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骨の再生を促進する複合多孔質足場材料を開発

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研究成果報告書

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

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ヒト脂肪組織由来幹細胞における外因性脂肪酸結合タンパク (FABP)4 FABP 5 の影響 糖尿病 肥満の病態解明と脂肪幹細胞再生治療への可能性 ポイント 脂肪幹細胞の脂肪分化誘導に伴い FABP4( 脂肪細胞型 ) FABP5( 表皮型 ) が発現亢進し 分泌されることを確認しました トランスク

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図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

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2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

2. 研究の背景関節軟骨は 骨の端を覆い 腕や膝を曲げた時などにかかる衝撃を吸収する組織です 正常な関節軟骨は硝子軟骨と呼ばれます 私達の日常動作のひとつひとつを なめらかに行うためにも大切な組織ですが 加齢に伴ってすり減ったり スポーツや交通事故などの怪我により損傷をうけると 硝子軟骨が線維軟骨注

研究目的 1. 電波ばく露による免疫細胞への影響に関する研究 我々の体には 恒常性を保つために 生体内に侵入した異物を生体外に排除する 免疫と呼ばれる防御システムが存在する 免疫力の低下は感染を引き起こしやすくなり 健康を損ないやすくなる そこで 2 10W/kgのSARで電波ばく露を行い 免疫細胞

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

背景 歯はエナメル質 象牙質 セメント質の3つの硬い組織から構成されます この中でエナメル質は 生体内で最も硬い組織であり 人が食生活を営む上できわめて重要な役割を持ちます これまでエナメル質は 一旦齲蝕 ( むし歯 ) などで破壊されると 再生させることは不可能であり 人工物による修復しかできませ

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情報提供の例

論文内容の要旨 論文題目生体適合性ポリマーゲルを用いた新規組織癒着防止材の開発 指導教員中村耕三教授 東京大学大学院医学系研究科 平成 18 年 4 月入学 医学博士課程 外科学専攻 石山典幸 外傷や手術後の組織癒着は 体内で分離している組織が結合してしまう複合的な炎症性 障害であり この組織癒着を

83.8 歳 (73 91 歳 ) であった 解剖体において 内果の再突出点から 足底を通り 外果の再突出点までの最短距離を計測した 同部位で 約 1cmの幅で帯状に皮膚を採取した 採取した皮膚は 長さ2.5cm 毎にパラフィン包埋し 厚さ4μmに薄切した 画像解析は オールインワン顕微鏡 BZ-9

2005年勉強会供覧用

科技表紙PDF200603

糖鎖の新しい機能を発見:補体系をコントロールして健康な脳神経を維持する

を確認しました 本装置を用いて 血栓形成には血液中のどのような成分 ( 白血球 赤血球 血小板など ) が関与しているかを調べ 血液の凝固を引き起こす トリガー が何であるかをレオロジー ( 流れと変形に関わるサイエンス ) 的および生化学的に明らかにすることとしました 2. 研究手法と成果 1)

学報_台紙20まで

平成 29 年 8 月 4 日 マウス関節軟骨における Hyaluronidase-2 の発現抑制は変形性関節症を進行させる 名古屋大学大学院医学系研究科 ( 研究科長 : 門松健治 ) 整形外科学 ( 担当教授石黒直樹 ) の樋口善俊 ( ひぐちよしとし ) 医員 西田佳弘 ( にしだよしひろ )

動脈閉塞のある足褥創 創傷足に動脈閉塞があり壊死を伴う潰瘍を認める場合 多くは乾燥ミイラ化を目指されます 乾燥させることで細菌の接着 増殖を抑制しようという意図からです しかし 創面の乾燥は いかなる場合でも壊死部に接した細胞を乾燥から死なせ 壊死部の拡大につながります さらに 乾燥化によって壊死部

解禁日時 :2019 年 2 月 4 日 ( 月 ) 午後 7 時 ( 日本時間 ) プレス通知資料 ( 研究成果 ) 報道関係各位 2019 年 2 月 1 日 国立大学法人東京医科歯科大学 国立研究開発法人日本医療研究開発機構 IL13Rα2 が血管新生を介して悪性黒色腫 ( メラノーマ ) を

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 松尾祐介 論文審査担当者 主査淺原弘嗣 副査関矢一郎 金井正美 論文題目 Local fibroblast proliferation but not influx is responsible for synovial hyperplasia in a mur

コラーゲンを用いる細胞培養マニュアル

態である新生血管の発生を一部再現したものであり 疾患モデル動物の代替として病態解析や創薬スクリーニングに応用できる可能性があります 本研究の成果は 平成 29 年 6 月 14 日 ( 英国時間 ) 付けで Scientific Reports 誌 ( 電子版 ) に掲載されます 本研究は 文部科学

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能性を示した < 方法 > M-CSF RANKL VEGF-C Ds-Red それぞれの全長 cdnaを レトロウイルスを用いてHeLa 細胞に遺伝子導入した これによりM-CSFとDs-Redを発現するHeLa 細胞 (HeLa-M) RANKLと Ds-Redを発現するHeLa 細胞 (HeL

九州大学病院の遺伝子治療臨床研究実施計画(慢性重症虚血肢(閉塞

報道関係者各位 平成 26 年 1 月 20 日 国立大学法人筑波大学 動脈硬化の進行を促進するたんぱく質を発見 研究成果のポイント 1. 日本人の死因の第 2 位と第 4 位である心疾患 脳血管疾患のほとんどの原因は動脈硬化である 2. 酸化されたコレステロールを取り込んだマクロファージが大量に血

報道発表資料 2006 年 4 月 13 日 独立行政法人理化学研究所 抗ウイルス免疫発動機構の解明 - 免疫 アレルギー制御のための新たな標的分子を発見 - ポイント 異物センサー TLR のシグナル伝達機構を解析 インターフェロン産生に必須な分子 IKK アルファ を発見 免疫 アレルギーの有効

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ドリル No.6 Class No. Name 6.1 タンパク質と核酸を構成するおもな元素について述べ, 比較しなさい 6.2 糖質と脂質を構成するおもな元素について, 比較しなさい 6.3 リン (P) の生体内での役割について述べなさい 6.4 生物には, 表 1 に記した微量元素の他に, ど

( 平成 22 年 12 月 17 日ヒト ES 委員会説明資料 ) 幹細胞から臓器を作成する 動物性集合胚作成の必要性について 中内啓光 東京大学医科学研究所幹細胞治療研究センター JST 戦略的創造研究推進事業 ERATO 型研究研究プロジェクト名 : 中内幹細胞制御プロジェクト 1

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 森脇真一 井上善博 副査副査 教授教授 東 治 人 上 田 晃 一 副査 教授 朝日通雄 主論文題名 Transgene number-dependent, gene expression rate-independe

日本医科大学医学会雑誌第5巻第2号

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Microsoft PowerPoint マクロ生物学9

日本標準商品分類番号 カリジノゲナーゼの血管新生抑制作用 カリジノゲナーゼは強力な血管拡張物質であるキニンを遊離することにより 高血圧や末梢循環障害の治療に広く用いられてきた 最近では 糖尿病モデルラットにおいて増加する眼内液中 VEGF 濃度を低下させることにより 血管透過性を抑制す

ASC は 8 週齢 ICR メスマウスの皮下脂肪組織をコラゲナーゼ処理後 遠心分離で得たペレットとして単離し BMSC は同じマウスの大腿骨からフラッシュアウトにより獲得した 10%FBS 1% 抗生剤を含む DMEM にて それぞれ培養を行った FACS Passage 2 (P2) の ASC

資料3-2-5「光学的血糖値測定システムを応用した埋込み型イン…

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を行った 2.iPS 細胞の由来の探索 3.MEF および TTF 以外の細胞からの ips 細胞誘導 4.Fbx15 以外の遺伝子発現を指標とした ips 細胞の樹立 ips 細胞はこれまでのところレトロウイルスを用いた場合しか樹立できていない また 4 因子を導入した線維芽細胞の中で ips 細

第6号-2/8)最前線(大矢)

医薬品タンパク質は 安全性の面からヒト型が常識です ではなぜ 肌につける化粧品用コラーゲンは ヒト型でなくても良いのでしょうか? アレルギーは皮膚から 最近の学説では 皮膚から侵入したアレルゲンが 食物アレルギー アトピー性皮膚炎 喘息 アレルギー性鼻炎などのアレルギー症状を引き起こすきっかけになる

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脳組織傷害時におけるミクログリア形態変化および機能 Title変化に関する培養脳組織切片を用いた研究 ( Abstract_ 要旨 ) Author(s) 岡村, 敏行 Citation Kyoto University ( 京都大学 ) Issue Date URL http

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メディカルスタッフのための白血病診療ハンドブック

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10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1

Gifu University Faculty of Engineering


の感染が阻止されるという いわゆる 二度なし現象 の原理であり 予防接種 ( ワクチン ) を行う根拠でもあります 特定の抗原を認識する記憶 B 細胞は体内を循環していますがその数は非常に少なく その中で抗原に遭遇した僅かな記憶 B 細胞が著しく増殖し 効率良く形質細胞に分化することが 大量の抗体産

資生堂 肌の奥 1 からシミを増殖させる新たなメカニズムを解明 シミ増殖因子の肌の上部 ( 表皮 ) への流入量をコントロールしているヘパラン硫酸の 減少抑制効果が マドンナリリー根エキス に 産生促進効果が グルコサミン にあることを発見 資生堂は これまでシミ研究ではあまり注目され

消化器病市民向け

本日のお話 皮膚がんの原因 紫外線について 紫外線と皮膚がん 紫外線以外の皮膚がんの原因 早期に発見するために

ン投与を組み合わせた膵島移植手術法を新たに樹立しました 移植後の膵島に十分な栄養血管が構築されるまでの間 移植膵島をしっかりと休めることで 生着率が改善することが明らかとなりました ( 図 1) この新規の膵島移植手術法は 極めてシンプルかつ現実的な治療法であり 臨床現場での今後の普及が期待されます

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学位論文の要約

A4パンフ

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

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今後の展開現在でも 自己免疫疾患の発症機構については不明な点が多くあります 今回の発見により 今後自己免疫疾患の発症機構の理解が大きく前進すると共に 今まで見過ごされてきたイントロン残存の重要性が 生体反応の様々な局面で明らかにされることが期待されます 図 1 Jmjd6 欠損型の胸腺をヌードマウス

報道発表資料 2005 年 8 月 2 日 独立行政法人理化学研究所 国立大学法人京都大学 ES 細胞からの神経網膜前駆細胞と視細胞の分化誘導に世界で初めて成功 - 網膜疾患治療法開発への応用に大きな期待 - ポイント ES 細胞の細胞塊を浮遊培養し 16% の高効率で神経網膜前駆細胞に分化させる系

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スライド 1

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論文の内容の要旨


報道発表資料 2007 年 4 月 11 日 独立行政法人理化学研究所 傷害を受けた網膜細胞を薬で再生する手法を発見 - 移植治療と異なる薬物による新たな再生治療への第一歩 - ポイント マウス サルの網膜の再生を促進することに成功 網膜だけでなく 難治性神経変性疾患の再生治療にも期待できる 神経回

平成14年度研究報告

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汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (


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健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

報 道 発 表 資 料 2007 年 8 月 21 日 独 立 行 政 法 人 理 化 学 研 究 所 土 壌 中 のアンモニア 態 窒 素 を 吸 収 する 輸 送 体 の 役 割 を 解 明 - アンモニア 態 窒 素 の 吸 収 とバイオマス 生 産 の 関 係 が 明 らかに - ポイント

難病 です これまでの研究により この病気の原因には免疫を担当する細胞 腸内細菌などに加えて 腸上皮 が密接に関わり 腸上皮 が本来持つ機能や炎症への応答が大事な役割を担っていることが分かっています また 腸上皮 が適切な再生を全うすることが治療を行う上で極めて重要であることも分かっています しかし

マイクロ流体回路を用いたエレクトロポレーション過程の観察

1. Caov-3 細胞株 A2780 細胞株においてシスプラチン単剤 シスプラチンとトポテカン併用添加での殺細胞効果を MTS assay を用い検討した 2. Caov-3 細胞株においてシスプラチンによって誘導される Akt の活性化に対し トポテカンが影響するか否かを調べるために シスプラチ

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

2006 PKDFCJ

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抑制することが知られている 今回はヒト子宮内膜におけるコレステロール硫酸のプロテ アーゼ活性に対する効果を検討することとした コレステロール硫酸の着床期特異的な発現の機序を解明するために 合成酵素であるコ レステロール硫酸基転移酵素 (SULT2B1b) に着目した ヒト子宮内膜は排卵後 脱落膜 化

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前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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Science & Technology Trends March 2007 1

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科 学 技 術 動 向 図表2 2007 年 3 月号 各種器官 臓器の再生の難易度と使用される生体材料 器官 臓器 再生の難易度 有機材料 無機材料 複合体 皮膚 ほぼ2次元的な組織で細胞の培養は比 較的容易 コラーゲン 生分解性合成高分子 ポリ乳酸など 軟骨 細胞外基質は3次元構造を持つが 組織 内に血管はなく 軟骨細胞は低酸素 低 栄養環境に比較的強いため 3次元培養 は比較的容易 コラーゲン コンドロイチン硫酸 などの多糖類 生分解性合成高分 子 ポリ乳酸など コラーゲン 多糖類 コラーゲン 多糖 類 水酸アパタイト 骨 細胞外基質は3次元構造を持ち 血管組 コラーゲン 生分解性合成高分子 織も存在する 3次元多孔体中心部で細 ポリ乳酸など 胞の生存と機能を維持するのが困難 リン酸カルシウム 水 酸アパタイト β リ ン酸三カルシウム α リン酸三カルシウム 生分解性高分子 リ ン酸カルシウム コ ラーゲン リン酸カ ルシウム 膵臓 細胞外基質はほとんどない 外分泌系と してタンパク消化酵素を出す部分と 内 分泌系としてインスリンなどを出す膵 島に分かれる 現在は糖尿病患者に対す るインスリン産生を目指した膵島の再 生が中心 培養皿への親水性高分子 ポリエ チレングリコールなど や疎水性 高分子 コーティング 免疫隔離膜としてアガロースなど 免疫隔離膜としてシ リカゲル中空球など 免疫隔離膜としてア ガロース ポリスチ レンスルホン酸など 肝臓 細胞外基質はほとんど無く 血管 血液 にとむ組織なので非常に難しい 培養皿への親水性高分子 ポリエ チレングリコールなど や疎水性 高分子 コーティング 2次元肝細胞シート作製のための 温度応答性培養皿など アパタイト多孔体に よる肝細胞培養チャ ンバーなど 毛細血管 細い管状組織であり 3種類の層状構造 からなるため非常に難しいが 再生した 組織を移植後も生存させるために必要 とされる 通常 血管内皮細胞が再生医 療のターゲットとなっている 細胞接着性を制御し パターン化 した培養皿 ハイドロゲルと細胞の複合体 細胞の足場として生分解性合成高 分子ナノファイバー どで欠損する 欠損の仕方により 表皮欠損と全層皮膚欠損に分けら れる 表皮のみの欠損では 表皮 細胞のみを培養した表皮を用いる ことで十分な治癒が得られる 皮 膚は比較的再生能力も高く 厚み のない組織であるため 培養中に 栄養やガスの交換が阻害されて組 織の中央部が壊死してしまうなど の問題はおきにくい したがって 培養皮膚は日本を含め世界中で実 用されている 日本では認可され た培養皮膚はないが 培養された 患者自身の表皮を患者に移植する 例は多い 広範囲熱傷などの緊急 性を要する場合には 自分の皮膚 ではなく 他人の皮膚を培養して 作製した表皮を暫定的に使用し 後に自分の皮膚組織と入れ替える という方法が採られている また 褥瘡 床ずれ などの治 療には コラーゲンスポンジの片 面にシリコーンなどを貼り付けて 補強してあるシート状の材料を用 い そのコラーゲンスポンジの上 や内部の気孔に細胞や組織を侵入 10 図表3 ヒトの皮膚の断面 文献7 p.254 より引用 させ 真皮類似層としての擬似真 皮層を再生させる方法が採られて いる この方法の治療効果を高め るため 医師の裁量のもとに患者 自身の骨髄液をコラーゲンに染み こませてアクティブな組織再生を ねらった手術法も一部で行われて いる これらの方法は緊急に使用 できるが コラーゲンスポンジ内 に擬似真皮層が形成された後に

再生医療を中心とした生体材料研究の現状 に富んだ弾性軟骨 半月板や椎間 板などの圧力のかかる腱や靭帯の 組織で見られるⅠ型コラーゲン線 維に富んだ線維軟骨から構成され ている 硝子軟骨は主としてヒアルロン 酸 コンドロイチン硫酸 ケラタ ン硫酸などの多糖類 乾燥重量の 10 と乾燥重量の 60 を占める コラーゲンからなる組織である 硝子軟骨の形を維持するコラーゲ ンはⅡ型であり 皮膚や骨 線維 軟骨に存在するⅠ型コラーゲンよ a 硝子軟骨 b 弾性軟骨 c 線維軟骨 文献7 p.20 より引用 りも その線維形成能が低い 半月板や椎間板などの血流の乏 別な部位からの部分植皮や培養表 場合の市場規模は数倍になると考 しいところにあるものを除き 線 皮の移植が必要となる 皮膚の再 えられ 重症熱傷なども含めると 維軟骨は損傷を受けても徐々に修 生医療は比較的進んでいるが 複 2020 年には 285 億円に達すると見 復される しかし それ以外の軟 数回の手術が必要になるといった 込まれている8 骨は修復されないため 何らか外 治癒期間の長期化の問題はまだ残 科的な修復が必要である 特に 3 2 されている 関節軟骨は関節におけるショック 治癒期間を短縮するために コ 軟 骨 アブソーバーと関節の摺動機能を 注3 ラーゲンを足場材料 とした培 担い 運動機能に直結しており 養真皮や真皮と表皮からなる培 軟骨は細胞と基質からなってい 早期の修復が必要とされる注4 養皮膚が開発されている 実験的 て 細胞同士は軟骨内でお互いに 従来から行われてきた治療とし に優れた成果を上げており 製品 接することなく分布している 図 ては 欠損した関節軟骨の軟骨下 化も進んでいる 日本では譁ジャ 表4 成人の軟骨には血管組織 骨に骨髄まで穴を開け 欠損部に パンティッシュエンジニアリング が無く 水分が 80 含まれてい 前駆細胞 栄養成分 成長因子な JTEC や譁ビーシーエスが臨床 る 軟骨細胞は軟骨膜を通して どを導入することで 線維軟骨を 応用を目指しており 2007 年中に 関節液から栄養成分や酸素を得 再生させる方法がある この方法 は JTEC の再生皮膚が認可される て 老廃物や二酸化炭素を棄て は再生した軟骨が線維軟骨であっ と期待されている このように ている 血管による輸送に比べ ても短期的な機能回復が望めるた 皮膚の再生医療は 技術および材 この栄養成分の輸送は圧倒的に小 め広く行われてきた しかし 長 料とも進んでいる しかし 再生 さいため 軟骨細胞は栄養や酸が 期的には変形性関節症を起こす率 できる皮膚の中には汗腺 脂線 少ない環境に強い 図表 4 のa b が高いため 現在では 不必要と 毛嚢などの皮膚付属器官は含まれ cにそれぞれ示すように 軟骨は 考えられる軟骨辺縁部から軟骨と ておらず これらを含めた皮膚の 関節などに見られる硝子軟骨 耳 軟骨下骨を円筒状に必要量だけ抜 再生技術と再生足場材料の研究開 介 耳たぶ などに見られる線維 き取り 荷重部の軟骨欠損部にモ 発が必要である 特に皮膚の場合 用語説明 は機能的のみならず審美的にも再 注 3 浮遊性の細胞を除いたほとんどの細胞は 増殖や分化のために基材に接着する 生されることが望まれる ことが必要である 細胞は体の中では基底膜をはじめとする細胞外基質に接着してい 瘢痕や潰瘍で皮膚移植を必要と るが 生体外でより効果的に細胞の増殖や機能発現を促し組織を再生させるためには する患者数は現在3万5千人程度 各細胞種に適した細胞外基質に替わる材料が必要である この細胞外基質に替わる材 料のことを足場材料という 現在 一般に多く使用されているのは コラーゲンやポ であり 2020 年までほぼ横ばいで リ乳酸 アパタイトなどの多孔体である 推移すると予測されている 2020 注 4 変形性関節症の場合では軟骨および周囲骨組織の再生が不可能であるため 金 年には約3割の患者に培養皮膚が 属やセラミックスでできた人工関節に置き換える手法が主流である これは 軟骨の 使用されると推定され その場合 持つ機能が基本的に力学的機能であるために可能な方法であるが 骨との接合部や摺 動面での長期使用の問題点は大きく 再生医療への期待は高い の市場規模は 54 億円となる 火 傷や外傷性皮膚欠損に応用された 図表4 軟骨組織の模式図 Science & Technology Trends March 2007 11

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再生医療を中心とした生体材料研究の現状 ドを作成するための技術が検討さ れている 非接着性で細胞を培養 するという点では Rotating Wall Vessel やクリノスタット注6 など の装置でスフェロイドの大きさを 制御しつつ 細胞の機能を維持す る作成方法の検討が進められてい る とくに Rotating Wall Vessel では マウス胎児の肝細胞から血 管や胆管組織を持った肝細胞集塊 が得られたという報告 13 があり 図表7 今後の進展が期待される 細胞の 接着性を制御した培養皿で大量の スフェロイドを形成するという試 み 14 も数多くなされていて こ れらは特殊な培養技術や装置を必 要としない技術として注目を集め ている 作成技術は大きく進みつつある が 細胞のソースが問題である たいていの場合 これらの臓器 が必要となるのは自分の臓器が機 肝臓組織 能を停止してしまった後であるた め 自分の幹細胞から細胞を分化 させるか 他人の細胞を増やして 利用するかしかない 後者では細 胞や細胞の作り出す分泌物によっ て免疫反応が起きるため 免疫隔 離のための材料開発が必要となる が 免疫を隔離しつつ必要な物質 は透過させなければならない点が 難しい 例えば 膵臓ではインス リン 栄養成分 老廃物を透過さ せなければならない 望ましくは ある程度の大きさ を持ち 元の臓器のすべての機能 を持った臓器が再生されることで ある そのためには 臓器の3次 元構造を初期に構築するための足 場となり 細胞と細胞の分泌した 細胞外基質のみでその形態が維持 されるまではその構造を維持でき るような補助的な生体材料の開発 が期待される 膵臓の再生医療の市場規模を糖 尿病の患者数から概算してみる 糖尿病患者の数は 日本では 246 万9千人 世界では2億 4,600 万 人 20 年語には3億8千万人に上 る 15 適応率が 10 と見積もり 一件当たりの費用を 300 万円程度 とすると 日本で 845 億円8 世 界で 8,500 億円の市場規模となる 現在 ハイブリッド型人工肝臓 肝細胞と材料の複合体による人 工肝臓 の製品化が進んでおり これが現在単価 500 万円で 2020 年には 488 億円の市場になると 予測されている8 再生肝臓はこ れにとって代わるだけでなく 再 生肝臓も用いれば肝移植の適応率 が 20 程度に上がると期待でき る その場合には 日本で肝臓移 用語説明 注 6 Rotating Wall Vessel は 上 全体像 a 前から b 下から 下 肝小葉 a 縦断面 b 横断面 NASA の技術から派生した 擬似微小 重力環境を模倣する一軸回転型培養装 置 クリノスタットは 培養容器が 3 次元的に回転することで よりすぐれ た擬似微少重力環境を作り出す装置 文献7 p.156 上 p.157 下 より引用 Science & Technology Trends March 2007 15

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