大田原市介護サービス事業者連絡協議会 ケアマネージャー連絡協議会合同研修会 21-12-1 筋力低下防止に関する講演会 -高齢者に対する簡便な運動療法について- 国際医療福祉大学保健医療学部理学療法学科 下井俊典
自己紹介 理学療法士 認定理学療法士 介護予防 福祉住環境コーディネータ2級 経歴 2001 平成13 年 国際医療福祉大学保健学部 理学療法学科卒業 国際医療福祉大学クリニック デイケアセンター 2002 平成14 年 にしなすの総合在宅ケアセンター 2003 平成15 年 国際医療福祉大学保健学部 理学療法学科
今日の研修会のポイント 介護サービス事業者 ケアマネージャー 実際にどういった運動が 何に対して効果が あるのか 大田原市の介護予防事業について
今日の研修会の内容 高齢者に対する筋力トレーニングの目的 大田原市の介護予防事業 筋力トレーニング の実態と効果 筋力トレーニング実技
高齢者に対する 筋力向上トレーニングの目的
高齢者に対して 筋力向上が必要となる理由 高齢者 転倒 筋力低下 筋力向上 老年症候群
転倒の影響 - 大腿骨頸部骨折 - 正常の大腿骨骨頭 内側骨折 Garden stage Ⅲ 完全骨折で骨頭が 回旋転位している 人工骨頭置換術
老年症候群 geriatric syndrome 生活機能低下 認知症 うつ 口腔機能低下 転倒 閉じこもり 尿禁制 低栄養 足のトラブル 定義 高齢者に多く 加齢とともに増加して治療と同時に 介護 ケアが重要になる身体的 精神的諸症状 疾患 特徴 完全な治癒が望めないことが多い 基礎的な何らかの機能障害を抱える高齢者では 軽微な疾患でも 機能障害が増悪しやすい 互いに関連性をもち病状を悪化させる
転倒は筋力低下のみが原因か 生物学的要因 環境的要因 滑りやすい床 階段 段差 不十分な照明 など 身体機能の低下 認知機能の低下 年齢 性 人種 慢性疾患 転倒 行動的要因 複数の服薬 運動不足 不適切な履物 など 低収入 教育レベル 社会サービスの利用 制限 など 社会経済的要因
なぜ筋力か 向上 低下の変化がわかりやすい ADLに結びつけやすい 測定 実感しやすい 転倒 骨折 疾患と関連づけやすい 参加 能動的行動 により変えることができる 高齢者は身体機能の変化に敏感
あなたは 年齢とは別に どのような状況になったら 老後 だと思いますか 読売新聞全国世論調査, 平成9年8月, 対象者 全国の有権者3,000人 57.8 体の自由がきかなくなる 38.3 38.1 年金が支給される 定年退職したり仕事から引退する 33.7 病気がちになる 24.0 21.9 周囲の人に老人扱いされる 子供に養ってもらう 孫が生まれる 異性に興味がなくなる その他 無回答 0 6.9 3.2 0.4 1.2 10 20 30 40 50 60 70
高齢者に対する 筋力向上トレーニングは 効果があるのでしょうか
大田原市の介護予防事業 筋力トレーニング の実態と効果 平成16年度モデル事業 平成18-20年度一般高齢者施策事業評価
平成16年度モデル事業 特別な機器を使用しない3ヶ月間の運動療法 筋力トレーニング が心身機能 要介護度に 及ぼす効果を検討する 3ヶ月間の運動療法 筋力トレーニング の 8ヶ月後の心身機能状態 自己練習の 実施状況の追跡調査
筋力向上トレーニングのスケジュール 時期 平成16年11月 平成17年1月 3ヶ月間 頻度 2回/週 時間 9:30 11:30 送迎時間を除く うちプログラムに要した時間は1時間程度
筋力向上トレーニング内容 体幹 下肢の筋力トレーニング6種類 立ち上がり運動 スクワット 踏み出し運動 腹筋 お尻上げ運動 股関節外転 舟こぎ運動 歩行プログラム 応用歩行練習 継ぎ足歩き
回数 強度の設定 自覚的運動強度 RPE にて 11 やや楽 レベルで継続 可能な運動強度 反復回数 ゴム強度 を設定 RPE (Borg scale)
筋力 握力 ** p.01, *:p.05 膝伸展筋力 [N] ** [kg] ** 250 * 30 200 20 21.3 19.9 23.2 100 10 0 pre-ex post-ex Timed Up and Go [秒] 40 pre-ex 8M post-ex post-ex 10m最大歩行 ** ** 8M post-ex * [秒] ** 40 30 20 131.8 124.2 50 0 移動能力 174.4 150 30 20 22.0 16.4 10 16.6 19.0 10 13.7 14.7 post-ex 8M post-ex 0 0 pre-ex post-ex 8M post-ex pre-ex
静的バランス ファンクショナル リーチ 長座位体前屈 [cm] [cm] * 50 ** 40 34.7 30 29.2 27.5 30 10 0 0 pre-ex 動的バランス 34.1 30.3 20 10 post-ex 8M post-ex 開眼片足立ち (n=10) 20.9 pre-ex post-ex 8M post-ex 閉眼片足立ち (n=10) [秒] [秒] 25 25 20 20 15 15 10 10 5 ** 50 40 20 n=12 7.8 10.0 9.5 5 2.0 2.8 3.1 0 0 pre-ex post-ex 8M post-ex pre-ex post-ex 8M post-ex
要介護度 1次判定 非該当 要支援 要介護1 プログラム実施前 1 13 7 プログラム実施後 10 6 5 プログラム実施により要介護度が有意に改善 21名中1名 4.8% について要介護度が1度重度化した
最終日の参加者の感想 身体機能面 体が軽くなった 足が軽くなった 関節の痛みも少しよくなった 動きがスムースになった 身体能力 活動 面 歩くのが楽になった トレーニングするようになってから歩けるように なった
社会参加面 外出できるようになった 調理することが増えた 買い物に行けそうな気がする 気持ちが外に向き 保健センターのリハビリにも 参加してみようと思っている 自営いちご農家の 箱折りの仕事が多く 楽に できるようになった それまでは50個が100個くらい
精神面 最初は年寄りだから抵抗を感じた 気持ちが明るくなった 気分的にすっきりしている ここに来るのが楽しい 楽しみができた
トレーニング後8ヶ月間の変化 運動 自己練習に対する意識の変化 追跡調査対象者の75% 12名中9名 が自己練習を 実施 追跡調査対象者の21% 14名中3名 が通所 リハビリテーションの利用を開始 社会参加 介護保険サービス 訪問介護 の利用を中止 草むしりができるようになった 生活が楽しくなった
まとめ 特別な機器を使用しなくても 3ヶ月間の 継続的な運動療法により 心身機能 要介護度が改善した 個別プログラムと集団による相乗効果 介入8ヶ月後の追跡調査より 機能面の低下 歩行 能力の維持 運動興味の賦活 自己練習の実施 75%, 9名/12名
大田原市における 2年間 平成18-20年度 の 介護予防事業の効果について
下野新聞 21-6-2
大田原市の一般高齢者施策 市内19カ所に地域拠点 ほほえみセンター を 設置 参加者 実施回数 計593回 参加延べ人数 9,769名 地区健康教室 不定期開催 実施回数 計294回 参加延べ人数 4,329名
方法 対象者 平成18 20年度の同施策に参加した, 同市内在住高齢者382名 女性315名, 男性67名 評価項目 計7種類の身体機能 能力テスト 筋力 歩行能力 バランス CS30 握力 5m通常歩行 5m最大歩行 動的バランス TUG 静的バランス ファンクショナル リーチ 開眼片脚立ち
評価方法 全体評価 大田原市在住一般高齢者の変化を把握 平成20年度の同施策の参加者382名と平成18年度 同施策参加者352名を, 男女別に比較 追跡評価 平成18年度から20年度まで, 継続的に施策に参加した 160名 女性 142名, 男性18名 を抽出して, 個人の 変化について比較 H18年度 H20年度 中止者 継続者 継続者 新規者
結果 全体評価 女性 H18 年齢 H20 74.0 ± 7.7 75.1 ± 7.8 CS30 29.8 ± 9.8 34.6 ±10.4 握力 22.3 ± 4.7 21.3 ± 4.6 5m通常歩行 4.2 ± 1.2 3.9 ± 1.0 5m最大歩行 3.1 ± 0.9 3.0 ± 0.8 動的バランス TUG 7.7 ± 1.8 7.3 ± 1.8 静的バランス FR 35.4 ± 7.8 36.0 ± 7.7 開眼片脚立ち 30.3 ±21.9 32.3 ±24.0 筋力 歩行能力
全体評価 男性 H18 年齢 H20 76.8 ± 6.5 76.3 ± 7.3 CS30 30.3 ±10.4 31.6 ± 7.0 握力 30.3 ±10.4 31.6 ± 7.0 5m通常歩行 4.2 ± 1.2 3.8 ± 0.7 5m最大歩行 2.8 ± 0.6 2.8 ± 0.7 動的バランス TUG 7.1 ± 1.2 6.9 ± 1.5 静的バランス FR 36.9 ± 8.1 36.4 ± 8.0 開眼片脚立ち 26.7 ±20.5 29.5 ±23.2 筋力 歩行能力
追跡評価 H18 年齢 H20 75.8 ± 6.4 77.6 ± 6.4 CS30 29.1 ± 9.8 34.3 ± 8.7 握力 23.0 ± 5.2 22.3 ± 5.7 5m通常歩行 4.3 ± 1.1 4.0 ± 1.0 5m最大歩行 3.1 ± 0.7 3.1 ± 0.9 動的バランス TUG 7.7 ± 1.6 7.4 ± 2.0 静的バランス FR 34.3 ± 8.0 35.5 ± 7.7 開眼片脚立ち 30.6 ±21.7 30.0 ±24.0 筋力 歩行能力
考察 全体評価 年齢構成に差がない 女性 下肢筋力 歩行能力 動的バランス能力が 改善 男女差 追跡評価 2歳高齢になっている 下肢筋力 歩行能力が改善 バランス能力は維持
まとめ 平成18 20年度の同施策に参加した, 同市内在住高齢者382名について運動機能 能力から一般高齢者施策の効果について検討 下肢筋力 歩行能力 動的バランス能力が 改善 その他能力は維持
5年間の介護予防事業でわかったこと 特別な機器を使用しなくても 2回/週 3ヶ月 で心身機能 要介護度は改善する 介入8ヶ月後の追跡調査より 歩行 能力の維持 運動興味の賦活 自己練習の実施 75%, 9名/12名 2年間の一般高齢者施策を実施してみて 下肢筋力 歩行能力 動的バランス能力が改善 その他能力は維持
筋力トレーニング実技
トレーニング メニュー 立ち上がり運動 スクワット 足開き運動 股関節外転運動 踏み出し運動 フォワード ランジ 腹筋 お尻上げ運動 ブリッジング
実技のポイント リスク管理 痛み 血圧変動 バルサルバ効果 実施回数 頻度 体幹 腹筋 背筋 の重要性
立ち上がり運動 スクワット
対象筋 大腿四頭筋 股関節を曲げる 屈曲 膝関節を伸ばす 伸展
膝が痛い場合 - 変形性膝関節症 - 正常の膝関節レントゲン写真 変形性膝関節症
カラー写真 軟骨が摩耗している
変形性膝関節症
立位がとれない 車いすの 場合
閉 鎖性 運動連鎖 CKC: closed kinetic chain
足開き運動 股関節外転運動
対象筋 中殿筋 股関節を開く 外転
歩行中の中殿筋の活動様態 35 30 25 20 15 10 5 0
立位がとれない 車いすの 場合 運動連鎖 の活用
効果が減ってしまう場合
踏み出し運動 フォワード ランジ
対象筋 ハムストリングス 股関節を伸ばす 伸展 膝関節を曲げる 屈曲
腹筋
お尻上げ運動 ブリッジング
対象筋 背筋群 多裂筋 腹筋群 骨盤底筋群 横隔膜 横隔膜 腹筋群 腹直筋 背筋群 多裂筋 腹横筋 骨盤底筋群
今日の研修会の内容 高齢者に対する筋力トレーニングの目的 老年症候群 大田原市の介護予防事業 筋力トレーニング の実態と効果 2回/週 3ヶ月で効果 筋力トレーニング実技