[ 本 稿 に 関 するお 問 い 合 わせ 先 ] みずほ 総 合 研 究 所 株 式 会 社 調 査 本 部 市 場 調 査 部 井 上 淳 TEL(3) 経 済 調 査 部 内 藤 啓 介



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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

 

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

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(1) 率 等 一 覧 ( 平 成 26 年 度 ) 目 課 客 体 及 び 納 義 務 者 課 標 準 及 び 率 法 内 に 住 所 を 有 する ( 均 等 割 所 得 割 ) 内 に 事 務 所 事 業 所 又 は 家 屋 敷 を 有 する で 内 に 住 所 を 有 し ないもの( 均 等

第25回税制調査会 総25-1

経 常 収 支 差 引 額 の 状 況 平 成 22 年 度 平 成 21 年 度 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 4,154 億 円 5,234 億 円 1,080 億 円 改 善 赤 字 組 合 の 赤 字 総 額 4,836 億 円 5,636 億 円 800 億 円 減

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - H25年度の概要

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損 益 計 算 書 自. 平 成 26 年 4 月 1 日 至. 平 成 27 年 3 月 31 日 科 目 内 訳 金 額 千 円 千 円 営 業 収 益 6,167,402 委 託 者 報 酬 4,328,295 運 用 受 託 報 酬 1,839,106 営 業 費 用 3,911,389 一

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公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

経 常 収 支 差 引 額 等 の 状 況 平 成 26 年 度 予 算 早 期 集 計 平 成 25 年 度 予 算 対 前 年 度 比 較 経 常 収 支 差 引 額 3,689 億 円 4,597 億 円 908 億 円 減 少 赤 字 組 合 数 1,114 組 合 1,180 組 合 66

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賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

市 町 村 税 の 概 況 市 町 村 税 の 概 況 は 平 成 25 年 度 地 方 財 政 状 況 調 査 平 成 26 年 度 市 町 村 税 の 課 税 状 況 等 の 調 及 び 平 成 26 年 度 固 定 資 産 の 価 格 等 の 概 要 調 書 等 報 告 書 等 の 資 料 に

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 について 概 要 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 き 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている

連結計算書

賦課の根拠となった法律及び条例(その2)

平成16年度

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

も く じ 1 税 源 移 譲 1 2 何 が 変 わったのか 改 正 の 3 つ の ポイント ポイント1 国 から 地 方 へ 3 兆 円 規 模 の 税 源 が 移 譲 される 2 ポイント2 個 人 住 民 税 の 税 率 構 造 が 一 律 10%に 変 わる 3 ポイント3 個 々の 納

職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 ( 平 成 年 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 福 岡 県 技 能 労 務 職 歳 1,19,98 9,9 歳 8,

Microsoft Word - 【溶け込み】【修正】第2章~第4章

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

16 日本学生支援機構

公表表紙

減 少 率 ) と 平 均 余 命 の 伸 びを 勘 案 した 一 定 率 (0.3%) の 合 計 である スライド 調 整 率 を 差 し 引 いて 年 金 額 の 改 定 が 行 われる( 図 表 ) ただし マクロ 経 済 スライドが 完 全 に 実 施 されるのは 賃 金 や 物 価 があ

ニュースリリース

個 人 所 得 課 税 ~ 住 宅 ローン 控 除 等 の 適 用 期 限 の 延 長 2 4. 既 存 住 宅 に 係 る 特 定 の 改 修 工 事 をした 場 合 の 所 得 税 額 の 特 別 控 除 居 住 年 省 エネ 改 修 工 事 控 除 限 度 額 バリアフリー 改 修 工 事 平

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1 ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 の 事 業 税 の 課 税 について ガス 供 給 業 を 行 う 法 人 は 収 入 金 額 を 課 税 標 準 として 収 入 割 の 申 告 となります ( 法 72 条 の2 72 条 の 12 第 2 号 ) ガス 供 給 業 とその 他 の 事

第316回取締役会議案

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

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Ⅲ 相 続 財 産 の 分 割 に 関 する 確 認 事 項 1 遺 言 がありますか? 有 遺 言 公 正 証 書 又 は 家 公 証 人 役 場 等 要 月 日 無 庭 裁 判 所 の 検 認 を 受 否 ( 通 ) けた 遺 言 書 2 死 因 贈 与 があります 有 贈 与 契 約 書 要

損 益 計 算 書 ( 自 平 成 25 年 4 月 1 日 至 平 成 26 年 3 月 31 日 ) ( 単 位 : 百 万 円 ) 科 目 金 額 営 業 収 益 75,917 取 引 参 加 料 金 39,032 上 場 関 係 収 入 11,772 情 報 関 係 収 入 13,352 そ

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

1 特 別 会 計 財 務 書 類 の 検 査 特 別 会 計 に 関 する 法 律 ( 平 成 19 年 法 律 第 23 号 以 下 法 という ) 第 19 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 所 管 大 臣 は 毎 会 計 年 度 その 管 理 する 特 別 会 計 について 資 産

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別紙3

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Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 Ⅰ 人 口 の 現 状 分 析 1 人

1 予 算 の 姿 ( 平 成 25 当 初 予 算 ) 長 野 県 財 政 の 状 況 H 現 在 長 野 県 の 予 算 を 歳 入 面 から 見 ると 自 主 財 源 の 根 幹 である 県 税 が 全 体 の5 分 の1 程 度 しかなく 地 方 交 付 税 や 国 庫 支

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科 売 上 原 価 売 上 総 利 益 損 益 計 算 書 ( 自 平 成 26 年 4 月 1 日 至 平 成 27 年 3 月 31 日 ) 目 売 上 高 販 売 費 及 び 一 般 管 理 費 営 業 利 益 営 業 外 収 益 受 取 保 険 金 受 取 支 援 金 補 助 金 収 入 保

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

2014_06_04 相続税関係セミナー [互換モード]

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) ( 単 位 : ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 161,7 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

情 報 通 信 機 器 等 に 係 る 繰 越 税 額 控 除 限 度 超 過 額 の 計 算 上 控 除 される 金 額 に 関 する 明 細 書 ( 付 表 ) 政 党 等 寄 附 金 特 別 控 除 額 の 計 算 明 細 書 国 庫 補 助 金 等 の 総 収 入 金 額 不 算 入 に 関

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就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

子ども手当見直しによる家計への影響~高所得者層の可処分所得は大幅減少に

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事 業 税 の 外 形 標 準 課 税 事 業 税 は 都 道 府 県 が 所 得 ( 利 益 )に 対 して 課 税 します 1. 個 人 事 業 税 業 種 区 分 税 率 ( 標 準 税 率 ) 第 1 種 事 業 ( 物 品 販 売 業 製 造 業 金 銭 貸 付 業 飲 食 店 業 不 動

弁護士報酬規定(抜粋)

技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

m07 北見工業大学 様式①

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目 次 1 報 酬 給 与 額 事 例 1 報 酬 給 与 額 に 含 める 賞 与 の 金 額 が 誤 っていた 事 例 1 事 例 2 役 員 退 職 金 ( 役 員 退 職 慰 労 金 )を 報 酬 給 与 額 として 申 告 して いなかった 事 例 1 事 例 3 持 株 奨 励 金 を

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国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

種 類 控 除 額 小 規 模 企 業 共 済 等 掛 金 控 除 生 命 保 険 料 控 除 地 震 保 険 料 控 除 支 払 った 小 規 模 共 済 心 身 障 害 者 扶 養 共 済 の 掛 金 の 金 額 生 命 保 険 料 控 除 額 = 一 般 生 命 保 険 料 控 除 額 + 個

平成22年度

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

(5) 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しの 実 施 状 況 概 要 国 の 給 与 制 度 の 総 合 的 見 直 しにおいては 俸 給 表 の 水 準 の 平 均 2の 引 下 げ 及 び 地 域 手 当 の 支 給 割 合 の 見 直 し 等 に 取 り 組 むとされている 総 合 的

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

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贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 は 内 需 活 性 化 の 切 り 札 となるか 21 年 2 月 15 日 発 行

[ 本 稿 に 関 するお 問 い 合 わせ 先 ] みずほ 総 合 研 究 所 株 式 会 社 調 査 本 部 市 場 調 査 部 井 上 淳 jun.inoue@mizuho-ri.co.jp TEL(3)3591-1197 経 済 調 査 部 内 藤 啓 介 keisuke.naitou@mizuho-ri.co.jp TEL(3)3591-1418 本 資 料 は 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 商 品 の 勧 誘 を 目 的 としたものではありません 本 資 料 は 当 社 が 信 頼 できると 判 断 した 各 種 データに 基 づき 作 成 されておりますが その 正 確 性 確 実 性 を 保 証 するものではありませ ん また 本 資 料 に 記 載 された 内 容 は 予 告 なしに 変 更 されることもあります i

要 旨 1. わが 国 の 経 済 は 世 界 金 融 危 機 に 伴 う 急 激 な 調 整 を 経 て 復 調 過 程 に 入 り 始 めたとみら れるが 厳 しい 雇 用 情 勢 明 るさの 見 えない 所 得 環 境 先 行 き 不 安 の 広 がりなど 消 費 を 下 押 しする 要 因 は 多 く デフレ 対 策 が 急 務 となっている その 一 方 で 一 昨 年 からの 税 収 の 落 ち 込 みや 経 済 対 策 などによって 財 政 状 況 は 悪 化 の 一 途 を 辿 っており デフレ 対 策 にも 財 政 コストを 膨 らませない 工 夫 が 求 められるようになっている そうしたなか 民 主 党 政 権 は 2 年 連 続 となる 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 に 対 する 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 ( 以 下 非 課 税 枠 拡 大 )を 決 定 した 高 齢 者 の 保 有 する 多 額 の 個 人 金 融 資 産 を 現 役 世 代 へ 移 転 させ 内 需 の 活 性 化 につなげるのが 目 的 だ 本 稿 では その 贈 与 税 減 税 の 効 果 を 試 算 するとともに より 内 需 活 性 化 に 資 する 非 課 税 枠 拡 大 の 手 法 を 検 討 した 2. 資 金 循 環 統 計 ( 日 本 銀 行 )によれば 家 計 の 保 有 する 金 融 資 産 は 約 1,4 兆 円 とさ れるが そこから 年 金 準 備 金 や 個 人 事 業 主 の 事 業 性 資 金 といった 贈 与 の 対 象 となりに くい 資 産 や 家 計 の 抱 える 負 債 を 差 し 引 いた 純 金 融 資 産 を 家 計 調 査 ( 総 務 省 )から 試 算 すると 6 兆 円 程 度 となり そのうち 65 歳 以 上 の 高 齢 者 が 保 有 する 純 金 融 資 産 は 約 36 兆 円 と 試 算 できる 約 36 兆 円 の 個 人 金 融 資 産 の 1 割 が 現 役 世 代 の 消 費 に 回 るだ けでも 名 目 GDP を 約 7% 押 し 上 げるインパクトを 持 つ 3. 今 回 の 住 宅 取 得 資 金 に 関 わる 非 課 税 枠 拡 大 は そうした 高 齢 者 資 産 を 活 用 する 施 策 と 位 置 づけられるが その 効 果 については 次 のように 考 えられる 贈 与 を 行 なう 場 合 贈 与 税 の 課 税 方 式 として 相 続 時 精 算 課 税 と 暦 年 課 税 のいずれかを 選 択 することができ る このうち 相 続 時 精 算 課 税 については 既 に 平 均 住 宅 購 入 額 を 上 回 る 非 課 税 枠 が 設 定 されており 今 回 の 非 課 税 枠 拡 大 で 贈 与 が 増 加 する 効 果 はほとんど 期 待 できない このため 非 課 税 枠 拡 大 の 贈 与 促 進 効 果 は 暦 年 課 税 を 利 用 するケースが 中 心 に なると 考 えられる 過 去 の 経 験 を 踏 まえれば 21 年 の 暦 年 課 税 での 住 宅 取 得 資 金 の 平 均 贈 与 額 は 住 宅 取 得 時 の 自 己 資 金 額 程 度 (4 代 で 約 1,2 万 円 )まで 増 加 する 可 能 性 が 高 く また 贈 与 件 数 も 過 去 の 同 様 のケースを 参 考 にすると 最 大 で 3.9 万 件 増 加 する 可 能 性 があると 試 算 できる 4. 非 課 税 枠 拡 大 によって 住 宅 購 入 が 新 たに 3.9 万 件 増 加 すれば 21 年 の 贈 与 は 最 大 で 約 4,7 億 円 増 加 し 住 宅 投 資 は 1.3 兆 円 増 加 する 可 能 性 がある 新 たな 住 宅 購 入 の 決 定 によって 住 宅 ローンの 返 済 負 担 が 増 すことによる 消 費 の 抑 制 効 果 ( 最 大 23 億 円 程 度 )を 見 込 んだとしても 一 定 の 需 要 拡 大 効 果 が 期 待 できる この 3.9 万 件 の 住 宅 購 入 の 増 加 がもたらす 名 目 住 宅 投 資 の 押 上 げ 効 果 は+1.3 兆 円 程 度 であるが 経 済 全 体 としては 名 目 GDP を+.3% 押 上 げる 程 度 の 効 果 にとどまる その 上 将 来 不 安 な どの 下 押 し 要 因 から そうした 潜 在 的 な 効 果 も 十 分 に 発 揮 されない 可 能 性 もある なお ii

贈 与 税 減 税 で 懸 念 される 資 産 格 差 の 固 定 化 を 助 長 させるといった 副 作 用 については 21 年 の 非 課 税 枠 拡 大 が 持 つ 節 税 効 果 が 高 額 資 産 保 有 者 の 相 続 コストの 実 効 税 率 を 最 大 2% 低 下 させる 程 度 でしかないことから 限 定 的 と 考 えられる 5. このように 今 回 の 非 課 税 枠 拡 大 は 資 産 格 差 の 固 定 化 を 助 長 するという 副 作 用 は 小 さいものの 内 需 活 性 化 策 としては 力 不 足 の 感 が 否 めない 高 齢 者 の 金 融 資 産 を 現 役 世 帯 へ 移 転 させ 内 需 の 活 性 化 を 図 るには 資 産 格 差 の 固 定 化 といった 副 作 用 を 生 まないように 配 慮 しつつ さらに 大 胆 な 非 課 税 枠 の 拡 充 が 必 要 だと 考 えられる 具 体 的 には 1 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 を 一 般 的 な 控 除 と 別 枠 にする 2 支 出 する 場 合 に 限 り 使 途 は 自 由 とする 条 件 をつけた 上 で 暦 年 課 税 の 年 間 の 非 課 税 枠 ( 基 礎 控 除 )を 大 幅 に 拡 大 させる 3 使 途 を 住 宅 ローンの 返 済 資 金 とする 場 合 に 限 り 高 額 の 非 課 税 枠 を 設 ける といった 拡 充 案 である 6. なかでも 住 宅 ローンの 返 済 資 金 を 非 課 税 にするケースについては より 大 きな 効 果 が 期 待 できる 家 計 の 住 宅 ローン 残 高 は 28 年 末 時 点 で 約 178 兆 円 あり 一 定 の 仮 定 の もとで 試 算 すると その 返 済 負 担 は 年 間 9 兆 円 に 達 することになる 年 9 兆 円 の 返 済 負 担 が 軽 減 されれば 同 額 の 可 処 分 所 得 の 増 加 によって 年 間 約 5 兆 円 の 消 費 増 につな がる 可 能 性 がある 現 実 には 178 兆 円 全 てが 贈 与 で 返 済 されることにはならないであろ うが 実 質 債 務 負 担 が 年 々 増 加 するデフレ 下 で 消 費 支 出 の 拡 大 と 同 時 に 消 費 者 マ インドを 萎 縮 させている 要 因 のひとつである 家 計 の 債 務 負 担 を 軽 減 させることのできる この 提 案 はデフレ 対 策 の 有 効 な 手 立 てとなろう iii

目 次 1 はじめに...1 2 高 齢 者 の 資 産 とその 活 用 の 意 義...1 (1) 個 人 金 融 資 産 を 活 用 した 内 需 活 性 化 策 の 必 要 性... 1 (2) 注 目 が 集 まる 高 齢 者 の 金 融 資 産... 2 3 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大...9 4 非 課 税 枠 の 拡 大 で 贈 与 は 増 加 するか...1 (1) 贈 与 件 数 の 押 上 げ 効 果... 1 (2) 平 均 贈 与 額 の 押 上 げ 効 果... 15 (3) 21 年 の 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果... 17 5 非 課 税 枠 拡 大 の 経 済 効 果...18 (1) 住 宅 投 資 と 消 費 支 出 に 与 える 効 果... 18 (2) 非 課 税 枠 拡 大 は 格 差 の 固 定 化 を 助 長 するか... 25 (3) 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 を 阻 む 将 来 不 安... 27 6 高 齢 者 資 産 の 活 用 に 向 けて...29 (1) 副 作 用 の 大 きい 使 途 制 限 の 廃 止 と 恒 久 化... 29 (2) 検 討 の 余 地 がある 使 途 要 件 の 緩 和... 31 (3) より 現 実 的 な 住 宅 ローン 返 済 資 金 の 非 課 税 贈 与... 32 7 おわりに...34 iv

1 はじめに 世 界 金 融 危 機 によって 景 気 後 退 に 見 舞 われた 日 本 経 済 にもようやく 景 気 の 底 打 ち 感 が 見 られるようになり 生 産 活 動 も 依 然 低 水 準 ながら 徐 々に 回 復 しつつある しかし その 要 因 をみると 景 気 対 策 の 効 果 や 輸 出 の 回 復 によるところが 大 きい 日 本 経 済 の 持 ち 直 しは 依 然 自 律 的 な 成 長 とは 言 い 難 く 先 行 きについても 二 番 底 が 懸 念 される 状 況 にある 日 本 経 済 を 自 律 的 な 成 長 へ 導 くためには 将 来 不 安 の 解 消 を 図 り 過 度 に 弱 含 んだ 家 計 のマインドを 回 復 させることが 重 要 だと 考 えられる また より 根 本 的 な 問 題 としては 中 長 期 的 に 供 給 力 を 潜 在 需 要 のある 産 業 へシフトさせていくこ とが 必 要 である しかし そうした 中 長 期 的 な 自 律 成 長 過 程 に 日 本 経 済 を 導 いて いくには まず 足 元 のデフレ 圧 力 を 緩 和 し 景 気 の 下 支 えを 図 ることから 始 めな ければなるまい 将 来 自 律 的 な 成 長 経 路 に 乗 るための 素 地 を 作 りながら 一 方 で 短 期 的 な 需 要 の 押 上 げに 寄 与 する 政 策 が 不 可 欠 だ 政 府 が 取 り 組 んでいる 29 年 度 の 2 次 補 正 予 算 や 21 年 度 予 算 の 歳 出 拡 大 も この 文 脈 からみれば 一 定 の 評 価 はできる ただ 一 昨 年 来 の 経 済 対 策 と 税 収 減 少 によって 財 政 赤 字 が 膨 らむ 中 にあっては 財 源 問 題 も 無 視 できない より 費 用 対 効 果 の 高 い 景 気 下 支 え 策 が 求 められるわけ だが そこで 有 力 な 手 立 てとなり 得 るのが 29 年 度 の 税 制 改 正 で 実 施 され 21 年 度 も 実 施 予 定 である 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 ( 以 下 非 課 税 枠 拡 大 )だ 非 課 税 枠 拡 大 によって 個 人 金 融 資 産 の 贈 与 が 促 され それが 消 費 支 出 に 向 かえば 財 政 支 出 に 頼 らない 内 需 振 興 にも 寄 与 する そこで 本 稿 では 贈 与 税 減 税 の 意 義 や 効 果 留 意 点 について 多 角 的 な 検 討 を 行 なった 以 下 では まず 第 2 章 で 贈 与 の 原 資 となる 個 人 金 融 資 産 について また 第 3 章 で 非 課 税 枠 拡 大 の 概 要 について 確 認 した 上 で 第 4 章 で 非 課 税 枠 拡 大 による 贈 与 の 促 進 効 果 を 第 5 章 でその 経 済 効 果 と 懸 念 される 副 作 用 につい て 検 証 する そして 第 6 章 で 追 加 策 についても 考 察 する その 際 にポイントと なるのは 1 贈 与 税 減 税 は 景 気 対 策 として 有 効 か 2 格 差 固 定 化 という 副 作 用 はないか そして3 金 融 資 産 の 有 効 活 用 を 促 す 効 果 をさらに 高 めるにはどうす ればよいかの 3 点 である 2 高 齢 者 の 資 産 とその 活 用 の 意 義 (1) 個 人 金 融 資 産 を 活 用 した 内 需 活 性 化 策 の 必 要 性 28 年 9 月 のリーマンショック 後 世 界 経 済 は 1 年 に 一 度 と 言 われる 金 融 危 機 に 直 面 した 米 国 でのサブプライムローンの 焦 げ 付 きで 日 本 の 金 融 機 関 が 直 接 被 った 損 害 は 欧 米 金 融 機 関 に 比 べればはるかに 小 さかったが 28 年 1~12 月 期 から 2 四 半 期 連 続 して 年 率 1% 超 のマイナス 成 長 を 記 録 するなど 日 本 経 済 1

の 落 ち 込 みは 結 果 として 欧 米 を 凌 ぐものとなった 原 因 は 外 需 に 依 存 した 経 済 構 造 にある 22 年 から 7 年 までの 景 気 拡 大 は 成 長 の 実 に 6 割 までが 輸 出 によるものとなっており 金 融 危 機 で 各 国 が 不 況 に 見 舞 われると 日 本 の 輸 出 は 急 減 し 国 内 生 産 は 大 きな 打 撃 を 受 けた 影 響 は 設 備 投 資 の 深 刻 な 落 ち 込 みや 所 得 雇 用 環 境 の 悪 化 へと 波 及 し 現 在 もそうした 状 況 は 根 本 的 に 改 善 していない 特 に 家 計 の 所 得 環 境 は 依 然 厳 しく 消 費 に 回 復 の 兆 しは 見 えない( 図 表 1) 消 費 の 低 迷 が 続 くようなら 対 策 効 果 が 剥 落 するまでに 内 需 が 自 律 回 復 に 向 かうと いう 構 図 も 描 きづらい 家 計 支 出 の 安 定 的 な 拡 大 には 潜 在 需 要 の 掘 り 起 こしと いった 企 業 の 努 力 に 加 え 政 策 的 な 供 給 サイドへの 働 きかけが 重 要 だが そうし た 供 給 サイドの 革 新 には 一 定 の 期 間 を 要 する そこで 注 目 されているのが 1,4 兆 円 以 上 に 及 ぶといわれる 個 人 金 融 資 産 の 活 用 である 民 主 党 は 現 役 世 代 への 生 前 贈 与 の 促 進 によって 家 計 資 産 の 有 効 活 用 を 目 指 すとしており 21 年 度 の 税 制 改 正 にも 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 に 対 して 贈 与 税 の 非 課 税 枠 を 拡 充 する 時 限 措 置 が 盛 り 込 まれた ( 前 年 比 %) 2.5 2. 1.5 1..5..5 1. 1.5 2. 図 表 1 所 得 と 消 費 の 推 移 実 質 雇 用 者 報 酬 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( 資 料 ) 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 実 質 家 計 最 終 消 費 ( 除 く 持 ち 家 の 帰 属 家 賃 ) ( 年 ) (2) 注 目 が 集 まる 高 齢 者 の 金 融 資 産 まず わが 国 の 個 人 金 融 資 産 の 実 態 を 確 認 しておこう 資 金 循 環 統 計 ( 日 本 銀 行 )によれば 29 年 9 月 末 時 点 で 家 計 の 保 有 する 金 融 資 産 は 1,439 兆 円 に のぼる( 図 表 2) 景 気 後 退 の 影 響 もあったため ピーク 時 の 27 年 6 月 末 から 13 兆 円 あまり 減 少 しているが 名 目 GDP との 対 比 でみれば 3 倍 以 上 の 水 準 に 達 する 規 模 である ただし この 約 1,4 兆 円 という 数 値 には 企 業 年 金 国 民 年 金 基 金 といった 2

年 金 準 備 金 などが 含 まれており 一 般 的 には 個 人 の 資 産 として 認 識 されていない 資 産 が 2 兆 円 程 度 ある 1 そのほか 個 人 事 業 主 の 事 業 性 資 金 も 計 上 されている 2( 図 表 3) 図 表 2 家 計 の 金 融 資 産 残 高 の 推 移 ( 兆 円 ) ( 倍 ) 1,8 1,7 1,6 1,5 1,4 1,3 1,2 対 名 目 GDP 比 ( 右 目 盛 ) 家 計 の 金 融 資 産 残 高 ( 左 目 盛 ) 3.1 3. 2.9 2.8 2.7 2.6 2.5 2.4 2.3 1,1 98 99 1 2 3 4 5 6 7 8 9 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 2.2 ( 年 ) 図 表 3 家 計 金 融 資 産 の 内 訳 (29 年 9 月 末 ) ( 億 円 ) 現 金 預 金 7,96,476 現 金 434,298 流 動 性 預 金 2,789,976 定 期 性 預 金 4,63,45 譲 渡 性 預 金 318 外 貨 預 金 51,479 貸 出 94 株 式 以 外 の 証 券 945,988 国 債 財 融 債 354,713 地 方 債 13,622 政 府 関 係 機 関 債 5,772 金 融 債 13,819 事 業 債 7,795 投 資 信 託 受 益 証 券 516,846 一 部 は 個 人 事 業 主 の 事 業 性 資 金 信 託 受 益 権 33,117 抵 当 証 券 34 株 式 出 資 金 997,65 うち 株 式 646,113 金 融 派 生 商 品 3,768 保 険 年 金 準 備 金 3,939,246 保 険 準 備 金 2,178,337 年 金 準 備 金 1,76,99 預 け 金 83,875 未 収 未 払 金 35,427 一 般 に 家 計 の 資 産 として 認 識 されていないもの 対 外 証 券 投 資 71,55 その 他 95,763 合 計 14,394,837 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 1 年 金 準 備 金 のほかにもゴルフ 場 預 託 金 等 の 預 け 金 預 貯 金 の 経 過 利 子 等 の 未 収 未 払 金 などが 含 まれる 2 日 本 銀 行 HP 資 金 循 環 統 計 の FAQ (http://www.boj.or.jp/type/exp/stat/faqsj.htm) 3

このため 資 金 循 環 統 計 から 計 算 した 世 帯 あたりの 平 均 貯 蓄 残 高 と 各 種 の 標 本 調 査 でのそれとで 大 きな 乖 離 が 生 じている( 図 表 4 図 表 5) つまり 資 金 循 環 統 計 に 掲 載 されている 家 計 金 融 資 産 残 高 は 純 粋 な 個 人 金 融 資 産 に 比 べ 過 大 な 数 字 である 可 能 性 がある 3 そこで 標 本 調 査 の 平 均 貯 蓄 額 をもとに 28 年 末 時 点 の 個 人 の 純 粋 な 金 融 資 産 残 高 を 試 算 すると 標 本 調 査 の 中 でも 数 値 の 大 きい 家 計 調 査 をもとにした 試 算 でも 約 88 兆 円 という 値 になる( 図 表 6) も 図 表 4 世 帯 当 たりの 金 融 資 産 ~ 家 計 調 査 と 資 金 循 環 統 計 の 比 較 ~ 家 計 調 査 資 金 循 環 統 計 (29 年 2Q) (29 年 6 月 末 ) 貯 蓄 残 高 1,64 金 融 資 産 残 高 2,742 現 金 83 通 貨 性 預 貯 金 298 流 動 性 預 金 等 545 定 期 性 預 貯 金 71 定 期 性 預 金 等 886 生 命 保 険 など 381 保 険 準 備 金 416 年 金 準 備 金 331 有 価 証 券 219 有 価 証 券 等 383 未 収 未 払 金 63 預 け 金 16 その 他 41 その 他 18 ( 注 ) 単 位 は 万 円 資 金 循 環 統 計 の 値 は 家 計 の 金 融 資 産 残 高 を 世 帯 数 で 除 した 値 ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 人 口 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 日 銀 資 金 循 環 統 計 図 表 5 世 帯 あたりの 平 均 貯 蓄 残 高 ( 万 円 ) 3,5 3, 2,5 2, 1,5 1, 5 資 金 循 環 統 計 94 年 99 年 4 年 8 年 家 ( 計 調 二 査 人 以 上 世 帯 ) 8 年 ( 貯 蓄 二 を 人 保 以 有 上 す 世 る 帯 ) 家 計 の る 世 金 論 融 行 調 動 査 に 関 す 8 年 全 ( 国 消 二 費 人 実 態 以 調 上 査 世 帯 ) 4 年 ( 総 世 帯 ) 全 国 消 費 実 態 調 査 4 年 ( 注 ) 点 線 部 分 は 実 線 部 分 との 不 連 続 を 示 す 資 金 循 環 統 計 の 世 帯 当 たり 平 均 貯 蓄 残 高 は 家 計 金 融 資 産 残 高 を 世 帯 数 で 割 って 算 出 ( 資 料 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 総 務 省 全 国 消 費 実 態 調 査 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 人 口 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 家 計 調 査 貯 蓄 動 向 調 査 金 融 広 報 中 央 委 員 会 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 3 文 中 の 家 計 金 融 資 産 は 年 金 準 備 金 や 個 人 事 業 主 の 事 業 性 資 金 を 含 む 資 金 循 環 統 計 ベースの 家 計 金 融 資 産 を 指 す また 文 中 の 個 人 金 融 資 産 は 家 計 金 融 資 産 から 年 金 準 備 金 や 個 人 事 業 主 の 事 業 性 資 金 を 除 いたものを 指 す 個 人 金 融 資 産 は 一 般 的 に 個 人 の 貯 蓄 として 認 識 されている 金 融 資 産 で 生 前 贈 与 の 原 資 となる 可 能 性 の 高 い 資 産 で 本 稿 では 家 計 調 査 ( 総 務 省 )から 試 算 した 4

図 表 6 家 計 の 金 融 資 産 ( 貯 蓄 残 高 ) 1,6 1,4 1,2 1, 8 6 4 2 ( 兆 円 ) 資 金 循 環 統 計 1,427 家 計 調 査 ( 二 人 以 上 世 帯 ) 879 789 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 ( 貯 蓄 を 保 有 する 二 人 以 上 世 帯 ) 全 国 消 費 実 態 調 査 ( 二 人 以 上 世 帯 ) 94 95 96 97 98 99 1 2 3 4 5 6 7 8 ( 年 ) ( 注 ) 家 計 調 査 は 平 均 値 それ 以 外 は 年 末 値 なお 資 金 循 環 統 計 以 外 は 世 帯 あたりの 平 均 貯 蓄 額 に 世 帯 数 をかけたもの なお 点 線 部 分 は 統 計 の 不 連 続 を 示 す ( 資 料 ) 日 本 銀 行 資 金 循 環 統 計 総 務 省 全 国 消 費 実 態 調 査 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 人 口 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 金 融 広 報 中 央 委 員 会 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 図 表 7 家 計 調 査 の 調 査 範 囲 家 計 調 査 における 貯 蓄 残 高 の 調 査 範 囲 総 世 帯 二 人 以 上 世 帯 単 身 者 世 帯 勤 労 者 世 帯 ( 世 帯 主 が 勤 労 者 の 世 帯 ) 個 人 営 業 世 帯 ( 世 帯 主 が 個 人 営 業 主 ) 勤 労 者 以 外 の 世 帯 その 他 の 世 帯 法 人 経 営 者 自 由 業 無 職 勤 労 者 世 帯 ( 世 帯 主 が 勤 労 者 の 世 帯 ) 個 人 営 業 世 帯 ( 世 帯 主 が 個 人 営 業 主 ) 勤 労 者 以 外 の 世 帯 その 他 の 世 帯 法 人 経 営 者 自 由 業 無 職 ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 年 報 ちろん 家 計 調 査 は 全 ての 世 帯 を 対 象 としているわけではない 上 に( 図 表 7) 平 均 貯 蓄 額 も 標 本 調 査 によって 2~3 割 程 度 の 差 があるので 88 兆 円 という 値 は 幅 をも ってみなければならないが 資 金 循 環 統 計 の 示 す 1,4 兆 円 より 実 態 に 近 いと 考 えられる このように 家 計 金 融 資 産 1,4 兆 円 という 数 字 が 必 ずしも 個 人 の 持 つ 資 産 の 実 態 を 的 確 に 表 すものではないとしても 多 額 の 金 融 資 産 が 家 計 に 存 在 するという 5

ことに 変 わりはない そして その 多 額 の 個 人 金 融 資 産 の 多 くは 高 齢 者 によっ て 保 有 されている 純 粋 な 個 人 金 融 資 産 88 兆 円 を 算 出 するもととなった 総 務 省 の 家 計 調 査 によれば 二 人 以 上 世 帯 で 世 帯 主 が 6 代 の 世 帯 および 7 歳 以 上 の 世 帯 では 平 均 貯 蓄 額 が 2, 万 円 を 超 えている( 図 表 8) さらに これらの 世 代 は 世 帯 数 も 全 世 帯 の 4 割 程 度 と 多 い( 図 表 8) 総 世 帯 の 資 産 分 布 が 仮 に 家 計 調 査 ( 二 人 以 上 世 帯 )の 分 布 とそれほど 変 わらないとすれば その 4 割 の 世 帯 に 金 融 資 産 の 6 割 が 集 中 していることになり その 総 額 はおよそ 525 兆 円 に 達 する ( 図 表 9) 高 齢 者 の 範 囲 を 65 歳 以 上 に 絞 った 場 合 でも 4 割 強 の 約 38 兆 円 程 度 と 試 算 される( 図 表 9) 図 表 8 世 帯 主 年 齢 別 の 平 均 貯 蓄 額 (28 年 ) ( 万 円 ) 3, (%) 5 2,5 2,288 万 円 2,415 万 円 4 2, 1,5 1, 5 272 万 円 世 帯 数 の 分 布 ( 右 目 盛 ) 635 万 円 1,179 万 円 1,675 万 円 平 均 貯 蓄 額 ( 左 目 盛 ) ~29 歳 ~39 歳 ~49 歳 ~59 歳 ~69 歳 7 歳 ~ ( 世 帯 主 年 齢 ) ( 注 )2 人 以 上 の 世 帯 ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 人 口 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 3 2 1 図 表 9 世 帯 主 年 齢 別 の 金 融 資 産 分 布 (28 年 ) ( 兆 円 ) (%) 4 3 世 帯 数 の 分 布 ( 右 目 盛 ) 28 兆 円 245 兆 円 384 兆 円 5 4 3 2 1 3 兆 円 51 兆 円 117 兆 円 183 兆 円 世 帯 別 の 平 均 貯 蓄 ( 金 額 : 左 目 盛 シェア: 右 目 盛 ) 2 1 ~29 歳 ~39 歳 ~49 歳 ~59 歳 ~69 歳 7 歳 ~ 65 歳 ~ ( 注 ) 世 帯 数 = 総 世 帯 数 世 帯 分 布 ( 家 計 調 査 ベース) 世 帯 主 年 齢 別 の 貯 蓄 総 額 = 世 帯 当 たり 平 均 貯 蓄 額 世 帯 数 ただし 65~69 歳 世 帯 の 平 均 貯 蓄 額 は6~69 歳 世 帯 の 平 均 貯 蓄 額 と 同 じとした ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 人 口 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 ( 世 帯 主 年 齢 ) 6

現 役 世 代 を 中 心 に 住 宅 ローンなどの 負 債 を 抱 えている 点 を 考 慮 すると 金 融 資 産 の 偏 在 はさらに 顕 著 なものになる 貯 蓄 から 負 債 を 引 いた 純 金 融 資 産 ( 純 貯 蓄 ) の 総 額 は 6 兆 円 程 度 と 試 算 されるが その 実 に 8 割 弱 が 世 帯 主 6 歳 以 上 の 世 帯 によって 保 有 されていることになる 世 帯 主 が 65 歳 以 上 の 世 帯 に 限 ってみても その 規 模 は 純 金 融 資 産 の 約 6 割 にあたる 約 36 兆 円 になる( 図 表 1) このように 個 人 金 融 資 産 の 多 くは 高 齢 者 世 帯 によって 保 有 されている すな わち 金 融 資 産 の 有 効 活 用 を 図 ろうとすれば それは 必 然 的 に 高 齢 者 の 金 融 資 産 をターゲットにすることとなる さらに 言 えば 高 額 の 金 融 資 産 を 保 有 する 高 齢 者 に 対 しての 有 効 な 働 きかけが 必 要 である 図 表 1 世 帯 主 年 齢 別 の 純 金 融 資 産 分 布 (28 年 ) ( 兆 円 ) 4 3 2 1 1 純 貯 蓄 のシェア( 右 目 盛 ) 22 兆 円 126 兆 円 253 兆 円 232 兆 円 358 兆 円 世 帯 別 の 平 均 純 貯 蓄 額 ( 左 目 盛 ) 1 兆 円 14 兆 円 2 ~29 歳 ~39 歳 ~49 歳 ~59 歳 ~69 歳 7 歳 ~ 65 歳 ~ ( 世 帯 主 年 齢 ) ( 注 ) 世 帯 数 = 総 世 帯 数 世 帯 分 布 ( 家 計 調 査 ベース) 世 帯 主 年 齢 別 の 純 貯 蓄 総 額 = 世 帯 当 たり 平 均 純 貯 蓄 額 世 帯 数 ただし 65~69 歳 世 帯 の 平 均 純 貯 蓄 額 は6~69 歳 世 帯 と 同 額 とし 試 算 ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 住 民 基 本 台 帳 に 基 づく 人 口 人 口 動 態 及 び 世 帯 数 (%) 8 6 4 2 総 務 省 の 家 計 調 査 によれば 純 貯 蓄 額 4が 2, 万 円 以 下 の 高 齢 者 世 帯 は 6 割 強 とされおり( 図 表 11) 高 齢 者 の 中 には 老 後 の 生 活 資 金 として 必 ずしも 十 分 な 貯 蓄 を 蓄 えていない 世 帯 もあると 考 えられる 平 均 寿 命 が 延 びるほど 老 後 の 生 活 資 金 として 必 要 な 蓄 えは 多 くなることを 考 えれば 贈 与 を 行 なう 余 裕 のない 世 帯 の 割 合 は 以 前 より 上 昇 している 可 能 性 もある しかしその 一 方 で 2, 万 円 以 上 の 純 貯 蓄 を 保 有 する 世 帯 も 高 齢 者 世 帯 の 4 割 弱 に 及 ぶ( 図 表 11) こうし た 高 額 の 金 融 資 産 を 保 有 する 高 齢 者 を 中 心 に 相 当 程 度 の 余 裕 資 金 が 蓄 えられて いる 可 能 性 が 高 い 高 齢 者 が 保 有 する 資 産 は 平 均 的 に 見 ても ライフサイクル 仮 説 5が 予 想 するよ 4 総 務 省 家 計 調 査 年 報 ( 貯 蓄 負 債 編 ) の 世 帯 主 年 齢 別 の 貯 蓄 額 および 負 債 額 から 計 算 すると 世 帯 主 が 6 代 の 世 帯 では 純 貯 蓄 の 平 均 額 が 2,71 万 円 となる また 世 帯 主 が 7 歳 以 上 の 世 帯 では 2,291 万 円 となる 5 ライフサイクル 仮 説 とは 各 個 人 が 生 涯 にわたる 総 消 費 額 と 生 涯 所 得 が 等 しくなるように 各 時 点 の 消 費 量 を 決 めているというもの したがって ライフサイクル 仮 説 に 従 えば 各 個 人 は 所 得 の 減 少 する 老 後 7

うな 老 後 の 生 活 資 金 だけではなく 病 気 や 災 害 といった 不 時 の 出 費 への 備 えや 特 に 目 的 のない 貯 蓄 も 多 く 含 まれているとみられる( 図 表 12) そして 高 額 の 資 産 を 保 有 する 高 齢 者 ほどその 傾 向 が 強 いと 推 察 される こうした 貯 蓄 が 贈 与 税 減 税 をきっかけに 若 い 世 代 へ 贈 与 されれば 内 需 の 拡 大 につながる 可 能 性 がある ということになる 図 表 11 高 齢 者 が 保 有 する 純 貯 蓄 の 分 布 (28 年 ) ( 純 貯 蓄 額 ) 2, 万 円 ~ ~2, 万 円 ~1,5 万 円 ~1, 万 円 ~7 万 円 ~5 万 円 ~3 万 円 ~1 万 円 ~ 3 万 円 ~ 7 万 円 7 万 円 ~ 65~69 歳 7 歳 ~ 5 1 15 2 25 3 35 4 45 ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 年 報 ( 貯 蓄 負 債 編 ) (%) 図 表 12 6 代 7 代 の 貯 蓄 動 機 病 気 や 不 時 の 災 害 への 備 え こどもの 教 育 資 金 こどもの 結 婚 資 金 住 宅 の 取 得 または 増 改 築 などの 資 金 老 後 の 生 活 資 金 耐 久 消 費 財 の 購 入 資 金 旅 行 レジャーの 資 金 納 税 資 金 遺 産 として 子 孫 に 残 す とくに 目 的 はないが 貯 蓄 していれば 安 心 6 代 7 代 その 他 無 回 答 2 4 6 8 1 (%) ( 注 ) 貯 蓄 保 有 世 帯 についての 集 計 結 果 なお 回 答 は 3つまでの 複 数 回 答 ( 資 料 ) 金 融 広 報 中 央 委 員 会 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 (29 年 調 査 ) に 備 えて 貯 蓄 をすると 解 釈 される 8

3 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 民 主 党 政 権 は こうした 高 齢 者 の 保 有 する 資 産 を 現 役 世 代 への 支 出 につなげる ことを 目 的 として 21 年 からの 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 を 決 定 した 非 課 税 枠 拡 大 は 自 民 党 政 権 下 で 実 施 された 経 済 危 機 対 策 (29 年 4 月 1 日 公 表 ) にも 盛 り 込 まれた 29 年 度 の 税 制 改 正 に 続 いて 2 年 連 続 の 措 置 となる( 図 表 13) ただし 非 課 税 枠 拡 大 は 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 に 限 定 されている 29 年 の 改 正 では 現 行 の 制 度 において 暦 年 課 税 6で 11 万 円 相 続 時 精 算 課 税 7で 2,5 万 円 まで 認 められている 非 課 税 枠 を 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 に 限 りそれぞれ 61 万 円 (21 年 末 まで) 4, 万 円 (29 年 21 年 は 3, 万 円 )まで 拡 大 させた 今 回 民 主 党 政 権 が 決 定 した 非 課 税 枠 拡 大 は それをさらに 拡 充 するもので ある 暦 年 課 税 については 21 年 末 まで 1,61 万 円 211 年 末 までは 1,11 万 円 に 拡 充 する 方 針 であり 相 続 時 精 算 課 税 についても 21 年 は 4, 万 円 の 非 課 税 枠 を 維 持 し 211 年 も 3,5 万 円 までの 非 課 税 を 認 める 内 容 となっている この 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 について 次 章 以 降 で 検 証 する 1992 (H14) 6 万 円 図 表 13 贈 与 税 制 の 変 遷 暦 年 課 税 相 続 時 精 算 課 税 基 礎 控 除 税 率 基 礎 控 除 税 率 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 3 万 円 (=6 万 円 5 年 分 ) (13 段 階 ) 1% 15 万 円 以 下 15% 2 万 円 2% 25 万 円 25% 35 万 円 3% 45 万 円 35% 6 万 円 4% 8 万 円 45% 1, 万 円 5% 1,5 万 円 55% 2,5 万 円 6% 4, 万 円 65% 1 億 円 7% 1 億 円 超 21 (H13) 11 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 55 万 円 (=11 万 円 5 年 分 ) 6 年 間 (1 月 から 12 月 までの 暦 年 )に 贈 与 された 財 産 に 課 税 する 方 式 で 相 続 税 との 通 算 はされない 基 礎 控 除 として 年 間 11 万 円 までの 贈 与 について 非 課 税 が 認 められている 非 課 税 枠 を 超 えた 部 分 の 贈 与 について 1~5%の 税 率 で 贈 与 税 が 課 せられる 7 贈 与 額 と 相 続 額 を 通 算 して 課 税 する 方 式 同 制 度 を 利 用 する 場 合 は 累 計 で 2,5 万 円 まで 認 められて いる 非 課 税 枠 を 超 える 部 分 の 贈 与 について 贈 与 時 に 一 律 2%の 税 率 で 課 税 される ただし 相 続 時 に 贈 与 額 と 相 続 額 の 合 算 額 に 対 し 相 続 税 を 課 し 贈 与 時 に 納 付 した 贈 与 税 額 を 控 除 する 贈 与 税 額 が 相 続 税 額 を 上 回 る 場 合 には 差 額 が 還 付 される したがって 同 制 度 を 利 用 する 場 合 は 最 終 的 な 税 負 担 が 贈 与 税 率 ではなく 相 続 税 率 によって 規 定 されることになる なお 同 制 度 を 一 度 利 用 すると 暦 年 課 税 による 贈 与 は 利 用 できなくなる また 年 齢 要 件 として 贈 与 者 が 65 歳 以 上 の 親 であり 受 贈 者 が 2 歳 以 上 の 子 で あるという 条 件 がある ただし 住 宅 取 得 資 金 を 贈 与 する 場 合 については 贈 与 者 の 年 齢 に 関 係 なく 贈 与 が 可 能 9

23 (H15) 26 (H18) 28 (H2) 29 (H21) 21 (H22) 11 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 25 年 末 までの 時 限 措 置 と して 55 万 円 (=11 万 円 5 年 分 ) (6 段 階 ) 1% 2 万 円 以 下 15% 3 万 円 2% 4 万 円 3% 6 万 円 4% 1, 万 円 5% 1,5 万 円 超 11 万 円 11 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 21 年 末 までの 時 限 措 置 と して61 万 円 11 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 時 限 措 置 として21 年 は 1,61 万 円 211 年 は1,11 万 円 ( 資 料 ) 財 経 詳 報 社 図 説 日 本 の 税 制 財 務 省 税 制 改 正 関 連 資 料 2,5 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 25 年 末 までの 時 限 措 置 として3,5 万 円 2,5 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 27 年 末 までの 時 限 措 置 ( 延 長 )として3,5 万 円 2,5 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 29 年 末 までの 時 限 措 置 ( 延 長 )として3,5 万 円 2,5 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 時 限 措 置 として29 年 は 4, 万 円 21 年 は3, 万 円 2,5 万 円 住 宅 取 得 資 金 贈 与 について は 時 限 措 置 として21 年 は 4, 万 円 211 年 は3,5 万 円 一 律 2% ただし 相 続 時 に 生 前 贈 与 さ れた 資 産 と 相 続 財 産 を 合 算 し 相 続 税 との 差 額 を 負 担 ( 過 払 い の 場 合 は 還 付 ) 特 殊 なケースを 除 けば 最 終 的 な 税 負 担 は 一 般 的 に 相 続 課 税 と 同 額 になる < 非 課 税 枠 ( 基 礎 控 除 )の 推 移 > ( 万 円 ) 29 年 度 改 正 21 年 度 改 正 4,5 4, 相 続 時 精 算 課 税 ( 住 宅 取 得 資 金 ) 延 長 延 長 3,5 3, 2,5 相 続 時 精 算 課 税 2, 21 年 度 改 正 1,5 1, 5 暦 年 課 税 暦 年 課 税 ( 住 宅 取 得 資 金 ) 29 年 度 改 正 92 93 94 95 96 97 98 99 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 11 12 ( 年 ) ( 資 料 ) 財 経 詳 報 社 図 説 日 本 の 税 制 財 務 省 税 制 改 正 関 連 資 料 4 非 課 税 枠 の 拡 大 で 贈 与 は 増 加 するか (1) 贈 与 件 数 の 押 上 げ 効 果 非 課 税 枠 拡 大 によって 高 齢 者 の 金 融 資 産 の 贈 与 はどれだけ 拡 大 するだろ うか ここでは 贈 与 への 効 果 を 見 るにあたり 贈 与 件 数 と 1 件 当 たりの 平 均 贈 与 額 に 分 けて 考 える まず 贈 与 件 数 について 考 えてみたい 非 課 税 枠 の 拡 大 によって 新 たに 贈 与 が 発 生 する 必 要 条 件 は 親 ( 高 齢 者 )が 余 裕 資 産 を 持 っていることだが 贈 与 が 生 1

じるかどうかは 受 贈 者 側 の 要 因 も 大 きく 影 響 していると 考 えられる 子 の 世 帯 が 流 動 性 制 約 に 直 面 している 状 況 にあってこそ 将 来 相 続 させる 予 定 の 資 産 を 生 前 贈 与 で 前 倒 しして 移 転 する 可 能 性 が 高 くなると 考 えられるためだ つまり 非 課 税 枠 拡 大 は 余 裕 資 金 を 持 つ 高 齢 者 に 流 動 性 制 約 に 直 面 する 子 がいるケースを 中 心 に 世 代 間 の 資 金 移 転 を 促 す 効 果 があると 考 えられる では どのような 世 帯 が 流 動 性 制 約 に 直 面 しているのだろうか 世 帯 主 年 齢 別 の 家 計 支 出 をみると 世 帯 主 が 4 代 の 世 帯 は 住 宅 ローンの 返 済 負 担 が 大 きいた め 3 代 の 世 帯 より 支 出 が 多 いというのが 平 均 的 な 姿 であろう( 図 表 14 図 表 15) 図 表 14 家 計 の 基 礎 的 支 出 比 率 ( 勤 労 者 世 帯 世 帯 主 年 齢 別 ) ( 万 円 ) 28 基 礎 的 支 出 比 率 ( 右 目 盛 ) 8 27 定 義 は 注 を 参 照 26 7 6 5 (%) 55 5 4 3 2 1 実 収 入 35 ~29 歳 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6~69 歳 7 歳 ~ ( 世 帯 主 年 齢 ) ( 注 ) 基 礎 的 支 出 = 食 料 + 光 熱 水 道 + 被 服 履 物 + 保 健 医 療 + 土 地 家 屋 借 金 返 済 + 家 賃 地 代 + 教 育 費 + 仕 送 り 金 + 直 接 税 社 会 保 険 料 等 基 礎 的 支 出 比 率 = 基 礎 的 支 出 実 収 入 ( 資 料 ) 総 務 省 家 計 調 査 年 報 基 礎 的 支 出 45 4 図 表 15 住 宅 ローンの 新 規 融 資 利 用 者 の 平 均 年 齢 ( 歳 ) 44 42 4 全 体 注 文 住 宅 土 地 付 注 文 住 宅 建 売 住 宅 マンション 38 36 34 32 4 5 6 7 8 9 ( 年 度 ) ( 注 ) 注 文 住 宅 は 土 地 取 得 のための 借 入 のない 者 29 年 度 は 上 期 実 績 ( 資 料 ) 住 宅 金 融 支 援 機 構 フラット35 利 用 者 調 査 11

BOX 4 代 の 親 の 年 齢 28 年 に 4 代 に 属 するのは 1959 年 ~1968 年 生 まれの 人 である 厚 生 労 働 者 人 口 動 態 統 計 によれば 196 年 の 母 親 の 出 産 時 年 齢 は 25.4 歳 ( 第 1 子 )~29.9 歳 ( 第 3 子 ) 平 均 で 27.6 歳 となっている 1965 年 および 197 年 の 出 産 時 年 齢 もほほ 同 じである 子 供 が 誕 生 した 時 点 の 父 親 の 年 齢 については 1975 年 の 統 計 で 28.3 歳 ( 第 1 子 )~33.4 歳 ( 第 3 子 ) 平 均 で 3.1 歳 となっており 同 年 の 母 親 の 出 産 時 平 均 年 齢 は 平 均 27.4 歳 となっている こ のため 28 年 時 点 で 4 代 となる 人 の 親 は 概 ね 7 代 にあたる 父 親 の 年 齢 母 親 の 年 齢 ( 年 ) 平 均 第 1 子 誕 生 時 第 2 子 誕 生 時 第 3 子 誕 生 時 平 均 第 1 子 誕 生 時 第 2 子 誕 生 時 第 3 子 誕 生 時 195 28.7 24.4 26.7 29.4 1955 28.2 24.8 27.2 29.5 196 27.6 25.4 27.8 29.9 1965 27.4 25.7 28.3 3.3 197 27.5 25.6 28.3 3.6 1975 3.1 28.3 3.8 33.4 27.4 25.7 28. 3.3 198 3.8 29.2 31.4 33.3 28.1 26.4 28.7 3.6 1985 31.4 29.6 32. 34.2 28.6 26.7 29.1 31.4 1986 31.5 29.7 32. 34.3 28.6 26.8 29.2 31.4 1987 31.6 29.8 32.1 34.4 28.7 26.8 29.2 31.5 1988 31.7 29.8 32.2 34.5 28.8 26.9 29.3 31.6 1989 31.8 29.9 32.3 34.6 28.9 27. 29.4 31.7 199 31.8 29.9 32.4 34.7 28.9 27. 29.5 31.8 1991 31.8 29.9 32.4 34.8 28.9 27.1 29.5 31.8 1992 31.7 29.9 32.4 34.8 28.9 27.1 29.6 31.9 1993 31.7 29.9 32.4 34.9 29. 27.2 29.6 32. 1994 31.7 3. 32.4 34.9 29. 27.4 29.7 32. 1995 31.7 3. 32.4 34.8 29.1 27.5 29.8 32. 1996 31.8 3.1 32.4 34.8 29.2 27.6 29.9 32. 1997 31.7 3.1 32.5 34.8 29.3 27.7 3. 32.1 1998 31.7 3.1 32.5 34.7 29.4 27.8 3.1 32.1 1999 31.7 3.1 32.6 34.7 29.4 27.9 3.2 32.2 2 31.8 3.2 32.6 34.7 29.6 28. 3.4 32.3 21 31.8 3.2 32.6 34.7 29.7 28.2 3.4 32.4 22 31.9 3.4 32.6 34.7 29.8 28.3 3.6 32.5 23 32. 3.6 32.7 34.7 3. 28.6 3.7 32.5 24 32.2 3.9 32.8 34.6 3.2 28.9 3.9 32.6 25 32.3 31.1 32.9 34.6 3.4 29.1 31. 32.6 26 32.5 31.3 33.1 34.7 3.5 29.2 31.2 32.8 27 32.7 31.4 33.3 34.8 3.7 29.4 31.4 32.9 ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 人 口 動 態 統 計 より 作 成 また 5 代 の 世 帯 との 比 較 では 所 得 水 準 こそ 同 程 度 であるが 未 成 年 の 子 供 を 抱 え 教 育 費 や 食 料 費 などの 生 活 費 が 5 代 世 帯 より 高 い そのため 4 代 の 世 帯 は 実 収 入 に 占 める 基 礎 的 な 支 出 の 割 合 が 他 の 世 帯 と 比 べて 高 くなっている( 前 掲 図 表 14) これらから 平 均 的 に 4 代 の 世 帯 が 最 も 流 動 性 制 約 を 受 けているこ とが 分 かる 典 型 的 な 受 贈 者 が 4 代 であるとすれば 贈 与 者 であるその 親 は 7 代 ( 上 掲 BOX 参 照 )が 中 心 となる 子 の 支 出 を 支 援 するための 贈 与 は 7 代 の 親 世 帯 から 流 動 性 制 約 に 直 面 する 4 代 の 子 世 帯 へという 経 路 を 通 じたものが 中 心 となろう 事 実 過 去 の 贈 与 件 数 の 推 移 をみると 相 続 時 精 算 課 税 を 導 入 した 際 に 若 干 の 上 乗 せが みられたものの それ 以 外 は 概 ね 4 代 およびその 前 後 の 年 代 の 人 口 動 態 に 沿 った 形 で 推 移 している( 図 表 16) この 点 は 受 贈 者 の 年 齢 別 の 贈 与 実 績 でも 確 認 できる 足 元 の 状 況 を 知 ることは できないが 相 続 時 精 算 課 税 を 導 入 した 際 に 財 務 省 が 実 施 した 23 年 の 調 査 では 同 制 度 を 利 用 した 贈 与 は 4 代 への 贈 与 が 最 も 多 くなっている( 図 表 17 上 図 ) 12

( 万 件 ) 7 6 5 4 3 2 1 図 表 16 4 代 前 後 の 人 口 と 贈 与 件 数 の 推 移 35~55 歳 人 口 ( 右 軸 の 左 目 盛 ) 4 代 人 口 ( 右 軸 の 右 目 盛 ) 相 続 時 精 算 課 税 分 ( 左 軸 ) 暦 年 課 税 分 ( 左 軸 ) (1 万 人 ) 38 23 37 22 36 21 35 2 34 19 33 18 32 17 31 16 3 15 29 14 86 91 96 1 6 ( 年 ) ( 注 ) 人 口 は 各 年 12 月 の 値 21 年 は 将 来 推 計 人 口 の 増 加 率 を 用 いた 予 測 ( 資 料 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 総 務 省 人 口 推 計 月 報 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 将 来 推 計 人 口 データベース 図 表 17 贈 与 者 受 贈 者 の 年 齢 別 内 訳 (23 年 相 続 時 精 算 課 税 分 ) ( 全 体 ) 贈 与 者 受 贈 者 ~29 歳 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6 歳 ~ 合 計 ~64 歳 4.% 9.%.2%.%.% 13.2% 65~74 歳.8% 17.6% 17.1% 1.4%.1% 37.% 75~84 歳.4% 1.6% 12.6% 16.8% 1.3% 32.8% 85 歳 ~.2%.5% 1.% 8.5% 6.8% 17.1% 合 計 5.4% 28.7% 31.% 26.7% 8.3% 1.% ( 住 宅 取 得 資 金 ) 受 贈 者 ~29 歳 3~39 歳 4~49 歳 5~59 歳 6 歳 ~ 合 計 ~64 歳 11.5% 26.1%.5%.%.% 38.2% 65~74 歳.9% 24.7% 15.3%.6%.1% 41.6% 贈 与 者 75~84 歳.1% 1.6% 9.2% 5.8%.3% 17.% 85 歳 ~.%.1%.4% 1.9%.8% 3.3% 合 計 12.6% 52.5% 25.4% 8.3% 1.1% 1.% ( 資 料 ) 財 務 省 平 成 15 年 分 相 続 時 精 算 課 税 制 度 に 係 る 贈 与 税 の 申 告 実 態 調 査 また 住 宅 取 得 資 金 については 3 代 への 贈 与 が 最 も 多 く 次 いで 4 代 への 贈 与 が 続 いている( 図 表 17 下 図 ) これは 住 宅 の 購 入 時 期 の 中 心 が 3 代 後 半 ~ 4 代 前 半 であるためだ( 前 掲 図 表 15) 住 宅 取 得 資 金 に 関 する 非 課 税 枠 拡 大 で 最 も 効 果 が 期 待 できるのは 3~4 代 の 年 齢 層 への 贈 与 であると 考 えられる ただ 親 が 贈 与 できるだけの 資 産 を 持 ち 子 の 世 帯 が 資 金 を 必 要 としている 場 合 非 課 税 枠 拡 大 を 待 たずとも 既 存 の 非 課 税 枠 を 用 いて 生 前 贈 与 が 行 なわれて 13

いるはずである 非 課 税 枠 拡 大 を 理 由 に 新 たに 生 前 贈 与 をしようと 決 意 する 人 はそれほど 多 くないかもしれない つまり 非 課 税 枠 拡 大 が 受 贈 者 にとって 小 幅 なものであれば 贈 与 件 数 は 大 きくは 増 加 しないと 考 えられる では 将 来 いずれかの 時 期 に 贈 与 を 行 なおうと 考 えていた 贈 与 者 が 前 倒 しで 贈 与 を 行 なう 駆 け 込 み 効 果 の 可 能 性 はないのだろうか 過 去 にそうした 駆 け 込 み 効 果 がみられたと 考 えられる 年 がある 23~5 年 の 3 年 間 である 23 年 は 相 続 税 と 贈 与 税 を 通 算 する 相 続 時 精 算 課 税 が 導 入 された 年 であり それまで より 低 い 税 負 担 で 高 額 の 贈 与 が 可 能 となったことから 贈 与 件 数 が 増 加 した 加 え て 当 時 は 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 する 場 合 の 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 拡 大 が 25 年 までの 時 限 措 置 であったこと また 暦 年 課 税 での 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 につ いても 25 年 で 廃 止 されることが 決 まっていたことも 駆 け 込 み 効 果 をもたら す 要 因 となったとみられる 実 際 に 23 年 は 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 が 前 年 比 + 18.4%(+1,271 件 ) また 非 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 が 前 年 比 +11.3%(+34,481 件 ) 増 加 している これらの 贈 与 の 変 化 を 人 口 動 態 から 推 計 すると 23~5 年 の 駆 け 込 み 効 果 は 住 宅 取 得 資 金 非 住 宅 取 得 資 金 の 合 計 で 年 平 均 約 3.7 万 件 程 度 であったと 試 算 できる( 図 表 18) 図 表 18 相 続 時 精 算 課 税 導 入 時 の 駆 け 込 み 効 果 ( 万 件 ) 7 実 績 値 6 5 4 推 計 値 ( 注 参 照 ) 3 2 1 相 続 時 精 算 課 税 導 入 当 初 の 駆 け 込 み 効 果 約 3.7 万 件 / 年 (4 代 人 口 の.24%に 相 当 する 件 数 ) 23~5 年 の 駆 込 み 要 因 を 除 いた 推 計 値 86 87 88 89 9 91 92 93 94 95 96 97 98 99 1 2 3 4 5 6 7 ( 注 ) 贈 与 件 数 ( 万 件 ) = -35.1 + 4.53 4 代 人 口 (1 万 人 ) (-5.96) (14.5) +.24 ダミー 変 数 (2.44) ( ) 内 はt 値 Sample: 1986~27 Adj.R^2=.914 D.W.=1.99 ただし 贈 与 件 数 は 暦 年 課 税 分 と 相 続 時 精 算 課 税 分 の 合 計 ダミー 変 数 (23~5 年 )は 4 代 人 口 (1 万 人 ) ( 資 料 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 総 務 省 人 口 推 計 月 報 ( 年 ) 14

こうした 効 果 が 29 年 から 実 施 された 時 限 的 な 非 課 税 枠 拡 大 措 置 でもみら れるかは 不 透 明 な 部 分 が 多 い ただ 29 年 のケースは 23~5 年 当 時 のよ うにそれまでにはなかった 大 型 の 非 課 税 枠 が 導 入 されたケースと 異 なり 既 にあ る 非 課 税 枠 の 拡 充 に 過 ぎない そのため 今 回 は 同 じ 時 限 措 置 とはいえ 23~5 年 ほどの 駆 け 込 み 効 果 を 生 まない 可 能 性 もある (2) 平 均 贈 与 額 の 押 上 げ 効 果 次 に 1 件 あたりの 平 均 贈 与 額 について 考 えてみよう 非 課 税 枠 が 拡 大 された 場 合 1 件 あたりの 贈 与 額 を 非 課 税 枠 の 拡 大 と 同 額 だけ 増 額 しても 税 負 担 は 同 額 のま まである そのため 贈 与 税 の 非 課 税 枠 が 拡 大 された 場 合 平 均 贈 与 額 も 同 額 だ け 増 加 する 可 能 性 がある まず 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 する 場 合 を 考 える 29 年 の 対 策 で 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 する 場 合 の 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 は 3,5 万 円 から 4, 万 円 に 拡 大 されたが 3~4 代 の 世 帯 が 住 宅 取 得 の 際 に 必 要 とする 自 己 資 金 の 平 均 額 (9 ~1,2 万 円 程 度 図 表 19)を 考 えれば 拡 大 前 の 3,5 万 円 でも 既 に 十 分 な 非 課 税 額 であったと 言 える 事 実 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 した 住 宅 取 得 資 金 の 平 均 贈 与 額 は 26 年 が 1,135 万 円 27 年 が 1,212 万 円 となっており 3~4 代 の 住 宅 取 得 に 必 要 な 自 己 資 金 額 に 近 い 金 額 となっている また 贈 与 額 の 分 布 全 体 をみても 従 来 の 非 課 税 枠 (3,5 万 円 ) 以 下 での 贈 与 が 大 半 となっているのが 確 認 できる( 図 表 2) 確 かに 非 課 税 枠 拡 大 がなければ 贈 与 額 を 非 課 税 額 の 3,5 万 円 以 下 に 抑 え ていた 可 能 性 のある 贈 与 者 については 今 回 の 時 限 措 置 で 贈 与 額 を 3,5~4, 万 円 まで 拡 大 させることがあり 得 るだろう しかし これまでの 贈 与 実 績 を 見 る 限 り こうした 高 額 贈 与 のケースは 少 なく 大 半 が 拡 大 前 の 非 課 税 枠 に 収 まって いることから 考 えれば 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 するケースでの 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 は 極 めて 限 定 的 と 言 えよう 図 表 19 住 宅 取 得 必 要 資 金 27 年 28 年 29 年 住 宅 取 得 必 要 資 金 ( 総 額 ) 住 宅 取 得 必 要 資 金 ( 総 額 ) 住 宅 取 得 必 要 資 金 ( 総 額 ) 自 己 資 金 借 入 額 自 己 資 金 借 入 額 自 己 資 金 借 入 額 平 均 3,192 1,288 1,94 平 均 3,39 1,366 1,943 平 均 3,179 1,272 1,97 2 代 3,35 853 2,497 2 代 3,161 986 2,175 2 代 2,983 85 2,178 3 代 3,248 969 2,279 3 代 3,429 94 2,489 3 代 3,274 924 2,35 4 代 3,428 1,2 2,228 4 代 3,479 1,243 2,236 4 代 3,329 1,221 2,18 5 代 2,815 1,211 1,64 5 代 3,279 1,658 1,621 5 代 3,71 1,399 1,672 6 代 3,39 2,124 1,266 6 代 3,5 1,898 1,17 6 代 3,87 1,972 1,115 7 代 以 上 3,111 2,119 992 7 代 以 上 3,113 1,925 1,188 7 代 以 上 2,911 1,818 1,93 ( 注 ) 単 位 = 万 円 ( 資 料 ) 金 融 広 報 中 央 委 員 会 家 計 の 金 融 行 動 に 関 する 世 論 調 査 15

図 表 2 贈 与 額 の 分 布 ( 万 件 ) 13 7 暦 年 課 税 (27 年 実 績 ) 126 115 14 相 続 時 精 算 課 税 (27 年 実 績 ) 3 2 1 ~15 万 円 15 万 円 ~ 4 万 円 ~ 7 万 円 ~ 1, 万 円 ~ 2, 万 円 ~ 3, 万 円 ~ 5, 万 円 ~ 1 億 円 ~ ( 資 料 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 (27 年 ) 次 に 暦 年 課 税 を 利 用 するケースについて 確 認 してみよう 過 去 に 非 課 税 枠 が 6 万 円 から 11 万 円 に 5 万 円 拡 大 した 21 年 の 状 況 をみると 1 件 あたりの 平 均 贈 与 額 は 約 29 万 円 から 約 36 万 円 に 7 万 円 程 度 増 加 していたことが 分 かる ( 図 表 21) ただ 21 年 は 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 もそれまでの 3 万 円 から 55 万 円 に 拡 大 した 年 であるので その 影 響 を 考 慮 するために 住 宅 取 得 資 金 と 非 住 宅 取 得 資 金 に 分 けてみる 必 要 がある 暦 年 課 税 での 贈 与 のうち 非 住 宅 取 得 資 金 分 につ いてみると 2 年 に 約 27 万 円 であった 1 件 当 たりの 平 均 贈 与 額 は 21 年 に 約 33 万 円 へと 6 万 円 弱 増 加 している 6 万 円 弱 という 増 加 幅 は 概 ね 非 課 税 枠 の 拡 大 幅 (5 万 円 )に 等 しい 8 住 宅 取 得 資 金 贈 与 の 場 合 も 同 様 である 暦 年 課 税 での 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 が 55 万 円 であった 21~5 年 をみると 平 均 贈 与 額 は 523~553 万 円 と 概 ね 非 課 税 枠 に 近 い 金 額 で 推 移 していたことが 確 認 できる 住 宅 取 得 資 金 に 関 して 暦 年 課 税 の 非 課 税 枠 が 復 活 した 29 年 の 税 制 改 正 に 即 して 考 えると 29 年 は 非 課 税 枠 を 活 用 した 61 万 円 程 度 の 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 が 発 生 している 可 能 性 がある このように 29 年 から 実 施 された 非 課 税 枠 の 拡 大 は 暦 年 課 税 を 利 用 するケ ースを 中 心 に 1 件 あたりの 平 均 額 が 非 課 税 枠 の 拡 大 にあわせて 増 加 する 効 果 を 期 待 できる 8 なお 暦 年 課 税 を 利 用 して 非 課 税 枠 内 の 贈 与 を 行 なったケースについては 税 務 署 への 申 告 義 務 がない ため 統 計 で 件 数 等 を 確 認 することができないが 非 課 税 枠 の 拡 大 によって 得 られる 恩 恵 はどのケースでも 同 じであることから 非 課 税 枠 内 での 贈 与 についても 平 均 贈 与 額 は 同 程 度 増 加 していたと 推 察 される 16

図 表 21 平 均 贈 与 額 ( 暦 年 課 税 利 用 分 ) (1 万 円 ) 6.5 6. 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 廃 止 (26 年 ) ( 非 課 税 枠 )11 万 円 ( 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 )55 万 円 廃 止 5.5 5. 非 課 税 枠 拡 大 (21 年 ) ( 非 課 税 枠 )6 11 万 円 ( 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 )3 55 万 円 4.5 4. 3.5 3. 2.5 2. 1.5 75 78 81 84 87 9 93 96 99 2 5( 年 ) ( 資 料 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 (3) 21 年 の 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 民 主 党 政 権 は 21 年 に 暦 年 課 税 の 非 課 税 枠 をさらに 1,61 万 円 まで 拡 充 する ことを 決 定 している 前 述 の 分 析 でも 示 した 過 去 の 例 から 推 察 されるように 暦 年 課 税 を 利 用 する 者 にとっては 非 課 税 枠 の 一 段 の 拡 大 の 恩 恵 は 大 きいと 考 えられ る 暦 年 課 税 を 利 用 する 場 合 であっても 相 続 時 精 算 課 税 のケースと 同 様 に 住 宅 取 得 時 の 自 己 資 金 と 同 額 (4 代 で 約 1,2 万 円 前 掲 図 表 19)の 贈 与 が 可 能 とな るためである そのため 暦 年 課 税 の 平 均 贈 与 額 が 自 己 資 金 額 程 度 まで 増 加 する 可 能 性 がある また 暦 年 課 税 については 贈 与 件 数 も 増 加 する 可 能 性 がある 増 加 の 一 部 は 本 来 であれば 相 続 時 精 算 課 税 での 贈 与 を 計 画 していた 者 が 暦 年 課 税 での 贈 与 に 変 更 することに 伴 うものであるかもしれないが 頭 金 の 大 半 を 非 課 税 の 贈 与 金 に 頼 る 場 合 6 万 円 程 度 の 無 税 化 では 住 宅 購 入 に 踏 み 切 れなかったり 贈 与 の 時 点 で トータルの 相 続 コストが 概 ね 確 定 する 相 続 時 精 算 課 税 の 利 用 を 躊 躇 していた 世 帯 でも 新 たに 住 宅 取 得 を 決 定 する 場 合 が 出 てくると 考 えられる そのため 贈 与 件 数 が 全 体 として 増 加 することも 十 分 に 考 えられる 以 上 をまとめると 今 回 の 非 課 税 枠 拡 大 には 暦 年 課 税 を 中 心 に 平 均 贈 与 額 の 増 加 と 若 干 の 贈 与 件 数 の 増 加 が 期 待 できよう( 図 表 22) ただし 贈 与 件 数 については 人 口 動 態 に 沿 った 件 数 からどれだけ 上 振 れするか 未 知 数 な 部 分 も 多 い 17

図 表 22 贈 与 拡 大 効 果 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 拡 大 効 果 ( 効 果 大 = 効 果 小 = 効 果 不 明 = ) 贈 与 件 数 平 均 贈 与 額 29 年 の 改 正 暦 年 課 税 ( ) 頭 金 (6 万 程 度 まで) を 非 課 税 で 受 贈 できるのであれ ば 新 たに 住 宅 取 得 を 決 定 する ケースもあり 得 る 相 続 時 精 ( ) 駆 け 込 み 効 果 による 贈 与 算 課 税 件 数 の 押 上 げ 効 果 は 期 待 薄 ( ) 非 課 税 枠 (61 万 円 )と 同 額 の 贈 与 が 発 生 する 可 能 性 あ り ( ) 高 額 贈 与 に 限 り 最 大 5 万 円 程 度 増 加 の 可 能 性 も ただ し 一 般 的 なケースでは 住 宅 取 得 時 の 自 己 資 金 (1,2 万 円 ) 程 度 の 平 均 贈 与 額 を 維 持 21 年 の 改 正 暦 年 課 税 ( ) 住 宅 取 得 時 の 自 己 資 金 ( ) 暦 年 課 税 を 利 用 する 者 で (1,2 万 円 程 度 )を 非 課 税 で 受 贈 も 住 宅 取 得 時 の 自 己 資 金 (1,2 できるのであれば 新 たに 住 宅 取 万 円 ) 程 度 まで 平 均 贈 与 額 が 増 加 得 を 決 定 するケースもあり 得 る する 可 能 性 あり 相 続 時 精 ( ) 駆 け 込 み 効 果 による 贈 与 算 課 税 件 数 の 押 上 げ 効 果 は 期 待 薄 ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 作 成 ( ) 高 額 贈 与 に 限 り5 万 円 程 度 の 増 加 が 維 持 される 可 能 性 も ただし 一 般 的 なケースで は 住 宅 取 得 時 の 自 己 資 金 (1,2 万 円 ) 程 度 の 平 均 贈 与 額 を 維 持 5 非 課 税 枠 拡 大 の 経 済 効 果 (1) 住 宅 投 資 と 消 費 支 出 に 与 える 効 果 では 非 課 税 枠 拡 大 で 実 際 にどれだけの 経 済 効 果 が 期 待 できるのだろうか 29 年 21 年 の 税 制 改 正 措 置 について それぞれ 期 待 される 経 済 効 果 を 試 算 し てみよう < 住 宅 投 資 の 押 上 げ 効 果 > 既 に 述 べたように 贈 与 件 数 は 主 たる 受 贈 者 である 4 代 前 後 の 人 口 に 沿 って 推 移 している( 次 頁 の 再 掲 図 表 16) そのため 第 2 次 ベビーブーム(197 年 代 前 半 ) 生 まれの 団 塊 ジュニアがちょうど 3 代 後 半 に 差 し 掛 かり 4 代 前 後 の 人 口 が 緩 やかな 増 加 傾 向 にあることを 勘 案 すれば 贈 与 件 数 は 自 然 増 となる 可 能 性 が 高 い 総 務 省 の 統 計 によれば 29 年 12 月 時 点 の 4 代 人 口 は 1,644 万 人 で 28 年 末 より 31 万 人 と 僅 かではあるが 増 加 している 4 代 人 口 と 贈 与 件 数 の 基 本 的 な 関 係 からすれば 29 年 は 約 38 万 件 程 度 の 贈 与 が 見 込 まれる( 9 図 表 23) また 暦 年 課 税 で 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 が 時 限 的 に 復 活 したことや 相 続 時 精 算 課 税 で 時 限 的 に 住 宅 取 得 資 金 の 非 課 税 枠 が 5 万 円 拡 大 したことによって 9 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 した 贈 与 と 暦 年 課 税 を 利 用 した 贈 与 の 合 計 件 数 ただし 暦 年 課 税 については 申 告 義 務 のない 住 宅 取 得 資 金 以 外 の 11 万 円 以 下 の 贈 与 を 除 く 18

再 掲 図 表 16 4 代 前 後 の 人 口 と 贈 与 件 数 の 推 移 ( 万 件 ) 7 6 5 4 3 2 1 35~55 歳 人 口 ( 右 軸 の 左 目 盛 ) 4 代 人 口 ( 右 軸 の 右 目 盛 ) 相 続 時 精 算 課 税 分 ( 左 軸 ) 暦 年 課 税 分 ( 左 軸 ) (1 万 人 ) 38 23 37 22 36 21 35 2 34 19 33 18 32 17 31 16 3 15 29 14 86 91 96 1 6 ( 年 ) ( 注 ) 人 口 は 各 年 12 月 の 値 21 年 は 将 来 推 計 人 口 の 増 加 率 を 用 いた 予 測 ( 資 料 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 総 務 省 人 口 推 計 月 報 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 将 来 推 計 人 口 データベース 図 表 23 贈 与 件 数 の 予 測 ( 万 件 ) 6 55 23~5 年 と 同 程 度 の 駆 け 込 み 効 果 が 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 で 発 生 した 場 合 の 予 測 5 45 4 35 3 相 続 時 精 算 課 税 導 入 当 初 の 駆 け 込 み 効 果 約 3.7 万 件 / 年 (4 代 人 口 の.24%に 相 当 する 件 数 )( 注 参 照 ) 41.7 87 89 91 93 95 97 99 1 3 5 7 9 43.2 39.3 37.9 36.8 人 口 要 因 のみでの 予 測 ( 年 ) ( 注 )28~1 年 の 予 測 は7 年 の 実 績 値 と 下 記 推 計 式 のパラメーターより 試 算 なお 9 年 の 人 口 は 9 年 5 月 時 点 の 人 口 とした 贈 与 件 数 ( 万 件 ) = -35.1 + 4.53 4 代 人 口 (1 万 人 ) (-5.96) (14.5) +.24 ダミー 変 数 (2.44) ( )はt 値 Sample: 1986~27 Adj.R^2=.914 D.W.=1.99 ただし 贈 与 件 数 は 暦 年 課 税 分 と 相 続 時 精 算 課 税 分 の 合 計 ダミー 変 数 (23~5 年 )は 4 代 人 口 (1 万 人 ) ( 資 料 ) 国 税 庁 統 計 年 報 書 総 務 省 人 口 推 計 月 報 国 立 社 会 保 障 人 口 問 題 研 究 所 将 来 推 計 人 口 データベース 23~5 年 のときと 同 程 度 の 駆 け 込 み 贈 与 が 発 生 するなら 贈 与 件 数 はさらに 3.9 万 件 程 度 増 える 可 能 性 もある ただ 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 した 贈 与 の 多 くが 住 宅 購 入 の 際 の 自 己 資 金 額 程 度 である 蓋 然 性 が 高 いことを 考 慮 すると 増 加 が 見 込 まれる+3.9 万 件 の 大 半 が 主 に 暦 年 課 税 を 選 択 したものになると 考 えられる そのため 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 は 29 年 に 暦 年 課 税 を 利 用 するケースで 61 万 円 程 度 の 住 宅 取 得 資 金 贈 与 を 3.9 万 件 また 21 年 も 同 じく 暦 年 課 税 を 利 用 するケースで 1,2 万 円 程 度 の 住 宅 取 得 資 金 贈 与 を 3.9 万 件 程 度 新 たに 発 生 させる 可 能 性 があると 考 えることが 19

できる その 結 果 今 回 の 非 課 税 枠 拡 大 は 29 年 の 贈 与 を 自 然 増 からさら に 2,4 億 円 程 度 また 21 年 については 同 じく 自 然 増 からさらに 4,7 億 円 程 度 増 加 させる 可 能 性 があると 試 算 できる 1 ( 図 表 24) 住 宅 投 資 への 効 果 については 仮 に 平 均 住 宅 購 入 価 格 が 前 掲 図 表 19 で 示 した 4 代 が 購 入 する 住 宅 価 格 の 平 均 値 と 同 じ 3,3 万 円 程 度 だとすると 29 年 21 年 ともに 1.3 兆 円 程 度 の 押 上 げ 効 果 と 試 算 できる( 図 表 25) 11 図 表 24 非 課 税 枠 拡 大 の 贈 与 促 進 効 果 ( 試 算 ) 贈 与 の 促 進 効 果 (29 年 )= ( 61 万 円 3.9 万 件 ) =.24 兆 円 贈 与 の 促 進 効 果 (21 年 )= ( 1,2 万 円 3.9 万 件 ) =.47 兆 円 ( 参 考 :27 年 の 贈 与 額 =2.5 兆 円 ) ( 注 ) 当 初 より 住 宅 取 得 資 金 の 受 贈 ( 暦 年 課 税 )を 予 定 していた 世 帯 が 非 課 税 枠 拡 大 にあわせて その 額 を 増 額 させる 効 果 は 含 まない ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 試 算 図 表 25 非 課 税 枠 拡 大 の 住 宅 投 資 GDP 押 し 上 げ 効 果 ( 試 算 ) (29 年 ) (21 年 ) 平 均 住 宅 購 入 価 格 (1)= 3,3 万 円 平 均 住 宅 購 入 価 格 (1)= 3,3 万 円 贈 与 件 数 (2)= 3.9 万 件 贈 与 件 数 (2)= 3.9 万 件 名 目 住 宅 投 資 (3=1 2)= 1.3 兆 円 名 目 住 宅 投 資 (1 2)= 1.3 兆 円 名 目 GDP(28 年 4)= 55.1 兆 円 名 目 GDP(28 年 4)= 55.1 兆 円 経 済 効 果 (3 4)=.3% 経 済 効 果 (3 4)=.3% ( 注 ) 非 課 税 枠 拡 大 によって 当 初 予 定 されていなかった 住 宅 購 入 が 新 たに3.9 万 件 発 生 する 場 合 の 試 算 そのため 当 初 より 住 宅 購 入 を 予 定 していた 世 帯 が 非 課 税 枠 拡 大 にあわせて 住 宅 購 入 価 格 を 引 き 上 げる 効 果 については 考 慮 していない ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 試 算 < 消 費 支 出 の 押 上 げ 効 果 > なお 住 宅 購 入 は 長 期 ローンを 組 むのが 一 般 的 であるため 住 宅 ローン 返 済 の 負 担 が 増 減 することによって その 世 帯 の 消 費 への 影 響 が 発 生 することも 考 えら れる 住 宅 ローンの 返 済 額 への 影 響 については まず 当 初 から 住 宅 購 入 を 考 え ていた 世 帯 で 非 課 税 枠 拡 大 を 受 けて 住 宅 ローンの 負 担 が 軽 減 されることが 考 えられる その 結 果 月 々の 住 宅 ローンの 返 済 を 減 額 することが 可 能 となり そ こで 得 られる 余 裕 資 金 の 一 部 を 消 費 に 回 す 可 能 性 がある 一 方 今 回 の 非 課 税 枠 拡 大 を 受 けて 新 たに 住 宅 購 入 を 決 めた 世 帯 では 当 初 予 定 していなかった 住 宅 ローンの 返 済 負 担 が 発 生 することから 当 面 の 消 費 が 1 ただし 非 課 税 枠 拡 大 に 関 係 なく 当 初 より 住 宅 取 得 資 金 の 受 贈 ( 暦 年 課 税 )を 予 定 していた 世 帯 が 非 課 税 枠 拡 大 にあわせてその 額 を 増 額 させる 効 果 は 含 まない 11 21 年 の 非 課 税 枠 拡 大 は 受 贈 者 の 所 得 が 2, 万 円 以 下 という 所 得 制 限 が 設 けられているが 図 表 25 の 試 算 では 所 得 制 限 の 影 響 を 考 慮 していない 2

抑 制 される 可 能 性 がある まず 住 宅 ローンの 負 担 が 軽 減 される 世 帯 の 消 費 押 上 げ 効 果 についてみていこ う 暦 年 課 税 での 平 均 贈 与 額 は 統 計 で 確 認 できる 27 年 の 実 績 で 約 33 万 円 と なっている 当 初 から 住 宅 購 入 を 予 定 していた 世 帯 への 贈 与 予 定 額 が 仮 にこの 平 均 額 と 同 じ 33 万 円 であったとし それが 非 課 税 枠 拡 大 を 受 けて 平 均 的 に 非 課 税 枠 と 同 額 の 61 万 円 まで 増 額 された 場 合 住 宅 ローンの 設 定 額 を 28 万 円 減 らすことが 可 能 となる 3%の 固 定 金 利 で 元 利 均 等 返 済 型 の 3 年 ローンの 場 合 を 考 えると 住 宅 ローンが 28 万 円 減 れば 住 宅 ローンの 返 済 額 は 月 々1.2 万 円 年 間 で 14.2 万 円 減 ることになる そして この 浮 いた 約 14 万 円 のうち 8 万 円 程 度 が 消 費 に 回 る 可 能 性 がある 12 非 課 税 枠 拡 大 に 関 係 なく 人 口 動 態 との 関 係 のみから 予 想 される 29 年 の 贈 与 件 数 ( 暦 年 課 税 )は 約 28.6 万 件 であるが( 図 表 26) そのうちどれくらいがこの ケースに 該 当 するか 厳 密 に 知 ることはできない ただ 仮 に 全 てが 該 当 する 場 合 すなわち 今 回 の 試 算 方 法 において 消 費 の 押 上 げ 効 果 が 最 大 になる 場 合 について 試 算 すると その 効 果 は 23 億 円 程 度 (29 年 )と 計 算 することができる( 図 表 27 上 図 ) 21 年 についても 同 様 の 試 算 を 行 なう( 図 表 27 下 図 ) 21 年 は 暦 年 課 税 の 非 課 税 枠 が 1,61 万 円 まで 拡 大 されることから 住 宅 取 得 資 金 の 平 均 贈 与 額 は 第 4 章 で 考 察 したように 4 代 の 住 宅 取 得 時 の 平 均 自 己 資 金 額 と 同 程 度 の 1,2 万 円 程 度 まで 増 加 することが 予 想 される その 結 果 住 宅 ローンの 返 済 を 除 いたマ クロベースの 可 処 分 所 得 が 約 1,31 億 円 増 加 し その 56% 程 度 が 消 費 に 回 ると 試 算 される これらから 消 費 押 上 げ 効 果 は 約 73 億 円 となる 平 均 贈 与 額 ( 万 円 ) 平 均 贈 与 額 ( 万 円 ) 図 表 26 贈 与 予 測 相 続 時 精 算 課 税 暦 年 課 税 住 宅 資 金 非 住 宅 資 金 住 宅 資 金 非 住 宅 資 金 件 数 ( 万 件 ) ( )は 対 ベース ライン 比 件 数 ( 万 件 ) ( )は 対 ベー スライン 比 平 均 贈 与 額 ( 万 円 ) 平 均 贈 与 額 ( 万 円 ) ベースライン ( 推 計 万 件 ) 駆 込 み 効 果 ( 推 計 万 件 ) 23 1,483 2.6 (7%) 1,486 5.2 (14%) 525 4. (11%) 328 28.7 (78%) 4.4 36.6 3.7 24 1,454 2.7 (7%) 1,429 5.7 (15%) 537 3.3 (9%) 315 28.9 (79%) 4.4 36.7 3.7 25 1,53 2.7 (7%) 1,492 5.5 (15%) 547 3.7 (1%) 326 28.9 (79%) 4.5 36.8 3.7 26 1,135 3.2 (9%) 1,412 5.1 (14%) 321 28.8 (78%) 37. 37. 27 1,212 3.9 (11%) 1,415 5. (14%) 33 27.1 (75%) 35.9 35.9 28( 予 測 ) 1,212 4. (11%) 1,415 5.2 (14%) 33 27.8 (75%) 36.8 36.8 29( 予 測 ) 1,212 4. (11%) 1,415 5.3 (14%) 61 3.9+α (1%+β) 33 28.6-α (75%-β) 41.7 37.9 3.9 21( 予 測 ) 1,212 4.1 (11%) 1,415 5.5 (14%) 1,2 3.9+α (1%+β) 33 29.6-α (75%-β) 43.2 39.3 3.9 新 たに 住 宅 取 得 を 決 める 世 帯 =3.9 万 件 / 年 非 課 税 枠 拡 大 を 受 け 贈 与 額 ( 受 贈 額 )を 増 額 する 世 帯 =α( 万 世 帯 )/ 年 (ただし α 約 29 万 ) ( 資 料 ) 国 税 庁 資 料 をもとにみずほ 総 合 研 究 所 作 成 件 数 ( 万 件 ) ( )は 対 ベースライン 比 件 数 ( 万 件 ) ( )は 対 ベースライン 比 贈 与 件 数 ( 万 件 ) 12 ここでは 可 処 分 所 得 の 変 化 に 対 する 消 費 支 出 の 変 化 の 割 合 ( 限 界 消 費 性 向 )を.556(56% 程 度 )と している( 詳 細 は 22 頁 参 照 ) 21

図 表 27 当 初 より 住 宅 購 入 を 決 めていた 世 帯 の 消 費 押 上 げ 効 果 29 年 =+226 億 円 < 住 宅 取 得 資 金 の 調 達 > < 住 宅 ローンの 返 済 額 > 33 万 円 貯 蓄 からの 自 己 資 金 贈 与 からの 自 己 資 金 住 宅 ローン 当 初 の 予 定 貯 蓄 からの 自 己 資 金 贈 与 からの 自 己 資 金 住 宅 ローン 贈 与 の 増 額 後 61 万 円 (+28 万 円 ) ( 28 万 円 ) 月 額 年 額 1 年 目 1.2 万 円 14.2 万 円 2 年 目 3 年 目 14.2 万 円 3 年 目 固 定 金 利 3%の 元 利 均 等 型 3 年 ローンの 場 合 28.6 万 世 帯 非 課 税 枠 拡 大 を 受 けて 住 宅 ローンを 当 初 の 予 定 額 より 減 らす 可 能 性 がある 世 帯 数 の 最 大 値 住 宅 ローン 返 済 負 担 ( 年 間 )= 46 億 円 ( = 14 万 円 28.6 万 世 帯 ) 可 処 分 所 得 ( 年 間 )= + 46 億 円 限 界 消 費 性 向 (.556) ( 注 ) 個 人 消 費 ( 年 間 )= + 226 億 円 税 金 等 ローン 返 済 貯 蓄 消 費 税 金 等 ローン 返 済 貯 蓄 消 費 住 宅 ローン 返 済 額 = 46 億 円 ( 可 処 分 所 得 = + 46 億 円 ) 個 人 消 費 = 可 処 分 所 得 限 界 消 費 性 向 = + 226 億 円 当 初 の 予 定 贈 与 の 増 額 後 21 年 =+727 億 円 < 住 宅 取 得 資 金 の 調 達 > < 住 宅 ローンの 返 済 額 > 33 万 円 貯 蓄 からの 自 己 資 金 贈 与 からの 自 己 資 金 住 宅 ローン 当 初 の 予 定 貯 蓄 からの 自 己 資 金 贈 与 からの 自 己 資 金 住 宅 ローン 贈 与 の 増 額 後 1,2 万 円 (+87 万 円 ) ( 87 万 円 ) 月 額 3.7 万 円 年 額 44.1 万 円 44.1 万 円 1 年 目 2 年 目 3 年 目 3 年 目 固 定 金 利 3%の 元 利 均 等 型 3 年 ローンの 場 合 29.6 万 世 帯 非 課 税 枠 拡 大 を 受 けて 住 宅 ローンを 当 初 の 予 定 額 より 減 らす 可 能 性 がある 世 帯 数 の 最 大 値 住 宅 ローン 返 済 負 担 ( 年 間 )= 1,37 億 円 ( = 44 万 円 29.6 万 世 帯 ) 可 処 分 所 得 ( 年 間 )= + 1,37 億 円 限 界 消 費 性 向 (.556) ( 注 ) 個 人 消 費 ( 年 間 )= + 727 億 円 税 金 等 ローン 返 済 貯 蓄 消 費 税 金 等 ローン 返 済 貯 蓄 消 費 住 宅 ローン 返 済 額 = 1,37 億 円 ( 可 処 分 所 得 = + 1,37 億 円 ) 個 人 消 費 = 可 処 分 所 得 限 界 消 費 性 向 = + 727 億 円 当 初 の 予 定 贈 与 の 増 額 後 ( 注 ) 限 界 消 費 性 向 は 以 下 の 推 計 より 算 出 家 計 最 終 消 費 支 出 ( 兆 円 )=6.725 +.556 可 処 分 所 得 ( 兆 円 )+.983 前 年 の 家 計 最 終 消 費 支 出 ( 兆 円 ) ( 2.35)( 6.56) ( 88.729) sample: 1981~ 28 Adj.R^= 2.998 D.W. =2.37 ただし 家 計 最 終 消 費 支 出 ならびに 可 処 分 所 得 はSNAベース ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 試 算 ( ) 内 はt 値 22

< 消 費 支 出 の 抑 制 効 果 > このように 非 課 税 枠 拡 大 は 住 宅 購 入 件 数 の 増 加 という 直 接 的 な 効 果 以 外 に も 住 宅 ローンの 減 額 を 通 じて 消 費 を 押 し 上 げる 間 接 的 な 効 果 も 期 待 できる た だ 逆 に 非 課 税 枠 拡 大 を 受 けて 新 たに 住 宅 購 入 を 決 めた 世 帯 では 住 宅 ロー ンの 返 済 負 担 が 発 生 することから 消 費 の 抑 制 効 果 が 生 じる 可 能 性 がある こう した 消 費 抑 制 の 影 響 を 試 算 したのが 図 表 28 である 図 表 28 の 試 算 では 住 宅 購 入 価 格 を 3~4 代 の 平 均 住 宅 取 得 必 要 資 金 と 同 程 度 額 の 3,3 万 円 (29 年 前 掲 図 表 19)と 仮 定 し 非 課 税 贈 与 との 差 額 を 全 て 住 宅 ローンで 資 金 調 達 するケース すなわち 今 回 の 試 算 方 法 において 住 宅 ロー ンの 設 定 額 ( 並 びに 消 費 抑 制 効 果 )が 最 大 となるようなケースについて 試 算 した 想 定 したケースでは 29 年 に 暦 年 課 税 の 非 課 税 枠 が 61 万 円 に 拡 大 したのを 受 けて 新 たに 住 宅 購 入 を 決 定 した 世 帯 は 約 2,7 万 円 の 住 宅 ローンを 組 むことに なる 図 表 27 の 試 算 と 同 様 に 3% 固 定 金 利 の 元 利 均 等 返 済 型 の 3 年 ローンを 仮 定 した 場 合 住 宅 ローンの 返 済 額 は 月 々11.4 万 円 年 間 で 約 136 万 円 となる 新 規 に 住 宅 を 購 入 することを 決 めた 世 帯 の 数 を 予 測 値 の 最 大 値 である 3.9 万 世 帯 とすると 新 たに 発 生 する 住 宅 ローンの 返 済 額 は 総 額 で 約 53 億 円 と 計 算 でき る したがって 年 間 約 53 億 円 の 可 処 分 所 得 ( 住 宅 ローン 返 済 を 除 くベース)が 減 少 することになり 限 界 消 費 性 向 (56%)を 乗 じると 29 億 円 程 度 の 消 費 減 少 につながる 可 能 性 があると 試 算 できる また 21 年 について 同 様 の 試 算 を 行 な うと 同 年 の 消 費 抑 制 効 果 は 約 23 億 円 となる このように 非 課 税 枠 拡 大 の 消 費 への 影 響 については 非 課 税 枠 拡 大 が なくても 住 宅 購 入 を 予 定 していた 世 帯 と 非 課 税 枠 拡 大 によって 新 たに 住 宅 購 入 を 決 定 した 世 帯 とで 異 なるものになると 考 えられる ただ 実 際 には 2 つのケ ースが 混 在 するため 消 費 へのプラスの 効 果 とマイナスの 効 果 が 相 殺 しあい 結 果 的 に 消 費 への 影 響 は 限 定 的 なものにとどまると 考 えられる また 仮 に 消 費 への 効 果 がいずれか 一 方 に 偏 って 現 れるような 極 端 なケースに なったとしても 試 算 結 果 から 判 断 する 限 り その 影 響 は 数 百 億 円 程 度 にとどま り 大 きなインパクトはないものと 予 想 される たとえ 消 費 への 影 響 が 抑 制 効 果 のみに 現 れたとしても 住 宅 投 資 の 拡 大 効 果 がこれを 補 って 余 りあることになろ う 23

図 表 28 新 たに 住 宅 購 入 を 決 めた 世 帯 の 消 費 抑 制 効 果 29 年 = 293 億 円 < 住 宅 取 得 資 金 の 調 達 > < 住 宅 ローンの 返 済 額 > 3,3 万 円 贈 与 からの 自 己 資 金 61 万 円 月 額 年 額 +11.4 万 円 +136.3 万 円 +136 万 円 3.9 万 世 帯 当 初 の 予 定 住 宅 ローン 贈 与 の 増 額 後 2,69 万 円 1 年 目 2 年 目 3 年 目 3 年 目 固 定 金 利 3%の 元 利 均 等 型 3 年 ローンの 場 合 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 を 契 機 に 新 たに 住 宅 取 得 を 決 め た 世 帯 住 宅 ローン 返 済 負 担 ( 年 間 )= + 528 億 円 ( =136 万 円 3.9 万 世 帯 ) 税 金 等 可 処 分 所 得 ( 年 間 )= 528 億 円 限 界 消 費 性 向 (.556) ( 注 ) 貯 蓄 個 人 消 費 ( 年 間 )= 293 億 円 税 金 等 ローン 返 済 貯 蓄 住 宅 ローン 返 済 額 = + 528 億 円 ( 住 宅 ローン 返 済 額 = 528 億 円 ) 個 人 消 費 = 可 処 分 所 得 限 界 消 費 性 向 = 293 億 円 消 費 当 初 の 予 定 消 費 贈 与 の 増 額 後 21 年 = 233 億 円 < 住 宅 取 得 資 金 の 調 達 > < 住 宅 ローンの 返 済 額 > 3,3 万 円 贈 与 からの 自 己 資 金 1,2 万 円 月 額 +8.9 万 円 +16 万 円 年 額 +16.4 万 円 3.9 万 世 帯 当 初 の 予 定 住 宅 ローン 贈 与 の 増 額 後 2,1 万 円 1 年 目 2 年 目 3 年 目 3 年 目 固 定 金 利 3%の 元 利 均 等 型 3 年 ローンの 場 合 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 を 契 機 に 新 たに 住 宅 取 得 を 決 め た 世 帯 住 宅 ローン 返 済 負 担 ( 年 間 )= + 42 億 円 ( =16 万 円 3.9 万 世 帯 ) 税 金 等 可 処 分 所 得 ( 年 間 )= 42 億 円 限 界 消 費 性 向 (.556) ( 注 ) 貯 蓄 個 人 消 費 ( 年 間 )= 233 億 円 税 金 等 ローン 返 済 貯 蓄 住 宅 ローン 返 済 額 = + 42 億 円 ( 住 宅 ローン 返 済 額 = 42 億 円 ) 個 人 消 費 = 可 処 分 所 得 限 界 消 費 性 向 = 233 億 円 消 費 当 初 の 予 定 消 費 贈 与 の 増 額 後 ( 注 ) 限 界 消 費 性 向 は 以 下 の 推 計 より 算 出 家 計 最 終 消 費 支 出 ( 兆 円 )=6.725 +.556 可 処 分 所 得 ( 兆 円 )+.983 前 年 の 家 計 最 終 消 費 支 出 ( 兆 円 ) ( 2.35)( 6.56) ( 88.729) sample: 1981~ 28 Adj.R^= 2.998 D.W. =2.37 ただし 家 計 最 終 消 費 支 出 ならびに 可 処 分 所 得 はSNAベース ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 試 算 ( ) 内 はt 値 24

(2) 非 課 税 枠 拡 大 は 格 差 の 固 定 化 を 助 長 するか 内 需 活 性 化 を 意 図 した 非 課 税 枠 拡 大 であるが 贈 与 税 負 担 を 軽 減 すること に 対 しては 高 額 資 産 保 有 者 を 優 遇 する 政 策 との 批 判 もある 非 課 税 枠 拡 大 の 恩 恵 を 受 けられるのが 従 来 の 非 課 税 枠 以 上 の 贈 与 を 行 なえる 高 額 資 産 を 保 有 する 者 に 限 られることから 世 代 を 跨 いだ 資 産 格 差 の 固 定 化 を 助 長 させるとの 批 判 だ 贈 与 税 がなければ 生 前 贈 与 によって 親 は 資 産 全 額 を 子 に 無 税 で 移 転 できるた め 相 続 税 の 有 する 所 得 再 分 配 機 能 が 損 なわれる それを 防 ぐために 生 前 贈 与 を 行 なっても 税 負 担 が 軽 くならないように 贈 与 税 が 設 けられている したがっ て 非 課 税 枠 を 拡 大 させ 贈 与 税 の 税 負 担 を 軽 減 させる 措 置 は 一 義 的 には 資 産 再 分 配 機 能 の 低 下 を 意 味 し 資 産 格 差 の 固 定 化 という 観 点 から 副 作 用 を 伴 う 政 策 と いうことになる 贈 与 を 行 なう 場 合 贈 与 者 は 相 続 時 精 算 課 税 制 度 と 暦 年 課 税 制 度 を 選 択 するこ とができる 相 続 税 と 贈 与 税 を 通 算 する 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 するケースでは 資 産 価 格 の 将 来 の 変 動 がないと 仮 定 すれば 生 前 贈 与 を 行 なってもトータルの 相 続 コストは 変 わらない( 図 表 29) 贈 与 税 と 相 続 税 を 合 わせた 最 終 的 な 相 続 コス トは 相 続 税 の 実 効 税 率 によって 決 まる そのため 相 続 時 精 算 課 税 制 度 を 利 用 す るケースでは 非 課 税 枠 拡 大 によって 資 産 格 差 の 固 定 化 が 助 長 されることはな い 一 方 暦 年 課 税 を 利 用 するケースでは 贈 与 者 の 保 有 する 資 産 が 相 続 税 の 基 礎 控 除 を 上 回 る 場 合 に 限 り 生 前 贈 与 を 行 なうことで 相 続 コストを 削 減 することが 可 能 な 場 合 がある 非 課 税 枠 拡 大 によって 親 の 保 有 する 資 産 を 受 贈 後 に 住 宅 資 産 に 変 えれば( 住 宅 を 購 入 すれば) 29 年 は 従 来 に 比 べ 5 万 円 多 い 資 産 を 非 課 税 で 実 質 的 に 相 続 できるようになるという 見 方 もできる 例 えば 世 帯 主 のほかに 配 偶 者 と 2 人 の 子 がいる 世 帯 の 場 合 相 続 税 の 基 礎 控 除 額 は 8, 万 円 となる 単 純 なケース 13 を 想 定 すると 8, 万 円 以 上 の 資 産 を 保 有 する 世 帯 では 生 前 贈 与 を 用 いて 相 続 コストを 削 減 することができ 29 年 の 非 課 税 枠 拡 大 によって 実 効 税 率 を 最 大 1% 弱 程 度 低 下 させることが 可 能 とな る( 図 表 3 の C-B ) ただ 将 来 の 資 産 価 格 の 変 動 も 考 慮 すれば 実 際 には 1% 程 度 の 節 税 効 果 を 重 視 して 資 産 を 生 前 贈 与 するケースはそれほど 多 くはないだろう 換 言 すれば 暦 年 13 試 算 で 仮 定 したケースは 以 下 の 通 り 親 から 2 人 の 子 にそれぞれ 同 額 の 贈 与 を 一 度 行 ない 残 った 資 産 は 配 偶 者 と 2 人 の 子 に 相 続 される(1 次 相 続 ) 配 偶 者 が 相 続 した 資 産 も その 後 2 人 の 子 に 相 続 される(2 次 相 続 ) なお 1 次 相 続 ならびに 2 次 相 続 の 際 の 2 人 の 子 への 相 続 額 は 贈 与 と 同 様 に 同 額 とする なお 遺 産 額 が 全 て 贈 与 税 もしくは 相 続 税 の 課 税 対 象 となるように 1 相 続 時 精 算 課 税 に 係 る 贈 与 2 相 続 開 始 前 3 年 以 内 の 贈 与 3 非 課 税 財 産 4 債 務 等 はいずれもないものと 仮 定 その 上 で 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 の 合 計 が 最 小 になる 贈 与 額 ならびに 1 次 相 続 の 際 に 配 偶 者 が 相 続 する 実 際 の 割 合 と 配 偶 者 控 除 額 を 算 出 贈 与 がない 場 合 は 資 産 に 対 する 相 続 税 額 の 比 率 を 相 続 コストの 実 効 税 率 とし 贈 与 が 行 なわれる 場 合 に ついては 資 産 に 対 する 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 の 合 計 の 比 率 を 相 続 コストの 実 効 税 率 とした 25

課 税 を 利 用 したケースであっても 29 年 の 税 制 改 正 で 従 来 の 制 度 に 比 べ 著 しく 資 産 格 差 の 固 定 化 が 助 長 されるとは 考 えづらい 21 年 についても 試 算 上 節 税 額 は 拡 大 するが それでも 実 効 税 率 を 最 大 2% 強 低 下 させるに 過 ぎず( 図 表 3 の D-B 14 ) 28 年 までと 比 べて 資 産 格 差 を 固 定 化 させる 効 果 が 著 しく 大 き くなるとまでは 言 えない なお 21 年 の 改 正 では 非 課 税 枠 拡 大 を 利 用 でき る 条 件 として 受 贈 者 の 所 得 が 2, 万 円 以 下 であるとする 所 得 制 限 を 設 けている 金 持 ち 優 遇 の 基 準 を 資 産 格 差 の 固 定 化 を 助 長 させるかどうかに 置 くとすれば この 制 限 はそれほど 重 要 ではないとも 言 える 図 表 29 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 した 場 合 の 相 続 コスト (A) 従 来 の 税 制 で 住 宅 取 得 資 金 4, 万 円 の 贈 与 を 受 けた 場 合 4, 万 円 贈 与 時 ( 精 算 課 税 を 選 択 ) 非 課 税 枠 3,5 万 円 5 万 円 税 率 2%= 贈 与 税 額 1 万 円 贈 与 額 相 続 額 贈 与 税 額 1 相 続 税 額 α-1 合 計 ( 相 続 コスト) α 相 続 時 ( 贈 与 者 の 死 亡 時 ) 相 続 税 の 基 礎 控 除 課 税 対 象 1 α-1 課 税 対 象 相 続 税 率 - 控 除 (1 万 円 )= 相 続 税 額 (α-1 万 円 ) (B) 今 年 度 の 税 制 で 住 宅 取 得 資 金 4, 万 円 の 贈 与 を 受 けた 場 合 4, 万 円 贈 与 時 ( 精 算 課 税 を 選 択 ) 非 課 税 枠 4, 万 円 贈 与 税 額 万 円 相 続 時 ( 贈 与 者 の 死 亡 時 ) 贈 与 額 相 続 税 の 基 礎 控 除 相 続 額 課 税 対 象 α 贈 与 税 額 相 続 税 額 合 計 ( 相 続 コスト) α α 課 税 対 象 相 続 税 率 - 控 除 ( 万 円 )= 相 続 税 額 (α) ( 資 料 ) 財 務 省 HPをもとに 加 筆 作 成 14 D-C と C-B の 合 計 26

図 表 3 暦 年 課 税 贈 与 を 用 いた 相 続 コストの 削 減 シミュレーション 相 続 税 の 最 小 実 効 税 率 : A 贈 与 ありの 最 小 相 続 コスト( 贈 与 非 課 税 =11 万 円 ): B ( 贈 与 非 課 税 =61 万 円 ): C (%) ( 贈 与 非 課 税 =161 万 円 ): D B-A( 右 目 盛 ) (%) 35. 3 25 2 15 1 5 C-B( 右 目 盛 ) D-C( 右 目 盛 ).5 1. 1.5 2. 2.5 3. 3.5.7.8.9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 資 産 額 ( 億 円 ) ( 注 )Aは1 次 相 続 ( 親 から 配 偶 者 および 子 への 相 続 )に 加 え2 次 相 続 ( 配 偶 者 から 子 への 相 続 )も 考 慮 した 相 続 税 額 の 最 小 実 効 税 率 B C Dは 生 前 贈 与 を1 回 行 なった 場 合 の1 次 2 次 相 続 を 考 慮 した 最 小 相 続 コスト( 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 をあわせた 実 効 税 率 ) ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 試 算 (3) 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 を 阻 む 将 来 不 安 ここまでの 分 析 で 示 したように 29 年 の 非 課 税 枠 拡 大 は 資 産 格 差 の 固 定 化 という 副 作 用 は 限 定 的 であるとみられ また 贈 与 の 駆 込 み 効 果 があれば 3.9 万 件 程 度 の 住 宅 購 入 の 増 加 が 期 待 できるはずである しかし そうした 効 果 が 実 際 には 発 生 していない 可 能 性 もある 15 また 発 生 していたとしても 住 宅 投 資 の 落 ち 込 みを 一 部 補 う 程 度 にとどまり 冷 え 込 みの 厳 しい 住 宅 市 場 を 活 性 化 させるまで には 至 っていない 持 家 系 の 新 設 着 工 件 数 をみると 昨 年 4 月 以 降 底 打 ち 感 がやや 出 てきているも のの 目 立 った 回 復 は 見 られていない( 図 表 31) 名 目 住 宅 投 資 額 も 減 少 基 調 が 続 いており 7~9 月 期 時 点 において 持 ち 直 しの 兆 しは 見 られない 名 目 住 宅 投 資 の 減 少 については 貸 家 の 新 設 着 工 が 減 少 している 影 響 などもあるが 試 算 した 非 課 税 枠 拡 大 の 効 果 を 打 ち 消 してしまうほどに 住 宅 投 資 を 下 押 しする 要 因 が 働 いている 可 能 性 もある 景 気 は 回 復 基 調 にあるとはいえ ボーナスの 減 少 が 続 き 将 来 所 得 に 明 るい 展 望 が 描 けない 中 で 住 宅 ローンの 負 担 が 従 来 よりも 軽 減 できるとしても 住 宅 購 入 に 踏 み 切 ることができない 家 計 が 相 当 程 度 あると 考 えられる( 図 表 32) 住 宅 購 15 ただし 住 宅 金 融 支 援 機 構 の 調 査 平 成 21 年 度 民 間 住 宅 ローン 利 用 者 の 実 態 調 査 ( 民 間 住 宅 ローン 利 用 予 定 者 編 ( 第 2 回 )) によれば 住 宅 ローン 利 用 予 定 者 うち 贈 与 税 の 非 課 税 枠 拡 大 は 住 宅 取 得 計 画 に 影 響 ありますか? という 問 いに はい と 回 答 した 者 の 割 合 は 34.8%に 及 ぶ 27

図 表 31 持 家 系 住 宅 の 新 設 着 工 件 数 と 名 目 住 宅 投 資 ( 万 件 ) 8 7 6 5 4 3 2 1 分 譲 ( 左 目 盛 ) 持 家 ( 左 目 盛 ) 名 目 住 宅 投 資 ( 右 目 盛 ) 6 7 8 9 ( 注 ) 季 節 調 整 値 ( 資 料 ) 国 土 交 通 省 建 築 着 工 統 計 内 閣 府 国 民 経 済 計 算 ( 年 / 月 ) ( 兆 円 ) 2 18 16 14 12 1 8 6 4 2 図 表 32 住 宅 取 得 に 踏 み 切 れない 理 由 ( 住 宅 ローン 利 用 予 定 者 ) (%) 5 1 15 2 25 3 35 4 景 気 低 迷 によ って 収 入 が 減 ったから 雇 用 不 安 があり 将 来 の 収 入 や 生 活 に 不 安 がある から 景 気 など 先 行 き 不 透 明 感 があり 今 はお 金 を 使 いたくないから もう 少 し 待 てば 住 宅 価 格 は 更 に 下 がる と 思 うから 将 来 住 宅 価 格 が 値 下 がりする 可 能 性 がある から なんとなく 家 賃 支 払 いの 方 が 経 済 的 に 有 利 と 考 える から 株 価 低 迷 などで 頭 金 が 用 意 できなくなったから 29 年 1 月 調 査 29 年 7 月 調 査 結 婚 など 世 帯 形 成 の 予 定 がなく 住 宅 取 得 の 必 要 性 に 迫 られていないから その 他 ( 資 料 ) 住 宅 金 融 支 援 機 構 平 成 21 年 度 民 間 住 宅 ローン 利 用 者 の 実 態 調 査 ( 民 間 住 宅 ローン 利 用 者 予 定 編 ( 第 2 回 )) 入 の 意 思 が 強 い 世 帯 についても 将 来 不 安 があるなかでは 非 課 税 枠 拡 大 で 受 けた 恩 恵 を 住 宅 の 購 入 価 格 引 き 上 げではなく どちらかといえば 設 定 する 住 宅 ロ ーンの 減 額 に 使 う 可 能 性 が 高 いと 考 えられる 以 上 で 述 べてきたことをまとめると 29 年 21 年 の 非 課 税 枠 拡 大 は 28

資 産 格 差 の 固 定 化 については それほど 懸 念 する 必 要 がないものの 経 済 効 果 も GDP を.3% 押 し 上 げる 程 度 ( 前 掲 図 表 25)にとどまるというのが 結 論 だ 住 宅 投 資 に 対 して 一 定 の 効 果 が 期 待 できるとしても 内 需 活 性 化 の 起 爆 剤 になるほど のインパクトは 持 ち 得 ないだろう また 贈 与 によって 現 役 世 代 の 支 出 に 回 る 可 能 性 があると 考 えられる 資 金 額 も.24~.47 兆 円 程 度 ( 前 掲 図 表 24)と 高 齢 者 の 保 有 する 純 金 融 資 産 36 兆 円 の.1% 程 度 の 移 転 を 促 す 程 度 に 過 ぎない そして その 僅 かな 効 果 ですら 将 来 不 安 の 影 響 などによって 減 殺 されている 可 能 性 が 高 い 家 計 貯 蓄 の 有 効 活 用 という 政 策 目 標 から 考 えれば 29 年 および 21 年 の 住 宅 取 得 資 金 に 限 定 した 非 課 税 枠 拡 大 だけでは 力 不 足 と 言 わざるを 得 ない このため 高 齢 者 の 保 有 する 金 融 資 産 を 現 役 世 代 へ 移 転 させて 内 需 活 性 化 につなげるのであれば さらに 大 胆 な 政 策 が 必 要 だと 思 われる 以 下 では 新 たな 政 策 対 応 について 検 討 する 6 高 齢 者 資 産 の 活 用 に 向 けて 金 融 資 産 を 高 齢 者 から 現 役 世 代 に 移 転 させ 支 出 につなげるにはどうすれば 良 いだろうか まず 考 えられるのが 前 章 (26 頁 )でも 触 れた 非 課 税 贈 与 の 際 の 所 得 制 限 の 緩 和 である 資 産 格 差 の 観 点 からすれば 前 述 の 試 算 ( 前 掲 図 表 3)で 示 したように 所 得 制 限 を 設 けなかったとしても 副 作 用 は 大 きくなく 受 贈 者 の 所 得 を 2, 万 円 以 下 とする 所 得 制 限 に 大 きな 意 味 はないと 言 えよう 今 回 の 贈 与 税 減 税 には 住 宅 購 入 という 使 途 制 限 が 付 いているのであるから むしろ 資 産 のあ る 高 齢 者 からの 資 金 移 転 の 制 約 を 小 さくすることで 支 出 の 拡 大 を 促 し 景 気 の 下 支 え 効 果 を 期 待 するという 意 味 で 所 得 制 限 を 外 す 方 が 良 いと 言 える ただ 所 得 制 限 の 廃 止 によって 経 済 効 果 が 大 きく 高 まるとは 考 えづらく 16 本 質 的 な 解 決 策 と は 言 えない そこで 贈 与 税 減 税 の 制 約 要 件 をさらに 緩 和 する 方 策 について 考 えてみたい 今 回 の 非 課 税 枠 拡 大 では 所 得 制 限 のほかに 1 住 宅 取 得 資 金 の 贈 与 である こと 2 時 限 措 置 であること の 2 つの 制 約 がある 以 降 では これらを 緩 和 さ せた 場 合 の 効 果 について 考 えてみる (1) 副 作 用 の 大 きい 使 途 制 限 の 廃 止 と 恒 久 化 まず 2 つの 制 約 を 外 す 極 端 なケースを 考 えてみる 暦 年 課 税 と 相 続 時 精 算 課 税 の 2 つの 方 式 のうち 贈 与 税 と 相 続 税 を 通 算 する 相 続 時 精 算 課 税 を 利 用 する 場 合 は 贈 与 税 減 税 の 効 果 が 小 さいため 17 ここでは 暦 年 課 税 を 利 用 する 場 合 について 考 16 図 表 24 の 試 算 は 所 得 制 限 について 特 段 考 慮 していない そのため 図 表 24 の 試 算 は 所 得 制 限 がなか った 場 合 の 試 算 といえ 所 得 制 限 を 設 けなかったとしても 大 きな 経 済 効 果 がないことを 示 している 17 最 終 的 に 負 担 する 税 額 ( 贈 与 税 と 相 続 税 の 合 計 額 )が 同 じであったとしても 相 続 時 の 税 負 担 が 一 時 的 29

察 する 暦 年 課 税 を 利 用 する 場 合 時 限 措 置 を 止 め 恒 久 的 な 措 置 とすれば 贈 与 の 回 数 を 増 やすことで 相 続 コストを 抑 制 できるため 間 違 いなく 生 前 贈 与 は 増 加 するは ずだ 例 えば 非 課 税 枠 拡 大 の 期 間 を 1 年 に 延 ばした 場 合 について 考 えてみ よう 贈 与 回 数 を 増 やせば その 分 相 続 コスト 18 の 削 減 額 も 大 きくすることができ る 具 体 的 な 削 減 額 を 検 証 するために 配 偶 者 と 2 人 の 子 がいる 世 帯 について 試 算 19 した 結 果 が 図 表 33 である 非 課 税 枠 が 61 万 円 で 生 前 贈 与 を 1 度 だけ 行 なった 場 合 贈 与 と 相 続 のトータルの 実 効 税 率 は 図 表 3 でも 示 したように 非 課 税 枠 が 11 万 円 の 場 合 より 1% 程 度 低 下 し 相 続 の 実 質 的 な 実 効 税 率 を 最 大 約 1.5% 低 下 させることが 可 能 となる さらに 贈 与 回 数 を 5 回 まで 増 やすと 最 大 6% 弱 の 実 効 税 率 低 下 が 可 能 になる そして 贈 与 回 数 1 回 の 場 合 では 実 効 税 率 を 1% 近 く 図 表 33 暦 年 課 税 の 生 前 贈 与 を 複 数 回 行 なった 場 合 の 相 続 コスト 相 続 税 の 最 小 実 効 税 率 : A 贈 与 5 回 ケースの 最 小 相 続 コスト( 贈 与 非 課 税 =61 万 円 ): B 贈 与 1 回 ケース ( 贈 与 非 課 税 =61 万 円 ): C (%) 贈 与 1 回 ケース ( 贈 与 非 課 税 =161 万 円 ): D (%) 35 3 25 2 15 1 5 D-C( 右 目 盛 ) C-B( 右 目 盛 ) B-A( 右 目 盛 ) 1 12 14 16 18 2.7.8.9 1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 資 産 額 ( 億 円 ) ( 注 )Aは1 次 相 続 ( 親 から 配 偶 者 および 子 への 相 続 )に 加 え2 次 相 続 ( 配 偶 者 から 子 への 相 続 )も 考 慮 した 相 続 税 額 の 最 小 実 効 税 率 B C Dは 生 前 贈 与 を 複 数 回 行 なった 場 合 の1 次 2 次 相 続 を 考 慮 した 最 小 相 続 コスト( 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 をあわせた 実 効 税 率 ) ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 試 算 2 4 6 8 に 軽 減 されることで 贈 与 しやすくなるという 点 も 指 摘 できるが その 影 響 は 小 さいと 考 えられる 18 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 の 合 計 19 試 算 で 仮 定 したケースは 以 下 の 通 り 親 から 2 人 の 子 にそれぞれ 同 額 の 贈 与 を 1 年 間 (1 回 ) 行 ない 残 った 資 産 は 配 偶 者 と 2 人 の 子 に 相 続 される(1 次 相 続 ) 配 偶 者 が 相 続 した 資 産 も その 後 2 人 の 子 に 相 続 される(2 次 相 続 ) なお 1 次 相 続 並 びに 2 次 相 続 の 際 の 2 人 の 子 への 相 続 額 は 贈 与 と 同 様 に 同 額 と する なお 遺 産 額 が 全 て 贈 与 税 もしくは 相 続 税 の 課 税 対 象 となるように 1 相 続 時 精 算 課 税 に 係 る 贈 与 2 相 続 開 始 前 3 年 以 内 の 贈 与 3 非 課 税 財 産 4 債 務 等 はいずれもないものと 仮 定 その 上 で 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 の 合 計 が 最 小 になる 贈 与 額 ならびに 1 次 相 続 の 際 に 配 偶 者 が 相 続 する 実 際 の 割 合 と 配 偶 者 控 除 額 を 算 出 贈 与 がない 場 合 は 資 産 に 対 する 相 続 税 額 の 比 率 を 相 続 コストの 実 効 税 率 とし 贈 与 が 行 なわれる 場 合 については 資 産 に 対 する 贈 与 税 額 と 相 続 税 額 の 合 計 の 比 率 を 相 続 コストの 実 効 税 率 とした 3