診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 執 筆 者 坂 英 雄 中 山 優 子 西 村 恭 昌
019 肺 がんになるとどんな 症 状 が 現 れるのですか この 症 状 があれば, 肺 がんに 違 いないというものはありません 多 くの 患 者 さんは, 咳, 痰, 血 痰 ( 痰 に 血 が 混 じること), 発 熱, 息 苦 しさ, 動 悸, 胸 の 痛 みなど 一 般 的 な 呼 吸 器 疾 患 にみられる 症 状 がきっかけ で, 肺 がんが 発 見 されます また, 転 移 による 症 状 で 見 つかることも 少 なくありません 頭 痛,ふらつき, 麻 痺, 肩 痛, 背 部 痛, 声 がかすれるなどは, 一 見 肺 がんとまったく 関 係 がない 症 状 のようですが, 転 移 した 肺 がんにみられる 症 状 です 最 も 多 い 症 状 は, 咳, 痰 ですが,これらの 症 状 は,かぜをひいた 時 や 気 管 支 炎 でも 頻 繁 にみられる 症 状 です 血 痰 は, 肺 がんのほかに, 気 管 支 拡 張 症 や 進 行 した 肺 結 核 でも 出 現 しますが,いずれにしても 尋 常 な 状 態 ではないので 専 門 医 に 相 談 すべきです 発 熱 は,むしろかぜや 気 管 支 炎, 肺 炎 において 咳, 痰 と ともに 出 現 するほうが 一 般 的 ですので, 発 熱 だけで 直 ちに 肺 がんには 結 びつき ません ただし, 肺 がんが 気 管 支 にできて 気 管 支 をふさいでしまうと,そこか ら 先 に 閉 塞 性 肺 炎 という 状 態 を 起 こすことがあります 肺 炎 だと 思 って 治 療 し ていたら 肺 がんであったということがしばしばありますので 注 意 が 必 要 です 息 苦 しさ, 動 悸 は, 肺 がんが 相 当 大 きくなって 肺 の 働 きが 低 下 したり, 胸 に 水 がたまって 肺 がつぶされている 場 合 もあって, 病 状 としてはより 深 刻 ですが, 慢 性 閉 塞 肺 疾 患 や 心 臓 病 など 他 の 病 気 でもよくみられる 症 状 です 胸 の 痛 みは, 胸 に 水 がたまった 時 や,がんそのものが 肋 骨 や 神 経 に 拡 がった 時 にみられる 症 状 です これもまた, 心 筋 梗 塞 や 狭 心 症, 大 動 脈 瘤, 気 胸, 胸 膜 炎 など 他 の 病 気 でも 頻 繁 にみられる 症 状 です 42 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
頭 痛,ふらつき, 麻 痺 は, 肺 がんが 脳 に 転 移 した 場 合 に,ある 程 度 の 大 きさ になると 現 れる 症 状 ですが, 脳 梗 塞 や 脳 出 血 で 一 般 的 にみられる 症 状 です 肩 痛 や 背 部 痛 は, 肺 がんが 骨 に 転 移 して 骨 がもろくなり 身 体 を 支 えきれなくなっ たり, 骨 が 折 れた 時 に 現 れる 症 状 です 声 がかすれるのは, 嗄 声 と 呼 ばれ, 発 声 をコントロールする 反 回 神 経 に 肺 がん 自 体 が 及 んだり,リンパ 節 転 移 が 神 経 を 圧 迫 した 場 合 に 気 付 く 症 状 ですが, 声 帯 ポリープや 喉 頭 がんで 一 般 的 にみら れる 症 状 です 以 上 より, 症 状 のみから 肺 がんを 診 断 することは 不 可 能 です いろいろな 検 査 を 追 加 して 肺 がんを 確 定 することになります 詳 しくはQ022を 参 照 してく ださい 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 43
020 肺 がんの 転 移 しやすい 場 所 と 症 状 について 教 え てください がんは,しばしば 転 移 といって, 発 生 した 場 所 の 外 に 飛 び 火 するので, 転 移 した 場 所 に 症 状 が 起 こることがあります 肺 がん が 転 移 しやすい 場 所 は, 骨, 脳, 肝 臓, 副 腎 ( 腎 臓 の 上 にあり, 左 右 2つある), リンパ 節 などです( 図 1) 図 1 肺 がんが 転 移 しやすい 場 所 図 2 骨 転 移 図 3 脳 転 移 44 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
図 4 肝 転 移 骨 に 転 移 ( 図 2)すると, 転 移 した 場 所 に 痛 みが 起 こることがあります 脳 に 転 移 ( 図 3)すると, 脳 卒 中 を 起 こしたときのような 手 足 の 麻 痺, 言 葉 がう まく 話 せない, 意 識 が 不 確 かになるなどの 症 状 が 起 こることがあります 肝 臓 に 転 移 ( 図 4)すると, 全 身 がだるくなったり, 進 んだ 場 合 には 黄 疸 といって, 身 体 が 黄 色 くなることもあります また, 気 管 や 太 い 気 管 支 という 空 気 の 通 り 道 に 肺 がんが 拡 がると, 息 をするたびに, 喘 息 のようなヒューヒューという 音 がすることもあります 進 行 した 肺 がんでは, 肺 や 心 臓 のまわりにがんが 作 る 水 ( 胸 水 や 心 嚢 水 )がたまることがあり,そのために, 息 苦 しさや, 動 悸 が 強 く 起 こることもあります また, 左 右 の 肺 の 間 の 部 分 ( 縦 隔 )にがんが 拡 がると, 腕 や 頭 からの 血 液 の 戻 りが 悪 くなって, 上 半 身 がむくむことがあり, 上 大 静 脈 症 候 群 と 呼 ばれます 肺 の 一 番 上 の 部 分 ( 肺 尖 部 )にがんができた 場 合, 腕 を 動 かす 神 経 に 拡 がって, 腕 に 痛 みやしびれ, 筋 肉 の 力 の 低 下 を 起 こす 場 合 があり,パンコースト 症 候 群 と 呼 ばれます 肺 がんが 首 の 神 経 に 拡 がるとがんのある 側 のまぶたが 垂 れ 下 が り, 瞳 が 縮 み, 顔 半 分 が 汗 をかきにくくなるなどの 症 状 を 起 こすことがあり, ホルネル 症 候 群 と 呼 ばれています また, 声 帯 を 動 かす 神 経 が 肺 がんに 巻 き 込 まれると,しゃがれ 声 になります ほかにも 肺 がんが 転 移 した 部 位 によりその 臓 器 器 官 に 特 有 の 多 彩 な 症 状 を 呈 することがあります 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 45
021 肺 がんと 診 断 するまでの 手 順 を 教 えてください 何 らかの 症 状 があり, 胸 部 X 線 写 真 を 撮 って 肺 に 異 常 な 影 が 見 つかる 場 合 が 多 数 を 占 めます そのほかには, 成 人 病 などで 医 療 機 関 にかかっていて,たまたま 胸 部 X 線 写 真 を 撮 って 見 つかる 場 合 もあります また, 検 診 の 時 に 撮 影 したX 線 写 真 で 異 常 を 指 摘 されて 診 断 につながることも あります 確 定 診 断 には, 胸 部 X 線 写 真 の 異 常 な 場 所 から 組 織 のサンプルを 採 り 出 して, それを 顕 微 鏡 でがんであることを 確 認 することが 必 要 です X 線 写 真 などで, 肺 がんが 疑 われたら, 首 の 付 け 根 のリンパ 節 が 腫 れていな いかどうか, 胸 水 がたまっていないかどうかを 調 べます どちらかがあれば, 細 い 針 で 刺 して 細 胞 を 調 べることでがんかどうかの 判 定 ができるからです 痰 が 出 せれば, 細 胞 診 という 顕 微 鏡 の 検 査 で 肺 がん 細 胞 が 検 出 されることもあり ます こうした 負 担 の 少 ない 検 査 で 診 断 がつかない 場 合 には, 気 管 支 鏡 検 査 や 外 から 肺 を 針 で 刺 す 検 査 を 行 い 病 巣 の 一 部 を 採 り 顕 微 鏡 で 確 かめます それで も 診 断 がつかない 場 合 は, 手 術 で 直 接 病 巣 を 少 し 採 って 調 べる 場 合 もあります 46 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
肺 がんの 確 定 診 断 の 流 れ 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 47
022 肺 がんを 確 定 するための 検 査 について 教 えてく ださい X 線 写 真 や,CT 検 査 など 詳 しい 画 像 の 検 査 を 行 っても, 最 終 的 に 肺 がんと 診 断 するには,がんを 疑 う 病 巣 のごく 一 部 を 採 って きて, 顕 微 鏡 で 確 かめることが 必 要 です (Q023 参 照 ) 組 織 や 細 胞 を 採 るために 行 う 検 査 には, 気 管 支 鏡 検 査, 胸 腔 鏡 検 査, 針 穿 刺 診 などがあります 気 管 支 鏡 は, 口 や 鼻 から 細 い 管 を 気 道 に 入 れて 疑 わしい 場 所 からサンプルを 採 ってくる 道 具 で, 胃 カメラを 細 くしたような 内 視 鏡 です 肺 がんの 診 断 で 最 もよく 用 いられます 通 常 局 所 麻 酔 で 検 査 を 行 い, 外 来 で 検 査 を 行 う 病 院 も 多 くあります 合 併 症 には, 気 胸 ( 肺 がパンクして 息 苦 しくなる), 出 血, 発 熱 などがあります 胸 腔 鏡 は, 肋 骨 と 肋 骨 の 間 から 胸 壁 に 穴 を 開 けて 胸 壁 の 内 側 を 検 査 する 内 視 鏡 で 胸 に 水 がたまっている 場 合 など, 診 断 に 役 立 つ 場 合 があります 全 身 麻 酔 で 行 う 場 合 と, 局 所 麻 酔 で 行 う 場 合 があります 合 併 症 は, 出 血, 肺 の 損 傷 な どです 針 穿 刺 診 は,X 線 透 視 やCTを 用 いながら, 針 を 胸 の 外 から, 肺 の 中 へ 刺 し 込 み, 病 巣 から 細 胞 や 小 さい 組 織 を 採 取 する 方 法 です 胸 の 壁 に 接 している 場 合 などは, 超 音 波 装 置 を 用 いながら 針 を 刺 すことも 可 能 です 短 時 間 に 検 査 を 行 うことができますが, 合 併 症 として, 気 胸, 喀 血, 空 気 塞 栓 などがあります 首 の 付 け 根 のリンパ 節 が 腫 れている 場 合 などは, 細 い 針 で 直 接 リンパ 節 を 刺 して 細 胞 を 吸 い 出 すことが 可 能 で, 手 早 く 安 全 にできます 48 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
生 検 やその 結 果 わかることについて 詳 しく 知 りたいのですが 023 生 検 というのは, 身 体 の 組 織 のごく 一 部 を 検 査 のために 採 るこ とです 肺 がんの 場 合, 気 管 支 鏡 を 用 いて 病 気 の 部 分 から 鉗 子 というはさみのような 道 具 でほんの 少 し 採 ってくることが 最 も 広 く 行 われています 肺 がんの 場 合 は, 顕 微 鏡 で 見 るがんの 顔 つき( 病 理 組 織 学 的 な 特 徴 )によって, 大 きく4つのタ イプに 分 けられます 小 細 胞 がん, 腺 がん, 扁 平 上 皮 がん, 大 細 胞 がんです 小 細 胞 がんは, 転 移 しやすく, 進 行 が 速 い 代 わりに, 抗 がん 剤 や 放 射 線 治 療 に よく 反 応 します そのほかの3つの 組 織 型 は, 通 常, 非 小 細 胞 がんといってひ とまとめにして 扱 います 発 生 場 所 や,たばことの 関 係 を 表 にまとめました また, 詳 しい 解 説 は, 国 立 がん 研 究 センターのホームページを 参 考 にされる とよいでしょう 国 立 がん 研 究 センターがん 対 策 情 報 センターがん 情 報 サービス http://ganjoho.jp/public/index.html 肺 がんの 組 織 型 とたばこの 関 係 肺 がんの 組 織 型 進 行 の 速 さ 割 合 起 こりやすい 部 位 たばこ 小 細 胞 がん 速 い 10% 肺 門 肺 野 関 係 強 い 扁 平 上 皮 がん 25% 関 係 強 い 非 小 細 胞 がん 腺 がん ゆっくり 60% 関 係 あり 肺 野 大 細 胞 がん 5% 関 係 あり 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 49
024 リンパ 節 転 移 とはどういうことですか 血 管 とは 別 に, 全 身 に,リンパ 系 というネットワークが 張 りめ ぐらされており 主 に 免 疫 機 能 を 担 っています 通 常, 肺 がんは 最 初 に 近 くのリンパ 管 に 侵 入 します そしてリンパ 系 の 流 れに 乗 って,その 次 の リンパ 節 に 転 移 します これを リンパ 行 性 転 移 といい, 血 管 の 中 を 流 れる 血 液 を 介 して 転 移 する 血 行 性 転 移 とともに, 転 移 の2つの 大 きな 道 筋 となって います 50 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
病 気 の 拡 がり( 臨 床 病 期 )について 教 えてくだ さい 025 臨 床 病 期 とは, 治 療 を 始 める 前 に 決 める 病 気 の 拡 がりの 程 度 ( 進 展 度 )のことです( 第 4 章 解 説 参 照 )ⅠA 期 からⅣ 期 まで の7 段 階 に 分 類 されます 肺 がんの 治 療 方 針 は,がんの 組 織 分 類 と, 臨 床 病 期 の2つの 要 素 でほぼ 決 められますので 臨 床 病 期 を 決 定 することはとても 重 要 です( 詳 しくは 第 4 章 解 説 参 照 ) 臨 床 病 期 の 例 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 51
026 肺 がんの 臨 床 病 期 はどのようにして 決 めら れるのですか 非 小 細 胞 肺 がんであることが 診 断 されたら, 病 気 の 拡 がり( 臨 床 病 期 )を 決 定 します( 第 4 章 解 説 参 照 ) 胸 部 X 線 や, 胸 部 の CT 検 査 などとともに,ごく 小 さい 一 部 の 肺 がんを 除 いて, 転 移 しやすい 脳, 骨, 肝 臓, 副 腎 などをCT,MRI( 核 磁 気 共 鳴 検 査 ), 超 音 波 検 査,PET( 陽 電 子 断 層 撮 影 法 ),シンチグラフイ( 放 射 性 同 位 元 素 を 用 いた 画 像 )などのなかから いくつかの 検 査 を 用 いて 転 移 の 有 無 を 調 べます CTやMRIは 必 要 に 応 じてが んを 見 つけやすくするために 造 影 剤 を 注 射 することがあります MRI PET 画 像 52 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
非 小 細 胞 肺 がんの 治 療 への 流 れ 用 語 解 説 PET( 陽 電 子 断 層 撮 影 法 ) がんの 診 断 にはFDG-PETが 用 いられるこ ともあります FDGは18Fフルオロデオキ シグルコースの 略 で,がんや 脳, 心 臓 の 細 胞 がブドウ 糖 をより 多 く 取 り 込 んでいる 性 質 を 利 用 して,1 度 に 全 身 的 ながんの 有 無 や 転 移 の 部 位 を 調 べる 検 査 法 です 脳 や 心 臓 はブドウ 糖 代 謝 が 盛 んなためがんの 有 無 は 検 査 できません また,1cm 以 下 の 腫 瘍 に 対 しては 精 度 が 低 いため,CTやMRIと 組 み 合 わせて 検 査 するのが 一 般 的 です 万 能 ではなく, 検 査 時 間 が 長 いのが 欠 点 です 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 53
027 CT 検 診 の 放 射 線 被 ばくは 大 丈 夫 でしょうか 病 気 で 診 療 上 必 要 な 検 査 と 無 症 状 の 健 康 な 人 に 対 するがん 検 診 の 場 合 と 分 けて 考 える 必 要 があります 前 者 について, 医 療 上 必 要 な 検 査 を 受 けることは, 患 者 さんの 医 療 上 の 利 益 不 利 益 を 考 えると 妥 当 な ことと 思 われます 肺 がん 検 診 の 場 合 は,40 才 以 上 の 健 康 な 男 女 が 対 象 とな ります 胸 部 写 真 による 肺 がん 検 診 の 場 合 には,その 被 ばく 量 は0.02~0.07 ミリシーベルトであり,40 才 以 上 の 方 で 年 1 回 の 検 診 として, 毎 年 受 けても 明 らかな 障 害 は 報 告 されていません いわゆるがん 高 発 年 令 の 方 であれば 検 診 によるがん 発 見 という 利 益 が 不 利 益 を 上 回 ると 考 えられます 低 線 量 CTは 胸 部 写 真 よりはるかに 小 さな 腫 瘍 を 検 出 でき,より 早 期 に 発 見 できることが 研 究 で 確 認 されています 低 線 量 CTによる 被 ばく 線 量 は,1~2ミリシーベルトで す 無 症 状 の 健 常 者 が 毎 年 1 回 長 期 間 受 診 した 場 合 の 不 利 益 ( 被 ばくによる 新 たな 発 がんのリスクなど)について, 明 らかな 報 告 はありません 普 通 のCT 検 査 を 受 ける 被 ばく 線 量 は5~30ミリシーベルトとされています 健 康 な 人 に 対 する 普 通 の 診 断 用 CTでの 検 診 は 不 利 益 が 利 益 を 上 回 る 可 能 性 があります ので, 避 けた 方 が 良 いと 思 われます 肺 がん 検 診 で 被 ばく 線 量 について 心 配 な 方 は,Q028を 参 照 するか, 受 診 時 に 担 当 者 にご 質 問 ください なお, 肺 がん と 診 断 され 治 療 中 の 方, 経 過 観 察 中 の 方 は 治 療 効 果 の 判 断 にCT 検 査 が 必 要 で すので,CT 検 診 とは 別 のものと 考 えてください 54 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )
検 査 による 被 ばくが 心 配 ですが 検 査 を 受 けても 大 丈 夫 でしょうか 028 肺 がんの 治 療 を 始 める 前 だけでなく, 治 療 中 や 治 療 が 終 わった とき, 経 過 観 察 中 にも 放 射 線 を 使 った 検 査 は 必 要 になります 放 射 線 を 用 いた 検 査 には,X 線 を 用 いた 検 査 ( 胸 部 単 純 写 真,CTなど)や 放 射 性 同 位 元 素 を 用 いた 検 査 (PET, 骨 シンチグラフィーなど)があります 放 射 線 を 用 いた 医 療 行 為 による 被 ばくを 医 療 被 ばくといいます 参 考 のため 表 に 1 回 の 検 査 で 被 ばくする 線 量 の 目 安 をまとめます 放 射 線 には, 有 益 な 面 と 有 害 な 面 があります 私 たち 医 療 者 が 患 者 さんに 検 査 をするときは, 患 者 さんにとって 明 らかな 利 益 があるときです そして 医 療 被 ばくの 量 をできるだけ 少 なくするように 工 夫 して 検 査 をします したがって, 検 査 を 受 けても 大 きな 問 題 はありません 患 者 さんが, 検 査 によるわずかな 被 ばくを 恐 れて, 適 切 な 医 療 を 受 けることができなくなることだけは 避 けなくて はいけません 検 査 による 被 ばくが 心 配 な 時 は, 担 当 医 師 に 検 査 の 必 要 性 をしっ かりと 聞 いてください 検 査 胸 部 X 線 撮 影 CT 撮 影 核 医 学 検 査 PET 検 査 実 効 線 量 0.02~0.07mSv 5~30mSv 程 度 0.5~15mSv 程 度 2~20mSv 程 度 用 語 解 説 実 効 線 量 放 射 線 の 種 類 と 性 質, 人 体 の 組 織 や 臓 器 の 種 類 によって, 人 体 が 放 射 線 を 受 けたとき の 影 響 は 異 なります これらを 考 慮 して 算 出 する 放 射 線 量 を 実 効 線 量 といいます 実 効 線 量 は,からだ 全 体 へのダメージを 表 す 単 位 で, 放 射 線 の 被 ばく 管 理 に 用 いられま す 組 織 や 臓 器 ごとに,( 吸 収 線 量 放 射 線 荷 重 係 数 組 織 荷 重 係 数 )を 計 算 し, 全 身 について 合 計 した 線 量 が 実 効 線 量 となりま す 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 ) 55
56 第 3 章 診 断 と 進 行 度 ( 臨 床 病 期 分 類 )