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研 究 ノート 生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 糸 井 江 美 Needs Analysis for Lifelong Learners of English ITOI, Emi 要 旨 : 受 講 者 が 満 足 する 語 学 コースを 作 るには 適 切 なニーズ 分 析 が 欠 かせない 大 学 と 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 二 つの 英 会 話 ク ラスの 受 講 者 を 対 象 にニーズ 分 析 を 実 施 した 両 グループ 共 に 最 も 伸 ばしたいスキルはスピーキングの 力 であった 絵 本 を 授 業 で 使 った 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 グループでは 翌 年 度 にも 絵 本 を 使 用 し たい 希 望 が 多 かった 大 学 の 生 涯 学 習 課 グループとは 質 問 紙 調 査 の 結 果 について 話 し 合 いを 行 った その 結 果 海 外 旅 行 の 他 にもさま ざまな 理 由 で 英 語 を 学 んでいることや スピーキングの 力 が 伸 びる ことは 諦 めている 人 や リーディングの 力 は 充 分 にあるのでそれ 以 上 勉 強 する 必 要 性 を 感 じていない 人 などがいることが 分 かった キーワード: 生 涯 学 習, 高 齢 者, 英 語,ニーズ 分 析, 絵 本 1 はじめに 語 学 コースを 開 講 する 準 備 段 階 として あるいはコースの 過 程 や 終 了 時 において 主 催 者 や 指 導 者 が 考 慮 すべきことの 一 つに 学 習 者 のニーズがある 学 習 者 のニーズを 正 確 に 知 ることによって 学 習 者 のニーズに 合 った 適 切 な 教 材 タスク 評 価 方 法 などを 考 慮 したコース 作 りや コース 途 中 にお ける 軌 道 修 正 が 可 能 となる(Dudley-Evans & M. J. St John, 1998) しかし 実 際 には 時 間 的 な 制 約 や 指 導 者 の 認 識 不 足 からニーズ 分 析 を 実 施 しない 171

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 場 合 や 学 習 者 自 身 が 自 分 のニーズを 正 確 に 把 握 しておらず 必 要 な こと(needs) 欲 すること(wants) 不 足 していること(lacks) の 区 別 ができていない 場 合 がある(Kavaliauskiene & Užpaliene, 2003) 学 習 者 の 満 足 度 を 高 めるために 教 師 はニーズ 分 析 の 意 義 や 方 法 を 理 解 するだけでなく 学 習 者 にもその 意 義 を 理 解 してもらい 有 益 な 情 報 提 供 に 協 力 してもらうことが 重 要 だ 本 研 究 ノートの 目 的 は 二 つの 英 語 クラ ス( 大 学 の 生 涯 学 習 課 と 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 英 語 クラス)の 参 加 者 を 対 象 に 実 施 したニーズ 分 析 の 結 果 から 生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 について 今 後 の 研 究 課 題 をいくつか 示 すことである 1.1 ニーズ 分 析 とは 語 学 学 習 者 のニーズ 分 析 とは 学 習 者 が 既 に 知 っていることや 実 際 にで きること そしてこれから 学 びたいことやできるようになりたいことを 質 問 したり 観 察 したりすることによって 探 り 出 し それをその 後 の 授 業 に 活 かすことである 研 究 者 によって ニーズ 分 析 の 定 義 には 幅 があり 例 え ば 英 語 教 育 用 語 辞 典 ( 白 畑 他, 1999; p.202)のneeds analysis(ニーズ 分 析 ) の 項 目 では 学 習 者 が 将 来 どのような 目 的 や 状 況 で 外 国 語 を 使 うように なるのかを 予 測 し それをもとにどのような 言 語 能 力 を 伸 ばす 必 要 がある のかを 分 析 すること と 定 義 されている ニーズ 分 析 の 中 でも 将 来 学 習 者 が 目 標 言 語 を 使 う 状 況 を 特 定 し そ れに 基 づいてニーズ 分 析 を 行 うものは 目 標 状 況 分 析 と 呼 ばれ(target situation analysis) 教 師 の 観 点 から 見 た 客 観 的 認 識 的 成 果 志 向 のニー ズを 対 象 とする どのように 学 ぶか どのように 動 機 付 けられるのかを 分 析 する 学 習 状 況 分 析 (learning situation analysis)では 学 習 者 が 持 つ 主 観 的 感 覚 的 過 程 志 向 のニーズを 対 象 とする また 現 状 分 析 (present situation analysis)では 学 習 者 が 持 っているその 時 点 での 言 語 能 力 スキル 学 習 経 験 における 強 み 弱 点 などを 対 象 に 分 析 する(Dudley-Evans & M. J. St John, 1998) 172

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 ニーズ 分 析 の 目 的 は 学 習 者 を 人 間 として 言 語 使 用 者 として そして 言 語 学 習 者 として 知 ること 言 語 /スキル 習 得 の 最 大 効 果 を 生 むにはどう すればよいかを 知 ること そして データを 正 しく 解 釈 するために 学 習 が 行 われている 状 況 や 環 境 を 知 ることであると 言 えるが(Dudley-Evans & M. J. St John, 1998) 言 語 の 使 用 目 的 や 学 習 が 行 われている 状 況 や 環 境 は 学 習 者 によってどう 違 うのかをまず 教 師 は 正 しく 認 識 することが 重 要 だ 例 えば 移 民 が 英 語 を 第 二 言 語 として 学 ぶ 場 合 や ある 特 定 の 目 的 のため に 英 語 を 学 ぶESP(English for Specific Purposes)のような 状 況 では ニー ズ 分 析 の 要 素 には 以 下 の8 項 目 が 含 まれる(Dudley-Evans & M. J. St John, 1998; p.125) : 1. 学 習 者 に 関 する 仕 事 の 情 報 :どんな 仕 事 や 活 動 に 英 語 を 使 用 するのか 2. 学 習 者 の 個 人 的 な 情 報 : 過 去 の 学 習 経 験 文 化 的 背 景 コースを 取 る 理 由 コースへの 期 待 英 語 への 態 度 3. 学 習 者 のその 時 点 での 英 語 力 4. 学 習 者 に 欠 けている 点 :1.と3.のギャップ 5. 言 語 学 習 に 関 する 情 報 : 必 要 なスキルを 習 得 するのに 効 果 的 な 方 法 6. 職 場 で 使 用 されている 言 語 とスキルに 関 する 知 識 : 言 語 /ディスコー ス/ジャンル 分 析 7. 学 習 者 がコースから 何 を 望 んでいるか 8.クラスを 取 り 巻 く 学 習 環 境 に 関 する 情 報 言 語 の 使 用 目 的 を 重 視 したESP(English for Specific Purposes) 分 野 で は ニーズ 分 析 は 礎 石 であり 分 析 を 正 しく 行 うことによって 目 的 達 成 の ために 焦 点 が 絞 られたコース 作 りができる(Dudley-Evans & M. J. St John, 1998) しかし 具 体 的 な 目 的 を 持 って 英 語 を 学 んでいる 人 は 殆 んどいな いと 思 われる 日 本 の 生 涯 学 習 課 で 学 ぶ 学 習 者 にとっても ニーズ 分 析 は 重 要 な 意 味 がある なぜならば たとえ 英 語 学 習 が 趣 味 の 一 つであり 英 語 173

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 の 授 業 を 受 けること 自 体 が 目 的 となっていたとしても 学 習 者 はそれぞれ 違 う 学 習 経 験 や 学 習 スタイルを 持 っており 授 業 に 対 する 期 待 もさまざま だからだ(Oxford & Ehrman, 1992) 従 って 可 能 な 限 り 学 習 者 の 満 足 度 を 高 めるには 学 習 者 に 関 する 情 報 を 得 るためのニーズ 分 析 が 重 要 な 意 味 を 持 っているといえる グレイブズ(Graves, 2000)は 日 本 で 主 婦 に 英 語 を 教 えた 経 験 から 英 語 を 外 国 語 として 教 える 場 合 学 習 者 の 興 味 経 験 背 景 などの 情 報 を 得 て それに 関 連 したシラバスを 作 成 することが 重 要 だ と 主 張 している 1.2 ニーズ 分 析 の 為 の 情 報 収 集 方 法 理 論 上 ニーズ 分 析 の 過 程 は 以 下 のステップが 繰 り 返 されるサイクルで ある(Graves, 2000; p.100): 1. 集 める 情 報 は 何 か 何 故 その 情 報 が 必 要 なのかを 決 める; 2. 必 要 な 情 報 を 収 集 する 最 適 の 方 法 を 決 める(い つ どのように 何 から 誰 から 収 集 するのか); 3. 情 報 を 収 集 する; 4. 情 報 を 解 釈 する; 5. 解 釈 に 従 い 行 動 する; 6. 起 こした 行 動 の 効 果 や 影 響 を 評 価 する; 7. 新 しく 集 める 情 報 を 決 める ニーズ 分 析 に 割 ける 時 間 は 限 られているため 最 初 のステップで 集 める 情 報 を 決 定 する 際 目 的 に 合 った 情 報 を 選 択 し 効 率 良 く 集 める 必 要 があ る つまり 活 用 できることが 分 かっている 情 報 だけを 集 めることが 大 切 だ 例 えば 授 業 の 目 的 がリーディングの 力 を 付 けることの 場 合 スピー キングの 力 に 関 する 質 問 をすることは 直 接 授 業 の 目 的 に 合 っていないこと になり 設 問 に 答 える 学 習 者 の 混 乱 を 生 むことにもなりかねない また 教 師 としてある 特 定 の 学 習 方 法 が 効 果 的 であると 信 じている 場 合 その 学 習 方 法 に 関 する 学 習 者 の 経 験 や 態 度 を 知 ることが 重 要 となってくるかもし れない さらに 年 齢 学 歴 家 族 構 成 などの 個 人 的 な 情 報 が 必 要 な 場 合 は 個 人 情 報 保 護 を 第 一 に 考 え 学 習 者 の 理 解 を 得 ることが 必 要 である ニーズ 分 析 のための 情 報 は 学 習 者 のみならず 学 習 者 の 家 族 や 友 だち 以 前 の 受 講 者 研 究 論 文 や 関 係 文 書 などからも 収 集 することができる ま 174

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 たニーズ 分 析 の 方 法 は 質 問 紙 を 使 ったアンケート 調 査 以 外 にも 教 科 書 分 析 学 習 者 との 話 し 合 い(あるいは 学 習 者 間 の 話 し 合 い) インタビュー 観 察 ダイアログ ジャーナル( 学 習 者 が 書 いた 学 習 に 関 するさまざまな 感 想 などに 教 師 がコメントを 書 いてやり 取 りをする) 授 業 評 価 などがあ り 必 要 に 応 じてそれらを 組 み 合 わせる 場 合 もある(Dudley-Evans & M. J. St John, 1998) 具 体 的 な 設 問 の 例 は リチャーズに 詳 しく(Richards, 2001) ここでは 一 般 的 な 設 問 の 作 り 方 香 港 で 中 国 語 を 学 ぶ 学 習 者 や ニュージーランドで 英 語 を 学 ぶ 学 習 者 を 対 象 とした 質 問 紙 の 具 体 例 が20 ページ 以 上 に 渡 り 紹 介 されている デタラマニとチャンの 二 人 は 香 港 の 大 学 生 を 対 象 に 学 習 者 の 自 律 的 学 習 を 促 すためのセルフ アクセス センターの 利 用 に 関 して 学 習 者 のニー ズ 分 析 を 行 った 際 アンケート 調 査 とインタビューの 方 法 を 組 み 合 わせた (Detaramani, C. & Chan, S. I. Irene, 1999) この 研 究 のニーズ 分 析 では22の 設 問 を 含 む 質 問 紙 が640 人 に 配 布 された( 回 収 率 は85.8%) 22の 設 問 の 内 5 問 は 学 習 者 自 身 が 自 分 の 英 語 能 力 ( 全 体 的 レベルとリスニング リーディ ング スピーキング ライティングのそれぞれの 能 力 )をどう 評 価 してい るかを 問 うものである また 別 の3 問 では 英 語 の4 技 能 に 語 彙 力 と 文 法 力 を 加 えた6 項 目 に 関 してどれが 学 習 者 にとって 難 しいか どれが 大 学 や 将 来 の 職 場 で 重 要 だと 考 えるかが 問 われた それ 以 外 の 設 問 はセルフ ア クセス センターの 使 用 に 直 接 関 係 するもので 学 習 者 が 望 む 学 習 支 援 の ための 教 材 や 機 材 を 尋 ねる 設 問 やセンターを 使 用 する 理 由 などが 問 われて いる 1.3 ニーズの 変 化 コースのスタート 前 や 直 後 で 集 める 学 習 者 に 関 する 情 報 は 時 間 の 経 過 とともに 学 習 経 験 が 深 まることで 変 化 する 可 能 性 がある 例 えば 学 習 者 の 言 語 レベルが 上 達 すると 到 達 目 標 がより 高 く 設 定 され 将 来 ターゲッ ト 言 語 を 必 要 とする 状 況 も 変 わってくる また 学 習 者 のニーズは 経 済 175

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 や 社 会 状 況 の 変 化 に 影 響 を 受 けたり 個 人 的 なレベルでは 教 員 やクラスメ イトの 考 え 方 や 学 習 者 自 身 の 健 康 上 の 問 題 や 家 庭 の 事 情 などに 影 響 を 受 け たりすることも 考 えられる そこで コース 開 始 前 に 実 施 されるニーズ 分 析 以 外 に コースの 過 程 で 繰 り 返 しニーズ 分 析 を 実 施 することで 軌 道 修 正 が 可 能 になりニーズの 変 化 に 対 応 できるようになる(Graves, 2000) また ニーズ 分 析 が 繰 り 返 されることによって 学 習 者 は 自 己 の 学 びを 省 察 し 自 分 のニーズを 特 定 し 自 律 した 学 習 者 にと 成 長 していく それ によって 学 びが 単 なる 教 師 からの 知 識 の 伝 達 ではなく 教 師 との あるい は 学 習 者 間 の 対 話 になりうる(Graves, 2000) KavaliauskieneとUžpaliene(2003)の 研 究 では 法 律 を 学 ぶ 学 生 の 英 語 学 習 におけるニーズの 変 化 に 焦 点 が 置 かれた 最 初 のニーズ 分 析 はコース 開 始 前 に 実 施 され コース 途 中 でのニーズ 分 析 は250 時 間 中 の120 時 間 分 の 授 業 が 終 わった 時 点 で 実 施 された ニーズ 分 析 のための 設 問 は6 問 あり その 中 で 英 語 が 何 に 必 要 かという 質 問 に 対 しては コース 開 始 前 は8 割 以 上 の 学 生 がコミュニケーションに 必 要 だと 答 えていたが 120 時 間 の 授 業 を 受 けた 後 では4 割 に 減 り 代 わってコンピューター 昇 進 など 具 体 的 な 回 答 が 増 えた また 興 味 深 いことにコース 開 始 前 の 調 査 では 自 信 のある スキルにスピーキング(50%)とリスニング(27%)を 挙 げた 学 生 が 多 かっ たが コース 途 中 の 調 査 ではそれぞれ23% 2%に 減 少 していた 自 信 の あるスキルが 何 か 分 からないという 学 生 は 0%から50%に 増 加 した 質 問 紙 による 調 査 の 他 に 授 業 外 の 時 間 を 使 って 毎 週 インタビューが 行 われ 学 生 一 人 ひとりが 教 師 から 助 言 を 得 る 機 会 が 設 けられた ニーズ 分 析 の 結 果 を 踏 まえてKavaliauskieneとUžpalieneはテクニックを 調 整 し コンテン ト( 内 容 中 心 の 授 業 )を 充 実 させ 学 生 のニーズに 答 えるようにした 当 然 のことながら ESPのコースを 終 了 し 社 会 に 出 た 学 生 がまったく 違 う 分 野 や 目 的 で 英 語 を 使 うこともありうる ジャンサン(Jansson, 1981) の 調 査 報 告 によると のちに 役 立 つと 考 えて 英 語 の 授 業 を 受 けていた 多 く の 学 習 者 は やがて 計 画 を 変 えたため 結 局 は 当 初 の 予 定 とはまったく 違 176

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 う 目 的 で 英 語 を 使 うことになっていた 教 師 はコース 終 了 後 のニーズ 変 化 まで 責 任 を 持 つことは 不 可 能 であるが ESPのコースにおいても 汎 用 性 のある 知 識 や 技 術 を 教 えることは 考 慮 するに 値 するだろう 1.4 ニーズ 分 析 の 結 果 をどう 活 かすか ニーズ 分 析 で 最 も 重 要 なことの 一 つは 分 析 結 果 を 実 際 の 授 業 に 反 映 さ せ 学 習 者 の 満 足 度 を 上 げることである ニーズ 分 析 の 主 役 である 学 習 者 に 何 らかの 形 でフィードバックすることを 怠 ってはいけない コース 開 始 前 のニーズ 分 析 ではその 結 果 をもとにコースをデザインすることができ る コースの 途 中 で 行 うニーズ 分 析 の 結 果 はシラバスを 再 考 し 軌 道 調 整 を 行 うことに 利 用 できる コース 終 了 時 の 授 業 評 価 的 なニーズ 分 析 は 将 来 のコースをデザインするのに 活 用 できる 2 生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 学 習 者 のニーズ 分 析 2.1 調 査 の 背 景 と 目 的 今 回 のニーズ 分 析 は 二 つの 英 語 クラス( 大 学 の 生 涯 学 習 課 と 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 英 語 クラス)の 参 加 者 を 対 象 に 行 った 便 宜 上 こ こでは 大 学 の 生 涯 学 習 コースで 学 ぶ 学 習 者 をグループDと 呼 び 埼 玉 県 の ある 町 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 英 語 クラスで 学 ぶ 学 習 者 をグループGと 呼 ぶ このニーズ 分 析 の 主 な 目 的 は 二 つあり 最 初 の 目 的 はすでに 何 期 かの コースを 受 講 し 終 えた 受 講 者 に 翌 年 度 のコースで 使 用 する 教 材 や 重 要 視 して 欲 しいと 願 うスキルを 尋 ねて 授 業 に 活 かすことであった 二 つ 目 の 目 的 は 1 年 間 違 う 教 材 を 使 用 した 二 つのグループではニーズに 違 いが 出 るか つまり 教 員 が 選 択 した 教 材 が 学 習 者 のニーズに 影 響 を 与 えるかどう かを 知 ることであった 生 涯 学 習 課 (グループDとG)で 開 講 しているコー スは 授 業 回 数 は10 回 程 度 となっており 毎 コースごとに 受 講 者 を 募 るた め コースごとに 多 少 の 受 講 者 の 入 れ 替 わりがある 従 って コース 終 了 177

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 時 に 実 施 するニーズ 分 析 の 結 果 が100% 受 講 者 に 還 元 されることはないの だが ある 程 度 シニア 層 のニーズを 把 握 できれば 翌 年 度 のコースに 有 効 に 活 用 されることになる グループGではこの1 年 間 口 頭 練 習 中 心 の 教 科 書 (Molinsky, J. S., and Bliss, B. 2003. Side by Side. Longman.)の 他 に 英 語 絵 本 を 使 用 した 授 業 を 行 ってきた(Munch, R. 2002. Love You Forever. Firefly Books Ltd., Say, A. 2005. Kamishibai Man. Walter Lorraine Books) 選 んだ 英 語 絵 本 は 哲 学 的 とも 言 える 深 いテーマを 持 ったもので 大 人 が 十 分 に 楽 しめる 内 容 になっ ている それらの 絵 本 を 読 むことで 絵 本 の 世 界 を 楽 しみ 人 生 の 意 味 を みんなで 考 えるだけでなく 声 に 出 して 何 度 も 読 むことでスピーキングの 力 を 付 けることにもつなげようとしたものだ 絵 本 をまったく 使 わなかったグループDでは 教 科 書 (Tennant, A. et al. 2006. Synergy. Macmillan Languagehouse)の 内 容 以 外 にジャズ チャンツ の 教 材 を 副 教 材 として 使 用 した ジャズ チャンツとは キャロリン グ レアム 氏 が 開 発 した 英 語 の 発 音 とリズムを 身 につけるための 教 授 法 である (Graham, 2001) 2.2 ニーズ 分 析 参 加 者 両 グループの 学 習 者 の 年 齢 と 性 別 の 構 成 は 以 下 の 通 りである 表 1 受 講 者 の 年 齢 と 性 別 性 F M F M F M F M F M F M F M F M 年 46-50 51-55 56-60 61-65 66-70 71-75 76-80 Total D 1 2 3 1 1 2 7 3 G 1 1 2 5 1 2 2 11 3 F : 女 性 M : 男 性 D : 大 学 の 生 涯 学 習 課 で 学 ぶグループ G : 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 で 学 ぶグループ グループDは 都 心 に 近 い 場 所 に 在 住 している 人 たちで 60 歳 代 前 半 が 中 心 である 殆 どの 人 が 毎 年 海 外 旅 行 に 出 かけるような 境 遇 であることも 特 徴 である ある 男 性 は 空 港 の 外 国 貨 幣 両 替 所 で 勤 めていた 経 験 がある 178

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 また 別 の 二 人 は 外 国 人 と 結 婚 した 子 どもが 海 外 在 住 という 背 景 を 持 つ グ ループGは 都 心 からは2 時 間 半 の 山 村 に 在 住 している 人 たちである 70 歳 代 後 半 の 受 講 者 が 二 人 おり 健 康 や 経 済 的 な 理 由 からか 一 人 を 除 いて 海 外 旅 行 に 出 かける 受 講 者 はいない 以 前 実 施 したニーズ 分 析 から 仲 間 と 英 語 を 学 ぶこと 自 体 が 目 的 となっている 人 たちだと 言 える 学 習 者 は 初 級 レベル 対 象 という 募 集 広 告 を 見 た 上 で 参 加 申 し 込 み をしているが 実 際 のレベルの 差 は 大 きい 大 人 の 英 語 力 を 客 観 的 に 測 るテストとしては 米 国 では 主 に 移 民 を 対 象 にBasic English Skills Testや CASAS Life Skillsなどのテストが 開 発 されている 日 本 では 生 涯 学 習 と して 英 語 を 学 ぶシニア 層 を 対 象 にした 英 語 能 力 テストは 筆 者 の 知 る 限 り 存 在 しないが 今 後 開 講 されるコースでは 一 般 的 なSTEP 英 検 ( 日 本 英 語 検 定 協 会 )やビジネスでの 英 語 使 用 を 意 識 したTOEICなどの 練 習 問 題 を 授 業 に 取 り 入 れることである 程 度 受 講 者 の 英 語 レベルを 知 ることができると 思 う 2.3 方 法 今 回 の 調 査 では 設 問 数 を 次 の3つに 絞 った:1)4 技 能 のどれを 伸 ばし たいか 2)どんな 教 材 を 希 望 するか 3)その 他 の 要 望 指 導 者 である 筆 者 に 気 兼 ねなく 回 答 できるように 質 問 紙 は 無 記 名 とした また グルー プDに 関 しては 質 問 紙 で 得 られた 結 果 を 翌 週 学 習 者 に 口 頭 で 知 らせ そ れについて 全 体 での 話 し 合 いを 行 った 話 し 合 いを 行 う 利 点 は インタ ビューより 時 間 を 有 効 に 使 えること 他 の 受 講 者 の 意 見 を 聞 くことによっ てお 互 いの 理 解 が 深 まると 同 時 に 授 業 の 内 容 や 使 用 教 材 に 関 して 交 渉 の 機 会 が 得 られることである 欠 点 としては 積 極 的 に 発 言 する 人 遠 慮 し てあまり 自 分 の 意 見 を 言 わない 人 本 筋 から 離 れた 話 題 を 延 々と 続 ける 人 などがいるため 全 員 から 等 しく 意 見 を 聞 けないことがあげられる 2.4 結 果 と 考 察 質 問 紙 調 査 の 結 果 をグラフ1から4に 示 した 両 グループ 共 スピーキン 179

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 グ リスニングの 力 を 伸 ばしたいと 考 えている 学 習 者 が 多 いことが 分 かる リーディングとライティングを 選 んだ 人 は 少 なく 特 にライティングを 単 独 で 選 んだ 人 は 両 グループ 共 に 一 人 もいなかった つまり 特 に 伸 ばした い 英 語 のスキルに 関 しては 両 グループに 大 きな 差 は 見 られなかった 授 業 で 使 用 したい 教 材 についての 質 問 に 関 しては 会 話 に 焦 点 を 置 いた コースブックを 希 望 する 人 が 多 いことが 分 かる しかし 副 教 材 として 使 っ た 絵 本 とジャズ チャンツの 使 用 に 関 しては 両 グループ 間 において 差 が 見 られた 絵 本 を 教 材 として 使 用 したグループGでは 今 後 も 絵 本 の 使 用 を 希 望 する 人 が14 名 中 9 名 いたが グループDでは10 名 中 2 名 であった グルー プDでは 副 教 材 として 使 用 したジャズ チャンツを 希 望 する 者 が2 名 い たが グループGでは 0 名 であった 以 上 のことから 学 習 経 験 ( 教 師 が 採 用 した 教 材 )が 学 習 者 のニーズに 影 響 を 与 えたと 考 えられるが その ように 判 断 するには 全 ての 教 材 に 対 する 説 明 を 十 分 に 行 い 受 講 者 の 理 解 を 深 めておくことが 必 要 だったといえる 残 念 ながら 今 回 は 各 教 材 に ついて 口 頭 による 簡 単 な 説 明 をしただけなので 結 果 については 議 論 の 余 地 が 残 ることとなった リーディングの 力 を 伸 ばすことにはあまり 興 味 がないグループGの 学 習 者 が 絵 本 を 教 材 に 選 ぶことは 矛 盾 しているように 思 える その 矛 盾 を 直 接 学 習 者 に 確 認 することが 出 来 なかったが 絵 本 の 内 容 が 心 を 打 つもので あったこと 声 に 出 しながら 読 むことでスピーキングの 力 を 伸 ばすことに もつながったことから 希 望 が 多 かった 可 能 性 がある スピーキング 能 力 を 伸 ばすのに その 他 のスキル(リスニング リーディング ライティン グ)の 力 が 大 きく 影 響 していることを 筆 者 が 学 習 者 に 対 し 積 極 的 に 説 明 し ていたならば 調 査 の 結 果 は 違 っていた 可 能 性 がある 学 習 者 のニーズを 分 析 する 前 に ビリーフ(Horwitz, 1985)の 調 査 をすることが 有 効 だと 考 えられる 180

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 グラフ1 グループDの 伸 ばしたいスキル 註 : 複 数 回 答 可 グラフ2 グループGの 伸 ばしたいスキル 註 : 複 数 回 答 可 181

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 グラフ3 グループDの 授 業 で 使 用 したい 教 材 ( 授 業 で 使 用 したい 教 材 を2つ 選 ぶ ) グラフ4 グループGの 授 業 で 使 用 したい 教 材 ( 授 業 で 使 用 したい 教 材 を2つ 選 ぶ ) 註 : 教 科 書 : 会 話 中 心 のコースブック ゲーム: 英 語 のボードゲーム カードゲーム など 印 刷 物 : 英 語 で 書 かれたガイドブック ラベル マニュカル メニューな ど コンピューター: 英 語 でインターネットやメール 182

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 以 上 の 結 果 を 翌 週 グループDに 報 告 し 感 想 を 求 めると 全 員 からさまざ まな 意 見 を 聞 くことができた 代 表 的 な 意 見 は 以 下 の 通 りである: * 大 学 の 生 涯 学 習 課 で 開 講 しているクラスは 英 会 話 の 授 業 だと 捉 えて いるので 会 話 中 心 の 授 業 を 希 望 する 間 違 いを 恐 れずとにかくしゃ べることが 大 切 だ この 年 齢 で 新 しいことを 覚 えるのは 無 理 なので 現 状 維 持 のためにここに 来 ている * 発 音 が 悪 いので 外 国 人 には 理 解 してもらえない 発 音 は 諦 めた * 海 外 旅 行 で 使 える 表 現 を 学 びたい * 英 語 検 定 試 験 の2 級 に 何 度 も 挑 戦 したが 受 からない リスニングの 部 分 が 難 しすぎる リスニング 力 をつけたい * 辞 書 さえあれば 英 文 はある 程 度 読 めるのでこれ 以 上 リーディングの 勉 強 をする 必 要 性 は 感 じない 会 話 を 練 習 したい * 英 語 を 書 く 機 会 はないのでライティングを 勉 強 する 必 要 性 は 感 じな い * 米 国 の 友 人 から 英 語 でメールが 来 るのでそれがもっと 楽 に 読 めるよ うになりたい グループDの 受 講 者 の 多 くは 定 年 退 職 者 で 毎 年 海 外 旅 行 を 楽 しんでい る そのため 海 外 旅 行 を 楽 しむための 会 話 を 学 びたいと 思 っていること が 分 かった しかし 中 には 英 語 検 定 試 験 の2 級 を 目 指 している 人 やメー ルを 読 むことに 興 味 がある 人 もいることから ニーズの 幅 の 広 さを 実 感 し た 受 講 者 からの 意 見 で 気 になったのは スピーキングの 力 をつけたいと 望 みながら 諦 めている と 発 言 した 人 が 二 人 いたことだ しかし ク ラスに 来 ている 限 り どの 受 講 者 も 学 びたい 意 思 があり 学 び 続 ける 限 り 各 自 のペースで 上 達 していくものだ ただ 高 齢 者 には 上 達 が 無 理 だとい う 思 いや 過 去 の 学 習 経 験 などから( 例 えば 英 語 の 成 績 が 悪 かったなど) 自 分 の 能 力 に 自 信 をなくしている 人 もいる 教 師 は クラスに 来 ているも 183

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 のは 全 員 学 ぶ 意 思 が 強 いことを 認 識 し 少 しでも 学 習 者 が 自 信 を 持 てるよ うな 工 夫 をすることが 大 切 だと 言 える(Orem, 2005) また 読 むことに 興 味 を 持 っている 人 が 少 なく 中 には 辞 書 を 使 えば 読 めるという 理 由 からリーディングの 練 習 は 必 要 ないと 感 じている 人 がいた おそらくリーディングと 聞 くと 学 校 教 育 で 受 けた 訳 読 法 のことを 想 像 し ているのではないだろうか もし 受 講 者 が 今 までの 経 験 からリーディング は 退 屈 で スピーキングの 力 をつけるには 直 接 関 係 ないと 思 っているのな らば 問 題 である なぜならば 英 語 で 話 すには 英 語 での 大 量 のインプット が 必 要 であり そのインプットを 可 能 にする 一 つの 方 法 がリーディングだ からだ(Cho & Krashen, 1994) このように 学 習 者 が 過 去 の 学 習 経 験 に 縛 られている 可 能 性 がある 場 合 には 多 様 な 学 び 方 をクラスの 中 で 紹 介 して いくことも 教 師 の 役 目 の 一 つだといえる 2.5 結 果 の 活 用 今 回 のニーズ 分 析 では 殆 どの 学 習 者 がスピーキングのスキルを 上 達 さ せることを 願 っていることが 分 かった 筆 者 が 担 当 している 生 涯 学 習 課 の 英 語 クラスは 英 会 話 というタイトルがついているため 自 ずとスピー キングに 興 味 がある 人 が 受 講 したことが 考 えられる 英 語 を 実 際 に 話 す 機 会 があまりないと 考 えられる 人 たちには( 特 にグループG) 意 図 的 に 英 語 を 使 う 機 会 を 教 室 内 外 で 創 造 し 目 的 や 達 成 目 標 を 明 確 化 することでよ り 充 実 した 学 びが 生 まれると 考 えられる 東 京 の 台 東 区 で 中 高 年 に 英 語 を 教 えている 筆 者 の 知 人 は 教 室 外 での 英 語 使 用 の 機 会 を 作 ることに 成 功 した 彼 は 外 国 人 に 観 光 案 内 をするた めの 教 科 書 を 作 成 する という 課 題 を 学 習 者 に 課 した: この 授 業 では 生 徒 が 教 科 書 で 学 んだ 英 語 を 使 って 外 国 人 に 観 光 案 内 するのではなく 英 語 による 観 光 案 内 の 教 科 書 を 作 る 過 程 で 生 徒 が 生 きた 英 語 を 学 べるようにした 具 体 的 には 東 京 の 台 184

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 東 区 社 会 教 育 会 館 で 英 会 話 を 勉 強 している 中 高 年 者 に アメリカ 人 の 先 生 を 日 曜 日 の 午 後 に 近 くの 上 野 公 園 に 英 語 で 案 内 しても らうことにした 生 徒 はまず 書 籍 を 読 んだり 地 元 の 古 老 をたず ねて 上 野 公 園 の 観 光 案 内 の 資 料 を 作 成 した その 後 皆 で 分 担 し てその 資 料 を 英 語 に 直 した 当 日 は 英 語 に 直 した 資 料 を 基 に 口 頭 で 先 生 に 説 明 し 質 疑 応 答 を 行 った そしてその 時 録 音 したテー プと 撮 った 写 真 をもとに 後 日 上 野 公 園 観 光 案 内 の 教 科 書 を 作 成 した 生 徒 はこの 言 語 活 動 を 通 じて 英 語 の4 技 能 を 有 機 的 に 統 合 し 実 際 的 な 英 語 力 の 運 用 をはかった (Ishida, 2007) 一 方 海 外 旅 行 のため 英 検 受 験 のため 英 語 でメールを 書 くためなど のようにすでに 明 確 な 目 的 を 持 っている 受 講 者 に 対 してはそれに 対 応 でき るような 目 的 別 のコースが 開 講 されることが 理 想 的 である しかし 現 実 的 には ひとつのコースの 中 でさまざまなニーズに 答 える 必 要 があり 教 員 と 学 習 者 あるいは 学 習 者 間 での 対 話 妥 協 が 必 要 となる 今 年 度 開 講 予 定 の 大 学 の 生 涯 学 習 課 のコースでは 受 講 者 の 希 望 が 多 かった 会 話 を 中 心 に 絵 本 や 多 読 教 材 を 紹 介 し 辞 書 に 頼 らず 内 容 をすば やく 把 握 する 読 み 方 を 紹 介 する 予 定 である また 自 治 体 の 生 涯 学 習 コー スでは 大 人 向 けの 英 語 絵 本 を 読 むことを 継 続 し さらに 幼 児 向 けの 英 語 絵 本 を 子 どもたちに 読 み 聞 かせる 練 習 をすることを 計 画 中 である 将 来 的 に は 実 際 に 地 域 の 幼 児 と 英 語 で 交 流 するような 活 動 ができることを 目 標 とし ている 2.6 ニーズ 分 析 の 継 続 今 回 は 二 つの 英 語 クラス( 大 学 の 生 涯 学 習 課 と 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 英 語 クラス)の 受 講 者 を 対 象 にニーズ 分 析 を 行 ったが いくつか の 問 題 点 が 明 らかになった まず 一 般 的 な 学 校 の 授 業 と 違 い 生 涯 学 習 課 が 開 講 するコースは 10 回 程 度 で 完 結 するコースが 繰 り 返 し 開 講 されるた 185

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 め 毎 回 新 しい 顔 ぶれが 加 わることになり ニーズ 分 析 の 結 果 を100% 有 効 に 活 用 することが 難 しいことだ そのため 受 講 している 人 たちの 利 益 を 最 優 先 させることを 考 えると 授 業 の 開 始 時 点 途 中 終 了 時 という ように 複 数 回 ニーズを 確 認 をすることが 理 想 的 である さらに 大 学 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 英 語 のクラスは 初 級 中 級 上 級 とレベルが 設 定 されているが 受 講 者 は 原 則 的 に 自 己 申 告 によりどのクラスでも 受 講 が 可 能 であるため クラス 内 のレベルの 差 が 大 きくなり 全 体 としての 目 標 設 定 が 難 しいことも 問 題 点 として 挙 げられる しかし 一 般 的 な 学 校 教 育 と 違 い クラスサイズが 小 さいので(20 名 以 下 )より 細 かな 対 応 が 可 能 である 今 年 度 も 引 き 続 きニーズ 分 析 を 実 施 す る 意 向 であり 以 下 の 点 に 留 意 したいと 考 えている 1. 話 し 合 いや 観 察 を 中 心 としたニーズ 分 析 を 行 う 授 業 終 了 後 の 雑 談 などにも 注 意 を 払 い 記 録 しておく 2. 授 業 時 間 がニーズ 分 析 のために 削 られていると 感 じさせないように 授 業 自 体 に 溶 け 込 んだ 形 にする 例 えば ある 出 版 社 の 教 科 書 では 最 後 のレッスン 内 容 が1 年 間 の 授 業 を 振 り 返 るトピックになってい る 3. 伸 ばしたい 言 語 能 力 に 関 する 設 問 は 4 技 能 以 外 に 語 彙 文 法 発 音 なども 加 えてより 正 確 なニーズ 分 析 を 行 う 4. 海 外 旅 行 に 全 員 が 行 くようなクラスでは 言 語 能 力 に 加 え 旅 行 先 でのさまざまな 場 面 を 想 定 した 異 文 化 間 コミュニケーション 能 力 に 関 する 分 析 を 行 い 授 業 へその 結 果 を 反 映 させる 3 今 後 の 研 究 課 題 今 回 のニーズ 分 析 の 結 果 を 踏 まえて 生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 学 習 者 を 対 象 としたニーズ 分 析 の 研 究 課 題 を 考 えてみる 1. 学 習 者 ニーズの 中 で 変 化 するもの と 変 化 しづらい あるいは 186

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 変 化 しないもの があるのか 変 化 するもの は 何 に 影 響 を 受 け るのか また 時 間 の 経 過 と 共 にどう 変 化 していくのか 2. 学 習 者 は 自 分 にとって 必 要 なこと(needs) 自 分 が したいこ と(wants) 目 標 達 成 のために 自 分 に 不 足 していること(lacks) は 何 かをどの 程 度 正 確 に 認 識 しているのか 今 回 の 調 査 では 英 語 を 読 むことにある 程 度 の 自 信 があるという 学 習 者 からの 発 言 があっ たが その 能 力 がどの 程 度 なのかを 測 ることができなかった 筆 者 が 授 業 を 通 して 感 じたことは 学 習 者 たちは 訳 読 式 の 授 業 を 受 けた 経 験 からか 単 語 を 辞 書 で 調 べ それを 日 本 語 に 一 つずつ 置 き 換 え ていく 読 み 方 に 馴 染 んでいるようだが ある 程 度 のスピードで 読 む こと 文 脈 から 意 味 を 推 測 することは 不 得 手 のように 感 じた 3.その 他 の 研 究 分 野 との 関 連 : 例 えば 最 近 ではビリーフとメタ 認 知 知 識 との 関 係 が 注 目 されているが(Wenden, 1999) 学 習 者 のビリー フ(Horwitz, 1985)や 教 師 のビリーフに 関 する 研 究 (Borg, 2001; Pajares, 1992)とニーズ 分 析 の 関 係 や 学 習 方 略 (Oxford, 1989)と の 関 係 も 興 味 深 い 4. 教 師 と 学 習 者 の 力 関 係 : 生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 学 習 者 の 中 には 教 師 より 年 上 で 英 語 以 外 の 知 識 や 経 験 が 教 師 よりも 遥 かに 豊 かな 者 がいる このような 学 習 者 は 教 師 との 関 係 をどのように 認 識 して いるのだろうか? 一 般 の 学 生 よりも 自 律 した 学 習 者 になり 得 るの だろうか 5. 教 師 と 学 習 者 の 対 話 としてのニーズ 分 析 のあり 方 : 明 確 な 目 的 を 持 たない 学 習 者 に 対 して ニーズ 分 析 ではなく ニーズ 探 し あるい は ニーズ 作 り を 一 緒 に 行 うことは 言 語 習 得 に 有 効 か 6. 学 習 者 の 英 語 力 の 評 価 方 法 : 学 習 者 の 英 語 力 を 出 来 るだけ 正 確 に 評 価 し 目 標 レベルとのギャップを 知 ることが 重 要 であることから 特 に 高 齢 者 の 精 神 的 肉 体 的 負 担 のかからない 英 語 能 力 テストの 開 発 が 待 たれる 187

文 学 部 紀 要 文 教 大 学 文 学 部 第 21-1 号 糸 井 江 美 4 まとめ 大 学 の 生 涯 学 習 課 (グループD)と 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 する 英 語 クラス(グループG)の 受 講 者 を 対 象 にニーズ 分 析 を 行 った 結 果 最 も 学 びたいスキルはスピーキングであり リーディングにはあまり 興 味 がない ことが 分 かった また 教 材 に 絵 本 を 使 ったグループGでは 今 後 希 望 す る 教 材 として 絵 本 を 挙 げた 受 講 者 が 最 も 多 かった(14 人 中 9 人 ) 授 業 では 絵 本 を 教 材 として 使 用 しなかったグループDでは 希 望 教 材 に 絵 本 を 選 んだ 人 が10 人 中 2 人 しかいなかったことから 受 講 者 のニーズには 学 習 の 経 験 (ここでは 教 師 が 選 択 した 教 材 )が 影 響 すると 考 えられる しかし 今 回 は 調 査 対 象 となった 参 加 者 数 が 少 なかったため 結 果 を 一 般 化 するには 無 理 がある 今 後 調 査 対 象 の 人 数 を 増 やすとともに 長 期 的 なニーズの 変 化 も 調 べたいと 思 う またグループDとの 話 し 合 いにより 海 外 旅 行 で 英 語 を 使 う 英 語 検 定 試 験 に 挑 戦 する 海 外 在 住 の 家 族 ( 孫 )とコミュニケーションするなどさ まざまなニーズを 学 習 者 が 持 っていることが 理 解 できた 一 方 高 齢 であ ることから 上 達 を 諦 めている 人 や 会 話 力 上 達 にはリーディングの 練 習 は 不 必 要 と 考 えている 人 がいることも 分 かった ニーズ 分 析 で 得 られたこれ らの 貴 重 な 情 報 を 今 後 の 授 業 で 活 かしたい 生 涯 学 習 課 で 英 語 を 外 国 語 として 学 ぶような 状 況 では 海 外 旅 行 に 行 くようなことがない 限 り 教 室 外 で 英 語 を 使 う 機 会 は 限 られている ニー ズ 分 析 がESP(English for Specific Purposes) EAP(English for Academic Purposes) そして 移 民 を 対 象 とした 成 人 学 習 で 盛 んなのは 英 語 を 使 う 状 況 が 想 定 しやすく 目 的 に 合 った 指 導 が 必 要 だからだろう 日 本 の 大 学 や 自 治 体 の 生 涯 学 習 課 が 開 講 している 語 学 クラスは 多 くが 教 養 を 身 につ けることを 目 的 としており 具 体 的 な 目 的 や 到 達 目 標 が 設 定 されているも のは 少 ない そのような 場 合 は ニーズ 分 析 を ニーズ 探 し に 置 き 換 え 188

生 涯 学 習 として 英 語 を 学 ぶ 人 たちのニーズ 分 析 教 師 と 学 習 者 が 対 話 をする 中 で 目 的 や 目 標 を 見 つけ それに 向 かうことで 学 習 者 の 達 成 感 や 満 足 度 が 上 がるのではないだろうか 今 後 生 涯 学 習 と して 英 語 を 学 ぶ 学 習 者 のニーズ 分 析 が 多 様 な 角 度 から 研 究 されることが 期 待 される 引 用 文 献 白 畑, 富 田, 村 野 井, 若 林.1999. 英 語 教 育 用 語 辞 典 大 修 館 書 店 Borg, M. (2001). Teacher's beliefs. ELT Journal, 55(2), 186-188. Cho, K.-S., & Krashen, S.D. (1994). Acquisition of vocabulary from the Sweet Valley Kids series: Adult ESL acquisition. Journal of Reading, 37(8), 662-667. Detaramani, C. & Chan, S. I. Irene (1999). Learners' needs, attitudes and motivation towards the self-access mode of language learning. RELC Journal, 30(1), 124-157. Dudley-Evans & M. J. St John (1998). Developments in ESP: A multi-disciplinanry approach. Cambridge University Press. Graham, C. (2001). Jazz Chants: Old and New, New York: Oxford University Press. Grant, S. & Shank, C. (1993). Discovering and responding to learner needs. Module for ESL teacher training. Arlington County Public Schools, VA. REEP, Arlington Education and Employment Program. (ERIC Document Reproduction Service No. ED367196) Graves, K. (2000). Designing Language Courses: A Guide for Teachers. Boston: Heinle & Heinle. Ishida, T (2007). An Afternoon in Ueno Park (#1), TOLd You So! 3(1) [On-line]. Available:www.eigosenmon.com/tolsig/ publications.html Orem, A. R. (2005). Teaching Adult English Language Learners, Malabar, Florida: Krieger Publishing Company. Oxford, R. L. (1989). Use of language learning strategies: A synthesis of studies with implications for strategy training. System, 17, 235-247. Oxford, R. L. & Ehrman, M. (1992). Second language research on individual differences, Annual Review of Applied Linguistics, 13, 188-205. Pajares, M. F. (1992). Teachers' beliefs and educational research: Cleaning up a messy construct. Review of Educational Research, 62(3), 307-332. Richards, C. J. (2001). Curriculum development in language teaching. New York: Cambridge University Press. Weddel, K. S. & Van, D. C. (1997). Needs assessment for adult ESL learners, ERIC Digest, Adjunct ERIC Clearinghouse for ESL Literacy Education Washington DC. (ERIC Document Reproduction Service No. ED407882) 1-7. Wenden, A. (1999). An introduction to Metacognitive knowledge and beliefs in language learning. System, 27, 435-441. 189