平成26年公的年金財政検証と今後の年金制度改正の行方（上）

平 成 26 年 公 的 年 金 財 政 検 証 と 今 後 の 年 金 制 度 改 正 の 行 方 ( 上 ) 厚 生 労 働 委 員 会 調 査 室 松 野 晴 菜 1.はじめに 平 成 26 年 6 月 3 日 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 し ( 以 下 財 政 検 証 という )が 公 表 された 財 政 検 証 は 少 なくとも5 年 に1 度 行 われるものとされ 言 わば 公 的 年 金 財 政 の 定 期 健 康 診 断 である 総 務 省 統 計 局 の 人 口 推 計 ( 平 成 26 年 10 月 概 算 値 )によれば 生 産 年 齢 人 口 (15~64 歳 ) は7,784 万 人 であり 平 成 7 年 をピークに 以 後 減 少 し 続 けている 一 方 65 歳 以 上 人 口 は 3,300 万 人 総 人 口 に 占 める65 歳 以 上 人 口 の 割 合 は26.0%であり 人 口 割 合 共 に 過 去 最 高 となった 今 後 の 少 子 高 齢 化 の 進 展 を 踏 まえれば 公 的 年 金 制 度 の 持 続 可 能 性 を 確 認 する 重 要 性 は ますます 高 まっていると 言 えよう 今 回 の 財 政 検 証 の 特 徴 としては 18 通 りの 経 済 前 提 の 設 定 23つのオプション 試 算 が 挙 げられる 前 回 平 成 21 年 の 財 政 検 証 では 3 通 りの 経 済 前 提 が 示 されたが 中 位 の 経 済 前 提 を 基 本 ケースとし その 基 本 ケースを 中 心 に 議 論 がなされた しかし 今 回 の 財 政 検 証 では 8 通 りの 経 済 前 提 が 用 いられ 基 本 ケースは 設 定 されていない また 今 後 の 年 金 制 度 改 正 の 議 論 に 資 するよう 社 会 保 障 制 度 改 革 国 民 会 議 報 告 書 1 ( 以 下 国 民 会 議 報 告 2 書 という ) 及 び 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 ( 以 下 プログラム 法 という )の 規 定 に 基 づき 1マクロ 経 済 スライドの 仕 組 みの 見 直 し 2 被 用 者 保 険 の 更 なる 適 用 拡 大 3 保 険 料 拠 出 期 間 と 受 給 開 始 年 齢 の 選 択 制 という3 つのオプション 試 算 も 行 われた 今 回 の 財 政 検 証 の 結 果 では 経 済 の 活 性 化 労 働 参 画 の 促 進 が 年 金 の 持 続 可 能 性 に 資 す る 重 要 な 要 素 であることが 示 され これらの 前 提 が 満 たされた 場 合 将 来 にわたって 年 金 の 給 付 水 準 が 確 保 されることが 確 認 された 一 方 マクロ 経 済 スライドによる 調 整 の 長 期 化 により 基 礎 年 金 の 給 付 水 準 が 大 幅 に 低 下 することが 明 らかとなった また 3つのオプ ション 試 算 については いずれも 年 金 の 給 付 水 準 にプラスの 効 果 があることが 示 された 現 在 社 会 保 障 審 議 会 年 金 部 会 等 において 財 政 検 証 及 びオプション 試 算 の 結 果 等 に 基 づ き 必 要 な 年 金 制 度 改 正 に 向 けた 検 討 が 進 められている 本 稿 においては 財 政 検 証 の 意 義 平 成 26 年 財 政 検 証 及 びオプション 試 算 の 結 果 につい て 解 説 することとし 今 後 の 年 金 制 度 改 正 の 行 方 については 次 稿 において 考 察 する 2. 財 政 検 証 の 意 義 1 平 成 25 年 8 月 6 日 公 表 2 平 成 25 年 法 律 第 112 号 26 立 法 と 調 査 2014.11 No. 358( 参 議 院 事 務 局 企 画 調 整 室 編 集 発 行 )

財 政 検 証 とは 人 口 や 経 済 の 動 向 を 踏 まえ 少 なくとも5 年 ごとに1おおむね100 年 と いう 長 期 の 財 政 見 通 しの 作 成 3 2マクロ 経 済 スライド 4 の 開 始 終 了 年 度 の 見 通 しの 作 成 5 を 行 うものである 今 回 の 財 政 検 証 は 従 来 の 財 政 再 計 算 6 に 代 わり 平 成 21 年 に 続 き2 度 目 である 平 成 16 年 年 金 制 度 改 正 ( 以 下 平 成 16 年 改 正 という )により 年 金 制 度 は 保 険 料 の 上 限 が 固 定 され その 固 定 された 財 源 の 範 囲 内 で 自 動 的 に 給 付 水 準 を 調 整 することで 財 政 収 支 の 均 衡 を 図 ることとされた 財 政 検 証 は こうした 給 付 と 負 担 の 均 衡 を 自 動 的 に 図 る 仕 組 みの 下 での 年 金 財 政 の 健 全 性 を 検 証 することを 目 的 としている 財 政 検 証 においては 所 得 代 替 率 が 主 な 指 標 として 用 いられる 所 得 代 替 率 とは 年 金 受 給 開 始 時 点 における 厚 生 年 金 の 標 準 的 な 年 金 受 給 世 帯 (40 年 間 平 均 的 な 賃 金 で 働 いたサ ラリーマンの 夫 と40 年 間 専 業 主 婦 であった 妻 からなる 夫 婦 世 帯 )の 年 金 額 の 現 役 男 子 の 平 均 手 取 り 収 入 7 に 対 する 比 率 のことであり 公 的 年 金 の 給 付 水 準 を 示 す 指 標 である また 財 政 検 証 の 作 成 に 当 たって 次 の 財 政 検 証 までの 間 に 所 得 代 替 率 が50%を 下 回 る ことが 見 込 まれる 場 合 には マクロ 経 済 スライドによる 調 整 の 終 了 その 他 の 措 置 を 講 ずる とともに 給 付 及 び 負 担 の 在 り 方 について 検 討 を 行 い 所 要 の 措 置 を 講 ずるものと 規 定 されている 参 考 年 金 制 度 の 体 系 3 国 民 年 金 法 ( 昭 和 34 年 法 律 第 141 号 ) 第 4 条 の3 厚 生 年 金 保 険 法 ( 昭 和 29 年 法 律 第 115 号 ) 第 2 条 の4の 規 定 に 基 づく 4 マクロ 経 済 スライドとは 現 役 人 口 の 減 少 や 平 均 余 命 の 延 びに 合 わせて 年 金 の 給 付 水 準 を 自 動 的 に 調 整 す る 仕 組 みである 詳 細 については 3(4)を 参 照 5 国 民 年 金 法 ( 昭 和 34 年 法 律 第 141 号 ) 第 16 条 の2 厚 生 年 金 保 険 法 ( 昭 和 29 年 法 律 第 115 号 ) 第 34 条 の 規 定 に 基 づく 6 平 成 16 年 までは 財 政 再 計 算 として 必 要 な 保 険 料 率 を 算 出 するために 行 われていたが 平 成 16 年 改 正 により 財 政 検 証 が 法 定 化 された なお 過 去 の 財 政 再 計 算 においては その 結 果 を 踏 まえ 年 金 制 度 改 正 が 行 われた ことが 多 い 7 現 役 男 子 の 平 均 手 取 り 収 入 については 前 年 度 における 男 子 被 保 険 者 の 平 均 的 な 標 準 報 酬 額 ( 賞 与 を 含 む 月 額 換 算 )の 実 績 見 込 みに 可 処 分 所 得 割 合 を 乗 じて 算 出 している 27

( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 平 成 26 年 版 厚 生 労 働 白 書 3. 平 成 16 年 改 正 財 政 フレームの 完 成 平 成 24 年 の 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 に 関 連 する 法 案 審 議 においては 消 費 税 増 税 に 関 連 する 法 案 のほか 年 金 関 連 4 法 案 8 についても 同 時 に 議 論 がなされ それぞれ 成 立 した そ の 結 果 基 礎 年 金 国 庫 負 担 割 合 2 分 の1への 引 上 げに 必 要 な 財 源 を 確 保 すると 同 時 に 特 例 水 準 9 の 解 消 が 図 られ マクロ 経 済 スライドが 機 能 する 前 提 が 整 った これらの 法 案 の 成 立 は 長 期 的 な 給 付 と 負 担 を 均 衡 させるための 平 成 16 年 改 正 による 年 金 財 政 フレームの 完 成 を 意 味 する 以 下 関 連 する 近 時 の 法 改 正 に 触 れつつ 平 成 16 年 改 正 による 年 金 財 政 フレームを 紹 介 する (1) 上 限 を 固 定 した 上 での 保 険 料 の 引 上 げ 保 険 料 については 厚 生 年 金 が 保 険 料 率 18.3%( 労 使 折 半 ) 10 国 民 年 金 が 保 険 料 月 額 16,900 円 11 をそれぞれ 上 限 とし 平 成 29 年 度 以 降 の 保 険 料 の 水 準 を 固 定 する 急 速 な 少 子 高 齢 化 に 対 応 するため 負 担 の 上 昇 が 避 けられない 中 若 年 層 を 中 心 として 負 担 がどこ までも 上 昇 するとの 不 安 が 大 きいことから 将 来 にわたる 保 険 料 水 準 が 法 律 に 明 記 された 8 成 立 した 年 金 関 連 4 法 は 以 下 のとおり 公 的 年 金 制 度 の 財 政 基 盤 及 び 最 低 保 障 機 能 の 強 化 等 のための 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 ( 平 成 24 年 法 律 第 62 号 )( 以 下 年 金 機 能 強 化 法 という ) 被 用 者 年 金 制 度 の 一 元 化 等 を 図 るための 厚 生 年 金 保 険 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 ( 平 成 24 年 法 律 第 63 号 ) 国 民 年 金 法 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 等 の 一 部 を 改 正 する 法 律 ( 平 成 24 年 法 律 第 99 号 )( 以 下 国 年 法 等 改 正 法 という ) 及 び 年 金 生 活 者 支 援 給 付 金 の 支 給 に 関 する 法 律 ( 平 成 24 年 法 律 第 102 号 ) 9 年 金 額 は 平 成 11 年 から13 年 までの 間 に 物 価 が 下 落 したにもかかわらず 年 金 額 を 特 例 的 に 据 え 置 いた 影 響 で 法 律 が 本 来 想 定 している 水 準 ( 本 来 水 準 )よりも 2.5% 高 い 水 準 ( 特 例 水 準 )とされた 特 例 水 準 の 解 消 については 平 成 25 年 10 月 に1.0% 平 成 26 年 4 月 に1.0%が 引 き 下 げられており 平 成 27 年 4 月 に0.5% の 引 下 げが 行 われる 予 定 10 平 成 16 年 10 月 から 毎 年 0.354% 引 上 げを 行 っており 現 在 ( 平 成 26 年 9 月 ~)の 保 険 料 率 は17.474% 11 国 民 年 金 における 保 険 料 については 平 成 16 年 度 価 格 に 改 定 率 ( 賃 金 や 物 価 の 変 動 に 応 じて 政 令 で 定 められ る 率 )を 乗 じて 計 算 される 平 成 17 年 4 月 から 毎 年 280 円 引 上 げており 現 在 ( 平 成 26 年 4 月 ~)の 国 民 年 金 保 険 料 は 月 額 15,250 円 28

(2) 基 礎 年 金 国 庫 負 担 割 合 2 分 の1への 引 上 げ 将 来 世 代 の 過 重 な 保 険 料 負 担 12 を 回 避 し 高 齢 期 の 生 活 を 支 える 年 金 の 給 付 水 準 を 確 保 するため 平 成 21 年 度 以 降 基 礎 年 金 給 付 費 に 対 する 国 庫 負 担 割 合 を2 分 の1とするとさ れていたが 安 定 的 な 財 源 が 確 保 できず 毎 年 財 源 の 確 保 が 課 題 となっていた 13 平 成 24 年 の 年 金 機 能 強 化 法 等 の 成 立 により 消 費 税 増 税 分 の 一 部 を 恒 久 的 な 財 源 とすることとさ れ 安 定 した 財 源 が 確 保 された (3) 積 立 金 の 活 用 公 的 年 金 制 度 は おおむね100 年 間 で 財 政 均 衡 を 図 るため 財 政 均 衡 期 間 の 終 了 時 に 給 付 費 1 年 分 程 度 の 積 立 金 を 保 有 することとして 積 立 金 を 活 用 し 後 代 の 給 付 に 充 てる 有 限 均 衡 方 式 を 採 用 している 平 成 11 年 財 政 再 計 算 においては 将 来 にわたる 全 ての 期 間 を 考 慮 に 入 れて 財 政 の 均 衡 を 考 える 方 式 ( 永 久 均 衡 方 式 )を 採 用 していたが この 方 式 におい ては 予 想 が 極 めて 困 難 な 遠 い 将 来 まで 考 慮 する 必 要 性 の 是 非 や また 巨 額 の 積 立 金 を 保 有 することとなるなどの 問 題 があった そこで 財 政 均 衡 期 間 については 現 在 既 に 生 ま れている 世 代 が 年 金 の 受 給 を 終 えるまでのおおむね100 年 間 とされ 今 回 の 財 政 検 証 におい ては 2110 年 度 までの95 年 間 を 財 政 均 衡 期 間 としている (4)マクロ 経 済 スライドの 導 入 マクロ 経 済 スライドは 限 られた 財 源 の 範 囲 内 で 給 付 水 準 を 自 動 調 整 する 仕 組 みである 具 体 的 には 上 限 が 固 定 された 保 険 料 を 前 提 に おおむね100 年 間 の 財 政 均 衡 期 間 の 終 了 時 に 年 金 の 支 給 に 支 障 のない 程 度 の 積 立 金 ( 給 付 費 1 年 分 )を 保 有 することができるよう に 年 金 額 の 伸 びの 調 整 を 行 う 期 間 を 設 定 し 調 整 期 間 14 においては 現 役 人 口 の 減 少 や 平 均 余 命 の 延 びを 年 金 額 に 反 映 させつつ その 分 だけ 賃 金 や 物 価 の 上 昇 に 伴 う 年 金 額 の 上 昇 を 抑 えることとする その 後 の 財 政 検 証 において 年 金 財 政 の 均 衡 が 見 込 まれる 場 合 に は 年 金 額 の 調 整 を 終 了 することとなる マクロ 経 済 スライドによる 調 整 期 間 中 は 賃 金 や 物 価 の 上 昇 による 年 金 額 の 伸 びから スライド 調 整 率 ( 公 的 年 金 全 体 の 被 保 険 者 の 減 少 率 (3 年 平 均 )+ 平 均 余 命 の 延 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%))を 差 し 引 いて 年 金 額 を 改 定 することとなる ただし 名 目 下 限 が 設 定 されており 賃 金 物 価 の 伸 びが 小 さい 場 合 は マクロ 経 済 スライドによる 調 整 の 効 12 平 成 16 年 財 政 再 計 算 によれば 基 礎 年 金 の 国 庫 負 担 割 合 は3 分 の1という 前 提 において 給 付 水 準 国 庫 負 担 などについて 何 らの 見 直 しを 行 わなかった 場 合 国 民 年 金 の 保 険 料 は 平 成 43 年 度 に29,500 円 厚 生 年 金 の 保 険 料 率 は 平 成 50 年 度 に25.9%に 達 する 見 込 みであった なお 給 付 水 準 を 見 直 さず 国 庫 負 担 割 合 を2 分 の 1にした 場 合 国 民 年 金 の 保 険 料 は 平 成 29 年 度 に20,700 円 厚 生 年 金 の 保 険 料 率 は 平 成 42 年 度 に22.8%に 達 する 見 込 みとされた 13 詳 細 は 根 岸 隆 史 社 会 保 障 税 一 体 改 革 における 年 金 制 度 改 正 国 民 年 金 法 改 正 案 年 金 機 能 強 化 法 案 立 法 と 調 査 No.328(2012.5) 参 照 14 マクロ 経 済 スライドによる 調 整 期 間 の 推 計 方 法 は 次 のとおりであり 国 民 年 金 厚 生 年 金 それぞれにおいて 給 付 水 準 調 整 前 の 給 付 等 に 対 して ある 年 度 までマクロ 経 済 スライドの 適 用 を 続 けた 場 合 の 給 付 水 準 調 整 割 合 を 乗 じることにより 給 付 水 準 調 整 後 の 給 付 費 等 を 算 出 し それを 基 に 作 成 した 財 政 見 通 しにおいて 財 政 均 衡 期 間 の 終 期 における 積 立 度 合 いが 支 出 の1 年 分 以 上 となるかどうかを 確 認 することにより 何 年 間 マク ロ 経 済 スライドの 適 用 を 続 ける 必 要 があるか 推 計 する 29

果 が 限 定 的 になり マイナス 改 定 になるような 調 整 は 行 われない また 賃 金 物 価 が 下 落 した 場 合 は マクロ 経 済 スライドによるスライド 調 整 は 行 われないこととなる デフレ 経 済 が 続 いたことや 特 例 水 準 が 解 消 されなかったことから マクロ 経 済 スライド による 調 整 は 平 成 16 年 に 導 入 されて 以 来 一 度 も 行 われたことがない 国 年 法 等 改 正 法 の 成 立 により 平 成 27 年 4 月 に 特 例 水 準 が 解 消 される 見 込 みとなっており 賃 金 物 価 が 上 昇 すればマクロ 経 済 スライドが 発 動 される 環 境 が 整 う 4. 平 成 26 年 財 政 検 証 の 前 提 (1) 年 金 制 度 の 前 提 今 回 の 財 政 検 証 においては 基 礎 年 金 国 庫 負 担 割 合 2 分 の1の 恒 久 化 年 金 額 の 特 例 水 準 の 解 消 被 用 者 年 金 の 一 元 化 短 時 間 労 働 者 への 厚 生 年 金 適 用 拡 大 (25 万 人 ベース) 等 の 社 会 保 障 と 税 の 一 体 改 革 において 成 立 した 法 律 による 公 的 年 金 制 度 の 改 正 が 反 映 されて いる 被 用 者 年 金 の 一 元 化 については 平 成 27 年 10 月 からの 実 施 を 受 け 従 来 は 厚 生 年 金 のみ を 用 いて 計 算 していたのに 対 し 今 回 の 財 政 検 証 より 一 元 化 モデルとして 共 済 年 金 も 併 せて 計 算 されている 比 較 的 賃 金 の 高 い 共 済 組 合 の 組 合 員 が 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 となるた め 厚 生 年 金 の 現 役 男 子 の 平 均 手 取 り 収 入 が1.3 万 円 程 度 上 昇 する 見 込 みとなっている こ の 影 響 により 従 来 より 賃 金 水 準 の 高 い 現 役 世 帯 を 標 準 モデルとすることとなるため 標 準 モデルの 所 得 代 替 率 が 低 下 することに 留 意 が 必 要 である (2) 将 来 推 計 人 口 の 前 提 日 本 の 将 来 推 計 人 口 ( 平 成 24 年 1 月 推 計 ) ( 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 )を 使 用 し 合 計 特 殊 出 生 率 及 び 死 亡 率 についてそれぞれ 高 位 中 位 低 位 の3 通 りを 設 定 した 合 計 特 殊 出 生 率 については 出 生 高 位 :1.60 出 生 中 位 :1.35 出 生 低 位 :1.12 死 亡 率 ( 平 均 寿 命 )については 死 亡 高 位 : 男 83.22 女 89.96 死 亡 中 位 : 男 84.19 女 90.93 死 亡 低 位 : 男 85.14 女 91.90と 設 定 された (3) 労 働 力 率 の 前 提 平 成 26 年 2 月 に 取 りまとめられた 労 働 力 需 給 推 計 (( 独 ) 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 ) に 準 拠 して 設 定 し 将 来 の 経 済 状 況 の 仮 定 に 応 じ 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケース 労 15 働 市 場 への 参 加 が 進 まないケース を 設 定 した 高 齢 者 及 び 女 性 16 の 労 働 参 画 が 進 んだケ ースを 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケース とし 足 下 の 労 働 力 率 のまま 推 移 するケースを 労 働 市 場 への 参 加 が 進 まないケース としている 労 働 市 場 への 参 加 が 進 んだ 場 合 2030 15 2030 年 における60~64 歳 の 男 性 の 労 働 力 率 は 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケース において 90.9%が 見 込 まれている 一 方 労 働 市 場 への 参 加 が 進 まないケース において 75.4%と 見 込 まれている 2030 年 にお ける65~69 歳 の 男 性 の 労 働 力 率 は 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケース において 66.7%が 見 込 まれている 一 方 労 働 市 場 への 参 加 が 進 まないケース において 49.0%と 見 込 まれている 16 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケース の 場 合 2030 年 における 女 性 の 労 働 力 率 において M 字 カーブがほぼ 消 滅 すると 見 込 まれている 30

年 まで6,000 万 人 前 後 の 労 働 力 人 口 17 を 維 持 するが 労 働 市 場 への 参 加 が 進 まない 場 合 2030 年 には 労 働 力 人 口 が5,300 万 人 程 度 に 落 ち 込 み 労 働 力 人 口 は 急 速 に 減 少 し 続 けること が 予 想 されている (4) 経 済 前 提 社 会 保 障 審 議 会 年 金 部 会 年 金 財 政 における 経 済 前 提 と 積 立 金 運 用 のあり 方 に 関 する 専 門 委 員 会 18 において 平 成 26 年 3 月 10 日 に 年 金 財 政 における 経 済 前 提 と 積 立 金 の 運 用 の あり 方 について が 取 りまとめられ 同 月 12 日 に 開 催 された 年 金 部 会 に 報 告 された 同 報 告 書 に 基 づき 経 済 前 提 が 設 定 されている 長 期 の 経 済 前 提 の 設 定 のイメージについては 図 表 1のとおりであるが 具 体 的 には 平 成 35 年 度 までの 足 下 の 経 済 前 提 は 図 表 2の 内 閣 府 中 長 期 の 経 済 財 政 に 関 する 試 算 ( 平 成 26 年 1 月 20 日 )における 内 閣 府 経 済 再 生 ケース 内 閣 府 参 考 ケースに 準 拠 した2 通 りで あり 内 閣 府 経 済 再 生 ケースでは 全 要 素 生 産 性 (TFP) 19 上 昇 率 が 足 下 の0.5%から1.8% へ 上 昇 内 閣 府 参 考 ケースでは1.0%へ 上 昇 していくと 設 定 された 平 成 36 年 度 以 降 の 長 期 の 経 済 前 提 は 図 表 3の 内 閣 府 経 済 再 生 ケースに 接 続 するケースA~E 内 閣 府 参 考 ケー スに 接 続 するケースF~Hの8 通 りを 示 しており TFP 上 昇 率 はケースHの0.5%からケ ースAの1.8%の 間 で 想 定 されている 平 成 21 年 財 政 検 証 の 際 は 経 済 前 提 を3 通 りとし 中 位 の 経 済 前 提 が 基 本 ケースとして 設 定 されたが 今 回 基 本 ケースの 設 定 はなされなかった これは 1 前 回 の 財 政 検 証 にお いては 経 済 前 提 が 合 っているかどうかに 議 論 が 終 始 したことから 今 回 は 無 用 な 混 乱 を 回 避 するためと 2 前 提 が 変 われば 同 じ 年 金 スキームにおいても 結 果 が 変 わることを 示 す ことができるため 等 とされている また 今 回 の 積 立 金 の 運 用 利 回 りについては 前 回 の 財 政 検 証 の 際 運 用 目 標 に 関 する 議 論 が 名 目 運 用 利 回 りに 偏 ったとの 意 見 があったことから 名 目 運 用 利 回 りから 名 目 賃 金 上 昇 率 を 差 し 引 いた 運 用 利 回 り(スプレッド)のみを 数 値 で 設 定 ( 名 目 賃 金 上 昇 率 は 数 値 を 示 さない )するよう 運 用 利 回 りの 示 し 方 が 変 更 された 17 労 働 力 人 口 は 被 用 者 年 金 の 被 保 険 者 とならない70 歳 以 上 を 除 く 18 平 成 23 年 10 月 14 日 に 第 1 回 が 開 催 され 取 りまとめに 至 るまで 全 17 回 行 われた 19 全 要 素 生 産 性 (TFP)とは 生 産 に 寄 与 する 要 素 のうち 労 働 及 び 資 本 投 入 量 以 外 の 要 素 による 生 産 性 の ことである TFPの 上 昇 については 技 術 進 歩 が 大 きな 要 素 であるとされるほか 景 気 変 動 などにも 起 因 するとされている 31

図 表 1 長 期 の 経 済 前 提 の 設 定 のイメージ ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 し - 平 成 26 年 財 政 検 証 結 果 - ( 平 26.6.3) 図 表 2 平 成 35 年 度 までの 足 下 の 経 済 前 提 ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 し - 平 成 26 年 財 政 検 証 結 果 - ( 平 26.6.3) 図 表 3 平 成 36 年 度 以 降 の 長 期 の 経 済 前 提 ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 し - 平 成 26 年 財 政 検 証 結 果 - ( 平 26.6.3) 32

(5)その 他 の 制 度 の 状 況 等 に 関 する 前 提 有 遺 族 率 障 害 年 金 発 生 率 納 付 率 等 については 被 保 険 者 及 び 年 金 受 給 者 等 の 実 績 デ ータ 等 を 基 礎 として 設 定 されている なお 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 率 については 今 後 の 取 組 強 化 等 により 向 上 ( 平 成 30 年 度 に65%)した 場 合 を 基 本 に 現 状 の 納 付 率 で 推 移 した 場 合 (60%)も 設 定 された 20 5. 平 成 26 年 財 政 検 証 の 結 果 (1) 平 成 26 年 度 における 所 得 代 替 率 平 成 26 年 度 の 所 得 代 替 率 は64.1% 21 ( 従 来 モデルの 値 一 元 化 モデルについては62.7%) であり 平 成 21 年 度 の 所 得 代 替 率 62.3% 22 と 比 較 して 1.8% 上 昇 している これは 年 金 額 の 改 定 ルール( 図 表 4)の 影 響 によるものである 23 図 表 4 現 行 の 年 金 額 の 改 定 (スライド)のルール 賃 金 変 動 率 及 び 物 価 変 動 率 の 関 係 新 規 裁 定 者 既 裁 定 者 Ⅰ 賃 金 変 動 率 > 物 価 変 動 率 賃 金 スライド 物 価 スライド Ⅱ 物 価 変 動 率 > 賃 金 変 動 率 >0 賃 金 スライド 賃 金 スライド Ⅲ 物 価 変 動 率 >0> 賃 金 変 動 率 0スライド 0スライド Ⅳ 0> 物 価 変 動 率 > 賃 金 変 動 率 物 価 スライド 物 価 スライド ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 年 金 額 の 改 定 (スライド)の 在 り 方 第 26 回 社 会 保 障 審 議 会 年 金 部 会 資 料 1( 平 26.10.15) を 基 に 筆 者 作 成 通 常 の 経 済 においては 賃 金 変 動 率 が 物 価 変 動 率 より 高 い 場 合 ( 図 表 4のⅠ)が 想 定 さ れている このような 場 合 新 規 裁 定 者 は 賃 金 スライド 24 既 裁 定 者 は 物 価 スライド 25 によ って 年 金 額 の 改 定 をすることとなっている 一 方 物 価 変 動 率 > 賃 金 変 動 率 >0の 場 合 物 価 変 動 率 >0> 賃 金 変 動 率 の 場 合 0> 物 価 変 動 率 > 賃 金 変 動 率 の 場 合 については 既 裁 定 者 の 改 定 率 が 新 規 裁 定 者 の 改 定 率 よりも 大 きくなることが 不 適 当 であるとの 観 点 か 20 国 民 年 金 保 険 料 納 付 率 の 設 定 については 日 本 年 金 機 構 中 期 計 画 において 国 民 年 金 の 現 年 度 納 付 率 につい て 中 期 目 標 期 間 ( 平 成 26 年 4 月 1 日 から 平 成 31 年 3 月 31 日 ) 中 に60% 台 半 ばを 目 指 すとされていることを 踏 まえた 数 値 である 平 成 21 年 財 政 検 証 においては 国 民 年 金 保 険 料 納 付 率 について 当 時 の 社 会 保 険 庁 の 目 標 値 である80%という 値 が 設 定 されており 実 態 に 伴 っていないとの 指 摘 もなされた それを 受 けて 平 成 21 年 財 政 検 証 後 国 民 年 金 保 険 料 が 実 績 値 に 近 い65%で 推 移 した 場 合 について 試 算 が 行 われ その 結 果 所 得 代 替 率 50%を 維 持 できないことが 明 らかになった 21 報 酬 比 例 部 分 25.9% 基 礎 年 金 部 分 38.2% 22 報 酬 比 例 部 分 25.6% 基 礎 年 金 部 分 36.6% 23 可 処 分 所 得 割 合 が 下 がったことも 要 因 の1つだと 考 えられる 24 67 歳 までの 改 定 率 は 名 目 手 取 り 賃 金 変 動 率 を 用 いて 算 出 される 名 目 手 取 り 賃 金 変 動 率 は 前 年 の 物 価 変 動 率 3 年 度 前 の 実 質 賃 金 上 昇 率 ( 前 後 3 年 平 均 ) 3 年 度 前 の 可 処 分 所 得 割 合 変 化 率 で 算 出 される 年 金 改 定 を 行 う4 月 時 点 では 賃 金 の 実 績 が 前 々 年 度 分 までしか 確 定 していないため 年 金 を 受 け 取 り 始 める 時 点 ま での 賃 金 水 準 が 反 映 できるよう 受 給 者 が67 歳 になるまで 賃 金 による 改 定 を 行 うこととした 25 68 歳 以 降 の 改 定 率 は 前 年 の 物 価 変 動 率 で 行 う 既 裁 定 者 については 年 金 の 実 質 価 値 の 維 持 つまり 購 買 力 の 維 持 という 観 点 から 物 価 による 改 定 のみを 行 う 33

ら 調 整 が 行 われている 26 本 来 想 定 されている 年 金 額 の 改 定 の 場 合 ( 図 表 4のⅠ) 新 規 裁 定 者 の 年 金 額 について は 賃 金 変 動 率 により 改 定 がなされることから 所 得 代 替 率 は 維 持 される 一 方 物 価 変 動 率 >0> 賃 金 変 動 率 の 場 合 0> 物 価 変 動 率 > 賃 金 変 動 率 の 場 合 ( 図 表 4のⅢ 及 びⅣ)で は 新 規 裁 定 者 の 年 金 額 は 物 価 変 動 率 による 改 定 ( 図 表 4のⅢ)または 据 置 ( 図 表 4のⅣ) とすることから 年 金 額 は 賃 金 低 下 率 よりも 小 さい 改 定 に 留 まる 結 果 として 現 在 の 受 給 者 の 給 付 水 準 は 相 対 的 に 高 くなり 所 得 代 替 率 が 上 昇 し 年 金 財 政 は 悪 化 することとな る なお 平 成 17 年 度 以 降 ほぼ 全 ての 年 度 において 物 価 変 動 率 が 賃 金 変 動 率 を 上 回 っ てきた 所 得 代 替 率 の 上 昇 はマクロ 経 済 スライドの 長 期 化 という 問 題 も 生 じさせる 図 表 5のと おり マクロ 経 済 スライドの 調 整 期 間 の 長 期 化 は 所 得 代 替 率 の 上 昇 のほか マクロ 経 済 スライドの 発 動 開 始 時 期 の 影 響 によるものである マクロ 経 済 スライドの 発 動 のタイミン グが 早 ければ その 分 マクロ 経 済 スライドの 調 整 期 間 は 早 く 終 わることから 結 果 として 現 在 の 受 給 者 の 給 付 水 準 は 低 くなり 将 来 の 受 給 者 の 給 付 水 準 は 高 くなる 反 対 に マク ロ 経 済 スライドの 発 動 が 遅 ければ 現 在 の 受 給 者 の 給 付 水 準 は 高 く 将 来 の 受 給 者 は 低 く なり 負 担 が 後 代 へ 回 されることとなる 図 表 5 所 得 代 替 率 の 上 昇 によるマクロ 経 済 スライドの 調 整 期 間 の 長 期 化 のイメージ ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 年 金 額 の 改 定 (スライド)の 在 り 方 第 26 回 社 会 保 障 審 議 会 年 金 部 会 資 料 1 ( 平 26.10.15) また 本 来 想 定 されている 年 金 額 の 改 定 ( 図 表 4のⅠ)の 下 では 年 金 を 受 給 し 始 めた 年 以 降 ( 既 裁 定 者 )の 年 金 額 は 物 価 変 動 率 で 改 定 されるが このような 場 合 物 価 変 動 率 よりも 賃 金 変 動 率 の 方 が 高 いため その 時 々の 現 役 世 代 の 平 均 手 取 り 収 入 に 対 する 年 金 額 26 平 成 26 年 度 の 本 来 水 準 の 年 金 額 は 平 成 26 年 度 の 年 金 額 改 定 に 用 いる 名 目 手 取 り 賃 金 変 動 率 (0.3 %)よ りも 物 価 変 動 率 (0.4 %)が 高 くなるため 新 規 裁 定 者 既 裁 定 者 ともに 名 目 手 取 り 賃 金 変 動 率 (0.3 %) によって 改 定 された( 図 表 4のⅡのケースに 当 たる ) ただし 本 来 の 改 定 水 準 の 年 金 額 の 上 昇 率 0.3 %と 特 例 水 準 の 段 階 的 な 解 消 分 である1.0%の 引 下 げを 合 わせた 改 定 が 行 われたことから 前 年 度 比 0.7%の 引 下 げが 行 われた 34

の 比 率 は 年 々 低 下 していくことになる ただし この 比 率 の 低 下 については その 時 点 で 新 しく 年 金 を 受 給 し 始 める 者 ( 新 規 裁 定 者 )の 所 得 代 替 率 の8 割 を 下 回 らないこととされ ている 27 新 規 裁 定 者 の 所 得 代 替 率 の8 割 に 到 達 した 後 は 賃 金 変 動 率 により 改 定 すること とされており 現 役 世 代 の 平 均 手 取 り 収 入 に 対 する 比 率 は 維 持 される (2)スライド 調 整 率 マクロ 経 済 スライド 28 の 調 整 期 間 に 用 いられるスライド 調 整 率 は 少 子 化 高 齢 化 をそ れぞれ 踏 まえ 公 的 年 金 被 保 険 者 数 の 減 少 率 (3 年 平 均 )( 図 表 6の1)に 寿 命 の 延 び 等 を 勘 案 して 設 定 されている 一 定 率 (0.3%)を 加 えたもの( 図 表 6の2)である 出 生 中 位 死 亡 中 位 における 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケースと 進 まないケースそれぞれのスライド 調 整 率 は 図 表 6の2とおりである 平 成 16 年 財 政 再 計 算 におけるスライド 調 整 率 は 調 整 期 間 の 年 平 均 で 0.9%であった 平 成 26 年 財 政 検 証 におけるスライド 調 整 率 の 年 平 均 (2015~2040 年 度 ) 29 は 労 働 市 場 へ の 参 加 が 進 むケースにおいては1.2% 労 働 市 場 への 参 加 が 進 まないケースにおいては 1.3%という 値 が 示 されている 図 表 6 公 的 年 金 被 保 険 者 数 の 将 来 見 通 し 27 現 役 世 代 の 賃 金 と 年 金 との 乖 離 が 過 大 にならないように 将 来 においては 必 要 に 応 じて 賃 金 スライドなど の 措 置 を 行 うことが 必 要 なのではないかと 私 は 思 っております その 場 合 今 回 の 財 政 再 計 算 においては 私 といたしましては 現 役 世 代 とのバランスを 考 えなければならない それからもう 一 つは お 年 寄 りが 実 際 に 生 活 をしていく 上 において 生 活 実 態 というものを 十 分 に 考 慮 しなければならない こう 考 えているよ うな 次 第 でございます こういう 点 から 考 えますと 私 自 身 といたしましては 二 割 以 上 乖 離 した 場 合 にお いては 賃 金 スライドなどを 行 うべきではないか このように 考 えているような 次 第 でございます との 丹 羽 厚 生 大 臣 ( 当 時 )の 発 言 に 基 づいている ( 第 146 回 国 会 衆 議 院 厚 生 委 員 会 議 録 第 5 号 20 頁 ( 平 11.11.17)) 28 マクロ 経 済 スライドの 説 明 については 3(4) 参 照 29 平 成 16 年 財 政 再 計 算 の 時 と 異 なり 平 成 26 年 財 政 検 証 における 調 整 期 間 の 終 了 については 経 済 前 提 により 変 わってくるため 2015~2040 年 度 の 平 均 35

( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 し( 詳 細 結 果 )- 平 成 26 年 財 政 検 証 詳 細 結 果 ( 財 政 見 通 し 等 )- ( 平 26.6.3) (3) 財 政 検 証 結 果 の 概 要 出 生 中 位 死 亡 中 位 の 場 合 の 財 政 検 証 結 果 の 概 要 は 図 表 7のとおりである いずれのケ ースにおいても5 年 以 内 に 所 得 代 替 率 50%を 下 回 ることはないため 法 定 上 のマクロ 経 済 スライドによる 調 整 の 見 直 しや 給 付 と 負 担 の 見 直 しの 必 要 性 はないと 言 える 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケースA~Eについては 長 期 的 な 観 点 からも それぞれ 所 得 代 替 率 50%を 維 持 することができる 報 酬 比 例 部 分 については2017~2020 年 度 までの 間 に 調 整 が 終 了 し 基 礎 年 金 部 分 については2043~2044 年 度 までの 間 に 調 整 が 終 了 する 一 方 労 働 市 場 への 参 加 が 進 まないケースF~Hについては マクロ 経 済 スライドによる 調 整 期 間 が 終 了 するまでに 所 得 代 替 率 50%を 下 回 ることとなる 特 にケースHについては 機 械 的 に 給 付 水 準 調 整 を 行 ったとしても 国 民 年 金 は2055 年 度 に 積 立 金 がなくなり 完 全 な 賦 課 方 式 に 移 行 することとなる その 後 保 険 料 と 国 庫 負 担 で 賄 うことのできる 給 付 水 準 は 所 得 代 替 率 35~37% 程 度 となることが 示 された 平 成 26 年 度 の 所 得 代 替 率 と 調 整 期 間 終 了 後 の 所 得 代 替 率 を 比 較 すると 労 働 市 場 への 参 加 が 進 むケースA~Eの 場 合 においても 2 割 程 度 低 下 し そのうち 基 礎 年 金 部 分 の 所 得 代 替 率 を 比 較 すると3 割 程 度 の 低 下 が 見 られた マクロ 経 済 スライドによる 給 付 水 準 調 整 後 における 所 得 代 替 率 30 は 高 い 方 から ケース C B A 31 D E F G Hとなっている 年 金 額 については ケースAが 最 も 高 い 一 方 名 目 運 用 利 回 りから 名 目 賃 金 変 動 率 を 差 し 引 いた 実 質 的 な 運 用 利 回 りであるスプ レッドについては ケースEが 最 も 高 い ケースCの 所 得 代 替 率 がケースA 及 びBよりも 30 以 下 本 文 の5 及 び6でいう 所 得 代 替 率 は マクロ 経 済 スライドによる 給 付 水 準 調 整 後 の 所 得 代 替 率 を 指 す 31 ケースBとAの 所 得 代 替 率 は 同 じであるが マクロ 経 済 スライドによる 調 整 期 間 について ケースBの 方 が ケースAよりも 短 くなっている 36

高 くなっている 理 由 は スプレッドと 年 金 額 のバランスが 良 いことによるものである マクロ 経 済 スライドによる 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 については 報 酬 比 例 部 分 が2017~ 2031 年 度 で 終 了 する 一 方 基 礎 年 金 部 分 はケースA~Eにおいても2043~2044 年 度 まで 行 われ 報 酬 比 例 部 分 と 基 礎 年 金 部 分 の 調 整 期 間 に 差 が 生 じている 平 成 21 年 財 政 検 証 にお ける 調 整 期 間 の 差 は19 年 であったが 平 成 26 年 財 政 検 証 においては その 差 が23 年 ~27 年 となっており 差 が 拡 大 している 32 この 主 な 原 因 は 年 金 額 の 改 定 ルールの 影 響 のほか マクロ 経 済 スライドの 開 始 が 平 成 21 年 財 政 検 証 の 見 通 しよりも 遅 れたことから 国 民 年 金 の 財 政 バランスが 悪 化 したためだと 考 えられる なお 基 礎 年 金 部 分 と 報 酬 比 例 部 分 の 調 整 期 間 の 終 了 が 異 なるのは 財 政 検 証 での 給 付 削 減 の 推 計 手 順 によるものである 推 計 手 順 としては まず 国 民 年 金 財 政 が 均 衡 するよう に 基 礎 年 金 の 給 付 削 減 の 推 計 を 行 い その 後 厚 生 年 金 財 政 から 基 礎 年 金 財 政 に 拠 出 する 金 額 を 推 計 する 最 後 に 厚 生 年 金 財 政 が 均 衡 するように 厚 生 年 金 の 給 付 削 減 を 推 計 するた め マクロ 経 済 スライドの 終 了 時 期 が 異 なることとなる 逆 の 視 点 から 見 れば 国 民 年 金 の 財 政 が 悪 化 し 国 民 年 金 の 給 付 削 減 をより 厳 しく 行 うこととなった 場 合 厚 生 年 金 財 政 から 基 礎 年 金 財 政 に 拠 出 される 金 額 が 少 なくなり 厚 生 年 金 の 財 政 は 改 善 することとなる 今 回 の 財 政 検 証 においても 近 時 の 給 付 水 準 の 高 止 まりによる 国 民 年 金 の 財 政 悪 化 の 結 果 厚 生 年 金 からの 基 礎 年 金 拠 出 金 が 減 ることとなり マクロ 経 済 スライドによる 報 酬 比 例 部 分 の 調 整 期 間 が 短 くなった 一 方 で 基 礎 年 金 部 分 の 調 整 期 間 が 長 期 化 し 結 果 として 基 礎 年 金 部 分 の 給 付 水 準 の 低 下 が 見 られた 図 表 7 所 得 代 替 率 の 将 来 見 通 し ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 し - 平 成 26 年 財 政 検 証 結 果 - ( 平 26.6.3) 32 平 成 16 年 財 政 再 計 算 の 際 は 基 礎 年 金 部 分 と 報 酬 比 例 部 分 の 調 整 期 間 の 終 了 年 度 は 同 じであった 37

また 1 人 口 の 前 提 が 変 化 した 場 合 2 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 率 が 現 状 のまま 推 移 した 場 合 3 経 済 変 動 を 仮 定 した 場 合 の 影 響 についても 試 算 が 行 われており 結 果 について 下 記 のとおり 紹 介 する 1 出 生 率 の 前 提 が 変 化 した 場 合 33 については 出 生 高 位 の 場 合 出 生 中 位 の 場 合 と 比 較 して 所 得 代 替 率 に+3%~+5%の 影 響 があり 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 についても5~ 9 年 短 くなる 一 方 出 生 低 位 の 場 合 出 生 中 位 の 場 合 と 比 較 して 所 得 代 替 率 に 4% ~ 7%の 影 響 があり 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 についても4~14 年 長 くなる 死 亡 率 の 前 提 が 変 化 した 場 合 34 については 死 亡 高 位 の 場 合 死 亡 中 位 の 場 合 と 比 較 し て 所 得 代 替 率 に+2%~+3%の 影 響 があり 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 についても3~7 年 短 くなる 死 亡 低 位 の 場 合 死 亡 中 位 の 場 合 と 比 較 して 所 得 代 替 率 に 2%~ 3% の 影 響 があり 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 についても3~7 年 長 くなる 出 生 率 及 び 死 亡 率 の 前 提 が 変 化 した 場 合 の 結 果 を 踏 まえると 出 生 低 位 及 び 死 亡 低 位 の 場 合 においては 所 得 代 替 率 50%の 維 持 が 難 しく 少 子 高 齢 化 が 年 金 財 政 に 重 要 な 影 響 を 与 えることが 明 らかとなった 2 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 率 が 現 状 のまま 推 移 した 場 合 の 影 響 35 については 今 後 の 取 組 強 化 等 により 向 上 した 場 合 36 と 比 較 して 所 得 代 替 率 に 0.1%~+0.1%の 影 響 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 についてもほとんど 影 響 を 与 えないという 結 果 になっており 5% 分 の 国 民 年 金 の 保 険 料 納 付 率 の 変 化 については 年 金 財 政 にほとんど 影 響 を 与 えないことが 示 さ れた 3 経 済 変 動 を 仮 定 した 場 合 の 影 響 37 については 経 済 の 変 動 を 仮 定 しない 場 合 と 比 較 し てケースCの 所 得 代 替 率 については 0.2% ケースEの 所 得 代 替 率 については 0.4% ケースGの 所 得 代 替 率 については 2.5%の 影 響 が 確 認 された 特 にケースGについては 基 礎 年 金 部 分 の 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 は14 年 も 延 びることとなっており マクロ 経 済 スラ イドにおける 名 目 下 限 による 影 響 は 経 済 が 低 成 長 の 場 合 ほど 大 きくなる 6.オプション 試 算 前 述 したように 今 回 の 財 政 検 証 においては 今 後 の 年 金 制 度 の 改 正 の 議 論 に 資 するよ う 国 民 会 議 報 告 書 及 びプログラム 法 の 規 定 に 基 づき 38 3つのオプション 試 算 が 行 われ た 国 民 会 議 報 告 書 では 1マクロ 経 済 スライドの 見 直 し 2 短 時 間 労 働 者 に 対 する 被 用 者 保 険 の 適 用 拡 大 3 高 齢 期 の 就 労 と 年 金 受 給 の 在 り 方 4 高 所 得 者 の 年 金 給 付 の 見 直 し 33 経 済 前 提 がケースC E Gの 場 合 34 経 済 前 提 がケースC E Gの 場 合 35 経 済 前 提 がケースC E Gの 場 合 国 民 年 金 保 険 料 の 納 付 率 が60%のまま 推 移 した 場 合 36 平 成 30 年 度 以 降 における 国 民 年 金 保 険 料 納 付 率 は 65% 37 経 済 前 提 がケースC E Gの 場 合 物 価 上 昇 率 賃 金 上 昇 率 が 平 成 30 年 度 以 降 4 年 周 期 の 変 化 を 繰 り 返 し 変 動 幅 を 1.2%~+1.2%と 設 定 した 場 合 38 国 民 会 議 報 告 書 において 財 政 検 証 に 関 し 単 に 財 政 の 現 況 と 見 通 しを 示 すだけでなく 上 記 に 示 した 課 題 の 検 討 に 資 するような 検 証 作 業 を 行 い その 結 果 を 踏 まえて 遅 滞 なくその 後 の 制 度 改 正 につなげていくべ き との 指 摘 がされた 38

について 検 討 を 行 うことが 示 された 39 プログラム 法 においても 公 的 年 金 制 度 を 長 期 的 に 持 続 可 能 な 制 度 とする 取 組 を 更 に 進 め 社 会 経 済 情 勢 の 変 化 に 対 応 した 保 障 機 能 を 強 化 し 並 びに 世 代 間 及 び 世 代 内 の 公 平 性 を 確 保 する 観 点 から 1 国 民 年 金 法 及 び 厚 生 年 金 保 険 法 の 調 整 率 に 基 づく 年 金 の 額 の 改 定 の 仕 組 みの 在 り 方 2 短 時 間 労 働 者 に 対 する 厚 生 年 金 保 険 及 び 健 康 保 険 の 適 用 範 囲 の 拡 大 3 高 齢 期 における 職 業 生 活 の 多 様 性 に 応 じ 一 人 一 人 の 状 況 を 踏 まえた 年 金 受 給 の 在 り 方 4 高 所 得 者 の 年 金 給 付 の 在 り 方 及 び 公 的 年 金 等 控 除 を 含 めた 年 金 課 税 の 在 り 方 の 見 直 しについて 検 討 を 加 えその 結 果 に 基 づいて 必 要 な 措 置 を 講 ずるものと 規 定 された これらの 検 討 課 題 を 受 け 今 回 の 財 政 検 証 と 併 せて1マクロ 経 済 スライドの 仕 組 みの 見 直 し 2 被 用 者 保 険 の 更 なる 適 用 拡 大 3 保 険 料 拠 出 期 間 と 受 給 開 始 年 齢 の 選 択 制 の3つ のオプション 試 算 が 行 われた (1)オプション 試 算 Ⅰ マクロ 経 済 スライドの 仕 組 みの 見 直 し 国 民 会 議 報 告 書 において マクロ 経 済 スライドによる 調 整 は 約 30 年 間 かけて 行 われる こととなっているが このような 長 い 期 間 の 間 には 当 然 に 経 済 変 動 が 存 在 する このため デフレ 経 済 からの 脱 却 を 果 たした 後 においても 実 際 の 物 価 や 賃 金 の 変 動 度 合 いによって は スライド 調 整 が 十 分 に 機 能 しないことが 短 期 的 に 生 じ 得 ることとなる 他 方 で 将 来 の 保 険 料 水 準 を 固 定 した 以 上 早 期 に 年 金 水 準 の 調 整 を 進 めた 方 が 将 来 の 受 給 者 の 給 付 水 準 を 相 対 的 に 高 く 維 持 することができる と 指 摘 がなされている そこで 平 成 26 年 財 政 検 証 の 経 済 前 提 を 基 礎 とし 物 価 賃 金 に 景 気 の 波 (4 年 周 期 変 動 幅 ±1.2%)による 変 動 を 加 えて 経 済 前 提 を 仮 定 し 物 価 賃 金 の 伸 びが 低 い 場 合 に おいてもマクロ 経 済 スライドを 発 動 する いわゆるフル 発 動 を 行 う 仕 組 みとした 場 合 の 試 算 を 行 っている 結 果 については 図 表 8のとおりである ケースCにおいては 大 きな 効 果 は 見 られな いが ケースGにおいては 所 得 代 替 率 について+5.0%の 効 果 が 見 られ 基 礎 年 金 部 分 の 調 整 期 間 については22 年 短 縮 することができる 物 価 上 昇 率 及 び 賃 金 上 昇 率 が 低 いほど 現 行 のマクロ 経 済 スライドを 発 動 できない 期 間 が 増 えることから 経 済 前 提 が 悪 いケース ほどマクロ 経 済 スライドのフル 発 動 による 所 得 代 替 率 の 改 善 効 果 があると 言 える 39 このほか 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 の 出 産 前 後 の 保 険 料 免 除 に 関 しても 年 金 制 度 における 次 世 代 育 成 への 配 慮 を 一 層 強 化 する 観 点 からの 対 応 が 求 められると 指 摘 されている 39

図 表 8 物 価 賃 金 の 伸 びが 低 い 場 合 でもマクロ 経 済 スライドによる 調 整 が フルに 発 動 される 仕 組 みとした 場 合 ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 しの 関 連 試 算 -オプション 試 算 結 果 - ( 平 26.6.3) (2)オプション 試 算 Ⅱ 被 用 者 保 険 の 更 なる 適 用 拡 大 国 民 会 議 報 告 書 において 国 民 年 金 被 保 険 者 の 中 に 被 用 者 性 を 有 する 被 保 険 者 が 増 加 し ていることが 本 来 被 用 者 として 必 要 な 給 付 が 保 証 されない 保 険 料 が 納 められないとい うゆがみを 生 じさせている と 指 摘 がなされている そこで 1220 万 人 ベース 21,200 万 人 ベースの2 通 りで 適 用 拡 大 を 行 った 場 合 につい て マクロ 経 済 スライドによる 調 整 期 間 や 調 整 終 了 後 の 給 付 水 準 を 試 算 した 40 220 万 人 ベ ースについては 月 5.8 万 円 以 上 の 賃 金 収 入 のある 所 定 労 働 時 間 週 20 時 間 以 上 の 短 時 間 労 働 者 へ 適 用 拡 大 をした 場 合 が 想 定 されている ただし 月 収 5.8 万 円 未 満 の 被 用 者 学 生 雇 用 期 間 1 年 未 満 の 者 非 適 用 事 業 所 の 被 用 者 については 対 象 外 とした 1,200 万 人 ベース については 月 5.8 万 円 の 賃 金 収 入 のある 全 ての 被 用 者 へ 適 用 拡 大 を 行 った 場 合 が 想 定 され ており 学 生 雇 用 期 間 1 年 未 満 の 者 非 適 用 事 業 所 の 被 用 者 についても 適 用 拡 大 の 対 象 とされている いずれの 場 合 も 平 成 28 年 10 月 に 適 用 拡 大 (25 万 人 ベース) 41 を 実 施 した 後 平 成 36 年 4 月 に 更 なる 適 用 拡 大 を 実 施 した 場 合 を 想 定 している 結 果 については 図 表 9のとおりである 1220 万 人 ベースの 適 用 拡 大 の 場 合 42 は 図 表 91のとおり 大 きな 効 果 は 見 られなかった 21,200 万 人 ベースの 適 用 拡 大 の 場 合 43 は 図 表 92のとおり 所 得 代 替 率 について+3.9%~+6.9%の 効 果 が 見 られるとともに 調 整 期 間 も7~14 年 間 短 縮 することができるなど 大 きな 財 政 効 果 が 見 られ 特 に 基 礎 年 金 部 40 併 せて 第 3 号 被 保 険 者 の 人 数 や 世 代 別 の 平 均 的 な 第 3 号 被 保 険 者 期 間 への 影 響 についても 試 算 がなされて いる 41 年 金 機 能 強 化 法 により 平 成 28 年 10 月 から 1 週 20 時 間 以 上 2 月 額 賃 金 8.8 万 円 以 上 ( 年 収 106 万 円 以 上 ) 3 勤 務 期 間 1 年 以 上 見 込 み 4 学 生 は 適 用 除 外 5 従 業 員 501 人 以 上 の 企 業 の 範 囲 で 適 用 拡 大 がなされるこ ととなった 42 経 済 前 提 がケースC E G Hの 場 合 43 経 済 前 提 がケースC E G Hの 場 合 40

分 の 所 得 代 替 率 が 上 昇 した これは 短 時 間 労 働 者 が 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 から 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 へ 移 る 44 ため 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 数 が 減 少 することによるものだ と 考 えられる また 報 酬 比 例 部 分 の 所 得 代 替 率 に 対 する 影 響 が 小 さい 理 由 は 1 国 民 年 金 第 3 号 被 保 険 者 から 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 へ 移 るため 保 険 料 収 入 が 増 加 すること 2 非 適 用 事 業 所 におけるフルタイム 労 働 者 に 対 しても 適 用 拡 大 がなされ 保 険 料 収 入 が 増 加 することによるものだと 考 えられる 図 表 9 被 用 者 保 険 の 更 なる 適 用 拡 大 を 行 った 場 合 1 週 20 時 間 以 上 の 短 時 間 労 働 者 を 適 用 ( 約 220 万 人 拡 大 ) 2 一 定 以 上 の 収 入 のある 全 ての 雇 用 者 を 適 用 ( 約 1,200 万 人 拡 大 ) ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 しの 関 連 試 算 -オプション 試 算 結 果 - ( 平 26.6.3) 44 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 から 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 へ 移 行 する 者 は600 万 人 国 民 年 金 第 3 号 被 保 険 者 か ら 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 へ 移 行 する 者 は250 万 人 非 加 入 から 国 民 年 金 第 2 号 被 保 険 者 へ 移 行 する 者 は350 万 人 と 計 算 されている 非 加 入 については 20 歳 未 満 の 労 働 者 や60 歳 以 上 の 労 働 者 等 が 含 まれる 41

(3)オプション 試 算 Ⅲ 保 険 料 拠 出 期 間 と 受 給 開 始 年 齢 の 選 択 制 国 民 会 議 報 告 書 において 高 齢 化 が 進 展 し 生 涯 現 役 社 会 に 向 けた 取 組 が 進 められてい く 中 で 高 齢 者 の 働 き 方 と 年 金 受 給 の 在 り 方 をどう 組 み 合 わせるかについても 今 後 の 検 討 課 題 となってくる 今 後 支 給 開 始 年 齢 の 問 題 は 年 金 財 政 上 の 観 点 というよりは 平 均 寿 命 が 延 び 個 々 人 の 人 生 が 長 期 化 する 中 で ミクロ 的 には 一 人 一 人 の 人 生 における 就 労 期 間 と 引 退 期 間 のバランスをどう 考 えるか マクロ 的 には 社 会 全 体 が 高 齢 化 する 中 で の 就 労 人 口 と 非 就 労 人 口 のバランスをどう 考 えるかという 問 題 として 検 討 されるべきもの である なお この 検 討 に 当 たっては 職 務 の 内 容 と 高 齢 者 の 対 応 可 能 性 等 も 考 慮 し 高 齢 者 の 就 業 機 会 の 幅 を 広 げることに 取 り 組 むとともに 多 様 な 就 業 と 引 退 への 移 行 に 対 応 できる 弾 力 的 な 年 金 受 給 の 在 り 方 について 在 職 老 齢 年 金 も 一 体 として 検 討 を 進 めるべ きである と 指 摘 がなされている そこで 高 齢 期 の 就 労 による 保 険 料 拠 出 がより 年 金 額 に 反 映 するよう 1 基 礎 年 金 給 付 算 定 の 時 の 納 付 年 数 の 上 限 を 現 在 の40 年 (20~60 歳 )から45 年 (20~65 歳 )に 延 長 し 納 付 年 数 が 延 びた 分 に 合 わせて 基 礎 年 金 が 増 額 する 仕 組 みに 変 更 し 265 歳 以 上 の 在 職 老 齢 年 金 45 を 廃 止 するという 制 度 改 正 を 行 った 場 合 を 試 算 した 46 また これらの 制 度 改 正 を 前 提 とし 65 歳 を 超 えて 就 労 した 者 が 厚 生 年 金 の 適 用 となり これに 伴 い 受 給 開 始 年 齢 の 繰 下 げを 選 択 した 場 合 給 付 水 準 がどれだけ 上 昇 するかについても 試 算 した 47 結 果 については 図 表 10のとおりである 所 得 代 替 率 について+6.0%~+6.6%の 効 果 が 見 られた 48 給 付 水 準 調 整 終 了 年 度 については 基 礎 年 金 部 分 が 短 縮 できる 一 方 で 報 酬 比 例 部 分 が 延 びることが 示 された 45 在 職 老 齢 年 金 制 度 とは 賃 金 と 老 齢 厚 生 年 金 ( 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 含 む )の 合 計 額 が 一 定 額 を 超 える と 老 齢 厚 生 年 金 が 全 部 又 は 一 部 支 給 停 止 される 制 度 のことである 具 体 的 には 60~64 歳 の 年 金 受 給 者 につ いては 賃 金 と 特 別 支 給 の 老 齢 厚 生 年 金 ( 定 額 部 分 含 む )の 合 計 額 が28 万 円 を 上 回 る 場 合 賃 金 の 増 加 2 に 対 し 年 金 額 1を 停 止 し 賃 金 が46 万 円 を 超 える 場 合 賃 金 が 増 加 した 分 だけ 年 金 額 を 停 止 する 65 歳 以 上 の 年 金 受 給 者 については 賃 金 と 老 齢 厚 生 年 金 ( 報 酬 比 例 部 分 )の 合 計 額 が46 万 円 を 超 える 場 合 賃 金 の 増 加 2に 対 し 年 金 額 1を 停 止 する 老 齢 基 礎 年 金 は 全 額 支 給 される 46 前 提 は 以 下 のとおり 1 基 礎 年 金 の 拠 出 金 の 対 象 年 齢 ( 現 行 20~60 歳 の40 年 間 )を 平 成 30 年 度 より 3 年 毎 に1 年 ずつ 拡 大 し 平 成 42 年 度 に20~65 歳 の45 年 間 としている 2 拠 出 対 象 年 齢 の 拡 大 とともに 国 民 年 金 の 被 保 険 者 年 齢 も 拡 大 し 平 成 42 年 度 以 降 は 20~65 歳 の 全 ての 国 民 が 第 1 号 ~ 第 3 号 のいずれかの 被 保 険 者 となる 3 費 用 の 負 担 や 免 除 を 受 けた 場 合 等 の 給 付 額 の 算 定 方 法 は 現 行 基 礎 年 金 の 仕 組 みを 踏 襲 ( 低 所 得 時 には 申 請 に 基 づき 免 除 制 度 等 を 適 用 し 免 除 期 間 分 については 国 庫 負 担 分 のみを 保 障 未 納 期 間 につ いては 給 付 なし ) 465 歳 以 上 の 在 職 老 齢 年 金 制 度 による 支 給 停 止 の 仕 組 みを 廃 止 5スライド 調 整 率 は 現 行 の 仕 組 みと 同 じ 率 ただし 被 保 険 者 年 齢 の 拡 大 に 伴 う 被 保 険 者 数 の 増 加 を 使 用 660 歳 代 前 半 の 国 民 年 金 第 1 号 被 保 険 者 の 納 付 行 動 については 50 歳 代 後 半 の 状 況 を 延 長 して 設 定 ( 納 付 率 80% 程 度 ) 47 現 在 の 老 齢 厚 生 年 金 の 支 給 開 始 年 齢 については 基 礎 年 金 部 分 は 平 成 13 年 度 から 平 成 25 年 度 までかけて60 歳 から65 歳 に 既 に 引 き 上 がっており 報 酬 比 例 部 分 は 平 成 25 年 度 から 平 成 37 年 度 までかけて 段 階 的 に65 歳 に 引 き 上 げられるスケジュールとなっている ただし 女 性 の 引 上 げスケジュールはそれぞれ5 年 遅 れとなっ ている 48 経 済 前 提 がケースC E G Hの 場 合 42

図 表 10 高 齢 期 の 保 険 料 拠 出 がより 年 金 額 に 反 映 する 仕 組 みとした 場 合 ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 しの 関 連 試 算 -オプション 試 算 結 果 - ( 平 26.6.3) また 退 職 年 齢 及 び 受 給 開 始 年 齢 の 繰 下 げに 合 わせて 保 険 料 拠 出 期 間 を 延 ばした 場 合 の 所 得 代 替 率 の 結 果 は 図 表 11のとおりである 50 年 間 の 保 険 料 拠 出 期 間 に 延 ばした 場 合 49 保 険 料 拠 出 期 間 が45 年 の 場 合 と 比 較 して +23.8%~+28.6%の 所 得 代 替 率 の 効 果 が 見 ら れ 繰 下 げの 効 果 が 大 きいことが 示 された 図 表 11 退 職 年 齢 と 受 給 開 始 年 齢 を65~70 歳 とした 場 合 の 給 付 水 準 の 変 化 ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 国 民 年 金 及 び 厚 生 年 金 に 係 る 財 政 の 現 況 及 び 見 通 しの 関 連 試 算 -オプション 試 算 結 果 - ( 平 26.6.3) 49 経 済 前 提 がケースC E G Hの 場 合 43

しかしながら 保 険 料 拠 出 期 間 を 延 ばした 場 合 納 付 年 数 が 延 びた 分 に 合 わせて 基 礎 年 金 が 増 額 するため 所 得 代 替 率 が 改 善 する 一 方 で 国 庫 負 担 が 増 えることに 留 意 する 必 要 がある 図 表 12が 現 行 制 度 とオプション 試 算 Ⅲにおける 基 礎 年 金 の 財 政 見 通 しの 比 較 で ある 平 成 26 年 度 価 格 で1 年 間 当 たり 最 大 1.2 兆 円 の 国 庫 負 担 の 増 ( 図 表 12における 平 成 67 年 度 及 び 平 成 72 年 度 )となる 図 表 12 現 行 制 度 とオプション 試 算 Ⅲにおける 基 礎 年 金 の 財 政 見 通 しの 比 較 ( 出 所 ) 厚 生 労 働 省 高 齢 期 の 就 労 と 年 金 受 給 の 在 り 方 第 25 回 社 会 保 障 審 議 会 年 金 部 会 資 料 ( 平 26.10.1) 7. 平 成 26 年 財 政 検 証 に 対 する 評 価 (1) 総 合 的 な 評 価 今 回 の 財 政 検 証 では 経 済 の 再 生 と 労 働 市 場 の 参 画 が 進 めば 将 来 的 に 所 得 代 替 率 50% の 給 付 水 準 を 確 保 できることが 示 された 経 済 成 長 とともに 労 働 環 境 の 整 備 を 進 め 女 性 や 高 齢 者 の 労 働 参 加 の 促 進 を 実 現 することが 年 金 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 める 意 味 でも 給 付 水 準 を 確 保 する 意 味 でも 重 要 となってくる 一 方 で 経 済 再 生 ケース(ケースA~E) においても マクロ 経 済 スライドによる 基 礎 年 金 の 調 整 に30 年 近 くを 要 するため 基 礎 年 金 の 水 準 が 相 対 的 に 大 きく 低 下 する 問 題 が 明 らかとなった 今 回 初 めて 実 施 した3つのオ プション 試 算 においては いずれも 年 金 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 給 付 水 準 を 確 保 する 上 で プラスの 効 果 を 持 つことが 確 認 された (2) 経 済 前 提 に 対 する 評 価 今 回 の 財 政 検 証 においては 厚 生 労 働 省 によると 幅 広 い 経 済 前 提 を 設 定 したと 説 明 さ れており 基 本 ケースも 設 定 されていない この 点 については 8 通 りの 経 済 前 提 の 中 で 特 に 好 循 環 ケースを 広 く5ケースも 設 定 し 所 得 代 替 率 が 目 標 の50%を 実 現 できないケ ースは3つに 抑 え いかにも 年 金 水 準 の 維 持 が 可 能 であるかに 誘 導 している 点 が 問 題 であ 44

る という 指 摘 50 や 基 本 ケースを 設 定 せず 全 てのケースを 並 列 としたことについて 検 証 結 果 に 対 する 批 判 を 和 らげる 狙 いがある との 指 摘 51 も 見 られた また 平 成 21 年 財 政 検 証 において 名 目 運 用 利 回 りの 設 定 52 が 高 すぎるといった 批 判 がな されていたが 平 成 26 年 財 政 検 証 におけるケースEの 名 目 運 用 利 回 りは4.2%であり 今 回 の 財 政 検 証 においても 経 済 前 提 が 甘 いといった 指 摘 がある TFP 上 昇 率 の 設 定 については 0.5%から1.8%と 幅 を 持 って 設 定 されているが ケー スAのTFP 上 昇 率 1.8%という 値 はバブル 期 の 水 準 に 相 当 する 53 とされ TFP 上 昇 率 の 設 定 が 甘 いのではないかとの 指 摘 もある 54 なお 平 成 21 年 財 政 検 証 のTFP 上 昇 率 の 設 定 は 基 本 ケースにおいて1.0% 経 済 高 位 ケースにおいて1.3% 経 済 低 位 ケースで0.7%と されていた また 経 済 前 提 として 名 目 運 用 利 回 りから 名 目 賃 金 上 昇 率 を 差 し 引 いた 実 質 的 な 運 用 利 回 り(スプレッド)が 示 された 55 ことに 評 価 の 声 もある 56 一 方 高 いスプレッドの 設 定 は 実 質 金 利 が 実 質 経 済 成 長 率 を 大 きく 上 回 っている 状 況 を 意 味 し 国 の 財 政 破 綻 につながり かねないことから 高 いスプレッドと 経 済 再 生 シナリオとの 整 合 性 について 疑 問 も 呈 され ている 57 (3) 所 得 代 替 率 の 在 り 方 財 政 検 証 において 所 得 代 替 率 は 年 金 受 給 開 始 時 点 における 厚 生 年 金 の 標 準 的 な 年 金 受 給 世 帯 の 年 金 額 の 現 役 男 子 の 平 均 手 取 り 収 入 額 に 対 する 比 率 と 定 義 されているが 国 際 的 な 基 準 があるわけではない また 厚 生 年 金 の 標 準 的 な 年 金 受 給 世 帯 は サラリーマン の 夫 が40 年 間 厚 生 年 金 の 被 保 険 者 であり 妻 は40 年 間 専 業 主 婦 であるとされているが 専 業 主 婦 世 帯 は 減 少 を 続 けており それに 対 して 共 働 き 世 帯 が 増 加 を 続 け 平 成 4 年 に 初 め て 逆 転 し 平 成 9 年 以 降 においては 共 働 き 世 帯 数 が 専 業 主 婦 世 帯 を 上 回 っている 58 また 平 成 22 年 公 的 年 金 加 入 状 況 等 調 査 によると 国 民 年 金 第 3 号 被 保 険 者 における 未 就 業 者 の 割 合 は57.0%である 一 方 非 正 規 雇 用 者 の 割 合 は39.0% 正 規 雇 用 者 の 割 合 は1.4%となっ ている 厚 生 年 金 の 標 準 的 な 年 金 受 給 世 帯 とは 何 かが 問 われている (まつの はるな) 50 里 見 賢 治 年 金 財 政 検 証 結 果 と 公 的 年 金 制 度 の 将 来 賃 金 と 社 会 保 障 No.1618(2014.9) 51 星 野 卓 也 越 前 智 亜 紀 2014 年 財 政 検 証 結 果 のポイント 整 理 Economic Trends マクロ 経 済 分 析 レポート ( 第 一 生 命 経 済 研 究 所 ) (2014.6.6) 52 基 本 ケースにおける 名 目 運 用 利 回 りが4.1%と 設 定 された 53 川 北 英 隆 財 政 検 証 が 前 提 とする 生 産 性 上 昇 率 は 楽 観 的 すぎる 週 刊 金 融 財 政 事 情 No.3084(2014.8.18) 54 里 見 脚 注 48を 参 照 55 通 常 の 経 済 下 における 年 金 額 の 改 定 ( 図 表 4のⅠ)がなされれば 給 付 も 負 担 も 賃 金 に 連 動 することとなる ため 名 目 運 用 利 回 りが 名 目 賃 金 上 昇 率 を 上 回 る 分 (スプレッド)が 年 金 財 政 上 の 実 質 的 な 収 益 となるこ とから スプレッドを 用 いて 年 金 財 政 への 影 響 を 測 るのが 合 理 的 とされている 56 西 沢 和 彦 年 金 財 政 検 証 における 経 済 前 提 の 見 方 Research Focus( 日 本 総 研 ) No.3084(2014.5.2) 57 小 塩 隆 士 公 的 年 金 制 度 の 課 題 と 未 来 週 刊 社 会 保 障 No.2788(2014.8.11) 58 内 閣 府 男 女 共 同 参 画 白 書 平 成 26 年 版 によると 平 成 25 年 においては 共 働 き 世 帯 が1,065 万 世 帯 専 業 主 婦 世 帯 が745 万 世 帯 となっている 45