の 資 金 が 不 足 し 経 済 特 区 のインフラ 整 備 を 外 資 に 依 存 する 方 針 を 取 っていたため 外 資 誘 致 のネックとなった 多 国 間 協 力 の 象 徴 的 プロジェクトであった 図 們 江 地 域 開 発 も 中 国 の 地 域 だけが 中 国 政 府 のインフ



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●電力自由化推進法案

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

m07 北見工業大学 様式①


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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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16 日本学生支援機構

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

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弁護士報酬規定(抜粋)

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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公表表紙

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参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

能勢町市街化調整区域における地区計画のガイドライン

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セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

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平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

市街化区域と市街化調整区域との区分


4 松 山 市 暴 力 団 排 除 条 の 一 部 風 俗 営 業 等 の 規 制 及 び 業 務 の 適 正 化 等 に 関 する 法 律 等 の 改 正 に 伴 い, 公 共 工 事 から 排 除 する 対 象 者 の 拡 大 等 を 図 るものです 第 30 号 H H28.1

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

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私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

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要 な 指 示 をさせることができる ( 検 査 ) 第 8 条 甲 は 乙 の 業 務 にかかる 契 約 履 行 状 況 について 作 業 完 了 後 10 日 以 内 に 検 査 を 行 うものとする ( 発 生 した 著 作 権 等 の 帰 属 ) 第 9 条 業 務 によって 甲 が 乙 に

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七 の 二 自 然 公 園 法 ( 昭 和 三 十 二 年 法 律 第 百 六 十 一 号 ) 第 二 十 条 第 一 項 に 規 定 する 国 立 公 園 又 は 国 定 公 園 の 特 別 地 域 のうち 同 法 第 二 十 一 条 第 一 項 に 規 定 する 特 別 保 護 地 区 その 他

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はファクシミリ 装 置 を 用 いて 送 信 し 又 は 訪 問 する 方 法 により 当 該 債 務 を 弁 済 す ることを 要 求 し これに 対 し 債 務 者 等 から 直 接 要 求 しないよう 求 められたにもかか わらず 更 にこれらの 方 法 で 当 該 債 務 を 弁 済 するこ


(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 H H H5.4.1 ( 参 考 値 ) 97.1 H H H H5.4.1 H H5.4.1 ( 参 考

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(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

目 次 第 1 章 総 則 第 1 節 計 画 の 目 的... 1 第 1 計 画 の 目 的 1 第 2 計 画 の 策 定 1 第 3 計 画 の 構 成 2 第 4 用 語 の 意 義 2 第 2 節 計 画 の 前 提 条 件... 3 第 1 自 然 条 件 3 第 2 社 会 条 件

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社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

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(4) 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 との 連 携 1 市 は 国 の 現 地 対 策 本 部 長 が 運 営 する 武 力 攻 撃 原 子 力 災 害 合 同 対 策 協 議 会 に 職 員 を 派 遣 するなど 同 協 議 会 と 必 要 な 連 携 を 図 る

国立研究開発法人土木研究所の役職員の報酬・給与等について

職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 () 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 ( 年 4 月 日 現 在 ) 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 44. 歳 6,4, 歳,44 4,7 7,6 4. 歳 7,

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務


市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 135,6 243,7 2 級 185,8 37,8 3 級 4 級 222,9 354,7 ( 注 )

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などは 別 の 事 業 所 とせず その 高 等 学 校 に 含 めて 調 査 した 5 調 査 事 項 単 独 事 業 所 調 査 票 全 産 業 共 通 事 項 ( 単 独 事 業 所 ) ア 名 称 及 び 電 話 番 号 イ 所 在 地 ウ 経 営 組 織 ( 協 同 組 合 においては 協

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18 国立高等専門学校機構

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(5) 給 与 改 定 の 状 況 事 委 員 会 の 設 置 なし 1 月 例 給 事 委 員 会 の 勧 告 民 間 給 与 公 務 員 給 与 較 差 勧 告 A B A-B ( 改 定 率 ) 給 与 改 定 率 ( 参 考 ) 国 の 改 定 率 24 年 度 円 円 円 円 ( ) 改

代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

( 注 )1 ラスパイレス 指 数 とは 全 地 方 公 共 団 体 の 一 般 行 政 職 の 給 料 月 額 を 一 の 基 準 で 比 較 するため の 職 員 数 ( 構 成 )を 用 いて 学 歴 や 経 験 年 数 の 差 による 影 響 を 補 正 し の 行 政 職 俸 給 表 (

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波佐見町の給与・定員管理等について

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

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スライド 1

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第1章 財務諸表

1_2013BS(0414)

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

(4) ラスパイレス 指 数 の 状 況 ( 各 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 例 ) ( 例 ) 15 (H2) (H2) (H24) (H24) (H25.4.1) (H25.4.1) (H24) (H24)

定款  変更

Transcription:

北 朝 鮮 の 経 済 開 発 と 日 中 韓 の 関 与 のあり 方 帝 京 大 学 講 師 李 燦 雨 1. はじめに 北 朝 鮮 の 金 正 日 総 書 記 が2011 年 12 月 に 死 去 してから 北 朝 鮮 は 新 しい 時 代 への 転 換 期 と なっているように 見 えた 若 い 金 正 恩 第 1 書 記 の 統 治 スタイルや 明 るくなった 社 会 の 雰 囲 気 が 国 際 社 会 のうわさになった しかし 第 2 人 者 として 権 力 を 振 るった 張 成 択 党 行 政 部 長 が2013 年 12 月 に 反 党 反 革 命 国 家 転 覆 陰 謀 の 罪 で 処 刑 されたことで 北 朝 鮮 の 政 治 や 経 済 が 不 安 定 で 今 後 の 情 勢 が 不 透 明 となるのではないかという 懸 念 が 国 際 社 会 に 広 がった 特 に 周 辺 国 である 日 本 と 中 国 そして 韓 国 に 北 朝 鮮 のいわゆる 急 変 事 態 への 対 策 を 求 める 声 も 盛 り 上 がった 北 東 アジアは 日 中 と 日 韓 間 の 対 立 に 加 え 北 朝 鮮 問 題 が 域 内 情 勢 をより 悪 化 させ 冷 戦 後 時 代 における 平 和 協 力 の 枠 組 みが 崩 れてしまう 可 能 性 もないと は 言 えない 状 況 となった しかし 北 朝 鮮 の 張 氏 粛 清 後 の 国 内 政 治 は 権 力 闘 争 とは 思 えない 安 定 を 見 せており 金 正 恩 第 1 書 記 を 中 心 とする 唯 一 指 導 体 系 が 確 立 している 急 変 事 態 は 生 じず 安 定 した 権 力 を 基 盤 に 経 済 開 発 に 本 格 的 に 乗 り 出 す 動 きや 朝 鮮 半 島 の 南 北 関 係 改 善 を 目 論 んだ 南 北 離 散 家 族 再 会 イベントも 進 んでいる 北 朝 鮮 は 危 機 状 態 ではなく 発 展 に 向 かう 転 換 期 に 入 っているとの 分 析 が 妥 当 に 見 える 日 中 韓 の3 国 が 中 心 となる 北 東 アジア 地 域 は 歴 史 問 題 を 背 景 とした 対 立 と 領 土 問 題 や 軍 備 競 争 そして 経 済 不 安 に 伴 う 各 国 の 自 国 中 心 的 観 点 の 政 策 により 地 域 不 安 定 性 が 漸 増 し ている 日 中 韓 FTA( 自 由 貿 易 協 定 ) 締 結 の 交 渉 を 始 め 経 済 交 流 統 合 を 目 指 す 動 きもある が 各 国 の 利 害 関 係 がその 進 展 を 妨 げている このような 時 期 に 北 朝 鮮 が 本 格 的 な 経 済 開 発 に 乗 り 出 すことで 日 中 韓 は 共 通 の 地 域 的 利 益 を 追 求 できるのではないか という 考 えが 本 稿 の 問 題 意 識 である 北 朝 鮮 が 北 東 アジア 地 域 紛 争 の 種 ではなく 地 域 発 展 と 経 済 統 合 の 種 になる 可 能 性 を 慎 重 に 見 極 めるのが 本 稿 の 目 的 である 2. 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 政 策 : 本 格 化 する 経 済 特 区 開 発 政 策 2.1 1990 年 代 以 降 の 経 済 特 区 開 発 : 独 自 路 線 から 中 朝 共 同 開 発 路 線 へ 現 在 の 経 済 特 区 政 策 を 理 解 するためには 北 朝 鮮 の 経 済 特 区 政 策 の 始 まりに 遡 る 必 要 が ある その 始 まりの 時 期 とは 冷 戦 解 体 の 時 期 であった 1990 年 代 に 入 りソ 連 の 解 体 を 目 に した 北 朝 鮮 は 社 会 主 義 体 制 を 維 持 するためにも 資 本 主 義 圏 との 経 済 協 力 に 舵 を 切 るしか なかった 経 済 特 区 の 建 設 はその 代 表 的 な 例 であるが UNDP が 中 心 となり 推 進 した 図 們 江 地 域 開 発 計 画 の 枠 組 みと 連 携 した 羅 津 先 鋒 自 由 経 済 貿 易 地 帯 がそれである し かし 北 朝 鮮 の 核 兵 器 開 発 疑 惑 を 巡 る 米 朝 間 の 緊 張 激 化 北 朝 鮮 経 済 の 低 迷 食 糧 危 機 の 発 生 などにより 経 済 特 区 政 策 は 成 功 しなかった その 上 北 朝 鮮 はインフラ 整 備 のため 1

の 資 金 が 不 足 し 経 済 特 区 のインフラ 整 備 を 外 資 に 依 存 する 方 針 を 取 っていたため 外 資 誘 致 のネックとなった 多 国 間 協 力 の 象 徴 的 プロジェクトであった 図 們 江 地 域 開 発 も 中 国 の 地 域 だけが 中 国 政 府 のインフラ 投 資 により 発 展 し ロシア 側 と 北 朝 鮮 側 の 連 携 開 発 は 本 軌 道 には 乗 らなかった 図 們 江 地 域 の 羅 先 経 済 特 区 に 対 する 北 朝 鮮 の 開 発 政 策 は インフ ラ 整 備 を 外 資 に 依 存 すると 共 に 多 国 間 の 協 力 枠 組 みよりは 自 国 の 自 主 権 を 重 視 する 形 で 自 国 中 心 の 国 際 協 力 を 優 先 するものであった すなわち UNDP の 図 們 江 地 域 開 発 計 画 に 対 し 支 持 をしながらも 具 体 的 な 内 容 については 国 際 共 同 管 理 による 共 同 開 発 案 を 拒 否 し 各 国 が 独 自 で 経 済 特 区 を 設 置 し 各 国 が 必 要 に 応 じて 協 力 開 発 などをする 立 場 を 取 ってい た また 2002 年 に 北 朝 鮮 が 新 義 州 地 域 を 香 港 のような 経 済 特 区 に 開 発 しようと 単 独 に 推 進 した 新 義 州 特 別 行 政 区 構 想 は 中 国 の 協 力 を 得 ることができず 直 ぐに 頓 挫 した 新 義 州 特 区 構 想 はその 後 2004 年 に 新 義 州 - 大 鶏 島 経 済 開 発 地 区 と 変 わるが 大 鶏 島 地 区 で は 1980 年 代 から 金 日 成 主 席 により 大 鶏 島 干 拓 地 造 成 事 業 が 進 められており 総 延 長 14km の 防 潮 堤 が 建 設 2010 年 6 月 に 完 工 されたことで 8,800ha の 耕 地 が 新 しく 確 保 されて いる 戦 前 の 1930 年 代 半 ばから 終 戦 まで 多 獅 島 地 区 ( 現 の 大 鶏 島 地 区 )と 新 義 州 を 繋 ぐ 工 業 地 域 建 設 計 画 があったが 北 朝 鮮 はこれを 継 承 し 大 鶏 島 地 区 を 新 義 州 地 域 と 経 済 連 携 し 農 工 業 地 域 として 発 展 させる 独 自 の 開 発 計 画 を 進 めた しかし 北 朝 鮮 をめぐる 政 治 情 勢 の 不 安 と 投 資 環 境 の 未 整 備 により 経 済 特 区 を 中 心 とした 独 自 の 経 済 開 発 政 策 は 不 振 を 免 れなかった 北 朝 鮮 が 再 び 外 資 導 入 と 経 済 特 区 開 発 に 本 腰 を 入 れ 始 めたのは 金 正 日 政 権 の 末 期 であ る 2010 年 からである 2009 年 12 月 のデノミ 措 置 を 始 めとする 計 画 経 済 への 回 帰 政 策 の 破 たんを 経 験 した 北 朝 鮮 政 府 は 外 資 導 入 による 経 済 開 発 に 本 格 的 に 取 り 組 んだ それは 主 に 中 国 からの 投 資 を 目 論 んだ 整 備 であり 金 正 日 総 書 記 の 3 回 に 渡 る 中 国 訪 問 (2010 年 ~2011 年 )により その 具 体 的 なスキームが 出 来 た 第 1 に 政 府 の 関 連 組 織 を 改 編 した すな わち 2010 年 7 月 に 内 閣 傘 下 に 省 級 の 合 営 投 資 委 員 会 を 設 置 し 1 外 国 の 政 府 民 間 機 関 個 別 投 資 家 との 投 資 協 定 や 投 資 契 約 の 締 結 2 様 々な 方 式 による 投 資 と 経 済 特 区 工 業 団 地 の 管 理 運 営 3 新 たな 経 済 特 区 等 の 設 置 4 合 弁 合 作 加 工 貿 易 等 の 各 種 の 投 資 導 入 活 動 5 投 資 に 関 する 一 切 の 手 続 きの 窓 口 の 機 能 を 担 当 させた そして 2011 年 1 月 に 内 閣 に 国 家 経 済 開 発 総 局 を 設 置 し 国 家 経 済 開 発 10 ヶ 年 計 画 を 推 進 させた 1 こ の 10 ヶ 年 計 画 では インフラ 施 設 農 業 電 力 石 炭 石 油 金 属 などの 基 礎 工 業 部 門 と 地 域 開 発 の 戦 略 目 標 を 確 定 しており 2020 年 に 先 進 国 のレベルに 到 達 する 展 望 を 明 らか にした と 報 道 された( 朝 鮮 中 央 通 信 2011 年 1 月 15 日 付 ) その 概 要 は 表 1 に 示 す 通 り である 1 国 家 経 済 開 発 総 局 は 2013 年 9 月 に 省 級 の 国 家 経 済 開 発 委 員 会 昇 格 され 合 営 投 資 委 員 会 が 持 っ ていた 経 済 特 区 関 連 の 業 務 が 移 管 された 経 済 特 区 の 外 資 導 入 は 国 家 経 済 開 発 委 員 会 に 一 元 化 した 2

表 1 国 家 経 済 開 発 10 ヶ 年 戦 略 計 画 の 内 容 ( 主 要 事 業 ) 農 業 開 発 :15 億 ドル( 農 業 3 万 t 種 子 5 万 t 農 業 機 械 畜 産 ) 羅 先 清 津 金 策 南 浦 等 4 大 工 業 地 区 開 発 羅 先 石 油 化 学 地 域 :180 億 ドル( 製 油 2,000 万 t エチレン 120 万 t 肥 料 100 万 t) 清 津 重 工 業 地 区 :210 億 ドル( 製 鉄 造 船 自 動 車 機 械 等 ) 金 策 鉱 業 製 錬 地 区 :30 億 ドル( 製 鉄 精 錬 鉱 山 ) 南 浦 IT 産 業 地 区 :100 億 ドル( 光 学 IT 環 境 生 物 新 再 生 エネルギー) 電 力 3,000 万 kw 発 電 空 港 港 湾 建 設 高 速 道 路 3,000km 建 設 ( 必 要 資 金 )1,000 億 ドル: 開 発 銀 行 100 億 ドル 産 業 開 発 545 億 ドル インフラ エネル ギー355 億 ドル ( 政 府 支 援 ) 外 国 企 業 に 対 する 法 人 税 減 免 政 府 による 事 業 保 障 出 所 : 大 豊 グループの 国 家 経 済 開 発 10 ヶ 年 戦 略 計 画 資 料 第 2 に 中 国 と 共 同 での 経 済 特 区 開 発 管 理 を 推 進 するようになった 中 朝 政 府 は 2010 年 10 月 に 羅 先 経 済 貿 易 地 帯 と 黄 金 坪 威 化 島 経 済 地 帯 の 二 つの 経 済 特 区 に 対 する 経 済 協 力 協 定 を 締 結 し 中 朝 共 同 開 発 共 同 管 理 計 画 要 綱 も 2011 年 2 月 に 作 成 した その 後 2011 年 12 月 に 北 朝 鮮 は 羅 先 経 済 貿 易 地 帯 法 を 改 正 し また 新 しく 黄 金 坪 経 済 地 帯 法 を 制 定 し 中 朝 協 力 による 共 同 開 発 を 法 制 化 した 2.2 中 朝 間 の 経 済 協 力 のスキーム 金 正 日 政 権 の 末 期 (2010~2011 年 )に 北 朝 鮮 が 経 済 開 発 政 策 を 中 国 との 協 力 により 推 進 すると 決 めたことは 北 朝 鮮 としてはやむを 得 ない 選 択 枝 であったと 言 える 2009 年 5 月 の 第 2 回 目 の 核 実 験 後 の 国 際 社 会 からの 制 裁 強 化 と 2010 年 3 月 の 天 安 号 沈 没 事 件 を めぐる 韓 国 の 対 北 経 済 制 裁 の 状 況 下 で 中 国 だけが 北 朝 鮮 に 対 する 支 援 を 持 続 していたか らである 中 国 は 2009 年 7 月 に 朝 鮮 半 島 問 題 に 関 する 政 策 を 再 検 討 し 既 存 の 消 極 的 な 不 干 渉 仲 裁 政 策 から 積 極 的 な 関 与 政 策 として 北 朝 鮮 との 政 治 経 済 的 連 携 を 強 化 する 方 針 へ 舵 を 大 きく 変 えた 国 務 院 は 2009 年 8 月 に 東 北 地 方 の 経 済 開 発 のための 国 家 級 の 具 体 的 戦 略 である 長 吉 図 開 発 開 放 先 導 区 開 発 と 遼 寧 沿 海 経 済 地 帯 開 発 計 画 を 批 准 し 同 年 10 月 に 温 家 宝 首 相 ( 当 時 )が 訪 朝 し 経 済 協 力 の 大 筋 を 合 意 していた 中 国 の 経 済 的 後 ろ 立 てを 確 保 した 北 朝 鮮 は 中 国 式 の 経 済 特 区 開 発 を 中 国 との 協 力 で 推 進 する 方 針 を 決 3

めた 中 国 と 北 朝 鮮 との 経 済 協 力 は 中 国 としては 東 北 地 域 の 本 格 的 開 発 をきっかけに 北 朝 鮮 との 経 済 連 携 を 更 に 強 化 し 朝 鮮 半 島 の 安 定 化 を 確 保 する 戦 略 の 産 物 であると 言 える ま た 北 朝 鮮 としては 中 国 から 資 金 資 材 エネルギー 食 糧 など 経 済 の 生 命 線 となるバッ クアップを 確 保 することで 日 米 韓 からの 制 裁 に 対 抗 し 体 制 の 安 全 を 守 る 戦 略 の 産 物 であ ると 言 える 金 正 日 時 代 の 最 後 の 国 際 関 係 である 中 朝 経 済 連 携 を 図 式 化 すると 以 下 のよう になる 表 2 中 国 の 東 北 地 域 開 発 戦 略 と 北 朝 鮮 との 関 連 性 概 念 図 北 朝 鮮 の 地 政 学 的 位 相 の 増 大 中 朝 の 政 策 中 国 課 題 1 東 北 地 域 の 対 外 通 路 確 保 2 経 済 成 長 のための 原 材 料 需 要 の 確 保 3 国 力 の 向 上 に 相 応 しい 国 際 地 位 の 獲 得 4 北 東 アジア 経 済 共 同 体 対 北 朝 鮮 政 策 1. 北 朝 鮮 との 経 済 協 力 強 化 2. 北 朝 鮮 の 改 革 開 放 誘 導 3. 包 括 的 接 近 ( 政 治 核 ) 北 朝 鮮 は 中 国 東 北 経 済 の 気 道 北 朝 鮮 課 題 1 充 分 な 物 資 供 給 ( 消 費 品 市 場 と 生 産 財 供 給 ) 2 国 内 生 産 の 正 常 化 3 安 定 した 後 継 体 制 へ 移 行 4 国 際 関 係 における 危 機 管 理 対 中 国 政 策 1. 中 国 との 経 済 協 力 強 化 2. 東 北 地 域 への 対 外 通 路 提 供 3. 体 制 安 定 への 支 援 確 保 中 国 東 北 は 北 朝 鮮 経 済 の 生 命 線 北 東 アジア 政 治 経 済 の 再 編 出 所 : 筆 者 作 成 中 国 の 政 策 には 東 北 3 省 地 域 を 北 東 アジア 地 域 経 済 の 中 心 に 位 置 づける 思 惑 が 見 える その 政 策 は 北 朝 鮮 との 連 携 性 を 強 化 する 方 向 に 向 かったが その 成 功 のためには 朝 鮮 半 島 の 安 定 と 中 朝 経 済 協 力 が 欠 かせない 前 提 条 件 であった 中 国 東 北 地 域 の 発 展 のための 気 道 となる 北 朝 鮮 に 対 し 中 国 は 経 済 協 力 を 提 供 するとともに 経 済 通 路 を 連 結 させ 北 朝 4

鮮 を 中 国 式 の 改 革 開 放 へ 誘 導 する 関 与 政 策 を 始 めた 2 その 内 容 としては 1 経 済 通 路 の 確 保 2 経 済 発 展 を 継 続 するため 需 要 がある 鉱 物 資 源 の 確 保 3 北 朝 鮮 の 低 廉 な 労 働 力 を 活 用 した 製 造 業 投 資 などがあった 第 一 に 中 国 東 北 地 域 と 朝 鮮 半 島 をつなぐ 経 済 通 路 として 旧 満 州 国 と 旧 朝 鮮 総 督 府 が 建 設 した 二 つの 通 路 が 再 整 備 されるべき 課 題 として 選 定 された それは 西 端 の 丹 東 ~ 新 義 州 ルートと 東 端 の 延 辺 ~ 羅 先 清 津 ルートである 西 端 ルートの 整 備 は 新 鴨 緑 江 大 橋 を 建 設 し 遼 寧 省 都 の 瀋 陽 と 北 朝 鮮 の 平 壌 を 結 ぶ 大 動 脈 を 形 成 する 戦 略 である 瀋 陽 新 義 州 新 鴨 緑 江 大 橋 黄 金 坪 平 壌 대동항 大 鶏 島 地 区 注 :1 号 防 潮 堤 ( 多 獅 島 加 次 島 ) 2 号 防 潮 堤 ( 加 次 島 ソヨンドン 島 ) 4 号 防 潮 堤 ( 大 渓 島 鉄 山 半 島 の 小 渓 島 ) 工 事 が 完 了 し 最 後 に 残 った 建 設 対 象 は 一 番 規 模 が 大 きい 3 号 防 潮 堤 (ソヨンドン 島 大 渓 島 約 4.9km)だった 出 所 :google 地 図 の 上 に 調 査 団 作 成 図 1 丹 東 ~ 新 義 州 大 鶏 島 干 拓 地 の 関 係 図 そして 東 端 ルートの 整 備 は 琿 春 ~ 羅 津 間 の 道 路 と 羅 津 港 埠 頭 の 整 備 が 中 心 となった 下 記 の 表 3 と 図 2 は 中 国 吉 林 省 の 延 辺 州 が 作 成 した 長 吉 図 先 導 区 関 連 の 対 外 通 路 部 門 12 プロジェクト( 対 北 朝 鮮 対 ロシア)の 内 容 である 北 朝 鮮 の 羅 津 港 と 清 津 港 を 利 用 した 日 本 海 への 出 海 通 路 を 確 保 するためのインフラ 整 備 が 推 進 される 2 2010 年 8 月 金 正 日 総 書 記 と 会 った 胡 錦 濤 主 席 ( 当 時 )は 中 朝 経 済 協 力 の 原 則 として 政 府 主 導 によ る 企 業 を 主 体 とした 市 場 運 営 と 相 互 利 益 を 提 起 し 中 国 式 の 改 革 開 放 の 関 与 政 策 を 明 らかにした 5

表 3 延 辺 州 が 作 成 した 長 吉 図 先 導 区 関 連 の 対 外 通 路 部 門 12 プロジェクト 種 類 対 象 国 プロジェクト 投 資 額 建 設 期 限 高 速 道 路 朝 鮮 1 八 道 ~ 三 合 税 関 ~ 清 津 (47km) 28 億 元 2015 年 2 琿 春 ~ 圏 河 税 関 ~ 羅 津 (39km) 23 億 元 2015 年 3 和 龍 ~ 南 平 税 関 ~ 清 津 (50km) 30 億 元 2015 年 ロシア 4 琿 春 ~ 長 嶺 子 ~ザルビノ(14km) 8 億 元 2015 年 鉄 道 朝 鮮 5 図 們 ~ 南 陽 ~ 図 們 江 ~ハッサン 24.3 億 元 2020 年 ロシア (126km 補 修 ) 朝 鮮 6 図 們 ~ 清 津 港 (171.1km 補 修 ) 20 億 元 2020 年 7 和 龍 ~ 南 平 税 関 ~ 茂 山 (53.5km) 16 億 元 2015 年 8 図 們 ~ 南 陽 ~ 羅 津 (158.8km 補 修 ) 12.7 億 元 2020 年 税 関 橋 梁 朝 鮮 9 龍 井 開 山 屯 ( 鉄 道 税 関 建 設 ) 1.5 億 元 2020 年 10 圏 河 図 們 沙 拕 子 開 山 屯 三 5 億 元 - 合 南 平 ( 税 関 改 修 橋 梁 建 設 ) 11 琿 春 春 和 分 水 嶺 ( 税 関 建 設 ) 2 億 元 - ロシア 12 琿 春 鉄 道 税 関 拡 張 3 億 元 - プロジェクト 投 資 総 額 173.5 億 元 (25.6 億 ト ル) 出 所 : 中 国 吉 林 省 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 政 府 (2010 年 ) 7 1 9 5 2 6 8 4 3 出 所 : 中 国 吉 林 省 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 政 府 (2010 年 ) 図 2 延 辺 朝 鮮 族 自 治 州 の 国 際 経 済 通 路 第 二 に 中 国 経 済 発 展 のために 必 要 な 鉱 物 資 源 ( 鉄 鉱 非 鉄 金 属 石 炭 など)を 確 保 す 6

るために 鉱 物 資 源 開 発 に 関 する 様 々な 交 渉 が 行 われた 北 朝 鮮 は 2000 年 代 半 ば 以 降 鉱 物 資 源 開 発 への 外 資 導 入 を 積 極 的 に 考 えるようになり 中 国 企 業 も 経 済 成 長 に 伴 う 鉱 物 資 源 不 足 を 補 うため 北 朝 鮮 の 鉱 物 資 源 開 発 に 積 極 的 になった 北 朝 鮮 の 2010 年 新 年 共 同 社 説 に は 豊 富 な 地 下 資 源 を 積 極 的 に 開 発 利 用 し 人 民 生 活 向 上 と 経 済 強 国 建 設 に 必 要 な 原 料 を 解 決 し 資 金 も 確 保 していかなければならない と 強 調 した しかし 鉱 物 資 源 開 発 の 具 体 的 な 成 功 例 は 極 めて 少 なく また MOU 締 結 などの 初 期 協 議 段 階 であることも 多 い 表 4 鉱 物 資 源 分 野 の 中 朝 協 力 の 事 例 年 度 鉱 山 名 鉱 物 種 類 所 在 地 投 資 誘 致 内 容 04.3 德 城 鉄 咸 鏡 南 道 德 城 郡 黒 竜 江 省 民 族 経 済 開 発 総 公 司 と 合 作 合 意 その 後 の 進 展 は 不 明 05.10 龍 登 無 煙 炭 平 安 北 道 球 場 郡 五 鉱 集 団 と 合 作 契 約 無 煙 炭 開 発 と 輸 入 進 行 中 06. 茂 山 鉄 咸 鏡 北 道 茂 山 郡 吉 林 省 の 通 化 鉄 鋼 集 団 など 6 社 鉄 鉱 開 発 と 輸 入 進 行 中 06.3 銀 波 亜 鉛 鉛 黄 海 北 道 銀 波 郡 青 海 省 西 部 鉱 業 公 司 と 合 作 制 約 鉱 山 開 発 と 輸 入 進 行 中 06.4 宣 川 金 銀 平 安 北 道 吉 林 昊 融 集 団 と 共 同 開 発 宣 川 郡 07.3 徳 峴 鉄 平 安 北 道 香 港 の 鳳 皇 投 資 集 団 と 合 作 契 約 義 州 郡 07.9 龍 興 モリブデン 平 安 北 道 大 光 合 営 会 社 設 立 成 川 郡 08.6 甕 津 鉄 黄 海 南 道 西 海 合 営 会 社 設 立 甕 津 郡 08.11 恵 山 青 年 銅 両 江 道 恵 中 鉱 業 合 営 会 社 設 立 恵 山 市 出 所 : 韓 国 鉱 物 資 源 公 社 第 三 に 北 朝 鮮 の 低 廉 な 労 働 力 を 活 用 した 製 造 業 投 資 は 北 朝 鮮 での 委 託 加 工 や 市 場 確 保 のための 製 造 業 投 資 そして 北 朝 鮮 労 働 力 の 中 国 内 での 雇 用 に 現 れており これは 2010 年 以 降 開 城 地 域 以 外 での 韓 国 の 投 資 が 撤 退 したことをきっかけに 急 速 に 増 えた 特 に 中 国 への 北 朝 鮮 労 働 力 の 輸 出 は 人 数 にして 3 万 人 程 度 で 飲 食 業 ホテル 観 光 製 造 業 IT 分 野 で 働 くようになった 北 朝 鮮 の 労 働 者 たちは 中 国 東 北 部 の 瀋 陽 長 春 延 吉 図 們 琿 春 丹 東 などの 都 市 に 集 中 しており 北 京 や 上 海 など 中 国 の 大 都 市 にも 派 遣 される 丹 東 や 図 們 など 国 境 地 域 の 工 業 団 地 には 寄 宿 舎 に 数 百 人 の 北 朝 鮮 女 性 労 働 者 を 雇 用 してい 7

る 企 業 がある 一 方 北 朝 鮮 の 中 国 に 係 わる 政 策 は 国 際 関 係 における 危 機 管 理 と 体 制 安 定 そして 経 済 再 生 を 目 的 とした 思 惑 が 見 える 北 朝 鮮 は 中 国 の 政 策 に 応 じる 形 で 羅 先 市 を 特 別 市 に 昇 格 (2010 年 1 月 )した また 丹 東 ~ 新 義 州 の 連 携 に 関 しては 黄 金 坪 の 開 発 を 決 め 2011 年 6 月 には 黄 金 坪 と 羅 先 で 中 朝 共 同 開 発 の 着 工 式 を 行 い 黄 金 坪 経 済 地 帯 法 を 制 定 (2011 年 12 月 )した 2011 年 の 金 正 日 政 権 の 末 期 という 時 点 において 中 国 は 北 朝 鮮 経 済 の 共 同 開 発 共 同 管 理 のパートナーになっていた 中 朝 共 同 開 発 共 同 管 理 の 仕 組 みは 以 下 の 通 りである 3 原 則 : 総 体 的 計 画 段 階 別 実 施 政 府 引 導 共 同 開 発 企 業 主 体 市 場 運 営 優 勢 の 相 互 補 充 互 恵 共 栄 目 標 北 朝 鮮 の 工 業 化 水 準 と 人 民 生 活 水 準 の 向 上 北 朝 鮮 産 の 製 品 の 外 貨 獲 得 能 力 と 製 品 の 競 争 力 向 上 北 朝 鮮 の 人 力 土 地 鉱 物 などの 資 源 優 勢 を 経 済 優 勢 に 転 換 方 式 中 朝 共 同 指 導 委 員 会 : 政 府 間 の 協 調 指 導 体 制 共 同 開 発 管 理 委 員 会 : 地 方 政 府 間 の 共 同 管 理 体 系 実 際 の 開 発 経 営 : 各 地 域 の 投 資 開 発 公 司 に 委 任 し 投 資 開 発 公 司 が 土 地 開 発 商 業 開 発 の 責 任 を 持 ち それに 伴 う 投 資 権 経 営 権 受 益 権 を 持 つ 北 朝 鮮 政 府 の 投 資 誘 致 のための 支 援 策 税 金 優 遇 政 策 投 資 保 護 ( 国 有 化 や 徴 収 禁 止 ) 投 資 使 用 期 限 内 の 譲 渡 賃 貸 再 賃 貸 請 負 抵 当 相 続 を 認 める 決 済 通 貨 : 朝 鮮 ウォン 中 国 元 法 定 外 貨 市 場 運 営 : 製 品 の 国 内 販 売 比 率 価 格 の 設 定 M&A 破 産 清 算 などの 企 業 意 思 決 定 を 企 業 が 市 場 原 則 に 基 づき 自 主 的 に 決 定 できる 以 上 のような 内 容 から 分 かるように 2011 年 までの 中 朝 協 力 のスキームは 中 朝 国 境 沿 い にある 北 朝 鮮 の 経 済 特 区 を 中 国 と 北 朝 鮮 が 両 国 間 の 共 同 管 理 で 開 発 する 段 階 まで 進 み 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 に 対 する 中 国 の 関 与 が 他 の 国 に 比 べ 圧 倒 的 地 位 を 持 つようになったと 言 え る 2.3 金 正 恩 時 代 の 経 済 開 発 政 策 : 全 面 的 かつ 独 自 の 経 済 特 区 開 発 へ 2012 年 から 始 まった 金 正 恩 政 権 の 北 朝 鮮 は 金 正 日 政 権 の 時 期 の 国 家 体 制 や 経 済 政 策 を 継 承 した 権 力 の 中 枢 部 には 先 代 のエリートグループがそのまま 布 陣 した しかし 2012 年 3 中 朝 共 同 開 発 共 同 管 理 計 画 要 綱 (2011 年 2 月 )の 内 容 による 8

に 権 力 中 枢 部 の 若 い 世 代 への 交 替 が 実 施 され 金 正 恩 唯 一 指 導 体 系 への 思 想 組 織 強 化 が 行 われた 2013 年 3 月 の 労 働 党 中 央 委 員 会 全 体 会 議 にて 経 済 建 設 と 核 武 装 の 並 進 政 策 を 立 ち 上 げ 4 月 には 経 済 改 革 派 の 朴 奉 珠 元 総 理 を 総 理 に 再 起 用 し 経 済 政 策 においても 大 胆 な 実 験 が 行 われた 金 正 恩 時 代 の 始 まりは 2013 年 からであった 体 制 の 危 機 管 理 時 代 と 言 える 金 正 日 時 代 に 比 較 し 金 正 恩 時 代 は 体 制 の 正 常 化 と 革 新 の 時 代 と 言 える 政 策 を 推 進 して いるようである 表 5 金 正 日 時 代 と 金 正 恩 時 代 の 比 較 区 分 金 正 日 時 代 ( 危 機 管 理 ) 金 正 恩 時 代 ( 正 常 化 と 革 新 ) 国 家 運 営 の 原 則 先 軍 政 治 社 会 主 義 計 画 経 済 の 原 則 を 重 視 非 常 時 の 国 家 運 営 体 制 を 正 常 時 の 体 制 に 転 換 労 働 党 と 内 閣 の 機 能 正 常 化 軍 組 織 の 正 常 化 統 治 スタイル 背 後 での 危 機 管 理 国 内 経 済 政 策 社 会 主 義 原 則 を 維 持 しながら 実 利 を 得 るための 改 善 を 実 施 国 防 工 業 優 先 農 業 と 軽 工 業 の 同 時 発 展 対 外 経 済 政 策 経 済 特 区 の 試 験 的 運 営 前 面 に 出 たリーダーシップ 人 民 生 活 改 善 優 先 食 衣 住 問 題 の 市 場 化 核 と 経 済 の 並 進 政 策 多 様 な 経 済 開 発 政 策 を 実 施 生 産 分 配 制 度 の 改 革 経 済 開 発 区 の 拡 大 本 格 化 共 通 性 出 所 : 筆 者 作 成 1 自 立 的 民 族 経 済 : 自 国 の 原 料 燃 料 動 力 基 地 の 確 保 2 科 学 技 術 重 視 ( 現 代 化 情 報 化 )で 人 民 生 活 向 上 3 自 衛 の 軍 事 力 金 正 恩 政 権 の 経 済 開 発 政 策 は 2013 年 5 月 29 日 の 最 高 人 民 会 議 常 任 理 事 会 の 政 令 で 経 済 開 発 区 法 を 制 定 したことで 明 確 となった 同 法 は 経 済 開 発 区 を 国 家 が 定 めた 法 律 に 従 い 経 済 活 動 で 恩 恵 を 受 けられる 特 殊 経 済 地 帯 として 外 資 を 導 入 し インフラ 先 端 科 学 技 術 国 際 市 場 で 競 争 力 のある 製 品 を 生 産 することなどを 奨 励 すると 規 定 した 経 済 開 発 区 は 工 業 開 発 区 農 業 開 発 区 観 光 開 発 区 輸 出 加 工 区 先 端 技 術 開 発 区 などに 分 類 され ている この 法 律 に 基 づいて 北 朝 鮮 政 府 は 全 国 13 か 所 に 経 済 開 発 区 を また 新 義 州 に 経 済 特 区 を 設 置 すると 発 表 した( 朝 鮮 中 央 通 信 2013 年 11 月 21 日 付 き) これにより 北 朝 鮮 は 経 済 成 長 に 向 けた 大 きな 期 待 を 外 資 導 入 に 掛 け 今 後 の 外 資 導 入 の 動 きが 北 朝 鮮 経 済 と 密 接 な 関 係 を 形 成 するようになった 13 の 経 済 開 発 区 は 1 鴨 緑 江 経 済 開 発 区 2 渭 原 工 業 開 発 区 3 満 浦 経 済 開 発 区 4 恵 山 経 済 開 発 区 5 穏 城 島 観 光 開 発 区 6 清 津 経 9

済 開 発 区 7 漁 郎 農 業 開 発 区 8 北 青 農 業 開 発 区 9 興 南 工 業 開 発 区 10 現 洞 工 業 開 発 区 11 新 坪 観 光 開 発 区 12 松 林 輸 出 加 工 区 13 臥 牛 島 輸 出 加 工 区 である < 地 方 級 経 済 開 発 区 > 1 鴨 緑 江 経 済 開 発 区 : 農 業 観 光 貿 易 2 渭 原 工 業 開 発 区 : 鉱 物 木 材 農 産 5 物 加 工 3 満 浦 経 済 開 発 区 : 農 業 観 光 貿 易 3 4 6 4 恵 山 経 済 開 発 区 : 農 業 観 光 輸 出 加 工 1 2 9 8 7 5 穏 城 島 観 光 開 発 区 : 観 光 6 清 津 経 済 開 発 区 : 金 属 機 械 建 材 7 漁 郎 農 業 開 発 区 : 農 畜 産 8 北 青 農 業 開 発 区 : 果 物 畜 産 9 興 南 工 業 開 発 区 : 機 械 建 材 化 学 13 12 1 11 10 保 税 加 工 10 現 洞 工 業 開 発 区 : 情 報 軽 工 業 11 新 坪 観 光 開 発 区 : 観 光 娯 楽 12 松 林 輸 出 加 工 区 : 物 流 倉 庫 輸 出 加 工 13 臥 牛 島 輸 出 加 工 区 : 輸 出 加 工 < 中 央 級 経 済 特 区 > 1 新 義 州 経 済 特 区 出 所 : 朝 日 新 聞 2013 年 10 月 28 日 (http://www.asahi.com/international/update/1028/tky201310280007.html) 図 3 2013 年 に 新 設 された 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 区 また 上 記 の 経 済 開 発 区 の 設 置 に 先 立 って 国 家 級 の 観 光 特 区 として 元 山 と 七 宝 山 の 開 発 が 提 示 された すなわち 2013 年 3 月 31 日 朝 鮮 労 働 党 中 央 委 員 会 全 体 会 議 において 金 正 恩 第 1 書 記 は 元 山 地 区 と 七 宝 山 地 区 をはじめとする 各 地 に 観 光 地 区 をよく 整 備 し 観 光 を 活 発 にして 各 道 に 自 らの 事 情 に 合 う 経 済 開 発 区 を 設 置 して 特 色 があるように 発 展 させなくてはならない と 発 言 し 観 光 特 区 の 開 発 を 命 じた 元 山 近 郊 の 馬 息 嶺 では 総 合 スキーレジャータウンが2013 年 12 月 末 に 完 成 した 10

出 所 : 北 朝 鮮 当 局 図 4 元 山 地 区 総 計 画 図 出 所 : 北 朝 鮮 当 局 図 5 新 義 州 経 済 特 区 11

2013 年 12 月 に 第 2 人 者 として 権 力 を 振 るった 張 成 択 党 行 政 部 長 が 反 党 反 革 命 国 家 転 覆 陰 謀 の 罪 で 処 刑 されたことは 政 治 的 解 釈 はともかく 経 済 政 策 は 金 正 日 政 権 末 期 に 張 氏 が 率 いた 中 国 との 共 同 開 発 政 策 に 修 正 を 掛 けることを 意 味 する すなわち 中 国 への 一 方 的 な 依 存 から 脱 皮 し 韓 国 日 本 ロシア アジア 諸 国 米 国 ヨーロッパなど 世 界 各 国 との 経 済 協 力 を 拡 大 していく 方 向 に 向 かうと 考 えられる 中 国 だけに 依 存 するし かなかった 危 機 時 代 から 正 常 化 時 代 に 本 来 の 独 自 性 を 基 に 多 元 的 経 済 協 力 を 推 進 すること になる 2014 年 に 入 り 北 朝 鮮 が 韓 国 との 関 係 改 善 や 日 本 との 関 係 正 常 化 に 力 を 入 れてい ることからも 北 朝 鮮 の 経 済 政 策 に 金 正 恩 時 代 の 正 常 化 の 方 針 が 現 れる 3. 日 中 韓 の 関 与 のあり 方 3.1 北 朝 鮮 の 経 済 政 策 の 今 後 のあり 方 北 朝 鮮 は 経 済 の 長 期 的 停 滞 が 続 き 旧 社 会 主 義 諸 国 における 市 場 経 済 への 移 行 が 進 んでいく 状 況 にあっても 社 会 主 義 の 原 則 すなわち 政 府 が 主 導 して 経 済 運 営 を 行 う 体 制 を 堅 持 し 続 けており 社 会 主 義 計 画 経 済 の 原 則 を 維 持 しながら 経 済 の 実 利 を 上 げる という 姿 勢 を 崩 していない 経 済 開 発 戦 略 の 目 標 は 経 済 自 立 性 を 強 化 することに 固 執 している 北 朝 鮮 は 自 立 経 済 の 中 心 産 業 を 電 力 石 炭 金 属 運 輸 などの 4 部 門 に 置 いているが こ れは 戦 前 の 遺 産 でもある 北 朝 鮮 はこの 基 盤 の 上 に 軽 工 業 と 連 携 可 能 な 重 工 業 ( 電 気 電 子 石 油 化 学 産 業 機 械 輸 送 機 械 )を 重 点 的 に 振 興 し 消 費 財 産 業 ( 食 品 繊 維 )を 同 時 発 展 させる 政 策 ( 重 工 業 優 先 軽 工 業 農 業 の 同 時 発 展 )を 維 持 している しかし 変 化 がないように 見 える 北 朝 鮮 経 済 にも 市 場 の 機 能 は 国 内 経 済 や 国 際 経 済 協 力 に 主 要 な 地 位 を 既 に 持 っている 特 に 国 際 協 力 による 経 済 開 発 の 象 徴 である 経 済 特 区 政 策 を 推 進 し 国 内 の 主 要 地 域 において 1 直 接 に 海 外 と 連 携 されること 2 多 国 間 共 同 開 発 の 枠 組 が 形 成 されやすくなること 3 周 辺 国 からの 支 援 協 力 を 誘 引 することができ るようになった 1990 年 代 から 20 年 間 の 経 済 特 区 政 策 は 独 自 路 線 から 中 朝 共 同 開 発 へ また 独 自 路 線 下 の 全 方 位 開 放 へと 変 遷 してきたが 核 兵 器 開 発 を 放 棄 しない 限 り 国 際 政 治 の 情 勢 が 北 朝 鮮 に 有 利 では 無 かったため 経 済 特 区 政 策 が 成 功 する 見 込 みが 弱 かった したがって 今 後 は 外 資 に 対 する 安 定 した 投 資 環 境 を 提 供 していくことが 重 要 である 北 朝 鮮 は 中 国 の ような 大 きな 市 場 ニーズと 強 い 資 金 力 を 持 っていないため 地 理 経 済 学 的 優 位 性 や 資 源 力 そして 人 材 を 活 用 するのが 経 済 開 発 のがあり 方 ではないかと 考 えられる 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 のオーナーシップを 尊 重 しながら 今 後 の 経 済 開 発 の 方 向 性 を 考 えると 以 下 の 5 つのレベルの 政 策 が 必 要 である 1 不 足 経 済 からの 脱 出 : 自 立 的 民 族 経 済 の 負 の 遺 産 でもある 不 足 問 題 の 解 決 2 経 済 開 放 の 深 化 : 体 制 安 定 と 経 済 再 生 のための 周 辺 国 との 経 済 連 携 協 力 を 強 化 3 朝 鮮 半 島 民 族 経 済 の 形 成 : 朝 鮮 半 島 における 南 北 の 経 済 協 力 の 進 展 4 国 内 経 済 格 差 の 解 消 : 地 方 経 済 の 育 成 12

5 マクロ 経 済 の 安 定 的 改 革 : 財 政 貨 幣 雇 用 物 価 消 費 などの 問 題 改 善 しかし 北 朝 鮮 の 今 後 の 経 済 政 策 の 展 望 について 経 済 だけの 変 数 でシナリオを 構 成 し 推 測 するのは 限 界 がある 北 朝 鮮 の 今 後 の 政 策 変 化 は 北 東 アジアの 国 際 情 勢 の 変 化 に 影 響 を 受 けながら 北 朝 鮮 が 提 起 した 経 済 建 設 と 核 武 力 の 並 進 路 線 の 中 の 両 者 関 係 により 決 定 されると 考 えられる 北 朝 鮮 をめぐる 国 際 秩 序 の 力 関 係 上 北 朝 鮮 の 経 済 建 設 と 核 武 力 とはお 互 いに 機 会 費 用 のトレードオフ(Trade-off) 関 係 であると 考 えられるが 北 朝 鮮 はそれを 両 立 できる 関 係 として 設 定 している 核 武 力 により 確 保 する 安 全 保 障 を 基 に 経 済 発 展 に 財 源 を 集 中 させる 戦 略 である しかし 北 朝 鮮 の 並 進 路 線 が 成 功 するためには 逆 説 的 に 国 際 社 会 の 経 済 制 裁 に 対 抗 し 自 立 経 済 の 原 則 の 下 で 国 内 の 資 源 と 財 源 で 経 済 成 長 を 果 たす 能 力 を 持 たなければならない 北 朝 鮮 の 経 済 の 現 状 はこの 能 力 が 不 足 しているのだ したがって 外 資 誘 致 を 通 じて 経 済 開 発 のきっかけを 作 る 方 針 を 打 ち 上 げているが 国 際 社 会 は 経 済 制 裁 を 強 化 する との 矛 盾 が 発 生 する このような 状 況 から 今 後 の 政 策 のあり 方 は 核 武 力 と 経 済 開 発 の 優 先 程 度 により 四 つの シナリオが 考 えられる 4 表 6 北 朝 鮮 の 経 済 政 策 のシナリオ 区 分 シナリオ 名 内 容 シナリオ1 核 武 力 強 化 持 続 と 経 済 発 展 の 並 進 核 ( 優 )+ 経 ( 優 ) 南 北 経 済 協 力 の 展 望 は 中 立 中 朝 関 係 は 現 状 維 持 日 本 米 国 との 関 係 改 善 が 困 難 経 済 開 発 の 財 源 は 中 国 と 韓 国 韓 国 政 府 の 立 場 は 政 経 連 携 シナリオ2 核 武 力 強 化 持 続 と 経 済 発 展 弱 化 核 ( 優 )+ 経 ( 劣 ) 南 北 経 済 協 力 の 展 望 は 否 定 的 国 際 社 会 の 対 北 朝 鮮 制 裁 強 化 シナリオ3 核 武 力 強 化 中 断 と 経 済 発 展 優 先 核 ( 劣 )+ 経 ( 優 ) 核 問 題 解 決 に 肯 定 的 南 北 関 係 改 善 国 際 社 会 の 制 裁 緩 和 の 動 き 米 国 の 政 策 変 化 は 不 透 明 シナリオ4 核 武 力 強 化 中 断 と 経 済 発 展 弱 化 核 ( 劣 )+ 経 ( 劣 ) 在 来 式 軍 事 力 に 依 存 改 革 開 放 の 可 能 性 が 無 くなる 国 際 社 会 の 介 入 は 否 定 的 出 所 : 筆 者 作 成 北 朝 鮮 は 上 記 のシナリオ1を 推 進 しなら 中 国 やロシアからの 協 力 を 獲 得 する 経 済 政 策 を 進 めていくと 思 われるが 長 期 的 には 朝 鮮 半 島 非 核 化 を 実 現 することでシナリオ3へ 4 韓 国 国 土 研 究 院 統 一 時 代 に 向 けた 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 核 心 プロジェクト 選 定 および 実 践 課 題 2013 年 12 月 pp73~78 を 参 考 にした 13

移 行 する 可 能 性 もある 問 題 はその 時 の 米 国 が 関 係 正 常 化 に 踏 み 切 るのかそれとも 人 権 問 題 など 他 の 問 題 を 取 り 上 げ 北 朝 鮮 に 対 する 制 裁 を 継 続 するのかである 北 朝 鮮 としては 米 国 の 政 策 変 化 を 見 込 めない 限 り 核 武 力 の 放 棄 は 考 えられないであろう 3.2 日 中 韓 の 関 与 のあり 方 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 には 周 辺 国 との 経 済 連 携 協 力 が 必 要 であるため 北 朝 鮮 も 経 済 特 区 を 設 置 し 外 資 を 誘 致 する 政 策 を 進 めている 外 資 は 主 に 周 辺 国 から 入 ると 思 われるが 北 朝 鮮 をめぐる 国 際 環 境 は 北 朝 鮮 の 思 惑 通 りには 動 かないのも 事 実 である 周 辺 国 の 日 中 韓 ロに 米 国 や 国 際 社 会 は 北 朝 鮮 の 核 開 発 問 題 人 権 問 題 体 制 問 題 に 関 して 懸 念 しており 北 朝 鮮 の 孤 立 を 外 交 的 に 利 用 する 動 きさえ 現 れるほどである 北 朝 鮮 との 国 際 協 力 は 北 東 アジアの 冷 戦 構 造 を 超 えないと 成 果 を 出 すことが 難 しいとも 言 える しかし 朝 鮮 半 島 の 安 定 化 が 周 辺 国 に 取 っての 利 益 になるのであれば 北 朝 鮮 の 経 済 安 定 と 成 長 を 域 内 発 展 に 牽 引 することは 北 東 アジアにおいて 非 常 に 重 要 な 課 題 となる 今 後 朝 鮮 半 島 情 勢 が 安 定 した 上 で 北 朝 鮮 が 中 国 だけでなく 日 本 と 韓 国 との 関 係 進 展 に 乗 り 出 し 日 中 韓 の 3 国 も 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 に 協 力 できるようになると その 協 力 の 枠 組 みが 各 国 の 経 済 成 長 の 新 たな 推 進 力 となるだろう その 協 力 のあり 方 はどのようなものであろう か 各 国 の 国 益 に 対 する 考 え 方 や 北 朝 鮮 との 協 力 の 戦 略 によって 両 国 間 あるいは 多 国 間 の 協 力 の 仕 組 みが 考 えられる 3.2.1 日 本 と 北 朝 鮮 - 両 国 間 協 力 のあり 方 北 朝 鮮 における 近 代 的 経 済 開 発 は 日 本 による 植 民 地 経 営 の 産 物 である 植 民 地 時 代 は 満 州 と 朝 鮮 半 島 を 連 携 した 日 - 朝 - 満 の 経 済 統 合 が 推 進 されていた 北 朝 鮮 地 域 の 国 土 開 発 は 東 岸 西 岸 それぞれの 沿 海 部 の 開 発 を2つの 発 展 軸 にしながら 平 壌 - 元 山 を 中 心 に2 つの 発 展 軸 をつなぐ 構 想 であった 日 本 は 無 煙 炭 鉱 物 開 発 金 属 製 鉄 製 錬 石 炭 化 学 製 紙 セメント 耐 火 物 港 湾 通 信 鉄 道 道 路 農 林 業 などの 分 野 にインフラ 投 資 と 企 業 投 資 を 行 った 北 朝 鮮 は 日 本 が 開 発 した 発 展 軸 に 沿 って 中 心 産 業 を 育 成 してお り 産 業 基 盤 工 場 は 日 本 統 治 下 の 遺 産 を 活 用 し 現 在 まで 繋 がっている 日 朝 間 の 経 済 協 力 は 2002 年 9 月 の 日 朝 平 壌 宣 言 の 如 く 日 朝 間 の 懸 案 問 題 の 解 決 と 国 交 正 常 化 に 伴 う 経 済 協 力 供 与 などの 協 力 であるため 両 国 間 の 協 力 が 基 本 になるだろ う また 日 本 において 北 朝 鮮 に 対 する 経 済 協 力 の 政 策 が 過 去 清 算 の 意 味 だけでなく 東 アジアにおける 日 本 の 政 治 力 の 発 揮 という 意 味 もあり 日 朝 両 国 間 の 経 済 協 力 が 優 先 とな ることは 十 分 考 えられる 日 朝 国 交 正 常 化 に 伴 う 経 済 協 力 の 優 先 分 野 は 北 朝 鮮 の 現 在 の 経 済 状 況 と 日 本 の 特 長 を 勘 案 し 1 産 業 生 産 正 常 化 分 野 2 輸 出 産 業 支 援 分 野 3インフラ 開 発 協 力 分 野 4 人 材 育 成 知 的 交 流 分 野 5 生 活 基 盤 施 設 環 境 協 力 分 野 を 合 わせて 検 討 することが 考 えられ る 人 材 育 成 知 的 交 流 分 野 と 生 活 基 盤 施 設 環 境 協 力 分 野 は 世 界 銀 行 (WB)やアジア 開 14

発 銀 行 (ADB)など 国 際 金 融 機 関 の 投 融 資 で 重 視 されており 日 本 の ODA 政 策 でも 重 視 され つつある この 社 会 開 発 分 野 は 経 済 開 発 ( 経 済 成 長 貯 蓄 貿 易 投 資 など)と 共 に 持 続 可 能 な 発 展 にとっての 相 互 強 化 要 因 (1995 年 3 月 の 国 連 世 界 社 会 開 発 サミット ) である 5 社 会 開 発 と 経 済 開 発 は 相 互 補 完 的 な 役 割 を 果 たすものなので 日 朝 間 の 経 済 協 力 分 野 に 含 まれることが 望 まれる 産 業 生 産 正 常 化 協 力 輸 出 産 業 支 援 イン フラ 開 発 協 力 人 材 育 成 知 的 協 力 区 分 資 本 財 供 与 原 資 財 供 与 輸 出 委 託 加 工 活 性 化 鉱 業 表 7 日 朝 両 国 間 の 経 済 協 力 の 分 野 内 容 鉱 石 採 掘 設 備 輸 送 機 械 探 査 設 備 金 属 機 械 CNC 工 作 機 械 鉄 鋼 設 備 技 術 産 業 機 械 化 学 繊 維 化 学 金 属 建 設 繊 維 衣 類 非 鉄 金 属 物 流 交 通 鉄 道 水 力 工 業 団 地 技 術 教 育 電 気 電 子 道 路 石 油 化 学 設 備 技 術 石 炭 清 浄 化 技 術 建 設 資 材 石 油 化 学 工 業 原 料 プラスチック 鉄 鋼 紙 機 械 部 品 精 錬 設 備 委 託 加 工 設 備 原 資 財 および 部 品 新 規 工 場 建 設 鉄 道 施 設 近 代 化 駅 舎 整 備 システム 電 算 化 道 路 舗 装 新 規 道 路 建 設 港 湾 空 港 港 湾 整 備 荷 役 設 備 近 代 化 空 港 整 備 通 信 文 化 知 的 交 流 有 線 通 信 整 備 移 動 通 信 協 力 ダム 補 修 多 目 的 ダム 新 規 建 設 日 本 海 ( 朝 鮮 東 海 ) 沿 岸 の 工 業 基 盤 施 設 整 備 ( 用 水 電 力 通 信 交 通 ) 制 度 整 備 ( 仮 称 ) 日 朝 友 好 技 術 訓 練 センター 設 立 技 術 専 門 学 校 設 立 学 校 実 験 施 設 整 備 ( 仮 称 ) 日 朝 文 化 歴 史 博 物 館 設 立 経 済 研 究 所 設 備 資 料 提 供 生 活 基 盤 施 設 環 境 協 力 上 下 水 道 整 備 廃 棄 物 処 理 システム 整 備 医 療 施 設 整 備 出 所 : 筆 者 作 成 環 境 保 護 事 業 3.2.2 韓 国 と 北 朝 鮮 - 南 北 間 協 力 のあり 方 南 北 の 間 では 開 城 工 業 地 区 や 金 剛 山 観 光 を 始 め 平 壌 などでの 直 接 投 資 が 行 われてきた しかし 2008 年 以 降 の 韓 国 李 明 博 政 権 の 登 場 以 降 の 南 北 関 係 悪 化 と 2010 年 3 月 の 韓 国 哨 戒 艦 天 安 号 沈 没 事 件 後 の 5.24 措 置 による 南 北 交 易 ( 開 城 工 業 団 地 を 除 く) 中 断 に 5 United Nations (1995), World Summit for Social Development, 6-12 march 1995 15

より 南 北 経 済 協 力 は 開 城 地 区 を 除 き 頓 挫 している さらに 2013 年 4 月 には 南 北 間 の 政 治 的 緊 張 が 開 城 工 業 地 区 の 閉 鎖 にまで 至 り 南 北 間 のビジネスは 政 治 問 題 に 翻 弄 され 続 けて きた 2013 年 9 月 までに 南 北 政 府 間 の 協 議 を 経 て 開 城 工 業 地 区 の 再 稼 働 となったが 南 北 ビジネスに 政 治 問 題 が 大 きな 懸 念 材 料 となっていることが 再 認 識 されたと 言 える しかし 2014 年 初 の 南 北 関 係 は 離 散 家 族 の 再 会 が 実 施 されるなど 和 解 のムードが 生 じており 韓 国 の 朴 謹 恵 政 権 が 出 した 朝 鮮 半 島 信 頼 プロセス が 前 政 権 よりは 南 北 対 話 に 前 向 きである ことも 今 後 の 南 北 間 協 力 の 展 望 を 明 るくしている 南 北 経 済 協 力 による 北 朝 鮮 の 経 済 開 発 については 韓 国 の 国 土 研 究 院 など 国 策 研 究 所 に よる 総 合 的 研 究 が 行 われてきた 6 韓 国 が 北 朝 鮮 との 経 済 協 力 に 関 心 を 持 つ 理 由 としては 1インフラ 産 業 開 発 等 における 南 北 統 合 の 促 進 2 相 互 依 存 関 係 強 化 による 半 島 情 勢 安 定 促 進 3 中 国 ロシア 極 東 とのネットワーク 確 保 ( 資 源 市 場 ) 4 安 価 な 労 働 力 の 確 保 5 安 定 統 一 に 向 けた 経 済 開 発 などが 挙 げられている また 南 北 経 済 協 力 の 方 向 に 関 す る 戦 略 として 1) 南 北 経 済 統 合 戦 略 2) 国 際 ネットワーク 強 化 戦 略 と 区 分 しており 戦 略 1)は 朝 鮮 半 島 内 部 における 開 発 戦 略 であり 産 業 とインフラの 南 北 統 合 と 朝 鮮 半 島 の 共 同 市 場 形 成 をを 目 指 すものである 戦 略 2)は 北 東 アジア 全 体 における 北 朝 鮮 を 含 む 朝 鮮 半 島 のあり 方 に 関 する 開 発 戦 略 であり 中 国 ロシア 日 本 米 国 などの 主 要 周 辺 国 との 相 互 協 力 を 通 じて 朝 鮮 半 島 の 北 東 アジア 地 域 における 競 争 力 強 化 を 図 り 中 国 日 本 ロシア 等 の 主 要 拠 点 との 間 に 産 業 とインフラのネットワークを 構 築 することを 目 指 すもの である ここでは 2013 年 の 韓 国 においての 新 しい 研 究 成 果 を 紹 介 することにする 韓 国 国 土 研 究 院 は 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 のための 核 心 プロジェクト 11 項 目 を 選 定 し 公 開 した 7 それは 上 記 の 1) 南 北 経 済 統 合 戦 略 と 2) 国 際 ネットワーク 強 化 戦 略 を 踏 まえながら (1) 北 東 アジア- 朝 鮮 半 島 ブリッジ プロジェクト (2) 国 境 地 域 協 力 プロジェクト (3) 北 朝 鮮 国 内 地 域 開 発 プロジェクト (4) 南 北 協 力 プロジェクトなどで 合 計 11 のプロジェクト に 構 成 されている このプロジェクトの 推 進 により 韓 国 の 産 業 生 産 が 促 進 され また 中 国 と 日 本 の 産 業 生 産 にもプラスの 効 果 があると 分 析 された 表 8 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 の 核 心 プロジェクト 区 分 プロジェクト 名 内 容 (1) 北 東 アジア- 朝 鮮 半 島 ブリッジ プ ロジェクト 1 朝 鮮 半 島 西 軸 インフラ 回 廊 ( 南 北 中 ) ソウル~ 新 義 州 間 の 道 路 鉄 道 の 補 修 と 現 代 化 海 州 ~ 平 壌 ~ 新 義 州 の 西 海 岸 高 速 道 路 新 設 ソウル~ 新 義 州 間 の 高 速 鉄 道 新 設 2 朝 鮮 半 島 東 軸 ソウル~ 元 山 ~ 清 津 ~ 羅 津 の 鉄 道 複 線 化 と 高 速 道 6 韓 国 国 土 研 究 院 朝 鮮 半 島 経 済 統 合 計 画 2010 年 7 韓 国 国 土 研 究 院 統 一 時 代 に 向 けた 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 核 心 プロジェクト 選 定 および 実 践 課 題 2013 年 12 月 16

(2) 国 境 地 域 協 力 プ ロジェクト (3) 北 朝 鮮 国 内 地 域 開 発 プロジェクト (4) 南 北 協 力 プロジ ェクト インフラ 回 廊 ( 南 北 中 ロ) 路 新 設 同 区 間 に 天 然 ガスパイプライン 建 設 3 新 義 州 - 丹 東 黄 金 坪 特 区 + 新 義 州 特 区 開 発 ( 南 北 中 ) 鉄 道 および 道 路 の 改 善 新 義 州 ~ 安 州 間 の 高 速 道 路 新 設 発 電 所 現 代 化 および 鴨 緑 江 水 害 防 止 施 設 改 善 4 羅 先 清 津 - 琿 羅 先 特 区 の 整 備 春 -ハサン 羅 津 ~ハサン 間 の 鉄 道 施 設 現 代 化 ( 南 北 中 ロ) 清 津 ~ 羅 先 ~ 琿 春 間 の 高 速 道 路 新 設 清 津 市 のインフラ 整 備 羅 先 ~ 七 宝 山 観 光 開 発 羅 先 ~ 清 津 送 電 網 整 備 清 津 火 力 発 電 所 現 代 化 先 鋒 製 油 施 設 の 現 代 化 清 津 空 港 の 整 備 5 平 壌 - 南 浦 南 浦 経 済 特 区 開 発 ( 北 朝 鮮 経 済 再 生 南 浦 港 の 現 代 化 順 安 空 港 の 現 代 化 の 核 心 ) 発 電 所 の 改 修 新 設 6 咸 興 - 赴 戰 興 南 港 の 現 代 化 周 辺 道 路 鉄 道 整 備 ( 工 業 + 観 光 ) 水 力 発 電 所 の 現 代 化 観 光 地 帯 造 成 ( 国 際 観 光 の 拠 点 ) 7 新 浦 - 端 川 新 浦 エネルギー 特 区 と 端 川 資 源 特 区 開 発 (エネルギー+ 資 周 辺 道 路 鉄 道 整 備 港 の 現 代 化 源 ) 水 力 発 電 所 の 現 代 化 8 白 頭 山 地 域 三 池 淵 空 港 の 現 代 化 ( 観 光 ) 自 然 観 光 インフラ 整 備 9 開 城 - 海 州 康 翎 郡 と 海 州 に 経 済 特 区 開 発 ( 南 北 協 力 の 核 開 城 工 業 地 区 拡 大 海 州 港 の 現 代 化 心 ) 高 速 道 路 新 設 10 元 山 - 金 剛 山 - 元 山 特 区 開 発 雪 嶽 山 道 路 と 鉄 道 整 備 ( 観 光 協 力 ) 元 山 港 の 現 代 化 水 力 発 電 所 の 現 代 化 南 北 江 原 道 の 協 力 11 平 和 地 帯 非 武 装 地 帯 (DMZ)に 平 和 地 帯 を 建 設 南 北 共 有 河 川 の 共 同 管 理 鉄 道 断 絶 区 間 の 連 結 生 態 観 光 世 界 平 和 公 園 造 成 17

出 所 : 韓 国 国 土 研 究 院 2 朝 鮮 半 島 東 軸 インフラ 回 廊 1 朝 鮮 半 島 西 軸 インフラ 回 廊 2 3 新 義 州 - 丹 東 PJ 亀 城 新 義 州 南 浦 5 平 壌 - 南 浦 PJ 8 白 頭 山 地 域 PJ 開 城 海 州 11 平 和 地 帯 PJ 9 開 城 - 海 州 PJ 仁 川 ソウル 白 頭 山 羅 先 清 津 4 羅 先 清 津 - 琿 春 -ハサン PJ 金 策 妙 香 山 端 川 7 新 浦 - 端 川 PJ 咸 興 新 浦 元 山 6 咸 興 - 赴 戰 PJ 平 壌 高 城 金 剛 山 10 元 山 - 金 剛 山 3 - 雪 嶽 山 PJ 1 大 田 出 所 : 韓 国 国 土 研 究 院 図 6 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 の 核 心 プロジェクト 韓 国 国 土 研 究 院 の 研 究 内 容 を 見 ると 北 朝 鮮 地 域 には 主 に 物 流 インフラ 整 備 経 済 特 区 建 設 エネルギー( 電 力 ) 供 給 資 源 開 発 環 境 観 光 開 発 が 中 心 的 プロジェクトとなっ ている このプロジェクトを 通 じて 北 東 アジアと 朝 鮮 半 島 の 経 済 回 廊 が 形 成 され 朝 鮮 半 島 の 南 北 間 の 経 済 統 合 が 進 展 するとの 分 析 であった このプロジェクトのための 総 予 算 は 約 94 兆 ウォン( 約 9 兆 円 )に 推 算 された 10 年 間 のプロジェクトで 年 間 9.4 兆 ウォンの 最 終 需 要 の 増 加 により 北 朝 鮮 の 生 産 誘 発 は 年 間 20.3 兆 ウォン 韓 国 の 年 GDP 増 加 額 は 2.1 18

兆 ウォン( 北 朝 鮮 経 済 開 発 市 場 の 50%を 韓 国 が 占 めることを 仮 定 )と 推 算 された 8 11 のプロジェクト 推 進 の 戦 略 として 個 別 プロジェクトの 実 施 ではなく プロジェクト 間 の 相 互 連 携 統 合 で 実 行 する プログラム 型 アプローチ が 提 示 された そして 中 短 期 および 長 期 的 なロードマップとして 以 下 の 案 が 提 示 された 表 9 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 の 中 短 期 長 期 のロードマップ 中 短 期 長 期 国 際 協 力 と 南 北 協 力 プログラム インフラ 回 廊 プログラム 1 国 境 地 域 協 力 プロジェクト 1 平 壌 ~ 南 浦 a. 新 義 州 ~ 丹 東 ( 特 区 物 流 ) 2ソウル~ 新 義 州 鉄 道 補 修 b. 羅 先 清 津 ~ 琿 春 ~ハサン 3 開 城 ~ 海 州 ( 特 区 物 流 ) 4ソウル~ 元 山 鉄 道 連 結 2 南 北 協 力 プロジェクト エネルギーと 資 源 開 発 プログラム a. 平 和 地 帯 5 新 浦 ~ 端 川 観 光 プログラム 6 元 山 ~ 金 剛 山 ~ 雪 嶽 山 7 咸 興 ~ 赴 戰 8 白 頭 山 地 域 出 所 : 韓 国 国 土 研 究 院 3.2.3 日 中 韓 の 多 国 間 協 力 のあり 方 今 まで 中 国 日 本 韓 国 の 北 朝 鮮 との 両 国 間 関 係 を 中 心 に 経 済 協 力 のあり 方 を 考 えた が ここでは 日 中 韓 が 多 国 間 の 協 力 で 北 朝 鮮 との 経 済 協 力 を 進 めるあり 方 に 関 して 考 えて みることにする ロシアや 関 係 諸 国 を 含 めた 包 括 的 な 多 国 間 協 力 として 考 えられる 協 力 分 野 としては 上 記 の 韓 国 国 土 研 究 院 の 研 究 にも 出 ているような 国 境 通 過 物 流 網 ( 鉄 道 道 路 港 湾 空 港 など)の 整 備 と 北 東 アジア 地 域 でのエネルギー 共 同 利 用 のための 協 力 そして 大 気 水 質 汚 染 防 止 のための 環 境 協 力 などが 挙 げられる 中 国 の 北 朝 鮮 に 対 する 経 済 協 力 の 戦 略 は 中 国 の 経 済 発 展 のための 資 源 獲 得 だけでなく 周 辺 地 域 への 連 携 拡 大 に 発 展 していく 中 で 国 境 地 域 の 経 済 特 区 開 発 や 道 路 ~ 港 湾 の 物 流 インフラ 連 結 に 力 を 入 れている 中 国 の 長 吉 図 先 導 区 や 遼 寧 沿 海 経 済 地 帯 開 発 事 業 が 北 朝 鮮 との 物 流 連 携 という 局 地 開 発 だけでなく 韓 国 や 日 本 への 輸 送 連 携 を 視 野 に 入 れ た 開 発 であることは 明 確 である そういう 意 味 で 中 国 東 北 地 域 と 朝 鮮 半 島 そして 日 本 を 繋 げる 交 通 連 結 のキーとなる 北 朝 鮮 地 域 の 物 流 網 整 備 は 多 国 間 協 力 の 優 先 的 項 目 と 成 りうる 戦 前 の 日 本 により 推 進 された 歴 史 的 経 緯 はともかく 国 境 通 過 物 流 網 の 整 備 は 今 8 韓 国 国 土 研 究 院 統 一 時 代 に 向 けた 朝 鮮 半 島 開 発 協 力 核 心 プロジェクト 選 定 および 実 践 課 題 2013 年 12 月 pp138~140 19

後 の 北 東 アジア 経 済 協 力 の 枠 組 みとして 再 び 注 視 すべきだというビジョンを 日 中 韓 と 北 朝 鮮 が 共 有 する 必 要 がある 表 10 北 朝 鮮 に 対 する 多 国 間 協 力 の 例 示 区 分 内 容 日 本 の 主 な 協 力 相 手 国 ( 注 ) ( 北 朝 鮮 と 国 際 機 構 を 含 む) 国 境 通 過 物 流 網 鉄 道 朝 鮮 半 島 縦 断 鉄 道 東 部 路 線 ロシア 中 国 韓 国 エネルギー 共 同 利 用 協 力 道 路 港 湾 空 港 電 力 原 油 天 然 ガス 朝 鮮 半 島 縦 断 鉄 道 西 部 路 線 中 国 韓 国 琿 春 ~ 先 鋒 間 の 高 速 道 路 橋 梁 丹 東 ~ 新 義 州 間 の 高 速 道 路 橋 梁 8 大 貿 易 港 整 備 順 安 空 港 整 備 地 方 空 港 整 備 ( 羅 先 清 津 など) 発 電 所 と 送 配 電 線 の 補 修 極 東 ロシア 電 力 の 共 同 利 用 中 国 ロシア 中 国 韓 国 日 本 ロシア 韓 国 日 本 勝 利 化 学 ( 先 鋒 )の 共 同 利 用 ロシア 韓 国 東 シベリア 天 然 ガスパイプラ イン 建 設 大 気 水 質 汚 染 防 止 環 境 設 備 の 供 与 鴨 録 江 と 図 們 江 の 汚 染 防 止 出 所 : 韓 国 国 土 研 究 院 ロシア 中 国 韓 国 ロシア 中 国 韓 国 日 本 また エネルギー 需 給 問 題 は 各 国 の 国 益 に 直 結 する 重 要 な 課 題 である 北 朝 鮮 の 経 済 成 長 のためにはエネルギー 供 給 が 最 優 先 の 課 題 であり 石 炭 への 過 度 な 依 存 を 緩 和 させるた めに 石 油 や 天 然 ガスの 供 給 と 電 力 生 産 の 増 加 が 重 要 である 同 時 に 各 国 のエネルギー 安 全 保 障 のレベルにおいてもロシア 産 の 石 油 天 然 ガス 石 炭 の 共 同 利 用 の 仕 組 みを 作 ること は 日 本 や 韓 国 においては 優 先 順 位 の 高 い 課 題 になる 3.2.4 日 中 韓 の 関 与 の 例 示 現 在 北 朝 鮮 が 経 済 開 発 で 力 を 入 れているところは 地 方 の 発 展 であり その 象 徴 的 都 市 は 元 山 である 金 正 恩 第 1 書 記 の 生 まれ 処 と 言 われる 元 山 は 戦 前 の 日 本 により 開 発 され 戦 後 の 北 朝 鮮 においては 日 本 への 窓 口 でもある 元 山 に 対 する 開 発 は 2013 年 に 新 たな 段 階 に 入 ったが 2013 年 3 月 31 日 党 中 央 委 員 会 全 体 会 議 において 金 正 恩 第 1 書 記 により 元 山 が 観 光 地 区 として 整 備 されるよう 指 示 された 元 山 近 郊 の 馬 息 嶺 の 総 合 スキーレジャー タウン そして 金 剛 山 を 結 ぶ 東 南 部 地 域 最 大 の 観 光 地 域 として 開 発 する 計 画 が 進 んでいる 2018 年 に 韓 国 の 平 昌 で 冬 季 オリンピックが 開 催 されるが 北 朝 鮮 との 共 同 開 催 の 可 能 性 も 20

まったく 無 視 はできない 天 恵 の 海 水 浴 場 ( 鳴 砂 十 里 )を 持 つ 元 山 は 金 剛 山 に 連 携 し 南 北 間 の 観 光 ベルトとして 最 も 有 力 である 日 本 としては 元 山 が 北 朝 鮮 への 拠 点 として 産 業 イ ンフラ 整 備 のモデル 地 域 になりうる 中 国 は 2011 年 8 月 に 海 軍 が 元 山 港 に 寄 港 したことも あり 戦 略 的 重 要 性 を 認 知 している また 中 国 人 観 光 客 の 寄 りところとしても 注 目 され ている このような 元 山 は 今 後 日 中 韓 が 競 い 合 う 地 域 になるよりは 日 中 韓 協 力 による 発 展 地 域 となるのが 北 東 アジアの 平 和 発 展 のためにも 重 要 であろう 対 立 よりは 共 同 の 利 益 を 追 求 することで 北 朝 鮮 の 経 済 発 展 と 域 内 共 栄 が 可 能 となる 地 点 として 元 山 の 開 発 を 国 際 的 な 目 線 で 考 える 必 要 がある 21