企 業 会 計 基 準 委 員 会 御 中 社 団 法 人 日 本 証 券 アナリスト 協 会 顧 客 との 契 約 から 生 じる 収 益 に 関 する 論 点 の 整 理 について 2011 年 1 月 20 日 に 公 表 された 標 記 の 論 点 整 理 ( 以 下 論 点 整 理 )について 当 協 会 の 企 業 会 計 研 究 会 で 検 討 した 結 果 下 記 のとおり 意 見 を 申 し 上 げます なお 国 際 会 計 基 準 審 議 会 ( 以 下 IASB) 及 び 米 国 財 務 会 計 基 準 審 議 会 ( 以 下 FASB)の 公 開 草 案 ( 以 下 ED) 顧 客 との 契 約 から 生 じる 収 益 について 2010 年 10 月 1 日 に 企 業 会 計 基 準 委 員 会 ( 以 下 ASBJ)の 専 門 研 究 員 を 講 師 に 招 き 勉 強 会 を 開 催 した 勉 強 会 には 98 名 の 検 定 会 員 が 参 加 し うち 45 名 (46%)は 勉 強 会 後 のアンケートに 回 答 した この アンケート 調 査 と 企 業 会 計 研 究 会 の 委 員 による 議 論 を 踏 まえて 10 月 22 日 に IASB へ 意 見 書 を 提 出 した アンケート 結 果 は 当 意 見 書 に 添 付 した 記 ( 質 問 3)[ 論 点 2-1] 履 行 義 務 の 識 別 履 行 義 務 を 収 益 認 識 の 単 位 とすることに 同 意 しますか 同 意 する 場 合 財 又 はサービス が 区 別 できる 場 合 の 基 準 は 十 分 であると 考 えますか また 同 意 しない 場 合 どのよう な 収 益 認 識 の 単 位 が 適 当 と 考 えますか 同 意 する 上 記 アンケートの Q2 企 業 分 析 において 契 約 や 履 行 義 務 という 概 念 を 使 うことは 実 際 の 企 業 行 動 を 理 解 するのに 有 効 だと 思 いますか という 質 問 に 対 し て 企 業 行 動 の 理 解 に 従 来 よりも 有 効 な 優 れた 概 念 だと 思 う 回 答 者 が 18% 慣 れてし まえば 企 業 行 動 の 理 解 に 有 効 な 概 念 だと 思 う 回 答 者 が 76%を 占 めた 例 えば 携 帯 電 話 端 末 を 通 信 料 と 一 体 で 提 供 する 契 約 のように 複 数 の 要 素 からなる 契 約 が 重 要 性 を 増 している 論 点 整 理 の 第 62 項 (ED の 第 23 項 )は 財 サービスの 識 別 や 履 行 義 務 の 区 別 について 全 体 として 合 理 的 な 基 準 を 提 供 していると 考 えられる ( 質 問 4)[ 論 点 2-2] 履 行 義 務 の 充 足 財 又 はサービスの 支 配 の 移 転 に 着 目 して 収 益 認 識 を 行 うことに 同 意 しますか 支 配 の 移 転 という 考 え 方 の 導 入 により 工 事 進 行 基 準 の 適 用 が 可 能 になったと 考 えられ るため 支 配 アプローチによる 収 益 認 識 に 同 意 する 1
( 質 問 5)[ 論 点 2-2] 履 行 義 務 の 充 足 支 配 の 考 え 方 及 び 顧 客 が 財 又 はサービスの 支 配 を 獲 得 している 指 標 は 実 態 に 応 じた 判 断 を 行 うために 十 分 であると 考 えますか 不 十 分 であるとすれば どのような 考 え 方 又 は 指 標 があれば 適 当 と 考 えますか 不 十 分 と 考 える アンケートの Q4 財 やサービスが 顧 客 へ 移 転 したかを 判 断 する 基 準 と して 提 案 されている 4 つの 指 標 は 有 効 だと 思 いますか という 質 問 に 対 して 思 う 回 答 者 は 半 数 以 下 の 43%に 留 まった 我 々は 工 事 進 行 基 準 を 幅 広 く 適 用 可 能 にすべきと 考 えており 論 点 整 理 が 支 配 獲 得 の 指 標 としている 第 85 項 (1)~(4)(ED の 第 30 項 (a)~(d))には この 観 点 から 追 加 の 指 標 が 必 要 である 具 体 的 には 第 85 項 (1)~(3)は 支 配 の 移 転 の 実 現 指 標 であり 第 85 項 (4) は 支 配 の 継 続 的 移 転 の 判 断 基 準 であるが この 両 者 のギャップが 大 きく これを 補 完 する 指 標 が 必 要 であろう ( 質 問 6)[ 論 点 2-3] 財 又 はサービスの 連 続 的 な 移 転 連 続 的 な 移 転 と 判 断 される 場 合 の 考 え 方 及 び 指 標 は 実 態 に 応 じた 判 断 を 行 うために 十 分 であると 考 えますか 不 十 分 であるとすれば どのような 考 え 方 又 は 指 標 であれば 適 当 と 考 えますか ED の 第 30 項 (d)( 論 点 整 理 の 第 85 項 (4))によって ほとんどの 長 期 サービス 契 約 はカバーされると IASB は 考 えているのかもしれない しかし 実 際 には 標 準 的 なデザイ ン 機 能 を 用 いながらオーダーメードの 長 期 契 約 が 多 数 存 在 する 我 々はこうした 契 約 が 顧 客 の 都 合 で 解 約 した 時 には 没 収 される 相 当 額 の 預 託 金 やキャンセル 料 を 含 む 場 合 ある いは 代 金 の 分 割 支 払 を 含 む 場 合 には これらを 支 配 の 移 転 の 重 要 な 根 拠 として 財 または サービスが 継 続 的 に 移 転 しているとみなすべきと 考 えている 我 々は IASB に 対 し 時 間 ( 長 期 契 約 であること) 及 び 支 払 ( 預 託 金 または 分 割 支 払 )の 要 件 を 共 に 満 たす 契 約 は 第 30 項 (d)の 指 標 を 十 分 に 満 たさなくても 支 配 が 継 続 的 に 移 転 する 契 約 とみなせる 指 標 の 追 加 を 提 案 しており ASBJ からも 働 きかけていただきたい ( 質 問 8)[ 論 点 3-1] 取 引 価 格 の 算 定 取 引 の 対 価 の 回 収 可 能 性 について 次 のいずれが 適 当 と 考 えますか 取 引 の 価 格 に 反 映 する( 収 益 の 減 額 ) 収 益 は 約 束 した 対 価 で 認 識 し 信 用 リスクの 影 響 は 収 益 とは 別 の 損 益 として 認 識 する ( 受 取 債 権 の 減 損 等 ) また 上 記 以 外 に 適 当 な 会 計 処 理 がありますか 2
論 点 整 理 の 第 129 項 と 同 様 に 収 益 は 約 束 した 対 価 で 認 識 し 信 用 リスクの 影 響 は 収 益 とは 別 の 損 益 として 認 識 する 方 が 適 当 であろう 財 またはサービスの 販 売 と それに 伴 う 顧 客 の 信 用 リスクは 一 体 ではなく 販 売 時 にどれだけ 信 用 リスクを 取 るかは 販 売 と は 別 個 の 企 業 判 断 である 従 って 販 売 はグロスで 計 上 し 信 用 リスクは 別 途 費 用 として 認 識 するという 現 行 処 理 の 方 が 企 業 の 意 思 決 定 過 程 をより 忠 実 に 描 写 している また アナリストの 企 業 分 析 や 企 業 間 比 較 においても 信 用 リスク 控 除 後 のネット 販 売 高 しか 示 されないよりも グロ ス 販 売 高 と 貸 倒 費 用 という 2 つの 情 報 がある 方 が 利 便 性 は 高 いであろう 具 体 例 で 考 えてみよう 同 業 の A 社 と B 社 は 共 に CU100 を 売 り 上 げた 顧 客 の 信 用 リ スクをアグレッシブに 取 る A 社 は CU15 の 貸 倒 を 予 測 し 保 守 的 な B 社 は CU2 の 貸 倒 を 見 込 んでいる ED の 提 案 では A 社 の 売 上 は CU85 B 社 の 売 上 は CU98 と 表 示 される 我 々はこうした 表 示 よりも 売 上 は 共 に CU 100 で 貸 倒 費 用 が A 社 CU15 B 社 CU2 と 表 示 するほうが 投 資 の 意 思 決 定 における 有 用 性 が 高 いと 考 えている こうした 実 務 的 な 点 に 加 えて ED の 提 案 は 理 論 的 にも 問 題 がある ED によれば 長 期 契 約 の 信 用 リスクは 契 約 時 に 認 識 されるが これは 金 融 商 品 に 適 用 される 期 待 損 失 モデル との 整 合 性 に 欠 けている また 実 現 した 信 用 リスクが 当 初 の 見 通 しを 下 回 った 部 分 を 売 上 に 戻 入 れずにそれ 以 外 の 損 益 へ 計 上 する 点 は 提 案 モデルの 脆 弱 性 を 示 すと 考 えられる ( 質 問 9)[ 論 点 3-1] 取 引 価 格 の 算 定 取 引 価 格 の 算 定 に 際 して 上 記 の 他 貨 幣 の 時 間 価 値 現 金 以 外 の 対 価 及 び 顧 客 に 支 払 われる 対 価 の 影 響 を 考 慮 することについて 同 意 しますか 同 意 しない 場 合 どのような 会 計 処 理 が 適 当 と 考 えますか 取 引 価 格 の 算 定 に 際 して 貨 幣 の 時 間 価 値 を 考 慮 する IASB の 提 案 は 合 理 的 であり 我 々 も 同 意 する ( 質 問 14)[ 論 点 6-2] 注 記 第 197 項 から 第 204 項 に 示 されている 開 示 内 容 に 同 意 しますか 同 意 しない 場 合 は どの ような 開 示 内 容 が 適 当 と 考 えますか アンケートの Q7 ED で 提 案 されている 開 示 (ED の 第 69 項 ~ 第 83 項 ( 論 点 整 理 の 第 197 項 ~ 第 204 項 ) ED の B92~B96 参 照 )によって 顧 客 との 契 約 から 生 じる 収 益 及 びキャッシュ フローの 金 額 時 期 不 確 実 性 などを 理 解 し 企 業 を 分 析 するのに 有 用 な 情 報 が 得 られると 思 いますか という 質 問 に 対 して 回 答 者 の 77%は 提 案 されている 開 示 で 十 分 である と 回 答 した しかし 当 研 究 会 における 議 論 では 一 部 の 委 員 から 3
ED の 開 示 要 求 には 必 ずしも 企 業 分 析 に 役 立 たない 項 目 も 含 まれ 開 示 要 求 過 多 になってい るという 意 見 や 実 務 的 に 監 査 の 難 しい 内 容 が 含 まれているという 懸 念 が 表 明 された 以 上 4
IASB/FASB 収 益 認 識 公 開 草 案 に 関 するアンケート 10 月 1 日 ( 金 )に 開 催 した 勉 強 会 IASB/FASB 収 益 認 識 公 開 草 案 の 概 要 について の 参 加 者 98 人 に 対 して 10 月 4 日 ( 月 )にアンケートを 発 送 した 10 月 8 日 ( 金 )の 締 切 りまで に 45 人 から 回 答 があり 回 収 率 は 46%であった Q1:IASB は 公 開 草 案 顧 客 との 契 約 から 生 じる 収 益 の 中 で 顧 客 との 契 約 に 基 づく 単 一 の 収 益 認 識 原 則 として 支 配 アプローチ を 提 案 しています この 支 配 アプロー チ によって 現 行 の 実 現 稼 得 モデルによる 収 益 認 識 と 比 べて 企 業 分 析 に 有 用 な 情 報 が 得 られると 思 いますか (a) 思 う 8 人 17.8% (b) 思 わない 8 人 17.8% (c) どちらともいえない 29 人 64.4% 合 計 45 人 100% Q2: 支 配 アプローチは 企 業 の 顧 客 からの 対 価 に 対 する 権 利 と 顧 客 に 財 やサービスを 提 供 する 義 務 ( 履 行 義 務 )で 構 成 される 契 約 を 出 発 点 としています 企 業 分 析 に おいて 契 約 や 履 行 義 務 という 概 念 を 使 うことは 実 際 の 企 業 行 動 を 理 解 する のに 有 効 だと 思 いますか (a) 企 業 行 動 の 理 解 に 従 来 よりも 有 効 な 優 れた 概 念 だと 思 う 8 人 17.8% (b) 慣 れてしまえば 企 業 行 動 の 理 解 に 有 効 な 概 念 だと 思 う 34 人 75.5% (c) 企 業 行 動 の 理 解 には 適 さない 概 念 だと 思 う 3 人 6.7% 合 計 45 人 100% Q3: 支 配 アプローチでは 識 別 要 件 に 従 って 一 つの 商 取 引 が 単 一 の 契 約 履 行 義 務 として 処 理 される 場 合 と 複 数 の 契 約 履 行 義 務 に 分 割 されて 個 々に 処 理 され る 場 合 があります この 様 な 会 計 処 理 によって 企 業 分 析 にとって 有 用 な 情 報 が 得 ら れると 思 いますか (a) 思 う 16 人 35.5% (b) 思 わない 8 人 17.8% (c) どちらともいえない 21 人 46.7% 合 計 45 人 100% 5
Q4: 支 配 アプローチでは 財 やサービスの 支 配 を 顧 客 が 獲 得 した 時 点 で 履 行 義 務 は 充 足 され( 消 滅 し) 収 益 が 認 識 されます 支 配 の 移 転 という 考 え 方 を 導 入 する ことで 工 事 進 行 基 準 の 適 用 が 可 能 になりました 財 やサービスが 顧 客 へ 移 転 したか を 判 断 する 基 準 として 提 案 されている 4 つの 指 標 は 有 効 だと 思 いますか (a) 思 う 19 人 43.2% (b) 思 わない 8 人 18.2% (c) どちらともいえない 17 人 38.6% Q5:IASB は 取 引 価 格 の 決 定 に 際 して 現 行 の 我 が 国 の 実 務 とは 異 なり 1 回 収 可 能 性 貨 幣 の 時 間 価 値 現 金 以 外 の 対 価 顧 客 に 支 払 われる 対 価 などを 収 益 金 額 に 反 映 し 2 変 動 性 のある 対 価 については 確 率 加 重 による 見 積 りをする 様 に 提 案 しています この 提 案 は 企 業 分 析 にとって 有 用 な 情 報 の 提 供 につながると 思 いますか (a) 思 う 13 人 29.6% (b) 思 わない 17 人 38.6% (c) どちらともいえない 14 人 31.8% Q6: 上 記 Q5 の 具 体 例 として 現 行 の 我 が 国 の 実 務 では 信 用 リスク 相 当 額 が 引 当 金 として 両 建 てでグロス 表 示 されていますが IASB の 提 案 によると 売 上 高 から 差 し 引 いて 表 示 されることになります この 様 な 会 計 処 理 によって 企 業 分 析 にとって 有 用 な 情 報 が 得 られると 思 いますか (a) 思 う 11 人 25.0% (b) 思 わない 23 人 52.3% (c) どちらともいえない 10 人 22.7% Q7: 公 開 草 案 で 提 案 されている 開 示 ( 公 開 草 案 30 頁 の 69~83 75 頁 の B92~B96 参 照 )によって 顧 客 との 契 約 から 生 じる 収 益 及 びキャッシュ フローの 金 額 時 期 不 確 実 性 などを 理 解 し 企 業 を 分 析 するのに 有 用 な 情 報 が 得 られると 思 いますか (a) 提 案 されている 開 示 で 十 分 である 34 人 77.3% (b) 提 案 されている 開 示 だけでは 重 要 な 情 報 が 不 足 している 6 人 13.6% (c) 提 案 されている 開 示 の 中 に 不 要 なものがある 4 人 9.1% 6
Q8: 上 の Q6 で(b)または(c)と 回 答 した 方 は 以 下 に 具 体 的 に 書 いてください コメント 欄 省 略 Q9:この 件 に 関 する 全 般 的 なご 意 見 や 上 記 Q1~Q7 には 含 まれない 追 加 的 な 意 見 のある 方 は 以 下 に 自 由 に 書 いてください コメント 欄 省 略 7