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Transcription:

分 断 から 統 合 へ? ポーランド 西 部 国 境 における 分 断 された 領 域 のいま 仙 石 学 I. ポーランド 西 部 国 境 の 分 断 された 領 域 2004 年 に EU に 加 盟 したポーランドを 含 む 中 東 欧 8 カ 国 は 2007 年 12 月 21 日 にシェンゲン 協 定 にも 正 式 に 加 盟 し その 結 果 として 加 盟 国 相 互 間 での 国 境 コントロールは 廃 止 されることとなった 1 これはポーランドの 場 合 であれ ば 陸 続 きの 国 としては 周 辺 の 7 カ 国 のうち ドイツ チェコ リトアニア およびスロヴァキアの 4 カ 国 との 間 で 相 互 に 国 境 が 開 放 されたことを 意 味 する 本 稿 はこのうち ポーランドとドイツの 国 境 となっている ポーランド 西 部 国 境 における 分 断 された 領 域 に 着 目 し 国 境 の 移 動 が 自 由 化 される 前 後 の 分 断 された 地 域 の 状 況 および その 変 化 について 検 討 することを 目 的 としている ここで 西 部 領 域 の 分 断 された 領 域 とは 第 二 次 世 界 大 戦 以 前 は 旧 ドイツの 同 じ 町 もしくは 同 じ 地 域 で あった 領 域 で 対 戦 の 結 果 として 旧 ソ 連 の 意 向 を 反 映 する 形 で 確 定 された 現 在 のポーランド 西 部 国 境 となる オー デル ナイセ 線 (ポーランド 語 ではオドラ ヌィサ 線 ) により 異 なる 2 つの 国 (ポーランドと 当 時 の 東 ドイツ)に 分 断 された 地 域 を 指 すこととする 次 に 分 断 された 領 域 をここで 取 り 上 げる 理 由 としては 一 度 は 国 境 で 分 けら れて 交 流 も 限 定 されていた 地 域 が ポーランドのシェンゲン 協 定 加 盟 により 再 度 自 由 な 往 来 が 可 能 となったことで 分 断 されていた 地 域 が 再 び 結 びつく 可 能 性 が 生 じたということがある ドイツとポーランドの 間 では ポーラン ドの EU 加 盟 前 後 で 両 国 をつなぐ 鉄 道 や 道 路 が 整 備 されたことで 両 国 の 間 でのさまざまな 形 の 往 来 が 増 加 し 特 に ワルシャワとベルリンの 間 を 中 心 としたカーゴの 通 過 量 は 大 きく 伸 びているとされる(Komornicki 2008, 136-142) だが 国 境 が 開 放 されて 交 流 が 増 えることが 果 たして 分 断 された 地 域 の 再 統 合 に 結 びつくかどうか また 実 際 に 再 統 合 への 動 きが 存 在 している 場 合 でもそれがどのような 形 で 実 現 するかについては 必 ずしも 明 確 ではない 本 稿 ではいくつかの 分 断 された 領 域 の 事 例 を 比 較 しながら 現 在 の 状 況 とその 背 景 について 検 討 を 加 えていくことと したい 以 下 第 2 節 では 分 断 された 領 域 として 4 つの 事 例 フランクフルト オーダー(Frankfurt an der Oder) とスウビッツェ(Słubice) グ ベ ン ( Guben)とグビン(Gubin) ゲルリッツ(Göelitz)とズゴジェレッツ (Zgorzelec) および ウゼドム 島 (Inzel Uzedom)(ポーランド 名 ウズナム 島 (Wyspa Uznam)) をとりあげ 2 それぞれの 事 例 におけるシェンゲン 前 後 の 地 域 間 協 力 をめぐる 現 状 を 整 理 し 多 くの 場 合 実 質 的 永 続 的 な 協 力 の 形 成 には 困 難 が 伴 っていることを 明 らかにする 次 いで 第 3 節 では 協 力 関 係 の 構 築 が 困 難 な 理 由 として 地 域 間 協 力 を 促 進 する 枠 組 みが 十 分 に 整 備 されていないという 制 度 的 要 因 と 国 境 がソフト 化 しても 国 の 違 い は 簡 単 には 克 服 することができないという 心 理 的 要 因 を 整 理 した 上 で それでもそれらの 要 因 を 克 服 して 新 たな 協 力 関 係 を 構 築 しつつあるように 見 える 事 例 を 紹 介 する 第 4 節 では 全 体 の 議 論 をまとめた 上 で それでも 西 部 国 境 はポーランドの 他 の 国 境 ( 南 部 および 東 部 )に 比 べるとはるかに 相 互 協 力 のための 条 件 は 整 っており 今 後 は 協 力 が 進 展 する 可 能 性 は 他 の 故 郷 地 域 と 比 べて 高 いことを 比 較 の 視 点 から 整 理 していく 1 ただし 空 路 に 関 しては 2008 年 3 月 29 日 までは 空 港 での 国 境 検 問 が 引 き 続 き 行 われていた 2 なお 地 名 の 記 載 順 は 戦 前 はこの 地 域 がドイツ 領 であったことを 踏 まえて ドイツ 語 ポーランド 語 の 順 で 記 載 している 11

II. 分 断 された 領 域 の 現 状 4 つの 事 例 から 先 にも 挙 げたとおり ここで 事 例 とするのは フランクフルト オーダーと スウビッツェ グベンとグビン ゲルリッツとズゴジェレッツ および ウ ゼドム 島 (ポーランド 名 ウズナム 島 の 4 つの 分 断 された 地 域 である(それ ぞれの 地 域 のおよその 所 在 地 は 図 1 を 参 照 ) ここでこの 4 つの 地 域 を 事 例 とす る 理 由 としては ウズナム 島 をのぞいてもともとは 一 つの 町 であり 過 去 に は 緊 密 な 結 びつきが 存 在 していたこと 並 びにウズナム 島 も 島 としては 一 つの 生 活 圏 にあったものがやはり 国 境 変 更 によりそれが 分 断 されたという 点 で 他 の 町 と 同 じように 考 えることができること 現 在 ではこれらの 町 は 国 境 地 域 における 拠 点 となっていて それぞれが 4 つの 町 島 が 属 するユーロリージョンにおいて 中 核 的 な 役 割 を 果 たしていること 3 またこのような 事 情 ゆえに この 地 域 における 国 境 を 越 える 協 力 に 関 してはある 程 度 の 研 究 が 蓄 積 されているということによる 以 下 それぞれの 町 もしくは 島 における 協 力 の 現 状 について 簡 単 に 整 理 していく こととしたい [ 図 1]4 地 域 の 所 在 地 A:ウゼドム 島 B:フランクフルト オーダー B':スウビッツェ C:グビン C':グベン D:ゲルリッツ D':ズゴジェレッツ ( 出 典 ) http://www.sekaichizu.jp/ の 白 地 図 より 筆 者 作 成 a) フランクフルト オーダー / スウビッツェ 幹 線 に 存 在 することの 不 幸 最 初 の 事 例 として 取 り 上 げるのは ワルシャワとベルリンを 結 ぶ 鉄 道 道 路 の 幹 線 上 に 存 在 するフランクフル ト オーダーとスウビッツェである スウビッツェは 1945 年 まではフランクフルトの 郊 外 の 町 でダムフォシュタッ ト(Dammvorstadt)と 称 されていて フランクフルトの 路 面 電 車 もオーダー 川 を 越 える 路 線 が 存 在 していた 4 1945 年 の 国 境 分 断 後 は 両 都 市 間 の 交 流 は 1970 年 代 の 一 時 期 をのぞいて 停 滞 していたが 社 会 主 義 体 制 が 崩 壊 した 直 後 の 1990 年 には 両 都 市 の 間 で 最 初 の 協 力 協 定 が 締 結 され その 後 両 都 市 の 間 では 行 政 面 での 協 力 や 産 業 開 発 労 働 者 の 移 動 保 健 教 育 などの 面 での 協 力 が 進 展 した 特 に 顕 著 な 点 として 1998 年 のフランクフルト オーダー にあるヨーロッパ 大 学 ヴィアドリナとポズナンのアダム ミツュケヴィッツ 大 学 の 共 同 教 育 機 関 となる Collegium Polonicum の 設 立 (スウビッツェ)や(Herrschel 2011, 158) 2000 年 の 2 カ 国 語 教 育 を 行 う 幼 稚 園 Euro Kita の 設 立 (フランクフルト オーダー)の 設 立 に 見 られるような 教 育 面 での 協 力 が 進 んでいることをあげることができる だが 両 都 市 の 協 力 は 必 ずしも 全 て 順 調 に 進 んでいるとは 言 いがたい 基 本 的 には 両 都 市 間 の 協 力 は 定 期 的 な 協 議 の 開 催 のみで これまでのところ 専 門 の 部 局 や 機 関 が 設 置 されているわけではない また EU の 資 金 投 入 によりベル リン ワルシャワを 結 ぶ 鉄 道 や 道 路 の 幹 線 が 整 備 された 結 果 特 に 若 年 層 が 国 境 の 町 を 離 れて 労 働 市 場 の 大 きな 自 国 の 大 都 市 に 向 かう 傾 向 が 現 れていることも 指 摘 されている(Herrschel 2011, 159) さらに 現 在 では フランク フルト オーダーは 人 口 減 少 に 伴 う 縮 小 都 市 (Shrinking City) 対 策 に 重 点 が 置 かれているのに 対 して(Herrschel 2011, 158) スウビッツェの 方 は 近 隣 の 町 コシュティンとともに 経 済 特 区 (Spesial Economic Zone Kostrzyn- Słubice) に 指 定 されていることで 新 規 投 資 が 増 えているという 対 極 的 な 状 況 にあることも 5 両 都 市 のさらなる 協 力 の 進 展 を 難 しくしているという 側 面 がある 実 際 に 市 民 レベルでの 相 互 の 交 流 は 買 い 物 での 訪 問 などが 中 心 で またか なりの 割 合 で 隣 国 の 隣 町 を 訪 問 したことがないという 層 もかなり 存 在 している( 仙 石 2007) 6 このような 状 況 を 反 映 していると 考 えられるのが 先 に 挙 げた 路 面 電 車 のスウビッツェへの 路 線 の 復 活 計 画 であ 3 ウゼドム 島 のシフィノイシチェはユーロリージョン ポメラニア (Pomerania) フランクフルト オーダーとスウビッツェはプロ エ ウロパ ヴィアドリナ (Pro Europa Viadrina) グビンとグベンはスプレヴァ ヌィサ ブブル (Sprewa-Nysa-bóbr) そしてゲルリッツと ズゴジェレッツはヌィサ (Nysa) において それぞれ 中 心 的 な 役 割 を 果 たしている 4 フランクフルト オーダー 市 の 路 面 電 車 の 歴 史 に 関 するホームページを 参 照 (http://magazin.tram-ff.de/tramnachslubice.php 以 下 ホー ムページはすべて 2014 年 1 月 22 日 接 続 ) 5 ポーランド 情 報 海 外 投 資 庁 (Polska Agencja Informacji i Inwetycji Zagranicznych: PAIiIZ) のホームページ (http://www.paiz.gov.pl/ investment_support/sez/kostrzyn) および Gwosdz et al.(2008) および Dolata(2008) も 参 照 なおコシュティン = スウビッツェの 経 済 特 区 について 検 討 したドラータは この 経 済 特 区 が 地 域 の 経 済 発 展 や 労 働 市 場 に 与 えた 影 響 はあまり 大 きくないことを 指 摘 している (Dolata 2008, 181-183) 6 2012 年 の 段 階 でも フランクフルト オーダーの 市 民 の 18% はスウビッツェを 訪 れたことがないという 指 摘 もある (https://www. diplomatie.diplo.de/index.php?option=com_content&view=article&id=1120:idp4-slubice&catid=192&itemid=890&lang=en) 12

る これは EU の 地 域 間 交 流 に 対 する 資 金 援 助 である INTERREG III を 利 用 して 第 二 次 大 戦 前 には 存 在 して いたスウビッツェの 市 街 地 までの 路 面 電 車 の 路 線 を 復 活 させる 計 画 で 2005 年 に 提 起 されたが フランクフルト オーダーで 行 われた 住 民 投 票 で 反 対 が 多 数 となったこと でこの 計 画 は 中 止 された その 後 2009 年 に 再 度 路 線 延 長 が 提 起 されたものの これも 結 局 立 ち 消 えとなっている 7 住 民 の 関 心 が 低 くまた 経 済 的 にも 停 滞 している 状 況 にお いては 地 域 交 流 をすすめるようなインフラを 整 備 する ことそのものも 困 難 になると 考 えられる [ 図 2] フランクフルト オーダーとスウビッツェをつなく 橋 ( 出 典 ) 著 者 撮 影 対 岸 の 街 並 みがフランクフルト オーダー b) グベン / グビン 忘 れ 去 られた 街? 次 に 取 り 上 げるのが ナイセ 川 (ポーランド 語 ではヌィ サ 川 )とオーダー 川 ( 同 じくオドラ 川 )が 合 流 する 地 点 の 手 前 にある グベンおよびグビンである ここも 本 格 的 な 交 流 が 再 開 されるのは 体 制 転 換 後 のことで 1990 年 に 最 初 の 協 力 協 定 が 締 結 された 後 やはり 都 市 開 発 観 光 教 育 市 民 交 流 教 育 などの 面 での 協 力 が 行 われて きた 特 に 1990 年 代 後 半 意 向 は 1998 年 の 共 同 事 業 に よる 汚 水 処 理 を 行 う 企 業 の 設 立 (Musiał-Karg 2009, 250 注 28) 8 欧 州 都 市 実 験 モデルグビン グベン(Model experiment Euro Town Guben/Gubin) としてWorld Expo 200 への 共 同 立 候 補 (1998 年 ) INTERREG III を 利 用 した 都 市 再 生 プランの 策 定 (2000 年 ) あるいは 町 の 長 期 計 画 としての グビン グベン 2030 プランの 策 定 (2002 年 )などを 積 極 的 に 実 施 してきた だが 当 初 は ユーロタウン のモデルとされた 両 都 市 [ 図 3] グビン グベン 国 境 であるが 2000 年 代 に 入 るとそれ 以 上 の 協 力 の 進 展 はみ ( 出 典 ) 著 者 撮 影 奥 がグベン(ポーランド) 側 られず ここ 数 年 は 低 迷 した 状 態 にあることが 指 摘 されている(Dürrschmidt 2008) この 点 については グビン グベン 地 域 は 国 境 間 の 主 要 なネットワークから 外 れていて また 国 境 を 越 える 鉄 道 も 体 制 転 換 後 に 廃 止 されたことで 両 国 の 交 流 の 蚊 帳 の 外 に 置 かれてることとなり 先 のフランクフルト オーダー / スウビッツェとは 逆 の 形 で 住 民 が 地 域 に 残 らなくなっていること 主 要 な 作 業 や 観 光 などの 拠 点 もなく 地 域 に 人 を 引 き 留 める 要 因 が 少 ないこと お よび 住 民 の 間 で 信 頼 が 十 分 に 構 築 されておらず 言 語 的 な 障 害 も 大 きいことなどが 背 景 にあるとされる この 地 域 に ついては ヴィアドリナ 大 学 の 存 在 がかろうじて 学 生 を 引 きつけているフランクフルト オーダーの 事 例 と 比 べても より 厳 しい 状 況 にある c) ゲルリッツ / ズゴジェレッツ 比 較 的 交 流 は 進 んでいるが 次 に 取 り 上 げるのが ナイセ 川 流 域 の 南 部 にあるゲルリッツ ズゴジェレッツの 事 例 である ゲルリッツは 1950 年 に 当 時 の 東 ドイツとポーランドの 国 境 をオーデル ナイセ 線 と 定 めたゲルリッツ 条 約 の 締 結 地 であるが ここは 他 の 地 域 と 異 なり 1970 年 代 には 国 境 が 部 分 的 に 開 放 され ポーランド 側 からドイツ 側 への 通 勤 も 見 られるように なっていた ポーランドで 連 帯 運 動 が 活 発 化 した 80 年 代 初 頭 には 一 時 国 境 は 閉 鎖 されるものの 1980 年 代 後 半 7 Märkische Oderzeitung Frankfurt 紙 の 2009 年 5 月 12 日 の 記 事 による (http://www.moz.de/index.php?id=75&tx_rsmdailygen_ pi1%5barticle%5d=68008&tx_rsmdailygen_pi1%5baction%5d=show&tx_rsmdailygen_pi1%5bcontroller%5d=articles&chash=4db04 6eed1e05d629a24029fe776cd81) ちなみに 2012 年 の 12 月 9 日 からは フランクフルト 市 の 交 通 局 (SVF)がスウビッツェの 市 内 まで 運 行 するバス 路 線 を 開 設 している 8 グビン グベン 下 水 処 理 公 社 (Przedsiębiorstwo Oczyszczania Ścieków Gubin-Guben) について 詳 しくは 同 社 のホームページ <http://www.pos.zgora.pl/> も 参 照 のこと 13

には 再 度 国 境 が 開 放 され 2 つの 町 を 結 ぶ 路 線 バスお よびタクシーも 運 行 されるようになった(Ragut and Welter 2012, 68-70) そして 1989 年 にはビザなしでの 渡 航 が 可 能 となり 1991 年 には 交 流 協 定 が 締 結 され あわせて 交 流 実 施 機 関 としての ヨーロッパハウス ゲルリッツ(Europa-Haus Görlitz e.v) が 設 立 され ることとなる(Ragut and Piasecki 2012) 2 つの 町 の 協 力 は 1998 年 の ヨーロッパシティ ゲルリッツ / ズゴジェレッツ を 形 成 し 教 育 や 文 化 経 済 都 市 サービスなどで 共 同 で 問 題 に 対 処 すること を 決 定 してから さらに 進 展 することとなる 2002 年 には 都 市 2030 年 (Projekt miasta 2030/Stadt 2030) [ 図 4] ゲルリッツ ズゴジェレッツ 国 境 の 橋 プロジェクトを 開 始 して 共 通 都 市 開 発 のための 2 都 ( 出 典 ) 著 者 撮 影 橋 の 向 こうがズゴジェレッツ(ポーランド) 側 市 間 の 交 流 を 強 化 するほか 2030 年 までには 両 市 の 市 議 会 や 市 の 予 算 を 一 元 化 し 行 政 を 効 率 的 に 運 営 することも 目 標 に 掲 げている また 2006 年 には 災 害 や 事 故 の 際 に 相 互 協 力 を 行 う 協 定 が 締 結 され 協 力 の 範 囲 も 広 げられている ただしこの 両 都 市 の 間 でも 必 ずしも 協 力 が 順 調 に 進 んでいるわけではない 都 市 2030 年 プロジェクトの 終 了 後 は 2 市 の 間 の 交 流 は 減 少 しているし また 両 市 の 市 長 および 市 の 執 行 部 からなる 運 営 委 員 会 も 現 在 ではその 活 動 が 停 滞 している この 両 都 市 の 場 合 協 力 を 推 進 するという 方 向 では 一 致 しているものの 協 議 から 得 られた 頭 囲 が 具 体 的 な 成 果 を 生 んでいないことも 指 摘 されている(Knippschild 2008, 109) そしてこのように 各 種 のプロジェクト が 継 続 しない 理 由 としては 両 市 の 行 政 組 織 や 権 限 に 相 違 があることの 他 言 語 の 相 違 が 交 流 を 阻 んでいること あ るいはお 互 いに 相 手 に 対 する 偏 見 があることなどが 指 摘 されている またズゴジェレッツに 関 しては やはり 近 くに ポーランドの 経 済 特 区 (Legnica および Kamienna góra)があり 投 資 がズゴジェレッツよりもそちらに 向 いてしまっ ていることも 両 市 の 交 流 を 抑 制 する 一 因 となっているという 指 摘 もある(Ragut and Welter 2012) また 両 都 市 は 共 同 で 2010 年 の 欧 州 文 化 都 市 に 立 候 補 していたが こちらは 採 択 されなかったこともさらなる 交 流 の 進 展 を 抑 制 し たとみられる d) ウゼドム 島 / ウズナム 島 結 節 点 にあるが 故 の 強 み? 最 後 に 取 り 上 げるのが オーダー 川 河 口 のシチェチン 湾 に 存 在 するウゼドム 島 である この 島 はドイツ 帝 国 期 には 皇 帝 の 海 水 浴 場 とも 称 されたリゾート 地 であるが 第 2 次 世 界 大 戦 期 にはナチスによりミサイル 基 地 が 置 かれ また 体 制 後 には 国 境 が 分 断 されるとともに ポーランド 側 のシフィノウイシチェにソ 連 の 海 軍 基 地 ドイツ 側 のペー ネミュンデにミサイル 基 地 がそれぞれ 置 かれるというように 体 制 転 換 の 前 までは 軍 事 拠 点 として 利 用 されていた この 島 の 場 合 もともとが 一 つの 町 というわけではなかったこともあり 国 境 地 域 における 協 力 の 動 きが 現 れるのは 他 の 地 域 より 遅 く 汚 水 処 理 プラントの 共 同 運 用 が 始 められたのが 1997 年 ポーランドのシフィノイシチェ 市 と 隣 接 するドイツのヘリングスドルフ 市 の 間 で 協 力 協 定 が 締 結 されたのが 1998 年 のことであった その 後 は 他 の 事 例 と 同 様 に 都 市 計 画 や 環 境 保 護 観 光 振 興 行 政 協 力 などでの 協 力 が 協 議 されるが 特 に 国 境 融 合 プロジェクト を 通 した 遊 歩 道 や 自 転 車 道 の 整 備 イベントの 実 施 水 族 館 や 娯 楽 施 設 などの 観 光 施 設 の 整 備 あるいは 鉄 道 やバス の 連 絡 網 整 備 などが 積 極 的 に 推 進 されている 2007 年 にはシフィノイシチェとヘリングスドルフの 間 でパートナー シップ 協 定 が 締 結 され EU の 合 同 プロジェクトの 実 施 なども 含 めた 協 力 推 進 が 検 討 されている この 地 域 に 関 して は 特 に 国 境 間 における 各 種 のインフラ 整 備 や 観 光 振 興 で 一 定 の 成 果 を 上 げている 点 が 他 の 地 域 と 異 なるところで ある このようにこの 地 域 では 具 体 的 な 協 力 が 進 展 している 理 由 としては 当 地 が 交 通 の 結 節 点 で 特 にシフィノイ シチェはどこに 移 動 するにしても 必 ずここに 一 度 立 ち 寄 る 必 要 がある 地 域 になっていること またシフィノイシ チェはドイツのみならず 北 欧 やバルト 諸 国 ともフェリーの 便 があり 多 面 的 な 交 流 が 可 能 となっていることをあげる ことができよう 14

ただし 両 地 域 間 の 協 力 は 最 初 から 順 調 に 行 われていた わけではない 9 ウゼドム 島 におけるドイツとポーランドの 国 境 は 2007 年 までは 基 本 的 に 閉 鎖 的 で 国 境 を 越 えられ るのはヘリングスドルフのアールベックのみ しかも 移 動 は 歩 行 者 か 自 転 車 のみで 自 動 車 の 通 行 は 認 められていな いという 状 況 にあった この 点 については ウゼドム 島 の 内 部 では 中 核 となるのがポーランド 側 のシフィノイシチェ 市 であることから ドイツ 側 には 国 境 を 開 放 すると 党 内 に おけるシフィノイシチェ 一 極 集 中 が 進 むのではないかとい う 危 惧 が 存 在 していたことが 影 響 している 他 方 でシフィ ノイシチェの 側 は 2002 年 に 市 の 中 核 となっていた 漁 業 会 [ 図 5]シェンゲン 後 に 一 切 の 障 壁 がなくなったウズナム 島 社 オドラが 閉 鎖 されると ドイツからの 観 光 客 およびおよ ( ウゼドム 島 ) の 国 境 ( 出 典 ) 著 者 撮 影 び 買 い 物 客 に 地 元 経 済 の 活 路 を 見 いだそうとして ドイツからの 客 層 を 想 定 した 商 業 施 設 や 観 光 施 設 を 整 備 するよう になった その 結 果 としてアールベックを 越 える 人 の 流 れが 急 増 し 国 境 通 行 の 増 加 に 両 国 が 対 応 する 必 要 に 迫 られ ることとなった この 段 階 においてもドイツ 側 は 国 境 開 放 には 積 極 的 ではなく 国 境 における 自 動 車 通 行 の 全 面 開 放 を 求 めるポーラ ンド 側 に 対 して ドイツ 側 はバスのみの 通 行 を 認 めるという 態 度 をとっていた だがドイツ 側 でも ウゼドム 島 に 路 線 を 展 開 するウゼドム 海 浜 鉄 道 (UBB: Usedomer Bäder Bahn)は ある 程 度 の 乗 客 の 見 込 めるシフィノイシチェま での 延 長 を 希 望 していたが これにはシフィノイシチェ 側 に 国 境 から 市 内 までドイツからの 訪 問 者 を 運 んでいた 馬 車 業 者 などの 関 係 者 の 反 対 が 存 在 していた 最 終 的 にこの 問 題 は 鉄 道 の 延 伸 と 引 き 替 えに 道 路 を 全 面 開 放 するとい うシフィノイシチェ 側 の 提 案 が 通 り アールベックの 国 境 は 完 全 に 開 放 されることとなった だがその 結 果 として 両 国 間 の 移 動 交 流 は 増 大 し シフィノイシチェからドイツに 向 かう 観 光 客 も 増 加 したことで 国 境 開 放 はポーランド のみならずドイツ 側 にも 一 定 の 恩 恵 を 与 えることとなった ただしシフィノイシチェの 側 はこれで 必 ずしも 協 力 が 十 分 に 進 展 するとは 考 えておらず 例 えばドイツのメクレンブルク = フォアポンメルンの 州 議 会 で 極 右 のドイツ 国 家 民 主 党 (NPD)が 一 定 の 支 持 を 得 ていることには 不 安 を 有 しているとされる(Drzonek 2009, 271-272) この 点 で この 地 域 の 協 力 がより 進 展 するかどうかは 今 後 の 動 向 も 見 る 必 要 があろう III. なぜ 交 流 はすすまないのか 制 度 的 要 因 と 心 理 的 要 因 前 章 では 4 つの 分 断 された 領 域 の 現 状 を 整 理 したが ウゼドム 島 をのぞく 地 域 では 交 流 は 必 ずしも 順 調 には 進 んでおらず ある 程 度 の 交 流 が 見 られるウゼドム 島 でも 必 ずしも 全 ての 障 害 が 克 服 されているというわけではないと いう 状 況 にあることを 確 認 することができるであろう ではなぜもともとは 同 じ 町 ( 領 域 ) であったはずのと ころで 国 境 が 開 放 された 後 でも 本 格 的 な 交 流 が 進 展 しないのか サルミェント = ミアバルトとロマン = カムハウ スは 地 域 間 協 力 が 進 展 するか 否 かについては(1) 行 政 組 織 (2) 法 的 基 盤 (3) 経 済 および 福 祉 レベルの 差 およ び 地 域 間 インフラの 発 達 度 (4) 財 政 基 盤 および(5) 地 域 の 文 化 やアイデンティティという 5 つの 要 因 が 作 用 す る 可 能 性 があることを 指 摘 しているが(Sarmiento-Mirwaldt and Roman-Kamphaus 2013, 1625) ここではこれを 制 度 的 な 要 因 ( 上 の(1) ( 2)および(4)) と 心 理 的 要 因 ( 上 の(3)および(5)) とした 上 で それぞれの 要 因 について 検 討 していくこととする 制 度 的 な 要 因 としては 以 下 のような 点 を 上 げることができる まずドイツとポーランドの 間 で 地 方 行 政 の 制 度 お よび 権 限 が 異 なり その 地 域 で 決 められることに 違 いがあること 特 に 連 邦 制 を 取 るドイツでは 地 域 ( 州 )に 相 対 的 に 大 きな 権 限 があるのに 対 して ポーランドの 県 は 自 治 体 ではあるもののその 権 限 は 限 定 的 で 各 種 のプログラムの 実 施 などについて 中 東 政 府 との 協 議 が 必 要 となる 場 合 が 多 いこと 並 びに 両 者 の 間 での 地 方 単 位 の 相 違 のために 適 切 なパートナーが 存 在 しない 場 合 があるということがある(Herrschel 2011, 157) 行 政 に 関 しては 制 度 的 な 面 のみ 9 以 下 の 記 述 は 基 本 的 に Drzonek(2009) の 内 容 に 依 拠 している 15

でなく 地 域 におけるスタッフの 認 識 不 足 という 問 題 も 指 摘 されている(Ciok and Raczyk 2008, 39) これは 地 域 の スタッフが 相 手 の 国 のことに 詳 しくなく そのために 地 域 間 協 力 や INTERREG III の 重 要 性 を 認 識 していないこと や あるいは 優 秀 なスタッフが 国 境 地 域 から 中 央 へと 流 出 してしまうことなどに 現 れている 次 に 現 時 点 では 多 くの 場 合 地 域 間 交 流 / 協 力 が 定 期 的 協 議 や 一 過 性 のイベント にとどまっていて 恒 常 的 な 制 度 を 形 成 して 交 流 を 行 うという 場 合 が 限 られているという 問 題 もある このように 協 力 がスポット 的 なもの となる 理 由 としては 地 域 間 協 力 に 関 する 法 制 度 が 十 分 に 定 められていないという 問 題 がある(Knippschild 2008, 112-113) この 点 について 現 時 点 では 地 域 間 協 力 について 具 体 的 な 規 定 を 行 う 公 法 ないし 国 際 法 は 存 在 せず 私 法 により 組 織 や 財 政 の 管 理 を 行 うのが 一 般 的 となっている そのために 国 境 を 越 えて 公 権 力 を 行 使 するような 制 度 を 形 成 することは 不 可 能 であり そのために 今 のところ ゲルリッツとズゴジェレッツが 目 指 している 議 会 や 予 算 の 共 同 化 は 困 難 なものとなっている 最 後 に 地 域 間 協 力 のために 必 要 な 資 金 を 提 供 するはずの EU の 枠 組 みが 地 域 にとって 使 いにくいものとなってい るということがある 例 えば 2000 年 から 2006 年 の 間 は 国 境 間 協 力 は 主 として INTERREG III からの 資 金 提 供 が なされていたのに 対 して ポーランドに 関 しては 2004 年 の EU 加 盟 までは PHARE CBC からの 資 金 提 供 がなされ ていたが この 2 つの 制 度 には 互 換 性 がない 上 に 特 に INTERREG III の 資 金 は EU 内 でしか 利 用 できないことで 国 境 間 協 力 での 利 用 は 限 定 的 なものとなっていた(Ciok and Raczyk 2008, 35) その 後 ポーランドが 2004 年 に EU に 加 盟 したことでポーランドは INTERREG III に 直 接 参 加 できるようになったものの 今 度 は INTERREG III の 期 間 が 中 途 半 端 となった 上 に PHARE CBC からのプロジェクトの 転 換 で 支 障 が 生 じるということとなった さ らに INTERREG III およびその 後 の 欧 州 地 域 協 力 (European Territorial Cooperation, 2007-2013) では 資 金 額 が 大 きくなったことで 逆 に 地 方 の 基 層 自 治 体 やユーロリージョンには 敷 居 が 高 くなったことも 指 摘 されている(Ciok and Raczyk 2008, 38-40) 次 に 心 理 的 な 要 因 としては 以 下 のようなものがあげられる まず 根 本 的 なものとしては 言 語 や 文 化 慣 習 の 相 違 がある(Rogut and Welter 2012, 79-80) 特 に 言 語 に 関 しては ポーランド 側 ではドイツ 語 がある 程 度 受 容 されてい ても ドイツ 側 ではポーランド 語 に 対 する 抵 抗 感 が 大 きくまたポーランド 語 を 学 ぶインセンティヴが 弱 いことでコ ミュニケーションに 支 障 があること 英 語 が 利 用 できる 場 合 には 英 語 を 用 いるものの 国 境 地 域 ではそれも 難 しい 場 合 が 多 いことが 指 摘 されている(Asher 2005, 137-139; Rogut and Welter 2012, 76) 加 えてドイツとポーランドの 間 には 歴 史 問 題 が 存 在 しており(Knippschild 2008, 104-105) これも 相 互 の 理 解 の 妨 げとなっている 相 手 に 対 する 認 識 の 差 の 存 在 もある 例 えば 国 境 地 域 における 企 業 家 の 認 識 を 調 査 したログートとヴェルターは ドイツ 側 ではポーランドに 対 してスケジュール 管 理 や 品 質 の 問 題 に 疑 問 を 呈 していて 逆 にポーランド 側 ではドイツ の 製 品 に 不 審 を 抱 いているというインタビュー 結 果 を 示 している(Rogut and Welter 2012, 80-81) またフランクフ ルト オーダーとスウビッツェの 調 査 を 行 ったアシェは ドイツ 側 ではポーランドの 人 々を 二 流 市 民 とみなして いて ドイツの 店 舗 でもポーランドから 来 た 人 は 物 取 りに 来 たかのような 差 別 的 な 扱 いを 受 ける 場 合 もあること 他 方 でポーランドの 側 でも ドイツに 買 い 物 に 来 る 人 は 自 国 では 物 を 買 えない 貧 困 層 であるとみなしているというよう に 相 互 に 相 手 に 対 して 偏 見 があることを 指 摘 している(Asher 2005: 135-137) 市 民 が 国 境 を 越 える 交 流 協 力 に 強 い 関 心 を 有 さず 行 政 の 側 が 積 極 的 なイニシアティヴをとってもそれが 受 け 入 れられない 場 合 が 多 いということも 指 摘 されている この 点 についてグビンとグベンの 国 境 間 協 力 を 検 討 したマー ティセンとバークナードは 公 式 のレベルでは 国 境 間 協 力 ネットワークへの 形 成 に 積 極 的 な 対 応 が 取 られていたと しても 地 域 住 民 の 間 では 国 境 間 協 力 には 関 心 が 向 かないばかりか むしろ 疑 念 や 反 感 が 存 在 する 場 合 も 多 いこと 特 に 事 例 としたドイツのグベンにおいてはエスニック 的 な 言 説 や あるいはポーランドとの 経 済 的 競 争 にさらされる ことへの 危 惧 などでより 強 い 反 対 が 現 れていることを 示 している(Matthiesen and Bürknerd 2001, 46-47) 実 際 に 国 境 地 域 の 住 民 に 対 するアンケートにおいても ドイツ 側 の 回 答 者 の 4 分 の 3 は 相 手 国 に 買 い 物 に 行 くものの 相 互 の 交 流 に 定 期 的 に 参 加 するという 人 は 20% 程 度 しかおらず また 地 域 交 流 プログラムが 実 施 されていることを 知 っ ている 人 は 半 数 以 上 でも 自 分 の 住 んでいる 地 域 が 地 域 間 交 流 の 枠 組 みであるユーロリージョンに 参 加 していること を 知 る 人 は 少 なく 特 にユーロリージョンの 名 称 まで 知 っている 人 は 10% 程 度 しかいないということが 明 らかにさ れている(Gorzelak 2007, 234) さらにはドイツとポーランドの 間 であれば 一 般 的 にはポーランドに 比 べてドイツの 方 が 経 済 水 準 が 上 と 考 えられ 16

ている だがポーランド 西 部 国 境 のみに 関 していえば ドイツ 側 は 旧 東 独 の 周 辺 で 今 回 取 り 上 げたいずれの 地 域 においても 体 制 転 換 後 に 大 幅 な 人 口 減 や 失 業 率 の 急 増 を 経 験 しているのに 対 して(Knippschild 2008, 103; Jóskowiak 2009. 16) ポーランド 側 はいずれにおいても 微 減 か 現 状 維 持 にとどまっている 上 に ポーランド 西 部 はポーランド の 中 でも 相 対 的 に 経 済 水 準 が 高 い 地 域 で 先 に 述 べた 経 済 特 区 の 効 果 もみられること およびポーランドの EU 加 盟 後 はポーランドでも 物 価 が 上 昇 していることから 現 在 では 両 者 の 間 の 相 違 が 相 対 的 に 小 さくなっていて これが 協 力 の 効 果 を 弱 めているという 指 摘 もある(Rogut and Welter 2012, 68, 79) 異 なる 相 手 と 協 力 することによるメリッ トが 小 さくなれば 国 境 を 越 えて 協 力 をより 進 展 させようというインセンティヴも 当 然 小 さくなることとなる このような 心 理 的 障 壁 が 状 況 が 生 じた 背 景 には この 地 域 が 分 断 されてから 半 世 紀 以 上 の 時 間 が 経 過 し 世 代 が 交 代 しているということももちろんあるが ポーランドに 関 しては 現 在 の 住 民 で 元 々この 地 域 に 居 住 していた 人 の 子 孫 に 当 たる 人 は 3% 程 度 に 過 ぎず 逆 に 40% 以 上 は 第 二 次 大 戦 後 の 国 境 移 動 によって この 地 域 が 分 断 され た 後 で 現 在 のウクライナに 当 たる 旧 東 部 領 域 から 移 住 してきた 人 々の 子 孫 であること およびそのためにドイツと ポーランドの 間 で 両 者 を 架 橋 する 共 通 の 歴 史 や 記 憶 が 存 在 していないことも 影 響 しているとされる(Herrschel 2011, 155-156) ユスコヴャクは 地 域 間 交 流 の 発 展 には 国 境 を 越 えた 共 通 の 関 心 と 利 益 が 必 要 であることを 指 摘 している が(Jóskowiak 2009, 17) 現 状 ではそれいずれもが 国 境 の 両 側 に 十 分 に 感 じられていないことも 相 互 の 協 力 を 妨 げ る 要 因 として 作 用 している ただしここであげたような 障 害 については これを 乗 り 越 えようとする 動 きも 現 れはじめてはいる 例 えばグビン においては 第 二 次 世 界 大 戦 の 際 に 破 壊 されてその 後 廃 墟 となっていた 教 会 の 修 復 を 訴 えたポーランド 人 神 父 の 呼 び かけに 対 して グビン グベン 両 市 の 市 民 が 寄 付 を 行 いそれをもととした 基 金 が 設 立 され その 資 金 により 教 会 の 塔 が 修 復 されたという 事 例 がある(Dürrschmidt 2008) またフランクフルト オーダーとスウビッツェに 関 しては NGO 団 体 のスウブフルト 協 会 による スウブフルト シティ プロジェクト を 通 して 架 空 の 1 都 市 として 両 市 の 市 民 の 交 流 を 進 めるという 試 みも 存 在 している(Musiał-Karg 2009) 10 制 度 的 な 面 でも ゲルリッツより 南 の チェコ ポーランド ドイツの 3 カ 国 国 境 地 域 に 存 在 するチッタウ(ドイツ) ボガティニア(ポーランド) および フラーデク ナド ニソウ(チェコ)の 3 市 による 都 市 ネットワーク 小 トライアングル においては 年 間 で 20 回 から 30 回 という 頻 繁 な 定 期 的 協 議 に 加 えて 3 市 による 協 議 会 を 常 設 化 して 年 2 回 重 要 事 項 を 決 定 する 会 議 を 行 う あるいは 年 間 6 万 ユーロほどの 3 市 共 通 予 算 を 設 定 し 国 境 協 力 に 関 する 支 援 を 行 うとい う 形 で 協 力 を 制 度 的 なものとする 試 みを 進 めている (Knippschild 2008, 107-108) このような 動 きはまだ 限 定 的 なものであるかもしれないが 市 民 の 意 識 の 変 革 および 行 政 による 協 力 の 制 度 化 が 進 展 するようで あれば 今 後 の 国 境 間 協 力 の 形 ひいては 地 域 におけ るガバナンスの 形 にも 変 化 が 見 られるようになるか [ 図 6] グビンにおいて 尖 塔 の 部 分 が 復 興 された 教 会 ( 右 側 ) もしれない ( 出 典 ) 著 者 撮 影 IV. 他 の 国 境 との 比 較 西 部 国 境 にはまだ 可 能 性? ここまでの 議 論 から 現 在 までのところポーランド 西 部 国 境 における 国 境 間 協 力 は ポーランドの EU 加 盟 および シェンゲン 協 定 参 加 を 経 てもなお 制 度 的 および 心 理 的 障 害 のためにその 進 展 はもとは 同 じ 町 ( 地 域 ) であった 領 域 の 間 でも 限 られた 範 囲 のものとなっていること ただし 近 年 はそのような 状 況 に 変 化 の 兆 しが 現 れつつあるが その 動 向 はまだ 明 確 でないことが 確 認 できたと 考 えられる 社 会 主 義 期 に 国 境 の 交 通 特 に 市 民 レベルでの 交 流 が 10 スウブフルト プロジェクトのホームページは http://www.slubfurt.net/en_start.html なおムシャウ カルグは グビンとグベンの 間 にも 同 様 の グビエン プロジェクト があることを 記 しているが (Musiał-Karg 2009, 255) こちらは 現 時 点 では 活 動 を 行 っていない ようである 17

ほぼ 一 世 代 にわたり 実 質 的 に 遮 断 されていたことで 両 者 の 間 の 心 理 的 距 離 が 大 きくなり それは 短 期 間 で 克 服 す ることは 難 しいものとなっていることが 確 認 できるであろう ただしそれでも 西 部 国 境 は 他 の 国 境 地 域 と 比 べるとまだ 可 能 性 があるとも 言 える 例 えばポーランドの 南 部 国 境 に 関 してはチェコとスロヴァキアがあるが この 両 国 とは 経 済 水 準 や 物 価 水 準 が 近 いゆえに 買 い 物 客 の 交 流 のよ うなことが 起 こりにくく またいずれの 国 も 西 欧 指 向 があることで 隣 接 する 東 の 国 との 交 流 に 必 ずしも 熱 心 で はないということがあり 国 境 協 力 により 実 施 されるプログラムは 限 られたものとなっていることが 多 い この 点 に 関 連 して 先 に 挙 げたサルミェント = ミアバルトとロマン = カムハウスは ポーランドとドイツおよびスロヴァキア の 国 境 交 流 を 比 較 した 上 で 文 化 の 近 いスロヴァキアとの 関 係 の 方 が 政 策 の 決 定 や 実 施 では 優 れているものの 相 違 の 大 きいドイツとの 間 の 方 がプログラムを 地 域 の 実 情 に 合 わせる 政 策 のイノベーションという 点 で 優 れているという 形 で 西 部 国 境 の 方 が 文 化 が 異 なる ゆえに 協 力 を 促 進 するための 施 策 が 追 求 される 可 能 性 が 高 いということを 指 摘 しているが(Sarmiento-Mirwaldt and Roman-Kamphaus 2013) これはまさに 十 分 に 成 功 していないものも 含 めて 様 々なプログラムが 西 部 国 境 では 提 起 されていることと 結 びついているであろう これが 北 部 および 西 部 のロシアやベラルーシ 国 境 に 関 しては 条 件 はさらに 悪 くなる この 点 についてはポーラン ドのズゴジェレツと 東 部 のベラルーシ 国 境 にあるビャワ ポドラスカ(Biała Podlaska)の 事 例 を 比 較 したラガート とピアセツキは(Rogut and Piasecki 2012) 北 部 国 境 の 場 合 相 手 側 の 地 方 組 織 および 地 域 協 力 へのインセンティヴ が 弱 いこと 並 びに EU の 境 界 となったことで 国 境 コントロールが 厳 格 化 されたことで 地 域 間 協 力 の 条 件 は 非 常 に 悪 くなっていることを 指 摘 している 11 その 中 でウクライナとは 近 年 国 境 交 流 が 増 加 しているものの 国 境 地 域 には 拠 点 となる 都 市 が 存 在 していないこともあり その 量 は 西 部 領 域 に 比 べると 圧 倒 的 に 少 ないものとなっている ロシアとベラルーシの 場 合 は 政 治 体 制 の 問 題 が ウクライナの 場 合 は 国 境 地 域 の 居 住 が 少 ないことが この 地 域 にお ける 地 域 間 協 力 を 制 約 している(Krok 2007) このような 状 況 から 考 えた 場 合 ポーランド 西 部 国 境 はまだ 相 対 的 に ではあるが もっとも 今 後 の 協 力 の 可 能 性 が 開 かれている 地 域 なのかもしれない 付 記 本 稿 は 2013 年 8 月 1 日 に 実 施 された 神 戸 大 学 異 文 化 研 究 交 流 センター(IReC) 研 究 部 プロジェクト EU アイ デンティティの 構 築 とその 政 治 的 意 義 2013 年 度 第 2 回 研 究 セミナー 分 断 から 統 合 へ? ポーランド 国 境 におけ る 分 断 された 領 域 のシェンゲン 後 を 比 較 する の 報 告 内 容 を 修 正 の 上 とりまとめたものである また 本 稿 は 科 学 研 究 費 補 助 金 基 盤 研 究 C 中 東 欧 諸 国 における 福 祉 と 経 済 との 連 関 の 比 較 分 析 (2012 年 度 ~ 2014 年 度 課 題 番 号 24530163 研 究 代 表 者 仙 石 学 ) および 同 基 盤 研 究 (B マルチレベル ガバナンス 化 するヨーロッパの 民 主 的 構 造 変 化 の 研 究 (2011~2013 年 度 課 題 番 号 :23402019 研 究 代 表 者 小 川 有 美 立 教 大 学 法 学 部 教 授 )の 成 果 の 一 部 である 文 献 Asher, Andrew D., 2005, A paradise on the Oder?: ethnicity, europeanization, and the EU referendum in a Polish-German border city, City and Society, 17:1, 127-152. Ciok, Stanisław, and Andrzej Raczyk, 2008, Implementation of the EU community initiative INTERREG III A at the Polish- German border: an attempt at evaluation, in Markus Leibenath, Ewa Korcelli-Olejniczak, and Robert Knippschild, eds., Cross-border governance and sustainable spatial development: mind the gaps! Berlin: Springer-Verlag, 33-47. Dolata, Michał, 2008, The role of special economic zones in the socio-economic development of Poland's border regions: the case of the Kostrzyn-Słubice special economic zone, in in Markus Leibenath, Ewa Korcelli-Olejniczak, and Robert Knippschild, eds., Cross-border governance and sustainable spatial development: mind the gaps! Berlin: Springer-Verlag, 175-183. Drzonek, Maciej, 2009, Połoźenie przygraniczne a zachowania wyborcze: casus lewicz w Świnoujściu[ 国 境 外 に 関 する 立 場 と 有 権 者 の 確 保 :シフィノイシチェにおける 左 派 のケース ], in Jarosław Jańczak and Magdalena Musial-Karg. eds,. Pogranicze polsko-niemieckie po 2004 roku: nowa jakość sąsiedztwa? Torun: Wydawnictwo Adam Marszałek, 262-282. 11 この 点 については 北 部 および 東 部 においては 西 部 国 境 に 比 べて 国 境 通 過 ができるポイントが 非 常 に 少 ないことも 影 響 していると される (Krok 2007, 218-220) 18

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