摘 発 相 次 ぐ 大 型 談 合 カルテル 事 件 課 徴 金 減 免 制 度 の 効 果 と 課 題 鈴 木 満 * 1.はじめに 公 正 取 引 委 員 会 が2012 年 ₆ 月 に 公 表 した 資 料 によると 同 委 員 会 がカルテルや 談 合 をした 企 業 に 納 付 を 命 じた 課 徴 金 の 総 額 は 2006 年 度 が92.7 億 円 2007 年 度 が112.9 億 円 2008 年 度 が270.3 億 円 2009( 平 成 21) 年 度 が360.7 億 円 2010 年 度 が720.8 億 円 2011 年 度 が442.5 億 円 で この ₆ 年 間 の 総 額 は 約 2000 億 円 に 上 り 平 均 すると[ 年 間 333 億 円 ])になる この 金 額 は 公 正 取 引 委 員 会 の2012 年 度 当 初 予 算 額 [87.4 億 円 ]の[3.8 年 分 ]に 相 当 する 課 徴 金 は 国 庫 に 納 付 され 公 正 取 引 委 員 会 の 収 入 になるわけではないが これを 同 委 員 会 の 収 入 とみなすと 87 億 円 余 のコス トで330 億 円 余 の 収 入 を 得 ており 民 間 企 業 であれば 超 優 良 会 社 に 相 当 する 冗 談 めいた 言 い 方 を すれば 公 正 取 引 委 員 会 は 今 や 民 営 化 しても 十 分 やっていける 役 所 と 言 える このような 課 徴 金 の 高 額 化 は 最 近 における 独 占 禁 止 法 の 改 正 で 課 徴 金 減 免 制 度 が 導 入 された ことが 大 きいと 考 えられる そこで 本 稿 では 課 徴 金 減 免 制 度 を 中 心 に その 導 入 の 趣 旨 目 的 日 本 に 先 駆 けて 導 入 さ れている 米 国 EU のリーニエンシー 制 度 の 概 要 日 本 の 課 徴 金 減 免 制 度 の 特 徴 を 紹 介 するとと もに 課 徴 金 減 免 制 度 を 導 入 した 効 果 を 具 体 的 に 検 証 し 最 後 に 日 本 の 課 徴 金 減 免 制 度 に 残 さ れた 課 題 を 検 討 する 2. 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 の 趣 旨 目 的 リーニエンシー 制 度 ( 課 徴 金 減 免 制 度 )は 事 業 者 が 自 らカルテル 談 合 を 競 争 当 局 に 通 報 し た 場 合 当 該 事 業 者 に 対 し 刑 事 上 または 行 政 上 の 制 裁 を 免 除 軽 減 する 仕 組 みである カルテルや 談 合 は 密 室 の 犯 罪 といわれ 違 反 行 為 者 の 結 束 が 固 くて 沈 黙 の 掟 があると されている この 沈 黙 の 掟 を 情 報 提 供 者 に 優 遇 措 置 を 講 ずること および カルテルをす ると 発 見 されて 厳 しいペナルティを 被 るという カルテル リスク を 高 めること によって 打 破 しようとするのがリーニエンシー 制 度 導 入 の 趣 旨 目 的 である 編 集 部 注 * 桐 蔭 横 浜 大 学 法 科 大 学 院 客 員 教 授 弁 護 士 本 稿 は 2012 年 11 月 ₇ 日 に 開 催 された 第 45 回 現 代 法 セミナーの 報 告 原 稿 に 加 筆 修 正 したものである 1
それゆえ リーニエンシー 制 度 の 対 象 となる 違 反 行 為 は 事 業 者 の 共 同 行 為 であるカルテル 談 合 に 限 られており 私 的 独 占 不 公 正 な 取 引 方 法 等 は 対 象 外 とされている 3. 課 徴 金 減 免 制 度 を 導 入 する 効 果 リーニエンシー 制 度 の 導 入 により 想 定 される 効 果 を 要 約 すれば 以 下 の ₄ 点 に 整 理 できよう 第 一 は リーニエンシーの 申 請 者 を 優 遇 することによりカルテル 談 合 の 発 見 率 が 高 められる ことである 第 二 は 申 請 者 の 協 力 が 得 られるから 事 件 審 査 の 容 易 化 迅 速 化 が 図 り 得 ることである 第 三 は 事 業 者 に リーニエンシー 制 度 によって 違 反 行 為 が 露 見 するかもしれない との 疑 心 暗 鬼 を 抱 かせることによって 違 反 行 為 の 抑 止 が 期 待 できることである 第 四 は リーニエンシーを 有 効 に 活 用 するために 企 業 が 独 占 禁 止 法 のコンプライアンス 体 制 を 強 化 することが 期 待 されることである 4. 米 国 のリーニエンシー 制 度 米 国 のリーニエンシー 制 度 は 世 界 に 先 駆 けて1978 年 10 月 に 導 入 され さらに1993 年 により 有 効 に 機 能 するように 改 められた 米 国 のリーニエンシー 制 度 は 以 下 の ₅ つの 要 件 のすべてを 満 たす 事 業 者 については 刑 事 訴 追 を 免 除 するという 政 府 方 針 のことである 第 一 は 最 初 の 情 報 提 供 者 であること 第 二 は 反 トラスト 局 が 起 訴 をするのに 十 分 な 証 拠 を 有 していない 段 階 の 情 報 提 供 であるこ と 第 三 は 調 査 開 始 段 階 で 違 反 行 為 を 取 りやめていること 第 四 は 捜 査 に 全 面 的 に 協 力 すること 第 五 は 他 社 を 違 法 行 為 に 参 加 するように 強 制 し 違 法 行 為 をリードしていないこと さらに 1994 年 には 最 初 の 情 報 提 供 した 個 人 に 対 しても 刑 事 訴 追 が 免 除 することとされた このほか 米 国 には アムネスティ プラス 制 度 および ペナルティ プラス 制 度 という 制 度 が 設 けられている アムネスティ プラス 制 度 とは ₂ 番 目 以 下 に 情 報 提 供 した 事 業 者 が 別 の 関 連 市 場 で 行 わ れている 違 反 行 為 を 申 告 すれば 当 該 事 件 の 罰 金 も 減 額 される 仕 組 みである また ペナルティ プラス 制 度 とは アムネスティ プラス 制 度 が 利 用 可 能 であったのに これを 怠 った 場 合 には 当 該 事 業 者 に 対 する 罰 金 を 増 額 し 得 る 仕 組 みである 2
5.EU のリーニエンシー 制 度 の 概 要 EU のリーニエンシー 制 度 は 1996 年 に 委 員 会 告 示 という 形 で 導 入 され 2002 年 および 2006 年 に 改 訂 されている EU のリーニエンシー 制 度 は 以 下 の ₄ つの 要 件 すべてを 満 たす 事 業 者 に 対 し 制 裁 金 を 減 免 する 仕 組 みである 第 一 は 申 請 時 に 欧 州 委 員 会 が 十 分 な 証 拠 を 有 していないこと 第 二 は 調 査 開 始 までに 違 反 行 為 を 取 りやめていること 第 三 は 捜 査 に 全 面 的 に 協 力 すること 第 四 は 他 社 を 違 法 行 為 に 参 加 するように 強 制 し 違 法 行 為 をリードしていないこと そして 最 初 の 情 報 提 供 者 は 制 裁 金 が 全 額 免 除 され ₂ 番 目 以 下 の 情 報 提 供 者 は 制 裁 金 が20~ 50% 減 額 される このほか EU では 不 十 分 な 証 拠 しか 用 意 できない 時 点 でも 詳 細 な 証 拠 リストを 提 出 する ことによって リーニエンシーを 申 請 することができる マーカー 制 度 が 導 入 されている 6. 日 本 の 課 徴 金 制 度 および 課 徴 金 減 免 制 度 の 概 要 1 日 本 の 課 徴 金 制 度 ア 概 要 日 本 の 課 徴 金 制 度 は 1977 年 の 独 占 禁 止 法 改 正 で 導 入 された 当 初 の 課 徴 金 対 象 違 反 行 為 は 価 格 カルテルおよび 価 格 に 影 響 がある 数 量 カルテル 設 備 制 限 カルテルに 限 定 され 課 徴 金 算 定 の 一 定 率 も 原 則 1.5%であった その 後 1991 年 に 同 一 定 率 が[ 原 則 1.5%から ₆ %]に 引 上 げられ 2005 年 には 1 対 象 違 反 行 為 に[ 支 配 型 私 的 独 占 ]を 追 加 する 2 一 定 率 を[ 原 則 ₆ %から10%] に 引 上 げ 3 課 徴 金 の 加 算 制 度 および 減 免 制 度 を 導 入 するという 改 正 が 行 われた さらに 2009 年 には 1 排 除 型 私 的 独 占 不 公 正 な 取 引 方 法 の 一 部 を 対 象 違 反 行 為 に 追 加 する 2 課 徴 金 減 免 制 度 の 対 象 事 業 者 を 従 来 の ₃ 社 から ₅ 社 に 増 やすなどの 改 正 が 行 われた 課 徴 金 制 度 を 導 入 した 当 初 は カルテルによって 得 られた 不 当 な 利 得 が 違 反 行 為 者 の 手 元 にそ のまま 残 ると やり 得 になるので 不 当 な 利 得 を 国 庫 に 徴 収 し やり 得 をなくし 違 法 行 為 の 抑 止 力 を 強 化 するというものであったが 2005 年 の 法 改 正 により 課 徴 金 の 一 定 率 を 大 幅 に 引 き 上 げ さらに 加 算 制 度 を 導 入 したことにより 不 当 な 利 得 を 超 える 金 銭 を 徴 収 する 行 政 上 の 制 裁 という 色 彩 が 強 まった イ 課 徴 金 対 象 違 反 行 為 現 行 の 課 徴 金 対 象 違 反 行 為 は 以 下 のとおりである a 価 格 カルテル b 供 給 量 購 入 量 市 場 占 拠 率 取 引 の 相 手 方 を 実 質 的 に 制 限 する 価 格 に 影 響 するカルテル c 価 格 に 影 響 する 支 配 型 私 的 独 占 3
d 排 除 型 私 的 独 占 e 不 公 正 な 取 引 方 法 のうち 共 同 供 給 拒 絶 差 別 対 価 不 当 廉 売 再 販 売 価 格 の 拘 束 優 越 的 地 位 の 濫 用 なお 不 公 正 な 取 引 方 法 のうち 優 越 的 地 位 の 濫 用 以 外 は ₂ 回 目 の 違 反 行 為 から 適 用 される ウ 課 徴 金 算 定 の 一 定 率 カルテル 支 配 型 私 的 独 占 は 違 反 行 為 を 行 った 期 間 の 違 反 対 象 商 品 の 売 上 高 の[ 原 則 10% 小 売 業 ₃ % 卸 売 業 ₂ %]で 排 除 型 私 的 独 占 は [ 原 則 ₆ % 小 売 業 ₂ % 卸 売 業 ₁ %]であ る 不 公 正 な 取 引 方 法 のうち 共 同 供 給 拒 絶 差 別 対 価 不 当 廉 売 再 販 売 価 格 の 拘 束 は [ 原 則 ₃ % 小 売 業 ₂ % 卸 売 業 ₁ %]で 優 越 的 地 位 の 濫 用 は 取 引 高 の[ ₁ %]である なお 課 徴 金 の 最 長 計 算 期 間 は 違 反 行 為 がなくなってから 遡 って ₃ 年 間 である ただし 中 小 企 業 に 対 しては 課 徴 金 が 軽 減 される エ 課 徴 金 の 加 算 制 度 2005 年 改 正 で 課 徴 金 の 加 算 制 度 が 導 入 され 10 年 以 内 に 再 び 違 反 行 為 を 行 った 事 業 者 には 課 徴 金 を50% 加 算 カルテルを 主 導 した 事 業 者 には50% 加 算 され これら 両 方 に 該 当 する 場 合 は 課 徴 金 が ₂ 倍 になる オ 調 査 前 に 違 反 行 為 を 止 めた 場 合 の 減 額 公 正 取 引 委 員 会 が 調 査 を 開 始 する ₁ か 月 前 までに 違 反 行 為 を 中 止 している 事 業 者 に 対 しては 課 徴 金 が20% 減 額 される 2 日 本 の 課 徴 金 減 免 制 度 ア 制 度 の 概 要 日 本 の 現 行 の 課 徴 金 減 免 制 度 の 特 徴 を 整 理 すると 以 下 のとおりである 第 一 は 単 独 で 申 請 することである ただし 親 子 関 係 にある 場 合 には ₂ 社 で 共 同 申 請 するこ とができる 第 二 は 公 正 取 引 委 員 会 の 調 査 開 始 日 までに 違 反 行 為 を 止 めていることである 第 三 は 虚 偽 の 報 告 をしたり 報 告 を 拒 否 していないことである 第 四 は 他 の 事 業 者 に 違 反 行 為 を 強 要 していないことである 第 五 は 他 の 事 業 者 が 違 反 行 為 を 止 めることを 妨 害 していないことである 以 上 の ₅ 条 件 をすべて 満 たし かつ 調 査 開 始 前 に 申 請 した ₁ 番 目 の 事 業 者 に 対 しては 課 徴 金 が 全 額 免 除 され ₂ 番 目 の 事 業 者 に 対 しては 課 徴 金 が50% 減 額 され ₃ 番 目 から ₅ 番 目 の 事 業 者 に 対 しては 同 30% 減 額 される また 調 査 開 始 後 の 申 請 者 に 対 しては 最 大 ₃ 社 まで 課 徴 金 が30% 減 額 される ただし この 場 合 報 告 する 内 容 は 公 正 取 引 委 員 会 が 立 入 検 査 等 によって 把 握 されている 事 実 以 外 のもので なければならない 4
イ 申 請 の 方 法 減 免 制 度 の 申 請 はファクシミリに 限 定 されている ファクシミリであれば 地 方 の 事 業 者 でも 利 用 が 可 能 であること および 記 録 性 があるため 順 位 の 確 定 の 透 明 性 が 確 保 できることによる なお 申 請 は 匿 名 でも 構 わない ウ 申 請 後 の 調 査 協 力 事 業 者 は 申 請 した 後 公 正 取 引 委 員 会 から ₂ 回 に 亘 り 報 告 書 証 拠 資 料 等 の 提 出 が 求 められ る 報 告 書 の 主 な 記 載 事 項 は 1 違 反 行 為 に 関 わった 者 の 役 職 名 氏 名 2 違 反 行 為 に 関 わった 他 の 事 業 者 名 役 員 名 氏 名 3カルテルの 対 象 となった 商 品 名 4 他 の 事 業 者 との 接 触 状 況 であ る 3 日 本 の 課 徴 金 制 度 同 減 免 制 度 の 特 徴 (まとめ) 日 本 の 課 徴 金 制 度 課 徴 金 減 免 制 度 の 特 徴 を 整 理 すると 以 下 のとおりである ア 米 国 タイプと EU タイプの 折 衷 方 式 であること 主 要 国 の 競 争 当 局 がカルテル 入 札 談 合 を 抑 止 する 方 法 として 採 用 されているのは 大 きく 次 の ₂ タイプである 第 一 は 違 法 行 為 を 行 った 個 人 や 法 人 に 対 し 刑 事 罰 を 科 すことによってカルテル 入 札 談 合 を 抑 止 しようとする 方 法 であり 米 国 などで 採 用 されている 第 二 は 違 法 行 為 をした 事 業 者 に 対 し 刑 事 罰 ではなく 行 政 上 の 措 置 ( 排 除 措 置 命 令 と 制 裁 金 )を 課 すことによってカルテル 入 札 談 合 を 抑 止 しようとする 方 法 であり EU などで 採 用 さ れている 日 本 は 違 反 行 為 の 排 除 措 置 として 排 除 措 置 命 令 課 徴 金 納 付 命 令 のほか 悪 質 重 大 な 事 案 については 刑 事 罰 も 用 意 されており 米 国 タイプと EU タイプとの 折 衷 タイプといえよう イ 算 定 に 当 たって 公 正 取 引 委 員 会 の 裁 量 が 一 切 認 められていないこと EU や EU 加 盟 主 要 国 韓 国 などでは 法 律 や 規 則 で 課 徴 金 の 算 定 率 の 最 高 額 が 定 められている が 競 争 当 局 が 事 案 の 内 容 を 勘 案 して 裁 量 により 減 額 することが 認 められている しかし 日 本 では 課 徴 金 算 定 に 当 たって 公 正 取 引 委 員 会 の 裁 量 が 一 切 認 められていない これが 日 本 の 課 徴 金 制 度 課 徴 金 減 免 制 度 最 大 の 特 徴 といえる 課 徴 金 の 算 定 に 当 たって 公 正 取 引 委 員 会 の 裁 量 を 認 めない 理 由 は 定 かではないが 1977 年 に 独 占 禁 止 法 を 改 正 時 に 課 徴 金 算 定 に 公 正 取 引 委 員 会 の 裁 量 を 認 めると 事 務 量 が 増 大 して 事 件 処 理 に 支 障 があるというような 議 論 があった ウ 課 徴 金 減 免 の 対 象 事 業 者 数 が 法 律 で 5 社 に 制 限 されていること EU や EU 加 盟 主 要 国 では 課 徴 金 減 免 の 対 象 事 業 者 数 が 限 定 されていない また 韓 国 では 調 査 開 始 前 後 を 問 わず 最 初 と ₂ 番 目 に 申 請 してきた ₂ 社 に 対 して 課 徴 金 を 免 除 又 は50% 減 額 する 仕 組 みのほかに 公 正 取 引 委 員 会 の 調 査 への 協 力 度 によって 最 大 30% 減 額 をする 仕 組 みも 用 意 し ており 実 質 的 に 課 徴 金 減 免 対 象 事 業 者 数 は 限 定 されていない 5
これに 対 して 日 本 では 課 徴 金 減 免 対 象 事 業 者 数 が2009 年 改 正 前 は ₃ 社 に それ 以 降 は ₅ 社 に 限 定 されている ₅ 社 にした 理 由 は 限 定 した 方 がリーニエンシーを 申 請 しようとするインセン ティブが 働 くが あまり 対 象 企 業 数 を 限 定 し 過 ぎるとインセンティブが 弱 まるおそれがあること 等 が 考 慮 されたものと 推 測 される 7. 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 効 果 の 検 証 冒 頭 で 紹 介 したように 課 徴 金 減 免 制 度 の 想 定 される 効 果 は 1カルテル 談 合 の 発 見 率 が 高 められること 2 競 争 当 局 にとって 事 件 審 査 の 容 易 化 迅 速 化 が 図 り 得 ること 3 違 反 行 為 の 抑 止 効 果 が 期 待 できること 4 独 占 禁 止 法 のコンプライアンスを 普 及 させる 効 果 が 期 待 できること の ₄ 点 であった 以 下 では 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 により これら ₄ つの 効 果 があったかどうかを 具 体 的 に 検 証 す ることとする 1 第 1 カルテル 談 合 の 発 見 率 は 高 まったか? 表 ₁ は 公 正 取 引 委 員 会 が 発 表 している 課 徴 金 減 免 の 申 請 件 数 の 推 移 である これによれば 2006 年 ₁ 月 に 課 徴 金 減 免 制 度 が 導 入 されて 以 来 のべ623 件 ( 年 平 均 90 件 )の 課 徴 金 減 免 の 申 請 があり 申 請 件 数 は 年 々 増 加 傾 向 にあるとのことである また 同 じ 公 正 取 引 委 員 会 の 公 表 資 料 によれば 同 委 員 会 が 2006 年 度 以 降 カルテル 談 合 に 関 して 法 的 措 置 を 採 った 事 件 数 は89 件 で このうち67 件 が 減 免 制 度 適 用 事 件 であったとされている すなわち カル テル 談 合 事 件 ₄ 件 のうち ₃ 件 は 課 徴 金 減 免 制 度 の 適 用 があったということであり かなり 高 い 割 合 といえる また 2006 年 度 以 降 の 課 徴 金 総 額 は いずれの 年 も 公 正 取 引 委 員 会 の 年 間 予 算 で ある87.4 億 円 を 上 回 っており 大 型 事 件 の 摘 発 が 相 次 いでいることを 示 している 次 に どのような 事 業 者 が 減 免 制 度 の 適 用 を 受 けたかをみてみたい 公 正 取 引 委 員 会 のホームページには 減 免 制 度 が 適 用 された 事 件 名 と 当 該 事 業 者 が 同 意 した 場 合 には 事 業 者 名 が それぞれ 公 表 される 課 徴 金 減 免 の 適 用 を 受 けた 事 業 者 は 世 間 に 独 占 禁 止 法 のコンプライアンスに 努 力 している 企 業 だ と PR できるし また 官 公 庁 の 指 名 停 止 期 間 が 短 縮 されるというメリットがあるので 公 表 を 希 望 する 事 業 者 が 多 いと 聞 いている 公 正 取 引 委 員 会 のホームページで 公 表 されている 課 徴 金 減 免 制 度 が 適 用 された 事 件 および 事 業 者 は のべ[67 事 件 161 事 業 者 ]に 上 っている このうち 課 徴 金 を 全 額 免 除 されたのは[37 事 件 37 事 業 者 ] 50% 減 額 されたのが[ ₉ 事 件 ₉ 事 業 者 ] 30% 減 額 されたのが[103 事 業 者 ]で 表 1 課 徴 金 減 免 申 請 件 数 の 推 移 年 度 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 合 計 申 請 件 数 26 79 74 85 85 131 143 623 資 料 出 所 : 公 正 取 引 委 員 会 平 成 23 年 度 における 独 占 禁 止 法 違 反 事 件 の 処 理 状 況 について ₄ 頁 6
ある このほか 課 徴 金 額 が100 万 円 未 満 であったなどが[12 事 業 者 ]となっている 最 初 にリーニエンシーを 申 請 した 事 業 者 は 当 該 事 業 者 が 申 請 しなかったならば 違 反 行 為 が 発 見 できなかったかもしれない という 意 味 で 貴 重 な 存 在 といえる そこで 課 徴 金 の 全 額 免 除 を 受 けた[37 事 件 37 事 業 者 ]を 子 細 にみてみると 以 下 のとおり 特 定 の 事 業 者 が 複 数 事 件 についてリーニエンシーを 申 請 していることが 分 かる トンネル 換 気 設 備 工 事 談 合 事 件 および 水 門 設 備 工 事 談 合 事 件 の ₃ 件 の 計 ₄ 件 ( 三 菱 重 工 業 ) ガス 用 ポリエチレン 管 同 継 手 製 造 業 者 カルテル 事 件 の ₂ 件 ( 富 士 化 工 ) ガス 用 フレキシブル 管 製 造 業 者 カルテル 事 件 の ₂ 件 ( 日 立 金 属 ) エックス 線 装 置 関 連 カルテル 事 件 の ₄ 件 ( 日 立 メディコ) 鉄 鋼 製 品 に 係 るカルテル 事 件 の ₂ 件 ( 住 友 金 属 工 業 ) 鋼 板 製 造 業 者 カルテル 事 件 の ₃ 件 (JFE 鋼 板 ) 電 線 ケーブルのカルテル 事 件 の ₂ 件 ( 昭 和 電 線 ケーブル) 自 動 車 メーカー 発 注 ワイヤーハーネス 等 談 合 事 件 の ₄ 件 ( 古 河 電 気 工 業 ) 以 上 のとおり 課 徴 金 が 全 額 免 除 された37 事 件 のうち ₆ 割 強 を 占 める23 事 件 が 三 菱 重 工 業 ら ₈ 社 からの 情 報 提 供 により 発 覚 した 事 件 ということになる 特 定 の 事 業 者 の 情 報 提 供 が 複 数 事 件 の 摘 発 に 繋 がったことになる 以 上 から 課 徴 金 減 免 制 度 の 導 入 によって カルテル 談 合 事 件 の 発 見 率 が 高 まっており と りわけ 大 型 のカルテル 談 合 事 件 の 摘 発 にも 役 立 っているといえる 2 第 2 事 件 審 査 を 容 易 化 迅 速 化 することはできたか? 結 論 を 先 に 言 えば この 答 えは 残 念 ながら NO である まず 公 正 取 引 委 員 会 が 公 表 している 平 均 事 件 処 理 期 間 をみてみると 2005 年 度 の 平 均 処 理 期 間 は 約 ₈ ヶ 月 であったが 2011 年 度 にはそれが 約 ₂ 倍 の 約 15ヶ 月 に 延 びており 処 理 期 間 の 長 期 化 が 目 立 っているのである 表 ₂ は 公 正 取 引 委 員 会 の 事 件 処 理 件 数 および 定 員 の 推 移 である 表 2 公 正 取 引 委 員 会 の 事 件 処 理 件 数 および 定 員 の 推 移 期 間 ( 年 度 ) 処 理 件 数 ( 件 ) 定 員 ( 人 ) 1 人 当 たり 処 理 件 数 ( 件 ) 指 数 1992~1996 141 507 0.278 100 1997~2001 141 558 0.253 91 2002~2006 129 673 0.192 69 2007~2011 101 785 0.128 46 資 料 出 所 : 事 件 数 は 年 次 報 告 定 員 は2011 年 ₇ 月 20 日 の 事 務 総 長 定 例 会 見 の 配 付 資 料 数 字 で 見 る 公 取 委 の 歴 史 による 上 表 から 明 らかなように 公 正 取 引 委 員 会 の 職 員 ₁ 人 あたり 事 件 処 理 件 数 は 年 々 低 下 する 傾 向 7
があり とりわけ 最 近 ₅ 年 間 の 減 少 幅 が 目 立 っているのである 以 上 から 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 によって 事 件 審 査 の 容 易 化 迅 速 化 の 効 果 は 見 られないとい う 結 論 になる 3 第 3 カルテル 談 合 の 抑 止 効 果 はあったか? 以 下 では ₂ つの 事 例 を 紹 介 することで カルテル 談 合 の 抑 止 効 果 はあったかどうかを 探 り たいと 思 う < 事 例 1 > スーパーゼネコンの 談 合 離 脱 宣 言 2005 年 12 月 末 鹿 島 建 設 大 林 組 大 成 建 設 清 水 建 設 のスーパーゼネコンといわれる ₄ 社 の 社 長 が 話 し 合 って 談 合 離 脱 宣 言 をした( 全 国 紙 にスクープ 記 事 として 掲 載 された ) このス ーパーゼネコンの 行 動 は 日 本 国 中 を 驚 かせた それまで 建 設 業 界 において 談 合 が 行 われてい るだろうことは 国 民 のほとんどが 認 識 していたが その 確 証 はなかった しかし この 宣 言 でそれまで 談 合 があったことが 明 るみになった この 宣 言 後 建 設 業 界 の 談 合 が 大 幅 に 減 っていることは 確 かである( 鈴 木 満 著 談 合 を 防 止 する 自 治 体 の 入 札 改 革 ( 学 陽 書 房 2008 年 )160 頁 以 下 ) それでは スーパーゼネコンの 社 長 らが なにゆえこのような 行 動 にでたのであろうか そ れは 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 によってカルテル 談 合 の 発 見 率 が 高 まり カルテルや 談 合 をする と 厳 しいペナルティを 被 るという カルテル リスク が 増 大 することを 見 越 してのことだと 思 われる すなはち スーパーゼネコンの 談 合 離 脱 宣 言 は 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 効 果 の 表 れであると 考 えられる < 事 例 2 > 競 合 タイヤメーカー 社 長 の 同 席 拒 否 事 件 これは 筆 者 が 直 接 目 にした 課 徴 金 減 免 制 度 の 導 入 により 競 争 業 者 間 の 協 調 行 動 が 撹 乱 さ れた 事 例 である この 事 件 には 次 のような 背 景 事 情 が 存 在 していた 日 本 の 代 表 的 なタイヤメーカーである Y 社 は マリンホースについてカルテルをやってい た と 公 正 取 引 委 員 会 にリーニエンシーを 申 請 し 課 徴 金 が 免 除 されていた 同 社 は 海 外 で もカルテルをやっていたと 米 国 EU の 競 争 当 局 にリーニエンシーを 申 請 し 刑 事 罰 や 制 裁 金 を 免 れていた これに 対 しタイヤのトップメーカーの B 社 は Y 社 からかなり 遅 れて 公 正 取 引 委 員 会 にリーニエンシーを 申 請 した その 結 果 多 額 の 課 徴 金 や 制 裁 金 を 支 払 い 社 員 が 刑 事 罰 も 受 けていた このような 背 景 事 情 の 下 で タイヤ 業 界 のパーティが 開 催 され 筆 者 も 出 席 していた Y 社 の 社 長 がそのパーティ 会 場 に 現 れたとたん B 社 の 社 長 が 足 早 にパーティ 会 場 から 退 席 するのを 目 撃 した そこで 筆 者 は 次 のようなことを 考 えた 8
B 社 の 社 長 は 沈 黙 の 掟 を 破 った Y 社 に 対 し 心 証 を 害 しており Y 社 の 社 長 との 同 席 を 嫌 ったのであろう この 様 子 をみると 課 徴 金 減 免 制 度 が 撹 乱 要 因 になり タイヤ 業 界 では 当 分 の 間 カルテル 談 合 が 行 われることはないだろう 以 上 ₂ つの 事 例 から 減 免 制 度 導 入 によるカルテル 談 合 の 抑 止 効 果 はかなりあったと 考 え る 4 第 4 独 占 禁 止 法 コンプライアンスの 普 及 が 期 待 できるか? 最 近 摘 発 された ₅ 件 の 大 型 カルテル 談 合 事 件 における 事 業 者 のビヘイビアを 通 して 課 徴 金 減 免 制 度 導 入 によって 独 占 禁 止 法 コンプライアンスの 普 及 が 期 待 できるかどうかを 検 証 してみ たい < 事 例 1 > 光 ファイバーケーブル 談 合 事 件 (2010 年 5 月 21 日 命 令 ) この 事 件 は NTT 向 けの 光 ファイバーケーブル 製 品 についての 談 合 であり 住 友 電 気 工 業 に 対 して67 億 6272 万 円 古 河 電 気 工 業 に 対 して46 億 0602 万 円 フジクラに 対 して44 億 1164 万 円 のべ14 社 に 対 し 総 額 160 億 9943 万 円 の 課 徴 金 が 課 された 古 河 電 気 工 業 は 調 査 開 始 後 に 減 額 申 請 して 課 徴 金 の30% 減 額 措 置 を 受 けている 仮 に 減 額 を 受 けなかったら 同 社 はおおよそ20 億 円 余 計 に 課 徴 金 を 取 られていたことになる この 古 河 電 気 工 業 の 対 応 を 知 った 住 友 電 気 工 業 の 株 主 は 2010 年 12 月 ₁ 日 大 阪 地 裁 に 対 し 同 社 の 役 員 を 相 手 に 総 額 67 億 円 余 の 損 害 を 賠 償 するように 求 めるいわゆる 株 主 代 表 訴 訟 を 提 起 した この 訴 訟 提 起 は 会 社 役 員 の 独 占 禁 止 法 コンプライアンスを 強 める 効 果 があると 思 われる < 事 例 2 > 溶 融 亜 鉛 メッキカルテル 事 件 (2009 年 8 月 27 日 命 令 ) この 事 件 では 日 鉄 住 金 鋼 板 に 対 して63 億 4067 万 円 日 新 製 鋼 に 対 して54 億 9075 万 円 淀 川 製 鋼 所 に 対 して36 億 7567 万 円 のべ ₉ 社 に 対 し 総 額 155 億 0718 万 円 の 課 徴 金 が 課 せられた 日 鉄 住 金 鋼 板 は 社 内 調 査 の 結 果 からカルテルの 存 在 を 知 り カルテルからの 脱 退 を 他 社 に 通 告 したが 自 らはリーニエンシーを 申 請 しなかった これに 対 し 日 鉄 住 金 鋼 板 からカルテル からの 離 脱 の 通 告 を 聞 いた JFE 鋼 板 は 直 ちに 公 正 取 引 委 員 会 にリーニエンシーを 申 請 し 最 初 の 申 請 者 として 課 徴 金 が 全 額 免 除 された 公 正 取 引 委 員 会 は この 申 請 を 基 に 調 査 を 開 始 し た 慌 てた 日 鉄 住 金 鋼 板 は 公 正 取 引 委 員 会 の 調 査 開 始 後 にリーニエンシーを 申 請 し 課 徴 金 の30% 減 額 措 置 を 受 けた 仮 に 日 鉄 住 金 鋼 板 が 他 社 にカルテルからの 離 脱 を 通 告 する 前 に リーニエンシーを 先 制 していれば 課 徴 金 の 全 額 免 除 措 置 を 受 けていたはずである 同 社 がな にゆえ 他 社 に 通 告 する 前 にリーニエンシーを 申 請 しなかったかが 理 解 できない この 事 例 は 多 くの 企 業 にリーニエンシー 申 請 に 際 しどのように 行 動 したらよいかを 教 えて くれている 9
< 事 例 3 > 特 定 エアセパレートガスカルテル 事 件 (2011 年 5 月 26 日 命 令 ) この 事 件 では 太 陽 日 酸 に 対 して51 億 4456 万 円 日 本 エアリキッドに 対 して48 億 2216 万 円 エア ウォーターに 対 して36 億 3911 万 円 岩 谷 産 業 に 対 して ₄ 億 9902 万 円 計 ₄ 社 に 対 し 総 額 141 億 0485 万 円 の 課 徴 金 が 課 せられた この 場 合 太 陽 日 酸 および 岩 谷 産 業 は 調 査 開 始 後 に 申 請 して 課 徴 金 を30% 減 額 されたが 仮 に 日 本 エアリキッドが 立 入 検 査 後 にリーニエンシーを 申 請 していれば 課 徴 金 を14.5 億 円 減 らせたはずである この 事 例 は 速 やかに 申 請 できるよう 独 占 禁 止 法 のコンプライアンス 整 備 する 必 要 性 を 教 えてくれている < 事 例 4 > 自 動 車 向 けワイヤーハーネス 受 注 調 整 事 件 (2012 年 1 月 19 日 命 令 ) この 事 件 では 矢 崎 総 業 に 対 して96 億 0713 万 円 住 友 電 気 工 業 に 対 して21 億 0222 万 円 フジ クラに 対 して11 億 8232 万 円 など のべ ₇ 社 に 対 し 総 額 128 億 9167 万 円 の 課 徴 金 が 課 せられた 古 河 電 気 工 業 は 立 入 検 査 前 に 最 初 にリーニエンシーを 申 請 し 徴 金 が 全 額 免 除 された ま た 住 友 電 気 工 業 は ₂ 番 目 に 申 請 し 50% 減 額 措 置 を 矢 崎 総 業 は 調 査 開 始 後 に 申 請 し 30% 減 額 措 置 を 受 けた 古 河 電 気 工 業 は 米 国 反 トラスト 法 違 反 に 問 われたのを 契 機 に 公 正 取 引 委 員 会 に 減 免 措 置 を 最 初 に 申 請 したが 同 じ 状 況 にあった 住 友 電 気 工 業 は 申 請 が 遅 れたため 最 初 の 申 請 者 にはな れなかった この 事 例 は リーニエンシーの 申 請 には 素 早 い 行 動 が 求 められることを 教 えてくれている < 事 例 5 > 塩 化 ビニル 管 同 継 手 カルテル 事 件 (2009 年 2 月 18 日 命 令 ) この 事 件 では 積 水 化 学 に 対 して79 億 6532 万 円 三 菱 樹 脂 に 対 して37 億 2137 万 円 計 ₂ 社 に 対 し 総 額 116 億 8669 万 円 の 課 徴 金 が 課 せられている なお クボタシーアイ 積 水 化 学 三 菱 樹 脂 の ₃ 社 は 別 の ₂ 件 で 排 除 措 置 命 令 を 受 けていた クボタシーアイは この 経 験 を 活 かし 最 初 にリーニエンシーを 申 請 し 課 徴 金 の 全 額 免 除 を 受 けている しかし 積 水 化 学 および 三 菱 樹 脂 の ₂ 社 は クボタシーアイと 同 様 の 事 情 にありながら リーニエンシーを 申 請 しなかっ た この 事 例 は 弁 護 士 や 役 職 員 の 独 占 禁 止 法 のコンプライアンス 意 識 を 高 める 重 要 性 を 教 えて くれている 8. 日 本 の 課 徴 金 減 免 制 度 の 課 題 最 後 に 日 本 の 課 徴 金 減 免 制 度 の 課 題 を 検 討 することとする 第 一 の 課 題 は 徴 金 の 算 定 に 当 たって 公 正 取 引 委 員 会 の 裁 量 を 一 切 認 めないという 硬 直 性 をこ のままにしてよいかということである 前 記 のとおり 課 徴 金 の 算 定 に 当 たって 裁 量 を 認 めると 公 正 取 引 委 員 会 の 事 件 処 理 に 支 障 があるという 理 由 で 非 裁 量 性 が 採 用 されたものと 解 されるが 10
硬 直 性 が 事 業 者 の 抵 抗 を 強 め 逆 に 事 件 処 理 を 遅 らせている 面 もあるように 思 われる 第 二 の 課 題 は 親 子 関 係 にある 事 業 者 を 一 体 とみて 課 徴 金 を 算 定 すべきではないかということ である 現 行 法 では 原 則 として 違 反 行 為 の 対 象 になった 商 品 等 の 売 上 高 に 課 徴 金 が 課 せられ るが これを 会 社 全 体 の 売 上 高 に 課 徴 金 を 賦 課 できるようにすれば さらに 抑 止 力 が 強 めること ができると 考 えられる 第 三 の 課 題 は 事 業 者 の 売 上 高 全 体 を 課 徴 金 賦 課 の 対 象 にすべきではないかということであ る 国 際 カルテルの 場 合 違 法 行 為 に 関 与 するのは 海 外 に 所 在 する 本 社 であり 日 本 の 子 会 社 はそ の 指 示 に 従 って 行 動 していることが 多 いと 思 われる この 場 合 日 本 の 子 会 社 の 売 上 高 を 親 会 社 の 日 本 における 売 上 高 とみなして 海 外 の 親 会 社 の 売 上 高 全 体 に 課 徴 金 を 課 することができるよ うになれば さらに 抑 止 力 を 強 めることができる 第 四 の 課 題 は 公 正 取 引 委 員 会 の 事 件 処 理 能 力 の 低 下 をどう 克 服 するかということである 事 件 処 理 の 効 率 化 迅 速 化 を 図 るためには 1 申 請 企 業 から より 精 緻 な 内 容 の 報 告 書 の 提 出 を 求 めて 情 報 の 精 度 を 高 める 必 要 があり 2 申 請 事 業 者 に 対 し 公 正 取 引 委 員 会 の 審 査 に 全 面 的 に 協 力 する 義 務 を 課 す 必 要 があり さらに 3 公 正 取 引 委 員 会 の 職 員 に 対 する 研 修 を 強 化 拡 充 して 処 理 能 力 を 高 める 必 要 がある 11