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Transcription:

VI. 日 本 語 使 用 行 動 および 意 識 調 査 要 旨 : 国 際 交 流 基 金 ケルン 日 本 文 化 会 館 の 日 本 語 講 座 の 受 講 生 を 対 象 に 日 本 語 学 習 に 対 する 動 機 や 意 識 これまでの 日 本 文 化 日 本 語 体 験 など 講 座 受 講 生 の 日 本 語 使 用 行 動 や 意 識 に 関 する 調 査 を 国 際 交 流 基 金 総 務 部 企 画 評 価 課 が 国 別 評 価 手 法 の 研 究 開 発 の 目 的 で 収 集 したデータを 再 利 用 して 行 った 本 節 では その 調 査 結 果 について 報 告 する キーワード: 言 語 学 習 者 使 用 者 二 次 分 析 直 接 体 験 コースデザイン ポートフォリオ 1. 本 調 査 の 意 義 と 目 的 海 外 に 拠 点 を 持 つ 国 際 交 流 基 金 ( 以 下 基 金 )は 近 年 は 学 習 者 の 多 様 化 を 踏 まえて 日 本 語 教 育 事 業 を 展 開 している 日 本 語 学 習 の 動 機 や 学 習 年 数 日 本 での 滞 在 経 験 や 日 本 語 との 接 触 状 況 は 地 域 によって 機 関 講 座 によって そして 個 人 的 事 情 によって 多 岐 にわたっている 基 金 が 提 供 する 講 座 のうち 3 つの 拠 点 ( 日 本 語 国 際 センター ソウル 日 本 文 化 センター ケルン 日 本 文 化 会 館 )に 関 する JF 日 本 語 教 育 スタンダードの 試 行 の 取 り 組 みについては V. 教 育 現 場 との 共 同 研 究 で 報 告 したとおりであるが その 試 行 において CEFR の 先 行 研 究 から 得 られた 言 語 学 習 者 を 社 会 的 な 存 在 (social agents) と 見 なし 時 間 的 空 間 的 広 がりにおいて 言 語 活 動 を 包 括 的 に 捉 えていく と いう 観 点 での 見 直 しは 含 まれていない そのため ケルン 日 本 文 化 会 館 の 日 本 語 講 座 の 受 講 生 を 対 象 に 受 講 生 が 日 本 語 学 習 にどのような 動 機 を 持 ち どのような 意 識 で 日 本 語 を 学 び これまで 日 本 文 化 や 日 本 語 をどのように 体 験 してきたかを 把 握 するため 日 本 語 の 使 用 行 動 や 日 本 語 に 対 する 意 識 に 関 する 調 査 を 取 り 入 れた 本 調 査 は 独 自 の 調 査 を 新 た に 実 施 するのではなく 基 金 総 務 部 企 画 評 価 課 が 国 別 評 価 手 法 の 研 究 開 発 の 目 的 で 収 集 したデータを 日 本 語 学 習 レベルと 日 本 に 関 する 体 験 日 本 への 関 心 イメージ 日 本 に 対 する 認 知 度 好 感 度 といった 観 点 から 再 分 析 する 二 次 分 析 の 手 法 をとった そして 分 析 結 果 をケルン 日 本 文 化 会 館 の 講 座 担 当 者 にフィードバックすることで カリキュラム やコースデザインの 改 定 に 役 立 てることを 目 的 とした JF 日 本 語 教 育 スタンダード( 以 下 JF スタンダード)では CEFR の 基 本 的 考 え 方 と 同 様 に 言 語 学 習 者 が 生 涯 という 時 間 的 な 流 れの 中 で 言 語 を 学 び 様 々な 領 域 ( 私 的 247

JF 日 本 語 教 育 スタンダード 試 行 版 公 的 職 業 教 育 の 4 領 域 )において 言 語 を 使 用 するという 時 間 的 空 間 的 広 がりにお いて 言 語 活 動 を 包 括 的 に 捉 えていくことが 重 要 である と 考 える 真 鍋 (2007: 72)は これまで 日 本 語 教 育 において 多 くの 場 合 学 校 が 教 育 の 場 として 設 定 されていたが 社 会 学 的 観 点 に 立 って 社 会 化 ここでは 日 本 語 学 習 の 行 なわれる 場 (setting)/ 状 況 (situation)/ 文 脈 (context) に 即 して 考 えた 時 日 本 語 教 育 を 家 族 / 友 人 ( 基 礎 社 会 ) 学 校 / 職 場 / 地 域 ( 中 間 社 会 ) 社 会 ( 全 体 社 会 ) というように 射 程 を 広 げて 考 えてい くことの 必 要 性 を 指 摘 している 海 外 で 約 300 万 人 に 達 する 日 本 語 学 習 者 の 実 際 を 教 室 内 という 限 定 された 空 間 を 超 えて 社 会 における 言 語 使 用 の 側 面 から 把 握 することは 日 本 語 教 育 を 考 える 上 で 有 効 といえよう 2. 分 析 方 法 2.1 ドイツ 事 業 評 価 調 査 の 概 要 基 金 の 企 画 評 価 課 はこれまで 評 価 手 法 開 発 研 究 として 国 際 文 化 交 流 という 文 化 的 背 景 を 異 にする 社 会 や 人 々を 対 象 として 実 施 される 事 業 や 活 動 の 成 果 ( 効 果 や 影 響 )を 把 握 測 定 する 方 法 ( 国 際 交 流 基 金 2007: 1)を 確 立 することを 目 的 に 2003 年 より 国 別 評 価 手 法 研 究 開 発 プロジェクト を 行 っている その 中 で 2005 年 度 ~ 2006 年 度 に 実 施 した 韓 国 における 第 1 次 調 査 に 続 き 2007 年 度 はドイツで 第 2 次 調 査 ドイツにおける 国 際 交 流 基 金 の 事 業 評 価 調 査 (2007 年 度 ~ 2008 年 度 ) ( 以 下 ドイツ 事 業 評 価 調 査 )を 行 っ ている ドイツ 事 業 評 価 調 査 は 一 般 市 民 日 本 研 究 者 知 的 交 流 事 業 参 加 者 ケル ン 日 本 文 化 会 館 日 本 語 受 講 者 ( 以 下 ケルン 受 講 生 ) ケルン 日 本 文 化 会 館 主 催 文 化 事 業 への 参 加 者 といった 対 象 グループ 別 に 日 本 体 験 や 日 本 への 関 心 イメージなどを 調 査 している 今 回 私 たちは JF スタンダード 開 発 の 一 環 として ケルン 受 講 生 を 対 象 に 行 っ た 調 査 データを 初 級 中 上 級 という 日 本 語 能 力 の 目 安 ( 以 下 日 本 語 学 習 レベル)と 日 本 に 関 する 体 験 日 本 への 関 心 イメージ 日 本 に 対 する 認 知 度 好 感 度 といった 側 面 から 再 分 析 した ケルン 受 講 生 の 概 要 は 下 記 のとおりである 248

VI. 日 本 語 使 用 行 動 および 意 識 調 査 ⑴ 調 査 対 象 :ケルン 日 本 文 化 会 館 日 本 語 講 座 計 9クラス(Stufe 1 ~ 9)の 受 講 生 1 日 本 語 講 座 受 講 生 表 1 クラス 別 質 問 表 回 答 者 (ケルン 受 講 生 ) クラス 名 質 問 表 番 号 度 数 ( 回 答 者 数 ) クラスの 全 人 数 1A 1-18 18 23 1N 19-28 10 15 2A 29-40 12 16 2N 41-44 4 6 3 45-66 22 25 4 67-82 16 20 5 83-89 7 7 6 90-105 16 18 7 106-110 5 7 8 111-114 4 8 9 115-124 10 10 合 計 124 155 クラスのレベル 表 2 ケルン 講 座 のレベル 概 観 クラス 名 Stufe 1A( 夜 の 部 ) 18:45-20:45 Stufe 1N( 午 後 の 部 ) 16:30-18:30 Stufe 2A( 夜 の 部 ) 18:45-20:45 Stufe 2N( 午 後 の 部 ) 16:30-18:30 Stufe 3 Stufe 4 Stufe 5 Stufe 6 Stufe 7 レベル 初 級 : みんなの 日 本 語 1 ~ 10 課 初 級 : みんなの 日 本 語 11 ~ 20 課 初 級 : みんなの 日 本 語 21 ~ 30 課 ( 日 本 語 能 力 試 験 4 級 程 度 ) 初 級 : みんなの 日 本 語 31 ~ 40 課 初 級 : みんなの 日 本 語 41 ~ 50 課 ( 日 本 語 能 力 試 験 3 級 程 度 ) 初 中 級 中 下 級 Stufe 8 中 上 級 ( 日 本 語 能 力 試 験 2 級 程 度 ) Stufe 9 中 上 級 ( 日 本 語 能 力 試 験 2 級 以 上 ) ⑵ 調 査 方 法 : 自 記 式 の 集 合 調 査 法 ⑶ 調 査 期 間 :2007 年 5 月 29 日 ~6 月 21 日 ⑷ 回 収 数 ( 率 ):124/155(80.0%) 249

JF 日 本 語 教 育 スタンダード 試 行 版 2.2 二 次 分 析 の 意 義 と 方 法 二 次 分 析 は ひとつの 社 会 調 査 手 法 として 既 存 データを 他 の 側 面 から 見 直 すことで 新 たな 視 点 を 発 見 できる 点 調 査 にかかるコストを 抑 えることができる 点 に 意 義 を 見 出 すこ とができる 今 回 は 企 画 評 価 課 の 調 査 データを 再 利 用 することとした ケルン 受 講 生 は 若 干 時 期 は 異 なるものの V-4 ケルン 日 本 文 化 会 館 日 本 語 講 座 の 報 告 対 象 と 同 じ 講 座 の 受 講 生 である 本 調 査 では 下 記 に 挙 げる 質 問 項 目 に 関 して 有 効 調 査 対 象 者 (n=124)を 初 級 (n=89) と 中 上 級 (n=35) の2つにわけ 2 事 業 評 価 調 査 の 結 果 とクロス 集 計 することで 日 本 語 学 習 レベルによって 以 下 の 項 目 の 回 答 結 果 の 傾 向 に 差 があるかどうかを 分 析 した( 表 3) 表 3 分 析 の 方 法 分 析 の 観 点 ⑴ 日 本 についての 体 験 経 験 ⑵ 日 本 についての 情 報 知 識 源 ⑶ 日 本 の 事 柄 についての 関 心 ⑷ 日 本 に 対 する 認 知 度 (どの 程 度 知 っているか)と 好 感 度 ( 日 本 が 好 きか それとも 嫌 いか) 分 析 方 法 日 本 について 体 験 経 験 されたことのある 項 目 をすべて 選 んで ください の 回 答 結 果 と 日 本 語 学 習 レベル( 初 級 中 上 級 )のクロ ス 集 計 あなたは 普 段 日 本 についての 情 報 や 知 識 をどこから 入 手 して いますか の 回 答 結 果 と 日 本 語 学 習 レベルのクロス 集 計 あなたは 日 本 の 事 柄 についてどの 程 度 関 心 がありますか の 回 答 結 果 と 日 本 語 学 習 レベル( 初 級 中 上 級 )のクロス 集 計 あなたは 日 本 について どの 程 度 知 っていると 思 いますか 日 本 が 好 きですか 嫌 いですか の 回 答 結 果 と 日 本 語 学 習 レベル( 初 級 中 上 級 )のクロス 集 計 また ⑴から⑷の 各 項 目 について 初 級 (n=89) と 中 上 級 (n=35) の2つの 群 の 傾 向 に 差 があるかどうかを 検 討 するために ⑴と⑵に 関 しては Fisher の 正 確 確 率 検 定 ( 両 側 ) を ⑶と⑷に 関 しては x 2 検 定 ( 両 側 )を 行 った 3. 分 析 結 果 分 析 結 果 を 以 下 4 点 にまとめる (1) 直 接 的 な 日 本 体 験 は 中 上 級 者 の 方 が 多 い 表 4のうち 網 掛 けされた 項 目 ( 初 級 と 中 上 級 で 10 ポイント 以 上 差 のあるもの)を 見 る と 中 上 級 者 は 初 級 者 と 比 べ 観 光 仕 事 留 学 といった 目 的 で 日 本 に 行 ったことがある と 答 える 者 が 多 く 特 に 観 光 目 的 の 旅 行 経 験 に 関 してその 差 が 約 51 ポイントもあった 250

VI. 日 本 語 使 用 行 動 および 意 識 調 査 また 仕 事 等 で 日 本 との 関 わりを 持 つ 者 の 割 合 も 高 いことがわかった( 日 本 企 業 日 系 企 業 で 働 いていたことがある は 約 24 ポイント 差 日 本 企 業 日 経 企 業 と 取 引 をしたこ とがある は 約 14 ポイント 差 で 中 上 級 が 優 位 ) 一 方 で 日 本 に 関 する 新 聞 や 雑 誌 の 記 事 を 読 んだことがある 日 本 映 画 アニメ 漫 画 を 見 たことがある という 問 いに 対 しては 両 者 でほとんど 違 いが 見 られなかった 日 本 体 験 を 日 本 日 本 人 との 直 接 的 な 接 触 ( 直 接 体 験 と 呼 ぶ) メディア 等 を 通 した 体 験 ( 間 接 体 験 と 呼 ぶ)に 分 けた 場 合 日 本 語 学 習 レベルと 直 接 体 験 には 関 連 が 見 られ 間 接 体 験 にはそのような 関 連 が 見 られない 表 4 日 本 についての 体 験 経 験 と 日 本 語 学 習 レベルのクロス 集 計 初 級 (89 名 ) level 中 上 級 (35 名 ) 1. 日 本 の 製 品 や 商 品 を 購 入 したことがある 95.5% 100.0% 2. 日 本 の 料 理 屋 レストラン 居 酒 屋 パブ バーなどで 飲 食 をしたこ とがある 93.3% 94.3% 3. 日 本 に 関 する 展 覧 会 公 演 講 演 会 などに 行 ったことがある 86.5% 91.4% 4. 日 本 企 業 日 系 企 業 で 働 いていたことがある ** 15.7% 40.0% 5. 日 本 企 業 日 系 企 業 と 取 引 をしたことがある 20.2% 34.3% 6. 日 本 人 作 家 の 本 を 読 んだことがある ** 76.4% 97.1% 7. 日 本 に 関 する 新 聞 や 雑 誌 の 記 事 を 読 んだことがある 95.5% 94.3% 8. 日 本 映 画 アニメ 漫 画 を 見 たことがある 95.5% 100.0% 9. 日 本 の 音 楽 歌 謡 J ポップ 民 謡 を 聴 いたことがある 91.0% 91.4% 10. 学 校 あるいは 大 学 で 日 本 のことを 学 んだことがある * 42.7% 65.7% 11. 日 本 人 の 友 人 知 人 がいる 62.9% 80.0% 12. 観 光 で 日 本 に 行 ったことがある ** 31.5% 82.9% 13. 仕 事 で 日 本 に 行 ったことがある ** 9.0% 28.6% 14. 留 学 で 日 本 に 行 ったことがある 6.7% 31.4% 15. 日 本 の 柔 道 華 道 茶 道 剣 道 などを 習 ったことがある 37.1% 40.0% 16. その 他 14.6% 11.3% 網 掛 けの 項 目 は 初 級 と 中 上 級 との 間 で 10 ポイント 以 上 の 差 があるもの 下 線 部 は 最 も 差 のある 項 目 Fisher の 正 確 確 率 検 定 ( 両 側 )において 有 意 水 準 5% 未 満 で 初 級 と 中 上 級 との 間 で 各 項 目 の 比 率 に 有 意 な 差 が 見 られる 場 合 は * 有 意 水 準 1% 未 満 では ** を 付 す ただし 本 データは 2007 年 の 調 査 実 施 時 点 でのケルンの 講 座 受 講 生 を 対 象 として 行 っ た 調 査 であり 無 作 為 抽 出 によって 得 られたものでない 251

JF 日 本 語 教 育 スタンダード 試 行 版 (2) 初 級 者 の 方 がテレビなどのメディアを 通 して 日 本 に 関 する 情 報 を 得 ている 表 5のうち 網 掛 け 部 分 (5ポイント 以 上 初 級 の 比 率 が 高 い 項 目 )を 見 ると 日 本 や 日 本 語 に 関 する 情 報 源 として 初 級 者 は 中 上 級 者 より テレビ ビデオ DVD インターネッ ト ケルン 日 本 文 化 会 館 をあげる 者 が 多 かった たとえば テレビ 番 組 と 新 聞 雑 誌 につ いては 約 11 ポイント ビデオ DVD については 約 17 ポイントの 違 いがみられた 逆 に 中 上 級 者 で 比 較 的 比 率 が 高 いのは( 表 5 下 線 部 ) 学 校 の 授 業 教 科 書 であった 表 5 日 本 についての 情 報 知 識 源 と 日 本 語 学 習 レベルのクロス 集 計 初 級 (89 名 ) level 中 上 級 (35 名 ) 1. 新 聞 記 事 76.4% 74.3% 2. 雑 誌 記 事 75.3% 71.4% 3. 本 80.9% 77.1% 4. テレビ 番 組 76.4% 65.7% 5. ラジオ 番 組 25.8% 25.7% 6. 新 聞 雑 誌 の 広 告 22.5% 11.4% 7. テレビ ラジオの 広 告 14.6% 11.4% 8. 劇 場 映 画 73.0% 68.6% 9. ビデオ DVD 68.5% 51.4% 10. インターネット 89.9% 82.9% 11. 日 本 の 政 府 政 府 関 連 機 関 の 広 報 誌 23.6% 22.9% 12. 日 本 料 理 屋 レストランなどに 置 かれている 情 報 誌 22.5% 20.0% 13. 学 校 の 授 業 教 科 書 40.4% 45.7% 14. 家 族 親 族 20.2% 22.9% 15. 友 人 知 人 職 場 の 同 僚 60.7% 60.0% 16. 在 ドイツ 日 本 国 大 使 館 総 領 事 館 11.2% 8.6% 17. ケルン 日 本 文 化 会 館 ( 国 際 交 流 基 金 ) 89.9% 82.9% 18. ベルリン 日 独 センター 2.2% 2.9% 19. 独 日 協 会 独 日 友 好 協 会 4.5% 11.4% 20. その 他 12.4% 22.9% 網 掛 けの 項 目 は 5 ポイント 以 上 初 級 の 比 率 が 高 い 場 合 下 線 部 は 5 ポイント 以 上 中 上 級 の 比 率 が 高 い 場 合 Fisher の 正 確 確 率 検 定 ( 両 側 )において 有 意 水 準 5% 未 満 で 初 級 と 中 上 級 との 間 で 各 項 目 の 比 率 に 有 意 な 差 は 見 られない 252

VI. 日 本 語 使 用 行 動 および 意 識 調 査 (3)ファッション 映 画 アニメ 漫 画 スポーツなどの 分 野 においては 初 級 者 の 方 が 高 い 関 心 を 示 す 者 の 割 合 が 高 い 表 6 にあるとおり 日 本 の 事 柄 についての 関 心 では ファッション 映 画 アニメ 漫 画 スポーツ タレント 歌 手 俳 優 科 学 技 術 経 済 産 業 企 業 宗 教 などの 項 目 では 中 上 級 者 よりも 初 級 者 の 方 が とても 関 心 がある まあ 関 心 がある を 合 わせ た 比 率 が 高 かった 中 でも ファッションと 宗 教 に 関 しては 初 級 と 中 上 級 で 20 ポイン ト 以 上 の 差 が 見 られた そのほかの 項 目 (たとえば 美 術 絵 画 伝 統 芸 能 食 べ 物 飲 み 物 料 理 社 会 生 活 風 習 歴 史 日 本 語 ドイツとの 関 係 など)に 関 してはほぼ 同 じ 比 率 である (4) 日 本 に 関 する 知 識 の 程 度 は 異 なるが 初 級 中 上 級 で 選 好 に 違 いは 見 られない 表 7のとおり 日 本 についてどの 程 度 知 っているか という 問 いに 対 しては 初 級 者 よりも 中 上 級 者 の 方 が とてもよく 知 っている まあ 知 っている の 合 計 比 率 が 高 くなっ ている しかし 日 本 が 好 きか 嫌 いか の 設 問 に 対 しては 初 級 であっても 中 上 級 であっ ても 選 好 の 傾 向 に 差 はみられない また x 2 検 定 ( 両 側 )において 有 意 水 準 5% 未 満 で 有 意 な 差 が 見 られる 場 合 はなかった 253

JF 日 本 語 教 育 スタンダード 試 行 版 表 6 あなたは 日 本 の 事 柄 についてどの 程 度 関 心 がありますか と 日 本 語 学 習 レベルのクロス 集 計 とても 関 心 がある まあ 関 心 が ある あまり 関 心 がない 全 く 関 心 が ない Other/ DK 1. 音 楽 歌 謡 J ポップ 民 謡 初 級 ( 8 9 名 ) 29.2% 37.1% 23.6% 10.1% - 中 上 級 (35 名 ) 20.0% 37.1% 31.4% 5.7% 5.7% 2. 美 術 絵 画 初 級 ( 8 9 名 ) 22.5% 58.4% 18.0% - 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 25.7% 51.4% 11.4% 5.7% 5.7% 3. 伝 統 芸 能 ( 歌 舞 伎 能 など) 初 級 ( 8 9 名 ) 21.3% 49.4% 24.7% 4.5% - 中 上 級 (35 名 ) 8.6% 51.4% 25.7% 11.4% 2.9% 4. ファッション * 初 級 ( 8 9 名 ) 18.0% 43.8% 25.8% 12.4% - 中 上 級 (35 名 ) 17.1% 22.9% 34.3% 20.0% 5.7% 5. 映 画 アニメ 漫 画 * 初 級 ( 8 9 名 ) 41.6% 43.8% 13.5% 1.1% - 中 上 級 (35 名 ) 31.4% 37.1% 17.1% 11.4% 2.9% 6. 文 芸 初 級 ( 8 9 名 ) 22.5% 50.6% 18.0% 9.0% - 中 上 級 (35 名 ) 22.9% 51.4% 22.9% 2.9% - 7. コンピューターゲーム ビデオゲーム 及 びゲーム 機 初 級 ( 8 9 名 ) 20.2% 13.5% 32.6% 32.6% 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 11.4% 14.3% 28.6% 37.1% 8.6% 8. スポーツ 初 級 ( 8 9 名 ) 18.0% 30.3% 31.5% 19.1% 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 14.3% 17.1% 37.1% 25.7% 5.7% 9. 流 行 初 級 ( 8 9 名 ) 28.1% 42.7% 21.3% 6.7% 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 28.6% 40.0% 20.0% 8.6% 2.9% 10.タレント 歌 手 俳 優 初 級 ( 8 9 名 ) 15.7% 38.2% 32.6% 12.4% 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 14.3% 22.9% 40.0% 17.1% 5.7% 11. 食 べ 物 飲 み 物 料 理 初 級 ( 8 9 名 ) 66.3% 28.1% 5.6% - - 中 上 級 (35 名 ) 68.6% 22.9% 5.7% - 2.9% 12. 商 品 製 品 初 級 ( 8 9 名 ) 39.3% 48.3% 11.2% 1.1% - 中 上 級 (35 名 ) 37.1% 48.6% 8.6% - 5.7% 13. 自 然 地 理 * 初 級 ( 8 9 名 ) 44.9% 46.1% 9.0% - - 中 上 級 (35 名 ) 28.6% 60.0% 5.7% - 5.7% 14. 名 所 旧 跡 初 級 ( 8 9 名 ) 61.8% 37.1% 1.1% - - 中 上 級 (35 名 ) 40.0% 57.1% 2.9% - - 15. 科 学 技 術 初 級 ( 8 9 名 ) 30.3% 43.8% 19.1% 5.6% 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 14.3% 48.6% 22.9% 8.6% 5.7% 16. 社 会 生 活 風 習 初 級 ( 8 9 名 ) 69.7% 30.3% - - - 中 上 級 (35 名 ) 54.3% 42.9% - - 2.9% 17. 経 済 産 業 企 業 初 級 ( 8 9 名 ) 18.0% 40.4% 29.2% 11.2% 1.1% 中 上 級 (35 名 ) 14.3% 31.4% 37.1% 11.4% 5.7% 18. 政 治 外 交 国 際 関 係 初 級 ( 8 9 名 ) 19.1% 47.2% 30.3% 3.4% - 中 上 級 (35 名 ) 22.9% 37.1% 34.3% - 5.7% 19. 歴 史 * 初 級 ( 8 9 名 ) 34.8% 57.3% 7.9% - - 中 上 級 34.3% 40.0% 20.0% - 5.7% 20. 宗 教 * 初 級 ( 8 9 名 ) 25.8% 41.6% 27.0% 5.6% - 中 上 級 (35 名 ) 14.3% 25.7% 51.4% 2.9% 5.7% 21. 日 本 語 初 級 ( 8 9 名 ) 87.6% 12.4% - - - 中 上 級 (35 名 ) 85.7% 11.4% - - 2.9% 22.ドイツとの 関 係 初 級 ( 8 9 名 ) 24.7% 49.4% 22.5% 3.4% - 中 上 級 (35 名 ) 25.7% 45.7% 22.9% - 5.7% 23.その 他 初 級 ( 8 9 名 ) 4.5% - - - 95.5% 中 上 級 (35 名 ) 2.9% - - - 97.1% 網 掛 けは 初 級 と 中 上 級 で 関 心 の 有 無 に 差 がある 項 目 の 内 特 に 特 徴 的 な 部 分 χ 2 検 定 ( 両 側 )において 有 意 水 準 5% 未 満 で 有 意 な 差 が 見 られる 場 合 は * ただし 本 データは 2007 年 の 調 査 実 施 時 点 でのケルンの 講 座 受 講 生 を 対 象 として 行 った 調 査 であり 無 作 為 抽 出 によって 得 られたものでない 254

VI. 日 本 語 使 用 行 動 および 意 識 調 査 表 7 日 本 に 対 する 認 知 度 好 感 度 と 日 本 語 学 習 レベルのクロス 集 計 日 本 についてどの 程 度 知 って いるか 日 本 が 好 きか 嫌 いか 初 級 (89 名 ) level 中 上 級 (35 名 ) 1. とてもよく 知 っている 9.0% 8.6% 2. まあ 知 っている 57.3% 71.4% 3. あまり 知 らない 29.2% 20.0% 4. 全 く 知 らない - - DK/Others 4.5% - 1. とても 好 き 55.1% 54.3% 2. まあ 好 き 37.1% 37.1% 3. どちらとも 言 えない 7.9% 8.6% 4. やや 嫌 い - - 5. とても 嫌 い - - x 2 検 定 ( 両 側 )において 有 意 水 準 5% 未 満 で 有 意 な 差 が 見 られる 場 合 はない 4. 考 察 4.1 分 析 のまとめ 今 回 の 日 本 語 学 習 レベル 別 分 析 で 新 たに 分 かったことは 日 本 語 学 習 レベルと 日 本 と の 直 接 体 験 度 合 いとの 関 連 日 本 語 学 習 レベルによる 情 報 源 関 心 の 違 い である 特 に 前 者 の 関 連 は 興 味 深 い 直 接 体 験 が 多 いから 日 本 語 が 上 達 するのか あるいは 中 上 級 で あるから 直 接 体 験 の 機 会 が 多 いのかについて 本 調 査 からは 特 定 できないが 日 本 や 日 本 語 との 直 接 体 験 が 日 本 語 の 学 習 動 機 に 深 く 関 係 している 可 能 性 がある この 結 果 をケルン 日 本 文 化 会 館 にフィードバックし 教 室 外 の 日 本 日 本 語 体 験 をカリキュラムに 取 り 入 れ ることを 提 案 した カリキュラムやコースデザインを 考 え 直 す 上 で このような 実 証 デー タを 講 座 に 還 元 することは 大 切 だと 考 える 4. 2 学 習 者 ニーズを 把 握 するためのポートフォリオ 活 用 今 回 はケルン 受 講 生 を 対 象 にした 調 査 であったが 前 述 のように 国 地 域 機 関 が 異 なれば 学 習 者 のニーズは 異 なってくる たとえば ソウル 日 本 文 化 センターの 受 講 生 ( 日 本 語 能 力 試 験 1 級 合 格 者 レベル)では 日 本 語 学 習 の 継 続 動 機 も また 学 習 者 が 望 むコース 内 容 もケルンの 受 講 生 とは 違 ってくるだろう 近 年 ドイツでは 日 本 のテレビゲーム アニメやマンガがブームとなり 全 体 的 に 日 本 語 学 習 者 が 増 えており 特 に 低 年 齢 化 して 255

JF 日 本 語 教 育 スタンダード 試 行 版 いるのが 新 しい 傾 向 である と 指 摘 されるように( 松 尾 2005: 116) 同 じドイツであって も 世 代 によって 日 本 語 学 習 者 の 関 心 に 差 が 見 られる 世 代 によって 興 味 の 対 象 や 情 報 を 得 る 媒 体 が 異 なるというように 日 常 の 生 活 態 度 の 相 違 が 日 本 語 学 習 の 動 機 にも 関 係 する ことが 推 測 される Ⅳ 章 で 紹 介 したヨーロッパ 言 語 ポートフォリオ(ELP:European Language Portfolio) は このように 複 雑 化 する 学 習 者 の 現 状 を 把 握 する 手 立 てとしても 活 用 できるのではない だろうか ELP は 言 語 パスポート 言 語 バイオグラフィー 資 料 集 の3 部 から 構 成 さ れるが 中 でも 言 語 バイオグラフィーでは 言 語 能 力 の 熟 達 度 だけでなく 言 語 学 習 履 歴 異 言 語 異 文 化 体 験 言 語 の 学 習 計 画 もあわせて 記 録 する 仕 組 みになっている たとえば 日 本 語 能 力 3 は( 自 己 評 価 で)どのくらいか という 情 報 に 加 え 日 本 語 をこれまでどこ で どのくらいのペースで どのくらい 学 んできたか これまでどのような 日 本 語 日 本 文 化 との 接 触 があったか 日 本 語 学 習 の 動 機 は 何 か 学 習 目 標 は 何 か といっ た 内 容 が 学 習 者 の 自 己 管 理 の 下 ポートフォリオに 収 められることになる 学 習 者 が 自 ら 記 録 するポートフォリオを 媒 介 に 学 習 者 と 教 師 が 対 話 することで 学 習 者 のニーズをよ り 的 確 に 把 握 できるのではないだろうか そして 各 教 育 現 場 は ポートフォリオを 媒 介 にして 把 握 できた 学 習 者 のニーズにもとづいてカリキュラムを 改 訂 し 実 践 現 場 の seeplan-do-see のサイクルを 回 すことにもつながるのではないかと 考 える 4.3 事 業 展 開 のための 調 査 の 重 要 性 基 金 として 日 本 語 事 業 を 展 開 する 際 には まず 学 習 者 の 学 習 動 機 や 日 本 語 日 本 文 化 体 験 日 本 語 の 学 習 計 画 といった 情 報 を 把 握 した 上 で それぞれの 受 講 生 のニーズに 即 した 講 座 を 提 供 していくことが 求 められる たとえば テレビゲームやアニメ マンガの 影 響 と 日 本 語 学 習 については 受 講 生 の 世 代 や 社 会 的 歴 史 的 文 脈 によって 傾 向 が 異 なること が 予 想 される 日 本 のポップカルチャーが 海 外 に 広 まることで 日 本 語 が 身 近 なものとな り 日 本 語 学 習 者 が 増 えることは 真 鍋 (2007)の 言 葉 を 借 りると 意 図 せざる 結 果 であ るが このような 意 図 せざる 結 果 ということにまで 射 程 を 広 げ その 実 証 的 研 究 をと おして その 実 像 を 明 らかにすること が 基 金 が 今 後 日 本 語 事 業 を 効 果 的 に 展 開 する ために 重 要 なプロセスの 一 部 となるだろう 一 方 本 報 告 にあるとおり 基 金 が 所 有 する 基 礎 データ 他 部 署 が 行 った 調 査 データを 二 次 分 析 の 対 象 とすることは コストをおさえながら 多 角 的 側 面 からデータを 再 考 察 し 256

VI. 日 本 語 使 用 行 動 および 意 識 調 査 新 たな 視 点 に 導 き 出 すという 点 で 価 値 を 見 出 すことができる これは 嘉 数 (2006: 54) のいう 日 本 語 教 育 事 業 の 取 り 組 みの 研 究 ともいえるだろう 5. まとめ 言 語 学 習 といったときに 学 習 者 のおかれている 社 会 的 文 脈 を 考 慮 せずしてコース 担 当 者 や 教 師 が 学 習 目 標 を 設 定 することは 困 難 である 基 金 が 海 外 で 開 講 する 講 座 についても 学 習 者 のニーズをコースに 反 映 させていくことが 重 要 であるが こうした 学 習 環 境 のデザ インは 日 本 語 教 育 に 限 定 された 枠 内 だけではなく 広 い 意 味 での 日 本 の 文 化 や 芸 術 への 学 習 者 の 関 心 や 知 識 学 習 者 の 体 験 なども 考 慮 して 総 括 的 にみていく 必 要 があると 考 え る 日 本 語 学 習 の 継 続 動 機 を 高 め 生 涯 学 習 を 支 援 するという 意 味 でも また 日 本 語 学 習 や 日 本 日 本 語 体 験 を 通 じて 人 間 的 な 豊 かさを 獲 得 するという 意 味 でも 日 本 語 教 育 学 習 を 多 角 的 な 視 点 で 捉 えることが 重 要 になるだろう このような 学 習 環 境 デザインのあ り 方 は 基 金 の 日 本 語 事 業 を 推 進 していく 上 でも 必 要 だと 考 える その 際 調 査 デザイン のノウハウを 構 築 すること 既 存 データを 有 効 的 に 活 用 し 自 らの 実 践 や 経 験 を 整 理 するこ と などが 今 後 欠 かせない 取 り 組 みと 考 える 注 : 1 Stufe は 級 の 意 2 ケルン 受 講 生 は Stufe 1 ~ 5 が 初 級 レベル( みんなの 日 本 語 1~ 50 課 に 相 当 ) Stufe 6 ~ 9 が 中 上 級 レベル(Stufe 8 が 日 本 語 能 力 試 験 2 級 程 度 )に 相 当 するため 前 者 を 初 級 後 者 を 中 上 級 とした 3 ELP は 複 言 語 主 義 にもとづき これまで 自 分 が 関 わりを 持 った 言 語 すべてについて 記 録 することが 求 められている 参 考 文 献 : 2006 CEF 11 25 13 46-58 2007 2005 Germany Common European Framework of Reference for Languages 107-130 AJE 2007 132 68-78 2008 Japan Foundation 257

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