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4-5-5 生 き 抜 くための 数 学 統 計 学 番 外 : 生 き 抜 くための 数 学 統 計 学 齊 藤 誠 数 学 や 統 計 学 を 専 門 としない 人 たちの 人 生 にとって 数 学 や 統 計 学 とはどのような 意 味 を 持 つものなのであろうか このような あいまいな 設 問 への 答 えは 人 によってさまざまであろうが 私 であれば 次 のように 答 えるであろう 古 典 が 人 生 に 勇 気 や 喜 びを 与 えるとすれば 数 学 や 統 計 学 は 人 生 に 生 きる 術 を 与 えてくれる 私 たちは とことん 突 き 詰 めて 考 えることを 回 避 しようとする ところがどこかにあって しばしば 自 分 にとって 重 要 な 経 済 問 題 であるにもかかわらず ちぐはぐな 意 思 決 定 をしてしまい 自 分 が 向 き 合 わなければならない 社 会 問 題 であるにもかかわらず いい 加 減 な 状 況 判 断 をしてしまう このようにナマクラな 性 向 に 傾 きがちな 私 たちにとって ある 経 済 問 題 の 背 後 にあるメカニズムについて 徹 底 的 に 論 理 的 に 考 え ることを 求 める 数 学 や ある 経 済 問 題 に 関 わる 数 多 くのデータを 効 率 よく 分 析 することを 可 能 にする 統 計 学 は よりよく 人 生 を 生 き 抜 くために 必 要 不 可 欠 な 道 具 といえないであろうか 以 下 では 市 川 伸 一 著 考 えることの 科 学 : 推 論 の 認 知 心 理 学 への 招 待 ( 中 公 新 書 1997 年 )に 素 材 を 求 めて 数 学 的 統 計 学 的 な 思 考 方 法 が 社 会 が 直 面 する 課 題 を 解 決 する 上 で 非 常 に 重 宝 な 道 具 であることをみていきたい まず 次 の 問 題 を 解 いてみよう 1

第 4 部 プロフェッショナルにとっての 経 済 学 問 題 1: 目 撃 者 の 証 言 はどこまで 信 頼 できるのだろうか? ある 町 で 夜 間 にタクシーによるひき 逃 げ 事 件 が 起 きた 一 人 の 目 撃 者 の 証 言 によると ひき 逃 げ 事 件 を 起 こしたのは 青 色 のタ クシーであるという この 町 では 100 台 のタクシーが 営 業 運 転 しているが そのう ち 青 色 のタクシーが 10 台 緑 色 のタクシーが 90 台 である 夜 間 に 青 色 か 緑 色 かを 正 しく 判 断 できる 確 率 は 80% 見 間 違 う 確 率 は 20%である さて あなたは 青 色 のタクシーがひき 逃 げを 起 こした と いう 目 撃 証 言 が 正 しい 確 率 をどの 程 度 に 見 積 もるであろうか この 問 題 を 大 学 生 に 出 題 すると 多 くの 学 生 が 80% 程 度 正 しい と 答 える ほとんどの 学 生 が 問 題 文 にある 夜 間 に 青 色 か 緑 色 かを 正 しく 判 断 できる 確 率 は 80% の 部 分 を その 根 拠 に あげる しかし わずかではあるが 約 30%しか 正 しくない と 答 える 学 生 もいる 実 は こ の 約 30% が 正 しい 以 下 では 一 歩 一 歩 筋 道 をつけて 考 えていこう 青 色 のタクシーがひき 逃 げを 起 こした という 証 言 には 次 のような 可 能 性 が 含 まれている 青 色 を 正 しく 青 色 と 判 断 する 可 能 性 が 8 台 分 (10 台 80%) 緑 色 を 誤 って 青 色 と 判 断 する 可 能 性 が 18 台 分 (90 台 20%) したがって 青 色 証 言 が 正 しいのは 26 台 分 (8 台 +18 台 ) のうち 8 台 分 だけで 確 率 を 計 算 すると 8 8+ 18 30.8% 2

4-5-5 生 き 抜 くための 数 学 統 計 学 となる! なぜ 多 くの 学 生 が 証 言 の 信 憑 性 を 過 大 に 評 価 したかというと 緑 色 のタクシーが 青 色 のタクシーよりもはるかに 多 く 営 業 運 転 し ている 事 実 を 彼 らが 見 逃 していたからである その 結 果 緑 色 のタクシーを 見 誤 って 青 色 のタクシーであると 証 言 してしまう 可 能 性 がまったく 考 慮 されなかった! こうした 状 況 が 単 に 授 業 で 出 題 した 問 題 ではなく 実 際 の 法 廷 で 起 きたとして みなさんが 裁 判 員 ( 欧 米 であれば 陪 審 員 )だ ったとしたらどうであろうか みなさんが 証 人 の 証 言 の 確 かさを 徹 底 的 に 吟 味 しないままに 評 決 を 下 してしまえば 無 実 の 人 間 が 有 罪 になってしまう 可 能 性 さえ 出 てくるわけである 一 方 みなさんが 被 告 人 の 弁 護 人 として 上 述 のような 統 計 学 的 な 議 論 を 裁 判 員 の 前 で 理 路 整 然 と 展 開 すれば 無 実 の 人 間 を 救 うことさえ 可 能 になる このように 考 えてくれば 証 言 の 信 憑 性 を 論 理 的 に 考 えること の 重 要 性 が 分 かってもらえるであろう みなさんの 判 断 能 力 次 第 で 1 人 の 人 間 の 人 生 が 大 きく 左 右 されるのである それでは 次 の 問 題 に 取 り 組 んでほしい 問 題 2: 検 査 結 果 をどこまで 信 じるか? J 国 では 男 性 100,000 人 に 100 人 の 割 合 (0.1%)である 難 病 に 感 染 している ある 男 性 は その 難 病 の 検 査 をしたところ 陽 性 反 応 ( 感 染 の 可 能 性 を 示 す 反 応 )が 出 て その 男 性 は 大 変 に ショックを 受 けた なお 当 該 検 査 では 感 染 をしていると 98%の 確 率 で 陽 性 反 応 が 出 るが 感 染 をしていなくても 1%の 確 率 で 陽 性 反 応 が 出 る 3

第 4 部 プロフェッショナルにとっての 経 済 学 さて あなたは 陽 性 反 応 の 出 た 男 性 が 感 染 者 である とい う 確 率 をどの 程 度 に 見 積 もるであろうか この 問 題 を 大 学 生 に 出 題 すると 多 くの 学 生 が ほぼ 100% 感 染 している と 答 える ほとんどの 学 生 が 問 題 文 にある 当 該 検 査 では 感 染 をしていると 98%の 確 率 で 陽 性 反 応 が 出 る の 部 分 を その 根 拠 にあげる しかし わずかではあるが およそ 1 割 しか 正 しくない と 答 える 学 生 もいる 実 は この およそ 1 割 が 正 しい 以 下 では 一 歩 一 歩 筋 道 をつけて 考 えていこう 陽 性 反 応 が 出 た という 検 査 結 果 には 次 のような 2 つの 可 能 性 が 含 まれている 陽 性 を 正 しく 陽 性 と 判 断 する 可 能 性 が 98 人 分 (100 人 98%) 陰 性 を 誤 って 陽 性 と 判 断 する 可 能 性 が 999 人 分 (99,900 人 1%) したがって 陽 性 反 応 が 正 しいのは 1097 人 (98 人 +999 人 )のうち 98 人 で 98 98+ 999 8.9% となる! なぜ 多 くの 学 生 が 感 染 の 可 能 性 を 過 大 に 評 価 したかというと J 国 全 体 では 感 染 していない 人 がほとんどである 事 実 を 彼 ら が 見 逃 していたからである その 結 果 感 染 していないのに 陽 性 となる 可 能 性 について 配 慮 が 及 ばなかった! 数 学 的 な 結 論 と 直 観 的 な 判 断 にずれが 生 じた 理 由 については 感 染 確 率 がたった 0.1%のところに 検 査 誤 差 が 1%のオーダーで 4

4-5-5 生 き 抜 くための 数 学 統 計 学 生 じる 検 査 を 行 えば 不 正 確 な 結 果 が 出 るのは 当 然 と 考 えること ができるであろう たとえていうならば 1 センチ 刻 みの 物 差 し で 数 ミリの 長 さを 測 定 するようなものである 検 査 結 果 を 論 理 的 に 評 価 するマインドを 備 えていれば 陽 性 反 応 が 出 ても あわてることもなくなるであろう かといって 検 査 はまったく 役 に 立 たない と 拙 速 に 判 断 する 必 要 もない 仮 に 検 査 をしなければ 0.1%の 感 染 確 率 と 判 断 されたものが 陽 性 反 応 によって 感 染 確 率 が 8.9% 検 査 前 の 89 倍 に 上 方 修 正 されたの であるから 予 備 検 査 としては 十 分 に 意 義 がある 陽 性 反 応 が 出 れば より 精 度 の 高 い 検 査 を 受 ければよいだけである 要 するに 論 理 的 なマインドで 検 査 結 果 を 判 断 することができ れば 過 剰 な 反 応 を 回 避 し 常 識 的 な 決 定 を 下 すことができる 2 つの 問 題 への 解 答 でしばしば 表 れる 間 違 った 判 断 のパターン は 決 して 頻 繁 に 起 きるわけでないけれども いったん 起 こると 甚 大 な 被 害 をもたらすようなリスク への 政 策 的 な 対 応 でも 大 変 に 不 幸 なことであるが しばしば 表 れるのである 地 震 予 知 を 基 軸 にする 防 災 対 策 ( 数 日 先 に 大 地 震 が 到 来 する 警 告 を 出 して あらかじめ 避 難 を 促 す 政 策 )などは 非 論 理 的 な 政 策 対 応 の 典 型 であろう 仮 に ある 地 域 で 大 地 震 が 起 きるのが 100 年 に 一 度 であるとす ると 向 こう1ヶ 月 以 内 に 地 震 が 起 きる 確 率 は 1,200 ヶ 月 (12 ヶ 月 100 年 ) 分 の 1( 約 0.08%)となる こうしためったに 起 き ない 地 震 が 1 ヶ 月 以 内 に 起 きるのを 正 確 に 予 知 するには 実 際 に 地 震 が 起 きるのに 起 きないと 誤 判 断 する 確 率 や 地 震 が 起 き ないのに 起 きると 誤 判 断 する 確 率 が 0.1%のオーダーを 大 きく 下 回 るようなきわめて 精 度 の 高 い 予 知 方 法 を 確 立 する 必 要 がある 5

第 4 部 プロフェッショナルにとっての 経 済 学 しかし 現 在 の 技 術 では おそらくは 将 来 の 技 術 でも とても とても 実 現 できない 精 度 である 論 理 的 に(したがって 常 識 的 に) 考 えれば 地 震 予 知 を 基 軸 と した 防 災 政 策 など 実 際 的 な 政 策 として 追 求 するべきでけっしてな いのに 日 本 政 府 は 地 震 予 知 に 関 わる 研 究 に 莫 大 な 費 用 を 投 じ てきた 先 ほど 議 論 したように 一 大 関 心 を 持 つリスクのことばかりに 囚 われて 当 該 リスクが 起 きる 以 外 の 可 能 性 の 方 がはるかに 大 き いことに 気 が 回 らなくなることが 著 しく 誤 った 判 断 を 下 してし まう 背 景 にある 安 全 政 策 に 関 わる 議 論 にも 同 じような 罠 が 潜 んでいる たとえ ば 福 島 第 一 原 発 事 故 の 主 因 は 大 津 波 であった だから 津 波 対 策 を 十 分 にすれば 原 発 事 故 は 未 然 に 防 ぐことができる と 判 断 して 津 波 対 策 ばかりに 囚 われているとすればどうなるであろ うか 常 識 的 に 大 津 波 だけが 原 発 事 故 の 原 因 ではない 今 般 の 原 発 事 故 はたまたま 津 波 が 主 因 だった と 判 断 をすれば たまたま の 事 故 原 因 となった 大 津 波 に 囚 われてそれ 以 外 の 潜 在 的 な 事 故 原 因 にいっさい 注 意 を 払 わないことが いかに 不 用 意 なことか 容 易 に 分 かるであろう 数 学 や 統 計 学 の 厳 密 な 検 証 に 耐 えることができる 判 断 は 個 々 人 が 人 生 で 直 面 する 経 済 問 題 や 経 済 社 会 が 直 面 する 政 策 課 題 を 解 決 する 上 でも 必 要 不 可 欠 なのである いいかえると 人 生 をより 良 く 生 きるためには 数 学 や 統 計 学 によって 論 理 的 な 思 考 能 力 を 鍛 えておいた 方 がよいということになるのかもしれない 6