添付資料 割れから浸入した雨水等により周辺塗膜の浮きや剥離を引き起こします また ひび割れに沿って中性化が健全な部分に比べ早く鉄筋の位置まで進行します 中性化が鉄筋の位置まで進行し 雨水等が鉄筋と接触すると鉄筋が発錆します 特にベランダの梁へのひび割れは建物の強度を担保する構造部分であるだけに重大で

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記入上の注意 1 施設点検表 ( 統括表 ) 施設点検入力シート 写真帳 のシートの 黄色のセル のみ記入してください 2 施設点検表 ( 統括表 ) シートの主な不具合点には 特に無し や 無し 等の入力は行わないでください シート名の変更は行わないでください 非表示になっているシートがあります

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Taro-通知文

2 目次 大規模修繕とは 大規模修繕の目的 大規模修繕工事の事前準備 修繕委員会等の発足 コンサルタント依頼 建物の調査診断 大規模修繕設計 修繕工事業者選定 総会開催 大規模修繕工事 工事期間 工事工程 工事内容 工事説明会 工事での留意点 竣工検査 竣工図書 長期修繕計画の見直し 修繕積立金 ア

数量総括表 東広畔橋 工 種 種別規格単位 数 量 摘 要 ひびわれ注入工ひびわれ注入エポキシ樹脂系 m 24 表面含浸工 ひびわれ注入 ひびわれ注入 表面含浸 エポキシ樹脂系 IPH システム同工法 329 横 下向き注入 エポキシ樹脂系 IPHシステム同工法 317 上向き注入 サンハイドロック

コンクリート改修施工技術 外壁複合改修工法 の調査研究 拜﨑温敬 *1 武藤正裕 *1 若杉雄一 *1 峯本正直 *1 塚田修治 *1 阿木孝二 *1 川端祥治郎 *1 伊賀上竜也 *1 竹内金吾 *1 津田修 *1 森福啓二 *2 山本智道 *3 1. はじめに ( 工法開発の経緯 ) 建築物外壁

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環境対応型 ホルムアルデヒド トルエン キシレン等 健康住宅研究会優先取組物質 厚生労働省指針値策定物質 を一切使用しておりません 塗膜シート工法 国交省改修工事標準仕様書 C-1,C-2 対応 既存の防水層 ( 露出アスファルト ゴムシート ) の上から改修 折板瓦棒屋根の防水 アスファルトシング

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マンション大規模修繕工事に向けて 設計監理者からのお知らせ 第 2 号 (2009.07.21) 添付資料 中四国マンションサポート部門 本号の内容 1 当建物修繕のポイント 今回の工事の重点修繕項目の解説です 2 工事実施の選択について 概算工事費の区分とその考え方 3 大規模修繕工事に向けて 今後の予定について 1 当マンション建物修繕のポイント 平成 21 年 7 月の宮崎建築設計事務所作成の マンション建物調査診断報告書 では 現状認められる様々な劣化内容が列挙されています この中から当マンション修繕のポイント ( 重点項目 ) となる重大な劣化部分について再確認してみましょう ( これら以外の劣化については マンション建物調査診断報告書 (1 階ロビーにて閲覧予定 ) 及び マンション建物調査診断報告書 : 簡易版 ( 各戸配布予定 ) をご覧ください ) (1) 調査結果から重大な劣化である躯体と漏水についての説明です 1. 全般的な状況本建物の外壁は躯体コンクリートを付け送りモルタル又はセメント系下地調整材で平滑にした後 アクリル吹付けタイル及び磁器タイル張りが施工されており 共用廊下 階段段裏 バルコニー上げ裏はアクリルリシンが施工されています 他の部分は塗装仕上げになっています 防水に関しては 屋上屋根面は ゴムシート防水 14Fルーフバルコニーは 押さえコンクリート防水 エントランス屋上は アスファルト防水 ベランダ 共用廊下側溝は セメント系防水材により施工されています 住居壁 屋上部外部階段手摺壁等は部分的にひび割れ処理 再塗装が行われていますが 大規模改修は行われていません 現状を総合的に判断すると漏水 躯体のひび割れ 爆裂 塗装面の劣化が著しいため早期に大規模改修が必要と考えられます 2. 躯体外壁やベランダの梁 ( 構造部分なので重大 ) などのひび割れが多い考察躯体コンクリートのひび割れが 多数認められます ひび割れの発生は特に上階に数多く見受けられます 共用廊下やバルコニーの上げ裏及び外部階段段裏のひび割れの大部分で漏水が認められます 今のところ漏水していないひび割れでも このまま放置すると 今後漏水すると考えられます 写真は 14 階外壁のひび割れで 巾が0.6mmあります コンクリートでは 漏水する危険性があるひび割れ巾は0.2mm以上と考えられています ひび割れは 漏水の原因になるだけでなく ひび

添付資料 割れから浸入した雨水等により周辺塗膜の浮きや剥離を引き起こします また ひび割れに沿って中性化が健全な部分に比べ早く鉄筋の位置まで進行します 中性化が鉄筋の位置まで進行し 雨水等が鉄筋と接触すると鉄筋が発錆します 特にベランダの梁へのひび割れは建物の強度を担保する構造部分であるだけに重大で 当建物においてはこのタイプのひび割れが多いことが特徴です 又 当該立地条件は塩害も考慮する必要があります 従って ひび割れ補修は改修工事において大変重要な工事といえます 3. 躯体コンクリート及びモルタルの浮き 欠損 爆裂 ( 鉄筋露出 ) ベランダに鉄製手摺基部の錆 コンクリートの爆裂が確認されました 基部固定金具の錆び発生が原 因と考えられ 今後はコンクリート脱落の危険が増すと考えられるので 早急な対策が望まれます 考察写真は バルコニー手摺り金物支柱足元の充填モルタルの浮きです 支柱足元においては ひび割れ程度の症状が大多数でしたが 今後コンクリートやモルタルの浮きが発生する可能性があります ひび割れの発生が多数見受けられることから今後 徐々に増加するものと考えられます コンクリート及びモルタルの欠損内壁等で欠損が認められる箇所があります 大きなひび割れが多数認められるために今後モルタルの欠損が増加する可能性は否定できません 考察写真は 外部階段段裏の露筋です 鉄筋の被り厚が薄いことと漏水が原因と考えられます 全体としては 露筋や鉄筋の発錆が原因と考えられるコンクリートの浮きは 極端に多くありませんが ひび割れや共用廊下やバルコニー上げ裏の漏水箇所は 今のまま放置すると露筋が発生する可能性があり 剥落事故の要因にもなるため早急に改修することが必要です

3. 躯体 漏水ベランダにおける貫通クラックと漏水 添付資料 14 階ルーフハ ルコニーからの漏水が 13 階に表出 3 階ヘ ランタ からの漏水が 2 階に表出 考察戸別調査の結果 ベランダの多くで下階まで貫通するクラックとその結果の白華現象 ( エフロレッセンス ) が非常に多く見られます これらのクラックは ベランダ手摺固定基部の浮きや ベランダ梁のクラックと連続している可能性があり 直接に躯体への悪影響となるため早急に適切な対応が必要です 状況概念図 漏水の懸念されるルート サッシ建具 モルタルやコンクリートの剥落が懸念される部分 建具廻りから漏水し スラブ上へ流入 ベランダ手摺 サッシ下から 防水モルタル コンクリートスラブ スラブ割れから 防水モルタルのひび割れ や排水口廻りから 電気コードなどから下階へ 壁面を下降し下階へ ベランダ防水の現状は防水モルタルコテ押さえのみですが モルタル自体の防水性能はクラック 微細ク ラックの発生により 特に日中温度差が大きいと考えられる上部階において低下しており 修繕工事実施 の際にはウレタン塗膜防水 ( 緑線部分 ) シート防水 ( 茶線部分 ) などの新規設置が必要と考えられます

添付資料 4. 躯体 漏水共用廊下 外部階段における貫通クラックと漏水 この写真部位の下部 この写真部位の下部 考察右列の写真は 13 階共用廊下上げ裏の漏水箇所より流出しているエフロレッセンスです 上階より雨水が流れ出したものと考えられます 周辺塗膜も著しく剥離しています バルコニー上げ裏の漏水箇所でもエフロレッセンスが認められ 直接に躯体への悪影響となるため早急に適切な対応が必要です エフロレッセンスはコンクリート躯体のひび割れ箇所や漏水箇所に白色粉状またはツララ状になって発生します これはコンクリート中のセメントが水和反応し その副産物として生成された可溶性アルカリ成分 ( 水酸化カルシウム ) が 雨水と接したとき溶解し 壁面に流出し ( 炭酸カルシウム ) 凝固したものです 従って いずれの箇所も漏水と関わりがあります 上げ裏の漏水は その部分のみ補修しても短期間で現状と同じような状況に戻ります それを防ぐには 水の入り口である床面の防水工事や鼻先のひび割れ補修工事を十分にやることが不可欠です

添付資料 5. 試験結果 1 コンクリート中性化試験 既存塗膜面及び磁器タイル面各 4 箇所 ( 付着強度調査箇所を使用 ) 結果 < 既存塗膜面 > 中性化深さを測定した部分の竣工当初の仕上材はアクリル吹付けタイルで 現在まで大規模改修は行われていません 仕上材料工法のコンクリート中性化に及ぼす影響 表により計算しますと 現在までの12 年間の中性化深さは予測値 1.28 0.279 = 0.35 (cm) = 3.5( mm ) それに対して測定値 (4 箇所平均 ) 8.65( mm ) 既存塗膜面の予測値と測定値を比べると 4 箇所中 3 箇所で予測値以上の中性化深度を示しています しかし 標準的な鉄筋の被り厚さが確保されていれば 今のところ問題となる数値ではありません さらに 中性化速度は時間の経過と共に遅くなるので 今まで以上に急激に中性化が進むことはないと考えられます しかし ひび割れ箇所は ひび割れに沿って中性化が奥へ進むため 健全な部分に比べ鉄筋の位置まで中性化が速く進み ひび割れより浸入した雨水が鉄筋と接触すると 鉄筋が発錆します 従って ひび割れの補修を十分に行うことが必要です < 磁器タイル面 > 磁器タイル面はタイル面より炭酸ガスが進入するのでは無く 主に目地モルタル面より炭酸ガスが進入するため 仕上材料工法のコンクリート中性化に及ぼす影響 表の セメントモルタル塗り により計算しますと 現在までの12 年間の中性化深さは予測値 1.28 0.217 = 0.28 (cm) = 2.8( mm ) それに対して測定値 (4 箇所平均 ) 0.0( mm ) 磁器タイル面においては 予測値と測定値を比較すると 4 箇所中 4 箇所とも 中性化の進行は見受け られず 問題ありません

添付資料 2 塩分 ( 塩化物イオン ) 含有量試験 既存塗膜面及び磁器タイル面各 4 箇所 ( 中性化試験供試体を使用 ) 結果 コンクリート中の塩化物総量規制では 1 立方メートル中に含まれる塩化物の含有量を 0.3kg/m3 以下とすることとし 塩化物量が 0.6kg/m3を超える場合においては鉄筋への有効な防錆対策を講ずることとされています < 既存塗膜面 > 今回の推定量の結果においては 鉄筋の防錆対策を行う規定値以下の数値 (0.6 kg/m3) となっており特に問題は無いと推定されます 但し 表層に近い箇所については規定値より高い塩化物量の含有がある可能性があります よって 爆裂補修箇所については亜硝酸リチウム塗布により塩害対策を施し 再度 塗材による改修が必要と考えられます < 磁器タイル面 > 今回試験を行った磁器タイル裏面の躯体部分 ( 深さ L=35~61mm) においては 0.28~0.4kg/m3の推定塩分量が計測されました 既存塗膜面より高い数値となっておりますが 遮塩対策 ( 鉄筋への有効な防錆対策 ) を必ず行う必要は無いと考えられます ---------------------------------------------------------- 3 外壁塗膜付着強度調査 既存塗膜面及び磁器タイル面各 4 箇所 ( 建研式単軸油圧引張り試験 ) 結果 < 既存塗膜面 > 既存塗膜付着強度は 4 箇所中 4 箇所とも基準値以上の数値を示しました 健全な部 分では良好な付着性を十分に維持していると考えられます 従って 塗膜の完全ケレン除去の必要はな く 塗膜の浮き部分や脆弱部を十分にケレン除去 ひび割れの処理を行えば問題ないと判断します < 磁器タイル面 > 磁器タイルの付着強度については 浮きやひび割れなどの発生していない外観上健全な部分について測定を行った結果 4 箇所測定中 4 箇所ともいずれの部位も付着強度は基準値を超えています よって 付着強度は維持されており問題ないと考えられます 但し 外観目視 及び一部打診調査を行った結果 磁器タイルの浮き ひび割れが確認されていますので 不具合箇所においては浮き ひび割れの処置が必要です

2 工事実施の選択について 添付資料 マンション建物の詳細な調査と図面確認 現場での寸法確認などから 共通仕様書 ( どのような方法で修繕 するかを規定するもの ) が作成され 概算工事費 ( 修繕設計時点での工事費の試算 ) が明らかとなります 大まかな区分ですが この際の 概算工事費 は 工事実施を検討する上での選択材料として 下記のように 区分することが出来ます ------------------------------------------ 1 修繕必須項目 = 緊急部分 危険部分など仕様と材料に選択余地なし 2 仕様選択可能項目 = 仕様と材料を選択可能 各選択肢の損益と工事費への影響による 3 実施選択可能項目 = 修繕を実施するかしないかを選択可能 ------------------------------------------ 今回の建物調査により ベランダの上下貫通クラックは通常エポキシ樹脂を注入充填する工法が採られますが ベランダ形状 ( 張出しが大きいこと ) や立地環境から考えて おそらく今後も建物 ベランダ共に挙動があると考え そのような場合に硬い材質のエポキシ樹脂では躯体の動きに追従できず破断する可能性が高いので クラックの開口には上下共に U カット工法 ( 割れ目に沿って U 字型の溝を切って 追従性のあるシーリング材を充填する ) を採用するなど 通常以上に手間を掛けなければ完全な修繕とならないことが見えてきました しかしこの部分は 修繕設計の中でも特に躯体の劣化対策として必須項目であって 仕様や工法や材料に 選択の余地が少ない部分です 上記の区分 1 に該当し 前項の 1 当マンション建物修繕のポイントで説明した 内容はこれにあたります ------------------------------------------ 対して 塗装材料などは材料レベル等の選択が可能です 上記の区分 2 に該当します 工事費の大勢を左右するほどには金額差がでないこともありますが それぞれの選択肢のメリットとデメリットをよく検討しなければなりません もうひとつ選択の余地がある部分は 例えばベランダの逆勾配による雨水滞留に対して 防水モルタルを増打ちして勾配をつけたり サッシ下に小規模の排水溝を新設して滞留水を逃がすなど 現状では建物に被害は少ないけれども 使用上不便な事柄に対しての対策項目です これは実施するかしないかを工事費と合わせて検討しなければならない部分であり 上記の区分 3 に該当します ------------------------------------------ 基本的には 必須部分には必要十分な対策を講じ 選択余地のある部分は必要条件を満たす選択肢各種 の検討 区分所有者 理事会との協議を十分に行う方針です

3 大規模修繕工事に向けて 添付資料 5 月 25 日 ( 済 ) アンケート 返信用封筒 管理会社より発送 5 月 28 日 ( 済 ) 各戸アンケートの実施 ( 建物不具合の例を添付 ) 6 月 10 日 ( 済 ) 回収 ( 各戸より宮崎設計事務所へ返送 ) 6 月 13 日 ( 済 ) 理事会 ( アンケート結果報告 建物調査とベランダ立入日程連絡調整方法検討 ) 6 月 15 日 ( 済 ) 設計監理のお知らせ 第 1 号配布 6 月 20 日 ( 済 ) 調査実施スケジュール表 ベランダ立入日程調整の為の用紙配布 調整 7 月 4 日 ~( 済 ) 調査診断の実施 7 月 11 日 ( 済 ) 理事会 ( 調査作業途中報告 概算予算 入札準備検討 ) 7 月 21 日 ~ 設計監理のお知らせ 第 2 号配布 ( 理事会議事録に 建物調査結果と建物現状の報告と工事ポイント説明 同封 ) 8 月 12 日建物調査診断報告説明会の案内 ------------------------------------------------------------------- 7 月下旬調査診断結果報告書提出 調査診断結果と対策 暫定共通仕様( 工事仕様 ) 概算工事費 保管用 1 部 閲覧用 2 部 ( 合計 3 部 ) 別途簡易版(A3 1 枚 ) 各戸配布 簡易版には質問 FAX 用紙を添付 ------------------------------------------------------------------- 8 月 12 日建物調査診断報告説明会 (13:00-15:00/ 市立 市民会館 ( 地域公民館 )2F 会議室 ) 診断結果の報告 説明 暫定共通仕様書 概算工事費の説明と意見交換 ここまで第 1 フェーズ : 建物調査診断 ~ 現状報告と工事仕様 積算数量 概算予算の報告 ------------------------------------------------------------------- 8/17~ 公募にて入札作業 ( 第 2 フェーズ ) 開始 第 2 フェーズ : 競争入札計画 ~ 競争入札実施 査定 ~ 工事発注先検討 ~ 総会決議 第 3 フェーズ : 発注先との交渉 ~ 工事契約 ~ 工事準備 ~ 工事実施 ~ 完工引渡 第 4 フェーズ : アフターサービスと定期点検の受益期間 以上