Report Ⅰ 買 ってはいけない!? 外 国 人 が 大 量 に 買 った 株 金 融 研 究 部 主 任 研 究 員 井 出 真 吾 side@nli-research.co.jp 1 はじめに 日 本 の 株 式 市 場 で 外 国 人 の 存 在 感 が 増 している そのせいもあるのか 2013 年 3 月 期 の 決 算 発 表 が 本 格 化 した 頃 から 外 国 人 が 大 量 に 株 を 買 った 企 業 はどこか 外 国 人 はどのような 企 業 を 好 むか といった 情 報 を 目 にする 機 会 が 増 えた いずれも 株 の 売 買 を 推 奨 する 旨 は 明 記 していないようだが 情 報 の 受 け 手 側 ( 読 者 )には 株 式 投 資 の 参 考 情 報 にしようと 考 える 向 きもあろう 果 たして 外 国 人 の 後 追 いで 株 を 買 うと 儲 かるのだろうか そこで 本 稿 では 外 国 人 持 ち 株 比 率 と 企 業 の 経 営 指 標 や 株 式 収 益 率 の 関 連 性 を 調 べた その 結 果 外 国 人 が 大 きく 買 い 越 した 企 業 は 必 ずしもその 後 の 経 営 指 標 が 他 社 より 改 善 する 訳 ではないことや 安 易 にこれら 企 業 の 株 を 買 っても 儲 からない 傾 向 がみられた 2 日 本 株 と 外 国 人 投 資 家 の 関 係 1 日 本 株 市 場 で 存 在 感 トップの 外 国 人 東 京 証 券 取 引 所 などが 発 表 した 2012 年 度 の 株 式 分 布 状 況 によると 外 国 法 人 等 ( 以 下 外 国 人 ) が 日 本 株 を 保 有 する 割 合 ( 金 額 ベース)は 前 年 度 比 1.7 ポイント 増 加 して 過 去 最 高 の 28.0%となっ た( 図 表 1) 過 去 からの 推 移 を 見 ると 1980 年 代 は 事 業 法 人 や 信 託 銀 行 ( 年 金 基 金 や 投 資 信 託 の 保 有 分 が 多 い) 生 損 保 などが 日 本 株 の 殆 どを 保 有 しており 外 国 人 のシェアは1 割 に 満 たなかった しかし 90 年 代 以 降 持 ち 合 い 解 消 等 により 国 内 投 資 家 が 日 本 株 の 保 有 を 徐 々に 減 らしたのと 対 照 的 に 外 国 人 はほぼ 一 貫 して 保 40% 図 表 1: 主 要 投 資 部 門 別 の 株 式 保 有 比 率 ( 金 額 ベース) 40% 信 託 銀 行 生 損 保 その 他 金 融 外 国 法 人 等 事 業 法 人 等 30% 30% 20% 個 人 その 他 20% 10% 都 銀 地 銀 等 10% 有 シェアを 拡 大 し3 年 前 から 最 大 の 株 主 となっ ている 0% 0% 1986 1988 1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 ( 資 料 ) 東 京 証 券 取 引 所 ほか 06 NLI Research Institute REPORT September 2013
外 国 人 は 保 有 金 額 だけでなく 売 買 金 額 でも5 割 ~6 割 と 最 大 のシェアを 占 める そのため 外 国 人 の 売 買 動 向 は 株 価 に 大 きく 影 響 すると 言 われる 外 国 人 の 保 有 シェアが 20%を 超 えた 2004 年 以 降 につ いて 外 国 人 の 買 い 越 し 額 と 日 経 平 均 の 変 化 率 を 比 べると 買 い 越 し 額 が 大 きいときは 株 価 が 上 昇 大 きく 売 り 越 したときは 下 落 する 傾 向 が 強 い 昨 年 11 図 表 2: 外 国 人 の 買 い 越 し 額 と 日 経 平 均 の 変 化 月 から 今 年 5 月 にかけてのアベノミクス 第 一 段 で 20 日 経 銀 行 保 険 など 国 内 の 機 関 投 資 家 が 売 り 越 す 中 でも 10 平 均 日 本 株 が 大 幅 に 上 昇 したのも 外 国 人 が 牽 引 したとさ の 0 変 化 -10 れる 調 べてみるとこの 間 に 外 国 人 が 買 い 越 した 額 率 ( -20 外 国 人 の 売 買 動 向 と は1ヶ 月 あたり 約 1.4 兆 円 であった 月 平 均 0.1 兆 % ) 日 経 平 均 は 連 動 性 が 高 い -30 円 に 満 たなかった 2012 年 1 月 ~10 月 からは 桁 違 い -2.0-1.0 1.0 2.0 3.0 外 国 人 の 月 間 買 い 越 し 額 ( 兆 円 ) に 増 えており 外 国 人 が 日 本 の 株 価 を 押 し 上 げたと ( 資 料 ) 日 経 NEEDS( 以 下 の 図 表 も 同 じ) 言 われるのもうなづける 2 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 図 表 3に 外 国 人 持 ち 株 比 率 ( 株 数 ベース)の 平 均 的 な 増 減 を 示 す 集 計 方 法 は 1 毎 年 3 月 末 時 点 の TOPIX500 構 成 銘 柄 のうち3 月 決 算 企 業 ( 金 融 を 除 く)を 対 象 に 3 月 末 時 点 における 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 (1 年 前 と 比 べた 変 化 幅 )が 大 きい 順 に 銘 柄 を 並 べ 銘 柄 数 の 等 しい5つのグループに 分 ける 即 ち 第 1グループ(G)は 外 国 人 が 大 幅 に 買 い 越 した 銘 柄 群 第 5Gは 大 幅 に 売 り 越 した 銘 柄 群 となる 2 各 グループについて 外 国 人 持 ち 図 表 3: 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 株 比 率 の 変 化 の 平 均 を 計 算 する( 各 10 期 分 ) 3こうして 求 めた1グループあたり 10 期 分 の 外 国 10 平 均 値 の 更 に 平 均 を 求 める つまり 図 表 3は 人 5 持 7.1 過 去 10 年 において 毎 期 々々の 外 国 人 持 ち 株 ち 0 2.4 比 率 の 増 減 を5つのグループ 別 に 見 ると 平 均 的 株 0.8 比 -5-0.8 に 何 %くらいであったか を 示 している なお 率 -5.0 の -10 分 析 対 象 は 2012 年 3 月 時 点 で 372 銘 柄 1グル 変 化 ープあたり 約 75 銘 柄 である 図 表 3を 見 ると 外 国 人 持 ち 株 比 率 が 最 も 増 加 した 第 1Gの 銘 柄 群 では 平 均 7.1%の 買 い 越 し 反 対 に 最 も 減 少 した 第 5Gでは 5.0%の 売 り 越 しであった ここで 金 融 商 品 取 引 法 には 大 量 保 有 開 示 制 度 というものが 規 定 されている これは 上 場 企 業 の 発 行 済 み 株 式 の 5%を 超 えて 保 有 した 者 は 5 営 業 日 以 内 に 内 閣 総 理 大 臣 に 対 してその 旨 を 記 載 した 大 量 保 有 報 告 書 を 提 出 することが 義 務 付 けられ ている 言 うまでもなく 第 1Gの 7.1%や 第 5Gの-5.0%の 変 化 が 単 一 の 外 国 人 投 資 家 によるもので はないが ±5%の 変 化 がどのくらい 大 きな 意 味 を 持 つか 想 像 できよう 3 外 国 人 はどのような 株 を 買 ったのか 冒 頭 に 述 べたとおり 外 国 人 が 好 む 企 業 の 傾 向 についてはいくつか 報 告 があるが 改 めて 外 国 人 がど NLI Research Institute REPORT September 2013 07
のような 銘 柄 を 好 むのか 確 認 しておこう はじめに 宮 島 保 田 [2012] 1 は 2003 年 ~2008 年 の 東 証 1 部 上 場 銘 柄 を 対 象 とした 分 析 で 企 業 規 模 ( 時 価 総 額 )が 大 きくて 流 動 性 ( 売 買 回 転 率 )が 高 い そし て 海 外 売 上 高 比 率 が 高 い 銘 柄 が 外 国 人 投 資 家 に 選 好 されたことを 示 している 日 本 に 住 んでいない 外 国 人 にとっては 規 模 が 大 きくて 海 外 に 積 極 展 開 している 海 外 で 有 名 な 企 業 が 投 資 対 象 になりや すいと 解 釈 でき 直 感 にもマッチする 逆 の 立 場 で 考 えると 例 えば 日 本 人 が 米 国 企 業 に 投 資 する 場 合 ゼネラルモーターズ(GM)やウォルマート マイクロソフトなど 日 本 で 名 の 通 った 企 業 が 最 初 に 頭 に 浮 かぶのではないだろうか(もっとも 知 らない 企 業 は 頭 に 浮 かびようがないのだが) 一 方 時 価 総 額 や 流 動 性 のほかにも 外 国 人 投 資 家 は 企 業 の 収 益 性 や 成 長 性 を 重 視 すると 言 われる この 観 点 から 分 析 してみよう 図 表 3と 同 様 の 方 法 で 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 と 同 じ 期 の 営 業 利 益 率 および ROE の 関 係 を 集 計 した( 図 表 4) これを 見 ると 外 国 人 が 最 も 買 い 越 した 第 1Gの 銘 柄 群 は 営 業 利 益 率 が 平 均 8.6%となっており 7.5% 程 度 の2G~5Gと 比 べて 突 出 して 高 い 点 が 目 立 つ また 持 ち 株 比 率 が 増 えた 銘 柄 群 ほど ROE も 高 い 単 調 増 加 の 傾 向 があり 最 高 の 第 1G( 平 均 6.8%)と 最 低 の 第 5G(1.5%)では 5.3%の 差 がある 欧 米 企 業 と 比 べて 日 本 企 業 は ROE が 低 いと 言 われるが その 中 でも 相 対 的 に ROE が 高 い 銘 柄 を 外 国 人 が 好 む 傾 向 にあったということだろう また 第 5Gの ROE が 際 立 って 低 い 点 も 特 徴 的 だ ここで 図 表 3と 図 表 4の 各 グループに 属 する 銘 柄 は 全 く 同 じである したがって 外 国 人 持 ち 株 比 率 が 平 均 7.1% 増 加 した 第 1Gに 属 する 銘 柄 の 平 均 的 な 姿 としては 営 業 利 益 率 が 他 に 突 出 して 高 く ROE も 最 も 高 かったと 言 える 同 時 に 平 均 5.0% 売 り 越 した 第 5Gは 営 業 利 益 率 ROE ともに 最 低 水 準 であった やはり 外 国 人 は 本 業 の 収 益 性 や 資 本 効 率 が 高 い 銘 柄 を 好 み 逆 にこれらの 経 営 指 標 が 他 社 に 劣 後 する 銘 柄 は 容 赦 なく 売 却 するようだ 図 表 4: 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 と 経 営 指 標 9.0 営 業 8.0 利 益 7.0 率 6.0 8.6 1ク ルーフ 大 幅 買 越 7.4 7.6 7.6 2G 買 い 越 し 外 国 人 が 大 幅 に 買 い 越 した 企 業 は 営 業 利 益 率 が 突 出 して 高 い 傾 向 3G 中 立 4G 売 り 越 し 7.3 5G 大 幅 売 越 R O E 8.0 6.0 4.0 2.0 6.8 6.1 5.3 外 国 人 が 買 い 越 した 企 業 ほ どROEが 高 い 傾 向 1ク ルーフ 大 幅 買 越 2G 買 い 越 し 3G 中 立 4.7 4G 売 り 越 し 1.5 5G 大 幅 売 越 3 外 国 人 が 買 った 株 のビフォー アフター(Before & After) 1 経 営 指 標 のビフォー アフター 前 章 では 外 国 人 が 大 幅 に 買 い 越 した 銘 柄 は 営 業 利 益 率 や ROE が 高 い 傾 向 が 見 られた 冒 頭 で 述 べた ように ここで 分 析 を 終 えると 投 資 家 をミスリードする 恐 れがある そこで 外 国 人 が 買 う 前 と 買 っ 1 宮 島 英 昭 保 田 隆 明 [2012] 変 貌 する 日 本 企 業 の 所 有 構 造 をいかに 理 解 するか 金 融 庁 金 融 研 究 センター ディスカッション ペー パー シリーズ 2012 年 3 月 08 NLI Research Institute REPORT September 2013
た 後 の 経 営 指 標 や 株 式 収 益 率 を 調 べる 一 般 に 外 国 人 は 成 長 企 業 を 好 むと 言 われる また 議 決 権 を 行 使 するなど 経 営 者 に 対 して 積 極 的 に 注 文 をつける 印 象 もある そうだとすれば 買 う 前 (Before) よりも 買 った 後 (After)で 経 営 指 標 が 改 善 すると 予 想 される この 点 を 確 認 するため 前 章 と 同 様 の 方 法 で 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 と その 前 後 2 年 ずつにおける 経 営 指 標 の 変 化 の 関 係 を 調 べた( 図 表 5) なお ここでは 業 種 によって 経 営 環 境 が 異 なる 点 を 考 慮 するため 各 経 営 指 標 とも 業 種 内 のメディ アン( 中 央 値 )との 差 分 を 基 準 化 している 従 って 図 表 5の 値 はマイナスだからといって 必 ずしも 利 益 率 などが 悪 化 したとは 限 らない あくまで 同 業 他 社 との 相 対 的 な 関 係 を 示 している はじめに 営 業 利 益 率 の 変 化 を 見 ると 過 去 2 図 表 5:Afterでも 優 位 なのは 売 上 増 だけ 年 間 (Before)では 外 国 人 が 買 い 越 した 銘 柄 群 ほど 利 益 率 の 変 化 が 優 位 である ところが 将 来 営 0.1 業 過 去 2 年 間 (Before) 2 年 (After)では Before と 比 べてグループ 利 益 間 の 差 こそ 小 さいものの 第 1Gが 最 も 劣 位 と 率 なった ROE の 変 化 も 似 たような 状 況 で Before は 第 1G 第 2Gが 高 いが After では 第 1G が 最 低 となっている 一 方 売 上 高 の 変 化 につ いては Before After とも 第 1Gが 最 も 優 位 で の 変 化 -0.1 将 来 2 年 間 (After) はあるものの After は Before ほど 高 くない R 0.1 O 過 去 2 年 間 (Before) これらの 結 果 が 示 唆 していることは E の 変 1 外 国 人 は 同 業 他 社 と 比 べて 収 益 性 や 資 本 化 将 来 2 年 間 (After) -0.1 効 率 売 上 規 模 が 改 善 しつつある 企 業 を 好 む 2 外 国 人 が 買 った 後 は 売 上 高 成 長 率 こそ 0.2 売 同 業 他 社 に 勝 るものの 営 業 利 益 率 や ROE 過 去 2 年 間 (Before) 上 0.1 の 改 善 度 はむしろ 他 社 に 劣 る 高 将 来 2 年 間 (After) の ということである なぜ このような 事 象 が 起 変 きるのか 必 ずしも 明 らかではないが 少 なくと 化 -0.1 も 事 前 に 予 想 した 外 国 人 が 買 う 前 (Before) よりも 買 った 後 (After)で 経 営 指 標 が 改 善 する という 仮 説 は 成 り 立 たないようだ( 無 論 個 別 ( 注 ) 業 種 別 にメディアン( 中 央 値 )との 差 を 基 準 化 ( 中 央 値 =0) したがって 縦 軸 の 単 位 は 標 準 偏 差 を 表 す 企 業 レベルでは 仮 説 どおり After で 改 善 したケースもあるだろう) 2 株 式 収 益 率 (リターン)のビフォー アフター 次 に 肝 心 の 株 式 収 益 率 はどうだろうか 前 節 でみたように After では 営 業 利 益 率 や ROE の 改 善 度 が 他 社 に 劣 るからといって 株 式 投 資 先 として 魅 力 が 無 いと 断 定 するのは 早 計 だ なぜなら After も 売 上 高 伸 び 率 は 他 社 を 凌 駕 しているからである 理 屈 から 言 えば 売 上 高 には 天 井 がないが 利 益 率 には おのずと 上 限 がある( 極 端 な 話 コストはゼロにできないので 利 益 率 100%はあり 得 ない) そのため NLI Research Institute REPORT September 2013 09
もしBeforeで 利 益 率 が 上 限 に 達 してしまいAfterではそ の 利 益 率 を 維 持 できたとしても 他 社 が 利 益 率 を 改 善 す れば 同 業 他 社 と 比 べた 改 善 度 は 劣 後 した 格 好 となる しかし 利 益 率 は( 限 界 水 準 で) 変 わらなくても 売 上 高 図 表 6:1 株 あたり 利 益 の 算 式 売 上 高 利 益 率 1 株 あたり 利 益 = 発 行 済 み 株 式 数 が 伸 びれば1 株 あたりの 利 益 は 増 える( 図 表 6) 1 株 あたりの 利 益 が 増 えれば 株 価 は 値 上 がりするの が 自 然 だ つまり 第 1Gの 利 益 率 改 善 度 が 他 のグループに 劣 後 するからといって 必 ずしも After の 株 式 収 益 率 も 劣 後 するとは 限 らないという 仮 説 も 考 えられる では 実 際 に Before と After の 株 式 収 益 率 ( 配 当 込 みリターン)を 見 てみよう 図 表 7は 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 変 化 と 過 去 1 年 間 (Before)および 将 来 1 年 間 (After) 同 じく 前 後 各 6ヶ 月 間 の 株 式 収 益 率 の 関 係 を 示 したものである 外 国 人 持 ち 株 比 率 が 増 えた 銘 柄 ほど Before の 株 式 収 益 率 も 高 く 第 1Gと 第 5Gの 格 差 は1 年 間 で 20% 近 く 6ヶ 月 間 でも 7% 程 度 に 及 ぶ しかも 分 析 対 象 の 10 年 のうち8 年 で 第 1Gの 収 益 率 が 最 も 高 かっ た(6ヶ 月 間 では10 年 のうち7 年 で 最 も 高 かった) 20 株 15 式 の 10 収 5 益 率 0-5 図 表 7:Afterの 株 式 収 益 率 は 高 くない 1ク ルーフ 大 幅 買 越 2G 買 い 越 し 過 去 1 年 間 (Before) 将 来 1 年 間 (After) 3G 中 立 4G 売 り 越 し 5G 大 幅 売 越 8 株 6 過 去 6ヶ 月 間 (Before) 式 4 問 題 は After ではグループ 間 の 収 益 率 にほとん の 2 収 ど 差 が 見 られず 僅 かだが1Gが 最 低 となってい 益 0 る 点 だ この 結 果 は 前 述 した 利 益 率 の 改 善 度 率 -2 将 来 6ヶ 月 間 (After) -4 が 他 に 劣 後 しても 売 上 が 伸 びていれば 株 価 はプ ラスかもしれない という 仮 説 が 当 てはまらない どころか 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 増 減 とその 後 の 株 式 収 益 率 には 殆 ど 関 連 性 が 無 く むしろ 外 国 人 が 大 幅 に 買 い 越 した 株 はその 後 の 収 益 率 が 最 も 低 いこ とを 示 唆 している つまり 外 国 人 持 ち 株 比 率 が 大 きく 増 えたことが 判 明 してから 株 式 を 買 っても 儲 かるかどうかは 眉 唾 物 で 外 国 人 が 買 った 株 を 買 えば 儲 かる など 単 なる 妄 想 に 過 ぎないようだ 実 際 金 山 [2013] 2 は 外 国 人 が 大 幅 に 買 い 増 した 企 業 の 株 価 レーティング(アナリストが 個 別 企 業 の 今 後 の 株 価 見 通 しを 強 気 弱 気 などで 表 す)を 調 査 し 中 には 強 気 が 少 なくマーケットの 評 価 が 高 くないものもある 点 を 指 摘 している では 第 2 章 でみたように 外 国 人 が 大 きく 買 い 越 した 銘 柄 は 利 益 率 や ROE が 高 い 傾 向 にあったにも かかわらず After の 株 式 収 益 率 が 低 いのは 何 故 だろうか これには 外 国 人 の 平 均 保 有 期 間 が 極 端 に 2 金 山 敏 之 [2013] 外 国 人 が 大 幅 に 買 い 増 した 企 業 でマーケットが 強 気 の 銘 柄 は 投 資 のヒント 2013 年 7 月 11 日 10 NLI Research Institute REPORT September 2013
短 いことが 関 連 していると 考 えられる 図 表 8は 宇 野 神 山 [2009] 3 に 倣 い 投 資 主 体 別 の 平 均 保 有 期 間 を 求 めたものだが 外 国 人 の 平 均 保 有 期 間 は 概 ね 0.3 年 未 満 となっている つまり 平 均 的 には 買 って から 3~4 ヶ 月 で 売 却 する 訳 だ となると たとえ3 月 末 時 点 では 大 きく 買 い 越 していたとしても 5 月 ~6 月 場 合 によっては 4 月 早 々に 売 り 払 うこともある 一 方 外 国 人 が 大 きく 買 い 越 した 銘 柄 は どれか という 情 報 が 伝 わるのは 3 月 図 表 8: 外 国 人 の 平 均 保 有 期 間 は3~4ヶ 月 期 決 算 が 発 表 される 5 月 ~6 月 なので こうした 情 報 が 流 れたときには 既 に 外 外 国 人 個 人 事 業 法 人 信 託 銀 行 ( 年 ) 生 損 保 都 銀 地 銀 国 人 は 売 りに 回 っている 可 能 性 が 高 い 2008 年 度 0.15 0.34 6.24 1.00 7.77 11.75 2009 年 度 0.32 0.45 9.00 1.68 17 13.67 そう 考 えれば 決 算 期 末 時 点 の 外 国 人 持 ち 株 比 率 と After の 株 式 収 益 率 に 何 ら 関 連 性 が 無 くても 不 思 議 ではない 2010 年 度 2011 年 度 0.23 0.24 0.50 0.57 9.99 11.02 1.59 1.91 7.49 8.12 12.63 15.89 2012 年 度 0.28 0.50 11.17 2.21 8.93 13.91 ( 注 ) 平 均 保 有 期 間 = 保 有 主 体 別 年 度 末 時 価 総 額 主 体 別 売 買 代 金 総 額 ( 資 料 ) 東 京 証 券 取 引 所 ほか 4 まとめ 本 稿 では 日 本 株 市 場 ではフロー( 売 買 金 額 ) ストック( 保 有 金 額 )ともに 外 国 人 のシェアがトッ プであることを 紹 介 したうえで 外 国 人 持 ち 株 比 率 の 増 減 と 経 営 指 標 や 株 式 収 益 率 の 関 係 を 調 べた その 結 果 1 年 前 と 比 べて 外 国 人 が 大 きく 買 い 越 した 銘 柄 は 1 営 業 利 益 率 や ROE が 高 い 2 同 業 他 社 と 比 べた 営 業 利 益 率 や ROE の 改 善 度 は 過 去 は 高 いが 将 来 は 低 い( 高 Before- 低 After) 3 株 式 収 益 率 は 過 去 は 極 めて 高 いが 将 来 は 最 も 低 い( 超 高 Before- 最 低 After) という 傾 向 が 見 られた 特 に 3の 理 由 については 外 国 人 の 平 均 保 有 期 間 が 3~4 ヶ 月 程 度 と 短 いこと を 挙 げ 外 国 人 が 大 きく 買 い 越 したことが 判 明 した 後 でその 株 を 買 っても 既 に 外 国 人 は 売 りに 回 っ ている 可 能 性 が 高 い 点 を 指 摘 した 外 国 人 が 株 を 大 きく 買 い 越 した 企 業 は 他 社 よりも 営 業 利 益 率 や ROE が 高 く 更 に 売 上 高 伸 び 率 も 高 い 優 良 成 長 株 の 傾 向 がある しかし 外 国 人 が 大 量 に 買 ったことが 判 明 した 後 でこれら 企 業 の 株 を 買 っても 儲 かるとは 限 らない 点 には 注 意 が 必 要 だ つまり 外 国 人 が 大 きく 買 い 越 した 株 といえど も 今 から 買 ってもいい 有 望 銘 柄 と もう 買 ってはいけない 手 遅 れ 銘 柄 が 混 在 することをよ く 認 識 すべきだ 仮 に 外 国 人 と 同 じ 時 期 に 買 うことができれば 儲 かる 可 能 性 が 高 まるが 通 常 そうした 情 報 を 得 るの は 不 可 能 に 近 い 手 掛 かりとなるのは 第 3 章 で 示 した 外 国 人 は 利 益 率 や ROE が 改 善 しつつある 企 業 を 好 む ということだが これも 一 般 の 投 資 家 には 容 易 でない 結 局 のところ 当 該 企 業 の 収 益 性 や 成 長 性 及 びこれら 経 営 内 容 の 改 善 期 待 といったファンダメンタルズ( 基 礎 的 条 件 )が 既 に 株 価 に 織 り 込 まれ 済 みか それともまだ 値 上 がり 余 地 があるか 自 身 での 見 極 めが 求 められる 巷 に 流 れる 情 報 を 思 い 込 み で 利 用 してはいけない 以 上 3 宇 野 淳 神 山 直 樹 [2009] 株 式 保 有 構 造 と 流 動 性 コスト: 投 資 ホライズンの 影 響 早 稲 田 大 学 ファイナンス 研 究 所 ワーキングペー パー シリーズ 2009 年 4 月 NLI Research Institute REPORT September 2013 11