TRC EYE



Similar documents
<4D F736F F D208C6F D F815B90A BC914F82CC91CE899E8FF38BB582C982C282A282C42E646F63>

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

(Microsoft Word - \203A \225\345\217W\227v\227\314 .doc)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

学校安全の推進に関する計画の取組事例

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

18 国立高等専門学校機構

東京都立産業技術高等専門学校

PowerPoint プレゼンテーション

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

<4D F736F F D C482C682EA817A89BA90BF8E7793B1834B A4F8D91906C8DDE8A A>

自衛官俸給表の1等陸佐、1等海佐及び1等空佐の(一)欄又は(二)欄に定める額の俸給の支給を受ける職員の占める官職を定める訓令

東京事務所BCP【実施要領】溶け込み版

(別紙3)保険会社向けの総合的な監督指針の一部を改正する(案)

文化政策情報システムの運用等

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

リング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 に 係 る 繰 延 税 金 資 産 について 回 収 可 能 性 がないも のとする 原 則 的 な 取 扱 いに 対 して スケジューリング 不 能 な 将 来 減 算 一 時 差 異 を 回 収 できることを 反 証 できる 場 合 に 原 則

(Microsoft Word - \212\356\226{\225\373\220j _\217C\220\263\201j.doc)

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

<4D F736F F D C689D789B582B581698AAE90AC92CA926D816A2E646F63>

Taro-01 議案概要.jtd

スライド 1

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

スライド 1

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

独立行政法人国立病院機構呉医療センター医療機器安全管理規程

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

2. ど の 様 な 経 緯 で 発 覚 し た の か ま た 遡 っ た の を 昨 年 4 月 ま で と し た の は 何 故 か 明 ら か に す る こ と 回 答 3 月 17 日 に 実 施 し た ダ イ ヤ 改 正 で 静 岡 車 両 区 の 構 内 運 転 が 静 岡 運

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

<4D F736F F D2095BD90AC E D738FEE816A939A905C91E D862E646F63>

<4D F736F F D AC90D1955D92E CC82CC895E DD8C D2816A2E646F63>

Taro-学校だより学力調査号.jtd

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

(Microsoft Word - \220\340\226\276\217\221.doc)

(2) 支 状 況 保 育 所 ( 定 員 60 人 以 上 ) 支 状 況 は 次 とおりです 1 総 入 構 成 比 は 割 合 が88.1% 活 動 外 入 が2.1% 特 別 入 が9.8%でした 2 構 成 比 は 運 営 費 入 が80.1% 経 常 経 費 補 助 金 入 が17.8%

<4D F736F F D B8E968BC695E58F CA A2E646F63>

公表表紙

(現行版)工事成績書と評定表をあわせた_docx

<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>


Microsoft Word - 目次.doc

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

平成17年度高知県県産材利用推進事業費補助金交付要綱

資料 H3ロケットへの移行に関する課題と対応

・モニター広告運営事業仕様書

小山市保育所整備計画

<8BB388F58F5A91EE82A082E895FB8AEE967B95FB906A>

●電力自由化推進法案

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

m07 北見工業大学 様式①

0605調査用紙(公民)


<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインの改訂等について

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

主要生活道路について


これまでの 課 題 の 検 討 状 況 の 整 理 地 震 保 険 制 度 に 関 するプロジェクトチーム 報 告 書 ( 平 成 24 年 11 月 30 日 ) ( 附 属 物 の 損 害 査 定 ) 地 震 保 険 においては 迅 速 性 の 観 点 から 主 要 構 造 部 を 対 象 とし

がん専門病院における薬剤師養成のあり方に関する調査研究

小 売 電 気 の 登 録 数 の 推 移 昨 年 8 月 の 前 登 録 申 請 の 受 付 開 始 以 降 小 売 電 気 の 登 録 申 請 は 着 実 に 増 加 しており これまでに310 件 を 登 録 (6 月 30 日 時 点 ) 本 年 4 月 の 全 面 自 由 化 以 降 申

(2) 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 保 育 の 必 要 な 子 どものいる 家 庭 だけでなく 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 のために 利 用 者 支 援 事 業 や 地 域 子 育 て 支 援 事 業 な

( 別 途 調 査 様 式 1) 減 損 損 失 を 認 識 するに 至 った 経 緯 等 1 列 2 列 3 列 4 列 5 列 6 列 7 列 8 列 9 列 10 列 11 列 12 列 13 列 14 列 15 列 16 列 17 列 18 列 19 列 20 列 21 列 22 列 固 定

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

6 構 造 等 コンクリートブロック 造 平 屋 建 て4 戸 長 屋 16 棟 64 戸 建 築 年 1 戸 当 床 面 積 棟 数 住 戸 改 善 後 床 面 積 昭 和 42 年 36.00m m2 昭 和 43 年 36.50m m2 昭 和 44 年 36.

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

< F2D A C5817A C495B6817A>

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>

 

Microsoft Word - 19年度(行情)答申第076号.doc

提案書タイトルサブタイトルなし(32ポイント)

( 新 ) 医 療 提 供 の 機 能 分 化 に 向 けたICT 医 療 連 携 導 入 支 援 事 業 費 事 業 の 目 的 医 療 政 策 課 予 算 額 58,011 千 円 医 療 分 野 において あじさいネットを 活 用 したICT したICT 導 入 により により 医 療 機 能

通 知 カード と 個 人 番 号 カード の 違 い 2 通 知 カード ( 紙 )/H27.10 個 人 番 号 カード (ICカード)/H28.1 様 式 (おもて) (うら) 作 成 交 付 主 な 記 載 事 項 全 国 ( 外 国 人 含 む)に 郵 送 で 配 布 希 望 者 に 交

基 準 地 価 格 3 年 に1 度 審 議 直 近 ではH23 年 12 月 に 審 議 土 地 評 価 替 えの 流 れと 固 定 資 産 評 価 審 議 会 基 準 地 とは 土 地 評 価 の 水 準 と 市 町 村 間 の 均 衡 を 確 保 するための 指 標 となるものであり 各 市

新 行 財 政 改 革 推 進 大 綱 実 施 計 画 個 票 取 組 施 策 国 や 研 究 機 関 への 派 遣 研 修 による 資 質 向 上 の 推 進 鳥 インフルエンザ 等 新 たな 感 染 症 等 に 対 する 検 査 技 術 の 習 得 など 職 員 の 専 門

官 庁 営 繕 事 業 の 事 後 評 価 表 事 業 名 かいじょうほあんだいがっこう(そうごうじっしゅうとう) 海 上 保 安 大 学 校 ( 総 合 実 習 棟 ) 実 施 箇 所 呉 市 若 葉 町 5-1 該 当 基 準 事 業 完 了 後 3 年 間 が 経 過 した 事 業 事 業 諸

4 調 査 の 対 話 内 容 (1) 調 査 対 象 財 産 の 土 地 建 物 等 を 活 用 して 展 開 できる 事 業 のアイディアをお 聞 かせく ださい 事 業 アイディアには, 次 の 可 能 性 も 含 めて 提 案 をお 願 いします ア 地 域 の 活 性 化 と 様 々な 世

(3) 調 査 の 進 め 方 2 月 28 日 2 月 28 日 ~6 月 30 日 平 成 25 年 9 月 サウンディング 型 市 場 調 査 について 公 表 松 戸 市 から 基 本 的 な 土 地 情 報 サウンディングの 実 施 活 用 意 向 アイデアのある 民 間 事 業 者 と

大田市固定資産台帳整備業務(プロポーザル審査要項)

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

<91E682548FCD91E DF F323731>

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

第三十六号の二様式(第五条関係)(A4)

Microsoft Word 役員選挙規程.doc

Transcription:

64 東 京 海 上 日 動 リスクコンサルティング( 株 ) ERM 事 業 部 危 機 管 理 グループ 主 任 研 究 員 坂 本 陽 亮 リスクマネジメントにおける 意 思 決 定 と AHP はじめに リスクマネジメントにおいて 意 思 決 定 を 合 理 的 に 行 うためには 定 量 的 な 情 報 を 活 用 する 方 法 他 に も 定 性 的 な 情 報 活 用 も 有 用 である 本 稿 は 近 年 様 々な 意 思 決 定 に 活 用 されている AHP(Analytic Hierarchy Process: 階 層 分 析 法 )に 着 目 し リスクマネジメントにおける AHP 活 用 イメージについ てまとめたもである AHP とは 事 業 に 関 わる 専 門 家 等 知 見 ( 知 識 経 験 感 覚 事 例 等 )といった 定 性 的 な 評 価 を 数 値 化 することにより 合 理 的 な 意 思 決 定 へとつなげる 分 析 手 法 である 不 確 定 な 状 況 や 多 様 な 評 価 基 準 を 有 する 状 況 における 意 思 決 定 手 法 として 1971 年 に T.L.Saaty により 提 唱 された 日 本 においても これまでに 消 費 者 嗜 好 分 析 投 資 ポートフォリオ 構 築 政 策 立 案 における 市 民 意 識 調 査 等 多 く 分 野 において そ 活 用 研 究 が 進 められている また 近 年 では 医 療 事 故 対 策 や 情 報 セキュリ ティといった リスクに 関 する 分 野 においても 活 用 されつつある 手 法 である 1. 意 思 決 定 における 課 題 と AHP 通 常 意 思 決 定 においては 定 量 的 定 性 的 な 様 々な 情 報 をもとに 複 数 選 択 肢 から 最 適 と 思 われる 選 択 等 を 行 う 特 に 意 思 決 定 に 資 する 定 量 的 な 情 報 が 活 用 できる 場 合 は 多 く 人 にとっ て 分 かりやすく 複 数 選 択 肢 における 優 先 順 位 も 明 確 になるため 比 較 的 スムーズな 意 思 決 定 が 可 能 である 例 えば 人 口 統 計 GDP 販 売 価 格 株 価 等 定 量 的 な 情 報 をもとに 意 思 決 定 を 行 う 場 合 等 が 挙 げられる 一 方 で 実 際 には 定 量 的 な 情 報 だけでは 判 断 がつかない 定 量 的 な 情 報 活 用 が 困 難 であるとい ったケース 方 がはるかに 多 い そ 理 由 は 様 々であるが 例 えば 事 故 対 策 検 討 であれば 分 析 に 十 分 な 事 故 情 報 が 足 りない 海 外 進 出 先 決 定 であれば 政 治 労 務 面 カントリーリスク を 定 量 的 に 把 握 しかねる 等 が 挙 げられる 定 量 的 な 情 報 以 外 要 素 を 踏 まえて 意 思 決 定 する 場 合 には 意 思 決 定 に 関 わる 個 々 人 が 持 ってい る 知 見 ( 知 識 経 験 感 覚 事 例 等 )といった 定 性 的 な 情 報 が 大 きな 役 割 を 果 たす 一 般 的 には 会 議 中 議 論 や アンケート ヒアリング 等 を 用 いて 定 性 的 な 情 報 を 収 集 し 意 思 決 定 判 断 材 料 とする ただし 定 性 的 な 判 断 材 料 においては あいまいな 部 分 を 排 除 しきれないため いく つか 問 題 を 生 じることがある 具 体 的 には あくまで 例 であるが 以 下 ような 状 況 が 考 えられ る 1

( 状 況 例 ) サービスが 一 時 停 止 することにより 会 社 に 損 害 が 生 じるような あるシステム において 操 作 上 ミスが 複 数 発 生 しており 何 らか 対 策 が 求 められている ( 対 策 必 要 性 や それぞれ 策 効 果 について 意 見 ) システム 操 作 が 複 雑 なため どうしてもミスがでてしまう システム 改 良 を 行 って 欲 しい( 現 場 実 情 をよく 把 握 している 人 意 見 ) 他 社 事 例 では チェック 体 制 を 強 化 したところ ミスが 減 少 したという 話 がある まず は チェック 体 制 見 直 し を 行 ってはどうか( 業 界 他 社 動 向 をよく 把 握 している 人 意 見 ) 予 算 関 係 もあり システム 改 良 とチェック 体 制 強 化 を 同 時 に 行 うことは 難 しい マ ニュアル 拡 充 等 で 対 応 できないもか( 社 内 業 務 全 般 をよく 把 握 している 人 意 見 ) 上 記 ような 状 況 において ど 意 見 を 反 映 し どような 対 策 をとるべきかを 決 定 することは 非 常 に 難 しく 例 えば 以 下 ような 問 題 が 生 じることが 考 えられる 積 極 的 に 発 言 した 人 意 見 がたまたま 採 用 される 様 々な 意 見 があり 優 先 順 位 がつけられない こような 意 思 決 定 における 問 題 解 決 を 補 助 するツールとして AHP という 分 析 手 法 がある 上 記 で 触 れたように 意 思 決 定 においては 個 々 人 中 にある 知 見 等 をもとに 判 断 することが 必 要 と なることがあるが 定 性 的 であるこうした 情 報 を 合 理 的 に 踏 まえることは 難 しい そこで AHP で は 個 々 人 知 見 等 を 数 値 化 し 順 位 をつけて 比 較 ができるようにする これにより 例 えば 上 記 ようなケースにおいては システム 改 良 チェック 体 制 見 直 し マニュアル 拡 充 ど 選 択 肢 が 最 適 であるかを 分 かりやすく 導 き 出 すことが 可 能 となる. 意 思 決 定 における AHP 活 用 イメージ AHP を 活 用 した 意 思 決 定 フロー( 一 例 )を 図 表 1に 示 す 図 表 1: AHP を 活 用 した 意 思 決 定 フロー( 一 例 ) (1) 意 思 決 定 必 要 性 目 的 等 確 認 () 複 数 代 替 案 検 討 () 評 価 基 準 代 替 案 整 理 (4) 代 替 案 比 較 (5) 意 思 決 定 実 施 意 思 決 定 目 的 意 思 決 定 必 要 性 発 生 ( 事 故 発 生 等 ) 代 替 案 代 替 案 1 代 替 案 基 準 1 基 準 基 準 代 替 案 1 代 替 案 代 替 案 代 替 案 1 代 替 案 代 替 案 順 位 1 優 先 度 0. 選 択 する プラン( 代 替 案 ) 決 定 AHP は 階 層 分 析 法 とも 呼 ばれるが 意 思 決 定 における 選 択 肢 であるそれぞれ 代 替 案 ( 前 項 例 では システム 改 良 チェック 体 制 見 直 し マニュアル 拡 充 等 )について 優 先 度 を 求 めることができる 分 析 である 意 思 決 定 問 題 を 階 層 構 造 で 整 理 する () 評 価 基 準 代 替 案 整 理 と 代 替 案 ごと 優 先 度 を 数 値 で 表 す (4) 代 替 案 比 較 フローに 特 に 大 きな 特 長 がある () 評 価 基 準 代 替 案 整 理 においては それぞれ 代 替 案 と 代 替 案 優 先 度 を 決 定 する 要 素 となる 評 価 基 準 について 検 討 し 図 表 ような 階 層 構 造 に 整 理 する

図 表 : AHP における 階 層 構 造 整 理 意 思 決 定 目 的 ( 目 的 ) 基 準 1 基 準 基 準 ( 評 価 基 準 ) 代 替 案 1 代 替 案 代 替 案 ( 代 替 案 ) (4) 代 替 案 比 較 では それぞれ 代 替 案 について 優 先 度 数 値 化 を 行 う ここでは 評 価 基 準 間 重 み と それぞれ 評 価 基 準 からみた 代 替 案 間 重 み を 数 値 化 した 上 で 代 替 案 総 合 的 な 優 先 度 を 算 出 するという 処 理 を 行 う 処 理 イメージは 図 表 通 りとなる 図 表 : AHP における 代 替 案 優 先 度 算 出 処 理 イメージ 基 準 1 基 準 基 準 順 位 優 先 度 評 価 基 準 間 重 み 代 替 案 間 重 み 評 価 基 準 間 重 み 代 替 案 間 重 み 評 価 基 準 間 重 み 代 替 案 間 重 み 代 替 案 1 = 0.4 0. 代 替 案 代 替 案 1 0. = = 0.1 0.6 0.1 0. 0.4 0.4 それぞれ 評 価 基 準 から 見 た 代 替 案 間 重 み 評 価 基 準 間 重 み なお これら 重 み 数 値 化 について AHP では 一 般 的 に 個 々 人 中 にある 知 見 等 数 値 化 を 行 うことが 可 能 である 一 対 比 較 法 というアンケート 統 計 処 理 手 法 が 活 用 される( 本 稿 は AHP 概 要 を 整 理 することを 趣 旨 とし 行 列 計 算 数 式 等 で 解 説 されるこ 統 計 処 理 手 法 詳 細 な 説 明 は 割 愛 させて 頂 く) 以 上 が AHP 概 要 解 説 になるが これ 以 降 では 前 項 と 同 様 あるシステム 操 作 上 ミスに 対 する 対 策 検 討 という 想 定 で さらに 具 体 的 な 活 用 例 について 図 表 1(1)~(5) 流 れに 沿 って 紹 介 する( 念 ため 状 況 例 を 以 下 に 再 掲 する) ( 状 況 例 ) サービスが 一 時 停 止 することにより 会 社 に 損 害 が 生 じるような あるシステム において 操 作 上 ミスが 複 数 発 生 しており 何 らか 対 策 が 求 められている (1) 意 思 決 定 必 要 性 目 的 等 確 認 意 思 決 定 を 行 うにあたっては 必 要 性 目 的 等 を 検 討 した 上 で 分 析 方 法 等 を 決 定 し 意 思 決 定 フロー 全 体 を 設 計 することが 重 要 である ここでは 上 記 状 況 例 を 踏 まえ 以 下 目 的 ために 意 思 決 定 を 行 うもとする ミス 再 発 防 止 策 優 先 度 決 定 またここでは ミス 再 発 防 止 といったヒューマンエラーに 関 する 課 題 という 点 を 考 慮 し さらに 以 下 ような 観 点 を 踏 まえて 意 思 決 定 フローを 設 計 するもとする 再 発 防 止 策 観 点 から 洗 い 出 す 代 替 案 に 抜 け 漏 れが 無 いかどうかを 確 認 するため 4M4E 分 析 * を 活 用 して 検 討 を 行 う( () 複 数 代 替 案 検 討 パートに 関 連 )

洗 い 出 されたそれぞれ 再 発 防 止 策 優 先 度 を AHP を 活 用 して 検 討 する( () 評 価 基 準 代 替 案 整 理 (4) 代 替 案 比 較 パートに 関 連 ) 注 :* ヒューマンエラーに 関 して Man( 人 知 識 意 識 等 ) Machine( 機 械 操 作 性 等 ) Media( 作 業 環 境 等 ) Management( 管 理 等 ) 4 つ M 観 点 から 要 因 分 析 を 行 い Education( 教 育 訓 練 等 ) Engineering ( 機 械 機 能 インターフェース 改 良 等 ) Environment ( 作 業 環 境 改 善 等 ) Enforcement( 管 理 組 織 体 制 改 善 等 ) 4 つ E 観 点 から 防 止 策 を 検 討 する 分 析 手 法 () 複 数 代 替 案 検 討 AHP 分 析 においては 複 数 代 替 案 優 先 度 を 数 値 化 する こ 代 替 案 検 討 にあたって は 抜 け 漏 れが 無 いかどうかを 検 証 し 網 羅 的 に 洗 い 出 すために 例 えばマーケティング 分 野 における C(Customer Company Competitor) や 4P(Product Price Place Promotion) ような 一 般 的 なフレームワーク 等 を 活 用 する 方 法 も 効 果 的 である ここ 例 では 前 述 通 りヒューマンエラー 対 策 であるという 想 定 を 踏 まえ 4M4E 分 析 4E( 防 止 策 観 点 ) 等 を 参 考 に 教 育 訓 練 管 理 体 制 強 化 作 業 環 境 改 善 機 械 改 良 観 点 から 図 表 4ような 代 替 案 を 検 討 したもとする(システム 操 作 という 想 定 である が 4M4E 分 析 に 合 わせ ここでは 機 械 という 表 現 で 統 一 する) 図 表 4:AHP 活 用 案 における 代 替 案 検 討 結 果 教 育 訓 練 マニュアル 作 成 訓 練 実 施 意 識 啓 発 キャンペーン 実 施 管 理 体 制 強 化 作 業 環 境 改 善 機 械 改 良 チェック 体 制 強 化 勤 務 体 制 見 直 し 機 械 インターフェース 改 善 機 械 へミス 感 知 機 能 追 加 () 評 価 基 準 代 替 案 整 理 代 替 案 を 検 討 した 後 は 図 表 5ような 意 思 決 定 階 層 構 造 整 理 を 行 う 図 表 5:AHP 活 用 案 における 階 層 構 造 検 討 結 果 あるシステム 操 作 における 事 故 要 因 をふまえた ヒューマンエラー 対 策 優 先 度 (AHP 分 析 目 的 ) 人 行 動 管 理 体 制 作 業 環 境 機 械 操 作 性 ( 評 価 基 準 :ここでは 事 故 要 因 ) マ ニ ュ ア ル 作 成 訓 練 実 施 意 識 啓 発 キ ャ ン ペ ー ン 実 施 チ ェ ッ ク 体 制 強 化 勤 務 体 制 見 直 し 機 械 イ ン タ ー フ ェ ー ス 改 善 機 械 へ ミ ス 感 知 機 能 追 加 ( 代 替 案 ) こ 階 層 構 造 整 理 においてまず 必 要 となるが 評 価 基 準 整 理 である 評 価 基 準 について は 代 替 案 優 先 順 位 付 けに 影 響 する 要 素 を 検 討 して 決 定 することとなる 評 価 基 準 は AHP 結 4

果 に 大 きな 影 響 を 与 えるため 他 AHP 事 例 等 も 参 考 にする 等 慎 重 な 検 討 を 要 する なお ここでは 4M4E 分 析 4M(エラー 要 因 観 点 ) 等 フレームを 参 考 にして 人 行 動 管 理 体 制 作 業 環 境 機 械 操 作 性 という4つ 事 故 要 因 観 点 から 優 先 順 位 付 けを 行 うもとした さらに () 複 数 代 替 案 検 討 において 洗 い 出 した 代 替 案 とあわせ て 階 層 構 造 を 作 成 した (4) 代 替 案 比 較 階 層 構 造 を 作 成 した 後 は 一 対 比 較 法 等 アンケート 手 法 により 個 人 知 見 等 を 数 値 化 したデ ータや そ 他 定 量 的 なデータ 等 を 活 用 し 図 表 に 示 したような 流 れで それぞれ 代 替 案 重 み( 優 先 度 )を 数 値 化 して 代 替 案 優 先 順 位 を 明 確 にする (5) 意 思 決 定 実 施 代 替 案 比 較 により 示 される 優 先 度 優 先 順 位 を 踏 まえ 最 終 的 な 意 思 決 定 を 行 う. AHP メリットと 活 用 可 能 性 これまで 内 容 をまとめると AHP 活 用 特 長 としては 以 下 点 が 挙 げられる 個 々 人 中 にある 知 見 ( 知 識 経 験 感 覚 事 例 等 )を 数 値 化 することで 意 思 決 定 プ ロセス および 代 替 案 ごと 相 対 的 な 順 位 見 える 化 が 可 能 となる こ 特 長 により 積 極 的 に 発 言 した 人 意 見 がたまたま 採 用 される 様 々な 意 見 があり 優 先 順 位 がつけられない 等 問 題 解 決 助 けになる また こ 見 える 化 には そ 他 にも 以 下 よう なメリットも 期 待 できる 意 思 決 定 プロセスが 記 録 として 残 るため 後 プロセス 改 善 等 へ 活 用 が 可 能 となる 意 思 決 定 基 準 等 が 明 確 になるため 議 論 等 が 進 みやすくなる これら 特 長 メリットはもちろん リスクマネジメントにおける 意 思 決 定 においても 活 用 可 能 であると 考 えられる 例 えば 次 ような 場 面 においても AHP 活 用 が 可 能 ではないかと 筆 者 は 考 える 1 必 要 性 ( 重 大 性 ) 有 効 性 火 急 性 難 易 度 汎 用 性 等 複 数 要 素 を 合 理 的 に 踏 まえて 優 先 的 に 対 策 を 講 じるリスクを 特 定 したい 今 まで 起 きたことない 新 たな 事 故 発 生 に 際 して いくつか 必 要 な 再 発 防 止 策 を 洗 い 出 したが 全 てを 一 挙 に 行 うことは 困 難 であるため 対 策 優 先 順 位 付 けを 行 いたい 海 外 に 新 たに 工 場 を 設 置 する 用 地 を 探 しており いくつか 候 補 が 上 がっているが 政 治 労 務 面 カントリーリスクをどように 比 較 して 考 慮 したらよいか 悩 んでいる ここに 示 した 例 は 一 例 であるが そ 他 にも 安 全 ブランド 風 評 被 害 といった 一 般 的 に 定 量 化 が 難 しいとされるリスクにも こ AHP 見 える 化 という 特 長 を 活 用 する 余 地 がある と 考 えられる 以 上 ( 第 64 号 010 年 4 月 発 行 ) 5

参 考 文 献 山 中 真 ほか(008) 階 層 分 析 法 (AHP)を 用 いた 医 療 事 故 要 因 分 析 と 対 策 バイオメディカル ファジィ システム 学 会 誌 Vol.10,No. 福 山 浩 史 (008) 鉄 道 事 業 におけるリスク 評 価 手 法 適 用 試 み 社 会 技 術 研 究 論 文 集 Vol.5 茂 木 寿 (007) リスクマネジメント 構 築 マニュアル かんき 出 版 島 田 裕 次 ほか(007) 情 報 システム 監 査 におけるリスク 評 価 手 法 に 関 する 研 究 日 本 情 報 経 営 学 会 誌 Vol.8,No.1 木 下 栄 蔵 大 屋 隆 生 (007) 企 業 行 政 ため AHP 事 例 集 - 意 思 決 定 支 援 ツール 上 手 な 活 用 法 - 日 科 技 連 出 版 社 木 下 栄 蔵 大 屋 隆 生 (007) 戦 略 的 意 思 決 定 手 法 AHP 朝 倉 書 店 早 稲 田 大 学 経 営 リスク 研 究 会 (005) ビジネスリスク 分 析 入 門 -モンテカルロ シュミレーショ ン 応 用 事 例 早 稲 田 大 学 出 版 部 中 部 電 力 (004) 技 術 開 発 ニュース No.111 系 統 運 用 業 務 へヒューマンファクタ 適 用 研 究 木 下 栄 蔵 (000) AHP 理 論 と 実 際 日 科 技 連 出 版 社 鈴 木 順 二 郎 ほか(198) FMEA FTA 実 施 法 日 科 技 連 出 版 社 6