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Transcription:

経 営 承 継 円 滑 化 法 の 事 業 承 継 対 策 Ⅰ 中 小 企 業 の 事 業 承 継 に 関 する 問 題 を 解 決 する 経 営 承 継 円 滑 化 法 1.オーナー 経 営 者 に 生 じるさまざまな 問 題 2. 納 税 資 金 確 保 の 必 要 性 3. 円 滑 な 事 業 承 継 を 行 うための 経 営 承 継 円 滑 化 法 Ⅱ 納 税 資 金 の 確 保 対 策 1. 保 険 料 による 納 税 資 金 対 策 2. 収 益 不 動 産 の 購 入 による 納 税 資 金 対 策 Ⅲ 経 営 承 継 円 滑 化 を 活 用 した 事 業 承 継 対 策 1. 遺 留 分 に 関 する 民 法 特 例 の 活 用 2. 金 融 支 援 措 置 の 活 用 3. 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 活 用 4. 贈 与 税 の 増 税 猶 予 制 度 の 活 用

Ⅰ 中 小 企 業 の 事 業 承 継 に 関 する 問 題 を 解 決 する 経 営 承 継 円 滑 化 法 1 オーナー 経 営 者 に 生 じるさまざまな 問 題 オーナー 経 営 者 の 場 合 自 社 株 式 の 大 部 分 を 所 有 しているケースがほとんどです その ようなオーナー 経 営 者 が 事 業 承 継 の 際 以 下 のような 様 々な 問 題 が 起 こり 得 ます 相 続 税 負 担 額 の 問 題 遺 産 分 割 の 問 題 後 継 者 の 財 産 が 自 社 株 しか 残 らない 問 題 相 続 税 の 納 税 資 金 問 題 会 社 の 相 続 税 負 担 問 題 1

2 納 税 資 金 確 保 の 必 要 性 円 滑 な 承 継 を 阻 害 する 納 税 による 負 担 中 小 企 業 がその 事 業 を 次 世 代 に 円 滑 に 承 継 することは その 事 業 の 継 続 発 展 を 通 じ 地 域 経 済 への 貢 献 や 雇 用 の 確 保 など 国 地 方 自 治 体 そして 多 くの 国 民 にとって 非 常 に 重 要 になります しかし 多 くの 中 小 企 業 の 経 営 者 が 円 滑 な 事 業 承 継 を 困 難 な 課 題 として 捉 えているのは 事 業 承 継 の 際 に 生 じてくる 納 税 の 問 題 です 後 継 者 候 補 がいる 場 合 であっても 事 業 承 継 の 段 階 から 後 継 者 に 多 額 の 税 金 が 課 されるということになれば その 重 い 負 担 に 尻 込 みし てしまう 企 業 も 現 れるでしょう 実 際 事 業 を 承 継 するまでは 自 ら の 生 活 基 盤 を 築 き 上 げた 人 にとっては その 安 定 した 生 活 を 捨 てて 多 額 の 税 金 を 払 ってまで 敢 えていばらの 道 に 進 むことについて 現 実 的 ではないと 判 断 する 人 間 がいても 不 思 議 ではありません 納 税 の 影 響 による 事 業 規 模 縮 小 の 危 険 性 実 際 に 事 業 を 承 継 した 場 合 を 考 えてみても 納 税 による 負 担 は 後 継 者 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすことになります 中 小 企 業 庁 が 実 施 したア ンケートによると 中 小 企 業 経 営 者 の 個 人 財 産 に 占 める 自 社 株 式 や 事 業 用 資 産 の 割 合 は 平 均 で 約 3 分 の2と 非 常 に 高 くなっています 生 前 贈 与 による 贈 与 時 または 現 経 営 者 の 相 続 開 始 時 に 自 社 株 式 や 事 業 用 資 産 を 相 続 した 後 継 者 にとって 多 額 の 贈 与 税 や 相 続 税 が 課 税 された 場 合 取 得 した 自 社 株 式 はそれ 自 体 に 換 金 性 がなく また 事 業 用 資 産 はその 後 の 事 業 活 動 に 必 要 不 可 欠 である 状 況 を 考 える と どのように 調 達 していくのかということが 大 きな 課 題 となって きます 仮 に 後 継 者 が 納 税 資 金 に 相 当 する 現 金 等 を 持 ち 合 わせていても 中 小 企 業 の 経 営 者 は 会 社 の 債 務 を 個 人 的 に 保 障 している 場 合 が 多 く 単 純 にその 資 金 を 納 税 に 充 ててしまうと その 後 の 会 社 運 営 に 悪 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 が 強 まります 納 税 資 金 を 抽 出 するために 事 業 用 資 産 を 切 り 売 りし 事 業 承 継 前 よりも 事 業 規 模 の 縮 小 が 余 儀 なくさ れ 結 果 的 に 承 継 後 衰 退 していく 会 社 が 生 まれてしまうことも 十 分 に 考 えられます そのため あらゆる 角 度 から 考 えても 事 業 承 継 の 際 に 生 じる 税 負 担 は 中 小 企 業 の 円 滑 な 事 業 承 継 にとって 大 きな 障 害 となってしまいます 上 記 の 理 由 からもわかる 通 り 後 継 者 にとって 事 業 承 継 を 円 滑 に 進 めるためには 納 税 資 金 の 確 保 のための 対 策 が 重 要 な 役 割 を 果 た すことになります 2

3 円 滑 な 事 業 承 継 を 行 うための 経 営 承 継 円 滑 化 法 平 成 20 年 5 月 に 中 小 企 業 における 経 営 の 承 継 の 円 滑 に 関 する 法 律 が 成 立 しました この 法 律 は 中 小 企 業 が 円 滑 に 事 業 承 継 を 行 い その 結 果 として 安 定 した 雇 用 を 保 障 す ることを 目 的 に 制 定 されました 我 が 国 の 中 小 企 業 を 取 り 巻 く 環 境 は 将 来 にわたって 事 業 を 継 続 することは 極 めて 困 難 な 状 況 にありましたが 制 定 により 文 字 通 り 円 滑 な 承 継 が 可 能 となりました 要 となる3 本 柱 は 以 下 のようになります 遺 留 分 に 関 する 民 法 特 例 金 融 支 援 相 続 税 贈 与 税 の 課 税 についての 措 置 これらは 中 小 企 業 経 営 者 にとっては 極 めて 重 要 であり 経 営 承 継 を 円 滑 化 させる 有 効 な 制 度 といえます なかでも 制 定 によって 最 も 大 きな 影 響 効 果 をもたらすのは 贈 与 税 相 続 税 を 中 心 とした 税 制 に 係 る 部 分 です 中 小 企 業 庁 が 制 度 創 設 によって 考 える 事 業 承 継 の 全 体 的 流 れは 次 のとおりです 3

我 が 国 の 経 済 雇 用 の 中 心 を 担 う 中 小 企 業 の 成 長 発 展 には 将 来 にわたる 継 続 的 な 承 継 が 必 要 不 可 欠 です そのため 制 定 によって 上 記 の 図 のような 理 想 的 な 承 継 モデルを 構 築 することが 可 能 となりました 具 体 的 には 1 代 目 の 経 営 者 が2 代 目 の 経 営 者 に 自 社 株 式 の 生 前 贈 与 を 行 った 場 合 には 贈 与 税 が 課 税 されることになります ただし 一 定 の 要 件 を 満 たす 場 合 には 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 が 可 能 となります その 後 1 代 目 の 経 営 者 が 死 亡 した 場 合 には 2 代 目 の 経 営 者 が1 代 目 の 経 営 者 から 相 続 または 遺 贈 により 自 社 株 式 を 取 得 したものとみなされ 相 続 税 が 課 税 されることになります しかし 経 済 産 業 大 臣 の 確 認 を 受 け かつ 一 定 の 要 件 を 満 たす 場 合 には その 自 社 株 式 に ついて 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 を 受 けることができます また 2 代 目 経 営 者 から3 代 目 経 営 者 に 対 して 自 社 株 式 の 生 前 贈 与 を 行 った 場 合 には 贈 与 税 が 課 税 されることになりますが こちらも 一 定 の 要 件 を 満 たす 場 合 には 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 を 受 けることができます このようなモデルにより 事 業 承 継 を 進 め 贈 与 税 と 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 を 組 み 合 わせて 利 用 することにより 贈 与 税 と 相 続 税 の 納 税 の 機 会 を 継 続 して 繰 り 延 べることが 可 能 とな ります この 繰 り 延 べ 効 果 により 事 業 承 継 の 際 の 税 負 担 を 回 避 することができるため 円 滑 な 事 業 承 継 の 実 現 が 可 能 となります 創 設 により このようなモ デルを 構 築 することができました 4

Ⅱ 納 税 資 金 の 確 保 対 策 どのような 形 で 事 業 承 継 対 策 を 行 ったとしても 相 続 税 は 必 ず 発 生 するものです 納 税 時 に 資 金 繰 りに 困 らないよう 事 前 に 納 税 資 金 の 確 保 を 行 っておかなければなりません 延 納 や 物 納 が 可 能 な 場 合 もありますが 相 続 税 の 納 付 は 現 金 一 時 納 付 が 原 則 となってい ます 1 保 険 料 による 納 税 資 金 対 策 相 続 発 生 時 に 相 続 人 ( 子 )が 受 け 取 る 保 険 金 は 一 時 所 得 になります 受 取 保 険 金 課 税 税 額 相 続 人 ( 子 ) 一 時 所 得 所 得 税 等 一 時 所 得 の 算 式 ( 受 取 保 険 金 - 支 払 保 険 料 - 50 万 円 ) 2 オーナーが 高 齢 の 場 合 多 少 の 贈 与 税 を 支 払 ってでも 相 当 高 額 な 保 険 料 を 支 払 い 実 行 し ます 変 額 保 険 ( 終 身 型 )に 加 入 した 場 合 以 下 のようになります 相 続 人 等 ( 子 孫 )への 贈 与 金 額 170 歳 のオーナーで 相 続 人 が 年 払 保 険 料 250 万 円 を 支 払 い 10 年 後 に 相 続 が 発 生 した 場 合 で 保 険 金 額 は 3,700 万 円 とします 2 一 時 所 得 の 計 算 は (3,700 万 円 -2,500 万 円 -50 万 円 ) 2 = 575 万 円 3 一 時 所 得 税 等 は 約 290 万 円 4 相 続 人 ( 子 )の 手 取 額 は 保 険 金 額 3,700 万 円 - 所 得 税 290 万 円 = 約 3,410 万 円 5

2 収 益 不 動 産 の 購 入 による 納 税 資 金 対 策 オーナーは 現 金 2 億 円 を 出 資 して 株 式 会 社 を 設 立 するとします 1 払 込 資 本 金 は1 億 円 とし 1 億 円 は 資 本 準 備 金 とします( 会 社 法 により 可 能 です) また 資 本 金 を 減 資 して 小 さくすることも 可 能 です 借 方 貸 方 預 金 2 億 円 資 本 金 1 億 円 資 本 準 備 金 1 億 円 2 会 社 は2 億 円 の 借 入 れを 行 い 4 億 円 で 収 益 不 動 産 ( 賃 貸 ビル マンション 等 )を 購 入 します 借 方 貸 方 土 地 2 億 円 借 入 金 2 億 円 建 物 2 億 円 資 本 金 1 億 円 資 本 準 備 金 1 億 円 合 計 4 億 円 合 計 4 億 円 イ) 借 入 金 は3 年 間 元 本 据 置 きとします ロ) 本 件 のように 自 己 資 金 が 50%もある 物 件 では 諸 経 費 を 差 し 引 いても 利 益 が 生 じま す ハ) 株 式 会 社 の3 年 後 の 年 間 収 支 例 借 入 金 返 済 1,000 万 円 家 賃 収 入 2,400 万 円 支 払 利 子 400 万 円 役 員 報 酬 等 1,000 万 円 合 計 2,400 万 円 合 計 2,400 万 円 家 賃 収 入 はネット( 諸 経 費 差 引 後 ) 利 回 り6%とします 借 入 金 の 返 済 は 元 本 据 置 き 後 20 年 払 いとなります 借 入 金 の 金 利 は 年 利 2%とします 6

株 式 会 社 の 株 式 の 評 価 不 動 産 取 得 の3 年 後 に 株 式 会 社 の 株 式 の 評 価 が 下 がります 1 土 地 の 相 続 税 評 価 額 借 地 権 割 合 70% 借 家 権 割 合 30%の 地 域 とし 路 線 価 等 の 相 続 税 評 価 額 が 1 億 8,000 万 円 になります 2 18,000 万 円 (1-70% 30%)=14,220 万 円 3 建 物 の 相 続 税 評 価 額 建 物 の 固 定 資 産 税 評 価 額 が1 億 2,000 万 円 ( 時 価 の60%~70%が おおよその 固 定 資 産 税 評 価 額 になっている)とすると8,400 万 円 になります ( 借 家 権 割 合 30%) 12,000 万 円 (1-30%)=8,400 万 円 4 不 動 産 所 得 の3 年 後 の 相 続 税 評 価 額 による 株 式 会 社 の 純 資 産 価 額 (3,700 万 円 -2,500 万 円 -50 万 円 ) 2 = 575 万 円 土 地 14,220 万 円 借 入 金 20,000 万 円 建 物 8,400 万 円 ( 純 資 産 ) (2,620 万 円 ) 3 年 間 の 利 益 金 による 剰 余 金 の 増 加 はないものとする このように 当 初 のオーナーの 株 式 出 資 の 額 2 億 円 が3 年 後 には 2,620 万 円 に 下 がること になります 7

Ⅲ 経 営 承 継 円 滑 化 を 活 用 した 事 業 承 継 対 策 1 遺 留 分 に 関 する 民 法 特 例 の 活 用 遺 留 分 に 関 する 民 法 の 特 例 の 概 要 この 特 例 は 民 法 に 定 められている 遺 留 分 に 関 する 特 例 です 中 小 企 業 の 経 営 を 円 滑 に 承 継 するための 要 素 の 一 つに 議 決 権 ( 株 式 )の 承 継 があります 後 継 者 が 議 決 権 を 相 続 することが 円 滑 な 事 業 承 継 には 最 も 望 ましい 形 です しかし 中 小 企 業 経 営 者 の 中 に は 事 業 に 関 係 する 資 産 ( 株 式 や 事 業 用 不 動 産 等 )が 財 産 の 大 半 を 占 めている 場 合 があり 遺 留 分 の 規 定 により 後 継 者 に 十 分 な 財 産 を 相 続 できなくなる 可 能 性 があります 後 継 者 への 円 滑 な 事 業 用 資 産 の 相 続 を 支 援 することを 目 的 として 経 営 承 継 円 滑 化 法 では 遺 留 分 の 規 定 に 一 定 の 特 例 を 設 けることにな りました 遺 留 分 の 概 要 と 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 価 額 遺 留 分 とは 相 続 における 遺 産 分 割 の 際 に 最 低 限 遺 産 を 相 続 する ことができる 権 利 を 言 います 自 分 の 財 産 は 自 由 に 処 分 できるもの とされており それは 生 前 に 限 らず 死 後 でも 同 様 と 考 えられてい ます 死 後 の 場 合 遺 言 という 方 法 により 財 産 の 処 分 を 指 示 するこ とが 出 来 ます しかし 全 財 産 を 親 族 以 外 の 人 に 相 続 する という 遺 言 があったら どうなるでしょうか 残 された 遺 族 は 住 む 家 や 他 の 財 産 の 全 てを 奪 われ その 後 の 生 活 に 大 きな 支 障 をきたす 可 能 性 があります そこ で 民 法 ではこのような 事 態 を 回 避 するために 遺 留 分 として 最 低 限 相 続 できる 権 利 を 定 めています 遺 留 分 の 権 利 者 原 則 として 法 定 相 続 人 ですが 兄 弟 姉 妹 及 びその 子 ( 甥 姪 )は 除 かれます 遺 留 分 の 比 率 原 則 として 法 定 相 続 分 の2 分 の 1 となります ただし 父 母 祖 父 母 等 の 直 系 尊 属 の 場 合 には3 分 の1となります 8

遺 留 分 の 計 算 の 基 礎 となる 財 産 の 範 囲 遺 留 分 の 計 算 の 基 礎 となる 財 産 については 死 亡 時 に 所 有 していた 財 産 だけではありま せん 民 法 では 以 下 の 財 産 から 債 務 を 控 除 した 金 額 が 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 とされ ています 相 続 開 始 時 の 財 産 相 続 開 始 前 1 年 間 に 行 われた 贈 与 特 別 受 益 被 相 続 人 が 相 続 開 始 時 に おいて 有 した 財 産 相 続 前 1 年 以 内 の + + 特 別 受 益 - 生 前 贈 与 負 債 遺 留 分 の 算 定 を 行 うには 財 産 の 範 囲 の 他 に その 評 価 額 が 重 要 となります 民 法 において 評 価 額 は 贈 与 時 ではなく 相 続 開 始 時 とされています つまり 過 去 の 贈 与 等 により 取 得 した 財 産 についても 贈 与 時 の 価 額 ではなく 相 続 開 始 時 の 価 額 となり 大 き く 変 動 している 可 能 性 があります 例 えば 10 年 前 に 後 継 者 である 息 子 に 1,000 万 円 で 贈 与 をした 株 式 が 息 子 の 努 力 に より 業 績 が 向 上 し 相 続 開 始 時 に1 億 円 となっていた 場 合 には 1 億 円 が 遺 留 分 算 定 の 基 礎 財 産 となってしまいます 現 在 の 規 定 では 贈 与 後 の 企 業 貢 献 による 価 値 の 増 加 につい ては 一 切 考 慮 されないこととなっています 遺 留 分 に 関 する 民 法 特 例 の 適 用 要 件 経 営 承 継 円 滑 化 法 における 中 小 企 業 者 は 次 のように 規 定 されてい ます 資 本 金 従 業 員 数 製 造 業 その 他 業 種 3 億 円 以 下 または 300 人 以 下 卸 売 業 1 億 円 以 下 または 100 人 以 下 小 売 業 5,000 万 円 以 下 または 50 人 以 下 サービス 業 5,000 万 円 以 下 または 100 人 以 下 また 特 例 として 下 記 の 業 種 については その 範 囲 が 拡 大 されてい ます 資 本 金 従 業 員 数 ゴム 製 品 製 造 業 1 3 億 円 以 下 または 900 人 以 下 ソフトウェア 業 又 は 3 億 円 以 下 または 300 人 以 下 情 報 処 理 サービス 業 旅 館 業 5,000 万 円 以 下 または 200 人 以 下 1 自 動 車 又 は 航 空 機 用 タイヤ 及 びチューブ 製 造 業 並 びに 工 業 用 ベルト 製 造 業 を 除 く 9

この 特 例 を 受 けるためには 次 の3つの 手 続 きが 必 要 となります 特 例 の 適 用 を 受 けるための 具 体 的 手 続 き 1 推 定 相 続 人 全 員 による 合 意 2 経 済 産 業 大 臣 の 確 認 3 家 庭 裁 判 所 の 許 可 しかし 家 庭 裁 判 所 の 許 可 を 受 けた 後 でも 次 のような 事 由 が 生 じ たときには その 効 力 が 失 われます 経 済 産 業 大 臣 の 確 認 が 取 り 消 されたこと 旧 代 表 者 の 生 存 中 に 後 継 者 が 死 亡 し 又 は 後 見 開 始 若 しくは 補 佐 開 始 の 審 判 を 受 けたこと 本 件 合 意 の 当 事 者 以 外 の 者 が 新 たに 旧 代 表 者 の 推 定 相 続 人 と なったこと 本 件 合 意 の 当 事 者 の 代 襲 者 が 旧 代 表 者 の 養 子 となったこと 2 金 融 支 援 措 置 の 活 用 金 融 支 援 措 置 の 活 用 現 経 営 者 の 退 任 や 死 亡 により 事 業 承 継 をした 代 表 者 個 人 やその 会 社 にとって 次 のようなケースに 遭 遇 した 場 合 多 くの 資 金 が 必 要 に なると 考 えられます 1 相 続 税 贈 与 税 の 納 税 2 自 社 株 式 事 業 用 資 産 の 買 い 取 り 3MBOなどの 親 族 外 承 継 の 際 の 株 式 の 買 い 取 り 4 経 営 者 の 交 代 による 取 引 先 金 融 機 関 の 信 用 低 下 による 資 金 繰 りの 悪 化 現 経 営 者 の 個 人 財 産 が 自 社 株 式 や 事 業 用 資 産 が 中 心 となる 場 合 に は 換 金 性 が 乏 しく 今 後 の 事 業 活 動 を 考 えても 売 却 することがで きない 資 産 であるため 資 金 調 達 が 困 難 となる 後 継 者 や 会 社 が 多 く 見 受 けられます このような 状 況 が 続 けば 今 後 の 会 社 運 営 に 問 題 が 生 じてくることは 当 然 です スタートからこのような 負 担 が 後 継 者 の 肩 に 重 くのしかかるようでは 後 継 者 としての 実 力 を 発 揮 する どころか 資 金 調 達 がうまくいかず 最 悪 倒 産 という 事 態 を 招 いてし まう 可 能 性 もあります 10

そこで 事 業 承 継 後 の 事 業 運 営 の 円 滑 化 を 資 金 調 達 の 面 からバック アップする 目 的 で 2つ 目 の 柱 として 金 融 支 援 措 置 の 活 用 をご 紹 介 いたします この 経 営 承 継 円 滑 化 法 における 金 融 支 援 措 置 は 大 きく 中 小 企 業 自 体 に 行 われる 金 融 支 援 と 中 小 企 業 の 代 表 者 個 人 に 行 われる 金 融 支 援 の2つ 対 象 者 を 念 頭 に 制 度 化 されています ここからは 経 営 承 継 円 滑 化 法 における 金 融 支 援 措 置 を2つの 法 律 をもとに 説 明 していきます 中 小 企 業 信 用 保 険 法 の 特 例 中 小 企 業 自 体 または 中 小 企 業 の 代 表 者 個 人 に 対 する 金 融 支 援 措 置 と して 創 設 されたものが 中 小 企 業 信 用 保 険 法 の 特 例 になります こ の 制 度 は 経 済 産 業 大 臣 の 認 定 を 受 けた 中 小 企 業 者 が 事 業 承 継 に 関 連 して 金 融 機 関 から 借 り 入 れを 行 う 際 に 信 用 保 証 協 会 の 保 証 を 拡 大 しやすくすることで 従 来 よりも 借 り 入 れをしやすくするため の 制 度 となります 具 体 的 には 中 小 企 業 者 の 事 業 に 必 要 な 資 金 に ついて 中 小 企 業 信 用 保 険 法 に 規 定 されている 普 通 保 険 ( 限 度 額 2 億 円 ) 無 担 保 保 険 ( 限 度 額 8,000 万 円 ) 特 別 小 口 保 険 ( 限 度 額 1,250 万 円 )を 別 枠 化 します これにより 信 用 保 証 協 会 の 債 務 保 証 も 実 質 別 枠 化 され 中 小 企 業 者 が 当 該 債 務 保 証 を 受 けることで 金 融 機 関 からの 資 金 調 達 が 行 いやすくなるという 仕 組 みになります 日 本 政 策 金 融 公 庫 法 等 の 特 例 現 行 制 度 では 日 本 政 策 金 融 公 庫 及 び 沖 縄 振 興 開 発 金 融 公 庫 から 代 表 者 個 人 が 融 資 を 受 けることはできませんでした しかし 事 業 承 継 に 際 しては 後 継 者 自 身 が 借 入 れをしなければならない 場 面 も 多 いのが 実 情 です そこで 認 定 を 受 けた 中 小 企 業 者 の 代 表 者 個 人 が 必 要 とする 資 金 で あって 当 該 中 小 企 業 者 の 事 業 活 動 の 継 続 に 必 要 なものについては 日 本 政 策 金 融 公 庫 等 から 代 表 者 個 人 が 融 資 を 受 けることができるよ うにする 制 度 が 日 本 政 策 金 融 公 庫 法 等 の 特 例 となります この 場 合 の 金 利 については 通 常 の 金 利 よりも 特 別 に 低 い 利 率 が 適 用 さ れます 11

3 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 活 用 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 概 要 相 続 に 伴 う 株 式 等 の 承 継 による 相 続 税 の 負 担 を 軽 減 するために 代 表 者 であった 被 相 続 人 の 所 有 する 会 社 の 株 式 等 を 後 継 者 である 相 続 人 が 相 続 した 場 合 その 相 続 した 議 決 権 株 式 等 の 評 価 額 の 80% に 対 応 する 相 続 税 の 納 税 が 猶 予 される 制 度 が 設 けられました この 制 度 は 平 成 20 年 10 月 1 日 以 後 の 相 続 に 遡 って 適 用 されま す 対 象 となる 中 小 企 業 等 の 要 件 対 象 となる 会 社 は 民 法 特 例 と 同 様 ですが 下 記 の 条 件 に 該 当 する 会 社 については 対 象 外 となります 風 俗 営 業 会 社 資 産 保 有 型 会 社 ( 有 価 証 券 不 動 産 等 の 資 産 が 総 資 産 の70% 以 上 ) 資 産 運 用 型 会 社 ( 資 産 運 用 による 収 入 が 総 収 入 の70% 以 上 ) 直 近 の 事 業 年 度 における 総 収 入 金 額 がゼロの 会 社 常 時 使 用 する 従 業 員 の 数 がゼロの 会 社 特 別 子 会 社 が 大 法 人 等 又 は 風 俗 営 業 会 社 である 会 社 拒 否 権 付 種 類 株 式 ( 黄 金 株 )を 発 行 している 場 合 にはその 株 式 を 経 営 承 継 相 続 人 以 外 が 保 有 していない 場 合 一 定 の 現 物 出 資 等 資 産 の 割 合 が70% 以 上 の 会 社 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 をうけるためには 相 続 発 生 前 に 経 済 産 業 大 臣 の 認 定 をうけることが 必 要 となります しかし 年 齢 的 に 事 業 承 継 計 画 を 立 てることが 困 難 等 次 のような 場 合 には 経 済 産 業 大 臣 の 確 認 は 不 要 とする 例 外 規 定 が 設 けられています 代 表 者 が 被 相 続 人 の 親 族 であり 被 相 続 人 が60 歳 未 満 で 死 亡 した 場 合 代 表 者 が 被 相 続 人 の 親 族 であり かつ 死 亡 の 直 前 において 役 員 であった 場 合 において 死 亡 直 前 において その 代 表 者 が 所 有 していた 株 式 と 公 正 証 書 遺 言 により 取 得 した 株 式 等 の 合 計 が 議 決 権 の50% 超 となる 場 合 12

経 営 承 継 相 続 人 の 要 件 後 継 者 であり かつ 役 員 に 就 任 していること 同 族 株 主 で 過 半 数 の 議 決 権 を 有 すること 同 族 株 主 の 中 で 筆 頭 株 主 であること 等 で 認 定 がなくても 制 度 の 適 用 を 認 められる 場 合 もある 被 相 続 人 の 要 件 会 社 を 経 営 していたこと 同 族 株 主 で 過 半 数 の 議 決 権 を 有 すること 同 族 株 主 の 中 で 筆 頭 株 主 であること 等 納 税 猶 予 額 の 免 除 次 のような 場 合 相 続 税 申 告 時 に 納 税 猶 予 された 税 額 が 免 除 されま す また 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 を 受 けた 場 合 経 済 産 業 大 臣 の 認 定 の 有 効 期 間 (5 年 間 )は 毎 年 1 回 その 後 は3 年 ごとに 税 務 署 へ 届 出 を 行 う 必 要 があります 経 営 承 継 相 続 人 が 特 例 適 用 株 式 等 を 死 亡 の 時 まで 保 有 し 続 け た 場 合 相 続 税 の 申 告 期 限 から5 年 経 過 後 で 特 例 適 用 株 式 等 を 継 続 し て 所 有 しており 次 のいずれかに 該 当 する 場 合 対 象 の 会 社 について 破 産 手 続 開 始 の 決 定 又 は 特 別 清 算 開 始 の 命 令 があった 場 合 には 猶 予 税 額 の 全 額 を 免 除 する ( 参 照 ) 次 の 後 継 者 へ 特 例 適 用 株 式 等 を 贈 与 した 場 合 で 後 述 する 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 を 受 ける 場 合 には 猶 予 税 額 の 全 額 を 免 除 する 同 族 関 係 者 以 外 に 特 例 適 用 株 式 等 を 一 括 して 譲 渡 した 場 合 において その 譲 渡 対 価 又 は 時 価 のいずれか 高 い 額 が 猶 予 税 額 を 下 回 る 場 合 には その 差 額 分 を 免 除 する( 参 照 ) 過 去 5 年 間 の 経 営 承 継 相 続 人 及 び 生 計 を 一 にする 者 に 対 して 支 払 われた 配 当 及 び 過 大 役 員 給 与 等 に 相 当 する 額 は 免 除 しない 上 記 条 件 を 満 たさなかった 場 合 納 税 免 除 となった 猶 予 額 の 全 額 納 付 や 一 部 納 付 となる 場 合 があります 13

1 猶 予 額 の 全 額 納 付 事 業 承 継 相 続 人 が 相 続 税 の 法 定 申 告 期 限 からの5 年 間 で 代 表 者 で なくなる 等 事 業 を 継 続 していないと 認 められる 場 合 には その 時 点 で 猶 予 税 額 の 全 額 を 納 付 することとされています 具 体 的 には 次 の 要 件 を 満 たす 必 要 があります 代 表 者 であり 続 けること 雇 用 の8 割 以 上 を 維 持 していること 納 税 猶 予 の 対 象 となった 株 式 を 継 続 して 保 有 していること 2 猶 予 額 の 一 部 納 付 相 続 税 の 法 定 申 告 期 限 から5 年 を 経 過 した 後 に 納 税 猶 予 の 対 象 と なった 株 式 等 の 譲 渡 等 を 行 なった 場 合 には その 納 税 猶 予 の 対 象 と なった 株 式 等 の 総 数 に 対 する 譲 渡 した 株 式 等 の 割 合 に 応 じて 猶 予 税 額 を 納 付 することとなります 3 利 子 税 の 納 付 と 担 保 提 供 相 続 税 は 本 来 法 定 申 告 期 限 までに 納 付 しなければなりませんが 特 例 として 納 税 猶 予 の 規 定 が 設 けられています しかし 上 記 に 挙 げたような 理 由 によって 猶 予 税 額 の 全 部 または 一 部 の 納 付 が 必 要 と なった 場 合 には 本 来 の 支 払 期 日 からの 利 子 に 相 当 する 利 子 税 を 納 付 することとなります また 納 税 猶 予 の 対 象 となった 株 式 等 につ いては その 全 てを 担 保 に 供 することとなります 4 贈 与 税 の 増 税 猶 予 制 度 の 活 用 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 概 要 後 継 者 が 経 営 承 継 円 滑 化 法 に 基 づく 経 済 産 業 大 臣 の 認 定 を 受 けた 非 上 場 会 社 を 経 営 していた 親 族 から 贈 与 によりその 保 有 株 式 の 全 部 を 取 得 し その 会 社 を 経 営 する 場 合 には その 猶 予 対 象 株 式 等 に 係 る 贈 与 税 の 納 税 を 猶 予 する 規 定 が 設 けられました 贈 与 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 具 体 的 要 件 対 象 株 式 贈 与 前 から 既 に 所 有 していたものを 含 めて 発 行 済 み 議 決 権 株 式 の 総 数 の3 分 の2に 達 するまでの 部 分 の 株 式 が 贈 与 税 の 納 税 猶 予 の 対 象 となります 14

適 用 を 受 けるための 要 件 先 代 経 営 者 の 要 件 としては 会 社 の 代 表 者 であったこと 役 員 を 退 任 すること 等 が 挙 げられます 後 継 者 の 要 件 としては 会 社 の 代 表 者 であること 先 代 経 営 者 の 親 族 (6 親 等 以 内 の 血 族 配 偶 者 3 親 等 以 内 の 姻 族 )であるこ と 等 が 挙 げられます 贈 与 に 関 する 要 件 としては 先 代 経 営 者 が 所 有 している 株 式 の 全 部 を 括 で 贈 与 すること3 分 の2を 超 える 部 分 については 通 常 の 贈 与 ( 相 続 時 精 算 課 税 との 併 用 も 可 能 )として 取 り 扱 うこと 相 続 税 の 納 税 猶 予 との 関 係 贈 与 税 の 納 税 猶 予 の 適 用 を 受 けた 後 に 先 代 経 営 者 に 相 続 が 発 生 し た 場 合 には 次 のように 取 り 扱 われます 1 代 経 営 者 が 死 亡 した 時 点 で 猶 予 税 額 は 免 除 される 2 与 を 受 けた 特 定 株 式 等 については 相 続 財 産 に 含 めて 相 続 税 を 計 算 する 3の 際 の 評 価 額 について 相 続 時 の 評 価 額 ではなく 贈 与 時 の 評 価 額 とする 42で 計 算 した 相 続 税 額 については 相 続 税 の 納 税 猶 予 制 度 の 適 用 を 受 けることが 出 来 る 55 年 間 の 事 業 継 続 要 件 は 贈 与 時 から 発 生 していることとなる 15