2011.4
NIRA 財 政 再 建 研 究 会 報 告 書 財 政 再 建 の 道 筋 震 災 を 超 えて 次 世 代 に 健 全 な 財 政 を 引 継 ぐために エグゼクティブサマリー NIRA 理 事 長 / 東 京 大 学 大 学 院 経 済 学 研 究 科 教 授 伊 藤 元 重 経 済 低 迷 の 長 期 化 や 急 速 な 高 齢 化 等 を 背 景 として 日 本 の 財 政 状 況 は 悪 化 の 一 途 をたど っており それが 国 債 市 場 に 及 ぼす 影 響 への 懸 念 が 高 まっている また 震 災 を 契 機 とし て 財 政 問 題 がどのように 変 容 していくのかを 検 討 しておくことも 重 要 である 本 報 告 書 では これらの 問 題 についての 論 点 整 理 を 行 うとともに 次 世 代 に 健 全 な 財 政 を 引 継 ぐた めに 必 要 となる 財 政 再 建 のあるべき 姿 や 進 め 方 について 政 策 提 言 を 行 った (1) 震 災 からの 復 興 と 財 政 再 建 の 両 立 震 災 からの 復 興 を 最 優 先 で 行 うため 巨 額 の 財 政 資 金 の 投 入 が 必 要 となるが これによ り 既 に 厳 しい 状 況 にある 日 本 の 財 政 への 負 荷 はさらに 重 くなる 復 興 資 金 の 捻 出 と 財 政 再 建 を 両 立 させるため 以 下 の 三 つの 方 向 での 検 討 を 行 うべきである 1 既 存 歳 出 の 見 直 し 復 興 のための 資 金 という 緊 急 性 の 高 い 財 政 支 出 を 可 能 にするため マニフェストを 含 む 既 存 歳 出 を 大 幅 に 見 直 す 2 復 興 債 の 活 用 日 本 の 復 興 に 少 しでも 関 わりたいという 国 民 の 意 識 の 結 集 を 図 るため できるだけ 多 く の 国 民 が 復 興 債 に 資 金 を 出 していく 誘 因 を 持 てるような 仕 組 みを 工 夫 する 3 復 興 税 の 導 入 復 興 財 源 を 捻 出 するための 一 時 的 な 措 置 に 止 まらず 日 本 の 長 期 的 な 税 のあるべき 姿 に つながるような 復 興 税 を 導 入 する このため 消 費 税 率 の 引 き 上 げや 炭 素 税 (あるいは 電 力 税 )の 導 入 などを 行 い 復 興 税 としての 役 割 が 終 了 した 後 は 社 会 保 障 目 的 の 消 費 税 や 環 境 目 的 の 環 境 税 などにシフトさせていく (2) 国 債 価 格 暴 落 のリスクについての 評 価 債 務 残 高 が 高 水 準 にあるにも 関 わらず 国 債 市 場 が 安 定 しているのは 低 成 長 やデフレ - 1 - -1-
を 背 景 として 家 計 や 企 業 の 余 剰 資 金 が 金 融 機 関 等 を 経 由 して 国 債 市 場 に 流 れ 込 んでいる ことによる 財 政 問 題 は 政 府 の 長 期 的 な 歳 入 歳 出 のバランスの 問 題 であると 同 時 に 短 期 中 期 のマクロ 経 済 問 題 金 融 市 場 の 問 題 でもある 今 後 の 国 債 市 場 の 動 向 を 見 通 す 上 では 以 下 のような 点 を 注 視 していくことが 必 要 である 1 世 界 的 なインフレへの 兆 候 新 興 国 を 中 心 とした 経 済 の 過 熱 や 一 次 産 品 価 格 の 高 騰 等 を 背 景 に 先 進 国 においても 物 価 上 昇 への 懸 念 が 生 じている 世 界 的 にインフレ 的 な 動 きが 顕 著 となり 長 期 金 利 が 上 昇 し た 場 合 に 日 本 にどのような 影 響 をもたらすかに 留 意 する 必 要 がある 2 震 災 が 国 債 市 場 に 与 える 影 響 震 災 復 興 のための 財 政 支 出 の 増 加 により 国 債 市 場 は 新 たな 負 荷 を 受 けることになる また 震 災 の 影 響 による 供 給 制 約 や 復 興 需 要 の 増 加 によりデフレ 状 況 が 解 消 されていけば 長 期 金 利 にも 上 昇 圧 力 がかかる 金 利 は 将 来 の 物 価 上 昇 の 予 想 を 織 り 込 んで 物 価 よりも 早 いタイミングで 上 昇 するであろうことから 財 政 に 与 える 負 荷 も 大 きくなる 可 能 性 がある 3 政 府 による 財 政 健 全 化 の 意 志 と 能 力 これまで 提 起 されてきた 財 政 健 全 化 策 が 景 気 低 迷 のたびに 頓 挫 してきた 歴 史 は 政 治 や 国 民 の 財 政 健 全 化 への 意 志 と 能 力 が 決 して 強 いものでないことを 示 唆 している 国 債 価 格 が 暴 落 するような 事 態 に 陥 る 前 に 政 治 が 財 政 健 全 化 を 実 現 するための 政 策 展 開 を 決 断 し それを 国 民 が 支 持 するかどうかが 問 われている (3) 財 政 再 建 のあるべき 姿 進 め 方 日 本 の 財 政 再 建 のために 与 えられた 時 間 は 非 常 に 限 られていることから 早 急 に 財 政 再 建 の 道 筋 を 示 し 市 場 の 信 頼 を 獲 得 していくことが 重 要 である その 際 社 会 保 障 分 野 の 改 革 と 税 制 の 見 直 しが 鍵 となるが 特 に 以 下 のような 点 を 重 視 していくべきである 1 社 会 保 障 における 公 的 関 与 の 選 択 と 集 中 少 子 高 齢 化 が 進 む 中 で 税 財 源 を 活 用 した 公 助 の 機 能 を 最 大 限 に 発 揮 するためには 社 会 保 障 制 度 の 思 い 切 った 重 点 化 が 必 要 である その 上 で 国 民 による 自 助 や 共 助 を 最 大 限 に 活 用 し 民 間 の 経 済 活 動 を 動 員 するための 政 策 支 援 を 行 うべきである 2 モラルハザードを 防 ぐための 制 度 設 計 医 療 や 介 護 において 公 的 な 支 援 制 度 が 過 剰 な 受 診 やサービス 利 用 等 のモラルハザード を 起 こさないように 制 度 設 計 を 行 うべきである 3 次 世 代 に 健 全 な 財 政 を 引 継 ぐ 将 来 世 代 に 過 度 なつけを 残 すことにならないよう 社 会 保 障 改 革 や 税 制 改 革 を 迅 速 に 行 い 現 世 代 のうちにできるだけ 健 全 な 社 会 保 障 制 度 や 財 政 基 盤 を 確 立 するべきである - 2 - -2-
( 各 論 ) 第 1 章 国 債 問 題 に 関 する 論 点 整 理 - 国 債 暴 落 不 安 は 狼 少 年 か? 日 本 国 債 への 不 安 暴 落 説 は 過 去 10 年 以 上 にわたり 語 られてきたが その 割 に 国 債 市 場 は 安 定 した 状 況 が 続 いている この 背 景 には 1990 年 代 後 半 以 降 のバランスシート 調 整 やデフレの 中 で 中 央 銀 行 が 量 的 緩 和 を 行 っても 企 業 向 けの 貸 出 は 減 少 し 金 融 機 関 にお ける 余 剰 資 金 が 国 債 市 場 に 向 かったことがある また 日 本 の 財 政 赤 字 の 規 模 は 極 めて 大 きいものの 経 常 収 支 の 黒 字 が 継 続 し 必 要 な 財 政 資 金 を 概 ね 国 内 で 調 達 できることが このような 安 定 をもたらしたといえる 日 本 政 府 が 大 幅 な 債 務 超 過 状 態 にあるにも 関 わらず 金 融 機 関 が 国 債 への 投 資 を 続 けて きたのは 日 本 の 租 税 負 担 率 が 国 際 水 準 と 比 して 極 めて 低 く 追 加 的 に 生 じ 得 る 収 支 改 善 能 力 を 見 込 んでいることによる しかし 実 際 に 増 税 を 実 行 できるかどうかについては 不 確 実 性 が 存 在 しているほか 国 債 残 高 が 増 加 し その 消 化 能 力 の 限 度 が 市 場 に 意 識 される 中 では 国 債 への 不 安 を 単 純 に 狼 少 年 として 片 づけることはできなくなってきている このような 中 で 国 債 の 持 続 可 能 性 を 保 つためには CCC :Communication( 市 場 と の 対 話 ) Creditability( 中 長 期 的 再 建 の 道 筋 を 示 す 国 債 版 マニフェスト ) Coordination ( 市 場 政 府 日 銀 の 協 調 による 国 債 版 三 位 一 体 )を 重 視 していくことが 必 要 である また 国 債 残 高 の 調 整 は 国 債 暴 落 のようなドラマによってではなく 成 長 シナリオに よる 償 還 原 資 の 創 出 と 財 政 再 建 によって 着 実 に 行 っていくべきである ( 高 田 創 ) 第 2 章 失 敗 の 歴 史 に 何 を 学 ぶのか- 財 政 危 機 / 破 綻 の 主 要 事 例 と 日 本 への 教 訓 日 本 の 財 政 状 況 が 悪 化 の 一 途 を 辿 る 中 で 危 機 管 理 的 な 観 点 から 万 が 一 日 本 が 財 政 危 機 / 破 綻 に 陥 るとした 場 合 の 契 機 影 響 政 策 対 応 等 について 思 考 訓 練 を 行 うことには 一 定 の 意 義 がある このため 内 外 における 財 政 危 機 / 破 綻 の 主 要 事 例 の 比 較 検 討 を 通 じて 日 本 への 教 訓 を 導 き 出 すことを 試 みた これによると 1 日 本 の 財 政 はこれらの 事 例 と 同 様 ないしそれ 以 上 に 歳 出 の 膨 張 に 対 す る 歯 止 めを 失 っており 必 要 な 改 革 が 先 送 りされていること 2 多 くの 事 例 において 経 済 や 財 政 の 持 続 可 能 性 に 対 する 市 場 の 信 認 の 喪 失 が 危 機 発 生 の 契 機 となっており 常 にそ の 維 持 向 上 に 努 めることが 重 要 であること 3 国 債 保 有 が 国 内 金 融 機 関 に 集 中 している 日 本 においては 財 政 危 機 / 破 綻 は 金 融 システム 危 機 に 波 及 するリスクが 高 く 金 融 機 関 の リスク 管 理 の 強 化 や 国 債 保 有 の 分 散 化 を 進 める 必 要 があること 4 財 政 危 機 / 破 綻 を 通 じた 問 題 解 決 のコストは 非 常 に 高 くつくことから 秩 序 ある 再 建 を 粘 り 強 く 続 ける 必 要 があ ること 5 財 政 危 機 からの 脱 却 の 成 否 は 国 民 の 健 全 な 危 機 意 識 と 政 治 のリーダーシップの あり 方 如 何 にかかっていること などが 重 要 な 教 訓 として 挙 げられる これらの 事 例 と 現 在 の 日 本 を 単 純 には 比 較 できないが 慢 心 すれば 同 様 の 失 敗 を 犯 す 可 能 性 は 高 い これらの 教 訓 を 踏 まえ 市 場 の 圧 力 によってではなく 自 律 的 に 財 政 再 建 を 進 めていくことが 重 要 である ( 太 田 哲 生 ) - 3 - -3-
第 3 章 財 政 再 建 の 進 め 方 考 え 方 -シーリング 設 定 と 財 政 赤 字 課 税 財 政 再 建 を 進 める 上 で 効 果 的 なシーリング 設 定 のあり 方 を 政 治 経 済 学 の 枠 組 みで 検 討 す るため ハード 予 算 制 約 とソフト 予 算 制 約 の 2 つのケースを 比 較 して 経 済 厚 生 に 与 える 効 果 を 分 析 した これによると ハードな 予 算 制 約 にコミットした 場 合 には 将 来 世 代 や 財 政 再 建 に 関 心 のある 現 在 世 代 のみならず 関 心 のない 現 在 世 代 にとっても 有 益 になるケ ースがあり 得 る 他 方 ソフトな 予 算 制 約 の 下 で 関 心 のない 個 人 等 の 数 が 多 く 既 得 権 獲 得 行 動 が 非 効 率 である 場 合 には 既 得 権 の 増 加 により 財 政 が 大 きく 悪 化 することから 前 者 だけでなく 後 者 にとってもマイナスとなり 得 る これは 財 政 再 建 が 成 功 するために はシーリング 設 定 のタイミングが 重 要 であり 事 前 に 設 定 したシーリングに 極 力 コミット して それを 安 易 に 見 直 さないことが 重 要 であることを 示 唆 している さらに 財 政 再 建 を 有 効 に 進 めるためには 財 政 赤 字 が 拡 大 した 場 合 ( 一 定 期 間 後 に) 歳 出 削 減 や 増 税 が 実 施 されるという 財 政 再 建 ルールを 組 み 込 むことも 有 益 である この 下 では 財 政 赤 字 の 拡 大 に 応 じて 課 税 等 も 増 加 することを 経 済 主 体 が 予 測 するので 既 得 権 獲 得 行 動 が 抑 制 されるほか 将 来 に 負 担 を 先 送 りすると 増 税 圧 力 も 大 きくなるので 自 発 的 に 財 政 再 建 に 協 力 する 誘 因 が 大 きくなる このように 財 政 再 建 プロセスを 財 政 ルールで 拘 束 することが 重 要 であるが これが 有 効 に 機 能 するかは 決 定 された 縛 りにどこまで 政 治 家 や 有 権 者 が 従 うかに 依 存 する 将 来 世 代 に 配 慮 した 長 期 的 な 視 点 を 重 視 する 政 策 を 実 施 できるかが 問 われている ( 井 堀 利 宏 ) 第 4 章 財 政 再 建 を 成 功 させるための 財 政 規 律 のあり 方 - 諸 外 国 の 事 例 と 日 本 への 含 意 民 主 主 義 の 下 では 財 政 支 出 の 拡 大 や 減 税 といった 財 政 赤 字 の 拡 大 圧 力 がかかりやすいこ とから 財 政 再 建 に 対 する 強 いコミットメントが 必 要 となる このため 欧 米 主 要 国 は 予 算 編 成 過 程 に 適 切 な 財 政 規 律 を 盛 り 込 むことなどからなる 予 算 制 度 改 革 を 行 ってきた 財 政 規 律 には ルール によるものと 裁 量 によるものがあるが 1990 年 代 において はルール 設 定 型 の 財 政 運 営 が 主 流 となった すなわち キャップ 制 や ペイアズユーゴ ー 原 則 のような 財 政 ルールの 導 入 が 行 われたほか EU 加 盟 国 においてはマーストリヒ ト 条 約 に 基 づき 財 政 赤 字 や 債 務 残 高 の GDP 比 に 上 限 が 設 定 され 財 政 健 全 化 に 大 きな 効 果 を 発 揮 した 日 本 においても 1997 年 の 財 政 構 造 改 革 法 や 2001 年 以 降 の 骨 太 の 方 針 により 財 政 健 全 化 目 標 が 設 定 されたが いずれも 景 気 の 急 速 な 悪 化 により 目 標 は 撤 回 された 民 主 党 政 権 により 策 定 された 財 政 運 営 戦 略 においても 基 礎 的 財 政 収 支 の 黒 字 化 や 政 府 債 務 残 高 GDP 比 の 引 下 げといった 財 政 健 全 化 目 標 やペイゴー 原 則 等 の 財 政 規 律 が 明 記 されて いるが それを 実 現 するための 具 体 策 については 十 分 に 示 されていない 望 ましい 財 政 規 律 の 条 件 として 目 標 の 透 明 性 景 気 変 動 に 対 する 柔 軟 性 実 効 性 の 確 保 の3 点 が 挙 げられるが 同 戦 略 については 特 に 実 効 性 の 確 保 の 面 で 抜 本 的 な 補 強 を 図 ることが 必 要 と 思 われる ( 下 井 直 毅 ) - 4 - -4-
第 5 章 社 会 保 障 税 一 体 改 革 の 視 点 - 年 金 改 革 は 個 人 の 自 助 努 力 支 援 と 組 み 合 わせて 社 会 保 障 税 一 体 改 革 を 行 う 上 では 社 会 保 障 の 中 身 の 拡 充 と 財 政 再 建 という2つの 課 題 の 整 合 性 をどう 取 るかが 重 要 であり 社 会 保 障 制 度 の 効 率 化 を 併 せて 進 めていく 必 要 が ある 欧 州 諸 国 における 年 金 制 度 改 革 は 公 的 年 金 の 改 革 と 併 せて 企 業 年 金 や 個 人 年 金 と いった 私 的 年 金 の 拡 充 改 革 を 行 ってきており わが 国 においてもこれらを 参 考 に 個 人 の 自 助 努 力 を 前 提 とした 新 たな 制 度 の 導 入 を 検 討 するべきである 具 体 的 には 公 的 年 金 企 業 年 金 を 補 完 し 自 助 努 力 による 老 後 の 資 産 形 成 を 支 援 する ため 個 人 単 位 による 年 金 積 立 金 非 課 税 制 度 ( 日 本 版 IRA)を 創 設 することを 提 言 する これは 国 民 が 国 や 企 業 に 依 存 せず 自 助 努 力 で 資 産 形 成 を 行 うことを 節 度 ある 税 制 優 遇 措 置 により 支 援 する 制 度 であり これにより 公 的 年 金 企 業 年 金 の 不 足 分 を 補 うとともに 企 業 倒 産 の 影 響 やポータビリティに 関 わる 問 題 の 解 消 企 業 間 や 世 代 内 の 不 公 平 の 解 消 等 を 図 る 効 果 が 期 待 される 年 金 税 制 については 貯 蓄 に 対 する 税 制 として 簡 潔 明 瞭 で 制 度 導 入 時 に 減 税 が 生 じないので 財 政 負 担 が 軽 い 等 のメリットを 有 する TEE 型 ( 拠 出 時 課 税 運 用 時 給 付 時 非 課 税 )とするべきである 限 られた 公 費 を 有 効 に 活 用 するため 日 本 版 IRA の 導 入 などの 私 的 年 金 制 度 を 充 実 させ ることにより 国 民 負 担 増 を 軽 減 し 世 代 間 の 不 公 平 を 緩 和 することが 必 要 である ( 森 信 茂 樹 ) 第 6 章 財 政 社 会 保 障 改 革 に 関 するシミュレーション 分 析 社 会 保 障 の 中 身 の 拡 充 と 財 政 再 建 の 整 合 性 をどう 取 るかという 問 題 を 定 量 的 に 検 証 する ため マクロ 計 量 モデルを 用 いたシミュレーションを 行 った その 際 現 実 的 に 実 現 可 能 な 消 費 税 率 の 引 き 上 げ 幅 には 一 定 の 上 限 があることから その 範 囲 内 (ここでは 短 期 中 長 期 でそれぞれ 10% 15%と 仮 定 )で 財 政 再 建 と 最 低 保 障 年 金 の 導 入 を 行 うための 選 択 肢 についても 検 証 を 行 った これによると 2020 年 度 に 国 地 方 政 府 の 基 礎 的 財 政 収 支 を 均 衡 化 し さらに 政 府 債 務 残 高 GDP 比 の 水 準 を 引 き 下 げるという 財 政 運 営 戦 略 の 目 標 を 達 成 するためには 2020 年 度 にかけて 消 費 税 率 をそれぞれ 16% 程 度 22% 程 度 にまで 引 き 上 げることが 必 要 である したがって 消 費 税 率 の 上 限 の 下 で 財 政 再 建 を 行 うためには 相 当 な 規 模 での 追 加 的 収 支 改 善 努 力 が 必 要 となる 同 様 に 上 限 の 範 囲 内 での 消 費 税 率 引 き 上 げによる 増 収 分 を 財 源 とする 最 低 保 障 年 金 の 給 付 水 準 について 試 算 を 行 ったところ 所 得 に 関 係 なく 一 律 に 給 付 した 場 合 には 現 行 の 基 礎 年 金 の 給 付 額 をかなり 下 回 ることが 示 された 他 方 最 低 保 障 年 金 に 大 規 模 なクローバ ックを 導 入 するケースでは 満 額 支 給 対 象 者 に 対 しては 現 行 の 基 礎 年 金 を 上 回 る 給 付 水 準 となり 得 ることが 示 された このように 現 実 的 に 実 現 可 能 と 考 えられる 税 負 担 の 範 囲 内 で 財 政 再 建 や 最 低 保 障 年 金 の 導 入 を 行 うことはそれほど 容 易 なことではなく 追 加 的 な 収 支 改 善 や 給 付 の 重 点 化 を 併 せ て 行 うことが 必 要 である ( 佐 藤 格 ) - 5 - -5-
図 表 国 地 方 政 府 の 公 債 残 高 対 GDP 比 の 見 通 し 350 (%) 300 250 基 準 ケース 2020 年 度 以 降 プライマリーバランスが 均 衡 するケース 同 公 債 残 高 対 GDP 比 が 減 少 するケース 消 費 税 率 5% 維 持 2020 年 度 までに 消 費 税 率 16% 程 度 200 同 22% 程 度 150 2010 2012 2014 2016 2018 2020 2022 2024 2026 2028 2030 ( 年 度 ) ( 注 )マクロ 計 量 モデルによるシミュレーション 結 果 ( 第 6 章 )の 一 部 本 件 に 関 するご 連 絡 先 : 公 益 財 団 法 人 総 合 研 究 開 発 機 構 研 究 調 査 部 総 括 主 任 研 究 員 太 田 Tel 03-5448-1714 本 報 告 書 の 全 文 は NIRA ホームページでご 覧 いただけます NIRA 研 究 報 告 書 財 政 再 建 の 道 筋 - 震 災 を 超 えて 次 世 代 に 健 全 な 財 政 を 引 継 ぐために- http://www.nira.or.jp/pdf/1101report.pdf - 6 - -6-