に 限 られています 姥 子 地 域 の 降 灰 は 数 センチ 程 度 です 箱 根 山 の 地 下 構 造 火 山 活 動 を 分 析 予 測 するためには 火 山 の 地 下 構 造 を 把 握 することが 重 要 です 箱 根 山 では 詳 細 な 研 究 とデータの 積 み 重 ねでかなりのこと
けて 上 昇 しているという 地 下 構 造 が 想 定 されて います 更 にその 後 の 研 究 で 深 さの 数 値 に 見 直 しがありますが 全 体 像 はこの 論 文 の 推 定 と 大 きな 相 違 はないようです 大 木 平 野 1970 を 参 考 に 作 図 が 分 かっています 2004 年 には 人 工 地 震 と 自 然 地 震 のデータから 人 体 を CT スキャンする ようなイメージで 地 下 30km までの 構 造 が 分 かってきました 箱 根 火 山 の 地 下 8km 程 度 の ところにはそれまでの 研 究 で 地 震 波 の 伝 わりが 遅 いところが 確 認 されていました その 原 因 は 物 質 の 違 い 熱 水 の 影 響 そしてマグマなどの 存 在 が 考 えられます 今 回 の 研 究 ではさらに 深 い 処 まで 調 べることで マグマが 原 因 となっ ているのではなく 物 質 の 違 いあるいは 熱 水 の 影 響 の 可 能 性 が 高 いと 推 論 されています また 地 下 8km よりも 更 に 深 い 処 では 地 震 が 発 生 し ていないことから この 領 域 には 地 震 が 発 生 で きないほど 高 温 の 溶 融 体 があると 推 測 されてい ます この 研 究 成 果 から 地 下 10km よりも 深 い ところにマグマ 溜 まりがあり そこから 熱 エネ ルギーを 受 けて 形 成 された 熱 水 が 蓄 積 されてい るところが 地 下 8km のところにあり その 熱 水 が 中 央 火 口 丘 地 下 の 割 れ 目 を 伝 って 地 表 に 向 温 泉 この 高 温 高 圧 の 熱 水 は 火 山 体 の 地 下 を 東 西 に 流 れる 帯 水 層 に 突 き 当 たり 急 激 に 温 度 が 下 が り 臨 界 点 以 下 になるので 液 相 と 火 山 ガスを 含 む 水 蒸 気 に 分 離 します 火 山 ガスを 含 む 水 蒸 気 は 中 央 火 口 丘 の 中 を 上 ってゆき 噴 気 として 地 表 に 放 出 されます 一 方 の 熱 い 液 は 地 下 水 と 混 ざり 早 川 渓 谷 方 向 に 流 れ 温 泉 となってゆきま す カルデラという 特 異 な 地 形 のために 箱 根 山 の 地 下 水 は 大 量 であり 豊 かな 温 泉 の 湧 出 に 結 び ついています 箱 根 山 の 地 下 から 供 給 される 熱 エネルギーはほとんど 温 泉 や 噴 気 という 形 で 放 出 されているといわれています この 温 泉 の 存 在 が 箱 根 山 内 部 にエネルギー が 蓄 積 され 大 規 模 な 水 蒸 気 爆 発 に 結 びつくこ とを 未 然 に 防 いでいるともいえます 然 し 時 としてマグマの 活 動 が 高 まるなど 何 らかの 理 由 で 熱 水 や 火 山 ガスの 量 が 増 えると 火 山 性 ガス が 地 層 や 岩 盤 の 割 れ 目 に 入 ることで 微 小 な 破 壊 が 起 き 微 小 地 震 が 頻 発 したり 噴 気 が 激 しく なったりします 2001 年 の 火 山 活 動 2001 年 6 月 12 日 から 4 か 月 間 マグニ チュードが 3 以 下 の 微 小 地 震 が 中 央 火 口 丘 を 中 心 として 1 万 6 千 回 も 発 生 しました これ に 先 行 して 5 月 には 駒 ヶ 岳 で 山 体 の 膨 張 が 観 測 されています 大 涌 谷 の 噴 気 が 活 発 になり 県 道 734 号 線 上 湯 場 付 近 には 新 しい 噴 気 地 域 が 出 現 し 現 在 も 活 動 しています この 時 の 最 大 の 地 震 はマグニチュード 2.9 で 7 月 21 日 大 涌 谷 の 深 さ 1km 付 近 で 発 生 しました 当 時 来 場 された 会 員 の 中 には 噴 気 の 激 しさ だけではなく 光 線 の 具 合 で 青 く 見 えたとか
箱 根 町 作 成 防 災 マップより 硫 化 水 素 の 臭 いがしたと 心 配 される 方 も 少 なく ありませんでした 辻 内 和 七 郎 会 員 ( 当 時 箱 根 温 泉 供 給 株 式 会 社 社 長 )は 会 報 2002 年 新 年 号 に 寄 稿 され 過 度 な 心 配 は 不 要 とアピールされました 曰 く 8 月 7 日 気 象 庁 国 土 地 理 院 も 群 発 地 震 の 発 生 と これに 並 行 して 地 殻 の 変 動 が 認 められ るが 噴 火 の 心 配 はないと 発 表 しました 10 月 22 日 火 山 予 知 連 絡 会 は 箱 根 山 について マ グマか 熱 水 が 上 昇 したとみられるが 上 昇 は 止 まった と 発 表 しました 会 社 は 300 から 500mm の 井 戸 を 掘 り 強 力 な 蒸 気 を 噴 出 させ 温 泉 造 成 に 利 用 していますが 14 本 ある 井 戸 の 一 つの 蒸 気 圧 が 異 常 に 高 まり 従 来 の 設 備 で は 制 御 困 難 となり 改 修 のために 大 気 中 に 放 出 し ました この 結 果 会 員 には 心 配 をおかけしま したが 11 月 中 には 制 御 できる 予 定 ですのでご 安 心 ください 気 象 庁 が 2009 年 3 月 に 導 入 した 噴 火 警 戒 レベルでは この 2001 年 の 火 山 活 動 をレベル 2の 過 去 事 例 として 例 示 しています なお こ の 時 はまだ 総 合 的 な 噴 火 対 応 プランがなかった こともあってロープウェイは 通 常 通 り 営 業 して いました ハザードマップと 噴 火 警 戒 レベル 箱 根 町 は 平 成 21 年 3 月 噴 火 警 戒 レベルを 導 入 し 防 災 マップを 公 開 しています 前 提 とし たのは 3,000 年 前 と 2,000 年 前 の 水 蒸 気 爆 発 で 火 口 から 2km 離 れた 姥 子 湖 尻 地 区 で 1cm 程 度 の 降 灰 のリスクがあるとしています 今 回 の 火 口 周 辺 規 制 は 地 震 活 動 や 熱 活 動 の 活 発 化 山 体 の 膨 張 を 示 す 地 殻 変 動 等 状 況 により 火 口 周 辺 に 影 響 を 及 ぼす 噴 火 の 発 生 が 予 想 される というもので 規 制 は 火 口 周 辺 の 半 径 300m の 狭 い 地 域 に 限 られています 火 口 周 辺 への 立 入 は 禁 止 されますが 住 民 は 通 常 の 生 活 を 送 る ことができます
今 回 の 火 山 活 動 も 2001 年 と 同 様 に 地 下 深 部 でマグマが 動 き 熱 水 の 圧 力 が 増 加 したこと によってもたらされたという 見 方 が 変 わらない 限 り 水 蒸 気 爆 発 があったとしてもその 規 模 は 極 めて 小 さいと 考 えられています 万 が 一 2,000 年 前 と 3,000 年 前 のようなやや 規 模 が 大 きい 噴 火 が 起 こったとしても 箱 根 カント リー 倶 楽 部 は 大 涌 谷 から 3km 以 上 離 れています ので 火 山 活 動 による 直 接 の 影 響 はないといえま す 監 視 体 制 火 山 活 動 のモニタリングの 調 査 の 中 核 を 担 っ ているのが 神 奈 川 県 温 泉 地 学 研 究 所 です 研 究 所 の 地 震 観 測 施 設 は 1989 年 にはリアルタ イムでデータを 収 集 する 体 制 が 整 い 現 在 は 周 辺 地 域 も 含 め 観 測 施 設 は 14 か 所 になっていま す この 他 光 波 測 量 GPS 測 量 地 下 水 位 な どの 観 測 点 から 情 報 を 集 め 地 震 活 動 や 地 殻 変 動 が 計 測 されています 箱 根 火 山 直 下 ではマグ ニチュード 0 程 度 の 極 微 小 地 震 の 震 源 も 特 定 できるほどの 精 度 だそうです 地 震 地 殻 変 動 データについては 準 リアル タイムにウエブサイト 上 でも 公 開 されていま す http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/ modules/mysection1/item.php?itemid=44 こうした 観 測 網 が 地 震 や 地 殻 変 動 の 正 確 な 把 握 に 重 要 な 役 割 を 担 っているだけでなく この 分 野 で 温 泉 地 学 研 究 所 には 最 先 端 の 研 究 実 績 があ ります 火 山 活 動 には まだまだ 未 知 の 点 が 多 いわけ ですが 箱 根 山 については 地 下 構 造 の 研 究 が 進 んでおり モニタリング 体 制 が 整 備 されている ことから 今 後 生 じる 変 化 についても 的 確 な 評 価 がなされると 信 じます 結 び 今 回 の 活 動 規 模 は 2001 年 よりも 大 きいよう ではありますが 現 時 点 で 強 調 しておきたい のは 以 下 の 点 です 今 回 の 火 山 活 動 は 熱 水 の 圧 力 が 増 したことに よるもので マグマが 地 表 近 くに 上 昇 している 類 のものではない 警 戒 対 象 となっているのは 小 規 模 な 水 蒸 気 爆 発 で 対 象 地 域 は 大 涌 谷 火 口 周 辺 半 径 300m の 狭 い 範 囲 である 火 山 活 動 のモニタリング 体 制 はよく 整 備 され ており 実 態 把 握 とその 評 価 は 信 頼 できる 尚 神 奈 川 県 温 泉 地 学 研 究 所 観 測 だより 第 64 号 2014 では 箱 根 山 の 火 山 活 動 を 分 かりやすく 説 明 しています ご 関 心 ある 方 は http://www.onken.odawara.kanagawa.jp/files/ PDF/tayori/64/onkendayori64-03.pdf に て 閲 覧 できます 2001 年 当 時 と 比 べ 今 回 はマスコミの 報 道 が 過 熱 化 し 観 光 地 箱 根 は 風 評 被 害 に 悩 まされ ています こうした 中 で 私 たちは 正 確 な 情 報 の 把 握 に 努 め 冷 静 な 判 断 をすべきです 参 考 文 献 神 奈 川 県 調 査 研 報 ( 自 然 )2008,13 箱 根 火 山 の 地 震 活 動 (1990 年 ~ 2007 年 )とその 発 生 機 構 棚 田 俊 收 地 震 波 で 見 た 箱 根 火 山 の 地 下 構 造 小 田 義 也 箱 根 カルデラ- 地 質 構 造 成 因 現 在 の 火 山 活 動 における 役 割 - 萬 年 一 剛 箱 根 火 山 中 央 火 口 丘 群 の 噴 火 史 とカルデラ 内 の 地 形 発 達 史 - 噴 火 活 動 と 密 接 な 関 連 を 有 する 地 形 - 小 林 淳 火 山 の 一 生 箱 根 火 山 大 木 靖 衛 ( 神 奈 川 県 温 泉 地 学 研 究 所 ) アーバンクボタ No.15 JANUARY 1978 株 式 会 社 クボタ 箱 根 山 の 火 山 活 動 宮 岡 一 樹 神 奈 川 県 温 泉 地 学 研 究 所 観 測 だより 第 64 号 2014 温 泉 地 学 研 究 所 平 成 25 年 度 外 部 評 価 委 員 会 の 評 価 結 果 に ついて