平 成 24 年 度 凍 害 および 塩 分 環 境 下 における 埋 設 型 枠 工 法 の 耐 久 性 について ( 独 ) 土 木 研 究 所 寒 地 土 木 研 究 所 耐 寒 材 料 チーム 嶋 田 久 俊 田 口 史 雄 吉 田 行 塩 分 環 境 下 において 凍 害 を 受 けるコンクリート 構 造 物 への 有 効 な 対 策 として, 種 々の 表 面 被 覆 工 法 が 適 用 されているが, 被 覆 材 料 等 の 積 雪 寒 冷 地 における 耐 久 性 は 明 らかになっていない そこで 凍 塩 害 環 境 下 での 埋 設 型 枠 工 法 の 適 用 を 目 的 として 埋 設 型 枠 の 耐 久 性 試 験 を 行 っ た その 結 果 一 部 の 埋 設 型 枠 を 使 用 した 場 合 型 枠 表 層 に 塩 分 の 浸 透 が 確 認 され 型 枠 自 体 の 樹 脂 含 浸 程 度 が 影 響 している 可 能 性 が 示 唆 された また 自 体 の 引 張 強 度 と 伸 び 率 は 低 温 下 では 大 きな 低 下 は 無 いが 紫 外 線 照 射 により 大 きく 低 下 する 傾 向 があり の 選 定 に は 特 に 伸 び 率 が 重 要 であることが 明 らかになった キーワード: 長 寿 命 化 コンクリート 埋 設 型 枠 凍 塩 害 1. はじめに 表 面 被 覆 としての 埋 設 型 枠 工 法 は, 通 常 の 型 枠 の 代 わりに 高 強 度 高 耐 久 なプレキャストコンクリート 版 ( 以 下, 埋 設 型 枠 版 と 記 す)をコンクリート 構 造 物 表 面 の 保 護 層 として 設 置 し 母 材 コンクリートへの 劣 化 因 子 の 侵 入 を 抑 制 する 工 法 である なお, 埋 設 型 枠 版 の 継 目 には 隙 間 が 生 じるため, 継 目 部 からの 劣 化 因 子 の 侵 入 を 防 ぐためにシーリング 材 や 接 着 剤 等 ( 以 下, と 記 す)が 充 填 される しかし, には 追 従 性 の 観 点 から 有 機 系 の 材 料 が 用 いられることが 多 い が, 有 機 系 の 材 料 は 紫 外 線 により 経 年 的 に 劣 化 するこ とから, が 劣 化 した 場 合, 目 地 部 よりコンクリ ート 劣 化 因 子 ( 水 塩 化 物 イオン 等 )が 侵 入 し, 母 材 コンクリートの 凍 害 や 鋼 材 腐 食 等 の 劣 化 を 生 じる 恐 れ がある このため, 本 研 究 では, 目 地 部 を 含 めた 埋 設 型 枠 工 法 の 耐 久 性 の 検 証 を 目 的 として, 目 地 部 を 含 む 形 で 埋 設 型 枠 版 と 一 体 化 させたコンクリート 供 試 体 を 作 製 し て 耐 候 性 試 験 および 凍 結 融 解 試 験 を 実 施 し, 埋 設 型 枠 版 と 母 材 コンクリートの 付 着 性 および 母 材 コンクリー ト 中 への 塩 化 物 イオンの 侵 入 の 有 無 を 検 討 併 せて 目 地 材 自 体 の 紫 外 線 劣 化 による 引 張 強 度 や 伸 び 率 の 変 化 についても 検 討 した 2. コンクリート 試 験 の 概 要 (1) 使 用 した 埋 設 型 枠 の 概 要 表 -1 に 室 内 試 験 で 用 いた 埋 設 型 枠 版, 目 地 構 造, 目 地 材 の 組 み 合 わせを, 図 -1 に 目 地 構 造 の 詳 細 を 示 す 埋 設 型 枠 版 には, 北 海 道 での 使 用 実 績 がある 樹 脂 コンクリ ート 製 の 埋 設 型 枠 版 Aと,セメントコンクリート 版 作 製 後 に 樹 脂 を 含 浸 させた 埋 設 型 枠 版 Bの 2 種 類 を 使 用 した 埋 設 型 枠 版 Aは 線 膨 張 係 数 が 普 通 コンクリートの 2 倍 程 度 のため, 温 度 変 化 に 伴 う 埋 設 型 枠 版 の 膨 張 と 収 縮 を 考 慮 して, 目 地 構 造 は 図 -1 に 示 すように,mm の 通 し 目 地 とした なお, 埋 設 型 枠 版 背 面 には の 3 面 接 着 によるひび 割 れを 防 止 するため,2 種 類 のバックアップ 材 を 取 り 付 けた には, 現 場 での 使 用 実 績 がある 2 種 類 に 加 え,シリコーン 樹 脂 及 び 複 合 材 料 ( シリコーンの 充 填 とポ リウレア 等 の 塗 布 後 アクリルウレタン 塗 布 )を 用 いた 埋 設 型 枠 版 Bは, 普 通 コンクリートと 同 じ 線 膨 張 係 数 の ため, 目 地 構 造 は 突 き 合 わせとし, 図 -1 に 示 す 切 り 欠 き 状 の 目 地 部 を 型 枠 版 表 面 に 設 ける 表 目 地 と, 目 地 部 を 型 枠 版 裏 面 に 設 ける 裏 目 地 の 2 種 類 とし, には 現 場 での 使 用 実 績 のあるエポキシ 樹 脂 を 使 用 した 表 -1 埋 設 型 枠 目 地 構 造 の 組 み 合 わせ 埋 設 型 枠 版 目 地 構 造 A 樹 脂 コンクリート B 樹 脂 含 浸 セメント コンクリート 通 し 目 地 表 目 地 裏 目 地 1 2 複 合 材 料 エポキシ 樹 脂
図 -2 に 型 枠 の 寸 法 および 構 造 を 示 す 寸 法 の 異 なる 埋 設 型 枠 版 4 枚 を 1 側 面 にセパレーターで 固 定 し, 各 埋 設 型 枠 版 の 継 目 に を 施 工 した 他 面 の 型 枠 には, 木 製 型 枠 を 使 用 し, 型 枠 の 内 寸 は,66 44 8.4cm とした また, 母 材 コンクリート 自 体 の 表 層 強 度 の 検 証 に 用 いる 供 試 体 用 に,5 面 全 面 を 木 製 型 枠 とした 型 枠 も 作 製 した 母 材 コンクリート 種 石 埋 AS 設 型 フォーム 枠 版 A 3 7 50 ハ ックアッフ 材 ( 連 続 気 泡 ) 埋 AS 設 型 フォーム 枠 版 A ハ ックアッフ 材 ( 独 立 気 泡 ) 11 セメント の 種 類 高 炉 セメ ント B 種 表 -2 コンクリートの 配 合 水 セメン ト 比 (%) 水 W 単 位 体 積 質 量 (kg/m 3 ) セメント C 細 骨 材 S 粗 骨 材 G 40 150 375 741 63 1.7 8.3 フ リーテ ィンク による 脆 弱 化 母 材 コンクリート 砕 石 11 埋 設 型 枠 母 材 コンクリート 切 削 部 分 骨 材 の 集 中 単 位 :cm 埋 PICフォーム 設 型 枠 版 B PICフォーム 埋 設 型 枠 版 B 図 -3 供 試 体 の 切 り 出 し 44 1.6 埋 設 型 枠 版 砕 石 母 材 コンクリート 埋 PICフォーム 設 型 枠 版 B PICフォーム 埋 設 型 枠 版 B 図 -1 目 地 構 造 ( 上 : 通 し 目 地 中 : 表 目 地 下 : 裏 目 地 ) 8.4 セ パ レ ー タ ー 11 11 図 -2 型 枠 の 寸 法 および 構 造 (2) コンクリートの 配 合 および 供 試 体 作 製 表 -2 にコンクリートの 配 合 を 示 す 埋 設 型 枠 工 法 が 適 用 されるような 海 岸 付 近 のコンクリート 構 造 物 を 再 現 するため,セメントには 遮 塩 性 に 優 れる 高 炉 セメント B 種 を 使 用 し, 粗 骨 材 には 小 樽 見 晴 産 の 砕 石 を, 細 骨 材 に は 苫 小 牧 樽 前 産 の 海 砂 を 使 用 した コンクリートの 水 セ メント 比 は 40%とし, 目 標 スランプ 8±2.5cm, 目 標 空 気 量 5.0%として 配 合 を 決 定 した 埋 設 型 枠 版 と 母 材 コンクリートを 一 体 化 させたコンク リート 版 は, 図 -2 に 示 した 型 枠 にコンクリートを 打 設 して, 材 齢 28 日 まで 型 枠 を 外 さずに 封 緘 養 生 した 後, 66 目 地 部 単 位 :cm 木 製 型 枠 部 分 のみを 脱 型 した また, 母 材 コンクリート 自 体 の 表 層 強 度 検 証 用 コンクリート 版 についても, 同 様 の 方 法 で 作 製 した 図 -3 に 供 試 体 の 切 り 出 し 方 法 を 示 す コンクリート 版 の 上 下 端 部 1mm を 切 除 した 後, 目 地 部 を 含 むよう cm 供 試 体 を 3 個 切 り 出 した (3) 試 験 概 要 供 試 体 目 地 部 に 紫 外 線 劣 化 を 与 えるため, 紫 外 線 照 射 と 乾 湿 繰 り 返 しによる 耐 候 性 試 験 を 実 施 した 後, 塩 水 に よる 一 面 凍 結 融 解 試 験 を 実 施 した また 試 験 後 の 供 試 体 については, 母 材 コンクリートと 埋 設 型 枠 版 の 付 着 性 を 検 討 するため, 引 張 接 着 性 試 験 を 実 施 すると 共 に, 塩 化 物 イオンの 侵 入 の 有 無 を 調 べるため,EPMA( 電 子 線 マ イクロアナライザー)による 塩 化 物 イオンの 面 分 析 を 行 った 試 験 は 5 ケースで 実 施 し, 劣 化 作 用 条 件 の 違 いに よる 母 材 コンクリートと 埋 設 型 枠 版 の 付 着 性 および 塩 化 物 イオンの 母 材 コンクリートへの 侵 入 状 況 について 検 討 した なお, 埋 設 型 枠 版 Bを 使 用 し, 目 地 構 造 を 裏 目 地 とした 供 試 体 においては, 目 地 が 表 層 に 露 出 しておらず, 紫 外 線 劣 化 を 受 けないため,ケース 1~3 の 条 件 で 試 験 を 実 施 した ケース1 : 養 生 引 張 付 着 強 度 ( 初 期 値 ) ケース2 : 一 面 凍 結 融 解 試 験 (50 サイクル) 引 張 接 着 性 試 験 +EPMA 面 分 析 ケース3 : 一 面 凍 結 融 解 試 験 (300 サイクル) 引 張 接 着 性 試 験 +EPMA 面 分 析 ケース4 : 耐 候 性 試 験 ( 紫 外 線 照 射 00 時 間 ) 一 面 凍 結 融 解 試 験 (0 サイクル) 引 張 接 着 性 試 験 +EPMA 面 分 析 ケース5 : 耐 候 性 試 験 ( 照 射 00 時 間 ) 一 面 凍 結 融 解
試 験 (300 サイクル) 引 張 接 着 性 試 験 +EPMA 面 分 析 a) 耐 候 性 試 験 紫 外 線 の 照 射 と 乾 湿 繰 り 返 しによる 耐 候 性 試 験 を 実 施 した 試 験 条 件 は JIS A 1415 高 分 子 系 建 築 材 料 の 実 験 室 光 源 による 暴 露 試 験 方 法 を 参 考 に 表 -3 に 示 す 通 り 決 定 し, 照 射 時 間 は 00 時 間 とした b) 一 面 凍 結 融 解 試 験 ケース 2~4 の 供 試 体 について ASTM C 672 に 準 拠 し, 試 験 水 を 供 試 体 表 面 に 張 り, 凍 結 工 程 (-18,16 時 間 ) と 融 解 工 程 (+23,8 時 間 )を 繰 り 返 す 方 法 で 一 面 凍 結 融 解 試 験 を 実 施 した なお, 試 験 水 には 濃 度 3%の NaCl 水 溶 液 を 使 用 した また, 凍 結 融 解 による 劣 化 状 況 把 握 の 目 安 とするため, 図 -4 に 示 す 位 置 において 透 過 法 による 超 音 波 伝 播 速 度 を 併 せて 測 定 した c) 引 張 接 着 性 試 験 埋 設 型 枠 版 と 母 材 コンクリートの 付 着 性 を 検 討 する ため, 埋 設 型 枠 版 に 目 地 部 を 中 心 としてφcm の 切 り 込 みを 入 れ, 鋼 製 ジグを 接 着 し, 建 研 式 接 着 力 試 験 器 を 用 いて 埋 設 型 枠 版 と 母 材 コンクリートの 引 張 接 着 強 度 を 求 めた また, 母 材 コンクリート 自 体 の 表 層 強 度 を 調 べるため, 材 齢 28 日 と 91 日 で, 母 材 表 層 強 度 検 証 用 コンクリート 版 の 3 箇 所 で 同 様 の 試 験 を 実 施 した d)epma 面 分 析 一 面 凍 結 融 解 試 験 後 の 母 材 コンクリートへの 塩 化 物 イオンの 侵 入 の 有 無 を 調 べるため, 図 -5 に 示 すように 目 地 部 を 含 んだ 断 面 が 30 30mm の 試 料 を 切 り 出 し, 鏡 面 研 磨 および 金 の 蒸 着 を 行 って 分 析 面 を 作 製 し,EPMA による 塩 化 物 イオンの 分 布 の 分 析 を 実 施 した 対 象 は, 埋 設 型 枠 版 Aで に 1,2および を 使 用 した 供 試 体 と, 埋 設 型 枠 版 Bで 目 地 構 造 を 表 目 地 とした 供 試 体 とした 光 源 UVB 紫 外 線 蛍 光 灯 表 -3 耐 候 性 試 験 の 試 験 条 件 照 射 放 射 照 度 時 間 ~270nm W/m 2 16 時 間 照 射 8 時 間 湛 水 0 70 30 0 40 270~300nm 5.2W/m 2 300~320nm 13.1W/m 2 320~360nm 12.1W/m 2 360~400nm 1.1W/m 2 暗 黒 0 0 埋 設 型 枠 母 材 コンクリート 超 音 波 伝 播 速 度 測 定 位 置 図 -4 超 音 波 伝 播 速 度 測 定 位 置 0 30 0 雰 囲 気 温 度 20 (4) 試 験 結 果 a) 一 面 凍 結 融 解 試 験 後 の 変 状 一 番 厳 しい 条 件 である 紫 外 線 照 射 後 に 一 面 凍 結 融 解 試 験 300 サイクルを 終 了 した 供 試 体 においても, 埋 設 型 枠 自 体 にスケーリングの 発 生 は 認 められなかった 写 真 -1 に 1の 一 面 凍 結 融 解 試 験 後 の の 拡 大 写 真 を 示 す 1については, 写 真 に 示 すように 目 地 材 表 面 に 多 数 の 細 かいひび 割 れが 確 認 できるが,これ は 紫 外 線 照 射 00 時 間 経 過 時 点 で 既 に 確 認 されており, 表 面 は 凍 結 融 解 試 験 300 サイクル 後 でも 大 きな 変 状 は 確 認 されなかった また, 他 の については, 紫 外 線 照 射 00 時 間 + 凍 結 融 解 300 サイクル 後 におい ても,はく 離 やひび 割 れ 等 は 確 認 されなかった b) 超 音 波 伝 播 速 度 超 音 波 伝 播 速 度 測 定 の 結 果 凍 結 融 解 300 サイクル 後 埋 設 型 枠 母 材 コンクリート 分 析 面 図 -5 EPMA 面 分 析 用 試 料 の 採 取 位 置 目 地 部 埋 設 型 枠 部 写 真 -1 一 面 凍 結 融 解 試 験 後 の の 状 況
においても 超 音 波 伝 播 速 度 の 大 きな 低 下 はみられなかっ た c) 引 張 接 着 強 度 引 張 接 着 性 強 度 を 図 -6 に 示 す なお, 目 地 等 付 着 の ない 領 域 については 引 張 接 着 強 度 を 補 正 計 算 している 埋 設 型 枠 版 Aを 使 用 した 供 試 体 のケース 1~4 におけ る 付 着 強 度 は,いずれの 試 験 ケースにおいても, 劣 化 を 与 えていない 母 材 コンクリートの 表 層 強 度 と 同 等 であり, 埋 設 型 枠 版 と 母 材 コンクリートの 付 着 強 度 は 低 下 してい ないと 考 えられていたが,ケース 5 では 特 にシリコーン 樹 脂 および 複 合 目 地 の 付 着 強 度 が 大 きく 低 下 した これについては, 付 着 強 度 試 験 のばらつきが 大 きかった ため 今 後 の 検 討 が 必 要 である なお, と 埋 設 型 枠 版 は 隙 間 無 く 接 着 していることを 試 験 後 の 供 試 体 によ り 直 接 確 認 しており, 一 面 凍 結 融 解 試 験 中 に 試 験 水 が 目 地 材 と 埋 設 型 枠 版 の 隙 間 から 侵 入 し, 凍 結 融 解 作 用 によ り 付 着 が 低 下 したものではないと 判 断 される d) 塩 化 物 イオンの 分 布 図 -7 にケース 5 の 供 試 体 の 分 析 面 の 実 態 画 像 と 塩 化 物 イオンの 分 布 を 示 す 画 像 左 側 が 埋 設 型 枠 版 側 ( 表 面 側 )であり, 表 面 から 16mm 程 深 い 箇 所 が 埋 設 型 枠 と 母 材 コンクリートの 付 着 部 にあたる なお, 塩 化 物 イオン 濃 度 の 高 い 順 に 白 赤 黄 色 緑 青 緑 青 黒 の 色 で 表 示 している 埋 設 型 枠 版 Aについては,いずれも 塩 化 物 イオンの 浸 透 は 見 られなかった 一 方, 埋 設 型 枠 版 B を 用 いた 供 試 体 において, 埋 設 型 枠 表 層 部, 界 面 で 塩 化 物 イオンの 浸 透 がみられたが 母 材 内 部 までの 塩 化 物 イオンの 浸 透 は 確 認 されなかった 塩 化 物 イオンの 浸 透 は 埋 設 型 枠 版 の 樹 脂 の 含 浸 の 程 度 が 低 かったためと 考 えられる 埋 設 型 枠 種 類 埋 設 型 枠 版 A 埋 設 型 枠 版 B 目 地 構 造 通 し 目 地 表 目 地 種 類 1 2 複 合 目 地 エポキシ 樹 脂 ケース 5 ( 紫 外 線 照 射 00 時 間 + 凍 結 融 解 300 サイクル) 分 析 面 セメントペースト 部 図 -7 塩 化 物 イオンの 分 布 (ケース 5) 引 張 接 着 強 度 (N/mm 2 ) 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 ケース1( 初 期 値 ) ケース2( 凍 結 融 解 50サイクル) ケース3( 凍 結 融 解 300サイクル) ケース4( 紫 外 線 照 射 00 時 間 + 凍 結 融 解 0サイクル) ケース5( 紫 外 線 照 射 00 時 間 + 凍 結 融 解 300サイクル) 母 材 コンクリートの 表 層 強 度 目 地 構 造 埋 設 型 枠 版 エホ キシ 変 成 1 エホ キシ 変 成 複 合 目 地 エホ キシ 樹 脂 エホ キシ 樹 脂 2 通 し 目 地 表 目 地 裏 目 地 埋 設 型 枠 版 A 図 -6 引 張 接 着 強 度 埋 設 型 枠 版 B
3. の 引 張 強 度 特 性 (1) 試 験 概 要 埋 設 型 枠 工 法 の は, 温 度 変 化 等 による 埋 設 型 枠 版 の 変 位 に 対 して 追 従 する 必 要 があり, 積 雪 寒 冷 地 での 適 用 を 考 慮 した 場 合, 低 温 環 境 下 でも 優 れた 追 従 性 を 有 することが 必 要 である また, 紫 外 線 劣 化 に 対 しても 優 れる 材 料 を 選 定 する 必 要 がある このため, 表 -1 に 示 した のうち, 1 2, シリコ-ン 樹 脂,エポキシ 樹 脂 を 対 象 とし, 低 温 環 境 下 および 紫 外 線 劣 化 による 引 張 特 性 の 変 化 に 関 して 検 討 を 行 った (2) 試 験 体 の 作 製 試 験 体 の 作 製 は, 1 2, シリコ-ン 樹 脂 については,まず 2mm 厚 の 樹 脂 シートを 作 製 し, 温 度 23, 湿 度 50%の 環 境 下 で 4 週 間 養 生 後, 試 験 体 打 抜 刃 を 用 いて 図 -8 に 示 すダンベル 形 に 成 形 し た また,エポキシ 樹 脂 については, 硬 化 体 が 硬 く, 打 抜 刃 による 成 型 が 困 難 であったことから, 上 述 のシリコ ーン 樹 脂 シートのダンベル 形 の 打 抜 部 分 に, 剥 離 材 (シ リコーンスプレー)を 塗 布 した 後 にエポキシ 樹 脂 を 充 填 してダンベル 形 に 成 型 し, 温 度 23, 湿 度 50%の 環 境 下 で 4 週 間 養 生 した 図 -8 目 地 試 験 体 の 形 状 (3) 引 張 試 験 引 張 試 験 は, 以 下 に 示 す7 条 件 下 において,JIS K 6251 加 硫 ゴム 物 理 試 験 方 法 に 準 拠 して 実 施 している なお, 紫 外 線 照 射 は,サンシャインウェザオメータ ーを 用 いて 実 施 し,JIS A 1415 高 分 子 系 建 築 材 料 の 実 験 室 光 源 による 暴 露 試 験 方 法 WS-A 法 に 準 拠 し,ブラ ックパネル 温 度 は 63 とし,48 分 間 紫 外 線 照 射 を 行 っ た 後, 暗 黒 環 境 で 12 分 間 水 噴 霧 を 行 った 標 準 : 養 生 23 で 引 張 試 験 氷 点 下 : 養 生 0 (1 日 ) 0 で 引 張 試 験 低 温 : 養 生 -20 (1 日 ) -20 で 引 張 試 験 紫 外 線 照 射 00 時 間 : 養 生 サンシャインウェザオ メーター00 時 間 23 (1 日 ) 23 で 引 張 試 験 紫 外 線 照 射 3000 時 間 : 養 生 サンシャインウェザオ メーター3000 時 間 23 (1 日 ) 23 で 引 張 試 験 紫 外 線 蛍 光 灯 00 時 間 : 紫 外 線 蛍 光 灯 00 時 間 23 (1 日 ) 23 で 引 張 試 験 紫 外 線 蛍 光 灯 3000 時 間 : 紫 外 線 蛍 光 灯 3000 時 間 23 (1 日 ) 23 で 引 張 試 験 紫 外 線 蛍 光 灯 の 試 験 条 件 は 表 -3 のとおりである a) 引 張 強 度 図 -9 に 目 地 試 験 体 の 引 張 強 度 を 示 す なお,エポキ シ 樹 脂 は 他 の に 比 べ 引 張 強 度 が 極 めて 大 きいため 実 測 値 の 1/ で 表 記 し, 同 一 図 で 各 試 験 条 件 下 におけ る 差 を 評 価 しやすいようにしている 紫 外 線 蛍 光 灯 照 射 後 の 引 張 強 度 は, シリ コーン 樹 脂 2と では,サンシャインウェ ザオメーターによる 紫 外 線 照 射 後 の 試 験 値 よりも 低 下 し たが, 他 の ではサンシャインウェザオメーターに よる 劣 化 後 の 方 が 低 下 した これらの 試 験 は 紫 外 線 波 長 の 違 いがあり,サンシャインウェザオメーター 試 験 は, UVA 紫 外 線 のため 比 較 的 波 長 領 域 が 大 きく(315~ 400nm), 一 方 の 紫 外 線 蛍 光 灯 は UVB 紫 外 線 のため 短 波 長 (280~315nm)である 本 研 究 においては, 紫 外 線 蛍 光 灯 による 劣 化 促 進 作 用 は,サンシャインウェザオメー ターによる 試 験 とほぼ 同 等 か 小 さい 傾 向 であった なお, 2および は, いずれの 紫 外 線 作 用 後 も 引 張 強 度 の 低 下 は 標 準 の 80% 程 度 と 劣 化 の 程 度 は 比 較 的 小 さかった 引 張 強 度 (N/mm 2 ) 4.0 3.0 2.0 1.0 標 準 (23 ) 氷 点 下 (0 ) 低 温 (-20 ) 紫 外 線 照 射 (00 時 間 ) 紫 外 線 照 射 (3000 時 間 ) 紫 外 線 蛍 光 灯 (00 時 間 ) 紫 外 線 蛍 光 灯 (3000 時 間 ) エポキシ 樹 脂 は 強 度 が 大 きい ため 実 測 値 の 1/で 表 記 破 断 時 伸 び 率 (%) 600 500 400 300 200 標 準 (23 ) 氷 点 下 (0 ) 低 温 (-20 ) 紫 外 線 照 射 (00 時 間 ) 紫 外 線 照 射 (3000 時 間 ) 紫 外 線 蛍 光 灯 (00 時 間 ) 紫 外 線 蛍 光 灯 (3000 時 間 ) 0 1 2 エホ キシ 樹 脂 0 1 2 図 -9 の 引 張 強 度 図 - の 破 断 時 伸 び 率
b) 伸 び 率 図 - に 破 断 時 の 伸 び 率 を 示 す 紫 外 線 蛍 光 灯 と 紫 外 線 照 射 を 比 較 すると 紫 外 線 照 射 の 方 が 伸 び 率 はわずかに 低 下 する 傾 向 がみられ, 紫 外 線 蛍 光 灯 3000 時 間 後 の 劣 化 程 度 は,サンシャインウエザオメータ 00 時 間 と 3000 時 間 の 中 間 程 度 であった これらのことから, 上 述 のコンクリート 供 試 体 による 耐 候 性 試 験 として 行 った 紫 外 線 蛍 光 灯 00 時 間 の 劣 化 促 進 作 用 は, 促 進 性 の 観 点 からは 比 較 的 小 さく, 結 果 として に 大 きな 劣 化 が 生 じなかったものと 考 えられる しかし 一 方 で,エポ キシ 変 成 1に 着 目 すると, 紫 外 線 蛍 光 灯 00 時 間 でも 伸 び 率 は 20%まで 低 下 し, 標 準 試 験 値 に 対 しても 20% 程 度 しかないことから,コンクリート 供 試 体 において 表 面 にひび 割 れが 発 生 していたのは, 紫 外 線 劣 化 による 伸 び 率 の 低 下 が 原 因 と 考 えられる そ の 他 の は, 標 準 に 対 する 相 対 比 としては, 紫 外 線 の 影 響 により 50% 程 度 まで 低 下 するが, 伸 び 率 の 絶 対 値 は, 2で 90% 程 度,シ リコーン 樹 脂 では 250% 以 上 の 伸 び 率 を 示 しており, 引 張 強 度 を 考 慮 してもこれらの は 比 較 的 耐 候 性 に 優 れる 材 料 と 判 断 できる 図 -11 に 紫 外 線 照 射 時 間 と 伸 び 率 の 関 係 を 示 す なお, 各 マークは 実 験 値 のプロット, 実 線 はその 回 帰 直 線 であ り 横 軸 は 対 数 目 盛 である 対 数 近 似 した 場 合, 実 測 値 と 近 似 直 線 は 良 好 な 相 関 を 示 し, 近 似 直 線 から 1では 紫 外 線 照 射 3000 時 間 弱 で 伸 び 率 がほぼ 0 となっている のに 対 し, 2およびシリコ ーン 樹 脂 では 00 万 時 間 程 度 まで 伸 び 率 が 確 保 出 来 る ことになる 一 方 1を 使 用 した 現 地 模 型 供 試 体 では, 暴 露 3 年 で の 剥 離 が 確 認 されて おり これから, 単 純 に 紫 外 線 照 射 00 時 間 を 実 環 境 下 1 年 と 仮 定 すると, 2 および は 半 永 久 的 に の 伸 び 率 が 確 保 されることとなる 図 -12は, 実 測 値 を 直 線 近 似 したものであるが,これ によると, 2およびシリコ ーン 樹 脂 では 紫 外 線 照 射 約 5000 時 間 で 伸 び 率 がほぼ0と なる 紫 外 線 照 射 00 時 間 を 実 環 境 下 1 年 と 仮 定 すると, 1は 耐 用 年 数 3 年 程 度,エ ポキシ 変 成 2および は 耐 用 年 数 5 年 程 度 となる 今 後 これらの 暴 露 試 験 結 果 によ り 耐 用 年 数 の 予 測 を 行 う 予 定 である 4. まとめ (1) 埋 設 型 枠 工 法 を 適 用 した 供 試 体 に 対 し, 紫 外 線 蛍 光 灯 を 00 時 間 照 射 後 に 一 面 凍 結 融 解 300 サイクル 作 用 させた 結 果, 埋 設 型 枠 や 目 地 部 の 劣 化,および 母 材 コンクリートとの 付 着 性 や 母 材 コンクリート 自 体 の 超 音 波 伝 播 速 度 の 低 下 は 確 認 されず, 健 全 な 状 態 を 保 持 していた (2) 母 材 コンクリートの 塩 分 浸 透 分 析 結 果 から, 埋 設 型 枠 版 Bを 使 用 した 場 合 に, 型 枠 表 層 および 目 地 界 面 からの 塩 分 の 浸 透 が 確 認 され, 埋 設 型 枠 版 に 施 され る 樹 脂 の 含 浸 程 度 のばらつきなどが 影 響 していると 考 えられる (3) 自 体 の 引 張 強 度 や 伸 び 率 は, 低 温 下 では 大 き く 低 下 しないものの, 紫 外 線 照 射 による 低 下 が 大 き い (4) の 選 定 にあたっては, 特 に 伸 び 率 が 重 要 であ り, 紫 外 線 照 射 後 の 伸 び 率 の 低 下 状 況 から, 耐 候 性 に 優 れる を 選 定 した 伸 び 率 (%) 600 500 400 300 200 y = 34ln(x) + 541.79 y = 9.357ln(x) + 159.29 1 2 伸 び 率 (%) 600 500 400 300 200 y = 0.65x + 540 y = 295x + 158 1 2 0 0 0 y =.58ln(x) + 92.038 1 0 00 000 0000 紫 外 線 照 射 時 間 (サンシャインウェザオメーター) 0 y = 331x + 92 0 00 2000 3000 4000 5000 6000 紫 外 線 照 射 時 間 (サンシャインウェザオメーター) 図 -11 紫 外 線 照 射 時 間 と 伸 び 率 の 関 係 ( 対 数 ) 図 -12 紫 外 線 照 射 時 間 と 伸 び 率 の 関 係 ( 普 通 )