3. 海 岸 の 保 全 に 関 する 基 本 的 な 事 項
3. 海 岸 の 保 全 に 関 する 基 本 的 な 事 項 3.1 茨 城 沿 岸 の 保 全 の 方 向 茨 城 沿 岸 は 東 に 雄 大 な 太 平 洋 に 開 け, 北 部 は 海 食 崖 や 岩 礁 等 の 勇 壮 な 海 岸 景 観, 南 部 は 鹿 島 灘 の 長 大 な 砂 浜 景 観 を 有 している これらの 海 岸 は, 津 波, 高 潮, 波 浪 による 災 害 から 背 後 の 人 命 財 産 を 防 護 する 役 割 を 果 たしてきた その 一 方 で, 海 岸 には, 親 潮 ( 寒 流 )と 黒 潮 ( 暖 流 )の 双 方 の 影 響 を 受 けて, 特 有 の 植 物 が 繁 茂 し, 動 植 物 の 貴 重 な 生 育 生 息 空 間 が 形 作 られている 砂 浜 海 岸 ではアカウミガメの 上 陸 産 卵 やコアジサシの 営 巣, 岩 礁 海 岸 では 豊 富 な 藻 類 が 確 認 されるなど, 重 要 で 豊 かな 環 境 を 有 している また, 海 域 では 古 くから 漁 業 が 盛 んであり, 磯 はアワビ,ウニ, 砂 浜 はチョ ウセンハマグリなどの 好 漁 場 となっている さらに, 各 所 で 海 水 浴 や 釣 り,サ ーフィン 等 の 多 様 なレクリエーション 利 用 も 行 われている また, 北 関 東 はもとより 東 日 本 の 物 流 拠 点 となる 茨 城 港 と 鹿 島 港 の2つの 重 要 港 湾 の 整 備 が 進 められ, 本 県 の 重 要 な 産 業 基 盤 となっている 近 年, 茨 城 沿 岸 の 海 岸 を 取 り 巻 く 状 況 は 変 化 しており, 東 日 本 大 震 災 の 発 生 ( 平 成 23 年 3 月 ), 生 物 多 様 性 基 本 法 ( 平 成 20 年 6 月 )や 景 観 法 ( 平 成 16 年 6 月 )の 制 定 などを 受 け, 災 害 に 強 い 県 土 づくり とともに, 地 域 の 資 源 となっている 生 物 や 景 観 の 保 全 が 求 められていることから, 地 域 特 性 を 活 か し, 防 護 面 環 境 面 利 用 面 のバランスの 取 れた 海 岸 の 保 全, 整 備 に 取 り 組 ん でいく 必 要 がある これらの 特 色 と 背 景 を 踏 まえ, 茨 城 沿 岸 のあるべき 姿 と,その 保 全 の 方 向 を 以 下 のように 定 める 茨 城 沿 岸 のあるべき 姿 と 保 全 の 方 向 茨 城 沿 岸 は, 勇 壮, 長 大 な 景 観 を 形 づくる 一 方 で, 海 の 脅 威 から 私 たちの 暮 らしを 守 る 役 割 を 果 たしてきた また, 沖 合 では 親 潮 ( 寒 流 )と 黒 潮 ( 暖 流 )がぶつ かり 合 うことから, 多 様 な 生 物 相 を 育 む 豊 かな 海 岸 となっている これらの 生 物 の 多 様 性 や 多 彩 な 海 岸 景 観 は, 地 域 の 資 源 となっている それら の 保 全 を 念 頭 に 置 いた 持 続 可 能 な 海 岸 利 用 と, 平 成 23 年 3 月 の 東 日 本 大 震 災 の 甚 大 な 被 害, 影 響 を 教 訓 とした 災 害 に 強 い 海 岸 が 調 和 した 総 合 的 な 海 岸 保 全 が 求 められている この, 人 々が 豊 かに 安 全 に 暮 らし, 憩 い, 集 うことができる 魅 力 的 な 海 岸 を 茨 城 沿 岸 のあるべき 姿 とする そして,そのあるべき 姿 を 達 成 し, 地 域 と 行 政 の 共 同 作 業 により, 将 来 にわた り,その 恩 恵 を 県 民 が 等 しく 享 受 していくことを, 茨 城 沿 岸 の 保 全 の 方 向 とする 54
3.2 海 岸 の 防 護 に 関 する 事 項 3.2.1 海 岸 の 防 護 の 目 標 茨 城 沿 岸 では 高 潮 波 浪 による 災 害 が 発 生 している 地 域 や, 砂 浜 や 崖 の 侵 食 が 進 んでいる 地 域 が 多 くなっている また, 東 日 本 大 震 災 では, 甚 大 な 津 波 被 害 が 生 じたが, 今 後, 再 び 津 波 が 来 襲 することも 否 定 できない 海 岸 はこれら の 災 害 から 背 後 の 人 命 や 財 産 を 防 護 する 役 割 を 担 っている このうち, 津 波 対 策 については, 東 日 本 大 震 災 の 教 訓 を 踏 まえ, 平 成 23 年 9 月 に 国 が 今 後 の 新 たな 津 波 対 策 の 考 え 方 を 示 した( 表 3.1) このため, 茨 城 沿 岸 において 防 護 すべき 地 域 と 所 要 の 安 全 を 確 保 する 防 護 水 準 を 以 下 のように 定 める (1) 防 護 すべき 地 域 本 計 画 の 対 象 範 囲 ( 福 島 県 境 から 千 葉 県 境 まで)において 越 波 浸 水 および 侵 食 等 の 危 険 性 のある 海 岸 を 防 護 の 対 象 区 域 とする (2) 防 護 水 準 対 象 防 護 水 準 津 波 設 計 津 波 ( 発 生 頻 度 は 高 く( 数 十 年 から 百 数 十 年 の 頻 度 ), 津 波 高 は 低 いものの 大 きな 被 害 をもたらす 津 波 =レベル 1 津 波 )に 対 して 防 護 する なお, 発 生 頻 度 は 極 めて 低 いものの, 発 生 すれば 甚 大 な 被 害 を もたらす 最 大 クラスの 津 波 (レベル 2 津 波 )に 対 しては, 住 民 等 の 生 命 を 守 ることを 最 優 先 とし, 住 民 等 の 避 難 を 軸 に,とりうる 手 段 を 尽 くした 総 合 的 な 対 策 を 確 立 していく 高 潮 波 浪 想 定 される 高 潮 位 に 50 年 確 率 波 浪 の 影 響 を 加 えた 高 さに 対 し て 防 護 する 侵 食 砂 浜 海 岸 にあっては, 想 定 される 高 潮 位 に 50 年 確 率 波 浪 の 影 響 を 加 えた 高 さに 対 して 背 後 地 の 防 護 に 必 要 な 砂 浜 を 確 保, 維 持 す る 崖 海 岸 にあっては, 崖 上 の 住 居, 幹 線 道 路 等 の 守 るべき 資 産 の 安 全 を 確 保 する 茨 城 沿 岸 における 津 波 高 潮 波 浪 の 計 画 外 力 諸 元 を 表 3.2 及 び 表 3.3に, 茨 城 沿 岸 の 目 指 すべき 堤 防 高 の 設 定 についての 考 え 方 を 図 3.1 に 示 す 55
津 波 対 策 の 基 本 的 な 考 え 方 表 3.1 津 波 対 策 を 構 築 するにあたって 想 定 すべき 津 波 レベルと 対 策 の 基 本 的 考 え 方 津 波 対 策 を 構 築 するにあたって 想 定 すべき 津 波 レベルと 対 策 の 基 本 的 考 え 方 今 後 の 津 波 対 策 を 構 築 するにあたっては 基 本 的 に 二 つのレベルの 津 波 を 想 定 する 必 要 がある 比 較 的 頻 度 の 高 い 津 波 (L1 津 波 ) 津 波 レベル 発 生 頻 度 は 高 く 津 波 高 は 低 いものの 大 きな 被 害 をもたらす 津 波 ( 数 十 年 から 百 数 十 年 の 頻 度 ) 基 本 的 考 え 方 人 命 住 民 財 産 の 保 護 地 域 経 済 の 確 保 の 観 点 から 防 護 施 設 等 を 整 備 防 護 施 設 等 については 発 生 頻 度 の 高 い 津 波 高 に 対 して 整 備 を 進 めるとともに 設 計 対 象 の 津 波 高 を 超 え た 場 合 でも 施 設 の 効 果 が 粘 り 強 く 発 揮 できるような 構 造 物 への 改 良 も 検 討 していく 堤 防 整 備 等 の 目 安 となる 目 指 すべき 堤 防 高 を 設 定 最 大 クラスの 津 波 (L2 津 波 ) 津 波 レベル 発 生 頻 度 は 極 めて 低 いものの 発 生 すれば 甚 大 な 被 害 をもたらす 津 波 基 本 的 考 え 方 住 民 等 の 生 命 を 守 ることを 最 優 先 とし 住 民 の 避 難 を 軸 にとりうる 手 段 を 尽 くした 総 合 的 な 対 策 を 確 立 していく 被 害 の 最 小 化 を 主 眼 とする 減 災 の 考 え 方 に 基 づき 対 策 を 講 ずることが 重 要 である そのため 防 護 施 設 等 のハード 対 策 によって 津 波 による 被 害 をできるだけ 軽 減 するとともに それを 超 える 津 波 に 対 しては ハザードマップの 整 備 や 避 難 路 の 確 保 など 避 難 することを 中 心 とするソフト 対 策 を 実 施 していく ソフト 対 策 を 講 じるため 基 礎 資 料 の 津 波 浸 水 想 定 を 設 定 出 典 : 茨 城 沿 岸 津 波 浸 水 想 定 区 域 調 査 報 告 書 ( 概 要 版 ) ( 平 成 24 年 10 月 ) 計 画 外 力 諸 元 表 3.2 茨 城 沿 岸 の 計 画 外 力 諸 元 ( 津 波 高 潮 波 浪 ) 区 分 津 波 (H24.8 設 定 ) 高 潮 (H26.3 設 定 ) 波 浪 (H26.3 設 定 ) 外 力 諸 元 設 計 津 波 (L1) 地 震 名 元 禄 地 震 (1703) チリ 地 震 (1960) 地 震 名 津 波 水 位 T.P.+3.1m4.2m 16 地 区 津 波 水 位 朔 望 平 均 満 潮 位 : T.P.+0.7m 計 画 高 潮 位 : T.P.+1.53m ENE 9.1m 13.2s 計 画 沖 波 Ho E 8.3m 12.9s (50 年 確 率 波 ) ESE 8.5m 13.0s Ho 7.2m8.7m 換 算 沖 波 Ho To 13.0s13.2s (5 地 域 区 分 ) 波 向 海 岸 線 の 法 線 方 向 最 大 クラス(L2) 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 (2011) H23 想 定 津 波 T.P.+4.1m14.8m 16 地 区 56
表 3.3 地 域 海 岸 ごとの 計 画 外 力 諸 元 ( 潮 位, 波 浪, 設 計 津 波, 目 指 すべき 堤 防 高 ) 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 地 域 海 岸 北 茨 城 市 平 潟 町 北 茨 城 市 大 津 町 北 茨 城 市 大 津 町 北 茨 城 市 関 南 町 神 岡 上 北 茨 城 市 磯 原 町 北 茨 城 市 中 郷 町 小 野 矢 指 高 萩 市 赤 浜 高 萩 市 高 浜 町 高 萩 市 石 滝 日 立 市 川 尻 町 日 立 市 川 尻 町 日 立 市 日 高 町 日 立 市 日 高 町 日 立 市 国 分 町 日 立 市 国 分 町 日 立 市 水 木 町 日 立 市 大 みか 町 東 海 村 豊 岡 東 海 村 白 方 ひたちなか 市 磯 崎 町 ひたちなか 市 磯 崎 町 大 洗 町 磯 浜 町 大 洗 町 磯 浜 町 大 洗 町 成 田 町 鉾 田 市 上 釜 鉾 田 市 上 幡 木 鹿 嶋 市 大 小 志 崎 鹿 嶋 市 下 津 鹿 嶋 市 平 井 神 栖 市 日 川 神 栖 市 日 川 神 栖 市 波 崎 沿 岸 地 域 区 分 1 平 潟 漁 港 大 津 漁 港 2 大 津 漁 港 日 立 港 区 3 日 立 港 区 常 陸 那 珂 港 区 計 画 高 潮 位 (T.P.+m) 朔 望 平 均 満 潮 位 (T.P.+m) 朔 望 平 均 干 潮 位 (T.P.+m) 潮 位 偏 差 T.P.+1.53m T.P.+0.70m T.P.-0.80m 0.83m ENE 9.1m 13.2s E 8.3m 12.9s ESE 8.5m 13.0s 波 高 周 期 波 向 (Hо ) (Tо ) 対 象 津 波 設 計 津 波 の 水 位 (T.P.+m) 7.2m 13.0s チリ 3.8 6.5 高 潮 波 浪 チリ 3.6 7.0 高 潮 波 浪 チリ 3.7 7.0 高 潮 波 浪 チリ 3.3 7.0 高 潮 波 浪 チリ 3.6 7.0 高 潮 波 浪 チリ 3.5 6.0 高 潮 波 浪 チリ 3.7 6.0 高 潮 波 浪 チリ 3.3 6.0 高 潮 波 浪 チリ 4.1 6.5 高 潮 波 浪 チリ 4.2 6.0 高 潮 波 浪 チリ 3.6 6.0 高 潮 波 浪 チリ 3.6 6.0 高 潮 波 浪 - - - チリ 3.8 8.0 高 潮 波 浪 5 鹿 島 港 波 崎 漁 港 S55H22 の 大 洗 港 区 の 既 往 最 大 潮 位 T.P.+1.47m (H18.10.7)な ど 複 数 の 手 法 から 勘 案 して 設 定 S55H22 の 大 洗 地 区 の 値 等 から 設 定 潮 位 S55H22 の 大 洗 地 区 の 値 等 から 設 定 既 往 最 大 偏 差 S55 H22の 大 洗 港 区 の 値 か ら 設 定 (H14.10.1 発 生 ) 計 画 沖 波 (Hо,Tо) 波 浪 換 算 沖 波 8.0m 13.0s 設 計 津 波 (L1) 目 指 すべき 堤 防 高 (T.P.+m) 津 波 / 高 潮 の チェック (T.P.+1.53m は 朔 望 平 7.8m 13.2s 線 均 満 潮 位 + チリ 3.8 7.0 高 潮 波 浪 方 最 大 偏 差 の 向 値 ) と - - - す チリ 3.1 5.0 高 潮 波 浪 る 4 常 陸 那 珂 港 区 鹿 島 港 高 波 一 覧 の 最 大 有 義 波 向 をエ ネルギー 平 衡 方 程 式 で 沖 波 に 変 換 した 後 確 率 波 高 を 求 めた 周 期 は 波 向 周 期 の 相 関 曲 線 から 標 準 偏 差 分 を 加 えた 値 8.3m 13.2s 波 向 は 海 岸 線 の 法 8.7m 13.2s 元 禄 4.2 5.0 津 波 1 地 域 海 岸 とは 湾 の 形 状 や 山 付 け 等 の 自 然 条 件, 文 献 や 被 災 履 歴 等 の 過 去 に 発 生 した 津 波 の 実 績 津 波 高 さ 及 びシミュレーションの 津 波 高 さ 等 から 海 岸 を 分 割 したものである 2 目 指 すべき 堤 防 高 は 堤 防 護 岸 等 の 堤 防 整 備 検 討 の 目 安 となる 高 さである 3 津 波 による 堤 防 高 設 定 と 高 潮 波 浪 による 堤 防 高 設 定 を 比 べ, 津 波 による 設 定 が 大 きくなる 場 合 は 津 波, 高 潮 波 浪 による 設 定 が 大 きくなる 場 合 は 高 潮 波 浪 と 記 載 している 4 地 域 海 岸 ごとに, 設 計 津 波 の 水 位 高 潮 波 浪 によるうちあげ 高 を 設 定 するが,これらの 水 位 が 同 じ 地 域 海 岸 内 や 近 接 する 地 域 海 岸 で 著 しく 異 なる 場 合 は, 設 計 津 波 の 水 位 高 潮 波 浪 によるうち あげ 高 が 変 わる 場 合 がある ( 大 規 模 施 設 を 含 む 地 域 海 岸 や 県 境 に 近 接 する 地 域 海 岸 等 について は, 今 後 地 形 の 詳 細 確 認 や 関 係 機 関 との 調 整 により 設 計 津 波 の 水 位 等 について 変 更 する 場 合 が ある ) 5 沖 防 波 堤 等 の 沿 岸 構 造 物 の 遮 蔽 の 影 響 が 考 えられる 区 域 では, 換 算 沖 波 を 別 途 検 討 し, 必 要 に 応 じて 再 設 定 するものとする 6 根 拠, 運 用 については, 茨 城 沿 岸 における 海 岸 保 全 計 画 外 力 の 解 説 潮 位 波 浪 編 ( 茨 城 県 農 林 水 産 部 水 産 振 興 課 土 木 部 河 川 課 土 木 部 港 湾 課, 平 成 26 年 3 月 )を 参 照 のこと 7 事 業 実 施 にあたっては, 必 要 に 応 じて 各 管 理 者 ( 海 岸 港 湾 漁 港, 保 安 林 等 ), 市 町 村 等 が 環 境 保 全, 周 辺 景 観 との 調 和, 地 域 の 特 性, 既 設 の 堤 防 護 岸 等, 住 民 の 意 向, 経 済 性, 維 持 管 理 の 容 易 性, 施 工 性, 公 衆 の 利 用 等 を 総 合 的 に 考 慮 して, 防 護 ラインの 位 置 と 堤 防 高 を 設 定 するこ ととしており, 堤 防 高 の 設 定 が 異 なる 場 合 がある 57
目 指 すべき 堤 防 高 の 設 定 について 目 指 すべき 堤 防 高 は 地 域 海 岸 ごとに 設 計 津 波 の 水 位 (H1) と 高 潮 波 浪 による 打 ち 上 げ 高 (H2) のいずれか 高 い 方 に 余 裕 高 を 加 えた 高 さであり, 地 域 海 岸 内 の 最 大 値 とする 具 体 的 な 堤 防 護 岸 等 の 整 備 にあたっては, 目 指 すべき 堤 防 高 を 目 安 に, 海 岸 の 利 用 や 環 境, 景 観, 地 域 の 特 性, 既 設 の 堤 防 護 岸 等, 住 民 の 意 向, 経 済 性, 維 持 管 理 の 容 易 性, 施 工 性, 公 衆 の 利 用 などを 総 合 的 に 考 慮 して, 必 要 に 応 じて 各 管 理 者 ( 海 岸 港 湾 漁 港, 保 安 林 等 )が 市 町 村 等 と 協 議 し, 防 護 ラインの 位 置 と 堤 防 高 さを 設 定 する 図 3.1 目 指 すべき 堤 防 高 の 設 定 手 順 58
3.2.2 海 岸 の 防 護 の 目 標 を 達 成 するために 実 施 しようとする 施 策 (1) 津 波 高 潮 対 策 1 地 域 の 海 岸 特 性 に 対 応 した 津 波 高 潮 対 策 の 推 進 東 日 本 大 震 災 による 地 盤 沈 下 の 影 響 などから, 越 波 抑 制 機 能 が 十 分 でない 海 岸 においては, 地 形 特 性 や 背 後 地 の 土 地 利 用 等 を 踏 まえながら, 適 切 に 対 応 す る 特 に 港 湾 漁 港 については, 東 日 本 大 震 災 の 教 訓 から, 背 後 住 宅 地 への 津 波 の 浸 水 を 防 止 する 新 たな 防 護 ラインを 設 置 することとし,その 計 画 にあたって は, 港 湾 漁 港 の 機 能 を 確 保 しつつ, 観 光 や 景 観 等 にも 配 慮 するなど 関 係 者 が 協 調 して 策 定 に 努 める 写 真 3.1に, 東 日 本 大 震 災 における 津 波 浸 水 状 況 を 示 す ( 大 津 漁 港 北 茨 城 市 ) ( 高 浜 地 区 海 岸 高 萩 市 ) ( 小 木 津 地 区 海 岸 日 立 市 ) ( 大 洗 港 区 背 後 大 洗 町 ) 写 真 3.1 東 日 本 大 震 災 における 津 波 浸 水 状 況 2 自 然 の 防 災 機 能 の 活 用 鹿 島 灘 海 岸 に 古 くからある 集 落 は, 砂 浜, 砂 丘, 背 後 の 海 岸 林 によって 波 浪 等 による 浸 水 被 害 から 守 られているケースが 見 られる また, 海 岸 や 緑 地 と 堤 防 とを 一 体 的 に 整 備 することにより, 津 波 等 による 背 後 地 の 被 害 の 軽 減 効 果 を 一 層 向 上 させることが 期 待 される こうしたことも 参 考 に,ハード 面 の 施 設 だ けではなく, 侵 食 対 策 や 自 然 環 境 保 全 対 策, 景 観 資 源 としての 指 定 などによっ て 確 保 維 持 される 砂 浜 および 砂 丘, 海 岸 林, 植 生 等 の 持 つ 自 然 の 防 災 機 能 を 効 果 的 に 組 合 せた 施 設 を 設 置 するなど, 関 係 機 関 と 連 携 して, 無 機 的 な 海 岸 の 増 加 を 抑 えるとともに,うるおいのある 海 岸 づくりに 努 める 59
3 総 合 的 な 防 災 減 災 対 策 の 推 進 津 波 高 潮 等 による 甚 大 かつ 広 域 的 な 被 害 を 防 ぐためには, 浸 水 が 予 測 され る 背 後 地 を 一 体 的 に 守 る 必 要 がある 特 に 大 洗 町 以 北 においては 河 口 域 に 標 高 の 低 い 地 域 が 多 い 東 日 本 大 震 災 後, 中 央 防 災 会 議 が 示 した 新 たな 津 波 対 策 の 考 え 方 ( 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 を 教 訓 とした 地 震 津 波 対 策 に 関 する 専 門 調 査 会 報 告 ( 平 成 23 年 9 月 28 日 ))に 基 づき 二 つのレベルの 津 波 ( 表 3.1)を 想 定 するとともに, 最 大 規 模 の 高 潮 の 災 害 リスクを 踏 まえ, 住 民 等 の 生 命 を 守 ることを 最 優 先 とした 総 合 的 な 防 災 減 災 対 策 を 推 進 する 災 害 に 強 い 県 土 づくりを 進 めるため, 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 は, 背 後 地 の 状 況 を 考 慮 しつつ, 海 水 の 侵 入 又 は 波 浪 によ る 侵 食 を 防 止 するとともに, 海 水 が 堤 防 等 を 越 流 した 場 合 にも 背 後 地 の 被 害 が 軽 減 されるものとする また,このよう なハード 対 策 に 加 え, 住 民 等 が 適 切 な 避 難 行 動 をとることができるよう, 地 域 の 実 情 に 応 じて 避 難 路 や 避 難 場 所, 情 報 伝 達 施 設 等 のソフト 施 策 を 組 み 合 わせる ことで,より 柔 軟 な 多 重 防 御 の 発 想 に 基 づく 対 策 を 効 率 的 かつ 効 果 的 に 推 進 する 図 3.2 に 津 波 防 災 の 概 念 図 を 示 す ( 高 浜 地 区 海 岸 高 萩 市 ) 図 3.2 津 波 防 災 の 概 念 図 1 レベル 1 津 波 までは 堤 防 で 防 護 し,ソフト 対 策 はレベル 2 津 波 で 具 体 的 に 設 計 する 2 レベル 1 津 波 を 超 える 津 波 に 対 しても 堤 防 を 粘 り 強 く 機 能 させ, 被 害 の 軽 減 を 図 る 3 上 向 き 矢 印 は,ソフト 対 策 による 被 害 の 軽 減 を 意 味 する 出 典 : 海 岸 堤 防 の 役 割 ( 東 京 大 学 大 学 院 工 学 系 研 究 科 社 会 基 盤 工 学 専 攻 佐 藤 慎 司 ;RIVER FRONT Vol.79) 写 真 3.2 津 波 の 注 意 喚 起 サイン また, 海 岸 に 河 川 が 流 入 している 場 合 は, 想 定 外 力 や 設 計 の 考 え 方 を 整 合 さ せるなど, 海 岸 と 河 川 におけるそれぞれの 対 策 に 齟 齬 をきたすことがないよう 調 整 する さらに, 東 日 本 大 震 災 の 教 訓 を 踏 まえ, なんとしても 人 命 を 守 る の 基 本 理 念 のもと, 平 成 23 年 12 月 に 新 たに 制 定 された 津 波 防 災 地 域 づくりに 関 す る 法 律 に 基 づく 津 波 浸 水 想 定 の 設 定, 津 波 災 害 ( 特 別 ) 警 戒 区 域 の 指 定, 津 波 防 災 地 域 づくりを 総 合 的 に 推 進 するための 計 画 ( 推 進 計 画 )の 作 成, 津 波 防 60
護 施 設 の 指 定, 津 波 避 難 建 築 物 の 容 積 率 の 緩 和, 並 びに, 平 成 27 年 5 月 に 改 正 された 水 防 法 に 基 づく 高 潮 特 別 警 戒 水 位 の 設 定, 水 位 周 知 海 岸 の 指 定, 高 潮 浸 水 想 定 区 域 の 指 定 など, 防 災 部 局 や 市 町 村 等 の 関 係 機 関 との 連 携 を 強 化 し, 津 波 高 潮 に 対 する 地 域 における 実 効 的 な 防 災 体 制 の 拡 充 に 向 けた 取 組 みを 進 める 図 3.3 に 津 波 防 災 地 域 づくりのイメージを 示 す 図 3.3 津 波 防 災 地 域 づくりのイメージ 出 典 : 津 波 防 災 地 域 づくりに 関 する 法 律 パンフレット ( 国 土 交 通 省 )より 津 波 防 護 施 設 津 波 浸 水 想 定 を 踏 まえ 津 波 による 人 的 災 害 を 防 止 し, 又 は 軽 減 するため に 都 道 府 県 知 事 又 は 市 町 村 長 が 管 理 する 盛 土 構 造 物, 閘 門 等 の 施 設 ( 海 岸 保 全 施 設, 港 湾 施 設, 漁 港 施 設, 河 川 管 理 施 設, 保 安 施 設 事 業 に 係 る 施 設 であるものを 除 く) ( 北 茨 城 市 大 津 町 ) ( 日 立 市 旭 町 ) ( 日 立 市 河 原 子 町 ) 提 供 : 日 立 市 提 供 : 日 立 市 写 真 3.3 地 域 における 津 波 避 難 タワーの 設 置, 津 波 避 難 路 の 整 備 61
茨 城 沿 岸 における 最 大 クラスの 津 波 茨 城 県 では, 津 波 防 災 地 域 づくりに 関 する 法 律 に 基 づき, 茨 城 沿 岸 津 波 対 策 検 討 委 員 会 における 議 論 を 経 て, 平 成 24 年 8 月 に 津 波 浸 水 想 定 区 域 を 設 定 公 表 した 茨 城 沿 岸 に 最 大 クラスの 津 波 (L2 津 波 )をもたらす 地 震 は, 表 3.4 に 示 す 2 つが 想 定 された そのため, 津 波 浸 水 想 定 においては,この 2 つの 地 震 を 対 象 に 津 波 浸 水 シミュレーションを 実 施 した そして,その 結 果 を 重 ね 合 わせ, 最 大 となる 浸 水 域, 最 大 となる 浸 水 深 を 抽 出 し, 津 波 浸 水 想 定 図 を 作 成 している 津 波 浸 水 想 定 図 は, 茨 城 沿 岸 周 辺 を 28 に 区 分 して 作 成 しており, 茨 城 県 ウェ ブサイト(http://www.pref.ibaraki.jp/doboku/kasen/coast/035100.html)で 公 開 している 津 波 浸 水 想 定 図 の 例 を 図 3.4 に 示 す 表 3.4 茨 城 沿 岸 における 最 大 クラスの 津 波 出 典 : 津 波 浸 水 想 定 について( 解 説 ) ( 茨 城 県 ) 図 3.4 茨 城 県 津 波 浸 水 想 定 図 の 例 62
(2) 侵 食 対 策 1 地 域 特 性 を 踏 まえた 侵 食 対 策 の 実 施 侵 食 が 進 行 する 海 岸 においては,それぞれの 地 域 の 砂 浜 や 崖 の 地 形, 地 質, 底 質 粒 径 などの 特 性 および 背 後 における 民 家 の 有 無 や 観 光 資 源 施 設 の 立 地, 漁 業 利 用,サーフィン 等 のレクリエーション 利 用 および 生 物 の 生 息 生 育 環 境 等 の 状 況 を 考 慮 し, 漂 砂 機 構 や 地 盤 の 変 動 を 踏 まえた 適 切 な 侵 食 対 策 を 図 る 特 に 砂 浜 は, 防 災 機 能 のみならず, 生 物 の 生 息 生 育 の 場,さらには 地 域 住 民 の 生 活 や 憩 いの 場 としても 大 変 重 要 な 役 割 を 果 たしていることから, 県 民 共 有 の 貴 重 な 財 産 と 捉 え, 砂 浜 の 保 全 に 向 けた 取 り 組 みを 一 層 推 進 する 2 砂 浜 の 確 保 維 持 堤 防 護 岸 をはじめとした 海 岸 保 全 施 設 の 機 能 維 持 においては, 設 置 地 盤 の 安 定 を 図 るため, 前 面 水 深 の 変 化 や 沿 岸 漂 砂 の 動 向 等 に 留 意 し, 背 後 地 の 防 護 に 必 要 な 砂 浜 幅 や 地 盤 高 の 確 保 に 努 める 砂 浜 の 侵 食 が 進 行 する 海 岸 においては, 土 砂 の 供 給 が 重 要 であることから, 積 極 的 に 養 浜 (サンドリサイクルやサンドバイパスを 含 む)に 取 り 組 むととも に, 必 要 に 応 じて 突 堤 や 離 岸 堤 など 漂 砂 制 御 機 能 を 持 つ 海 岸 保 全 施 設 を 整 備 す る 養 浜 の 実 施 にあたっては,これまで 鹿 島 灘 海 岸 で 行 ってきた 実 績 や 経 験 を 活 かし, 底 質 や 投 入 材 の 粒 度 組 成, 投 入 量 投 入 箇 所, 施 工 方 法 などに 留 意 する とともに, 漁 場 や 漁 業 への 影 響 について, 事 前 の 予 測 や 事 後 の 評 価 を 行 うなど, 現 地 の 状 況 に 応 じたより 効 果 的 な 対 応 に 努 める また, 漂 砂 の 制 御 機 能 を 持 つ 海 岸 保 全 施 設 の 設 置 については, 当 該 海 岸 の 漂 砂 機 構 を 適 切 に 評 価 し, 隣 接 海 岸 など 一 連 の 漂 砂 系 内 への 影 響 を 十 分 勘 案 した 上 で 整 備 を 行 う さらに, 東 日 本 大 震 災 に 起 因 する 地 盤 沈 下 による 砂 浜 の 防 護 機 能 への 影 響 が 懸 念 される 状 況 もみられることから,その 影 響 について 監 視 し, 適 切 な 対 応 を 図 る 写 真 3.4 に 茨 城 沿 岸 の 代 表 的 な 砂 浜 の 状 況 を 示 す ( 足 洗 地 区 海 岸 北 茨 城 市 ) ( 大 竹 地 区 海 岸 鉾 田 市 ) ( 豊 ヶ 浜 地 区 海 岸 神 栖 市 ) 写 真 3.4 茨 城 沿 岸 の 代 表 的 な 砂 浜 の 状 況 63
3 砂 浜 の 海 岸 保 全 施 設 としての 指 定 侵 食 の 進 む 鹿 島 灘 海 岸 ( 大 洗 港 区 から 鹿 島 港 )では, 現 地 砂 と 同 等 の 粒 径 を 用 いる 場 合 に 比 べて,より 安 定 性 が 高 い 粗 粒 材 を 用 いた 新 たな 養 浜 手 法 に 全 国 に 先 駆 けて 取 組 み,シミュレーションや 現 地 実 験, 各 種 効 果 影 響 調 査 などに より, 一 定 の 効 果 を 確 認 している 引 き 続 き, 粗 粒 材 養 浜 の 防 護 効 果 の 評 価, 水 産 資 源 やサーフィンなどの 利 用 への 影 響 把 握 に 努 めるなど, 専 門 家 や 研 究 機 関 と 連 携 し, 効 果 的 な 養 浜 手 法 の 確 立 を 目 指 すとともに, 回 復 した 砂 浜 の 海 岸 保 全 施 設 としての 指 定 に 向 けた 取 組 みを 推 進 する 写 真 3.5 に 神 向 寺 地 区 海 岸 における 粗 粒 材 養 浜 の 効 果 の 状 況 を 示 す 粗 粒 材 (6,7 号 砕 石 ) ( 神 向 寺 地 区 海 岸 鹿 嶋 市 ) 撮 影 : 平 成 14 年 9 月 写 真 3.5 粗 粒 材 養 浜 の 効 果 撮 影 : 平 成 25 年 9 月 4 土 砂 の 供 給 源 の 確 保 砂 浜 の 堆 積 域 と 侵 食 域 が 偏 在 化 する 一 連 区 間 については, 港 湾 漁 港 管 理 者 や 河 川 管 理 者 など 土 砂 の 管 理 に 関 係 する 各 機 関 と 連 携 し, 土 砂 の 供 給 源 の 確 保 および 供 給 量 の 回 復 に 努 める 茨 城 沿 岸 北 部 の 崖 は 主 に 凝 灰 質 の 泥 岩 と 砂 岩 から 構 成 されていることから, 軟 らかく, 海 食 が 著 しい 崖 海 岸 上 部 の 台 地 は 土 地 利 用 が 進 み 宅 地 や 資 産 が 集 中 している 区 間 が 多 いため, 崖 の 保 全 対 策 の 重 要 性 は 高 まっている その 一 方, 崖 の 侵 食 によって 発 生 する 土 砂 は, 近 傍 の 砂 浜 への 砂 の 供 給 源 となっている 場 合 があることから, 崖 海 岸 の 侵 食 対 策 にあたっては, 周 辺 の 砂 浜 海 岸 への 影 響 を 十 分 勘 案 した 上 で 整 備 を 行 うものとする 写 真 3.6 に 日 立 市 の 海 食 崖 と 背 後 の 状 況 を 示 す ( 久 慈 漁 港 海 岸 水 木 漁 港 海 岸 日 立 市 ) ( 田 尻 地 区 海 岸 日 高 地 区 海 岸 日 立 市 ) 写 真 3.6 海 食 崖 と 背 後 の 状 況 64
5 土 砂 管 理 の 推 進 海 岸 侵 食 は, 土 砂 の 供 給 と 流 出 のバランスが 崩 れることによって 発 生 する この 問 題 に 抜 本 的 に 対 応 していくため, 広 域 的 長 期 的 な 土 砂 収 支 および 漂 砂 特 性 と 地 形 変 化 メカニズムの 把 握 に 努 め, 沿 岸 漂 砂 による 土 砂 の 収 支 が 適 切 となるよう 構 造 物 の 工 夫 等 に 取 り 組 むとともに, 海 岸 部 への 適 切 な 土 砂 供 給 が 図 られるよう 河 川 の 上 流 から 海 岸 までの 流 砂 系 における 土 砂 管 理 対 策 と 連 携 す るなど, 関 係 機 関 が 相 互 に 協 力 し 合 い 広 域 的 総 合 的 な 土 砂 管 理 対 策 を 推 進 す る 図 3.5に 広 域 的 総 合 的 な 土 砂 管 理 のイメージ, 図 3.6に 茨 城 沿 岸 におけ る 事 業 間 連 携 による 土 砂 の 有 効 活 用 の 例 を 示 す 鹿 島 灘 海 岸 では,これまで, 茨 城 港 大 洗 港 区 や 鹿 島 港, 波 崎 漁 港 の 浚 渫 土 砂, 久 慈 川 の 河 道 掘 削 土 砂 を 活 用 したサンドリサイクルやサンドバイパスを 実 施 し ている 今 後 も, 現 存 する 海 浜 の 土 砂 を 一 連 区 間 がもつ 貴 重 な 財 産 と 捉 え, 関 係 機 関 が 連 携 していくものとし, 余 剰 土 砂 に 関 する 情 報 共 有 やその 活 用 方 法 などにつ いて 定 期 的 に 協 議 する 体 制 づくりに 取 り 組 む 図 3.5 広 域 的 総 合 的 な 土 砂 管 理 のイメージ 65
サンドリサイクルの 実 施 状 況 サンドバイパスの 実 施 状 況 図 3.6 茨 城 沿 岸 における 事 業 間 連 携 による 土 砂 の 有 効 活 用 の 例 66
(3) 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 1 被 害 を 軽 減 する 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 東 日 本 大 震 災 では, 東 日 本 沿 岸 の 広 範 囲 で 海 岸 保 全 施 設 等 の 多 くが 被 災 し, 背 後 地 において 甚 大 な 浸 水 被 害 が 生 じた 一 方, 海 岸 保 全 施 設 には, 浸 水 までの 時 間 を 遅 らせることによる 避 難 のためのリードタイムを 長 くする 効 果, 浸 水 量 が 減 ることによる 浸 水 面 積 や 浸 水 深 を 低 減 し 浸 水 被 害 を 軽 減 する 効 果, 施 設 が 全 壊 に 至 らず 一 部 残 存 した 場 合 の 迅 速 な 復 旧 による 二 次 災 害 のリスクを 低 減 す る 効 果, 海 岸 線 を 維 持 する 効 果 等 の 減 災 機 能 に 関 する 一 定 の 効 果 がみられた これらの 教 訓 を 踏 まえ, 背 後 地 の 状 況 等 を 考 慮 して, 設 計 の 対 象 を 超 える 津 波, 高 潮 の 作 用 に 対 して 施 設 の 損 傷 等 を 軽 減 するため, 粘 り 強 い 構 造 の 堤 防, 胸 壁 等 の 整 備 を 推 進 する( 図 3.7) その 際, 粘 り 強 い 構 造 の 堤 防 等 につ いて, 樹 林 と 盛 土 が 一 体 となって 堤 防 の 洗 掘 や 被 覆 工 の 流 出 を 抑 制 する 緑 の 防 潮 堤 など 多 様 な 構 造 を 含 めて 検 討 する また, 港 湾 漁 港 の 背 後 に 設 置 する 施 設 については, 船 舶 等 の 漂 流 物 に 破 壊 されない 強 度 を 有 するものとなるよう 留 意 する 必 要 がある さらに, 東 日 本 大 震 災 に 起 因 する 地 盤 沈 下 による 堤 防 天 端 高 の 低 下 など, 越 波 などに 対 する 海 岸 保 全 施 設 の 機 能 保 全 への 影 響 が 懸 念 されることから,そ の 影 響 について 監 視 し, 適 切 な 対 応 を 図 る 写 真 3.7 に 粘 り 強 い 構 造 の 堤 防 整 備 例 を 示 す 図 3.7 海 岸 堤 防 等 の 粘 り 強 い 構 造 の 基 本 的 な 考 え 方 出 典 : 平 成 23 年 東 北 地 方 太 平 洋 沖 地 震 及 び 津 波 で 被 災 した 海 岸 堤 防 等 の 復 旧 に 関 する 基 本 的 67 な 考 え 方 について( 概 要 ), 国 土 交 通 省
( 足 洗 地 区 海 岸 北 茨 城 市 ) 堤 防 表 法 の 構 造 強 化 堤 防 裏 法 の 構 造 強 化 撮 影 : 平 成 27 年 8 月 撮 影 : 平 成 27 年 8 月 ( 小 木 津 地 区 海 岸 日 立 市 ) 整 備 前 整 備 後 堤 防 の 構 造 強 化 撮 影 : 平 成 24 年 3 月 撮 影 : 平 成 26 年 3 月 写 真 3.7 粘 り 強 い 構 造 の 工 夫 2 耐 震 性 の 確 保, 液 状 化 への 対 応 海 岸 保 全 施 設 の 耐 震 設 計 にあたっては, 施 設 の 供 用 期 間 中 に 12 度 発 生 す る 確 率 を 有 する 地 震 動 (レベル 1 地 震 動 )に 対 し, 構 造 の 安 定 及 び 天 端 高 を 維 持 することとし, 併 せて, 設 計 津 波 (レベル 1 津 波 )を 引 き 起 こす 地 震 により, 津 波 到 達 前 に 施 設 の 機 能 を 損 なわないよう, 耐 震 性 を 確 保 するものとする なお, 地 殻 変 動 に 伴 う 地 盤 沈 下 と, 地 盤 の 液 状 化 による 堤 体 の 沈 下 に 対 して は,その 影 響 を 考 慮 し, 必 要 な 対 策 または 構 造 への 対 応 を 実 施 し, 地 震 後 にお いても 必 要 な 天 端 高 を 維 持 するものとする また, 背 後 地 の 重 要 度 や 地 盤 高 等 により, 高 い 耐 震 性 能 が 必 要 とされる 海 岸 保 全 施 設 については, 最 大 級 の 強 さを 持 つ 地 震 動 (レベル 2 地 震 動 )に 対 して, 被 害 が 軽 微 であり, 地 震 後 の 速 やかな 機 能 の 回 復 が 可 能 となるよう, 適 切 に 対 応 する 68
3 適 切 な 維 持 管 理 更 新 既 存 の 海 岸 保 全 施 設 の 維 持 管 理 については, 予 防 保 全 の 考 え 方 に 基 づき, 費 用 の 軽 減 や 平 準 化 を 図 りつつ, 所 要 の 機 能 を 確 保 するため, 海 岸 保 全 施 設 の 維 持 管 理 マニュアル ( 平 成 26 年 3 月 )に 基 づく 点 検 を 実 施 し, 施 設 の 構 造, 修 繕 履 歴, 健 全 度 ( 老 朽 化 )の 状 況 および 砂 浜 や 周 辺 地 形 の 変 化 等 を 勘 案 した 適 切 な 長 寿 命 化 計 画 を 作 成 するなど, 計 画 的 かつ 効 果 的 な 維 持 又 は 修 繕 を 推 進 する また, 海 岸 管 理 に 関 するデータ 管 理 については, 整 備 点 検 診 断 対 策 と いった 一 連 の 流 れの 記 録 を 蓄 積 し, 管 理 しやすく, 担 当 者 が 代 わっても 継 続 で きるよう, 持 続 可 能 なシステムづくりに 取 り 組 む 写 真 3.8 に 堤 防 点 検, ドロ ーンによる 崖 海 岸 侵 食 調 査 の 様 子, 写 真 3.9 に 堤 防 改 修 の 例 を 示 す 堤 防 点 検 計 測 ( 下 津 地 区 海 岸 鹿 嶋 市 ) 堤 防 点 検 地 中 レーダー 探 査 ドローンによる 崖 海 岸 侵 食 調 査 ( 磯 浜 地 区 海 岸 大 洗 町 ) ( 五 浦 地 区 海 岸 北 茨 城 市 ) 撮 影 : 平 成 25 年 4 月 撮 影 : 平 成 27 年 10 月 撮 影 : 平 成 27 年 7 月 写 真 3.8 堤 防 点 検, 崖 海 岸 侵 食 調 査 の 様 子 ( 滑 川 地 区 海 岸 日 立 市 ) 改 修 前 堤 防 改 修 後 撮 影 : 平 成 25 年 12 月 撮 影 : 平 成 27 年 8 月 写 真 3.9 堤 防 改 修 の 例 69
4 水 門 陸 閘 等 の 開 口 部 への 対 応 水 門 陸 閘 については, 津 波 等 の 災 害 時 において, 操 作 員 の 安 全 を 確 保 した 上 で, 閉 鎖 の 確 実 性 を 向 上 させるため, 常 時 閉 鎖 又 は 電 動 化 自 動 化 遠 隔 操 作 化, 統 廃 合 の 取 組 を 計 画 的 に 進 めるとともに, 管 理 者 を 明 確 にした 操 作 規 則 等 を 策 定 し,それに 基 づく 平 常 時 の 訓 練 等 を 実 施 するなど, 効 果 的 な 管 理 運 用 体 制 の 構 築 を 図 る また, 海 岸 堤 防 に 埋 設 する 雨 水 排 水 管 等 の 小 規 模 な 管 渠 施 設 については, 施 設 管 理 者 と 連 携 し, 容 易 かつ 確 実 なゲート 設 備 の 整 備 を 図 る さらに, 現 在 開 口 部 となっている 階 段 やスロープについては, 海 岸 管 理 や 利 用 状 況 を 考 慮 しながら, 乗 り 越 しタイプへの 改 良 を 推 進 する( 写 真 3.10) ( 有 明 地 区 海 岸 高 萩 市 ) 写 真 3.10 乗 り 越 しタイプ 階 段 の 整 備 例 (4) 海 岸 保 全 に 関 する 基 礎 的 データの 取 得, 蓄 積 茨 城 県 では,これまで 海 岸 部 から 海 底 に 至 る 地 形 形 状 を 計 測 する 深 浅 測 量, 底 質 調 査, 海 岸 線 の 位 置 や 周 辺 の 土 地 利 用,その 変 遷 を 把 握 できる 航 空 写 真 の 取 得, 沿 岸 における 海 面 の 水 位 ( 潮 位 )や 来 襲 した 波 の 高 さや 周 期 の 観 測 デー タの 収 集 等, 海 岸 の 保 全 に 必 要 な 基 礎 的 データの 取 得, 蓄 積 を 継 続 してきた これらのデータは, 海 岸 の 現 況 確 認 にとどまらず, 蓄 積 したデータを 分 析 する ことで, 状 況 変 化 の 履 歴 や 変 化 傾 向 が 把 握 できることから, 将 来 予 測 や 計 画 立 案 など, 今 後 の 的 確 かつ 効 率 的 な 海 岸 保 全 の 実 施 に 向 けて, 不 可 欠 な 情 報 とな っている 今 後 も, 海 岸 保 全 に 関 する 基 礎 的 データの 取 得, 蓄 積 を 継 続 してい く 写 真 3.11 に 汀 線 測 量, 底 質 調 査 の 様 子 を 示 す 汀 線 測 量 底 質 調 査 写 真 3.11 汀 線 測 量, 底 質 調 査 の 様 子 70
(5) 海 岸 保 全 事 業 の 計 画 1 地 域 住 民 等 の 施 設 計 画 への 参 画 の 推 進 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 による 海 岸 の 改 変 は, 海 岸 背 後 に 住 む 地 域 住 民 および 沿 岸 の 水 産 利 用 を 行 っている 漁 業 者, 観 光 業 を 営 んでいる 人 々,サーフィン 等 の 利 用 者 等 にとって 重 大 な 関 心 事 である 個 別 の 海 岸 保 全 施 設 計 画 を 策 定 する 際 は, 地 域 住 民 をはじめ, 関 係 する 事 業 者 や 利 用 者 等 の 意 向 を 確 認 し, 協 議 するための 開 かれた 場 を 設 け, 必 要 な 防 護 水 準 や 施 設 に 求 める 機 能 などについて 理 解 を 深 めるとともに, 地 域 における 海 岸 の 多 様 な 利 用 状 況 や 海 岸 における 地 域 固 有 の 文 化 伝 統, 知 恵 などの 地 域 の 実 情 を 共 有 し, 住 民 や 関 係 者 等 が 一 体 となった 計 画 の 策 定 に 努 める さらに, 地 域 における 海 岸 づくりが 良 好 なかたちで 引 き 継 がれていくよう, 策 定 した 計 画 や 検 討 の 際 の 配 慮 事 項 等 についての 情 報 発 信 に 努 める 写 真 3.12 に 住 民 説 明 会 の 様 子 を 示 す ( 日 立 市 ) ( 鹿 嶋 市 ) 写 真 3.12 住 民 説 明 会 の 様 子 2 関 係 事 業 者 や 市 町 村 との 連 携 海 岸 域 では, 海 岸 法 以 外 の 法 律 に 基 づく 事 業 も 行 われており, 海 岸 沿 いの 道 路 や 保 安 林, 保 安 施 設 ( 通 称 : 保 安 林 護 岸 )の 整 備 などは,それぞれの 事 業 目 的 を 果 たすと 同 時 に, 津 波 や 波 浪 による 海 水 の 浸 入 を 防 ぐなどの 背 後 地 の 防 護 の 役 割 を 果 たしている その 一 方 で, 砂 浜 海 岸 における 護 岸 等 の 整 備 は,その 設 置 位 置 や 構 造 により 沿 岸 漂 砂 に 影 響 を 及 ぼし 侵 食 傾 向 を 助 長 しかねない 問 題 となる 可 能 性 もある したがって, 一 連 の 防 護 区 域 において 海 岸 保 全 施 設 と 連 続 して 設 置 される 施 設 整 備 については, 既 存 の 連 絡 調 整 会 議 等 を 通 じて, 関 係 事 業 者 間 で 事 業 の 目 的 や 施 設 計 画 等 を 事 前 に 把 握 し,お 互 いに 協 力 し 合 いながら 柔 軟 な 対 応 に 努 め る また, 地 域 に 根 ざしたきめ 細 やかな 海 岸 管 理 を 推 進 するため, 地 域 の 実 情 に 詳 しい 地 元 市 町 村 との 連 携 強 化 に 努 める 71
3 防 護 環 境 利 用 のトレードオフへの 対 応 海 岸 保 全 施 設 の 設 計 や 整 備 維 持 管 理 においては, 砂 浜, 岩 礁, 海 食 崖, 人 工 海 岸 などの 海 岸 性 状 に 応 じて, 主 要 防 護 機 能 のほか 利 用 面 や 環 境 面 などの 海 岸 の 機 能 の 多 様 性 への 配 慮 を 適 切 に 行 うとともに, 多 様 な 主 体 の 参 加 連 携 に より 地 域 の 意 見 を 的 確 に 反 映 させていくことが 重 要 である そのため, 既 往 資 料 の 収 集, 関 連 データの 入 手, 関 係 者 や 専 門 家, 地 元 有 識 者 などへのヒアリン グ 等 により, 海 岸 の 状 況 変 化 や 最 新 の 現 地 状 況, 避 けるべき 環 境 変 化 等 の 把 握 に 努 める 事 業 の 計 画 にあたっては, 地 域 が 一 体 となった 効 果 的, 効 率 的 な 整 備 を 推 進 するため, 防 護, 環 境, 利 用 のトレードオフの 関 係 を 整 理 し, 海 岸 づくりの 目 標 を 設 定 する さらに, 海 岸 保 全 施 設 の 配 置 計 画 に 当 たっては, 時 間 的, 空 間 的 な 連 続 性 をもつという 海 岸 環 境 の 特 性 に 留 意 しつつ, 防 護, 利 用, 環 境 それ ぞれの 面 での 利 点 と 欠 点, 施 工 性, 経 済 性 等 について, 複 数 の 代 替 案 を 慎 重 に 比 較, 評 価 する 4 対 策 効 果 のモニタリングの 実 施 整 備 された 海 岸 保 全 施 設 が 期 待 された 機 能 を 果 たしているか, 海 浜 の 安 定 状 況 や 越 波 の 抑 制 状 況 について 当 初 見 込 んだ 効 果 が 得 られているか,また, 生 態 系 への 影 響 などについて, 適 正 にモニタリングを 行 うとともに,その 結 果 に 応 じて 計 画 や 施 工 方 法 を 見 直 すなど 順 応 的 な 管 理 (アダプティブ マネジメント) に 努 める さらに, 自 然 環 境 や 地 域 における 利 用 に 対 する 整 備 の 影 響 を 監 視 し, 地 域 の 特 性 と 調 和 した 対 策 となるよう 工 夫 改 善 に 努 める 写 真 3.13 に 海 底 の 地 形 を 計 測 する 深 浅 測 量, 生 態 系 について 調 べる 生 物 調 査 の 様 子 を 示 す 深 浅 測 量 生 物 調 査 ( 汀 線 際 ) 生 物 調 査 ( 海 域 ) 生 物 調 査 ( 採 取 した 水 生 生 物 ) 写 真 3.13 深 浅 測 量, 生 物 調 査 の 様 子 72
3.3 海 岸 環 境 の 整 備 及 び 保 全 に 関 する 事 項 (1) 生 物 の 生 育, 生 息 環 境 に 配 慮 した 海 岸 保 全 事 業 の 推 進 海 岸 保 全 事 業 の 推 進 にあたっては, 生 物 多 様 性 の 保 全 の 観 点 を 踏 まえ, 多 様 な 生 態 系 の 基 盤 となっている 砂 浜 や 岩 礁, 藻 場 など, 貴 重 種 を 含 めた 海 浜 植 物 の 生 育 環 境 や 浅 海 域 を 含 めた 生 物 の 生 息 環 境 の 保 全 に 配 慮 しながら, 海 岸 保 全 施 設 の 配 置 や 形 状 を 検 討 する 特 に, 茨 城 沿 岸 北 部 の 岩 礁 海 岸 は, 磯 の 生 物 の 貴 重 な 生 育 生 息 の 場,アワ ビの 好 漁 場 となっていることから,それらに 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 整 備 が 不 可 欠 である また, 茨 城 沿 岸 南 部 の 鹿 島 灘 海 岸 の 砂 浜 は, 県 の 特 産 品 となってい るチョウセンハマグリ( 鹿 島 灘 はまぐり)の 生 育 生 息 の 場 であることから, 地 元 漁 業 協 同 組 合 の 要 望 や 専 門 家 の 意 見 を 踏 まえ, 堆 積 域 ( 港 湾 漁 港 内 含 む) から 侵 食 域 への 養 浜 (サンドリサイクル,サンド (( 仮 称 ) 大 洗 港 区 海 岸 大 洗 町 ) バイパス)を 一 層 推 進 する また, 砂 丘 を 背 後 にもつ 海 岸 の 区 間 において は, 砂 丘 は 貴 重 な 植 物 が 生 育 する 優 れた 自 然 環 境 であるという 認 識 に 立 ち, 保 安 林 管 理 者 および 背 後 地 の 利 用 計 画 と 協 調 して 砂 丘 の 維 持 に 努 める 写 真 3.14 に,( 仮 称 ) 大 洗 港 区 海 岸 の 砂 浜 と 岩 礁 の 様 子 を 示 す 写 真 3.14 砂 浜 と 岩 礁 (2) 海 岸 景 観 観 光 資 源 としての 海 岸 に 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 優 れた 海 岸 景 観 や 観 光 資 源 となっている 海 岸 での 事 業 実 施 にあたっては, 当 該 海 岸 及 び 背 後 地 域 のもつ 自 然 特 性 や 歴 史 的 文 化 的 な 背 景, 地 域 における 景 観 形 成 に 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 に 努 める 特 に, 茨 城 沿 岸 北 部 の 海 岸 域 は, いばらき 広 域 ( 五 浦 地 区 海 岸 北 茨 城 市 ) 景 観 づくり 事 業 県 北 海 岸 渓 谷 エリア 広 域 景 観 形 成 プラン における 県 北 海 岸 渓 谷 エリア に 位 置 づけられていることを 踏 まえ, 眺 望 景 観 の 保 全 への 配 慮 が 必 要 である 写 真 3.15 に, 五 浦 地 区 海 岸 の 観 光 資 源 に 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 事 例 ( 人 工 リーフ)を 示 す 写 真 3.15 観 光 施 設 ( 六 角 堂 )に 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 73
(3) 海 岸 汚 損 の 抑 制 1 未 処 理 の 雑 排 水 の 流 入 海 への 雑 排 水 の 直 接 の 流 入 については, 海 水 浴 場 など 集 客 施 設 のある 場 所 や, 滞 留 の 起 こりやすい 場 所, 景 勝 地,その 他 必 要 な 箇 所 において, 市 町 村 と 協 力 して 発 生 源 を 特 定 するなど, 水 質 の 確 保 に 努 める 2ごみの 不 法 投 棄 ごみの 海 岸 への 不 法 投 棄 については, 市 町 村 や 関 係 機 関 と 連 携 して 監 視 に 努 める 3 原 油 および 大 規 模 流 木 の 漂 着 タンカーの 座 礁 事 故 等 による 突 発 性 の 原 油 流 出 事 故 および 洪 水, 台 風 等 によ る 大 規 模 な 流 木,ごみ 等 の 漂 着 については, 海 岸 保 全 施 設 の 機 能 を 確 保 するた め, 国 の 助 成 制 度 を 有 効 に 活 用 しながら 市 町 村 と 連 携 して 必 要 な 対 応 に 努 める 4 海 岸 漂 着 物 処 理 対 策 海 岸 漂 着 物 処 理 にあた っては 茨 城 県 海 岸 漂 着 物 対 策 推 進 地 域 計 画 ( 図 3.8)に 基 づき, 環 境 部 局 や 市 町 村 と 連 携 して, 発 生 抑 制 のための 啓 発 活 動 や 海 岸 漂 着 物 の 回 収 処 理 に 努 める 図 3.8 茨 城 県 海 岸 漂 着 物 対 策 推 進 地 域 計 画 における 重 点 区 域 5 座 礁 船 舶 の 撤 去 海 岸 保 全 区 域 内 に 座 礁 し 放 置 された 船 舶 がある 場 合 は, 海 岸 保 全 施 設 の 損 傷 汚 損 等 の 防 止 を 図 るため, 船 舶 所 有 者 に 対 し 当 該 船 舶 の 撤 去 等 を 命 令 す るなど, 適 切 な 座 礁 船 舶 の 撤 去 に 努 める 74
6 鯨 類 の 漂 着 座 礁 対 策 近 年, 茨 城 沿 岸 においても 鯨 類 の 座 礁, 漂 着 がみられる( 写 真 3.16)が, 技 術 的 および 法 的 な 対 処 は 地 方 自 治 体 にとって 重 要 な 課 題 のひとつとなっている 実 際 に 座 礁 鯨 類 の 処 理 に 立 ち 会 った 自 治 体 の 担 当 者 及 び 専 門 家 等 の 助 言 を 踏 ま えて 作 成 された, 救 出 不 可 能 な 場 合 や 利 用 を 行 う 場 合 の 対 処 方 法 を 含 む 鯨 類 座 礁 対 処 マニュアル ( 水 産 庁, 平 成 16 年 10 月 12 日 作 成, 平 成 24 年 5 月 10 日 改 正 )に 基 づき, 処 置 等 に 関 する 海 岸 の 占 用 手 続 きを 行 うなど, 市 町 村 や 水 産 部 局 と 連 携 して 適 切 に 対 応 する ( 汲 上 地 区 海 岸 鉾 田 市 ) ( 下 津 地 区 海 岸 鹿 嶋 市 ) 平 成 27 年 4 月 平 成 26 年 11 月 写 真 3.16 鯨 類 の 座 礁 (4) 自 然 豊 かな 海 岸 環 境 の 保 全 のための 取 組 みの 推 進 と 行 為 の 制 限, 徹 底 地 域 住 民 やボランティア,その 他, 海 岸 環 境 の 保 全 に 関 する 活 動 団 体 等 と 連 携 し, 海 岸 の 美 化, 希 少 な 動 植 物 の 保 護,そのための 仕 組 ( 日 川 地 区 海 岸 神 栖 市 ) みづくりに 努 める また,ウミガメやコアジサシ 等 の 貴 重 な 生 物 や 海 浜 植 物 の 生 息 生 育 環 境 を 保 全 するため, 必 要 に 応 じ, 市 町 村 と 協 議 連 携 して 車 両 乗 入 れ 規 制 や 立 ち 入 り 柵 の 設 置 などの 対 策 に 努 める さらに, 動 植 物 の 生 息 地 または 生 育 地 の 保 護 に 支 障 を 及 ぼすおそれがあると 認 められる 場 合 には 海 岸 管 理 者 は 指 定 する 行 為 を 必 要 に 応 じて 禁 止 し, 禁 止 事 項 を 現 場 等 に 明 示 する 写 真 3.17 コアジサシの 営 巣 地 保 護 の 活 動 (5) 海 岸 環 境 に 関 する 情 報 の 共 有 県 の 関 係 部 局, 市 町 村, 大 学 や 研 究 機 関, 水 産 試 験 場 の 学 識 者, 研 究 者 など の 専 門 家, 海 岸 環 境 の 保 全 に 係 る 活 動 団 体 や 地 元 有 識 者,ミュージアムパーク 茨 城 県 自 然 博 物 館,アクアワールド 茨 城 県 大 洗 水 族 館 などと 連 携 し, 海 岸 環 境 に 関 する 情 報 の 収 集 整 理 を 行 い, 保 全 すべき 海 岸 環 境 について 関 係 者 間 の 情 報 共 有 に 努 める また, 沿 岸 域 の 生 態 系 への 影 響 が 懸 念 される 大 規 模 事 業 ( 大 型 風 力 発 電 等 )に ついては, 環 境 影 響 評 価 等 の 海 岸 環 境 の 保 全 に 関 わる 情 報 収 集 に 努 める 75
3.4 海 岸 における 公 衆 の 適 正 な 利 用 に 関 する 事 項 (1) 地 域 振 興 との 連 携 調 和 背 後 の 地 域 社 会 への 貢 献 のために, 観 光 振 興 方 策 などの 地 域 振 興 計 画 をはじ め, 漁 業 利 用 や 港 湾 漁 港 利 用,レクリエーション 利 用 ならびに 地 域 住 民 の 生 活 環 境 としての 利 用 と 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 との 連 携 調 和 を 図 る また, 県 と 市 町 村 が 連 携 して, 地 域 の 特 性 に 応 じて, 案 内 板 駐 車 場 トイ レ 等 の 整 備 に 努 める 写 真 3.18 に 駐 車 場 歩 道 トイレ 四 阿 (あずまや)の 整 備 の 例 を 示 す ( 平 潟 漁 港 海 岸 北 茨 城 市 ) ( 鹿 島 港 海 岸 平 井 地 区 鹿 島 市 ) ( 鹿 島 港 海 岸 日 川 地 区 神 栖 市 ) 写 真 3.18 駐 車 場 歩 道 トイレ 四 阿 (あずまや)の 整 備 (2) 地 域 の 個 性 を 生 かした 親 しまれる 海 岸 づくり 地 域 における 海 岸 の 利 用, 行 事 が 引 き 継 がれていくことで, 海 岸 の 環 境 や 地 域 の 暮 らし, 人 と 海 岸 のつながりが 保 たれてきたという 側 面 があることに 留 意 し, 地 域 における 海 岸 利 用 に 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 の 整 備 に 努 める 76
(3) 海 辺 への 円 滑 なアクセスの 確 保 堤 防 等 によって, 海 辺 へのアクセスが 分 断 されないように, 階 段 やスロープ を 適 宜 取 り 付 けることにより 海 浜 へのアクセスを 確 保 するとともに, 背 後 の 道 路 整 備 等 との 連 携 を 図 り, 海 岸 の 利 便 性 を 高 める 従 前 より 生 活 の 一 部 として 海 岸 が 利 用 されてきた 海 辺 の 集 落 等 においては, 高 齢 者 等 も 海 辺 に 行 きやすい ような 工 夫 を 行 うなど, 海 辺 のユニバーサルデザインの 推 進 に 努 める 写 真 3.19 に 海 辺 への 円 滑 なアクセスの 整 備 の 例 を 示 す ( 磯 原 地 区 海 岸 北 茨 城 市 ) ( 有 明 地 区 海 岸 高 萩 市 ) 写 真 3.19 海 辺 への 円 滑 なアクセスの 整 備 (4) 海 岸 保 全 施 設 の 更 新 既 存 施 設 の 更 新 の 際 には, 地 域 に 根 付 く 海 岸 の 利 用 や 行 事, 観 光 レクリエ ーション 利 用, 生 物 の 生 息 環 境 の 回 復 やユニバーサルデザインの 観 点 に 配 慮 し, 新 しいタイプの 保 全 施 設 や, 背 後 地 と 連 携 する 複 合 機 能 を 持 たせた 施 設 の 整 備 についても 十 分 検 討 する 写 真 3.20 に 周 辺 の 観 光 利 用 にも 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 整 備 の 例 を 示 す ただし, 利 用 に 配 慮 するあまり, 砂 浜 が 階 段 護 岸 や 緩 傾 斜 護 岸 の 表 法 面 に 覆 われ, 動 植 物 の 生 息 場 所 が 消 失 するなど,その 整 備 が 周 辺 地 形 や 環 境 に 大 きな 影 響 を 及 ぼすだけでなく, 表 法 勾 配 を 緩 くすることが 逆 に 波 の 打 ち 上 がりの 増 大 を 招 く 場 合 もあること,また, 砂 浜 への 構 造 物 の 設 置 は 漂 砂 を 阻 害 し 侵 食 を 誘 発 する 危 険 性 があることに 十 分 留 意 し 適 切 な 対 応 に 努 める ( 高 戸 地 区 海 岸 高 萩 市 ) ( 磯 浜 地 区 海 岸 大 洗 町 ) 写 真 3.20 周 辺 の 観 光 利 用 にも 配 慮 した 海 岸 保 全 施 設 整 備 77
(5) サーフィン 等 の 海 岸 利 用 における 利 便 性 と 海 岸 集 落 の 快 適 性 の 向 上 地 域 の 要 請 を 踏 まえ, 県 と 市 町 村 の 役 割 分 担 を 明 確 にし, 海 岸 利 用 者, 特 に 近 年 その 数 が 多 いサーフィン 愛 好 者 等 のマリンスポーツ 目 的 の 海 岸 利 用 者 の 利 便 性 の 向 上 に 努 める その 際,トイレ,ごみ 捨 て 場, 駐 車 場 等 の 利 便 施 設 の 利 用 実 態 とその 維 持 管 理 の 実 情 を 踏 まえ, 市 町 村 と 連 携 し, 地 域 活 性 化 にも 配 慮 するとともに, 集 落 内 の 衛 生 と 安 全 の 確 保 を 図 るなど 海 岸 集 落 の 快 適 性 の 向 上 に 努 める 写 真 3.21 に 管 理 用 通 路 への 違 法 駐 車 の 状 況 を 示 す ( 鹿 嶋 市 ) ( 鹿 嶋 市 ) 写 真 3.21 管 理 用 通 路 への 違 法 駐 車 (6) 多 様 な 海 岸 域 利 用 の 調 整 海 岸 利 用 のルールづくり 海 岸 においては 海 水 浴,サーフィン, 釣 り 等 が 競 合 する 問 題,また 海 面 にお いては 漁 業 とレジャー 船 舶 やジェットスキー 等 のマリンスポーツとの 利 用 上 の トラブルが 見 られるため, 関 係 機 関 との 調 整 により, 適 切 な 利 用 が 図 られるよ うに 努 める さらに, 安 全 な 海 岸 利 用 を 促 進 するため, 関 係 機 関 と 協 力 して 水 難 事 故 等 の 発 生 防 止 および 救 助 のための 連 携 強 化 に 努 める 特 に, 鹿 島 灘 海 岸 のヘッドラ ンド 周 辺 については, 外 国 人 も 含 めた 海 岸 利 用 者 への 十 分 な 注 意 喚 起 を 行 うな ど, 既 存 の 連 絡 調 整 会 議 を 活 用 し 事 故 防 止 に 向 けた 取 組 みに 努 める 写 真 3.22 に 水 難 事 故 注 意 警 告 サインの 設 置 例 を 示 す 水 難 事 故 注 意 警 告 サイン ( 鹿 嶋 市 ) 水 難 事 故 注 意 警 告 サイン( 外 国 語 ) 写 真 3.22 水 難 事 故 注 意 警 告 サインの 設 置 例 78
(7) 海 岸 の 魅 力 の 発 信 眺 望 や 自 然 の 景 観 に 恵 まれた 茨 城 沿 岸 の 海 岸 は, 近 年, 映 画 やテレビドラマ, CMのロケ 地 に 使 用 されるなど, 内 外 への 露 出 も 盛 んになっている 県 や 市 町 村 のフィルムコミッションをはじめ, 関 係 部 局 や 地 域 で 行 われてい る 海 岸 に 関 する 活 動 と 連 携 するなど, 茨 城 の 海 岸 の 魅 力 の 発 信 に 積 極 的 に 努 め る 写 真 3.23 に 赤 浜 地 区 海 岸 ( 高 萩 市 )におけるロケの 様 子 を 示 す ( 赤 浜 地 区 海 岸 高 萩 市 ) 写 真 提 供 :NPO 高 萩 ロケーションサービス 写 真 3.23 海 岸 のロケ 地 利 用 状 況 79