鳴 門 教 育 大 学 小 学 校 英 語 教 育 センター 紀 要 第 4 号, 39 49, 2013 熊 取 町 の 外 国 語 活 動 ( 英 語 )の 取 り 組 み - 大 阪 府 使 える 英 語 プロジェクト 事 業 を 通 して- 齊 藤 貴 英 (SAITO Takahide) 大 阪 府 泉 南 郡 熊 取 町 教 育 委 員 会 要 約 熊 取 町 においては, 以 前 より 外 国 語 教 育 を 充 実 させてきた 具 体 的 には, 平 成 14 年 度 から 北 小 学 校 で 外 国 語 活 動 の 研 究 を 開 始 し, 平 成 23 年 度 からは, 熊 取 南 中 学 校 と 東 小 学 校 が 大 阪 府 教 育 委 員 会 より 使 える 英 語 プロジェクト 事 業 研 究 校 に 指 定 され, 英 語 授 業 の 充 実 をさらに 研 究 してきた 本 稿 においては, 熊 取 町 が 取 り 組 んできた 外 国 語 活 動 の 取 り 組 みを 紹 介 するとともに,そこから 見 えてきた 成 果 と 課 題 を 提 示 する (キーワード: 小 学 校 外 国 語 活 動, 英 語 を 日 常 化 する 取 組, 使 える 英 語 プロジェクト) 1.はじめに 熊 取 町 は 平 成 14 年 から 外 国 語 活 動 の 研 究 を 開 始 し, 現 在 では8 小 中 学 校 に4 人 の ネイティブスピーカーを NET(Native English Teacher)として, 3 人 の 英 語 が 堪 能 な JTE(Japanese Teacher of English)を 外 国 語 指 導 助 手 として 配 置 し, 小 学 校 の 英 語 教 科 化 に 向 けた 取 り 組 み, 実 践 を 行 っている 熊 取 町 が 外 国 語 活 動 研 究 校 に 指 定 し た 町 立 北 小 学 校 においては, 独 自 のカリキュラムで 全 教 職 員 が 組 織 的 に 小 学 校 低 学 年 から 外 国 語 学 習 を 開 始 している また 平 成 23 年 度 から, 熊 取 町 立 東 小 学 校 と 熊 取 南 中 学 校 が 大 阪 府 教 育 委 員 会 より 使 える 英 語 プロジェクト 事 業 研 究 指 定 校 となり3 年 間 の 研 究 を 行 った その 研 究 の 実 践 内 容 を 記 すとともに,そこから 見 えてきた 成 果 と 課 題 を 考 察 する 2. 熊 取 町 における 外 国 語 活 動 の 取 組 2.1 熊 取 町 立 北 小 学 校 の 実 践 平 成 14 年 度 から, 英 語 で 伝 え 合 う 力 を 育 て,それを 活 用 する 力 の 実 践 を 目 標 に 外 国 語 活 動 の 研 究 を 開 始 した 北 小 学 校 の 外 国 語 活 動 は, 平 成 25 年 度 で 10 年 以 上 経 39
過 し, 今 の 形 ができるまでに 多 くの 試 行 錯 誤 があり, 現 在 も 課 題 はあるが, 低 学 年 か ら 高 学 年 まで 全 校 体 制 で 組 織 的 に 外 国 語 教 育 活 動 を 推 進 している またネイティブス ピーカーを 週 2 回 派 遣 するとともに, 研 究 授 業 公 開 授 業 の 実 施 やカリキュラムの 作 成,また 全 校 的 に 英 語 を 楽 しみながら 日 常 化 する 工 夫 や 学 級 担 任 中 心 の 授 業 づくり, 英 語 ルームの 整 備 や 教 材 教 具 の 共 有 などを 有 効 に 行 っている 以 下, 北 小 学 校 の 事 例 を 紹 介 するとともに 成 果 と 課 題 も 考 察 する 2.2 外 国 語 活 動 の 目 標 北 小 学 校 の 外 国 語 活 動 の 目 標 は 以 下 の2 点 である (1) 国 際 社 会 の 中 で 日 本 人 としての 自 覚 を 持 ち, 主 体 的 に 生 きていくために 必 要 な 実 践 的 な 能 力 や 資 質, 態 度 の 育 成 (2) 国 際 理 解 教 育 の 一 環 として 英 語 活 動 を 取 り 入 れ, 英 語 や 文 化 に 対 する 興 味 関 心 やコミュニケーションを 楽 しみ, 自 分 の 思 いを 表 現 しようとする 態 度 と 意 欲 の 育 成 上 記 の 目 標 を 達 成 するために, 外 国 語 活 動 担 当 者 を 中 心 に 低 学 年 から 高 学 年 までの カリキュラムを 作 成 した カリキュラムの 作 成 には,ネイティブスピーカーのアイデ ィアも 多 く 取 り 入 れた 低 学 年 では, 体 を 動 かす 活 動 を 中 心 に 年 間 10 時 間 程 度 の 授 業 を 行 い, 中 学 年 では 口 を 動 かす 活 動 を 中 心 に 年 間 10 時 間 程 度, 高 学 年 では 頭 を 動 かす 授 業 を 中 心 に 年 間 35 時 間 程 度 の 発 達 段 階 に 応 じた 指 導 を 行 っている 全 学 年 の 教 職 員 が 担 当,また 低 学 年 から 行 うことにより, 教 職 員 の 意 欲 や 能 力 も 高 まり, 楽 しみながら 授 業 を 行 うことができている 2.3 具 体 的 な 実 践 例 ~ 英 語 を 日 常 化 する 取 組 ~ 北 小 学 校 では, 授 業 以 外 にも 児 童 の 学 習 意 欲 を 向 上 させるために, 英 語 を 日 常 化 す る 取 組 みが 行 われている ここでは,4 つの 外 国 語 を 日 常 化 する 取 組 み を 紹 介 する (1) ひとくち 英 語 図 1 ひとくち 英 語 北 小 学 校 の 児 童 玄 関 に, 毎 月 の 一 口 英 語 が 掲 示 されている( 図 1) 例 えば, 6 月 June, ベストを 尽 くしてね Do your best,うれしい I am happy, あきらめるな Never give up 等, 簡 単 な 英 語 表 現 を 掲 示 している 児 童 玄 関 に 掲 示 しているので, 低 学 年 から 高 学 年 まで 全 校 児 童 が 登 下 校 中 に 見 るこ とができまた 日 常 的 に 使 う 表 現 を 精 選 して 掲 示 することにより, 外 国 語 学 習 に 対 する 雰 囲 気 作 りを 組 織 的 に 行 って いる 40
(2) 英 語 の 歌 毎 月 の 英 語 の 歌 を 決 め, 朝 給 食 の 時 間 に 放 送 している 5 6 年 生 児 童 には 英 語 の 歌 詞 カード を 配 り,1~4 年 生 児 童 には 歌 詞 をクラスに 掲 示 して,いつでも 英 語 の 歌 を 聴 いて 歌 うことのでき る 体 制 を 組 織 的 に 作 っている( 図 2) 英 語 の 歌 を 毎 日 聴 くことにより, 英 語 のリズム,イントネー ションや 発 音 等 に 慣 れることができ,スムーズに 外 国 語 活 動 の 授 業 に 取 り 組 むことができている 図 2 英 語 の 歌 (3) 英 語 でいってみよう 平 成 25 年 度 からの 取 り 組 みで,2ヶ 月 に1 度, 単 語 のテーマを 決 めて 掲 示 している ( 図 3) 4 5 月 のテーマは 机 の 周 り で, 日 常 的 に 子 どもたちが 使 用 している 机 のまわり にある 教 科 書 消 しゴム 鉛 筆 などの 英 語 を 絵 で 表 し,それぞれに 対 応 す る 英 語 を 書 いている 児 童 たちは,この 掲 示 物 みることにより, 自 分 たちが 日 頃 使 っ ている 物 の 英 語 での 言 い 方 に 慣 れ 親 しむことができる (4) 外 国 人 にインタビューしよう 6 年 生 には, 春 の 遠 足 で 日 頃 学 習 した 英 文 を 使 って 外 国 人 にインタビューする 宿 題 を 出 している( 図 4) Where are you from? (あなたの 出 身 はどこですか), What kind of Japanese food do you like? (あなたの 好 きな 日 本 の 食 べ 物 は 何 ですか) 等 の 授 業 で 学 習 した 表 現 を 使 いながら, 児 童 たちは 遠 足 で 会 った 外 国 人 にインタビューを 楽 しみながら 行 っている 図 3 英 語 でいってみよう 図 4 外 国 人 にインタビューしよう 41
(1)~(4) は 英 語 を 日 常 化 する 取 り 組 みであり, 英 語 を 身 近 な ツール として 児 童 たちに 捉 えさせるとともに, 学 習 意 欲 を 喚 起 させる 工 夫 を 学 校 全 体 で 行 っている また, 授 業 で 子 どもたちに 人 気 のある 漫 画 One Piece(ワン ピース) の 英 語 版 等 を 使 って, 児 童 の 関 心 を 高 める 導 入 を 工 夫 している One Piece(ワン ピース)のセ リフを 覚 えている 児 童 も 多 いので,その 覚 えていたセリフを 英 文 で 表 現 する 事 に 興 味 を 示 す 場 面 も 多 く 見 受 けられた 英 語 を 日 常 化 していくためには, 児 童 の 興 味 関 心 を 引 きつける 素 材 等 が 大 切 であ り,また 担 当 者 の 負 担 のかからない 範 囲 で 取 組 を 継 続 させることが 大 切 である また, 英 語 表 現 を 耳 で 聞 かないと 話 せるようにはならないので, 多 くの 良 い 英 文 に 音 で 慣 れ 親 しませる 事 を 意 識 している 授 業 以 外 でも, 全 校 体 制 でこのような 取 組 を 行 うこと によって, 授 業 に 対 する 意 欲 を 向 上 させる 事 ができ, 理 解 の 定 着 にもつながっている 2.4 成 果 と 課 題 北 小 学 校 の 外 国 語 活 動 の 成 果 と 課 題 を 検 証 するために, 小 学 校 を 卒 業 した 中 学 校 1 年 生 生 徒 143 名 を 対 象 にアンケートを 行 った( 平 成 25 年 10 月 11 日 実 施 ) (1) 成 果 成 果 としては, 以 下 の4 点 の 数 値 が 比 較 的 高 い 事 がわかった 1 外 国 に 興 味 がある という 質 問 に 肯 定 的 に 答 えた 生 徒 は,143 名 中 105 名 であ り 73%という 高 い 割 合 であった( 図 5) これは, 小 学 校 からの 外 国 語 教 育 の 成 果 で ある 可 能 性 が 高 い 中 学 校 1 年 生 のこの 時 期 においても, 比 較 的 高 い 数 値 がでている この 部 分 が 低 いと 個 々の 英 語 能 力 の 向 上 には 結 びつかない 2 英 語 は 好 きだ という 質 問 に 肯 定 的 に 答 えた 生 徒 は,143 名 中 80 名 であり 55% という 過 半 数 を 超 えた 割 合 であった( 図 6) 中 学 校 1 年 生 の 2 学 期 は 英 語 嫌 いが 増 え ていく 状 況 が 多 い 中, 一 定 割 合 の 好 意 性 を 維 持 している 過 半 数 以 上 が 肯 定 的 に 回 答 しているが, 約 45%が 否 定 的 に 回 答 をしている 興 味 はあるが 好 きではない と 答 えている 生 徒 が 約 18%いるので,この 割 合 を 低 くしている 可 能 性 がる 取 組 を 分 析 し, 検 討 をしていく 必 要 がある 1 外 国 に 興 味 がある 2 英 語 は 好 きだ 14% 13% 29% 44% あてはまる ややあてはまる あまりあてはまらな い あてはまらない 23% 22% 26% 29% あてはまる ややあてはまる あまりあてはまらな い あてはまらない 図 5 外 国 に 興 味 がある 図 6 英 語 は 好 きだ 42
3 外 国 の 人 と 英 語 を 使 ってコミュニケーションしたい という 質 問 に 肯 定 的 に 答 えた 生 徒 は,143 名 中 109 名 であり 76%という 高 い 割 合 であった( 図 7) これは, すべての 小 中 学 校 にネイティブスピーカーを 配 置 しているところから,コミュニケー ションのイメージがしやすく 意 識 が 高 まっていると 考 えられる 4 英 語 を 使 えるようになることは 大 切 だと 思 う という 質 問 に 肯 定 的 に 答 えた 生 徒 は,143 名 中 126 名 であり 88%という 非 常 に 高 い 割 合 であった( 図 8) 多 くの 生 徒 がこのように 答 えている 理 由 として, 小 学 校 から 外 国 語 教 育 を 行 い,ネイティブス ピーカーと 常 にコミュニケーションをとることのできる 環 境 がこの 数 値 に 表 れている 14% 9% 33% 3 外 国 の 人 と 英 語 を 使 って コミュニケーションをしたい 43% あてはまる ややあてはまる あまりあてはまらな い あてはまらない 4 英 語 を 使 えるようになることは 大 切 だと 思 う 8% 4% 27% 61% あてはまる ややあてはまる あまりあてはまらな い あてはまらない 図 7 外 国 の 人 と 英 語 を 使 ってコミ ュニケーションをしたい 図 8 英 語 を 使 えるようになることは 大 切 だと 思 う (2) 課 題 課 題 としては, 以 下 の 部 分 があげられる 5 英 語 の 授 業 中 に 先 生 や 友 だちに 英 語 を 使 って 自 分 の 考 えを 伝 えることができる という 問 いに 対 して, 肯 定 的 な 回 答 は 143 名 中 67 名 で 割 合 は 約 47%, 否 定 的 な 回 答 は 143 名 中 76 名 で 割 合 は 約 53%であった( 図 9) 半 数 以 上 が 否 定 的 な 回 答 をしてい る 自 分 の 考 えを 英 語 で 伝 える ために, 日 常 で 使 う 英 語 表 現 を 今 以 上 学 習 していく 必 要 性 がある 6 英 語 の 聞 く, 話 す, 読 む, 書 く で 苦 手 なものはどれですか という 問 いに 対 して, 書 く ことが 苦 手 であると 答 えた 生 徒 が 143 名 中 69 名 で 割 合 は 約 48%であ った( 図 10) 小 学 校 で 書 く 指 導 をしていないので, 中 学 校 の 授 業 での 理 解 度 の 低 下 や 好 意 性 の 低 下 が 生 じている 可 能 性 がある 小 中 の 段 差 を 解 消 するために, 適 切 な 書 く 指 導 を 行 う 必 要 がある 5 英 語 の 授 業 中 に 先 生 や 友 だちに 英 語 を 使 って 自 分 の 考 えを 伝 えることができる 23% 13% あてはまる 6 英 語 の 聞 く, 話 す, 読 む, 書 く で 苦 手 なものはどれですか 17% 聞 く 30% 34% ややあてはまる あまりあてはまらない あてはまらない 48% 15% 20% 話 す 読 む 書 く 図 9 英 語 の 授 業 中 に 先 生 や 友 だち に 英 語 を 使 って 自 分 の 考 えを 伝 えることができる 図 10 英 語 の 聞 く, 話 す, 読 む, 書 く で 苦 手 なものはどれで すか 43
7 アルファベットを 書 いたら 今 よりも 英 語 がわかりやすくなると 思 いますか と いう 問 いに 対 して, 思 う やや 思 う と 答 えた 生 徒 は 143 名 中 103 名 で 約 72%であ った( 図 11) アルファベットの 大 文 字 や 小 文 字,スポーツや 食 べ 物, 職 業 や 教 科 等 の 簡 単 な 英 語 や 基 本 的 な 英 文 を 小 学 校 で 学 ぶ 事 により, 理 解 度 の 向 上 が 見 込 まれる 可 能 性 がある 英 語 の4 技 能 のバランスの 良 い 育 成 が 必 要 である 以 上 の 結 果 から, 北 小 学 校 の 外 国 語 活 動 の 成 果 と して, 児 童 たちの 外 国 や 英 語 についての 興 味 関 心 意 欲 また 英 語 を 使 ってのコミュニケーシ ョンの 必 要 性 等 の 高 い 数 値 があげられる しかし, 課 題 として 英 語 で 自 分 の 考 えを 表 現 する 工 夫 や アルファベット 等 英 語 を 書 く 指 導 等 の 部 分 があげられる 熊 取 町 においては, 数 年 前 から 全 小 学 校 に フォニックス 学 習 を 導 入 し て, 音 と 文 字 のつながりを 学 習 しているが, 文 字 を 書 く 指 導 は 行 っていないので, 今 後 はこの 部 分 の 工 夫 が 必 要 である 7 アルファベットを 書 いたら 今 よりも 英 語 がわかりやすくなると 思 いますか 14% 14% 27% 45% 思 う やや 思 う あまり 思 わない 思 わない 図 11 アルファベットを 書 いたら 今 よ りも 英 語 がわかりやすくなると 思 いますか 3. 熊 取 町 立 北 小 学 校 の 実 践 を 基 盤 とした 熊 取 町 全 体 の 取 組 3.1 概 要 熊 取 町 では, 平 成 14 年 度 から 外 国 語 活 動 を 研 究 してきたが 平 成 23 年 度 より 大 阪 府 教 育 委 員 会 に 研 究 推 進 校 として, 熊 取 町 立 熊 取 南 中 学 校 熊 取 町 立 東 小 学 校 が 指 定 さ れ,さらに 取 組 の 充 実 や 研 究 改 善 を 行 ってきた この2 校 を 熊 取 町 内 の( 北 小 学 校 以 外 の)パイロット 校 として, 町 内 の 小 中 学 校 に 取 組 を 普 及 するとともに, 小 中 連 携 し た 外 国 語 活 動 のさらなる 充 実 を 目 標 に, 取 組 を 進 めてきた 熊 取 町 の 取 組 の 内 容 や 成 果 と 課 題 を 考 察 する 使 える 英 語 プロジェクト 事 業 とは, 義 務 教 育 終 了 段 階 で 自 分 の 考 えや 意 見 を 英 語 で 伝 えられる 生 徒 の 育 成 や 英 語 の4 技 能 ( 聞 く 話 す 読 む 書 く)をバランス 良 く 育 む 授 業 改 善 を 行 い,また 家 庭 学 習 教 材 等 を 開 発 し 自 学 自 習 力 を 育 むことを 目 標 に 大 阪 府 教 育 委 員 会 が 府 内 50 中 学 校 区 を 実 践 研 究 校 に 指 定 し, 研 究 を 行 うものである 本 町 においては 熊 取 南 中 学 校 と 東 小 学 校 が 研 究 推 進 校 に 指 定 され, 平 成 23 年 ~ 平 成 25 年 の 3 年 間 研 究 を 行 ってきた 同 一 中 学 校 区 において3 年 間 で 500 万 円 以 上 の 補 助 金 交 付 があり, 英 語 教 室 の 整 備 や ICT の 活 用,ネイティブスピーカーとの 授 業 の 工 夫, 年 1 回 の 公 開 授 業 や 研 究 討 議 等 を 行 うこと,また 中 学 校 においては, 教 科 書 準 拠 家 庭 学 習 音 声 CD を 全 生 徒 に 配 布 をしたり, 英 語 能 力 判 定 テストの 受 験 も 義 務 づけられてい る 熊 取 町 においては, 本 事 業 を 外 国 語 活 動 や 小 中 連 携 した 外 国 語 教 育 のさらなる 充 実 の 機 会 としてとらえながら 研 究 を 進 めてきたが, 以 下 その 内 容 を 一 部 報 告 する 44
3.2 熊 取 町 立 東 小 学 校 の 実 践 熊 取 町 立 東 小 学 校 は, 平 成 18 年 度 からネイティブスピーカーと 外 国 語 指 導 助 手 中 心 の 外 国 語 授 業 を 開 始 し, 研 究 を 行 ってきた 平 成 20 年 度 からは 学 級 担 任 中 心 の 授 業 づ くりを 行 い, 平 成 23 年 度 からは 使 える 英 語 プロジェクト 事 業 研 究 推 進 校 に 指 定 さ れ, 外 国 語 活 動 の 研 究 を 行 ってきた 平 成 23 年 度 末 には, 大 阪 府 教 育 センターで 実 践 研 究 校 の 小 学 校 の 代 表 として 取 組 を 発 表 した 研 究 指 定 校 としての 大 きな 成 果 は,1 授 業 の 流 れの 確 立 (カリキュラムの 作 成 )2 教 材 教 具 の 充 実 3 教 職 員 の 力 量 向 上 児 童 の 学 習 意 欲 の 向 上 があげられる 1 授 業 の 流 れの 確 立 については, 以 前 の 東 小 学 校 においては 丁 寧 なカリキュラムは 存 在 せず, 研 究 推 進 校 となってから,ネイティブスピーカーと 外 国 語 指 導 助 手,そして 学 級 担 任 の 役 割 分 担 をキーワードに, 毎 週 1 回 丁 寧 な 打 ち 合 わせを 行 い,それぞれの 役 割 を 分 担 しながら 学 級 担 任 が 中 心 の 授 業 づくりを 考 えてきた 授 業 の 流 れの 確 立 は, 次 の5 点 を 中 心 に 改 善 を 進 めた 1 授 業 内 容 と 本 時 の 目 標 (ゴール)の 提 示 : 本 時 の 授 業 における 達 成 目 標 を 明 確 化 するためにゴールを 毎 時 間 提 示 することにより, 児 童 も 視 覚 的 に 学 ぶ 内 容 を 確 認 できるように 工 夫 を 行 っている 2 日 直 による 英 語 での 挨 拶 : 外 国 語 活 動 の 授 業 の 始 まりに 頭 のスイッチを 切 り 替 え るために 日 直 による 英 語 の 挨 拶 を 毎 回 行 っている( 図 13) 挨 拶 の 質 問 内 容 は, 中 学 校 の 英 語 の 挨 拶 の 表 現 と 連 携 をしている こうすることにより 多 く 児 童 に 発 表 の 機 会 が 与 えられ, 中 学 校 との 連 携 も 行 うことができる ( 例 ) 日 直 が 英 語 で 挨 拶 をしている 内 容 (A)( 名 前 )My name is. ( 私 の 名 前 は~です) (B)( 挨 拶 )Good morning,. (おはようございます ~さん) (C)( 調 子 をきく)How are you today? ( 調 子 はどうですか) I m ( ) (thank you). (~です ありがとう) (D)( 日 付 )What is the date today? ( 今 日 の 日 付 は 何 ですか) It s (month) (date). ( 何 月 何 日 です) (E)( 曜 日 )What day is it today? ( 今 日 は 何 曜 日 ですか) It s (weekday). ( 曜 日 です) (F)( 天 気 )How is the weather today? ( 今 日 の 天 気 はどうですか) It s ( ) and ( ). ( そして です) 45
図 12 日 直 の 挨 拶 の 様 子 上 記 (A)~(F) 以 外 にもアレンジをし た 挨 拶 があるが, 一 般 的 には 上 記 の 挨 拶 を 中 心 に 行 う 上 記 (A)~(F)は 中 学 校 の 英 語 の 授 業 で 行 う 一 般 的 な 挨 拶 であるが, 例 えば(C)の 質 問 での 答 えは fine 以 外 にもたくさんあり,そ の 多 くの 語 彙 を 小 学 校 で 学 習 するこ とによって, 中 学 校 の 英 語 の 授 業 に も 良 い 効 果 が 期 待 できる また(D)~ (F)の 月 や 数 ( 序 数 ),また 曜 日 や 天 気 なども 英 語 学 習 の 基 本 事 項 であり, こういった 部 分 の 学 習 もとても 大 切 である 3フォニックス 指 導 : 平 成 24 年 度 に, 熊 取 町 教 育 委 員 会 が 外 国 人 3 名 と 協 力 をして くまとりフォニックス を 開 発 し, 町 内 全 小 中 学 校 に CDR を 配 布 して, 音 と 文 字 の 指 導 (フォニックス 指 導 )を 全 小 学 校 において 行 っている この 指 導 を 行 うことによ り, 児 童 の 多 くが 英 語 のアルファベット 読 みと 実 際 に 言 葉 を 発 する 時 の 音 読 みの 違 い を 少 しずつ 認 識 できるようになってきている 4チャンツ,ゲーム, 英 語 の 歌,ICT 機 器 等 の 利 用 : 授 業 の 最 初 のウォーミングアッ プとして 楽 しい 英 語 のチャンツや 歌 を 取 り 入 れたり,Skype や 大 型 モニター 等 を 使 っ た 最 先 端 の ICT 英 語 授 業 を 行 うことによって, 学 習 意 欲 の 向 上 を 図 っている 5ペア 学 習 やグループ 学 習 の 効 果 的 活 用 を 通 した 活 動 中 心 の 授 業 の 流 れ: 効 果 的 なペア 学 習 やグループ 学 習 を 活 動 に 取 り 入 れることによって,コミュニ ケーション 活 動 のさらなる 充 実 を 図 り, 場 面 意 識 や 相 手 意 識 を 大 切 にした 英 語 を 話 す 活 動 を 多 く 取 り 入 れている 図 13 は, 英 語 ルームの 様 子 である 教 室 内 には 大 型 ディスプレイや PC 等 の ICT 機 器 が 常 備 されている またアルフ ァベットの 大 文 字 や 小 文 字, 月 や 曜 日, 数 などの 掲 示 物 も 丁 寧 に 掲 示 され, 英 語 活 動 の 雰 囲 気 づくりに 貢 献 している 図 13 英 語 ルームの 様 子 3.3 熊 取 町 立 熊 取 南 中 学 校 の 実 践 熊 取 南 中 学 校 においても, 週 4 時 間 の 内 1 時 間 程 度 を 活 用 の 時 間 とし, 英 語 を 使 う 授 業 改 善 を 図 り 研 究 を 進 めた 1 年 ~3 年 までの 各 学 年, 各 学 期 における 達 成 目 標 を 明 確 化 し, 中 学 校 卒 業 段 階 でのゴールを 設 定 した 特 に 大 切 にしたことは 英 語 の4 技 46
能 ( 聞 く 話 す 読 む 書 く)のバランス 育 成 である 従 来 の 授 業 では, 話 す 力 の 育 成 の 部 分 が 弱 かったので,そこを 改 善 するための 方 策 として, 課 題 を 設 定 しながらプ レゼンテーションをする 場 を 多 く 設 けた また 英 語 ルームを 整 備 し, 電 子 教 科 書 での 授 業 や ICT 使 った 工 夫 ある 授 業 を 行 いながら, 生 徒 たちの 関 心 意 欲 を 高 めた また 歌 チャンツ ゲーム 映 画 などを 利 用 するとともにスピーチコンテストの 実 施, 各 種 多 様 な 掲 示 物 の 英 語 化 など 英 語 を 日 常 化 していく 工 夫 を 行 いながら, 英 語 を 使 える 能 力 を 育 成 した また 全 員 に 教 科 書 準 拠 の 家 庭 学 習 音 声 CD を 配 布 し, 英 語 能 力 判 定 テストを 行 った 平 成 25 年 度 の3 年 生 において, 英 検 3 級 程 度 に 相 当 すると 判 定 され た 生 徒 の 割 合 は 40%を 超 えており,これは 明 らかに3 年 間 の 取 組 や 研 究 の 成 果 である 生 徒 達 の 学 習 意 欲 を 向 上 させるためには 授 業 の 工 夫 改 善 はもちろんであるが,それ を 取 り 巻 く 環 境 を 整 備 することも 大 切 である 熊 取 南 中 学 校 においては, 大 きく2つ の 点 の 改 善 を 図 った まず1つめは,プロジェクターや PC DVD プレーヤー 電 子 黒 板 等 を 常 設 した 英 語 ルームの 環 境 整 備 である 2つめは, 多 種 多 様 な 掲 示 物 ( 例 : 体 育 大 会 の 感 想 今 年 の 目 標 等 )を 英 語 で 表 現 し, 掲 示 する 取 組 を 行 った 図 14 は, 熊 取 南 中 学 校 における 英 語 ルームの 様 子 である プロジェクターを 完 備 しており, 電 子 教 科 書 で 授 業 をしている 座 席 配 置 はコの 字 にしており, 自 由 に 発 言 のしやすい 雰 囲 気 を 作 っている また, 英 語 ルーム 内 の 掲 示 物 にも 工 夫 をしている 図 15 は, 英 語 ルームの 後 の 様 子 である パーテーションで 区 切 って DVD プレーヤーや PC を 常 時 5 台 設 置 し, 各 自 が 個 別 に 英 語 学 習 を 行 うことのできる 環 境 づくりをしている このよ うな ICT 環 境 を 整 備 することによって, 生 徒 たちは 意 欲 的 に 学 習 に 取 り 組 むことがで きるようになっている 図 14 英 語 ルームの 様 子 ( 前 ) 図 15 英 語 ルームの 様 子 ( 後 ) その 他 にも 学 校 全 体 で 英 語 の 掲 示 物 の 工 夫 も 数 多 く 行 っている 熊 取 南 中 学 校 では 英 語 を 日 常 化 する 取 り 組 みとして, 学 年 の 目 標 や 感 想 なども 全 校 的 に 英 語 で 書 いて 掲 示 している このような 取 組 を 行 う 事 によって,よく 使 う 日 本 文 に 合 う 英 語 表 現 を 学 ぶ ことができ,また 掲 示 をすることにより, 友 だちの 英 語 表 現 も 学 ぶことができる 47
4. 実 践 の 成 果 と 今 後 の 課 題 4.1 熊 取 町 立 東 小 学 校 と 熊 取 南 中 学 校 の 研 究 の 成 果 と 課 題 実 践 研 究 校 の 熊 取 町 立 東 小 学 校 と 熊 取 町 立 熊 取 南 中 学 校 の 児 童 生 徒 を 対 象 に 平 成 23 24 年 度 にアンケートを 行 ったが, 以 下 そこから 見 えてきた 成 果 と 課 題 を 報 告 する まず 成 果 であるが, 英 語 を 使 えるようになることは 大 切 だと 思 う 英 語 を 使 えに なることは 将 来 必 要 だと 思 う といった 質 問 に 対 して, そう 思 う ややそう 思 う と 答 えた 児 童 の 割 合 は 小 学 校 で 約 90%, 中 学 校 で 約 80%と 高 い 数 値 がでている ま た 英 語 の 授 業 中 に,ネイティブスピーカーや 外 国 語 指 導 助 手 の 先 生 とするコミュニ ケーションは 楽 しい という 質 問 に 対 して, 肯 定 的 に 回 答 した 児 童 生 徒 の 割 合 は 小 学 校 で 約 95%, 中 学 校 においても 約 70%と 高 い 数 値 がでている 実 践 研 究 校 の 児 童 生 徒 は 日 頃 の 取 組 の 中 で, 英 語 の 重 要 性 を 認 識 し,またネイティブスピーカーや 外 国 語 指 導 助 手 とのコミュニケーションの 楽 しさも 感 じている 割 合 が 高 い 課 題 としては, 英 語 は 好 きだ といった 割 合 が 小 学 校 5 年 生 から 中 学 校 3 年 生 まで の 間 で 43.6% 低 下 している その 理 由 として, ネイティブスピーカー や 外 国 語 指 導 助 手 が 英 語 で 話 している 内 容 がわかる といった 質 問 に 対 しての 肯 定 的 な 回 答 の 割 合 の 低 下 があげられる( 小 学 校 5 年 生 から 中 学 校 3 年 生 まで 36.3%の 低 下 ) ネイティブ スピーカー 等 が 話 をしている 英 語 がわからなくなるとともに, 英 語 の 好 意 性 が 低 下 し ている また 英 語 の 授 業 でわからないところがあっても,たずねないでそのままに しておく と 回 答 した 児 童 生 徒 の 割 合 も 小 学 校 で 約 25%, 中 学 校 で 約 32% 存 在 して いる また, 英 語 を 使 って 自 分 の 考 えを 伝 えることができる という 質 問 に 対 しての 回 答 もまだ 低 いのが 現 状 である つまり, 多 くの 児 童 生 徒 は, 英 語 を 使 えるように なりたい と 思 っているが, 英 語 がわからなくなり, 好 意 性 が 低 下 している 可 能 性 が ある そしてそういった 部 分 が 原 因 で 英 語 を 使 って 自 分 の 思 いを 伝 えること がで きなくなっている 可 能 性 が 高 い 今 後 は, 小 学 校 で 外 国 語 が 教 科 になるにあたって, この 部 分 を 解 消 させる 取 組 を 丁 寧 に 考 えていかないと, 英 語 嫌 いを 増 加 させる 可 能 性 もある 小 中 の 段 差 を 解 消 するためのカリキュラムの 工 夫 や 教 職 員 の 力 量 向 上,また 質 問 をしやすい 環 境 づくりを 丁 寧 に 行 う 必 要 がある 4.2 結 論 と 今 後 の 課 題 熊 取 町 においては, 小 学 校 外 国 語 活 動 の 教 科 化 に 向 けて,10 年 程 前 から 研 究 を 行 っ てきた 北 小 学 校 における 全 校 体 制 での 研 究,また 使 える 英 語 プロジェクト 事 業 研 究 推 進 校 の 研 究 等, 様 々な 取 り 組 みを 工 夫 し 実 践 もしてきた 英 語 を 楽 しみながら, 日 常 化 する 工 夫 をコンセプトに 人 的 配 置 の 充 実 (NET4 名,JTE3 名 ),カリキュラムの 作 成 (WEB ページの 立 ち 上 げ), 小 中 連 携 した 公 開 授 業 研 究 授 業 の 充 実,またモデル 授 業 を 中 心 とした 実 践 的 な 担 当 者 会 や 研 修 会 等 も 多 く 行 っている 現 状 では, 少 しずつ 研 究 の 成 果 も 出 てきているが,まだまだ 課 題 も 多 く 見 受 けられる 北 小 学 校 と 使 える 英 語 プロジェクト 実 践 研 究 校 2 校 には, 共 通 の 成 果 と 課 題 が 見 受 けられる 良 い 部 分 はさらに 伸 ばし, 課 題 を 改 善 する 取 組 も 教 育 委 員 会 がリーダーシ 48
ップを 発 揮 しながら 推 進 していく 予 定 である 具 体 的 には 平 成 26 年 度 からは, 全 小 中 学 校 における CAN DO リストの 作 成 ( 達 成 目 標 の 明 確 化 ) 全 小 学 校 における 公 開 授 業 の 実 施 ( 教 職 員 の 力 量 向 上 ) 大 学 等 関 係 機 関 と 連 携 をした 小 中 合 同 担 当 者 会 や 研 修 会 の 充 実 ( 小 中 / 外 部 機 関 との 連 携 ), 家 庭 学 習 の 工 夫 等 を 中 心 に, 少 しでも 児 童 生 徒 の 英 語 能 力 を 向 上 させる 事 ができるよ うな 授 業 の 充 実 教 職 員 の 力 量 向 上 をキーワードに, 発 達 段 階 に 応 じた 丁 寧 な フ ォニックス 学 習 やライティング 学 習 等 も 取 り 入 れ,また 充 実 したカリキュラムの 工 夫 改 善 に 努 めながら,2020 年 度 の 教 科 化 に 向 けて 努 力 をしていくつもりである 49