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親しみ は広告好意を喚起するか コンテンツとの類似性 共通性という定義によるアプローチ 12C3149013C 流大輔 概要近年 広告マーケティングの分野においては 受け手の広告に対する親しみが 広告好感度 商品への関心 購買意向を高めることに大きな影響を与えているという示唆がある しかし 親しみについて その概念を明確に言及している先行研究は稀であり この点から広告に対する親しみが広告効果を高める重要な要因となるのかについては疑問が生じる そこで本研究では 広告に対する親しみが広告に対する好意を喚起するのかを明らかにすることを課題として設定した そして 広告に対する親しみを 自分と広告中のコンテンツとの間に類似性 共通性を認知している状態 と定義したうえで 広告を視聴した被験者に質問紙調査を行った その結果 広告に対する親しみは広告に対する好意を喚起するという示唆が得られた 1 はじめに 1.1 問題意識多くの企業のマーケティング戦略において広告が用いられている 企業が出稿する目的の 1 つは 消費者に何らかのメッセージを提示し 特定の商品に対する購買行動を促進するためである ( 王 2001) マス コミュニケーションの発展に伴って 経営学やマーケティングの分野でも広告は非常に注目されるようになっており ( 田中 2007, 2008) 多くの研究者によって様々な側面から広告効果の研究が進められている このうち 広告を視聴した受け手の気分 広告内容の印象と広告自体の好感度 関心や購買意向といった商品評価との関連について調査を行った牧野 (2008) の研究では 広告内容の印象を決定する要因としては 特に 受け手に親しみ ( 同研究では親近性と表記される ) を持たせることが広告の好感度を上げる また広告に対して親しみを持つほど 商品への関心 購買意向が高まるとの示唆がある 確かに 実際に提示された広告に対して受け手が好意を持つ場面を想像してみると 親しみ が好意につながる要因となることが容易に考えられる たとえば 好きなテレビ CM とその理由を答えてもらうインタビューなどを目にすると 親しみやすいから好きになった 見ていて親しみが持てるから好き など親しみがキーワードとして挙げられるところをよく見かける また 広告以外のものや人 たと 1

えば芸術作品やタレントに対しても 親しみがある 親しみやすい という表現は好感を表す言葉とともによく使われる これらのことから 親しみという言葉は私たちの日常生活の中で頻繁に使用されている言葉であることが分かる 以上のことを踏まえると 親しみは好意を喚起する要因となり その対象を広告に限定すれば 広告に対する親しみは受け手の広告の好感度を大きく左右する重要な概念であると言うことができる また 例えば企業の広告戦略においては 受け手に親しみを感じさせるような広告を制作することが消費者の購買行動を促進するうえで重要であると考えられる 実際に牧野 (2008) においても 広告制作の際に受け手が親しみを持つような内容を組み込めば 広告の好感度や商品への関心 購入の可能性が高まると考察されている しかし 親しみが広告効果に及ぼす影響について議論するとき そこには大きな問題点が存在する それは 親しみについて その概念が明確に周知されていないということである 先行研究においても 親しみとは何を表すのかについて明確に言及している研究は稀である 確かに 親しみとは何を表すのか この点について簡潔に説明することは容易ではないが それでも親しみの概念が明確に示されていないために これまでの研究における親しみについての示唆は十分な説得力を得ていない したがって 親しみとはいったい何であるのか どんな意味を持っているのか という疑問と 広告に対する親しみは 本当に広告に対する好意を喚起する要因となるのか という疑問が生じる これらの疑問を解決するためには 親しみの概念について これを明確に提示したうえで 広告に対する親しみが広告に対する好意を喚起するか再検証することが必要である 1.2 課題そこで本研究では 広告に対する親しみは広告に対する好意を喚起するのかを明らかにする なお研究の流れとしては これまで意味が曖昧であった親しみについて はじめにその概念を明確に提示し その後に調査を行う 調査では 提示した概念に従って広告に対する親しみと広告に対する好意を測定する そして分析を行い 広告に対する親しみが広告に対する好意を説明するモデルを記述することを試みる 2 親しみの定義づけ 2.1 親しみの概念親しみの概念とは いったいどのようなものであろうか 私たちは日ごろから特定の人やものに対して 親しみやすい 親しみがある などといった表現をよく使う しかし 実際には親しみについてその意味を正確に理解したうえで言葉を発することは滅多にない 親しみがどのような概念であるのかは はっきりと定められておらず 管見の限りにおいても学術的に明確な定義は存在しない 2

そこで 本研究では親しみに関連する文献から要点を整理し 親しみについての定義づけを行う 2.2 先行研究社会心理学の分野においては しばしば親しみについて記述した研究が見受けられ 1 それらからは自分との類似性 共通性が親しみを構成することが分かる 大坊 奥田 (1996) によれば 自分と相手の類似性 共通性に関する情報は対人関係の親密化プロセスにおいて大きな影響力を持ち その類似性 共通性の発見が相手への注目と親しみ ( 同研究では親近感と表記される ) の重要な要因となりうると示唆されている この類似性 共通性には 興味や趣味 何らかの立場をはじめ 思考や感じ方など自分と相手が類似 共通するものであれば特定の分野に限定することなくいかなるものでも当てはまる また 岩脇 矢野 篠原 加藤 (2009) は 親しみを数量的にモデル化することを試みた 2 同研究では 人間が相手と自分の共通点に敏感であり 共通する部分や似ている部分を無意識のうちに探すという心理学的な実証に注目し 人と人との共通点が親しみ ( 同研究では親近感と表記される ) として数値に表せるのではないかと考えた そこで 個人のプロファイル情報 ( 性別 年齢 住所 出身地 血液型 趣味 ) を参考にして被験者同士で親しみやすさの評価をしてもらい それを行列として示したものを 2 次元上にプロットした その結果 親しみやすさの位置関係が近い被験者同士では そのプロファイル情報において共通点の数が多く 特に趣味のカテゴリーの項目が全体の中で親しみやすさを高めることが示唆された この研究結果からも 類似性 共通性が親しみに大いに寄与していると考えられる 一方で 自分との類似性 共通性は 好意を持つきっかけの 1 つであると考えら 1 親しみに似たあるいは親しみと関連する概念として 親密性 親密さが挙げられる 大坊 奥田 (1996) によれば 親密性とは互いの最も深い主観的側面を理解しあうようになる関係プロセスである 一方で大坊 (1998) では 親密さは相手との一体性 相手への開放性の程度を反映する次元とされており 親密さが増すプロセスにおいては 次第にコミュニケーションの直接性 ( 発言 視線 距離の近さなど ) が高まる傾向にある 好意が直接性を高め 直接性の上昇によって好意も増すと記述されている 2 親しみに関連するモデルとしては 親密性の覚醒モデルが挙げられる これは 対人関係において 相手が自分との親密性を高いレベルへ変えるような行動をとったとき 人はその行動を認知してそれに対応する行動が起こされるとするモデルである ( 齋藤 2011) その対応の仕方にはポジティブなものとネガティブなものの 2 種類がある ポジティブな場合は 自分もレベルを上げ相手と同様かさらに親密な行動で返報し親密度を深めていく 一方 ネガティブな場合は相手とは反対方向の行動変化を取ろうとして親密度を低めていく 3

れている 山岸 (2001) によれば 他人に対して好意を持つきっかけは 容貌 ファッションなどの外見的なものから趣味 考え方の共通性 顔を合わせる機会が多いなどの偶然性によるものまで様々であるとされ また 大坊 奥田 (1996) では 好意は他者に対する肯定的な評価 尊敬の心情 および自己と他者を類似したものとして見なすことに関連していると示唆されている 3 そして 相互の類似性は未知の人への好意と正の相関関係にある (Byrne 1961) また類似度が増せば増すほど相手への好意度は高くなり それは正の関係にある (Byrne & Nelson 1965) という言及から 類似性 共通性は好意を高める重要な要因であると言える 4 これは社会心理学における社会的交換理論および認知的バランス理論からも説明が可能である 社会的交換理論では 人間関係を心理的コストと心理的報酬から考え 人はよりコストが少なくより報酬の多い行動を選択しようとする ( 齋藤 2011) ことを前提として考えられている そのため 同じ趣味や似た体験など類似性 共通性がより多くある方が大きな心理的報酬を得られるため 好意を生みやすくなるのである また認知的バランス理論では P( 自分 ) O( 相手 ) X(2 人の間で話題になっているものや人 ) について それぞれを結ぶ矢印にプラスまたはマイナスの感情を表記し 3 つの符号の掛け合わせた結果から認知的なバランス状態またはインバランス状態が成り立つと考えている 人間はバランス状態を好む傾向があり もし不均衡が生じたならば不快な緊張状態に陥り不均衡の解消と均衡を追及する働きが生じる (Heider 1958) と仮定しており 具体的には3 つの符号の掛け合わせがマイナスになった場合には どこかの符号をマイナスからプラスに変えることでバランス状態になるように心理的作用が働く このため 理論上では同じ趣味や同じ体験など類似性 共通性があれば互いに好意を持つことになると導くことができる さらに マーケティング分野における関連概念として テレビ親近感が挙げられる これは 人々がテレビまたはテレビ番組に割り当てる重要性を反映したメディアへの態度 と定義される構成概念である (Perse 1994) マーケティング分野における諸研究にはこのテレビ親近感をテーマにした研究やテレビ視聴行動と関連させた研究もあり その 1 つである江利川 山田 川端 沼崎 (2007) では テレビ親近感を テレビ視聴への心理的距離の近さ と考えたうえで研究を進めている 5 ここから 本研究で定義する親しみは 尺度で表記できるような強弱があるも 3 Rubin(1970) によれば 好意は 相手を好ましい人間とみなし 尊敬と信頼を持ち 自分との間に類似性を認知している状態 と考えられており ここからも類似性 共通性が好意と関連するものの1つであることが分かる 4 Byrne & Nelson(1965) では 好意度は類似点の数量ではなく 類似と非類似の比率によって決するとされている 5 白石 井田 (2003) によれば 現代的なテレビの見方は 感情性 環境性 熟練性 断片性 一体性の 5 点の特徴が融合した視聴形態であり 今日広く視聴者に普 4

のと考えた これは親しみが 感じる または 感じない という 2 択のどちらかで表されるものではなく 全く感じない あまり感じない といったものから やや感じる 非常に感じる といったものまで 様々な程度で表現されるものであるということを表している また親しみの概念が明確に提示されていないものの 牧野 (2008) では親しみ ( 同研究では親近性と表記される ) を測定し 親しみと広告好感度との間には正の相関関係があることを調査によって明らかにしている 具体的には 商品名 メーカー名が異なる 5 つの広告に対して 各広告を視聴した後に 7 段階尺度での回答による質問紙調査を行った 質問項目のうち 受け手の気分 ( 肯定的気分 否定的気分 ) と広告好感度 商品評価 ( 商品への関心 購買意向 ) との相関分析を行った結果 肯定的気分と広告好感度の間には強い正の相関 (r=0.600) が 肯定的気分と商品への関心 購買意向との間には弱い正の相関 ( 順に r=0.396 r=0.348) が見られた また 広告内容を決定する 4 つの要因 ( インパクト 親近性 説得性 面白さ ) と広告好感度 商品評価との相関分析を行った結果 親近性と広告好感度 商品への関心 購買意向との間には正の相関 ( 順に r=0.574 r=0.461 r=0.485) があることが分かった 2.3 定義づけ以上の先行研究を踏まえたうえで 本研究では親しみを 自分と対象との間に類似性 共通性を認知している状態 と定義する 先行研究による示唆から 類似性 共通性は親しみを構成する要素となり これが好意を高める要因となると考えたことで上記の定義となった 従来から親しみについて言及されてきた社会心理学の領域では 親しみは人を対象として考えられてきた しかし 本研究で調査する親しみが広告に対する親しみであるということを考慮して ここでは親しみの対象を人だけでなくものにも拡張して考えていくこととする ここから 広告に対する親しみを定義すると それは 自分と広告との間に類似性 共通性を認知している状態 となる ただし 自分と広告との類似性 共通性 という表現の仕方では その類似性 共通性とは何であるのかを理解することが難しいと考えた そのため 自分と広告との類似性 共通性 を 自分と広告中のコンテンツとの類似性 共通性 と言い換えた コンテンツ 6 とは 一般的に 及している テレビ親近感を テレビ視聴への心理的距離の近さ と考えると 計画性 専念性の乏しい現代的なテレビの見方はテレビ親近感と負の相関を示す可能性があると考えられる しかし 実験の結果より両者の間には正の相関が認められ テレビ親近感が高くなるにつれて非計画視聴 非専念視聴も行われやすくなる傾向がある 6 現在の広告研究においては メッセージのコンテンツの処理過程に注目が集まっており ( 田中 2004,2006; 田中 村田 2005) これらの情報がその広告全体の効果 5

は web サイトや CD DVD などの媒体で閲覧できるテキストや静止画 動画 音楽といった情報全般のことである ( 宮永 亀井 1998) その中でも 広告におけるコンテンツとは 比較的新しい枠組みであり 広告メッセージに含まれる内容情報全般を指す 具体的には 出演タレント情報 商品情報 ユーモア刺激の有無 比較内容 意外性 新奇性 情緒的アピール 広告と商品 サービスとの関連性の情報などを示している ( 牧野 2008) よって 自分と広告中のコンテンツ( 例えば 人物 場面 音楽など ) との類似性 共通性について考えてみると 例えば 以前に訪れた観光地や地元の景観が広告中に出てくる 広告中の登場人物と同じあるいは似た体験を自分もした 自分と年代や容姿の近いタレントが広告中に出てくる 広告中の登場人物と自分が日常的に行う趣味 スポーツが共通している 広告中で流れる音楽を以前に演奏したことがある などが挙げられる すなわち 広告に対する親しみとは 自分と広告中のコンテンツとの間に類似性 共通性を認知している状態 となる この定義を基にして調査を行った 3 データと方法 3.1 データ広告に対する親しみを 上記のとおり 自分と広告中のコンテンツとの間に類似性 共通性を認知している状態 と定義した上で 広告に対する親しみが広告に対する好意を喚起するのかを明らかにするため調査を実施した この調査では 被験者は広告を視聴し その後に質問紙上の複数の質問に回答した この調査は 2015 年 12 月 7 日 中央大学商学部の講義 広告論 Ⅱ の授業時間内に実施された 被験者は同講義を受講していた学生 71 名であり そのうち有効回答として 61 名分を得た 3.2 変数調査においては 被験者に 6 つの広告素材それぞれについて以下の 4 つの質問に回答させた (1) あなたはこの広告に好意を持ちましたか (2) あなたはこの広告に親しみを感じましたか (3) あなたと広告中のコンテンツに類似点 共通点はありましたか (4) その類似点 共通点は何ですか にどのような影響を与えるのかが重要な関心事となっている コンテンツが消費者の購買意欲 購買行動だけでなく広告のイメージや商品のイメージにどのような影響を与えるのかも広告主にとっては非常に重要である なお牧野 (2008) においては コンテンツはコンテンツ情報と表記されている 6

質問に回答する際は全ての被験者が (1) の質問には 1: 非常に嫌い から 7: 非常に好き までの 7 段階で (2) の質問には 1: 全く感じない から 7: 非常に感じる までの 7 段階で (3) の質問には 1: 全くない から 7: 大いにある までの 7 段階で回答した また (4) の質問については (3) の質問で 5: ややある 6: ある 7: 大いにある を選んだ被験者のみに対し自由記述の形式での回答を得た 3.3 提示刺激提示刺激として使用した広告には 以下の (1) から (3) の視点より1から6の合計 6 本を選定した (1) タレントあり / タレントなしでは 世間的に認知度の高いタレントが広告中に登場するか否かという観点で広告を選択した これは メッセージの信憑性にはその情報を伝達する人間の信憑性が大きな影響を与える ( 勝又 高橋 本橋 石丸 西本 鈴木 河原 2014) という示唆があるとおり 有名なタレントの出演は広告内容として重要な情報であると判断したからである また (3) 論理的な内容 / 情緒的な内容において 論理的とは製品 商品の効果効能を描いたものであり 一方 情緒的とは製品 商品の効果効能とは関係ないイメージなどを描いたものである 広告内容の見落としを防ぐために 被験者は 6 本の広告をそれぞれ 2 回ずつ視聴した 質問 1,2については 1 回目の視聴後に 質問 3,4については 2 回目の視聴後に回答した この流れを広告 1から順に広告 6まで行った (1) タレントあり / タレントなし 1 一番搾り KIRIN 忘年会料理 編 2 ソリューション NEC テーマパークソリューション 編 (2) ユーモラスな内容 / シリアスな内容 3 BOSS サントリー食品 プレミアム京都( 路地 ) 編 インターナショナル 4 生命保険 第一生命 一生涯のパートナー 2つのぬいぐるみ 編 (3) 論理的な内容 / 情緒的な内容 5 iphpne6s Apple カメラ 編 6 カップヌードル 日清食品 STAY HOT 錦織圭 VS ドローンイ ンベーダー 編 7

3.4 方法調査結果を以下の 3 段階で分析した まず分析 1 では 親しみの変数 ( 質問 2) と類似性 共通性の変数 ( 質問 3) の相関分析を行った 分析 1 は 本研究で設定した定義の妥当性を検証するために行った すなわち 広告に対する親しみは 自分と広告中のコンテンツとの間に類似性 共通性を認知した状態 という本研究の定義に基づき 親しみの概念が 類似性 共通性 という表現で測定することが可能であるかを検証したものである 次に分析 2 では 好意の変数 ( 質問 1) と類似性 共通性の変数 ( 質問 3) との回帰分析を行った なお 分析の際には 好意を従属変数 類似性 共通性を説明変数とした 分析 2 は 本研究で定義した広告に対する親しみが 広告に対する好意を喚起するかを検証するために行われた すなわち 広告に対する親しみを 類似性 共通性 という表現で測定した場合に これが広告に対する好意を喚起するかを検証したものである この分析 2 の結果から本研究の課題を明らかにすることが可能である 最後に分析 3 では 好意の変数 ( 質問 1) と親しみの変数 ( 質問 2) との回帰分析を行った なお 分析の際には 好意を従属変数 親しみを説明変数とした 分析 3 は 上記の 2 つの分析に加えて追加的に行った これは広告に対する親しみをそのまま 親しみ という意味が曖昧な表現で測定した場合に 広告に対する好意を喚起するかを検証したものである 4 結果 4.1 分析 1 の結果分析 1 についての結果が図表 1 である 広告に対する親しみ ( 質問 2) と広告中のコンテンツとの類似性 共通性 ( 質問 3) の相関係数を 広告 1から広告 6まで 6 つの広告ごとに個別に算出した またその後 6 つの広告全体での相関係数を算出した 広告個別では 相関係数は最小値 0.353( 広告 4) から最大値 0.608( 広告 6) であった また 6 つの広告全体での相関係数は 0.500 であった ここから 広告に対する親しみと広告中のコンテンツとの類似性 共通性との間には正の相関があることが示された 4.2 分析 2 の結果分析 2 についての結果が図表 2 である 類似性 共通性の係数は 0.287(1% 水準で有意 ) であった ここから 広告中のコンテンツとの類似性 共通性は 広告に対する好意に正の影響を与えることが示された すなわち 広告に対する親しみは 類似性 共通性という表現で測定した場合に 広告に対する好意に正の影響を与えるということが分かった これを回帰式で表すと以下のようになる 8

ただし Y = a + b₁x₁+ b₂x₂+ b₃x₃+ b₄x₄+ b₅x₅+ cz (1) Y: 広告に対する好意 X₁: 広告 2を表すダミー変数 X₂: 広告 3を表すダミー変数 X₃: 広告 4を表すダミー変数 X₄: 広告 5を表すダミー変数 X₅: 広告 6を表すダミー変数 z: 類似性 共通性 また 図表 3 は広告個別に行った回帰分析の結果を示したものである 広告ごとに多少の差はあったが 全ての広告において分析の有意性が認められた これを式で表すと以下のようになる ただし Yi= azi + b (2) Y: 広告に対する好意 Z: 類似性 共通性 i: 広告 1~6 4.3 分析 3 の結果分析 3 についての結果が図表 4 である 親しみの係数は 0.553(1% 水準で有意 ) であった ここから 広告に対する親しみは 単純に 親しみ という表現で測定した場合でも 分析 2 と同様に広告に対する好意に正の影響を与えることが示された こちらも 回帰式で表すと以下のようになる ただし Y = a + b₁x₁+ b₂x₂+ b₃x₃+ b₄x₄+ b₅x₅+ cw (3) Y: 広告に対する好意 X₁: 広告 2を表すダミー変数 X₂: 広告 3を表すダミー変数 X₃: 広告 4を表すダミー変数 X₄: 広告 5を表すダミー変数 X₅: 広告 6を表すダミー変数 w: 親しみ また 図表 5 は図表 3 と同様に広告個別に行った回帰分析の結果を示したもので 9

ある こちらでは 広告 1から広告 6まですべての広告で 1% 水準での有意性が認められた これを式で表すと以下のようになる ただし Yi= awi + b (4) Y: 広告に対する好意 W: 親しみ i: 広告 1~6 5 考察分析 1 の結果として 親しみと類似性 共通性には正の相関関係があることが示されたことから 本研究で設定した広告に対する親しみの定義は妥当であったと考えられる これは 親しみという概念が類似性 共通性という表現によって測定可能であることを示唆するものである 本研究における課題は 広告に対する親しみは 広告に対する好意を喚起するのかを明らかにすることであった そして 分析 2 の結果として 広告中のコンテンツとの類似性 共通性が広告に対する好意に正の影響を与えると示されたことにより 広告に対する親しみは広告に対する好意を喚起すると結論付けられる また 追加的に行った分析 3 の結果からは 広告に対する親しみを 親しみ という表現によって測定した場合でも 類似性 共通性 という表現で測定した場合と同様に 広告に対する好意に正の影響を与えることが示された ここから 広告に対する親しみは 従来から使用されてきた 親しみ という意味が曖昧な表現を用いても広告に対する好意を喚起する しかし 分析 2 と分析 3 の結果を比較してみると 分析 3 の F 値の方が高い値となっている これは 広告に対する親しみを測定する際には 類似性 共通性 という表現を用いるよりも 親しみ という曖昧な表現を用いて測定する方が うまく広告に対する好意を説明することができるという興味深い示唆を与えるものである 6 おわりに本研究の貢献としては これまでの研究で明確に定義されてこなかった 親しみ について 関連する言及を整理したうえで その概念を明確に提示したことが挙げられる 調査の結果から 本研究で設定した広告に対する親しみの定義の妥当性が認められたため 類似性 共通性によって親しみが測定可能であるという示唆が得られた ここから 今後の 親しみ についての研究において その参考となりうる言及を残すことができた さらには 広告に対する親しみが 広告に対する好意を喚起することも明らかにした これにより 例えば企業が好感度の高い広告を制作しようとする際には 広 10

告のターゲット層の人々と類似性 共通性の高いコンテンツを広告中に盛り込むことが有効であるなどの実務的な示唆を与えることが可能である 本研究では 調査において被験者に偏りがあったこと そして提示刺激の数が少なかったことの 2 つが反省点として挙げられる 被験者に関しては その全員が学生であり その結果として年代がおよそ 20 代前半に限定されてしまった そのため 今後は様々な年代の被験者を集めた上で同様の調査を行っていく必要がある また 提示刺激の数に関しては 6 本という数の少なさから広告内容にも全体的に偏りが生まれてしまったと考えられる そこで 今後は提示刺激の数を増やし 様々な内容の広告を提示刺激として使用していくことが必要である これらを行うことにより 今後の調査においてはさらに精緻な調査結果を導くことが可能となるだろう 引用文献 Byrne, D. (1961), Interpersonal attraction and attitude similarity. Journal of Abnormal and Social Psychology, Vol. 62, pp. 713-715. Byrne, D. & Nelson, D. (1965), Attraction as a linear function of proportion of positive reinforcement. Journal of Personaluty and Social Psychology, Vol. 1, pp. 659-663. Heider, F. (1958), The psychology of interpersonal relations. Wiley.( 大橋正夫訳 (1978) 対人関係の心理学 誠信書房). Perse, E. M. (1994), Television Affinity Scale. In Rubin, R. B.; P. Palmgreen & H. E. Sypher (Eds.), Communication research measures: A sourcebook (pp.367-370). New York, NY: Guilford Press. Rubin, Z. (1970), Measurement of romantic love. Journal of Personality and Social Psychology, Vol. 16, pp. 265-273. 岩脇宏和 矢野絵美 篠原勲 加藤俊一 (2009) コンテンツの共通点から感じる人同士の親近感のモデル化の試み~キャンパスコミュニティエイドへの応用 ~ 感性工学 8 (3) 659-665. 江利川滋 山田一成 川端美樹 沼崎誠 (2007) テレビ親近感とテレビ視聴行動の関連性について 社会心理学研究 22 (3) 267-273. 王怡人 (2001) 広告表現による商品情報の提供について 広島大学マネジメント研究 1 49-59. 勝又壮太郎 高橋一樹 本橋永至 石丸小也香 西本章宏 鈴木暁 河原達也 (2014) タレント属性のテレビ広告効果測定-タレントイメージと製品カテゴリーとの適合関係分析 - オペレーションズ リサーチ: 経営の科学 59 (1) 42-51. 齋藤勇 (2011) 図説社会心理学入門 誠信書房 白石信子 井田美恵子 (2003) 浸透した 現代的なテレビの見方 放送研究と調査 53 (5) 26-55. 11

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図表 1 広告に対する親しみと広告中のコンテンツとの類似性 共通性の相関分析の結果 広告相関係数有意確率 親しみ 平均 親しみ 標準偏差 類似性 共通性 平均 類似性 共通性 標準偏差 広告 1 0.435*** 0.000 5.25 1.234 4.00 1.461 広告 2 0.487*** 0.000 4.25 1.374 4.00 1.494 広告 3 0.465*** 0.000 4.49 1.260 4.10 1.338 広告 4 0.353*** 0.005 4.11 1.343 3.26 1.237 広告 5 0.568*** 0.000 4.23 1.454 4.39 1.584 広告 6 0.608*** 0.000 3.59 1.383 3.11 1.484 全体 0.500*** 0.000 4.32 1.423 3.81 1.501 ***:1% 水準で有意 ( 両側 ) 図表 2 広告全体の回帰分析の結果 モデル 標準化されて いない係数 標準化係数 t 値 定数 ( 切片 ) 4.146 19.737*** 類似性 共通性 0.287 0.365 7.246*** X₁ -0.639-0.202-3.273*** X₂ -0.061-0.019-0.312 X₃ -0.444-0.140-2.247 X₄ -0.769-0.243-3.923*** X₅ -0.172-0.054-0.866 決定係数 R²:0.179 ***:1% 水準で有意 F 値 :13.018*** 残差の標準偏差 :1.070 13

図表 3 広告個別に行った回帰分析の結果 広告 標準化されていない係数 標準化係数 切片 t 値決定係数 R² F 値 広告 1 0.242 0.309 4.326 2.495** 0.095 6.223** 広告 2 0.254 0.368 3.641 3.038*** 0.135 9.230*** 広告 3 0.274 0.340 4.139 2.776*** 0.115 7.704*** 広告 4 0.194 0.232 4.008 1.830* 0.054 3.348* 広告 5 0.283 0.355 3.395 2.914*** 0.126 8.490*** 広告 6 0.446 0.496 3.481 4.382*** 0.246 19.200*** ***:1% で有意 **:5% で有意 *:10% で有意 図表 4 広告全体の回帰分析の結果 モデル 標準化されていない係数 標準化係数 t 値 定数 ( 切片 ) 2.395 11.171*** 親しみ 0.553 0.667 15.935*** X₁ -0.086-0.027-0.528 X₂ 0.384 0.121 2.368 X₃ -0.030-0.010-0.184 X₄ -0.094-0.030-0.572 X₅ 0.489 0.155 2.876** 決定係数 R²:0.448 ***:1% 水準で有意 F 値 :48.606*** **:5% 水準で有意 残差の標準偏差 :0.877 14

図表 5 広告個別に行った回帰分析の結果 広告 標準化されて いない係数 標準化 係数 切片 t 値決定係数 R² F 値 広告 1 0.718 0.774 1.528 9.377*** 0.598 87.928*** 広告 2 0.469 0.625 2.644 6.157*** 0.391 37.904*** 広告 3 0.600 0.701 2.568 7.543*** 0.491 56.899*** 広告 4 0.504 0.655 2.566 6.656*** 0.429 44.308*** 広告 5 0.474 0.544 2.636 4.981*** 0.296 24.813*** 広告 6 0.599 0.620 2.719 6.075*** 0.385 36.903*** ***:1% で有意 15