かかりつけ 医 のための BPSDに に 対 応 する 向 精 神 薬 使 用 ガイドライン( 第 2 版 ) 本 ガイドライン 作 成 の 背 景 と 目 的 平 成 27 年 度 厚 生 労 働 科 学 特 別 研 究 事 業 によるかかりつけ 医 500 人 の 調 査 では 家 族 がもっとも 困 る 症 状 はもの 忘 れと 共 に 興 奮 性 BPSDであり かかりつけ 医 の 半 数 以 上 がそれらに 対 して 抗 精 神 病 薬 を 処 方 しているとの 結 果 であった しかし 本 ガイドライン 初 版 を 常 時 参 考 にしているかかりつけ 医 は 約 10%のみであり 抗 精 神 病 薬 使 用 の 多 くで 家 族 からその 同 意 を 常 に 得 ているかかりつけ 医 は 28%であることも 明 らかとなった 認 知 症 の 人 に 対 する 薬 物 治 療 は 認 知 症 原 因 疾 患 の 適 切 な 鑑 別 診 断 のもと 行 われることが 重 要 で あり 必 要 に 応 じて 認 知 症 疾 患 医 療 センターなどの 専 門 医 療 機 関 との 連 携 のもとに 身 近 な 存 在 の かかりつけ 医 が 適 切 に 使 用 することで 認 知 症 の 人 のQOL 向 上 につながると 考 えられる 今 回 は 各 薬 剤 の 有 効 性 と 副 作 用 について 明 確 に 記 載 するなどの 改 訂 を 中 心 にしてガイドライン 第 2 版 を 作 成 し た ガイドライン 第 2 版 の 利 用 にあたって 今 回 の 改 訂 は 治 療 アルゴリズムや 各 薬 剤 の 有 効 性 と 副 作 用 を 中 心 に 分 かりやすく 記 載 した 小 改 訂 であり 従 来 のガイドライン( 初 版 )の 継 続 利 用 も 可 能 であるが 医 療 安 全 の 観 点 から 第 2 版 の 使 用 を 推 奨 する EMBに 基 づく 認 知 症 治 療 ガイドラインは 既 に 日 本 神 経 学 会 を 中 心 にまとめられたものがあるが ここでは そのエビデンスを 踏 まえてより 実 践 的 なガイドライン 作 成 を 意 図 した まずは 非 薬 物 的 介 入 をご 家 族 や 介 護 スタッフと 検 討 し 実 施 すること その 上 でもなお 症 状 が 改 善 しない 際 に 薬 物 療 法 を 考 慮 すること 向 精 神 薬 ( 抗 認 知 症 薬 抗 精 神 病 薬 抗 うつ 薬 気 分 安 定 薬 抗 不 安 薬 睡 眠 導 入 薬 など)は 認 知 症 を 専 門 とする 医 師 による 診 断 と 治 療 方 針 を 踏 まえて 使 用 されることを 推 奨 する 激 しいBPSDと 関 連 してご 本 人 やご 家 族 の 生 命 や 健 康 を 損 なうおそれがある 場 合 は 各 地 区 の 認 知 症 疾 患 医 療 センターとの 連 携 を また 特 に 急 を 要 する 場 合 には 精 神 科 救 急 システムとの 連 携 を 推 奨 する 本 ガイドラインに 基 づく 診 療 を 継 続 する 中 で 病 状 が 悪 化 していると 判 断 される 場 合 は 認 知 症 を 専 門 とする 医 師 や 認 知 症 疾 患 医 療 センターとの 医 療 連 携 を 図 ることを 推 奨 する 継 続 使 用 でBPSDが 軽 快 していると 判 断 できる 場 合 は 減 量 中 止 の 重 要 性 に 常 に 留 意 し 必 要 に 応 じて 減 量 中 止 を 実 施 し できるだけ 長 期 使 用 は 避 けることを 推 奨 する ただし BPSDが 軽 快 した 段 階 での 抗 認 知 症 薬 の 減 量 中 止 に 関 しては 進 行 性 疾 患 であることを 鑑 み また 中 止 後 に 認 知 機 能 障 害 が 増 悪 したとの 報 告 もあることから 必 要 に 応 じて 医 療 連 携 のもとご 本 人 やご 家 族 の 理 解 を 得 ながら 慎 重 に 行 うことを 推 奨 する 平 成 27 年 度 厚 生 労 働 科 学 研 究 費 事 業 ( 厚 生 労 働 科 学 特 別 研 究 事 業 ) 認 知 症 に 対 するかかりつけ 医 の 向 精 神 薬 使 用 の 適 正 化 に 関 する 調 査 研 究 班 作 成
BPSD 治 療 アルゴリズム まずアルゴリズムにより 対 応 方 針 を 確 認 すること 非 薬 物 的 介 入 を 最 優 先 する 出 現 時 間 誘 因 環 境 要 因 などの 特 徴 を 探 り 家 族 や 介 護 スタッフとその 改 善 を 探 る デイサービスなどの 導 入 も 検 討 する 確 認 要 件 他 に 身 体 的 原 因 はない ( 特 に 感 染 症 脱 水 各 種 の 痛 み 視 覚 聴 覚 障 害 など) 他 の 薬 物 の 作 用 と 関 係 ない( 注 1) 服 薬 遵 守 に 問 題 ない ご 家 族 等 との 間 で 適 応 外 使 用 に 関 する インフォームドコンセントが 得 られている( 注 2) 注 1: 激 越 攻 撃 性 妄 想 幻 覚 抑 うつ 錯 乱 せ ん 妄 等 の 精 神 症 状 は 服 用 中 の 薬 剤 で 引 き 起 こされる 可 能 性 もある( 特 に 抗 認 知 症 薬 (コリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 メマンチン) H2ブロッカー 第 一 世 代 抗 ヒ スタミン 薬 ベンゾジアゼピン 系 薬 剤 三 環 系 抗 うつ 薬 その 他 の 抗 コリン 作 用 のある 薬 剤 ) 関 連 が 疑 わ れる 場 合 には 投 与 を 中 止 するなど 添 付 文 書 に 準 じた 適 切 な 処 置 を 行 うこと 薬 剤 については 高 齢 者 の 安 全 な 薬 物 療 法 ガイドライン2015( 日 本 老 年 医 学 会 ) を せん 妄 の 治 療 については せん 妄 の 治 療 指 針 第 2 版 ( 日 本 総 合 病 院 精 神 医 学 会 ) を 参 照 されたい < 抗 認 知 症 薬 を 含 め 保 険 適 応 外 使 用 が 多 いので 次 ページ 以 降 の 各 薬 剤 の 解 説 を 参 照 すること> 幻 覚 妄 想 抑 うつ 症 状 不 安 緊 張 睡 眠 障 害 過 食 異 食 徘 徊 焦 燥 攻 撃 性 アパシー( 無 為 ) 易 刺 激 性 介 護 への 抵 抗 抗 認 知 症 薬 の 副 作 用 を 否 定 した 上 で 保 険 適 用 上 の 最 大 用 量 以 下 もしくは 未 服 用 の 場 合 には メマ ンチンやコリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 の 増 量 もしくは 投 与 開 始 も 検 討 可 能 だが 逆 に 増 悪 させることもある ので 注 意 が 必 要 である これらにより 標 的 症 状 が 改 善 しない 場 合 は その 薬 剤 は 減 量 中 止 の 上 抗 精 神 病 薬 抑 肝 散 や 気 分 安 定 薬 ( 注 3)の 使 用 を 検 討 する なお 抗 認 知 症 薬 は 重 症 度 によって 保 険 適 用 薬 が 異 なるので 注 意 すること( 次 頁 参 照 ) コリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 抗 精 神 病 薬 抗 不 安 睡 眠 覚 醒 リズムの 確 向 精 神 薬 の 有 効 性 を 示 唆 を 用 い 改 善 しない 場 合 薬 抗 うつ 薬 の 有 効 性 立 のための 環 境 調 整 するエビデンスは 不 十 分 抗 うつ 薬 の 使 用 を 検 討 が 示 唆 されているが を 行 ったうえで 病 態 で 科 学 的 根 拠 に 乏 しい する 抗 不 安 薬 は 中 等 度 以 上 の 認 知 症 では 使 用 しない に 応 じて 睡 眠 導 入 薬 / 抗 うつ 薬 / 抗 精 神 病 薬 の 使 用 を 検 討 する 低 用 量 で 開 始 し 症 状 をみながら 漸 増 する どの 薬 剤 でも 添 付 文 書 の 最 高 用 量 を 超 えないこと 薬 物 相 互 作 用 に 注 意 すること 用 量 の 設 定 では 年 齢 体 重 肝 腎 脳 機 能 などの 身 体 的 状 況 を 勘 案 すること 日 常 生 活 のチェック ( 必 ずチェックしてから 薬 物 投 与 を 開 始 して 下 さい ) 日 中 の 過 ごし 方 の 変 化 昼 間 の 覚 醒 度 の 変 化 眠 気 の 有 無 夜 間 の 睡 眠 状 態 ( 就 眠 時 間 起 床 時 間 夜 間 の 徘 徊 回 数 ねど)の 変 化 服 薬 状 況 ( 介 護 者 / 家 族 がどの 程 度 服 薬 を 確 認 しているかなど)の 確 認 特 に 制 限 を 必 要 としない 限 り 水 分 の 摂 取 状 況 食 事 の 摂 取 状 況 パーキンソン 症 状 の 有 無 ( 振 戦 筋 強 剛 寡 動 小 刻 み 歩 行 前 傾 姿 勢 仮 面 様 顔 貌 など) 転 倒 傾 向 の 有 無 薬 物 療 法 のリスク ベネフィットを 常 に 考 慮 する QOLの 確 保 に 逆 効 果 であると 判 断 すれば 減 量 中 止 を 行 う 注 2:かかりつけ 医 は まずなるべ く 平 明 な 表 現 でもって 薬 剤 使 用 の 一 般 的 な 利 益 不 利 益 を 説 明 し 本 人 の 意 向 を 把 握 するよう 努 める 必 要 がある 平 明 な 表 現 で 説 明 をしても なお 本 人 の 理 解 が 及 ばない 場 合 や 本 人 の 意 向 が 確 認 できない 場 合 ま たは 妄 想 などと 関 連 して 自 己 の 医 療 についての 利 益 不 利 益 を 判 断 する 実 際 的 能 力 を 明 らかに 欠 く 場 合 には 本 人 の 同 意 以 外 に 治 療 上 の 根 拠 を 探 すべきである 具 体 的 には 第 一 に 事 前 指 示 書 の 有 無 を 確 認 する 必 要 が ある 事 前 指 示 書 により 代 理 人 の 指 定 がある 場 合 には 本 人 が 指 定 した 代 理 人 に 対 してインフォームドコン セントを 行 う 事 前 指 示 書 などによ る 事 前 の 代 理 人 指 定 がない 場 合 には 適 当 な 家 族 ( 本 人 との 間 に 信 頼 関 係 があることが 望 ましい)に 対 してイ ンフォームドコンセントを 行 うこと が 適 当 である ( 白 石 弘 巳 : 老 年 精 神 医 学 雑 誌, 2002) 注 3: 抑 肝 散 バルプロ 酸 カルバマ ゼピンは 焦 燥 性 興 奮 に 対 して 有 効 で あったとの 報 告 があるが 科 学 的 根 拠 は 十 分 でなく 必 要 な 場 合 には 考 慮 しても 良 い とくに 高 齢 者 の 興 奮 症 状 の 場 合 は 副 作 用 の 観 点 から 抗 精 神 病 薬 投 与 の 前 に 検 討 することは 可 能 ただし 抑 肝 酸 による 低 カリウ ム 血 症 バルプロ 酸 による 死 亡 リス ク カルバマゼピンによる 皮 膚 粘 膜 眼 症 候 群 (Stevens-Johnson 症 候 群 )に はとくに 注 意 する
BPSD 治 療 に 使 われる 主 な 向 精 神 薬 : 使 い 方 の 留 意 点 抗 認 知 症 薬 アルツハイマー 型 認 知 症 にはコリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 およびメマンチン レビー 小 体 型 認 知 症 にはドネペジ ルが 保 険 適 用 を 受 けているが 他 の 認 知 症 疾 患 に 対 する 使 用 は 適 応 外 使 用 となる また 上 記 のような 適 応 内 の 使 用 であっても BPSDの 種 類 によっては 増 悪 することもあるので 常 にリスクベネフィットの 観 点 から 使 用 の 妥 当 性 を 検 討 すべきである コリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 は 抑 うつ アパシー 意 欲 低 下 不 安 幻 覚 妄 想 興 奮 攻 撃 性 易 刺 激 性 などに 有 効 であったとの 報 告 があるが 薬 剤 間 研 究 間 でばらつきがみられ 科 学 的 根 拠 は 不 十 分 で 実 臨 床 では 症 例 ごとに 効 果 を 評 価 する 必 要 がある 重 症 度 ( 病 期 )によって 使 えるコリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 に 違 いがある ので 軽 度 中 等 度 高 度 障 害 の 判 定 が 重 要 となり 病 期 に 基 づいて 適 応 外 となった 際 は 医 療 連 携 の 中 で 中 止 を 含 めて 慎 重 に 検 討 されることを 推 奨 する メマンチンは 興 奮 攻 撃 性 易 刺 激 性 行 動 変 化 異 常 行 動 妄 想 に 有 効 であったとの 報 告 が 複 数 あるが 統 計 学 的 に 有 意 差 を 認 めなかったという 論 文 もあり 科 学 的 根 拠 が 不 十 分 である レビー 小 体 型 認 知 症 へのドネペジル 投 与 は 本 邦 で 行 われた 第 III 相 治 験 では 実 薬 群 プラセボ 群 とも 明 らかなBPSD 改 善 がある 一 方 両 群 間 では 統 計 学 的 に 有 意 差 は 得 られなかった したがって レビー 小 体 型 認 知 症 のBPSDに 対 するドネペジルの 有 効 性 は 確 認 されていないが 本 邦 で 行 われた 第 II 相 治 験 では 探 索 的 有 効 性 評 価 の 一 つでBPSDに 対 する 有 効 性 が 確 認 されていること そしてレビー 小 体 型 認 知 症 では 抗 精 神 病 薬 などへの 過 敏 な 反 応 ( 少 量 でも 重 篤 な 副 作 用 が 出 やすい)が 懸 念 されることから レビー 小 体 型 認 知 症 の BPSDが 非 薬 物 的 介 入 のみで 改 善 しない 場 合 ドネペジルは 選 択 肢 の 一 つとして 検 討 可 能 である ただし ド ネペジルにより 逆 に 症 状 を 悪 化 させることもあるのでその 際 には 中 止 すること コリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 : 心 伝 導 障 害 や 不 整 脈 失 神 虚 血 性 心 疾 患 消 化 性 潰 瘍 肝 機 能 異 常 痙 攣 脳 血 管 障 害 錐 体 外 路 症 状 また 食 欲 不 振 嘔 気 嘔 吐 腹 痛 下 痢 めまい CK 上 昇 貧 血 等 ならびに 活 動 性 亢 進 に 関 連 すると 思 われるBPSD 出 現 ( 興 奮 不 眠 不 穏 幻 覚 ほか)に 注 意 する また 上 記 副 作 用 として 挙 げた 疾 患 が 併 存 する 場 合 非 ステロイド 性 消 炎 鎮 痛 剤 投 与 中 尿 路 閉 塞 気 管 支 喘 息 閉 塞 性 肺 疾 患 やその 既 往 等 がある 例 では 慎 重 に 投 与 する 貼 布 剤 では 紅 斑 搔 痒 皮 膚 炎 等 の 局 所 症 状 に 注 意 する メマンチン: けいれん 精 神 症 状 ( 激 越 攻 撃 性 妄 想 その 他 の 興 奮 性 BPSD) めまい 傾 眠 転 倒 頭 痛 肝 機 能 異 常 CK 上 昇 便 秘 食 欲 不 振 血 圧 上 昇 血 糖 値 上 昇 浮 腫 体 重 減 少 等 に 注 意 する けいれんの 既 往 腎 機 能 障 害 重 症 尿 路 感 染 等 尿 phを 上 昇 させる 要 因 高 度 の 肝 機 能 障 害 等 がある 例 で は 慎 重 に 投 与 すること 定 められた 開 始 用 量 から 始 め 漸 増 すること ただし 副 作 用 により 増 量 できない 時 には 中 途 の 用 量 でとどめ るか または 他 剤 への 変 更 を 考 慮 する 高 齢 低 体 重 肝 腎 機 能 低 下 過 敏 などの 状 況 を 勘 案 し 添 付 文 書 の 最 高 用 量 を 超 えないこと 適 用 用 量 より 少 量 の 投 与 継 続 については 認 知 機 能 障 害 への 有 効 性 や 副 作 用 出 現 頻 度 等 に 関 するエ ビデンスは 得 られていないことに 留 意 する なお 厚 生 労 働 省 は 国 民 健 康 保 険 中 央 会 と 社 会 保 険 診 療 報 酬 支 払 基 金 に 対 して 抗 認 知 症 薬 の 少 量 投 与 については 個 々の 患 者 の 症 状 に 応 じて 薬 剤 費 の 支 払 い に 関 する 判 断 を 行 うようにとの 事 務 連 絡 を 行 っているので(2016 年 6 月 1 日 ) 少 量 投 与 に 関 してはレセプト の 摘 要 欄 にその 理 由 などを 記 載 することが 望 ましい 投 与 後 に 活 動 性 増 加 や 易 怒 性 などで 介 護 負 担 がむしろ 増 大 する 場 合 は 中 止 し 他 剤 に 切 り 替 える BPSD 発 現 には 脳 病 変 の 進 行 生 活 環 境 対 人 関 係 本 人 の 性 格 など 多 様 な 要 因 が 関 わるため 個 々 の 症 例 ごとに 最 適 な 治 療 を 得 るよう 努 める 必 要 がある 薬 物 相 互 作 用 に 注 意 すること コリン 分 解 酵 素 阻 害 薬 ではコリン 作 動 性 薬 剤 との 併 用 による 相 互 の 作 用 増 強 抗 コリン 薬 による 相 互 の 作 用 減 弱 に 注 意 する メマンチンはドパミン 作 動 薬 の 作 用 を 増 強 する 可 能 性 がある アマンタジンとメマ ンチンは 相 互 に 作 用 を 増 強 する 可 能 性 がある 減 量 中 止 に 関 しては 進 行 性 疾 患 であることを 鑑 み また 中 止 後 に 認 知 機 能 障 害 が 増 悪 したとの 報 告 もあることから 専 門 医 へのコンサルテーションおよびご 家 族 の 同 意 のもとに 行 うことを 推 奨 する
抗 精 神 病 薬 アルツハイマー 病 を 始 め 認 知 症 疾 患 に 対 する 抗 精 神 病 薬 の 使 用 は 適 応 外 使 用 であり 患 者 のリスクベネ フィットを 考 慮 し 充 分 なインフォームドコンセントを 行 って 使 用 する 有 効 性 の 評 価 を 行 い 常 に 減 薬 中 止 が 可 能 か 検 討 する 幻 覚 妄 想 に 対 して リスペリドン オランザピン アリピプラゾールなどの 使 用 を 推 奨 する クエチアピンの 使 用 を 検 討 してもよい レビー 小 体 型 認 知 症 のBPSDに 対 して クエチアピンとオランザピンの 使 用 を 考 慮 しても 良 い 不 安 に 対 して リスペリドン オランザピンの 使 用 が 推 奨 され クエチアピンの 使 用 が 考 慮 してもよい 焦 燥 性 興 奮 (agitation) には リスペリドン アリピプラゾールは 有 効 性 が 実 証 されており 使 用 を 推 奨 する オラ ンザピンについては 使 用 を 検 討 してもよい チアプリドも 興 奮 や 攻 撃 性 に 対 する 有 効 性 が 報 告 され 脳 梗 塞 後 遺 症 に 伴 う 精 神 興 奮 徘 徊 せん 妄 に 保 険 適 応 もあるため 考 慮 してもよい 暴 力 や 不 穏 に 対 して 抗 精 神 病 薬 の 使 用 を 考 慮 してもよい 睡 眠 障 害 に リスペリドンの 使 用 を 考 慮 してもよい 徘 徊 に 対 するリスペリドンの 使 用 を 考 慮 してもよいが 科 学 的 根 拠 が 不 十 分 である 性 的 脱 抑 制 に 抗 精 神 病 薬 の 使 用 を 考 慮 するが 科 学 的 根 拠 は 不 十 分 である なお 保 険 適 応 外 使 用 にはなるが クエチアピン ハロペリドール ペロスピロン リスペリドンに 関 しては 原 則 として 器 質 的 疾 患 に 伴 う せん 妄 精 神 運 動 興 奮 状 態 易 怒 性 に 対 して 処 方 した 場 合 当 該 使 用 事 例 を 審 査 上 認 めるとの 通 達 がある(2011 年 9 月 28 日 厚 生 労 働 省 保 険 局 医 療 課 長 保 医 発 0928 第 1 号 社 会 保 険 診 療 報 酬 支 払 基 金 第 9 次 審 査 情 報 提 供 ) 高 齢 認 知 症 患 者 への 抗 精 神 病 薬 投 与 により 死 亡 率 が1.6~1.7 倍 高 くなる( 米 国 食 品 医 薬 品 局 (FDA) 2005 年 及 び2008 年 ) また 転 倒 や 骨 折 のリスクも 高 まるので 注 意 を 要 する よくみられる 副 作 用 として 眠 気 ふらつき 過 鎮 静 歩 行 障 害 嚥 下 障 害 構 音 障 害 寡 動 振 戦 起 立 性 低 血 圧 食 欲 低 下 などがあるので 注 意 する 低 用 量 で 開 始 し 症 状 をみながら 漸 増 すること 副 作 用 の 発 現 が 少 ないセロトニン ドパミン 受 容 体 拮 抗 薬 もしくはドパミン 受 容 体 部 分 刺 激 薬 を 使 用 する 抗 精 神 病 薬 の 併 用 (2 剤 以 上 )は 避 ける 2 週 間 位 の 時 間 をかけて 薬 効 を 評 価 する 症 状 を 完 全 に 消 退 させるまで 増 量 するのではなく QOL 確 保 の 観 点 から 非 薬 物 療 法 との 併 用 のもと 維 持 用 量 を 検 討 する 副 作 用 を 認 めたら 速 やかに 減 量 もしくは 中 止 を 検 討 する 悪 性 症 候 群 など 重 篤 な 副 作 用 が 出 現 した 時 は 直 ちに 中 止 する 抗 精 神 病 薬 の 副 作 用 は 使 用 開 始 後 の 早 期 に 出 現 する 場 合 は 見 つけやすいが 一 ヶ 月 以 上 もしくはさらに 長 期 に 使 用 している 段 階 で 出 現 することもあるので 注 意 すること
アルツハイマー 病 を 始 め 認 知 症 疾 患 に 対 する 抗 うつ 薬 の 使 用 は 適 応 外 使 用 であり 患 者 のリスクベネフィット を 考 慮 し 充 分 なインフォームドコンセントを 行 って 使 用 する 有 効 性 の 評 価 を 行 い 常 に 減 薬 中 止 が 可 能 か 検 討 する 抑 うつ 状 態 に 対 して SSRI( 選 択 的 セロトニン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 )やSNRI(セロトニン ノルアドレナリン 再 取 り 込 み 阻 害 薬 )の 使 用 を 考 慮 してもよい 不 安 に 対 して トラゾドンの 有 効 性 が 報 告 されているが 科 学 的 根 拠 は 不 十 分 である 性 的 脱 抑 制 にたいしてSSRI トラゾドンの 使 用 が 報 告 されているが 科 学 的 根 拠 は 不 十 分 である 抑 うつとアパシーの 鑑 別 は 難 しい 場 合 も 少 なくなく アパシーはSSRIにより 悪 化 するリスクも 報 告 されているの で 必 要 に 応 じて 適 切 な 医 療 連 携 を 推 奨 する 抗 うつ 薬 全 般 の 副 作 用 は てんかん 発 作 閾 値 の 低 下 緑 内 障 の 悪 化 心 血 管 疾 患 の 悪 化 である SSRIで 頻 発 する 副 作 用 は 嘔 気 下 痢 などの 消 化 器 症 状 であり 多 くは 開 始 直 後 に 認 められる 食 直 後 に 服 用 する ゆっく りと 漸 増 するなどにより 対 応 する 症 状 が 強 い 時 は 中 止 し 変 薬 する また 転 倒 のリスクがある SSRIは 消 化 管 出 血 や 脳 出 血 のリスクを 高 めることが 報 告 されている NSAIDsや 抗 血 小 板 薬 との 併 用 は 注 意 を 要 する SSRI 以 外 で 留 意 する 副 作 用 は 前 立 腺 肥 大 症 状 の 悪 化 である 必 ず 初 期 投 与 量 から 開 始 し その 後 は 副 作 用 に 留 意 しつつ 必 要 に 応 じて 慎 重 に 常 用 量 まで 漸 増 する 三 環 系 抗 うつ 薬 は 認 知 機 能 低 下 などの 副 作 用 があるため 原 則 使 用 しない 併 存 する 身 体 疾 患 の 治 療 薬 と 併 用 する 際 には 併 用 禁 忌 薬 慎 重 投 与 薬 に 配 慮 が 必 要 であり 添 付 文 書 などの 医 薬 情 報 の 確 認 を 要 する
アルツハイマー 病 を 始 め 認 知 症 疾 患 に 対 する 抗 不 安 薬 の 使 用 は 適 応 外 使 用 であり 患 者 のリスクベネフィッ トを 考 慮 し 充 分 なインフォームドコンセントを 行 って 使 用 する 有 効 性 の 評 価 を 行 い 常 に 減 薬 中 止 が 可 能 か 検 討 する 中 等 度 以 上 の 認 知 症 患 者 の 不 安 症 状 にはベンゾジアゼピン 系 抗 不 安 薬 は 推 奨 しない 初 期 の 認 知 症 患 者 における 軽 度 の 不 安 症 状 に 対 して 有 効 性 が 報 告 されているが 科 学 的 根 拠 は 不 十 分 で ある レビー 小 体 型 認 知 症 のレム 睡 眠 行 動 異 常 に 対 してクロナゼパムの 使 用 を 考 慮 してもよい ベンゾジアゼピン 系 抗 不 安 薬 は 75 才 以 上 の 高 齢 者 中 等 度 以 上 の 認 知 症 患 者 には 副 作 用 が 発 現 しやすく せん 妄 過 鎮 静 運 動 失 調 転 倒 認 知 機 能 低 下 のリスクが 高 まるため 使 用 は 推 奨 しない 長 時 間 作 用 型 (ロフラゼプ 酸 エチルなど)は 短 時 間 作 用 型 (トリアゾラム エチゾラム クロチアゼパムなど)よ り 有 害 事 象 が 出 現 しやすい 短 時 間 作 用 型 (トリアゾラム エチゾラム クロチアゼパムなど)では 健 忘 連 用 後 の 中 断 で 反 跳 性 不 安 が 生 じることがある 一 時 的 に 使 用 し 長 期 もしくは 定 期 に 使 用 しない 多 くのベンゾジアゼピン 系 薬 物 は 肝 臓 で 代 謝 されるため 高 齢 者 では 常 用 量 より 少 ない 量 から 開 始 する まず 非 薬 物 療 法 的 介 入 ( 日 光 浴 日 中 の 離 床 やレクリエーションなどの 環 境 調 整 )を 試 みる 患 者 のリスクベ ネフィットを 考 慮 し 充 分 なインフォームドコンセントを 行 って 使 用 する やむを 得 ず 使 用 する 場 合 には 短 期 間 の 使 用 に 留 めることを 推 奨 する 従 来 よりベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 は 広 く 使 われてきたが 高 齢 者 に 対 して 睡 眠 薬 の 安 易 な 導 入 は 避 ける べきである また 高 齢 者 において 非 ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 がベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 よりも 安 全 とす る 根 拠 は 不 十 分 であるが 高 齢 者 では 睡 眠 薬 の 半 減 期 が 延 長 するため 超 短 時 間 作 用 型 の 非 ベンゾジアゼピ ン 系 睡 眠 薬 であるゾルピデム ゾピクロン エスゾピクロンを 考 慮 してもよい メラトニン 受 容 体 作 動 薬 やオレキシン 受 容 体 作 動 薬 の 使 用 も 考 慮 してもよいが その 有 効 性 や 副 作 用 につい ては 未 だ 科 学 的 根 拠 は 不 十 分 である ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 が 無 効 な 時 に 増 量 することは 推 奨 しない ベンゾジアゼピン 系 抗 不 安 薬 を 睡 眠 障 害 に 使 用 することは 推 奨 しない 非 ベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 も ベンゾジアゼピン 系 抗 不 安 薬 と 同 様 の 副 作 用 がある とくに 鎮 静 作 用 や 筋 弛 緩 作 用 からふらつきやすく 転 倒 や 骨 折 のリスクが 高 くなるので 夜 間 のトイレなどには 注 意 を 要 する 少 量 投 与 に 留 め 漫 然 と 長 期 に 投 与 せず 減 量 中 止 を 検 討 し 必 要 に 応 じて 医 療 連 携 を 利 用 しコンサル テーションを 仰 ぐ 従 来 から 既 にベンゾジアゼピン 系 睡 眠 薬 を 使 用 している 場 合 には 注 意 深 く 観 察 しながら 漸 減 するか ゾル ピデム ゾピクロン エスゾピクロンへの 切 り 替 えることを 考 慮 する 用 量 作 用 機 序 薬 物 名 対 象 特 徴 注 意 点 (mg) ゾルピデム 入 眠 障 害 超 短 時 間 作 用 型 半 減 期 2.5 時 間 5 GABA A 受 容 体 作 動 薬 ゾピクロン 入 眠 障 害 超 短 時 間 作 用 型 半 減 期 3.5-6.5 時 間 7.5 エスゾピクロン 入 眠 障 害 超 短 時 間 作 用 型 半 減 期 5.1 時 間 1-2 メラトニン 受 容 体 作 動 薬 ラメルテオン 不 眠 症 フルボキサミンとの 併 用 禁 忌 4-8 オレキシン 受 容 体 拮 抗 薬 スボレキサント 不 眠 症 半 減 期 10 時 間 15
参 考 資 料 文 献 参 考 資 料 1. 高 齢 者 の 安 全 な 薬 物 療 法 ガイドライン 2015. 日 本 老 年 医 学 会 2. 認 知 症 疾 患 治 療 ガイドライン 2010. 認 知 症 疾 患 治 療 ガイドライン 作 成 合 同 委 員 会 3. The International classification of Sleep Disorders, Diagnostic and Cording Manual, Second Edition (ICD-II). American Academy of Sleep Medicine, editor. Westchester, IL, 2005 4. BPSD 初 期 対 応 ガイドライン 2012. 精 神 症 状 行 動 異 常 (BPSD)を 示 す 認 知 症 患 者 の 初 期 対 応 の 指 針 作 成 研 究 班 5. 睡 眠 薬 の 適 正 使 用 ガイドライン 2014. 睡 眠 薬 の 適 正 使 用 及 び 減 量 中 止 のための 診 療 ガイドラインに 関 する 研 究 班 参 考 文 献 1. Wang J, Yu JT, Wang HF, Meng XF, Wang C, Tan CC, Tan L. Pharmacological treatment of neuropsychiatric symptoms in Alzheimer s disease: a systematic review and meta-analysis. J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2015;86(1):101-9. 2. Matsunaga S, Kishi T, Iwtaa N. Memantine monotherapy for Alzheimer s disease: a systematic review and meta-analysis. PLoS One. 2015 Apr 10;10(4):e0123289. 3. Stinton C, McKeith I, Taylor JP, Lafortune L, Mioshi E, Mak E, Cambridge V, Mason J, Thomas A, O'Brien JT. Pharmacological Management of Lewy Body Dementia: A Systematic Review and Meta-Analysis. Am J Psychiatry. 2015;172(8):731-42. 4. Street JS, Clark WS, Gannon KS, Cummings JL, Bymaster FP, Tamura RN, Mitan SJ, Kadam DL, Sanger TM, Feldman PD, Tollefson GD, Breier A. Olanzapine treatment of psychotic and behavioral symptoms in patients with Alzheimer disease in nursing care facilities: a double-blind, randomized, placebo-controlled trial. The HGEU Study Group. Arch Gen Psychiatry. 2000 ;57(10):968-76. 5. Bains J, Birks J, Dening T. Antidepressants for treating depression in dementia. Cochrane Database Syst Rev. 2002 Oct 21;(4):CD003944. Review. Pub. 6. American Geriatrics Society 2015 Updated Beers Criteria for Potentially Inappropriate Medication Use in Older Adults. J Am Geriatr Soc. 2015 ;63(11):2227-2246. 利 益 相 反 (COI) 開 示 日 本 医 学 会 医 学 研 究 のCOIマネージメントに 関 するガイドライン に 基 づく 所 属 学 会 利 益 相 反 指 針 に 従 い 利 益 相 反 を 公 開 した 2014 年 1 月 -2015 年 12 月 における 営 利 目 的 企 業 団 体 の 役 員 顧 問 などに 対 する 対 価 講 演 助 言 原 稿 執 筆 など への 謝 礼 奨 学 寄 附 金 などの 研 究 助 成 金 版 権 使 用 料 などに 関 する COI を 記 載 した 新 井 平 伊 ( 主 任 研 究 者 ) エーザイ( 株 ) 第 一 三 共 ( 株 ) ノバルティス( 株 ) イーライリリー( 株 ) 大 塚 製 薬 ( 株 ) 小 野 薬 品 工 業 ( 株 ) 秋 山 治 彦 ( 分 担 研 究 者 ) なし 石 郷 岡 純 ( 分 担 研 究 者 ) MSD( 株 ) 大 日 本 住 友 製 薬 ( 株 ) 大 塚 製 薬 ( 株 ) ノバルティス( 株 ) 武 田 薬 品 工 業 ( 株 ) 中 島 健 二 ( 分 担 研 究 者 ) エーザイ( 株 ) ノバルティス( 株 本 間 昭 ( 分 担 研 究 者 ) 認 知 症 総 合 支 援 機 構 株 式 会 社 エーザイ( 株 ) 第 一 三 共 ( 株 ) ヤンセンファーマ( 株 ) 小 野 薬 品 工 業 ( 株 ) 武 田 薬 品 工 業 ( 株 ) 大 塚 製 薬 ( 株 ) 佐 藤 製 薬 ( 株 ) ノバルテイス( 株 ) ( 株 )ワールドプランニング 三 菱 田 辺 製 薬 ( 株 ) ( 株 )Promedico COI マネージメント (1) 所 属 学 会 および 所 属 機 関 へ 申 告 のもと 規 約 に 則 りマネージメントされているが 加 えて 研 究 者 全 員 からの 申 告 を 受 けた 主 任 研 究 者 においても 管 理 している (2) 推 奨 する 薬 剤 の 選 択 は 研 究 におけるエビデンスを 最 優 先 し 決 定 したが エビデンスが 不 足 する 部 分 については エキスパートオピニオンも 参 考 にした (3) 本 ガイドラインに 掲 載 する 薬 剤 については 利 益 相 反 を 有 しない 分 担 医 師 により 上 記 エビデンスおよび 情 報 に 基 づく 客 観 的 審 査 を 行 って 最 終 的 に 決 定 した