33. 横 須 賀 呉 佐 世 保 舞 鶴 における 旧 軍 用 地 の 転 用 について - 195~1976 年 度 の 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 における 決 定 事 項 の 考 察 を 通 して - The Conversion of the Military Grounds in Yokosuka, Kure, Sasebo and Maizuru - Based on the Analysis of the Documents of the Council of National Properties in the Former Naval Port Cities from 195 to 1976 - 今 村 洋 一 Yoichi Imamura The purpose of this paper is to clarify the characteristics of the conversion of the military grounds in Yokosuka, Kure, Sasebo, and Maizuru. I analyze the documents of the council of national properties in the former naval port cities from 195 to 1976. It was the one of most important theme for the former naval port cities that how to use former military grounds. So, a large amount of former military grounds of total 1,784ha were converted to factories, parks, schools, water supplies, and the public housings, etc. And I can point out the following points. The conversion of former military grounds was continuously executed until 1976. The military grounds were mainly converted by private sector. Selling off was done for the private sector, and free distribution was done to the public sector. The land use after conversion often depended on the kind of military grounds. Keywords: military ground, conversion, national property, naval port 軍 用 地, 転 用, 国 有 財 産, 軍 港 1.はじめに 処 理 審 議 会 決 定 事 項 総 覧 を 基 礎 資 料 として 用 い 旧 軍 港 (1) 背 景 と 目 的 市 4 都 市 における 旧 軍 用 地 の 転 用 実 態 を 明 らかにする 終 戦 に 伴 って 全 国 に 出 現 した 大 量 の 旧 軍 用 地 は 戦 災 復 (2) 既 往 研 究 と 本 研 究 の 特 徴 興 や 都 市 化 への 対 応 のために 様 々な 都 市 施 設 へと 転 用 さ 研 究 の 目 的 や 方 法 において 本 研 究 に 最 も 近 いのは 既 述 れた この 旧 軍 用 地 の 転 用 は 全 国 各 地 で 一 斉 に 遊 休 国 有 の 今 村 ら(27a)である 高 度 経 済 成 長 期 前 半 における 旧 地 が 活 用 されたという 点 で 我 が 国 の 土 地 利 用 史 上 重 大 軍 用 地 の 転 用 と 都 市 施 設 整 備 との 関 係 を 全 国 レベルで 明 ら な 出 来 事 と 言 えるが その 実 態 は 十 分 に 明 らかにされてい かにしているこの 研 究 に 対 し 本 研 究 は 旧 軍 港 市 という 特 ない というのも 今 村 ら(27a) 1) が 指 摘 するように 殊 性 を 有 する 都 市 を 対 象 として 197 年 代 前 半 までの 旧 軍 全 国 のどこに どういった 旧 軍 用 地 が 存 在 し どういった 用 地 の 転 用 状 況 を 考 察 している 点 が 特 徴 である 処 分 がなされたのかを 知 り 得 る 史 料 が 殆 ど 見 当 たらないた この 他 旧 軍 用 地 の 転 用 に 関 する 研 究 として 都 市 計 画 めである (1) こういった 状 況 の 中 で 今 村 ら(27a)は 分 野 では 東 海 地 方 の 軍 事 都 市 における 旧 軍 用 地 転 用 を 扱 国 有 財 産 地 方 審 議 会 の 審 議 経 過 ( 第 1 集 ~ 第 集 )を った 三 宅 ら(1997) 2) 名 古 屋 における 旧 軍 用 地 転 用 を 扱 っ 基 礎 資 料 として 用 い 1956~1965 年 度 の 審 議 結 果 を 考 察 す た 今 村 ら(27b) 3) がある また 地 理 学 分 野 では 関 東 ることで 高 度 経 済 成 長 期 前 半 における 旧 軍 用 地 の 転 用 と 地 方 における 旧 軍 飛 行 場 跡 地 などの 転 用 を 扱 った 宮 木 都 市 施 設 整 備 との 関 係 について 全 国 レベルで 定 量 的 に 明 (1964) 4) 舞 鶴 の 旧 軍 用 地 における 工 業 立 地 を 扱 った 杉 野 らかにすることを 試 みている (1981) 5) 全 国 の 軍 事 都 市 26 都 市 における 旧 軍 用 地 転 用 旧 軍 用 地 などの 国 有 財 産 の 処 分 に 係 る 審 議 の 場 は 今 村 を 扱 った 松 山 (21) 6) がある これら 既 往 研 究 は 主 に 地 ら(27a)が 着 目 した 国 有 財 産 地 方 審 議 会 の 他 に 旧 軍 港 図 を 用 いて 転 用 用 途 を 判 定 し 市 史 等 で 転 用 過 程 を 補 足 す 市 4 都 市 ( 横 須 賀 呉 佐 世 保 舞 鶴 )を 対 象 として 旧 軍 る 方 法 をとっている これに 対 し 本 研 究 は 旧 軍 港 市 国 有 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 が 設 けられている 尚 この 審 議 財 産 処 理 審 議 会 の 案 件 を 網 羅 的 に 把 握 し 旧 軍 用 地 の 転 用 会 での 決 定 事 項 は 旧 軍 用 地 の 転 用 がほぼ 収 束 したと 言 わ 状 況 を 定 量 化 して 分 析 している 点 に 方 法 上 の 特 徴 がある れる 197 年 代 前 半 までは 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 決 (3) 方 法 定 事 項 総 覧 に 整 理 されており この 中 から 旧 軍 用 地 の 処 1977 年 発 行 の 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 決 定 事 項 総 分 に 係 る 案 件 を 抽 出 することが 可 能 である (2) また 後 述 覧 には 195~1976 年 度 ( 第 1 回 ~ 第 66 回 )の 審 議 会 するように 軍 港 として 発 展 してきた 旧 軍 港 市 4 都 市 は そ における 旧 軍 用 地 を 中 心 とした 国 有 財 産 の 処 分 決 定 内 容 が れ 以 外 の 都 市 と 異 なる 特 殊 性 を 有 する (3) そのため 旧 軍 案 件 ごとに 記 載 されている この 中 から 陸 軍 省 海 軍 省 港 市 4 都 市 における 旧 軍 用 地 の 転 用 は 今 村 ら(27a)が から 引 き 継 いだと 思 われる 財 産 他 省 庁 から 引 き 継 いだと 明 らかにした 全 国 的 な 傾 向 とは 異 なるのではないだろうか 思 われる 軍 事 関 係 の 財 産 を 口 座 名 から 判 断 し さらに 土 地 以 上 を 踏 まえ 本 研 究 では 二 次 史 料 ながら 旧 軍 港 市 の 旧 が 処 分 対 象 となっている 案 件 を 旧 軍 用 地 の 処 分 案 件 として 軍 用 地 の 転 用 状 況 を 網 羅 的 に 知 り 得 る 旧 軍 港 市 国 有 財 産 考 察 対 象 とした 以 上 の 条 件 で 対 象 案 件 (622 件 )を 抽 出 正 会 員 三 菱 UFJ リサーチ&コンサルティング 株 式 会 社 (Mitsubishi UFJ Research and Consulting Co., Ltd.) - 193 -
し 口 座 名 処 分 決 定 年 度 所 在 都 市 転 用 用 途 処 分 面 積 処 分 先 処 分 方 法 に 関 するデータベースを 作 成 した 上 で 旧 軍 用 地 の 転 用 用 途 と 処 分 上 の 特 徴 について 考 察 した (4) 旧 軍 港 市 及 び 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 まず 始 めに 旧 軍 港 市 の 特 性 を 整 理 するとともに 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 が 設 けられた 背 景 を 確 認 しておく 旧 軍 港 市 4 都 市 は いずれも 明 治 期 に 鎮 守 府 が 置 かれて 軍 港 が 成 立 し 軍 港 の 拡 充 に 伴 って 発 展 した 都 市 である( 表 -1) 各 都 市 には 艦 船 の 建 造 修 理 を 行 う 海 軍 工 廠 などが 置 かれ 戦 時 中 は 多 くの 工 員 が 従 事 し ピーク 人 口 は 膨 れ 上 がった( 呉 44 千 人 横 須 賀 359 千 人 ) 終 戦 によって 海 軍 工 廠 などが 接 収 されると 多 くの 失 業 工 員 は 故 郷 へ 戻 っ ていった また 呉 と 佐 世 保 は 空 襲 による 被 害 も 大 きく 罹 災 面 積 はそれぞれ 59ha 178ha にも 上 った そして 働 く 場 と 住 む 場 の 両 方 を 失 ったことで より 多 くの 住 民 が 流 出 した これを 裏 付 けるように 終 戦 年 の 11 月 の 調 査 によ れば 横 須 賀 呉 佐 世 保 の 人 口 は 激 減 している (4) その 後 高 度 経 済 成 長 期 に 産 業 振 興 が 進 むと 人 口 は 回 復 してい ったが 196~1975 年 の 人 口 動 向 をみると 横 須 賀 を 除 い て 増 加 傾 向 が 鈍 化 するか 減 少 傾 向 となっている 海 軍 工 廠 を 中 心 とした 企 業 城 下 町 と 言 える 旧 軍 港 市 では 終 戦 に 伴 って 都 市 存 立 に 関 わる 産 業 基 盤 を 失 ったため 産 業 振 興 が 必 要 とされた また 軍 施 設 拡 充 に 伴 う 人 口 増 に 対 し 生 活 基 盤 整 備 が 追 いついていなかった (5) 旧 軍 港 市 4 都 市 に 共 通 するこうした 特 殊 事 情 を 踏 まえ 旧 軍 用 地 を 有 効 活 用 するために 地 元 議 員 らの 運 動 の 成 果 として 195 年 に 旧 軍 港 市 転 換 法 が 制 定 された そして 旧 軍 用 地 の 転 用 については 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 にて 審 議 する こととなったのである (6) 2. 旧 軍 用 地 の 立 地 と196 年 度 までの 転 用 概 況 史 料 の 分 析 に 入 る 前 に 大 蔵 省 の 既 往 調 査 結 果 7) から 旧 軍 港 市 4 都 市 に 旧 軍 用 地 がどれだけあったかという 立 地 状 況 と 196 年 度 までの 旧 軍 用 地 の 転 用 状 況 を 確 認 しておく (1) 旧 軍 用 地 の 立 地 状 況 旧 軍 港 市 4 都 市 は 海 軍 運 輸 部 や 海 軍 軍 需 部 の 倉 庫 海 軍 工 廠 や 航 空 廠 などの 工 場 海 軍 砲 術 学 校 や 海 軍 工 作 学 校 などの 学 校 施 設 海 軍 飛 行 場 海 兵 団 の 兵 営 のほか 砲 台 の 置 かれた 要 塞 地 帯 も 含 め 広 大 な 旧 軍 用 地 を 抱 えていた そして 戦 後 4 都 市 合 計 で 652 口 座 (7),227ha もの 旧 軍 用 地 が 大 蔵 省 へ 引 き 継 がれた( 図 -1) これは 全 国 の 旧 軍 用 地 327,64ha の 3.1%に 相 当 する (8) また 都 市 別 にみると 面 積 は 佐 世 保 が 3,569ha で 最 大 であり 最 も 少 ない 横 須 賀 であっても 1,884ha という 莫 大 な 量 であった 第 3 師 団 司 令 部 が 置 かれていた 名 古 屋 の 旧 軍 用 地 が 約 256ha とされることからも 旧 軍 港 市 4 都 市 に 残 された 旧 軍 用 地 が 如 何 に 大 きかったかが 分 かる (9) (2)196 年 度 までの 旧 軍 用 地 の 転 用 概 況 旧 軍 港 市 4 都 市 に 存 在 した 旧 軍 用 地 のうち196 年 度 まで に 処 分 されたのは 4,5ha(39.2%)に 留 まっており 196 表 -1 旧 軍 港 市 4 都 市 の 概 要 横 須 賀 呉 佐 世 保 舞 鶴 ( 注 1) 軍 港 設 置 年 1884 年 1889 年 1889 年 191 年 ( 注 2) 罹 災 面 積 - 59 ha 178 ha - ( 注 3) 人 口 推 移 194 年 193 千 人 238 千 人 212 千 人 86 千 人 1943 年 359 千 人 44 千 人 288 千 人 86 千 人 1945 年 22 千 人 152 千 人 148 千 人 8 千 人 196 年 287 千 人 2 千 人 262 千 人 千 人 1975 年 39 千 人 243 千 人 251 千 人 98 千 人 ( 注 1) 鎮 守 府 が 開 庁 した 年 とした ( 注 2) 建 設 省 編 戦 災 復 興 誌 第 1 巻 (pp.16-22 ( 財 ) 都 市 計 画 協 会 1959 年 )の 坪 表 記 を1 坪 =3.3m 2 として 換 算 ( 注 3) 各 市 の 統 計 書 より 横 須 賀 では 195 年 に 逗 子 が 分 離 している 佐 世 保 では1954~58 年 に6 村 が 合 併 している 舞 鶴 では1957 年 に1 町 が 編 入 されている 横 須 賀 呉 佐 世 保 舞 鶴 5 15 2 3 19.9% 58 32.2% 95 43 32.3% 5.5% 133 151 18 188 1, 2, 3, 4, (ha) 83 1,884 44.1% 49 2,73 17.9% 1,417 3,569 39.7% 1,268 62.% 2,45 口 座 数 面 積 652 口 座 引 受 総 量,277ha 226 口 座 処 分 量 4,5ha 34.7% 処 分 割 合 39.2% 処 分 済 未 処 分 図 -1 各 都 市 の 旧 軍 用 地 と 196 年 度 までの 処 分 量 ( 資 料 ) 大 蔵 省 財 政 史 室 編 昭 和 財 政 史 - 終 戦 から 講 和 まで- 第 19 巻 ( 統 計 ) (p.338 東 洋 経 済 新 報 社 1978 年 )より 作 成 年 度 時 点 において 多 くの 旧 軍 用 地 が 処 分 されずに 残 されて いたことが 窺 える () ( 図 -1) その 理 由 の 一 つとして 考 え られるのが 旧 軍 用 地 の 米 軍 基 地 利 用 であり 基 地 問 題 や 返 還 跡 地 の 活 用 問 題 として 今 日 的 課 題 となっている( 横 須 賀 呉 佐 世 保 ) 次 に 転 用 用 途 をみると 旧 軍 港 市 4 都 市 では それ 以 外 の 場 合 に 8.4%を 占 めた 自 作 農 創 設 分 は 37.3%に 過 ぎず 公 用 (11) (17.6%) その 他 公 共 用 (11.8%) 産 業 用 (.6%) 学 校 施 設 用 (3.%)など 都 市 施 設 の 整 備 のために 転 用 さ れた 旧 軍 用 地 の 割 合 が 大 きくなっていることが 分 かる( 図 -2) 尚 自 作 農 創 設 のための 農 地 として 処 分 された 旧 軍 用 地 が 少 ない 理 由 として 考 えられるのは 旧 軍 港 市 4 都 市 において 開 拓 用 地 の 中 心 的 存 在 となった 演 習 場 や 牧 場 ( 軍 馬 育 成 用 )がなかったことである 以 上 大 蔵 省 調 査 のレビューから 旧 軍 港 市 4 都 市 では 1 都 市 あたりの 旧 軍 用 地 の 量 が 非 常 に 多 かった 点 196 年 度 時 点 で 多 くの 旧 軍 用 地 が 未 処 分 であった 点 転 用 用 途 と して 都 市 施 設 の 割 合 が 大 きかった 点 などが 指 摘 できる 3. 旧 軍 用 地 の 転 用 用 途 (1) 転 用 用 途 別 の 処 分 決 定 件 数 及 び 面 積 195~76 年 度 の 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 ( 以 下 審 議 会 )において 処 分 決 定 された 旧 軍 用 地 の 転 用 用 途 を 都 市 的 用 途 9 分 類 非 都 市 的 用 途 3 分 類 で 集 計 した( 表 -2) - 194 -
旧 軍 用 地 の 処 分 案 件 は 総 計 622 件 処 分 面 積 総 計 1,784ha が 確 認 された 都 市 的 用 途 が 件 数 で 65 件 (96.6%) 面 積 で 1,654ha(92.8%)と 9 割 以 上 を 占 めた つまり 審 議 会 で 処 分 決 定 された 案 件 の 殆 どが 都 市 的 用 途 への 転 用 であ り 旧 軍 港 市 4 都 市 の 都 市 施 設 整 備 のために 非 常 に 多 くの 旧 軍 用 地 が 活 用 されたことが 分 かる 特 に への 転 用 が 非 常 に 多 く 292 件 824.1ha で 件 数 面 積 ともに 約 46%を 占 めた 軍 需 産 業 という 産 業 基 盤 を 失 った 旧 軍 港 市 では 旧 軍 用 地 を 用 途 として 活 用 し 産 業 振 興 を 図 る 必 要 があったと 言 える (12) この 他 に 件 数 が 多 く 面 積 も 大 きな 用 途 としては 文 教 系 (89 件 163.1ha) (53 件 167.8ha) インフラ 系 (49 件 393.ha) 住 居 系 (34 件 58.5ha)などであっ た (13) 尚 今 村 ら(27a)も ほぼ 同 様 の 用 途 が 多 いこと を 指 摘 しているが 旧 軍 港 市 4 都 市 では 官 公 庁 系 が 27 件 4.5ha と 少 ない 点 が 異 なっていた 中 小 都 市 である 旧 軍 港 市 では 官 公 庁 施 設 の 需 要 が 多 くなかったためであろう 文 教 系 では 特 に 学 校 への 転 用 が 72 件 152.2ha と 多 か った 今 村 ら(27a)は 大 学 高 専 への 転 用 が 多 い 点 を 指 摘 しているが 中 小 都 市 である 旧 軍 港 市 4 都 市 では 大 学 の 用 地 需 要 は 少 なく 大 学 への 転 用 は 2 件 ( 私 大 )のみで あった 一 方 小 中 高 校 への 転 用 は 68 件 にも 及 んだ 尚 では 特 に 上 下 水 道 が 多 く しかも こ のうち 2 件 378.ha は 上 水 道 やその 水 源 地 であった 旧 軍 港 市 4 都 市 の 上 水 道 は 旧 軍 用 地 の 転 用 によるところが 大 きかったのだが この 理 由 については 後 述 したい このように 旧 軍 港 市 4 都 市 では 産 業 振 興 のために 多 く の 旧 軍 用 地 を 工 場 倉 庫 へと 転 用 し 人 口 回 復 とともに 必 要 となった 学 校 ( 小 中 高 校 )や 公 園 などの 生 活 基 盤 の ために 旧 軍 用 地 を 活 用 していったと 言 える (2) 都 市 別 の 処 分 決 定 件 数 及 び 面 積 都 市 別 にみると 横 須 賀 が 199 件 623ha で 件 数 最 多 面 積 最 大 であったが 面 積 の 最 も 少 ない 佐 世 保 であっても 317ha という 大 量 の 旧 軍 用 地 が 転 用 されており いずれの 都 市 においても 旧 軍 用 地 の 転 用 が 都 市 施 設 の 整 備 に 大 き な 役 割 を 果 たしていたと 言 える( 図 -3) ここからは 転 用 用 途 について 面 積 割 合 から 都 市 別 に 検 討 していきたい まず 横 須 賀 では (46%)の 割 合 が 最 も 高 かったものの 文 教 系 (18%)や (16%) も 比 較 的 見 られた 大 都 市 に 近 く 高 度 経 済 成 長 期 の 人 口 急 増 に 対 応 する 必 要 があったため 多 くの 旧 軍 用 地 が 学 校 や 公 園 などの 生 活 基 盤 の 整 備 に 活 用 されることになった 呉 と 佐 世 保 は 人 口 規 模 戦 後 の 人 口 推 移 罹 災 などのバ ックグラウンドは 近 いが 呉 では が 61%を 占 めたの に 対 し 佐 世 保 では は 比 較 的 高 かったものの 23%に 表 -2 転 用 用 途 別 の 旧 軍 用 地 の 処 分 決 定 件 数 及 び 面 積 (195~1976 年 度 ) 用 途 分 類 件 数 (%) 面 積 (ha) (%) 用 途 の 内 訳 都 市 的 用 途 官 公 庁 系 27 4.3% 4.5.3% 庁 舎 (21) 国 特 殊 法 人 府 県 市 庁 舎 (6), 消 防 署 (12), 警 察 署 (3) 65 件 (96.6%) 庁 舎 以 外 (6) 研 究 所 試 験 場 (2), 保 安 施 設 (2), 研 修 所 (1), 通 信 所 (1) 1,654ha(92.8%) 商 業 系 6 1.% 3.7.2% 商 業 業 務 施 設 (6) 宿 泊 施 設 (2), 商 店 (2), 結 婚 式 場 (1), 事 務 所 (1) 53 8.5% 167.8 9.4% 公 園 (53) 公 園 (5), 墓 地 (3) 文 教 系 89 14.2% 163.1 9.2% 学 校 (72) 大 学 (2), 高 校 (15), 中 学 校 (31), 小 学 校 (22),その 他 (4), 不 明 (2) 文 化 施 設 (14) 文 化 会 館 等 (7), 博 物 館 (3), 図 書 館 (2), 公 民 館 (2) 運 動 施 設 (3) 運 動 場 (2), 体 育 館 (1) 医 療 福 祉 3 4.8% 14.3.8% 医 療 施 設 (8) 市 立 病 院 (5), 保 健 所 (2), 療 養 所 (1) 系 福 祉 職 業 訓 練 施 設 (22) 職 業 補 導 所 (7), 福 祉 施 設 (5), 保 育 所 (3), 厚 生 施 設 (3),その 他 (5) 住 居 系 34 5.4% 58.5 3.3% 公 的 住 宅 (15) 公 営 住 宅 (14), 公 社 住 宅 (1) 公 的 宿 舎 (4) 国 家 公 務 員 宿 舎 (2), 公 舎 (2) 一 般 住 宅 (15) 個 人 住 宅 (7), 社 宅 (4), 立 退 代 替 住 宅 (3), 学 生 寮 (1) 292 46.6% 824.1 46.3% 工 場 倉 庫 (292) 工 場 倉 庫 (292) インフラ 49 7.8% 393. 22.1% 交 通 施 設 (12) 道 路 (6), 港 湾 (4), 車 庫 (2) 系 供 給 処 理 施 設 (37) 上 下 水 道 (32), 鉄 塔 敷 地 (2), 変 電 所 (2), 無 線 中 継 所 (1) 都 市 他 25 4.% 25.2 1.4% 都 市 的 その 他 (24) 市 場 (9), 宗 教 施 設 (5), 資 材 置 場 等 (5), 整 備 工 場 (2), 競 輪 場 (1), 屠 場 (1) 非 都 市 的 用 途 山 林 系 7 1.1% 5.1 2.8% 森 林 (7) 植 林 用 地 (7) 21 件 (3.4%) 非 都 市 他 1.2%.1.% 非 都 市 的 その 他 (1) 築 堤 (1) 127ha(7.2%) 軍 事 系 13 2.1% 77.2 4.3% 自 衛 隊 用 地 (13) 自 衛 隊 用 地 (13) 合 計 626 1,781.6 ( 注 ) 用 途 の 内 訳 の 項 目 の( ) 内 数 字 は 件 数 1つの 案 件 で 複 数 の 用 途 が 決 定 されている 場 合 に 別 々にカウントしたため 合 計 が 一 致 しないことがある 18.3% 37.3% 17.6%.6%.1% 3.%.8%.4% 11.8% 3.9% 8.4%.1%.% 1.5%.2%.1% 2.2% 旧 軍 港 市 4 都 市 旧 軍 港 市 4 都 市 以 外 公 用 医 療 施 設 用 学 校 施 設 用 住 宅 施 設 用 道 路 用 その 他 公 共 用 産 業 用 自 作 農 創 設 分 その 他 図 -2 196 年 度 までの 転 用 用 途 ( 注 ) 公 用 : 所 管 換 ( 自 作 農 創 設 分 を 除 く) 公 共 団 体 に 対 し 庁 舎 等 とし て 処 分 医 療 施 設 用 : 公 共 団 体 に 対 し 医 療 施 設 保 健 所 として 処 分 学 校 施 設 用 : 学 校 として 処 分 住 宅 施 設 用 : 公 営 住 宅 引 揚 者 戦 災 者 等 の 収 容 施 設 としての 処 分 その 他 公 共 用 : 公 共 団 体 に 対 し 上 記 以 外 の 公 共 施 設 として 処 分 産 業 用 : 予 算 決 算 及 び 会 計 令 臨 時 特 例 を 適 用 して 産 業 等 の 保 護 奨 励 のため 処 分 自 作 農 創 設 分 : 自 作 農 創 設 特 別 措 置 法 に 基 づいて 農 地 として 所 管 換 ( 資 料 ) 大 蔵 省 財 政 史 室 編 昭 和 財 政 史 - 終 戦 から 講 和 まで- 第 19 巻 (p.345 東 洋 経 済 新 報 社 1978 年 )より 作 成 1.6% - 195 -
留 まり 文 教 系 (9%) (42%) 軍 事 系 (16%) の 割 合 も 比 較 的 高 く 転 用 用 途 の 構 成 比 は 異 なった また 舞 鶴 では 他 都 市 に 比 べ 山 林 系 (13%) 住 居 系 (%) の 割 合 が 比 較 的 高 かった このように はいずれの 都 市 も 比 較 的 高 い 割 合 を 示 していたが それ 以 外 の 転 用 用 途 において 都 市 ごとに 異 なる 特 徴 が 見 られた 4. 旧 軍 用 地 の 処 分 上 の 特 徴 (1) 処 分 決 定 件 数 及 び 面 積 の 推 移 年 度 ごとに 処 分 決 定 件 数 と 面 積 の 推 移 をみると 年 度 に よって 差 が 激 しく かなりのばらつきがあるため 一 定 の 傾 向 を 見 出 しにくい (14) ( 図 -4) そこで 5 年 ごとに 区 切 って 件 数 と 面 積 を 集 計 し その 推 移 をみると 件 数 面 積 ともに 減 少 傾 向 が 見 られた しかし 急 減 しているわけで はなく 件 数 については 196 年 代 前 半 にピークがみられ 面 積 については 196 年 代 前 半 や 197 年 代 前 半 に 増 加 に 転 じることもあり どの 年 代 でも 比 較 的 多 くの 件 数 面 積 が 確 認 できた 196 年 代 以 降 も 旧 軍 用 地 の 転 用 は 継 続 的 に 行 われ その 間 旧 軍 用 地 は 都 市 施 設 に 転 用 可 能 な 土 地 資 源 として 存 在 し 続 けていたと 言 える また 転 用 用 途 別 の 推 移 では 工 場 倉 庫 公 園 学 校 への 転 用 において 特 徴 的 な 傾 向 が 見 られた( 図 -5) 工 場 倉 庫 への 転 用 は 件 数 面 積 ともに 196 年 代 前 半 をピークとして 195 年 代 後 半 から 196 年 代 後 半 にかけ て 特 に 多 い 期 間 となっていた 工 場 倉 庫 への 転 用 が 高 度 経 済 成 長 とシンクロしていたことが 分 かる 公 園 への 転 用 には 二 つの 山 が 見 られた 一 つ 目 の 山 は 195 年 代 で 特 に 件 数 が 多 いのが 特 徴 的 であった 面 積 に 対 して 件 数 が 多 いため 1 件 当 たりの 面 積 は 小 さく 1~4 千 m 2 程 度 の 児 童 公 園 への 転 用 が 多 くなっていた (15) 二 つ 目 の 山 は 197 年 代 前 半 であり 件 数 は 多 くないものの 面 積 が 大 きかった これは 大 規 模 な 公 園 への 転 用 があったためで ある (16) 即 ち 195 年 代 には 多 くの 小 規 模 公 園 の 整 備 に 197 年 代 前 半 には 少 数 ながら 大 規 模 公 園 の 整 備 に 旧 軍 用 地 が 役 立 てられたと 言 える 学 校 への 転 用 は 件 数 面 積 とも 195 年 代 前 半 に 非 常 に 多 く その 後 に 急 減 する 傾 向 が 見 られた 特 に 195 年 代 前 半 に 多 いのは 学 校 教 育 法 (1947 年 )による 新 制 中 学 校 (18 件 )であり 旧 軍 港 市 4 都 市 においても 学 制 改 革 へ 対 応 するために 多 くの 旧 軍 用 地 が 転 用 されたことが 分 かる (2) 処 分 先 旧 軍 用 地 の 所 有 者 である 国 ( 省 庁 )は 21 件 (3.4%) 81ha(4.5%)に 過 ぎず 処 分 先 として 多 かったのは 311 件 (5.%) 867ha(48.6%)の 法 人 個 人 や 259 件 (41.6%) 74ha(41.5%)の 公 共 団 体 であった( 図 -6) 旧 軍 港 市 4 都 市 においては 殆 どの 旧 軍 用 地 が 公 共 団 体 や 法 人 個 人 などの 手 に 渡 り 利 用 されていったことが 分 かる また 処 分 先 が 公 的 機 関 であったか 民 間 であったかという 視 点 で 見 ると 公 的 機 関 への 処 分 が 287 件 (46.1%) 848ha(47.5%) であったのに 対 し 民 間 への 処 分 は 334 件 (53.7%) 936ha 14% 46% 軍 事 系 4% 42% 横 須 賀 199 件 軍 事 系 16% 623ha 16% 6% 佐 世 保 144 件 317ha 文 教 系 18% 住 居 系 2% 文 教 系 9% 23% 11% 29% 呉 17 件 459ha 山 林 系 13% 都 市 他 4% 4% 文 教 系 5% 舞 鶴 9 件 386ha 61% 7% 52% 文 教 系 2% 住 居 系 % 官 公 庁 系 商 業 系 文 教 系 医 療 福 祉 系 住 居 系 都 市 他 山 林 系 非 都 市 他 軍 事 系 25 2 15 図 -3 都 市 別 の 旧 軍 用 地 の 転 用 用 途 ( 面 積 割 合 ) 5 (ha) ( 件 ) 面 積 件 数 195 1955 196 1965 197 1975 ( 年 度 ) 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 195 年 代 196 年 代 197 年 代 195 年 代 196 年 代 197 年 代 前 半 後 半 前 半 後 半 前 半 件 数 113 件 4 件 223 件 83 件 75 件 面 積 533ha 31ha 427ha 187ha 29ha 図 -4 処 分 決 定 件 数 及 び 面 積 の 推 移 (ha) 工 場 倉 庫 ( 件 ) (ha) 公 園 ( 件 ) (ha) 学 校 ( 件 ) 35 16 8 3 35 3 14 7 9 25 3 8 25 12 6 5 2 7 25 2 6 2 8 4 15 5 15 6 3 4 15 3 4 2 5 2 5 2 5 195-54 1955-59 196-64 1965-69 197-74 ( 年 度 ) 195-54 1955-59 196-64 1965-69 197-74 ( 年 度 ) 8 7 6 5 4 3 2 195-54 1955-59 196-64 1965-69 197-74 図 -5 主 要 転 用 用 途 の 処 分 決 定 件 数 及 び 面 積 の 推 移 ( 注 ) 凡 例 は 図 -4に 同 じ ( 年 度 ) - 196 -
(52.4%)であり 民 間 への 処 分 が 過 半 を 占 めていた 今 村 ら(27a)では 旧 軍 用 地 の 活 用 は 公 的 利 用 が 中 心 であ ったと 指 摘 されているが 旧 軍 港 市 4 都 市 では 民 間 利 用 が 公 的 利 用 を 上 回 っていた その 要 因 としては 公 的 な 土 地 需 要 を 大 きく 上 回 る 大 量 の 旧 軍 用 地 が 存 在 していた 点 軍 需 産 業 に 代 替 する 産 業 振 興 が 必 要 であった 上 民 間 事 業 者 (ここでは 法 人 及 び 個 人 事 業 主 が 該 当 )が 転 用 し 得 る 海 軍 工 廠 などの 軍 需 工 場 が 多 かった 点 などが 考 えられる (3) 処 分 方 法 処 分 方 法 は 譲 渡 が 371 件 965ha で 最 も 多 く 譲 与 の 214 件 636ha が 次 いでいた( 図 -7) この2つで 件 数 の 94.% 面 積 の 89.7%を 占 めており 処 分 方 法 の 殆 どが 譲 渡 あるいは 譲 与 であった また 旧 軍 港 市 4 都 市 には 旧 軍 港 市 転 換 法 (195 年 ) に 基 づく 特 別 措 置 が 適 用 され 例 えば 公 共 団 体 が 旧 軍 用 地 を 公 園 上 下 水 道 学 校 などとして 使 用 する 場 合 には 旧 軍 用 地 が 譲 与 されることとなっていた( 表 -3) 214 件 の 譲 与 は 全 て 公 共 団 体 に 対 する 案 件 であり 公 共 団 体 を 処 分 先 とする 案 件 259 件 のうち 82.6%を 占 めていた この 他 公 共 団 体 に 対 する 減 額 譲 渡 の 適 用 も 11 件 あった この ように 旧 軍 用 地 を 転 用 した 生 活 基 盤 整 備 にあたり 旧 軍 港 市 転 換 法 による 特 別 措 置 が 役 立 てられたことが 分 かる 一 方 譲 渡 の 場 合 の 処 分 先 は 主 に 法 人 個 人 であった 371 件 の 譲 渡 のうち 法 人 個 人 に 対 する 案 件 が 36 件 で 84.4%を 占 めた 尚 公 共 団 体 のように 減 額 譲 渡 の 適 用 は なく 産 業 振 興 が 必 要 であった 旧 軍 港 市 であっても 旧 軍 用 地 における 工 場 などの 立 地 促 進 は 旧 軍 港 市 転 換 法 以 外 での 支 援 措 置 によっていた (4) 従 前 用 途 ( 旧 軍 用 地 の 種 類 ) 口 座 名 から 判 断 した 従 前 用 途 ( 旧 軍 用 地 の 種 類 )と 転 用 用 途 を 照 合 させることにより 従 前 用 途 が 引 き 継 がれ 有 効 活 用 が 図 られた 案 件 を 確 認 することができた まず 工 場 倉 庫 への 転 用 では 238 件 (81.5%) 535.8ha (65.%)が 海 軍 工 廠 や 軍 需 部 倉 庫 などを 継 承 した 案 件 であった 占 領 軍 による 賠 償 指 定 の 解 除 後 残 存 する 建 物 や 機 械 が 工 場 や 倉 庫 として 有 効 活 用 されたのであった (17) また 特 徴 的 な 案 件 としては 上 水 道 ( 水 源 地 含 む)へ の 転 用 案 件 が 挙 げられるが 2 件 中 14 件 (377.ha)が 軍 用 水 道 やその 水 源 地 を 引 き 継 いだものであった (18) 艦 船 への 水 補 給 のために 大 量 の 水 道 水 が 必 要 であったため 海 軍 は 大 規 模 な 軍 用 水 道 を 敷 設 していた 戦 前 から 都 市 住 民 に 余 水 分 与 がされていたが 戦 後 飲 料 用 や 工 業 用 の 水 道 として 全 面 的 に 利 用 されることになったのである この 他 学 校 への 転 用 案 件 では 17 件 (39.2ha)におい て 旧 軍 の 学 校 や 工 員 養 成 所 が 引 き 継 がれていた また 公 営 住 宅 への 転 用 案 件 において 工 員 等 の 宿 舎 が 継 承 され た 案 件 が 14 件 中 6 件 (2.9ha)で 確 認 された いずれも 終 戦 直 後 に 従 前 用 途 を 踏 まえて 建 物 などを 有 効 活 用 するよ う 転 用 方 針 が 出 されていた 用 途 であり 195 年 代 以 降 も 同 様 に 建 物 などが 有 効 活 用 された 場 合 もあったのである (19) 件 数 % % 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% % 7 面 積 81 (ha) 21 259 74 公 的 機 関 28 国 ( 省 庁 ) 公 共 団 体 特 殊 法 人 公 益 法 人 等 法 人 個 人 その 他 法 人 団 体 等 不 明 5.まとめ 最 後 に ここまでの 考 察 を 踏 まえ 今 村 ら(27a)が 明 らかにした 全 国 的 傾 向 との 比 較 を 通 して 旧 軍 港 市 4 都 市 における 旧 軍 用 地 の 転 用 傾 向 を 整 理 したい (1) 旧 軍 港 市 4 都 市 における 旧 軍 用 地 の 転 用 用 途 1) 主 な 転 用 用 途 ( への 転 用 ) 農 地 系 や 軍 事 系 が 大 半 を 占 めた 全 国 的 傾 向 と 異 なり 都 市 的 用 途 への 転 用 が 殆 ど(9 割 以 上 )であった 都 市 的 用 途 の 内 訳 において が 多 いのは 全 国 的 傾 向 と 共 通 だが 旧 軍 港 市 では 都 市 の 存 立 基 盤 となっていた 軍 需 産 業 に 代 わる 産 業 振 興 が 重 要 課 題 であったため 特 に 多 く( 件 数 面 積 ともに 46%)の 旧 軍 用 地 が へと 転 用 された 2) 生 活 基 盤 整 備 のための 転 用 以 外 では 全 国 的 傾 向 と 同 様 に 文 教 系 住 居 系 など 人 口 回 復 で 必 要 となった 生 活 基 盤 への 転 用 が 多 く 確 認 された 尚 全 国 的 傾 向 と 違 うのは 官 公 庁 系 が 少 ない 点 文 教 系 では 小 中 高 校 ( 全 国 的 傾 向 では 大 学 高 専 )が 多 い 点 では 上 下 水 道 ( 全 311 867 民 間 23 1 69 図 -6 処 分 先 ( 注 ) 法 人 個 人 の 個 人 には 個 人 事 業 主 が 含 まれる 複 数 の 個 人 へ 処 分 された 場 合 もある その 他 法 人 団 体 等 には 学 校 法 人 社 会 福 祉 法 人 などが 含 まれる 件 数 % % 2% 3% 4% 5% 6% 7% 8% 9% % 11 11 13 面 積 (ha) 17 214 371 636 965 72 84 所 管 換 譲 与 譲 渡 貸 付 使 用 承 認 その 他 図 -7 処 分 方 法 表 -3 旧 軍 港 市 転 換 法 による 特 別 措 置 特 別 措 置 の 内 容 対 象 となる 用 途 ( 注 減 額 譲 渡 1) 対 象 : 公 共 団 体 ( 注 2) 医 療 施 設 社 会 事 業 施 設 引 揚 者 寮 学 校 譲 与 対 象 : 公 共 団 体 旧 軍 港 市 転 換 事 業 の 用 に 供 するために 必 要 があると 認 める 場 合 ( 注 3) 取 扱 細 目 で 定 められている 施 設 公 共 施 設 ( 公 園 運 動 場 広 場 緑 地 溜 池 排 水 施 設 ) 公 企 業 施 設 ( 上 水 道 下 水 道 ) 港 湾 施 設 ( 待 合 所 野 積 場 貯 木 場 貯 炭 場 危 険 物 置 場 など) 教 育 施 設 ( 小 学 校 中 学 校 高 校 図 書 館 公 民 館 ) 勧 業 施 設 ( 物 産 展 示 会 館 商 工 物 産 陳 列 館 貿 易 振 興 会 館 漁 業 会 館 ) 保 健 衛 生 施 設 (ごみ 処 理 施 設 し 尿 処 理 施 設 保 健 所 伝 染 病 院 共 同 便 所 火 葬 場 墓 地 と 畜 場 など) 社 会 福 祉 施 設 ( 児 童 福 祉 施 設 無 料 宿 泊 所 職 業 訓 練 施 設 ) 防 犯 防 火 施 設 ( 水 上 警 察 所 消 防 署 防 火 貯 水 池 など) ( 注 1) 減 額 比 率 は5 割 以 内 ( 注 2) 学 校 法 人 の 場 合 も 適 用 可 ( 注 3) 大 蔵 省 管 財 局 長 から 各 財 務 局 庁 宛 旧 軍 港 市 転 換 法 に 基 く 国 有 財 産 処 理 標 準 の 取 扱 細 目 について (1974 年 5 月 17 日 ) 2-197 -
国 的 傾 向 では 道 路 空 港 )が 多 い 点 であった 3) 各 都 市 の 条 件 を 踏 まえた 転 用 全 国 的 傾 向 において 地 域 ( 財 務 局 )ごとに 転 用 用 途 の 傾 向 が 異 なっていたように 旧 軍 港 市 4 都 市 においても 都 市 ごとに 異 なる 傾 向 が 見 られた (2) 旧 軍 港 市 4 都 市 における 旧 軍 用 地 の 転 用 上 の 特 徴 1) 転 用 時 期 ( 継 続 的 な 転 用 特 定 の 用 途 時 期 の 転 用 ) 転 用 時 期 については 今 村 ら(27a)は ヵ 年 だけを 対 象 としているため 比 較 しがたいが 本 研 究 で 明 らかにな った 知 見 を 整 理 すると 197 年 代 前 半 まで 比 較 的 多 くの 処 分 案 件 が 確 認 できることから 旧 軍 港 市 では 継 続 的 に 旧 軍 用 地 の 転 用 が 行 われていたと 言 える また 工 場 倉 庫 公 園 学 校 への 転 用 については 社 会 経 済 情 勢 や 法 制 度 な どを 背 景 に 転 用 が 盛 んに 行 われた 特 定 の 時 期 があった 2) 主 な 処 分 先 ( 過 半 を 占 めた 民 間 利 用 ) 公 的 利 用 ( 特 に 国 が 多 い)が 中 心 という 全 国 的 傾 向 と 異 なり 処 分 先 の 過 半 は 民 間 であった また 公 的 機 関 でも 殆 どが 公 共 団 体 で 国 が 処 分 先 のケースは 限 られていた 3) 主 な 処 分 方 法 ( 民 間 への 譲 渡 公 共 団 体 への 譲 与 ) 譲 渡 と 所 管 換 が 大 半 を 占 めた 全 国 的 傾 向 と 異 なり 譲 渡 ( 対 民 間 ) 譲 与 ( 対 公 共 団 体 )が 主 要 な 処 分 方 法 であった 譲 与 は 旧 軍 港 市 転 換 法 に 基 づく 特 別 措 置 であり 旧 軍 港 市 での 処 分 方 法 の 大 きな 特 徴 である 4) 従 前 用 途 の 継 承 全 国 的 傾 向 では 工 場 倉 庫 や 空 港 への 機 能 継 承 が 見 ら れたが 旧 軍 港 市 の 場 合 は 工 場 倉 庫 のほか 上 水 道 学 校 公 営 住 宅 への 転 用 案 件 にて 機 能 継 承 が 確 認 できた 以 上 旧 軍 港 市 4 都 市 における 旧 軍 用 地 の 転 用 実 態 につ いて 全 国 的 傾 向 との 比 較 も 交 えながら 明 らかにしたが 旧 軍 港 市 に 特 有 の 研 究 課 題 として 今 後 は 返 還 跡 地 の 活 用 などにも 取 り 組 む 必 要 がある 補 注 (1) 参 考 引 用 文 献 1)によれば 旧 軍 用 地 が 移 管 される 際 に 各 財 務 局 によって 作 成 された 旧 軍 財 産 引 受 台 帳 が 散 逸 してしまっているほか 国 有 財 産 台 帳 及 び 国 有 財 産 削 除 台 帳 国 有 財 産 地 方 審 議 会 の 議 事 録 も 旧 軍 用 地 の 処 分 が 多 く 行 われた197 年 代 までのものは 見 当 たらない (2) 一 部 に 物 納 財 産 や 不 要 になった 行 政 財 産 から 移 行 された 普 通 財 産 など 旧 軍 用 財 産 以 外 のものも 含 まれているが 口 座 名 から 判 断 して 旧 軍 用 地 を 抽 出 することができる (3) 特 殊 性 については 次 頁 の (4) 旧 軍 港 市 及 び 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 2. 旧 軍 用 地 の 立 地 と 196 年 度 までの 転 用 概 況 (1) 旧 軍 用 地 の 立 地 状 況 を 参 照 (4) 但 し 舞 鶴 は 他 の 3 都 市 に 比 べ 人 口 規 模 が 小 さく 戦 時 中 の 人 口 増 加 も 殆 どなかったため 終 戦 後 の 人 口 減 少 幅 もそれほど 大 きくはなかった (5) 例 えば 呉 市 については 戦 災 復 興 誌 第 七 巻 の p.476 に 軍 施 設 の 拡 充 が 都 市 施 設 の 整 備 よりもはるかに 急 テンポであったため なかなか 都 市 施 設 の 整 備 ができなかった と 記 されており 生 活 基 盤 整 備 が 追 いつ いていなかったことが 窺 える (6) 第 33 回 審 議 会 より 国 有 財 産 処 理 の 促 進 を 図 るため 一 定 の 額 あるいは 規 模 までの 案 件 については 地 方 幹 事 会 で 処 理 し 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 には 報 告 されることとなった 旧 軍 港 市 国 有 財 産 処 理 審 議 会 決 定 事 項 総 覧 には この 報 告 事 項 のほか 当 然 報 告 されるべきもので 報 告 もれとなっている 案 件 も 補 足 されている 本 研 究 では こういった 報 告 事 項 に 該 当 する 案 件 も 含 め 考 察 対 象 としている (7) 口 座 とは 国 有 財 産 の 物 件 の 単 位 で 個 々に 口 座 名 ( 海 軍 大 楠 機 関 学 校 横 須 賀 海 軍 航 空 隊 など)が 付 されている 当 該 土 地 に 付 随 する 建 物 立 木 工 作 物 なども 同 一 の 口 座 として 扱 われる (8) 参 考 引 用 文 献 7)のp.345 による (9) 名 古 屋 市 の 旧 軍 用 地 面 積 は 参 考 引 用 文 献 3)で 示 されている 名 城 地 区 113ha 千 種 地 区 45ha 熱 田 地 区 53ha 猫 ヶ 洞 地 区 46ha から 試 算 () 同 じ 大 蔵 省 調 査 において 旧 軍 港 市 4 都 市 以 外 の 場 合 を 集 計 すると 196 年 度 までに 83.5%が 処 分 されていることから 旧 軍 港 市 4 都 市 での 処 分 面 積 割 合 が 低 いことが 分 かる (11) 参 考 引 用 文 献 1)によれば 公 用 には 自 衛 隊 用 地 としての 所 管 換 が 大 量 に 含 まれている 可 能 性 がある (12) 例 えば 旧 軍 港 市 転 換 法 案 要 綱 に 旧 軍 港 各 市 が 国 家 によって 造 成 せら れた 都 市 であり ~ 中 略 ~ 此 の 地 に 産 業 を 起 こさざる 限 り 市 民 の 生 活 を 保 証 し 得 ない~ 中 略 ~ 旧 軍 港 工 廠 等 の 残 存 施 設 を 活 用 して 有 力 工 場 を 此 の 地 に 誘 致 せざる 限 り 地 元 産 業 の 振 興 は 望 み 得 ない ( 細 川 竹 雄 軍 転 法 の 生 れる 迄 p.77 旧 軍 港 市 転 換 連 絡 事 務 局 1954 年 )とあり 旧 軍 用 地 への 工 場 誘 致 による 産 業 振 興 が 求 められていたことが 分 かる (13) 他 に 件 数 は 多 くないが 面 積 が 大 きかった 用 途 として 軍 事 系 があるが これは 自 衛 隊 用 地 だけで 米 軍 への 提 供 財 産 は 含 まれていない (14) 特 に 面 積 については 大 規 模 案 件 がある 年 度 の 面 積 を 大 きく 押 し 上 げる 場 合 があった 例 えば 軍 用 水 道 施 設 水 道 施 設 ( 佐 世 保 /3.ha/1952 年 度 ) 横 須 賀 海 軍 航 空 隊 日 産 自 動 車 ( 横 須 賀 /.4ha/196 年 度 ) 海 軍 舞 鶴 工 廠 本 廠 舞 鶴 重 工 業 ( 舞 鶴 /87.ha/1967 年 度 ) 陸 軍 観 音 崎 砲 台 県 都 市 公 園 ( 横 須 賀 /6.4ha/1973 年 度 )など (15) 田 之 浦 公 園 ( 横 須 賀 / 横 須 賀 海 軍 軍 需 部 /1,79m 2 ) 御 船 町 児 童 公 園 ( 佐 世 保 / 海 軍 工 廠 疎 開 地 /1,188m 2 )など 1~4 千 m 2 程 度 の 公 園 への 転 用 案 件 は21 件 (16) 県 都 市 公 園 ( 横 須 賀 / 陸 軍 観 音 崎 砲 台 /6.4ha) 中 央 公 園 ( 佐 世 保 / 名 切 谷 地 区 家 族 住 宅 /8.4ha)など (17) 軍 需 工 場 の 賠 償 指 定 は 大 蔵 省 財 政 史 室 編 昭 和 財 政 史 - 終 戦 から 講 話 まで- 第 9 巻 (p.66 東 洋 経 済 新 報 社 1976 年 )が 詳 しい 旧 軍 財 産 で は 陸 軍 49 海 軍 45 研 究 所 33 の 計 127 施 設 が 賠 償 物 件 となった (18) 旧 軍 港 市 4 都 市 すべてにおいて 軍 用 水 道 や 水 源 地 を 有 効 活 用 した 案 件 が 確 認 できた 大 規 模 な 案 件 としては 市 水 道 施 設 ( 横 須 賀 / 海 軍 軍 港 水 道 /83.2ha) 市 水 道 施 設 ( 呉 / 呉 軍 港 水 道 本 庄 水 源 地 /99.9ha) 市 水 道 施 設 ( 佐 世 保 / 軍 用 水 道 施 設 /3.ha) 上 水 道 施 設 ( 舞 鶴 / 舞 鶴 軍 港 水 道 有 路 水 源 地 /37.ha) (19) 学 校 への 転 用 方 針 については 学 校 兵 営 倉 庫 廠 舎 等 ヲ 文 部 省 管 下 学 校 ニ 使 用 セシムル 件 案 (1945 年 9 月 陸 軍 省 兵 務 課 ) 陸 軍 土 地 建 物 施 設 処 分 委 員 会 綴 ( 防 衛 省 防 衛 研 究 所 図 書 館 所 蔵 ) 住 宅 への 転 用 方 針 については 公 営 住 宅 の 前 身 である 応 急 簡 易 住 宅 に 関 連 する 方 針 として 元 軍 用 土 地 及 ビ 建 物 ノ 應 急 利 用 ニ 關 スル 件 (1945 年 月 25 日 / 厚 生 次 官 から 各 地 方 長 官 宛 通 牒 ) 参 考 引 用 文 献 1) 今 村 洋 一, 西 村 幸 夫 (27) 旧 軍 用 地 の 転 用 と 戦 後 の 都 市 施 設 整 備 との 関 係 について-1956~1965 年 度 の 国 有 財 産 地 方 審 議 会 における 決 定 事 項 の 考 察 を 通 して- 都 市 計 画 論 文 集 42 巻 3 号,pp.427-432 2) 三 宅 醇, 西 澤 泰 彦, 大 塚 毅 彦 (1997) 旧 軍 用 地 および 軍 施 設 ストックが 都 市 形 成 に 果 たした 役 割 に 関 する 研 究,( 財 ) 第 一 住 宅 建 設 協 会 3) 今 村 洋 一, 西 村 幸 夫 (27) 旧 軍 用 地 の 転 活 用 が 戦 後 の 都 市 構 造 再 編 に 与 えた 影 響 について- 名 古 屋 市 を 事 例 として- 都 市 計 画 論 文 集 42 巻 1 号,pp.57-62 4) 宮 木 貞 夫 (1964) 関 東 地 方 における 旧 軍 用 地 の 工 場 地 への 転 用 について 地 理 学 評 論 37 巻 9 号,pp.57-52 5) 杉 野 圀 明 (1981) 舞 鶴 市 における 旧 軍 用 地 と 工 業 立 地 立 命 館 大 学 人 文 科 学 研 究 所 紀 要 34 号,pp39-62 6) 松 山 薫 (21) 第 二 次 世 界 大 戦 後 の 日 本 における 旧 軍 用 地 の 転 用 に 関 す る 地 理 学 的 研 究, 東 京 大 学 学 位 論 文 7) 大 蔵 省 財 政 史 室 編 (1978) 昭 和 財 政 史 - 終 戦 から 講 和 まで- 第 19 巻 ( 統 計 ) 東 洋 経 済 新 報 社 - 198 -