Clinical ques2on 2014 年 8 月 5 日 JHOSPITALIST network カテーテル関連尿路感染症 (Catheter- associated urinary tract infec2on:ca- UTI) の診断と予防! 筑波大学附属病院総合診療グループ 山本由布 監修五十野博基 分野 : 感染症テーマ : 診断
こんな経験ありませんか
80 代女性が発熱を主訴に来院 認知症 高尿酸血症 CKD があり 訪問診療中 なぜか数年来尿道カテーテルが留置 バイタルサイン 身体診察上は 37.4 度の微熱と活気低下以外に特記なし 院内簡易尿検査 : 亜硝酸 + 白血球 + 血液検査は翌日の結果 レントゲン上は肺炎像なし
研修医 先生 おしっこどろどろですね 尿路感染症で入院で良いですか? それいつもだし これって本当に UTI? ただの風邪? そもそもなんでバルーンが入っているの? 家できちんと管理できていたのかな?
Clinical Ques2on カテーテル関連尿路感染症 (CA- UTI) の診断をどう行うか CA- UTI の予防のために有効なものはあるか 参考にしたガイドライン IDSA ガイドライン (Diagnosis, Preven2on, and Treatment of Catheter- Associated Urinary Tract Infec2on in Adults:2009 Interna2onal Clinical Prac2ce Guidelines from the Infec2ous Disease Society of America) CDC ガイドライン (GUIDELINE FOR PREVENTION OF CATHETER- ASSOCIATED URINARY TRACT INFECTIONS 2009, CDC) 欧州泌尿器科学会尿路感染ガイドライン (Guidelines of Urological Infec2ons 2014:European Associa2on of Urology)
CA- UTI( カテーテル関連尿路感染症 ) とは 1 膀胱留置カテーテル ( 経尿道 経膀胱瘻 ) を挿入中 または間欠的導尿を施行後 2UTI として矛盾しない症状があり その他の感染症が否定できる 3 カテーテル採取尿または中間尿から培養される細菌は 10 3 CFU/ml 以上 IDSA ガイドライン 抗菌薬による治療対象となる
UTI として矛盾しない症状 発熱 悪寒 意識レベルの変化 傾眠 側腹部 痛 CVA 叩打痛 急性の血尿 骨盤部の違和感 排尿障害 頻尿 恥骨上部の疼痛または圧痛 IDSA 発熱やせん妄 活気の低下のみの 症状もありうる
おばあちゃんはいつも 35 度台なんです 37 度だともうふらふらで は真実だった! 高齢者 (65 歳以上 ) では 平熱から 1.1 以上の上昇は発熱である Uptodate:Evalua2on of infec2on in the older adult 発熱反応の変化によるもの 平熱を聴取し 37.0 度の発熱を見逃さない
CA- ASB( カテーテル関連無症候性細菌尿 ) とは (catheter- associated asymptoma2c bacteriurea) 1 経尿道カテーテル 経膀胱瘻カテーテルを挿入中 または間欠的導尿を行った患者で 2 特に症状はないが 3 カテーテル採取尿または中間尿で 10 5 CFU/ml 以上の細菌が培養される 抗菌薬による治療対象にならない ( 例外 : 妊婦 膀胱粘膜からの出血が予想される泌 尿器科手技を受ける患者など ) IDSA
膀胱カテーテル留置患者の CA- UTI, CA- ASB の有病率 カテーテル留置患者で 1 日当たり 3~10% に細菌尿が出現し 30 日後には 100% に達する しかし細菌尿を有する患者で CA- UTI を発症するのは 10~25% である Uptodate:Catheter- associated urinary tract infec2on in adult 細菌尿のうち 75~90% は CA- ASB 正しく診断し 必要のない抗菌薬投与 を減らす必要がある
CA- UTI 診断の際の注意 白血球尿 尿混濁や悪臭のみで CA- ASB や CA- UTI の 診断をしない 亜硝酸塩は一部の菌には関連せず 産生には 4 時間 以上かかる カテーテル留置者には適さない検査で 陽性の場合もCA- UTIとCA- ASBの鑑別にはならない IDSA Clin Infect Dis. 2004 Apr 15;38:1150-8 有症状 一定数以上の細菌の存在が前提 でも培養を 待って診断をつけるなんて臨床では非現実的?? グラム染色を参考に!
グラム染色について 検体の採取方法可能な限り カテーテルを入れ替えてから採取 不可能な時も採尿ポートから採取し バッグから直接採取しない IDSA グラム染色での >10 5 CHF/ml の目安無遠心の尿を 1 滴滴下し自然乾燥 グラム染色後に 1000 倍 ( 油浸 ) で鏡検し 1 視野に平均 1 個以上の菌体で 10 5 CFU/ml 以上に相当 ただし 10 3 CHF /ml の目安は明確では無い Manual of clinical Microbiology(American society for Microbiology)
何が見えますか? 細菌尿の原因菌について カテーテル挿入期間が 30 日を超える時は ほと んどが複数菌 カテーテルを長期間留置中 カテーテル交換直前 VS 交換直後の尿培養で E- coli Klebsiella: 同量 P.mirabilis P.stuar2i M.morganii P.auregiosa: 交換直前は直後の 10 倍以上多い これらの菌はカテーテル自体との関係が深いかもしれない IDSA
CAUTI の予防について strong recommenda2on 推奨非推奨データ不十分 不適切なカテーテル挿入を避け 不要になったらすぐに抜去する 長期留置の代わりに間欠的導尿を検討 閉鎖式システム ( カテーテル 排尿チューブ 尿バッグが一体化しており閉鎖性を保ったもの ) の使用 バッグを膀胱より下に下げて留める 抗菌薬の予防投与 毎日の尿道口の消毒 ( 入浴での洗浄など日常的な衛生管理が適正 :CDC) 膀胱洗浄 定期的なカテーテル交換 ( 頻繁の閉塞は 7 日 ~10 日で交換しても良いかもしれない ) CDC ガイドラインでは非推奨 必要時 ( 感染 閉塞 閉鎖式システムの破綻 ) の交換を推奨 注 ガイドライン名の記載が無いものは IDSA ガイドラインを参照した 現在行われていない方法などは適宜割愛
退院時にはこんなことも注意しよう 家でもバイ菌が逆流しないように この おしっこバッグは膀胱より下に置きましょう 先生 うちは畳に布団だ ベッドなんて ねえよ 毎日座って寝なきゃ駄目か 本当はベッドも借りると暮らしやすいと思う んですが 仕方ない 厚めのマットレス でも買って段差をつけましょうか 落ちないでくださいね フィクション
CAUTI の予防について moderate~weak recommenda2on moderate weak 推奨 清潔操作での挿入手技 ゼリーを使って尿道損傷を最小限に (Euro) 長期経尿道カテーテル留置の代わりに膀胱瘻を造設 間欠的導尿を行う場合は親水性コーティングされたカテーテルを使う (CDC) 頻繁にカテーテルが閉塞する場合はシリコン製を使う (CDC)
The new england journal of medicine videos in clinical medicine 尿道カテーテル挿入のための適切な手技 ( 公共の場での視聴は避けた方が無難です ) hfp://www.nejm.org/doi/full/10.1056/ NEJMvcm0706671 NEJM VIDEOS IN CLINICAL MEDICINE: Female Urethral Catheteriza2on 膣に誤挿入したら捨てて新しいものを使う 注入するのは蒸留水等
膀胱留置カテーテルの適応と適応外 不必要なカテーテル挿入を避ける事が最も大事な CAUTI の予防方法 CDC
症例の続き 尿グラム染色 :GNR( 大腸菌様 ),GPC( 連鎖状か双球菌様 ) 共に 1000 倍視野で 1 個以上で白血球多数あり 1 尿道カテーテル挿入中 2 発熱 活気低下の症状があり 他の感染源 は否定的 3 グラム染色で 10 3 CFU/ml 以上の細菌培養と予想 以上より CA- UTI と診断 カテーテル交換後尿培養 血液培養を採取し 抗菌薬を開始した.
Take Home Message 膀胱カテーテル留置患者では 細菌尿が検出され かつ症候性の場合のみCA- UTIと診断する CA- ASBに治療適応はない カテーテルの適応を良く考え 必要が無くなったらできるだけ早く抜去する