9A6DEE075CD7EF7149256FBE00430C4



Similar documents
答申第585号

Microsoft Word - 公表用答申422号.doc

弁護士報酬規定(抜粋)

Taro-iryouhoken

該 介 護 休 業 が 終 了 する 日 までに, 当 該 介 護 休 業 に 係 る 対 象 家 族 が 死 亡 したとき 又 は 離 婚, 婚 姻 の 取 消, 離 縁 等 により 当 該 介 護 休 業 に 係 る 対 象 家 族 との 親 族 関 係 が 消 滅 した とき (3) 配 偶

の 購 入 費 又 は 賃 借 料 (2) 専 用 ポール 等 機 器 の 設 置 工 事 費 (3) ケーブル 設 置 工 事 費 (4) 防 犯 カメラの 設 置 を 示 す 看 板 等 の 設 置 費 (5) その 他 設 置 に 必 要 な 経 費 ( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補


為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

< F2D E C68CC2816A939A905C91E630378D862E6A>

とする ( 減 免 額 の 納 付 ) 第 6 条 市 長 は 減 免 を 受 け た 者 が 偽 り そ の 他 不 正 な 方 法 に よ り 減 免 の 決 定 を 受 け た こ と を 知 っ た と き 前 の 申 告 が あ っ た と き 又 は 同 条 第 2 項 の 規 定 によ

< 現 在 の 我 が 国 D&O 保 険 の 基 本 的 な 設 計 (イメージ)> < 一 般 的 な 補 償 の 範 囲 の 概 要 > 請 求 の 形 態 会 社 の 役 員 会 社 による 請 求 に 対 する 損 免 責 事 由 の 場 合 に 害 賠 償 請 求 は 補 償 されず(

第 9 条 の 前 の 見 出 しを 削 り 同 条 に 見 出 しとして ( 部 分 休 業 の 承 認 ) を 付 し 同 条 中 1 日 を 通 じて2 時 間 ( 規 則 で 定 める 育 児 休 暇 を 承 認 されている 職 員 については 2 時 間 から 当 該 育 児 休 暇 の

2. 会 計 規 程 の 業 務 (1) 規 程 と 実 際 の 業 務 の 調 査 規 程 や 運 用 方 針 に 規 定 されている 業 務 ( 帳 票 )が 実 際 に 行 われているか( 作 成 されている か)どうかについて 調 べてみた 以 下 の 表 は 規 程 の 条 項 とそこに

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

新ひだか町住宅新築リフォーム等緊急支援補助金交付要綱

(1)1オールゼロ 記 録 ケース 厚 生 年 金 期 間 A B 及 びCに 係 る 旧 厚 生 年 金 保 険 法 の 老 齢 年 金 ( 以 下 旧 厚 老 という )の 受 給 者 に 時 効 特 例 法 施 行 後 厚 生 年 金 期 間 Dが 判 明 した Bは 事 業 所 記 号 が

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

東近江行政組合職員の育児休業等に関する条例

目 次 市 民 税 の 減 免 に つ い て 1 減 免 の 一 般 的 な 留 意 事 項 2 減 免 の 範 囲 お よ び 減 免 割 合 3 1 生 活 保 護 法 の 規 定 に よ る 保 護 を 受 け る 者 3 2 当 該 年 に お い て 所 得 が 皆 無 と な っ た

 

要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

Microsoft Word - (課×県・指定)【頭紙】「精神障害者保健福祉手帳の診断書の記入に当たって留意すべき事項について」等の一部改正について.rtf

大阪府電子調達システムの開発業務 (第一期)に係る仕様書案に対する意見招請のお知らせ

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

Microsoft Word 役員選挙規程.doc

2 条 ) ア 育 児 休 業 の 対 象 とならない 職 員 ( 法 第 2 条 及 び 条 例 第 2 条 関 係 ) (ア) 臨 時 的 に 任 用 される 職 員 (イ) 育 児 休 業 に 係 る 期 間 を 任 期 と 定 めて 採 用 された 職 員 (ウ) 勤 務 延 長 職 員 (

< F2D E633368D86816A89EF8C768E9696B18EE688B5>

1 ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 の 事 業 税 の 課 税 について ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 は 収 入 金 額 を 課 税 標 準 として 収 入 割 の 申 告 となります ( 法 72 条 の2 72 条 の 12 第 2 号 ) ガス 供 給 業 とその 他 の 事

定款

4 乙 は 天 災 地 変 戦 争 暴 動 内 乱 法 令 の 制 定 改 廃 輸 送 機 関 の 事 故 その 他 の 不 可 抗 力 により 第 1 項 及 び 第 2 項 に 定 める 業 務 期 日 までに 第 1 条 第 3 項 の 適 合 書 を 交 付 することができない 場 合 は

< F2D E9696B D81698B5E8B6089F08EDF>

内 宿 泊 料 国 外 滞 在 費 及 び 予 防 注 射 諸 手 数 料 とし それぞれ 次 の 各 号 に 定 めるとこ ろにより 支 給 する (1) 交 通 費 は 現 に 利 用 した 経 路 及 び 方 法 により 支 給 する なお 国 外 への 旅 行 の 場 合 の 交 通 費 は

< F2D F97CC8EFB8F BE8DD78F9192CA926D>

Microsoft Word - 諮問第82号答申(決裁後)

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

(2) 協 会 加 入 月 の1カ 月 前 までに 様 式 1が 提 出 された 市 町 村 等 に 対 して 契 約 書 及 び 掛 金 請 求 書 を 送 付 します その 後 返 送 されてきた 様 式 2-2を 保 管 し 掛 金 の 納 入 を 確 認 します 第 2 章 契 約 更 新

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

< E95FB8CF689638AE98BC689FC90B390A CC8CA992BC82B582C982C282A282C E90E096BE8E9E8E9197BF2E786477>

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

< E8BE08F6D2082C682B DD2E786C7378>

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

国立大学法人 東京医科歯科大学教職員就業規則

っては 出 産 予 定 日 から 出 生 した 日 から 起 算 して8 週 間 を 経 過 する 日 の 翌 日 までとする ) の 期 間 内 に 当 該 子 に 係 る 最 初 の 育 児 休 業 を 開 始 し かつ 終 了 した 場 合 であって 当 該 子 に 係 る 再 度 の 育 児

川越市幼稚園就園奨励費補助金交付要綱

公平委員会設置条例

1 変更の許可等(都市計画法第35条の2)

( 運 用 制 限 ) 第 5 条 労 働 基 準 局 は 本 システムの 維 持 補 修 の 必 要 があるとき 天 災 地 変 その 他 の 事 由 によりシステムに 障 害 又 は 遅 延 の 生 じたとき その 他 理 由 の 如 何 を 問 わず その 裁 量 により システム 利 用 者

異 議 申 立 人 が 主 張 する 異 議 申 立 ての 理 由 は 異 議 申 立 書 の 記 載 によると おおむね 次 のとおりである 1 処 分 庁 の 名 称 の 非 公 開 について 本 件 審 査 請 求 書 等 について 処 分 庁 を 非 公 開 とする 処 分 は 秋 田 県

<4D F736F F D C93FA967B91E5906B8DD082D682CC91CE899E2E646F6378>


Microsoft Word - 制度の概要_ED.docx

<4D F736F F D20836E E819592E88C5E B F944E82548C8E89FC90B3816A5F6A D28F57>

Microsoft Word - 19年度(行個)答申第94号.doc

別 紙 軽 費 老 人 ホームの 収 入 認 定 について 平 成 22 年 3 月 9 日 千 葉 県 健 康 福 祉 部 高 齢 者 福 祉 課 本 紙 は 平 成 18 年 1 月 24 日 老 発 第 号 厚 生 労 働 省 老 健 局 長 通 知 老 人 保 護 措 置 費

に 公 開 された 映 画 暁 の 脱 走 ( 以 下 本 件 映 画 1 という ), 今 井 正 が 監 督 を 担 当 し, 上 告 人 を 映 画 製 作 者 として 同 年 に 公 開 された 映 画 また 逢 う 日 まで ( 以 下 本 件 映 画 2 という ) 及 び 成 瀬 巳

取 り 消 された 後 当 該 産 前 の 休 業 又 は 出 産 に 係 る 子 若 しくは 同 号 に 規 定 する 承 認 に 係 る 子 が 死 亡 し 又 は 養 子 縁 組 等 により 職 員 と 別 居 することとなったこと (2) 育 児 休 業 をしている 職 員 が 休 職 又

1

Microsoft Word - 3大疾病保障特約付団体信用生命保険の概要_村上.docx

Taro-データ公安委員会相互協力事

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

る 第 三 者 機 関 情 報 保 護 関 係 認 証 プライバシーマーク ISO27001 ISMS TRUSTe 等 の 写 しを 同 封 のうえ 持 参 又 は 郵 送 とする 但 し 郵 送 による 場 合 は 書 留 郵 便 とし 同 日 同 時 刻 必 着 とする 提 出 場 所 は 上

平成21年9月29日

横浜市障害者ガイドヘルプ事業実施要綱

4-3-4共立蒲原総合病院組合職員の育児休業等に関する条例

第 8 条 乙 は 甲 に 対 し 仕 様 書 に 定 める 期 日 までに 所 定 の 成 果 物 を 検 収 依 頼 書 と 共 に 納 入 する 2 甲 は 前 項 に 定 める 納 入 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする 3 検 査 不 合 格 となった 場 合 甲 は

認 し 通 常 の 立 入 検 査 に 際 しても 許 可 内 容 が 遵 守 されていることを 確 認 するこ と 2 学 校 薬 剤 師 業 務 の 兼 任 学 校 薬 剤 師 の 業 務 を 兼 任 する 場 合 の 取 扱 いは 次 のとおりとする (1) 許 可 要 件 1 薬 局 等 の

< F2D8E9197BF C B68F9182C98AD682B7>

<4D F736F F D208D4C93878CA793AE95A888A48CEC835A E815B8CA C8FF7936E977697CC2E646F63>

件名

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

75 歳 以 上 の 方 の 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 75 歳 になると 全 ての 方 が 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 に 加 入 して 医 療 を 受 けます 後 期 高 齢 者 医 療 制 度 は 東 京 都 後 期 高 齢 者 医 療 広 域 連 合 が 主 体 となり 区

スライド 1

(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

鳥 取 国 民 年 金 事 案 177 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 昭 和 37 年 6 月 から 38 年 3 月 までの 国 民 年 金 保 険 料 については 納 付 していたものと 認 められることから 納 付 記 録 を 訂 正 することが 必 要 である 第 2 申

tokutei2-7.xls

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

Speed突破!Premium問題集 基本書サンプル

(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

( 補 助 金 の 額 ) 第 6 条 補 助 金 の 額 は 第 5 条 第 2 項 の 規 定 による 無 線 LAN 機 器 の 設 置 箇 所 数 に 1 万 5 千 円 を 掛 けた 金 額 と 第 5 条 第 3 項 に 規 定 する 補 助 対 象 経 費 の2 分 の1のいずれか 低

Microsoft Word - nagekomi栃木県特定医療費(指定難病)支給認定申請手続きのご案内 - コピー

答申書

我孫子市小規模水道条例

全設健発第     号

を 行 わなければならない 適 正 な 運 用 方 針 を 厳 格 に 運 用 することによっては じめて 人 がみだりにその 容 ぼう 等 を 撮 影 されない 自 由 や 権 利 の 保 護 と 犯 罪 発 生 の 抑 止 という 防 犯 カメラの 設 置 目 的 との 調 和 が 実 現 され

<4D F736F F D B8E968BC695E58F CA A2E646F63>

大学病院治験受託手順書

接 支 払 制 度 を 活 用 するか 意 思 を 確 認 する 確 認 に 当 たっては 次 の 各 号 に 掲 げる 事 項 について 書 面 により 世 帯 主 の 合 意 を 得 て 代 理 契 約 を 締 結 するものとする (1) 医 療 機 関 等 が 本 市 に 対 し 世 帯 主

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

福 岡 厚 生 年 金 事 案 4486 第 1 委 員 会 の 結 論 申 立 人 の 申 立 期 間 については その 主 張 する 標 準 報 酬 月 額 に 基 づく 厚 生 年 金 保 険 料 を 事 業 主 により 給 与 から 控 除 されていたことが 認 められることから 申 立 期

Q5 育 児 休 業 を 請 求 する 際 の 事 務 手 続 は? A5 育 児 休 業 を 請 求 しようとする 職 員 は, 育 児 休 業 承 認 請 求 書 ( 様 式 第 1 号 )に 子 の 氏 名 や 請 求 する 期 間 等 を 記 入 し, 育 児 休 業 を 始 めようとする1

第 4 条 (1) 使 用 者 は 2 年 を 超 えない 範 囲 内 で( 期 間 制 勤 労 契 約 の 反 復 更 新 等 の 場 合 は その 継 続 勤 労 した 総 期 間 が2 年 を 超 えない 範 囲 内 で) 期 間 制 勤 労 者 を 使 用 することができる ただ し 次 の

●労働基準法等の一部を改正する法律案

弁護士が精選! 重要労働判例 - 第7回 学校法人専修大学(地位確認等反訴請求控訴)事件 | WEB労政時報(WEB限定記事)

第 1 監 査 の 請 求 1 請 求 人 姫 路 市 廣 野 武 男 2 請 求 年 月 日 姫 路 市 職 員 措 置 請 求 ( 住 民 監 査 請 求 政 務 調 査 費 の 返 還 に 係 る 法 定 利 息 の 不 足 以 下 本 件 請 求 という )に 係 る 請 求 書 は 平 成

Transcription:

平 成 17 年 2 月 25 日 判 決 言 渡 平 成 14 年 (ワ) 第 21196 号 損 害 賠 償 請 求 事 件 判 決 主 文 1 原 告 の 請 求 を 棄 却 する 2 訴 訟 費 用 は 原 告 の 負 担 とする 事 実 及 び 理 由 第 1 請 求 被 告 は 原 告 に 対 し 654 万 1834 円 及 びこれに 対 する 平 成 14 年 10 月 12 日 から 支 払 済 みまで 年 5 分 の 割 合 による 金 員 を 支 払 え 第 2 事 案 の 概 要 原 告 は 過 去 に 右 下 の 歯 の 治 療 を 受 けブリッジを 装 着 していたところ その 部 分 が 再 び 痛 み 出 したので 被 告 医 院 を 受 診 して 診 療 契 約 を 締 結 し 被 告 から 根 管 治 療 を 受 け ブリッジを 新 しいものに 付 け 替 えた しかし 下 顎 右 6 番 の 歯 ( 右 側 下 顎 部 正 中 部 から 数 えて6 番 目 の 歯 を 指 す 以 下 右 下 6 番 といい その 他 の 歯 についても 同 様 に 呼 ぶこととする )の 痛 みがなくな らず 結 局 抜 歯 することとなったものであるところ このような 結 果 を 招 いたのは 被 告 が 右 下 6 番 の 根 管 治 療 の 際 に 誤 って 穿 孔 した 過 失 及 び 右 下 8 番 について 不 必 要 な 断 髄 及 び 不 完 全 な 根 管 治 療 を 行 った 過 失 によるものであるとして 原 告 は 被 告 に 対 し 損 害 賠 償 と 訴 状 送 達 の 日 の 翌 日 から 民 法 所 定 の 年 5 分 の 割 合 による 遅 延 損 害 金 の 支 払 を 請 求 した 1 前 提 となる 事 実 ( 認 定 の 根 拠 となった 証 拠 等 を 文 末 の() 内 に 示 し 直 前 に 摘 示 した 証 拠 のページ 数 を 内 に 示 す 以 下 同 じ ) (1) 当 事 者 ア 原 告 は 昭 和 34 年 10 月 12 日 生 まれの 女 性 であり 東 京 都 港 区 ab-c-d 所 在 のA 歯 科 医 院 ( 以 下 被 告 医 院 という )の 患 者 として 歯 列 の 治 療 を 受 けた( 争 いのない 事 実 ) イ 被 告 は 歯 科 医 師 であり かつ 平 成 9 年 当 時 被 告 医 院 を 経 営 し 歯 科 診 療 に 従 事 し ていた( 争 いのない 事 実 ) (2) 前 医 による 診 療 原 告 は 23 歳 に 至 るまでに 京 都 市 内 の 歯 科 医 院 をかかりつけ 医 とし 右 下 6 番 ないし8 番 にわたるブリッジを 装 着 する 治 療 を 受 けた( 争 いのない 事 実 甲 A30 乙 A2 弁 論 の 全 趣 旨 ) (3) 診 療 経 過 の 概 略 ア 原 告 は 右 下 の 歯 に 痛 みを 感 じ 被 告 医 院 に 平 成 8 年 5 月 1 日 から 平 成 13 年 8 月 20 日 まで 通 院 して 治 療 を 受 けた( 甲 A30 乙 A1 弁 論 の 全 趣 旨 ) イ 右 下 5 番 の 治 療 経 過 原 告 は 平 成 8 年 5 月 1 日 右 下 5 番 の 歯 冠 継 続 歯 ( 歯 間 部 根 部 一 体 型 の 人 工 歯 )がは ずれたとして 被 告 医 院 を 受 診 し 被 告 は これを 取 り 外 して 再 装 着 した その 後 被 告 は 平 成 9 年 2 月 27 日 右 下 5 番 を 抜 歯 して 義 歯 を 装 着 した( 争 いのない 事 実 乙 A1 2ないし8 ) ウ 右 下 3 4 番 の 治 療 経 過 原 告 が 平 成 9 年 3 月 13 日 に 被 告 医 院 を 受 診 した 際 被 告 は 原 告 に 対 し 右 下 4ない し8 番 のブリッジを 希 望 する 場 合 は 抜 歯 した 部 分 が 安 定 するのに1か 月 かかること 根 の 治 療 から 治 療 を 開 始 することを 説 明 した また 同 年 7 月 15 日 には 右 下 4ないし8 番 のブリッジ を 希 望 する 場 合 には 右 下 4 6 及 び8 番 の 根 の 治 療 が 必 要 であり 根 気 よく 治 療 を 受 ける 必 要 があるとの 説 明 をした( 乙 A1 9 A12 弁 論 の 全 趣 旨 ) このブリッジ 装 着 の 点 については 結 論 が 出 ないまま 原 告 は 同 年 12 月 9 日 同 月 16 日 平 成 10 年 9 月 8 日 に 被 告 に 通 院 してクリーニングなどの 処 置 を 受 けていたが 同 年 9 月 2 1 日 に 至 り 右 下 4 番 及 び6 番 の 歯 茎 の 腫 れを 訴 え 被 告 は 右 下 4 番 に 対 して 切 開 の 処 置 を し 同 月 25 日 右 下 4 番 の 噛 み 合 わせの 調 整 をした さらに 被 告 は 根 の 治 療 が 必 要 であ ると 説 明 して 同 年 10 月 5 日 から 感 染 した 根 管 について 拡 大 ( 根 管 内 の 傷 んだ 部 分 を 削 るこ と 以 下 同 じ )をして 根 の 治 療 を 開 始 し 次 いで 右 下 3 番 についても 同 様 の 処 置 を 行 い 平 成 11 年 2 月 2 日 右 下 3 4 番 について 根 管 充? 処 置 をして 根 の 治 療 を 終 えた( 乙 A1 9ないし 18 A12 弁 論 の 全 趣 旨 ) エ 右 下 6 番 の 治 療 経 過 被 告 は 平 成 11 年 2 月 16 日 右 下 6ないし8 番 に 以 前 から 装 着 されていたブリッジを 除

去 するとともに 右 下 6 番 について 歯 の 中 の 土 台 となっている 金 属 部 分 を 除 去 し 同 月 19 日 から 同 年 11 月 24 日 までにかけて その 根 管 の 治 療 を 行 った( 乙 A1 18ないし31 A12) オ 右 下 8 番 の 治 療 経 過 被 告 は 平 成 11 年 9 月 8 日 から 同 年 10 月 8 日 まで 右 下 8 番 について 歯 冠 部 の 除 去 麻 酔 抜 髄 貼 薬 及 び 根 管 充? 措 置 を 行 った( 争 いのない 事 実 乙 A1 28 29 ) カ 右 下 6 番 の 状 態 原 告 は 平 成 14 年 10 月 1 日 B 歯 科 クリニックにおいて 右 下 6 番 を 抜 歯 したが 抜 歯 後 の 歯 の 近 心 根 の 根 管 側 壁 のうち 上 下 方 向 の 中 心 部 分 には 穿 孔 があった( 争 いのない 事 実 乙 A10の1ないし4) 2 争 点 (1) 右 下 6 番 の 根 管 治 療 において 近 心 根 管 側 壁 と 髄 床 底 に 対 し 誤 って 穿 孔 し かつこれ に 対 する 処 置 を 怠 った 過 失 の 有 無 (2) 右 下 8 番 の 根 管 治 療 において 必 要 のない 神 経 を 除 去 し また 不 完 全 な 根 管 治 療 を 行 った 過 失 の 有 無 (3) 各 過 失 による 損 害 の 発 生 の 有 無 (4) 損 害 額 ( 判 断 する 必 要 がなかった 争 点 ) 3 争 点 についての 当 事 者 の 主 張 (1) 争 点 (1)( 右 下 6 番 の 根 管 治 療 において 近 心 根 管 側 壁 と 髄 床 底 に 対 し 誤 って 穿 孔 し かつこれに 対 する 処 置 を 怠 った 過 失 の 有 無 )について ( 原 告 の 主 張 ) ア 被 告 は 平 成 11 年 2 月 16 日 から 同 年 3 月 24 日 まで リーマー( 針 状 のやすり)による 根 管 拡 大 治 療 を 行 っていたところ 同 月 19 日 には 閉 のまま 拡 大 を 断 念 したとカルテには 記 載 されている しかるに 短 期 間 に6 回 という 多 数 回 にわたる 根 管 拡 大 治 療 を 行 ったにもか かわらず 結 局 のところ 根 尖 部 に 到 達 せず 断 念 したという 経 過 からして 上 記 治 療 過 程 にお いて リーマーにより 側 壁 の 穿 孔 が 引 き 起 こされた 可 能 性 が 高 いものというべきである イ 被 告 は 右 下 6 番 に 穿 孔 があることを 認 めながら この 原 因 として 抜 歯 の 器 具 によっ て 削 れた 可 能 性 と 原 告 が20 年 ほど 前 に 受 けたC 歯 科 医 院 ( 以 下 前 医 という )の 治 療 によ る 可 能 性 を 指 摘 しているが これらの 主 張 は 以 下 に 述 べるとおり 合 理 性 を 欠 く まず 抜 歯 に 当 たって 器 具 は 当 該 部 位 にさわる 必 要 はなく その 器 具 によって 近 心 根 の 表 面 が 削 れることはあり 得 ない また 確 かに 前 医 は 原 告 に 対 して 右 下 6 番 の 根 管 治 療 を 行 っており 根 管 充? 処 置 も 実 施 した しかし 被 告 医 院 を 受 診 した 段 階 では 右 下 6 番 の 近 心 根 において 慢 性 根 尖 性 歯 根 膜 炎 に 起 因 する 根 尖 孔 を 含 む 多 少 の 骨 の 透 過 像 を 呈 してはい るものの 根 分 枝 部 においては 慢 性 辺 縁 性 歯 周 炎 が 著 明 に 出 現 している 状 態 ではなく 根 管 充? 材 もレントゲン 写 真 上 遠 心 側 壁 には 到 達 していないのであるから 前 医 による 上 記 根 管 治 療 は 完 全 ではないにしても これによって 穿 孔 が 生 じていたものとは 考 え 難 い もし この 時 点 で 穿 孔 していれば 根 管 充? 材 が 穿 孔 を 通 じて 管 外 へ 溢 出 していたはずであり そのこと や 根 管 充? 材 の 溢 出 に 対 する 透 過 像 がレントゲン 写 真 上 確 認 できるはずであるが このような 所 見 は 認 められない ウ 他 方 被 告 医 院 における 治 療 後 のレントゲン 写 真 においては 明 らかに 根 管 充? 材 が 溢 出 し それに 伴 う 穿 孔 が 形 成 されて 存 在 している なお 被 告 医 院 における 根 管 治 療 前 のレ ントゲン 透 過 像 の 発 生 原 因 は 老 化 による 骨 吸 収 によるものであり 根 管 治 療 後 のレントゲン 透 過 像 は 穿 孔 による 急 性 症 状 を 伴 う 病 的 なものである さらに 根 分 枝 部 においては 慢 性 辺 縁 性 歯 周 炎 はほとんど 観 察 できない 状 態 であっ たにもかかわらず 被 告 医 院 における 根 管 治 療 終 了 後 補 綴 処 置 に 進 み 金 属 コア( 金 属 の 芯 を 指 し 少 なくなった 歯 冠 部 歯 質 の 補 強 を 行 う 装 置 に 用 いる )を 装 着 したところ 骨 透 過 像 が 急 激 かつ 著 明 に 増 大 している この 骨 透 過 像 は 根 分 枝 部 から 近 心 根 遠 心 側 壁 の 穿 孔 が 存 在 している 部 分 にまで 交 通 し ここから 根 分 枝 部 の 穿 孔 が 裏 付 けられる 事 実 後 日 B 歯 科 クリニックにおいて 右 下 6 番 を 抜 歯 した 際 D 医 師 は 抜 歯 前 処 置 で 金 属 コアを 除 去 した 時 点 において 穿 孔 が 存 在 していたことを 確 認 している エ 以 上 のとおり 右 下 6 番 の 根 管 治 療 において 被 告 が 誤 って 穿 孔 を 生 じさせたことは 明 らかであり そのような 場 合 できるだけすみやかに 修 復 処 置 を 行 うべきであるのに 何 ら 適 切 な 処 置 を 行 わず 漫 然 と 仮 歯 装 着 ブリッジ 装 着 に 至 ったのであるから 被 告 の 過 失 は 明 ら かである ( 被 告 の 主 張 )

ア 抜 歯 された 右 下 6 番 近 心 根 に 穿 孔 が 存 在 することは 認 めるが この 穿 孔 は 以 下 に 述 べるとおり 被 告 の 治 療 行 為 に 起 因 するものとはいえない イ まず 抜 歯 された 右 下 6 番 の 近 心 根 は ちょうどピンク 色 の 根 管 充? 材 が 見 える 部 分 の 表 面 が 削 れたような 状 態 になっており それが 抜 歯 の 際 に 器 具 によって 削 れたものである 可 能 性 及 びそれにより 根 管 充? 材 が 表 面 に 出 たものにすぎない 可 能 性 が 否 定 できない また 上 記 穿 孔 が 仮 に 上 記 抜 歯 以 前 から 存 在 していたものであるとすると その 穿 孔 は 被 告 による 治 療 以 前 に つまり 前 医 の 治 療 によって 生 じたと 考 えられる すなわち 被 告 が 治 療 を 開 始 した 際 原 告 の 右 下 6 番 は 前 医 により 既 に 根 の 治 療 がさ れ 根 管 充? 材 が 充?されている 状 態 であった これに 対 し 被 告 は 平 成 11 年 2 月 26 日 以 降 上 記 の 根 管 充? 材 をクロロフォルム( 根 管 充? 材 のみを 溶 解 する 作 用 のある 薬 剤 )によって 少 しずつとかし 溶 けて 接 着 剤 のような 粘 性 の 液 状 になった 根 管 充? 材 をリーマーに 絡 ませる ようにして 根 管 から 除 去 していくという 方 法 で 根 管 の 拡 大 治 療 を 行 った 右 下 6 番 遠 心 根 については 上 記 のように 根 管 充? 材 を 除 去 していき リーマーの 挿 入 方 向 及 び 挿 入 した 長 さをレントゲン 写 真 と 照 らし 合 わせることによってリーマーの 先 端 が 根 尖 部 に 到 達 したと 判 断 し また 根 尖 部 から 根 管 内 に 膿 が 出 てきたことを 確 認 することによって 根 尖 部 が 開 通 したと 判 断 した 右 下 6 番 近 心 舌 側 根 については 同 年 3 月 3 日 に 遠 心 根 と 同 様 に リーマーの 挿 入 方 向 と 挿 入 した 長 さをレントゲン 写 真 と 照 らし 合 わせることによってリーマーの 先 端 が 根 尖 部 に 到 達 したと 判 断 し また 根 管 内 に 膿 が 出 てきたことを 確 認 することによって 根 尖 部 が 開 通 し たことを 確 認 した なお 右 下 6 番 近 心 頬 側 根 については 前 医 による 根 管 充?の 形 跡 もなく 被 告 が 根 管 の 拡 大 を 試 みても 途 中 で 閉 塞 した 状 態 となっていた 閉 塞 の 原 因 は 第 二 象 牙 質 の 添 加 ( 加 齢 等 により 根 管 内 に 象 牙 質 が 形 成 され 根 管 内 が 狭 まる 現 象 )と 推 測 され 無 理 に 開 通 を 試 み ると 穿 孔 等 の 危 険 があるため 拡 大 を 途 中 で 中 止 した 被 告 は 右 下 6 番 遠 心 根 及 び 近 心 舌 側 根 について 根 尖 部 が 開 通 したことを 確 認 した 後 は 開 通 部 分 の 穴 を 必 要 以 上 に 広 げることのないよう 注 意 しながら 根 管 充? 材 を 溶 かして 空 洞 となった 根 管 を 少 しずつ 時 間 をかけてリーマーによって 拡 大 していった これは 前 医 によ って 根 管 充? 材 が 充?されていた 部 分 すなわち 被 告 による 治 療 前 に 既 に 空 けられていた 穴 を 根 管 と 認 め そこを 少 しずつ 拡 大 していったのであり 被 告 が 新 たに 根 管 を 穿 孔 したもので はない ウ 以 上 のように 右 下 6 番 の 穿 孔 は 被 告 による 治 療 以 前 に 前 医 の 治 療 によって 生 じた と 考 えるのが 妥 当 である エ なお 前 医 の 治 療 において 右 下 6 番 に 穿 孔 が 生 じていたとしても レントゲン 上 は 根 尖 の 方 向 と 前 医 により 充?された 根 管 充? 材 の 方 向 とが 一 致 しており 被 告 がレントゲンで 穿 孔 を 確 認 することは 不 可 能 であった (2) 争 点 (2)( 右 下 8 番 の 根 管 治 療 において 必 要 のない 神 経 を 除 去 し また 不 完 全 な 根 管 治 療 を 行 った 過 失 の 有 無 )について ( 原 告 の 主 張 ) ア 被 告 は 右 下 8 番 の 神 経 を 抜 く 必 要 がなかったにもかかわらず これを 抜 いてしまった のであり この 点 にも 過 失 がある イ まず 被 告 は 平 成 11 年 8 月 26 日 右 下 顎 部 へのブリッジ 装 着 に 当 たり 右 下 8 番 の 抜 髄 処 置 の 必 要 性 を 原 告 に 対 して 伝 え 抜 髄 すべきかどうかを 決 めるよう 原 告 に 対 して 求 め たが 素 人 である 原 告 にこのような 判 断 を 求 めること 自 体 が 不 適 切 である 次 に 従 前 原 告 の 右 下 6 7 及 び8 番 は 7 番 を 欠 損 とし 6 及 び8 番 を 歯 台 とする 既 存 ブリッジが 装 着 されていたところ 既 存 ブリッジには 何 ら 問 題 がなく まして 右 下 8 番 において は 歯 髄 に 達 する 虫 歯 もレントゲン 写 真 上 認 められておらず さらに 歯 根 を 取 り 巻 く 歯 根 膜 腔 にも 異 常 はなく 何 年 もの 間 既 存 ブリッジが 装 着 されている 状 態 にあったため 歯 冠 部 の 第 二 象 牙 質 も 形 成 されており 当 該 部 分 には 何 ら 問 題 がなかったから ブリッジの 再 作 製 において も 歯 髄 を 除 去 する 必 要 はなかった さらに 右 下 8 番 に 対 する 根 管 充? 材 は 近 心 根 には 全 く 充?されておらず 遠 心 根 につ いても 途 中 までしか 充?されていない ウ このように 被 告 は 必 要 のない 神 経 除 去 を 行 ったばかりか その 神 経 除 去 後 に 行 っ た 根 管 治 療 も 不 十 分 なものであったのであり この 点 にも 過 失 がある

( 被 告 の 主 張 ) 被 告 は 平 成 11 年 9 月 8 日 から 同 年 10 月 8 日 まで 右 下 8 番 の 根 管 治 療 を 行 った 右 下 8 番 は 神 経 の 細 菌 感 染 はなかったが 新 たに 右 下 4ないし8 番 にブリッジを 装 着 するに 当 た り 歯 冠 部 を 平 行 に 揃 えるために 右 下 8 番 の 歯 冠 部 の 歯 質 を 削 る 必 要 が 生 じており それを 行 うと 歯 表 面 が 神 経 に 近 くなり 冷 水 痛 等 が 生 ずる 危 険 が 予 想 された このような 状 態 の 下 で 原 告 からの 補 綴 的 要 求 により すなわちブリッジ 装 着 後 に 冷 水 痛 等 が 発 生 するのを 防 ぐ ために 根 管 治 療 を 行 ったものである 右 下 8 番 の 遠 心 根 は 根 管 内 が 狭 窄 しており できる 限 り 拡 大 したものの 器 具 の 破 損 等 の 恐 れもあり 敢 えて 最 小 限 の 拡 大 に 留 めたものである 近 心 根 は 遠 心 根 よりもさらなる 狭 窄 が 予 想 され 敢 えて 根 管 内 の 神 経 は 治 療 せず 生 活 断 髄 法 ( 歯 冠 部 の 神 経 の 部 分 的 な 除 去 )を 選 択 したのであり 右 下 8 番 の 根 管 治 療 は 成 功 している (3) 争 点 (3)( 各 過 失 による 損 害 の 発 生 の 有 無 )について ( 原 告 の 主 張 ) レントゲン 写 真 によれば 右 下 6 番 の 根 管 治 療 開 始 前 と 根 管 治 療 後 においては 近 心 根 及 び 遠 心 根 の 根 尖 部 病 巣 が 明 らかに 拡 大 連 続 しており 縮 小 ないし 消 失 しているとは 到 底 いえない したがって 被 告 の 主 張 するような 骨 の 再 生 を 認 めることはできず 近 心 根 周 辺 の 病 巣 が 回 復 しているとはいえないから 結 局 被 告 の 各 過 失 によって 右 下 6 番 の 歯 に 炎 症 の 発 生 を 招 き 抜 歯 にまで 至 り 結 果 として 後 記 (4)で 主 張 するとおりの 損 害 を 与 えたものであ る ( 被 告 の 主 張 ) 原 告 は 右 下 6 番 を 治 療 し さらに 右 下 4ないし8 番 にブリッジを 装 着 した 後 も カルテ 上 痛 みや 腫 れを 訴 えたことはなく しかも ブリッジを 装 着 した 次 の 治 療 日 にはクリーニング を 受 けている クリーニングは 刺 激 を 伴 う 美 容 的 処 置 であるため 口 内 に 痛 みや 腫 れがある ときは 行 わないのであるから 原 告 がクリーニングを 受 けたことは 原 告 の 右 下 6 番 に 痛 みや 腫 れがなかったことの 証 左 である 被 告 がブリッジ 装 着 後 の 右 下 6 番 について 変 化 を 認 めたのは 平 成 13 年 6 月 29 日 のみ である このときは 右 下 6 番 歯 茎 部 が 暗 赤 色 に 軽 度 に 変 色 しているのが 認 められた これに 対 して 被 告 は 抗 生 剤 を 処 方 した もっとも このときのレントゲン 写 真 では 右 下 6 番 部 分 の 透 過 像 に 改 善 が 認 められていた なお カルテ 上 は この 日 について 切 開 との 記 載 があ るが これは このとき 行 った 投 薬 について 保 険 の 点 数 上 切 開 と 同 じ 扱 いであるためにこ のように 記 載 したに 過 ぎず 実 際 に 切 開 は 行 っていない このように 原 告 右 下 6 番 の 根 管 治 療 終 了 後 は 同 歯 の 根 尖 病 巣 及 び 根 分 岐 部 病 変 に ついて 骨 の 再 生 が 進 行 しており 順 調 に 改 善 していた したがって 処 置 としては 経 過 観 察 の みをすればよかったのであって 結 局 仮 に 被 告 に 上 記 各 過 失 があったとしてもこれによる 損 害 が 生 じたとはいえない (4) 争 点 (4)( 損 害 額 )について ( 原 告 の 主 張 ) 原 告 は 次 に 述 べる 損 害 のうち 654 万 1834 円 を 請 求 するものである ア 治 療 費 (ア) 被 告 医 院 における 医 療 費 12 万 2544 円 右 下 6 番 の 治 療 が 始 まった 平 成 11 年 2 月 分 から これが 不 完 全 ながらも 終 了 した 平 成 13 年 9 月 までの 間 の 医 療 費 を 損 害 として 請 求 する 証 拠 上 記 載 のある 請 求 点 数 の 合 計 に 1 点 当 たり10 円 を 乗 じ これに 自 費 負 担 分 である3 割 を 更 に 乗 じたものである (イ) 被 告 医 院 におけるブリッジ 代 金 63 万 7520 円 被 告 医 院 において 作 製 したブリッジ 代 金 は 結 局 右 下 6 番 に 対 する 不 適 切 な 治 療 に よって 使 用 に 耐 えないものとなったのであり この 代 金 相 当 額 も 損 害 である (ウ) Bクリニックにおける 医 療 費 等 1 万 2020 円 (エ) E 病 院 における 医 療 費 等 3770 円 (オ) ハワイにおける 医 療 費 等 9 万 7790 円 原 告 は ハワイのFデンタルクリニック 及 びGクリニックにおいて 診 察 を 受 けたものであ るが 当 該 診 察 にかかる 費 用 も 損 害 に 含 まれる (カ) 小 計 87 万 3644 円 イ 交 通 費

(ア) 被 告 医 院 への 交 通 費 3 万 8800 円 被 告 医 院 への 総 通 院 日 数 97 日 に1 日 当 たり 往 復 400 円 のバス 運 賃 を 乗 じたもので ある (イ) E 病 院 への 交 通 費 1440 円 バス 及 び 地 下 鉄 の 往 復 運 賃 である (ウ) 小 計 4 万 0240 円 ウ 休 業 損 害 57 万 7344 円 原 告 は 月 額 基 本 給 として50 万 円 の 給 与 支 払 いを 受 けていたところ これを 出 勤 日 数 2 4 日 として 時 間 給 に 引 き 直 すと1 時 間 当 たり2976 円 となる 他 方 被 告 医 院 への 通 院 に 要 し た 時 間 を1 回 当 たり 最 低 2 時 間 とすると 1 回 の 通 院 につき5952 円 の 休 業 損 害 となる そこ で これに 総 通 院 日 数 である97 日 を 乗 じて 算 出 した エ 今 後 の 治 療 費 160 万 6500 円 原 告 の 口 腔 内 における 右 下 欠 損 部 の 治 療 法 としては 可 撤 性 局 部 床 義 歯 ( 取 外 しので きるバネの 付 いた 入 れ 歯 )による 方 法 既 存 残 存 歯 牙 を 支 台 として 固 定 性 のブリッジを 装 着 す る 方 法 インプラントを 施 し 固 定 性 の 人 口 の 歯 牙 を 補 綴 する 方 法 が 考 えられるものの 咬 合 力 及 び 審 美 力 の 回 復 の 観 点 からは インプラント 治 療 が 最 も 適 切 である さらに 本 件 においては 右 下 6 番 のみならず 右 下 5 6 及 び7 番 の3 歯 にインプラント を 施 す 必 要 がある それは 仮 に 右 下 6 番 のみにインプラントを 行 い これと 残 存 する 右 下 4 8 番 を 支 台 としてブリッジを 装 着 することを 考 えると 生 理 的 動 揺 のないインプラント( 通 常 歯 牙 は 咬 むことにより 生 理 的 に 動 揺 するが インプラント 本 体 は 下 顎 骨 に 骨 性 癒 着 し 生 理 的 動 揺 はしない )と 生 理 的 動 揺 のある 歯 牙 とを 結 合 連 結 すれば インプラント 自 体 が 破 壊 するお それがある したがって 既 存 の 欠 損 部 である 右 下 5 7 番 にもインプラントを 施 す 必 要 があ り これによらなければ 原 告 において 満 足 の 得 られる 咀 嚼 効 率 や 咬 合 力 を 回 復 することは 不 可 能 である オ 慰 謝 料 300 万 0000 円 原 告 は 本 件 治 療 のため 29か 月 にわたる 通 院 を 要 しており 交 通 事 故 の 例 に 照 らす と この 通 院 慰 謝 料 は207 万 円 となる しかし 被 告 は 長 期 にわたって 本 件 過 誤 に 気 付 か ず このために 原 告 は 他 院 において 治 療 を 受 ける 機 会 を 失 い 痛 みのあるままの 状 態 を 強 い られたのである したがって 慰 謝 料 は この 点 を 加 味 して 定 められるべきである カ 本 訴 提 起 の 準 備 費 用 6 万 6150 円 レントゲン 写 真 のコピー 費 用 等 も 損 害 として 請 求 する キ 弁 護 士 費 用 63 万 8361 円 ( 被 告 の 主 張 ) いずれも 不 知 ないし 争 う 第 3 当 裁 判 所 の 判 断 1 事 実 関 係 前 記 前 提 となる 事 実 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば 右 下 6 番 及 び8 番 の 治 療 経 過 に 関 し 次 の 事 実 が 認 められる (1) 右 下 6 番 の 根 管 治 療 ア 被 告 が 治 療 を 開 始 した 際 原 告 の 右 下 6 番 は 前 医 により 既 に 根 管 の 治 療 がされ 根 管 充? 材 が 充?されている 状 態 であった( 争 いのない 事 実 乙 A12 被 告 本 人 ) イ 被 告 は 平 成 11 年 2 月 19 日 以 降 毎 月 数 回 原 告 を 来 院 させ 上 記 の 根 管 充? 材 をクロ ロフォルムによって 少 しずつ 溶 かし 溶 けて 接 着 剤 のような 粘 性 の 液 状 になった 根 管 充? 材 を 20 番 のリーマーに 絡 ませるようにして 根 管 から 除 去 していった( 甲 A31 乙 A1 乙 A12 乙 A 13 被 告 本 人 ) 右 下 6 番 遠 心 根 については 上 記 のように 根 管 充? 材 を 除 去 していったところ 根 尖 部 から 根 管 内 に 排 膿 があった( 乙 A1 乙 A12 被 告 本 人 ) 右 下 6 番 近 心 舌 側 根 についても 被 告 は 同 年 3 月 3 日 根 管 内 に 膿 が 出 てきたことを 確 認 した( 乙 A1 乙 A12 被 告 本 人 ) 右 下 6 番 近 心 頬 側 根 については 前 医 による 根 管 充?の 形 跡 もなく 被 告 が 根 管 の 拡 大 を 試 みても 途 中 で 閉 塞 した 状 態 となっていた 被 告 は 無 理 に 開 通 を 試 みると 穿 孔 等 の 危 険 があると 判 断 し 根 管 の 拡 大 を 中 止 した( 乙 A1 乙 A12 被 告 本 人 ) ウ 被 告 は 右 下 6 番 遠 心 根 及 び 近 心 舌 側 根 について 根 尖 部 が 開 通 したことを 確 認 した

後 少 しずつ 時 間 をかけて リーマーによって 根 管 を 拡 大 した( 乙 A1 乙 A12 被 告 本 人 ) エ 被 告 は 貼 薬 を 経 て 平 成 11 年 11 月 24 日 右 下 6 番 について 根 管 充? 措 置 を 行 った ( 乙 A1 甲 A31 乙 A12 被 告 本 人 ) (2) 右 下 8 番 の 抜 髄 及 び 根 管 治 療 ア 被 告 は 原 告 の 右 下 4ないし8 番 のブリッジを 設 置 しようとしていたところ 支 台 となる 4 6 及 び8 番 のうち 8 番 の 歯 の 上 部 は 他 の 歯 より 高 い 位 置 にあった( 乙 A1 乙 A12 被 告 本 人 ) 被 告 が 原 告 に 対 して 上 記 ブリッジを 設 置 することを 説 明 した 当 時 原 告 の 右 下 5 及 び7 番 は 既 に 存 在 しなかった( 乙 A1 弁 論 の 全 趣 旨 ) 被 告 は 平 成 11 年 9 月 8 日 右 下 8 番 の 歯 冠 部 を 除 去 し 虫 歯 及 び 古 い 接 着 剤 を 削 り 取 った 上 麻 酔 して 抜 髄 した( 乙 A1 28 ) 右 下 8 番 を 治 療 する 際 根 管 部 が 閉 塞 していた ( 乙 A1 乙 A12) イ 右 下 8 番 に 対 する 根 管 治 療 のうち 近 心 根 については 歯 冠 部 の 神 経 を 部 分 的 に 抜 くに とどめて 根 管 内 の 治 療 は 行 わず 遠 心 根 については 神 経 を 抜 いたものの 根 管 は 無 理 に 拡 大 すると 危 険 があったため リーマーが 入 る 範 囲 で 拡 大 し その 範 囲 で 根 管 充?を 行 うにとど めた( 乙 A1 乙 A12) (3) 右 下 6 8 番 の 仮 歯 装 着 及 びブリッジ 装 着 ア 被 告 は 右 下 4ないし8 番 のブリッジの 作 製 に 当 たり 平 成 11 年 12 月 13 日 右 下 4な いし8 番 について 歯 型 を 取 り 同 月 21 日 仮 歯 の 装 着 及 びクリーニングを 行 った( 乙 A1 3 1 ) イ 被 告 は 右 下 6 番 について 平 成 12 年 1 月 12 日 から 同 年 12 月 18 日 にかけて かみ 合 わせの 調 整 等 を 行 い 平 成 13 年 2 月 7 日 右 下 4ないし8 番 にブリッジを 装 着 した( 乙 A1 3 2ないし36 ) (4) 右 下 6 番 の 経 過 ア 右 下 6 番 自 体 のレントゲン 写 真 上 の 所 見 右 下 6 番 のレントゲン 写 真 上 平 成 8 年 5 月 1 日 ないし 平 成 10 年 12 月 8 日 においては 近 心 根 の 中 心 部 に 根 管 充? 剤 を 示 す 白 色 の 部 分 が 直 線 状 に 存 在 するが( 甲 A31ないしA3 5 乙 A2ないしA5 A9) 平 成 11 年 2 月 23 日 においては 近 心 根 の 中 心 部 が 黒 色 に 変 わっ ており 同 黒 色 部 は 直 線 状 に 存 在 する( 甲 A36 乙 A9) 他 方 平 成 11 年 11 月 24 日 ないし 平 成 13 年 6 月 29 日 においては 近 心 根 の 中 心 部 に 再 び 根 管 充? 材 を 示 す 白 色 の 部 分 が 写 っ ているところ この 白 色 部 分 は 近 心 根 のうち 上 下 方 向 の 中 心 付 近 から 左 側 へ 逸 れ 遠 心 根 側 の 側 壁 に 到 達 している( 甲 A3 甲 A37ないしA41 乙 A6ないしA9 証 人 D) 他 方 右 下 6 番 の 髄 床 底 付 近 においては 上 記 のような 白 色 部 分 は 見 当 たらない( 甲 A 37ないしA41 証 人 D) イ 原 告 の 右 下 6 番 に 関 する 愁 訴 原 告 は 右 下 6 番 の 治 療 開 始 から 右 下 4ないし8 番 にブリッジを 装 着 した 後 に 至 るまで 右 下 6 番 に 断 続 的 に 痛 みや 腫 れが 生 じたと 陳 述 しているものの それが 右 下 6 番 の 部 分 のみ に 生 じたか 否 かは 明 確 でないし 自 覚 症 状 の 全 てを 被 告 に 伝 えたか 否 かも 明 らかでない( 甲 A30 原 告 本 人 ) ウ 右 下 6 番 の 再 診 断 及 び 抜 歯 (ア) 原 告 は 平 成 13 年 10 月 12 日 友 人 の 紹 介 により D 医 師 に 右 下 6 番 についての 診 察 を 受 けた( 甲 A13) D 医 師 は 平 成 14 年 1 月 21 日 E 病 院 に 対 して 紹 介 状 をしたため 右 下 6 番 に 関 し 慢 性 歯 槽 膿 瘍 根 分 岐 部 髄 床 底 への 穿 孔 の 疑 い 及 び 近 心 根 遠 心 壁 への 穿 孔 の 疑 いがあるとの 情 報 を 提 供 した 上 で 診 断 書 の 発 行 を 求 めた( 甲 A19 5 甲 A21 00 9 ) これに 対 し E 病 院 は 右 下 6 番 についてデンタルレントゲンを 撮 影 し( 甲 A21 006 ) 同 病 院 のH 医 師 は 平 成 14 年 1 月 29 日 病 名 が 右 下 6 番 の 根 分 岐 部 病 変 であることを 附 記 と して 上 記 病 名 の 原 因 として 歯 根 ( 近 心 根 )の 破 折 が 疑 われます との 旨 をそれぞれ 記 した 診 断 書 を 発 行 した( 甲 A10 甲 A21 007 ) (イ) D 医 師 は 平 成 14 年 10 月 1 日 原 告 の 右 下 6 番 を 抜 歯 した( 甲 A19 8 証 人 D) (5) 右 下 8 番 の 経 過 右 下 8 番 については レントゲン 写 真 上 透 過 像 が 認 められず( 甲 A2 証 人 D) 原 告 もこ の 歯 を 特 定 しての 痛 み 等 は 特 に 訴 えていない( 弁 論 の 全 趣 旨 ) 2 医 学 的 知 見 関 係 証 拠 及 び 弁 論 の 全 趣 旨 によれば 右 下 8 番 の 治 療 に 関 し 次 の 医 学 的 知 見 が 認 められ

る (1) 狭 窄 根 管 については 断 髄 ( 抜 髄 )の 適 応 がある また 保 存 に 適 さないと 考 えられる 健 康 歯 髄 にも 断 髄 ( 抜 髄 )の 適 応 がある( 乙 B4) (2)ア ブリッジを 設 置 するに 当 たっては 支 えとなるべき 歯 が 必 要 であり かつ ブリッジを 設 置 すると 支 えとなるべき 歯 には 噛 み 合 わせによる 圧 力 がブリッジ 設 置 前 に 比 べて 大 きくか かるので その 圧 力 に 耐 えられる 歯 であることが 必 要 である( 乙 A12 被 告 本 人 ) イ ブリッジの 設 置 に 当 たっては 支 台 となるべき 歯 の 高 さを 平 行 にする 必 要 があり 平 行 にするためには 歯 の 表 面 を 削 る 必 要 がある( 乙 A12 被 告 本 人 ) ウ 歯 を 削 ると 中 の 神 経 に 反 応 しやすくなり 冷 水 痛 等 が 発 生 することから 神 経 が 正 常 であってもこれらの 症 状 の 発 生 を 避 けるために 断 髄 ( 抜 髄 )を 行 うのが 一 般 的 である( 乙 A1 2 B1 B2 証 人 I 被 告 本 人 ) 3 争 点 (1)( 右 下 6 番 の 根 管 治 療 において 近 心 根 管 側 壁 と 髄 床 底 に 対 し 誤 って 穿 孔 し か つこれに 対 する 処 置 を 怠 った 過 失 の 有 無 )について (1) 近 心 根 に 対 する 穿 孔 の 有 無 に 関 する 判 断 ア 上 記 1(1)において 認 定 したとおり 被 告 はリーマーを 用 いて 右 下 6 番 近 心 根 を 拡 大 治 療 していたのであるが 上 記 1(4)アにおいて 認 定 したとおり 根 管 の 拡 大 を 経 て 根 管 充? 材 の 充?が 終 了 した 後 には レントゲン 写 真 上 根 管 充? 材 の 充? 終 了 前 には 存 在 しなかった 近 心 根 の 中 心 部 に 根 管 充? 材 を 示 す 白 色 の 線 が 存 在 するところ その 線 が 近 心 根 の 遠 心 壁 へ 到 達 し ていることは 明 らかである このことと 前 記 第 2の1(3)カのとおり 抜 歯 後 の 右 下 6 番 の 近 心 根 の 根 管 側 壁 のうち 上 下 方 向 の 中 心 部 分 に 穿 孔 があることが 明 らかであることを 併 せ 考 えれ ば この 穿 孔 は 前 医 による 根 管 治 療 時 ではなく 被 告 による 根 管 治 療 時 に 生 じたものではな いかとの 疑 いが 生 ずるところである イ これに 対 して 被 告 は 次 の 諸 点 を 指 摘 して 穿 孔 の 事 実 を 否 定 している (ア) まず 被 告 は 右 下 6 番 の 抜 歯 時 に 器 具 によって 近 心 根 表 面 が 削 られ その 結 果 と して 根 管 充? 材 が 表 面 に 出 たものにすぎない 可 能 性 があると 主 張 するが 抜 歯 器 具 が 当 該 部 分 に 触 れる 可 能 性 がどの 程 度 のものかなど この 主 張 を 裏 付 ける 証 拠 は 何 ら 存 在 しないか ら 可 能 性 の 指 摘 にとどまるものにすぎず 被 告 のこの 主 張 は 採 用 できない (イ) 次 に 被 告 は 右 下 6 番 近 心 根 に 存 在 する 穿 孔 は 前 医 による 根 管 治 療 時 に 発 生 し たものであると 主 張 し その 根 拠 として 前 医 によって 充?された 根 管 充? 材 を 除 去 しただけで 排 膿 があったし 上 記 根 管 充? 材 の 除 去 に 当 たっては20 番 という 細 いリーマーを 用 いたから そもそも 根 管 を 拡 大 してもいないことを 挙 げる しかしながら 20 番 という 細 いリーマーであるからといって 穿 孔 の 可 能 性 が 全 くない わけではないものであるところ( 証 人 D) 穿 孔 によって 根 管 外 から 根 管 内 への 排 膿 が 生 じたと 考 えることも 十 分 可 能 なのであって このことと 上 記 1(4)アにおいて 判 示 したとおりのレントゲ ン 写 真 上 の 比 較 結 果 とを 併 せ 考 えれば 上 記 穿 孔 が 被 告 の 治 療 後 に 生 じたものであることは 明 らかである (ウ) さらに 被 告 は 穿 孔 を 生 じて 直 ちにレントゲン 透 過 像 が 生 じることがないこと( 証 人 D 11( 第 3 回 口 頭 弁 論 分 ) )を 前 提 に 平 成 11 年 2 月 23 日 のレントゲン 写 真 ( 甲 A36 乙 A 9)に 存 在 する 透 過 像 が 穿 孔 により 生 じたものであるとすれば 乙 A 第 1 号 証 に 照 らし 穿 孔 が 2 月 19 日 の 治 療 時 に 生 じたものということになるが 2 月 19 日 には 穿 孔 をうかがわせる 出 血 も 排 膿 もなかったのであるから 結 局 被 告 による 穿 孔 はないと 主 張 する しかしながら 2 月 19 日 に 排 膿 等 がなかったことを 裏 付 けるに 足 りる 客 観 的 証 拠 はな いことと 上 記 1(4)ウ(ア)において 認 定 した 事 実 とを 併 せ 考 えれば 被 告 の 上 記 主 張 をたやすく 採 用 することは 困 難 である (2) 髄 床 底 に 対 する 穿 孔 の 有 無 に 関 する 判 断 ア 上 記 1(4)アにおいて 認 定 したとおり 髄 床 底 付 近 に 関 しては 穿 孔 を 疑 わせる 徴 候 が レントゲン 写 真 上 見 受 けられないのに 加 え 上 記 1(4)ウ(ア)において 認 定 したとおり H 医 師 は D 医 師 から 髄 床 底 の 穿 孔 の 疑 いがあるとの 情 報 を 提 供 されていながら 独 自 にデンタル レントゲンを 撮 影 した 上 で 髄 床 底 の 穿 孔 の 事 実 を 診 断 書 に 記 さなかったのである また J 医 師 I 医 師 及 び 被 告 本 人 は 証 拠 上 髄 床 底 に 対 する 穿 孔 を 確 認 することができない 旨 一 致 して 述 べているところである( 乙 A12 B1 B2 証 人 I 被 告 本 人 ) 他 方 このほかに 髄 床 底 の 穿 孔 を 疑 わせる 証 拠 は 存 在 しない 以 上 からすると 証 拠 上 右 下 6 番 の 髄 床 底 に 対 し て 被 告 が 穿 孔 したとの 事 実 を 認 めることができない

イ これに 対 して D 医 師 は 右 下 6 番 の 髄 床 底 に 対 して 被 告 が 穿 孔 したとの 供 述 をしてい るが この 供 述 に 沿 うレントゲン 写 真 上 の 所 見 等 の 客 観 的 な 証 拠 は 見 当 たらず 採 用 すること はできない (3) 小 括 以 上 によれば 被 告 が 右 下 6 番 の 根 管 治 療 の 際 その 髄 床 底 に 穿 孔 させた 事 実 は 認 め られないものの 近 心 根 の 遠 心 壁 に 穿 孔 した 疑 いは 容 易 に 払 拭 できないところである もっとも 仮 に 右 下 6 番 近 心 根 に 穿 孔 が 生 じたとしても 前 記 1(4)イのとおり そのこと 自 体 によって 原 告 に 新 たな 痛 み 等 の 症 状 が 発 生 したとは 認 められないのであるから この 穿 孔 によって 右 下 6 番 の 状 態 が 悪 化 して 抜 歯 せざるを 得 なくなったことが 認 められない 場 合 には 当 該 過 失 による 損 害 の 発 生 がないこととなるばかりか 穿 孔 に 対 する 適 切 な 処 置 を 怠 った 過 失 もないといわざるを 得 ない そこで 被 告 が 右 下 6 番 近 心 根 を 誤 って 穿 孔 させたか 否 かの 判 断 はひとまず 留 保 し 後 記 5において 上 記 の 穿 孔 により 損 害 が 発 生 したか 否 かについて 判 断 することとする 4 争 点 (2)( 右 下 8 番 の 根 管 治 療 において 必 要 のない 神 経 を 除 去 し また 不 完 全 な 根 管 治 療 を 行 った 過 失 の 有 無 )について (1) 前 記 1の 事 実 等 に 対 する 評 価 ア 上 記 1(2) 及 び2(2)アで 認 定 したとおり 右 下 4ないし8 番 にブリッジを 設 置 するに 当 たっ ては 右 下 8 番 を 支 台 とする 必 要 があったし 右 下 8 番 の 根 管 は 閉 塞 状 態 であったところ 上 記 2(1)のとおり 狭 窄 根 管 の 場 合 や 保 存 に 適 さないと 考 えられる 場 合 は 断 髄 の 適 応 があり 上 記 1(2)ア 及 び2(2)イのとおり 右 下 8 番 について 歯 の 表 面 を 削 ることは 不 可 避 であるが 上 記 2(2)ウのとおり 歯 の 表 面 を 削 る 以 上 それによる 冷 水 痛 等 の 不 都 合 を 避 けるために 断 髄 す ることは 一 般 的 な 処 置 であると 認 められる イ 上 記 アで 判 示 したところに 加 え 上 記 1(5)で 認 定 したとおり 右 下 8 番 に 特 段 の 症 状 が 生 じていないことからすると 右 下 8 番 については 必 要 な 治 療 をした 結 果 特 段 の 不 都 合 もなく 経 過 しているというべきであるから 治 療 が 不 完 全 であるとは 言 えない ウ したがって 被 告 には 右 下 8 番 の 根 管 治 療 において 必 要 のない 神 経 を 除 去 し ま た 不 完 全 な 根 管 治 療 を 行 った 過 失 を 認 めることはできない (2) 原 告 の 主 張 に 対 する 判 断 ア これに 対 し 原 告 は まず 被 告 が 右 下 顎 部 へのブリッジ 装 着 に 当 たり 右 下 8 番 の 抜 髄 措 置 の 必 要 性 を 訴 え 抜 髄 するかどうかの 判 断 を 原 告 に 求 めているところ このこと 自 体 が 不 適 切 だと 主 張 する しかし 医 師 はいわゆる 説 明 義 務 を 果 たすことが 求 められているとこ ろ 抜 髄 措 置 の 必 要 性 を 訴 え その 判 断 を 求 めることは 患 者 である 原 告 に 対 する 配 慮 であ るといえるから 原 告 のこの 主 張 は 採 用 できない イ 次 に 原 告 は 右 下 8 番 には 虫 歯 等 がレントゲン 写 真 上 認 められておらず 何 ら 問 題 がなかったから ブリッジの 再 作 製 及 び 装 着 に 当 たり 歯 髄 を 除 去 する 必 要 はなかったと 主 張 する しかしながら 上 記 2(2)アにおいて 認 定 したとおり ブリッジの 設 置 に 当 たっては 支 台 と なるべき 歯 の 調 整 が 必 要 であるところ 上 記 第 2の1(2)のとおり 既 存 のブリッジが 右 下 6ない し8 番 にわたるものであったのに 対 して 再 作 製 されるブリッジは 右 下 4ないし8 番 にわたるも のであって その 形 自 体 が 異 なるから 改 めて 支 台 となる 歯 の 調 整 が 必 要 であることは 明 らか である また この 調 整 にあたって 歯 を 削 ることはやむを 得 ないことであって そのために 歯 の 表 面 と 神 経 との 距 離 が 狭 まり 冷 水 痛 等 の 不 都 合 が 生 じるおそれが 高 まることもまた 明 らか である そうだとすれば 被 告 は このようなおそれを 回 避 するために いわば 良 心 的 に 右 下 8 番 の 抜 髄 措 置 を 講 じたものであると 認 めることができる したがって 右 下 8 番 に 虫 歯 等 が 認 められず または 何 らかの 病 変 がなかったとしても なお 抜 髄 の 必 要 性 が 認 められるから 原 告 のこの 主 張 も 採 用 できない (3) 小 括 以 上 のとおり 右 下 8 番 の 抜 髄 及 び 根 管 治 療 は 必 要 かつ 十 分 な 治 療 であったと 認 めら れるから 被 告 に 右 下 8 番 の 根 管 治 療 において 必 要 のない 神 経 を 除 去 し また 不 完 全 な 根 管 治 療 を 行 った 過 失 は 認 められない 5 争 点 (3)( 各 過 失 による 損 害 の 発 生 の 有 無 )について (1) 右 下 6 番 付 近 のレントゲン 写 真 上 の 所 見 右 下 6 番 の 近 心 根 周 辺 及 び 近 心 根 と 遠 心 根 との 間 付 近 のレントゲン 写 真 上 の 所 見 は 右 下 6 番 の 根 管 治 療 前 後 を 通 じて 次 のように 変 化 していることが 認 められる( 甲 A31ないしA

41 乙 A2ないし9) すなわち 根 管 治 療 開 始 前 から 近 心 根 根 尖 部 と 根 分 岐 部 の2か 所 に 病 変 を 表 す 骨 吸 収 像 が 認 められたところ このうち 近 心 根 根 尖 部 の 病 変 が 徐 々に 上 方 に 広 がり 根 管 治 療 開 始 前 には 両 者 が 連 続 した 病 変 となっていた この 状 態 は 根 管 治 療 中 から 新 たなブリッジ 装 着 の ころまでそれほど 変 化 がなかったが ブリッジ 装 着 後 には 骨 吸 収 像 が 薄 くなり 始 め 近 心 根 に 近 接 した 部 分 は より 遠 い 部 分 とは 明 らかに 異 なった 不 透 過 像 に 近 い 所 見 を 示 すようになっ た (2) 上 記 事 実 等 に 対 する 評 価 ア 上 記 (1)のレントゲン 写 真 上 の 所 見 につき 被 告 のほか J 医 師 及 びI 医 師 は 一 致 し て 右 下 6 番 近 心 根 において 被 告 による 根 管 治 療 後 に 骨 の 再 生 が 開 始 進 行 していることを 示 していると 述 べている( 乙 A12 B1 B2 証 人 I 証 人 J 被 告 本 人 ) また 上 記 1(4)イにお いて 認 定 したとおり 原 告 は 右 下 6 番 の 根 管 治 療 開 始 後 それまでと 異 なった 痛 みや 腫 れを 特 段 訴 えていないのである そうであれば 仮 に 被 告 が 誤 って 右 下 6 番 近 心 根 の 遠 心 壁 に 穿 孔 していたとしても 結 果 として 右 下 6 番 近 心 根 は 回 復 傾 向 にあった 可 能 性 がうかがわれると ころである イ 原 告 は 右 下 6 番 近 心 根 の 状 態 は 悪 化 しており したがって 抜 歯 をしたものであると 主 張 し D 医 師 は 平 成 13 年 6 月 29 日 の 時 点 ( 乙 A8)の 方 が 平 成 12 年 4 月 20 日 の 時 点 ( 乙 A 6)に 比 して 透 過 像 の 拡 大 が 見 られるので 症 状 は 悪 化 していると 供 述 する しかし 現 にこれ らのレントゲン 写 真 を 対 比 しても 透 過 像 の 拡 大 を 見 いだすことは 困 難 であるから 上 記 証 言 はにわかに 信 用 することができず この 供 述 を 以 て 上 記 アで 指 摘 したとおり 右 下 6 番 が 回 復 傾 向 にあった 可 能 性 を 否 定 することは 困 難 であるし 他 に 右 下 6 番 について 被 告 が 行 わなかっ た 処 置 をすべきであったことや 抜 歯 せざるを 得 ない 状 態 にあったことを 認 めるに 足 りる 証 拠 は ない(なお 原 告 は 本 件 弁 論 準 備 手 続 期 日 において 鑑 定 の 申 立 をしないと 明 言 してい る ) したがって 仮 に 被 告 に 過 失 があったとしても それによる 損 害 の 発 生 を 認 定 する 証 拠 はないものといわざるを 得 ない (3) 小 括 以 上 によれば 被 告 の 穿 孔 行 為 により 損 害 が 発 生 したと 認 めることはできない 6 結 論 以 上 のとおり 被 告 には 争 点 (2)の 過 失 はなく 争 点 (1)の 過 失 については 一 部 につきそ の 有 無 が 明 らかでないものの それによる 損 害 の 発 生 を 認 めることができないのであるから 争 点 (4)( 損 害 額 )については 判 断 するまでもなく 被 告 に 損 害 賠 償 責 任 が 発 生 しないことは 明 らかである したがって 原 告 の 請 求 には 理 由 がないから 棄 却 することとし 主 文 のとおり 判 決 する 東 京 地 方 裁 判 所 民 事 第 34 部 裁 判 長 裁 判 官 藤 山 雅 行 裁 判 官 金 光 秀 明 裁 判 官 萩 原 孝 基