習の重要性に対する意識の低さが課題としてあげられている 原籍校における物理の授業を振り返ってみると 生徒の多くは物理に対する苦手意識が強く 主体的な学習に至っていないのが現状である 高等学校理科の目標において 探究的な学習の充実へとつなげていくためにも 知的好奇心や探究心を喚起し 科学を学ぶ意義や楽

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123

平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

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単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

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7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題

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「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けて

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ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

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3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

指導方法等の改善計画について

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

4. タブレット端末の利用状況 ( 利用機材の内容と利用のねらい ) ハードウェア機材名 :ipad ねらい : 水が流れる様子や地形が変化した様子を確認できるよう 動画で撮影し記録する 上流 中流 下流それぞれの様子が撮影できるよう ipadは3 台準備する 機材名 :ENVY110( 複合印刷機

学年第 3 学年 2 単元名 ( 科目 ) いろいろな関数の導関数 ( 数学 Ⅲ) 3 単元の目標 三角関数 対数関数 指数関数の導関数を求めることができる 第 次導関数の意味を理解し 求めることができる 放物線 楕円 双曲線などの曲線の方程式を微分することができる 4 単元の学習計画 三角関数 対

学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

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p.1~2◇◇Ⅰ調査の概要、Ⅱ公表について、Ⅲ_1教科に対する調査の結果_0821_2改訂


けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

5 単元の評価規準と学習活動における具体の評価規準 単元の評価規準 学習活動における具体の評価規準 ア関心 意欲 態度イ読む能力ウ知識 理解 本文の読解を通じて 科学 について改めて問い直し 新たな視点で考えようとすることができる 学習指導要領 国語総合 3- (6)- ウ -( オ ) 1 科学

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

1. 研究主題 学び方を身につけ, 見通しをもって意欲的に学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における算数科授業づくりを通して ~ 2. 主題設定の理由 本校では, 平成 22 年度から平成 24 年度までの3 年間, 生き生きと学ぶ子どもの育成 ~ 複式学級における授業づくり通して~ を研究主題に意欲的

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教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

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2、協同的探究学習について

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41 仲間との学び合い を通した クラス全員が学習に参加できる 授業づくり自分の考えを伝え 友達の考えを聞くことができる子どもの育成 42 ~ペア グループ学習を通して~ 体育における 主体的 対話的で深い学び を実現する授業づくり 43 ~ 子どもたちが意欲をもって取り組める場の設定の工夫 ~ 4

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

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実践 報告書テンプレート

2 各教科の領域別結果および状況 小学校 国語 A 書くこと 伝統的言語文化と国語の特質に関する事項 の2 領域は おおむね満足できると考えられる 話すこと 聞くこと 読むこと の2 領域は 一部課題がある 国語 B 書くこと 読むこと の領域は 一定身についているがさらに伸ばしたい 短答式はおおむ

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20情報【授業】

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(2) 国語 B 算数数学 B 知識 技能等を実生活の様々な場面に活用する力や 様々な課題解決のための構想を立て実践し 評価 改善する力などに関わる主として 活用 に関する問題です (3) 児童生徒質問紙児童生徒の生活習慣や意識等に関する調査です 3 平成 20 年度全国学力 学習状況調査の結果 (

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主体的な態度を育てるための効果的な ICT 活用に関する研究 - 高校理科における生徒の探究活動を通して - 山口県立下関工業高等学校教諭安成淳子 1 研究の意図 (1) 研究の背景ア教科指導におけるICT 活用の充実の必要性学校における教育の情報化の推進に向け これまでに様々な施策が進められてきている 学習指導におけるICT 活用については 平成 17 18 年度に文部科学省委託事業として独立行政法人メディア教育開発センターで実施された ICTを活用した指導の効果の調査 において ICT 活用の効果が確実にあることが報告されている 平成 23 年 4 月には 教育の情報化に関する総合的な推進方策として 教育の情報化ビジョン がまとめられ この中で 教科指導におけるICT 活用について 一層の充実が求められている イ理科教育における探究活動の充実の必要性中央教育審議会答申 ( 平成 20 年 1 月 ) において 学習指導要領改訂の基本的な考え方の一つに 思考力 判断力 表現力等の育成 があげられている また 高等学校学習指導要領解説理科編 ( 平成 21 年 ) では 改善の基本方針の一つとして 科学的な思考力 表現力の育成を図る観点から 学年や発達の段階 指導内容に応じて 例えば 観察 実験の結果を整理し考察する学習活動 科学的な概念を使用して考えたり説明したりする学習活動 探究的な学習活動を充実する方向で改善する *1 ことが示されており 探究活動の充実が求められている (2) 研究テーマ設定の理由ア授業におけるICT 活用の現状から原籍校の理科の授業では 授業内容の説明や映像提示等 ICTを取り入れながら 分かりやすく 興味をもたせるような授業の工夫を行っている ICTを活用することで 生徒は授業に対して期待感をもつことができ 生徒の興味 関心を引き出すことへの効果を実感している しかしながら 教師からの情報提供にとどまり 生徒自身の積極的な活動や知的好奇心の高まりにつながっていない場合が多く ICT 活用の効果を十分生かしているとはいえない また 高等学校学習指導要領 ( 平成 21 年 ) の総則では 各教科 科目等の指導に当たって配慮すべき事項の一つとして 情報手段を適切かつ実践的 主体的に活用できるようにするための学習活動を充実する *2 ことが示されている そこで 生徒が探究心をもって 意欲的に学んでいく態度を育てるためには 生徒自らがICTを適切に活用する学習活動を充実させていくことが必要であると考えた イ理科指導の現状から理科学習における国際的な調査として 経済協力開発機構 (OECD) の生徒の学習到達度調査 (PISA) 及び国際教育到達度評価学会 (IEA) の国際数学 理科教育動向調査 (TIMSS) が実施されている これらの調査結果から 日本の生徒の科学への興味 関心の低さや理科学 - 1 -

習の重要性に対する意識の低さが課題としてあげられている 原籍校における物理の授業を振り返ってみると 生徒の多くは物理に対する苦手意識が強く 主体的な学習に至っていないのが現状である 高等学校理科の目標において 探究的な学習の充実へとつなげていくためにも 知的好奇心や探究心を喚起し 科学を学ぶ意義や楽しさを実感させながら 自然の事物 現象を主体的に学ぼうとする態度を育てることが大切である *3 と述べられており 主体的な態度の育成につながる学習活動を展開することが重要であると考えた (3) 研究の仮説以上のことから 生徒自身の知的好奇心や探究心を喚起し 主体的に学習に向かう態度を育成するICT 活用の在り方として 生徒自らによるICT 活用に視点を当て 授業において 生徒自らがICTを活用し 探究活動を深めることにより 主体的に学ぼうとする態度を育てることができる という仮説を立て 探究活動の授業実践を通して検証することとした 2 研究の内容 (1) ICT 活用を取り入れた授業デザイン探究活動で生徒自らがどのようにICTを活用していくことが有効であるかについて 生徒の実態を基に具体的な活用内容等を検討し 主体的な態度の育成につながる授業デザインについて考えた なお 本研究における 授業デザイン とは 学習内容と様々な学習活動の要素の組立を考え 生徒の主体性が育つ授業をいかに設計していくかという授業づくり全体を示している ア原籍校生徒の実態把握原籍校第 3 学年 153 人 ( 機械科 78 人 電気科 38 人 電子科 37 人 ) の実態を 理科に対する学習意欲 理科授業に対する態度 情報機器との関わりに対する意識 の3 点から捉えた ( ア ) 理科に対する学習意欲について学習意欲や学習動機に関して 内発的動機付けや学習の功利性等 様々な研究が行われている また 主体性に関する研究では 積極的な自発的行動 自己決定力 自己表現 の因子により 主体性を定義付けしている ( 浅海 2001) これらの研究から 主体的な態度を育てるためには 学習への興味 関心をもたせ 学習活動や学習内容に対する内発的な動機付けを高めることが必要であると考えた この考えを踏まえ 原籍校生徒の理科に対する学習意欲についてアンケートを実施した アンケート結果 ( 図 1) から 学習内容に対する意欲について 次のような特徴が明 らかになった % アンケート項目 1 将来 科学に関わりのある仕事に就きたい 2 物事を考えるときなどに 科学の考え方が大切である 3 理科学習の内容や考え方は 自分にとって価値がある 4 身の回りの事物 現象の理解に 科学は役に立つと思う 5 理科で学ぶ内容や考え方は日常生活に生かすことができる 6 科学は教養として知っておく必要がある 7 科学に興味 関心がある 8 理科の学習内容や考え方に興味 関心がある 9 科学について よく分かるという自信がある 10 理科の勉強は得意な方である 図 1 理科の学習内容に対する意欲のアンケート結果 - 2 - 強くあてはまる 及び あてはまる の回答の割合

将来の進路と理科学習との関連を動機付けとしている生徒がほとんどいない 理科で学ぶ内容や考え方が 自分にとって価値があると考えている生徒が少ない 理科で学ぶ内容や考え方を日常生活に生かすことができると考えている生徒が少ない 科学や理科に対する内容に興味をもっている生徒が少ない 理科学習に対して自信をもつことのできる生徒がほとんどいない ( イ ) 理科授業に対する態度について 理科の授業における様々な学習活動に対して 生徒がどのような意識をもっているかにつ いてアンケートを実施した この結果から 記録をとること 情報機器を活用した活動 実験 観察 グループ活動 といった学習活動に対しては 関心をもち積極的に取り組 んでおり 得意だと感じていることが分かった 一方 作図することやグラフを作成するこ と 新たな課題を発見すること 計算問題 発表し合うこと といった学習活動に対 しては 積極的に活動しておらず 苦手意識があることが分かった ( ウ ) 情報機器との関わりに対する意識について 生徒を取り巻く ICT 環境と情報機器に対する意識の実態を把握するためのアンケートを 行ったところ 次のような実態が明らかになった 情報機器の活用に対する意欲が高い ( 約 85%) 日常生活で情報機器をよく活用していると感じている生徒が多い ( 約 76%) 作図やデータ処理に情報機器を活用している生徒は少ない ( 約 37%) 家庭学習に情報機器を活用している生徒は少ない ( 約 44%) イ ICT 活用を取り入れた授業デザインの構想 生徒の実態把握を基に 学習内容への意欲を高めるためには 生徒自らによる ICT 活用をど のように授業に組み込んでいくことが効果的であるかについて検討した 生徒の情報機器への関心が高いことから ICT 活用を学習活動に適切に結び付けていくこと で 学習効果を高めることができると考えられる そこで 生徒 が理科の授業において 積極的に取り組み 得意と感じている活 動を ICT で生かす 消極的な活動や苦手意識のある活動を ICT で補う ことにした そうすることで 情報機器を様々 な学習活動に取り入れることのよさに気付き 前向きに活動する ことができるように考え 授業における ICT 活用の具体的な内 容について検討した 図 2 に示すように ICT で生かす活動と して グループ活動 と 考えの記録 に ICT で補う活動として 計算とグラフ化 と 発 表と振り返り という学習活動に焦点を当て 授業デザインの構想について工夫した ウ生徒自らによる ICT 活用 授業デザインの構想の下 生徒自らによる ICT 活用が適切であると思われる具体的な 活動を見出した そこで 生徒が ICT を活 用しながら探究活動を進めていく授業におい て 情報交換を深める データ分析を深め る 内容理解を深める という三つの活用 場面を設定した ( 表 1) - 3 - ICT で 生かす ICT で 補う グループ活動 考えの記録 計算とグラフ化 発表と振り返り 図 2 ICT 活用を取り入れた授業デザインの構想 表 1 生徒自らによるICTの活用場面 活用場面 生徒の活動 身に付けたい力 グループでの活発な意見交換自らの考情報交換を 他のグループとの情報交換えを表現深める 情報の共有と伝え合いする力 データ分析を深める 効率的なデータ処理 実験結果のグラフ化 結果を解釈する力 実験の振り返り結果から内容理解を データ解釈の反復考察する深める 知識 内容の確認力

情報交換を深める 活用場面では グループ活動にICTを活用することで グループ内での意見交換を活発にするだけでなく 即座に他のグループとの情報交換を行うことができる その中で 情報を共有し 主体的に学習を進め 自らの考えを表現する力を高めることが期待できる また データ分析を深める 活用場面では 実験結果のデータから即座に計算やグラフ化を行い データ分析の作業効率を高めることで 結果から解釈して自らの考えを導き出すことができる さらに 内容理解を深める 活用場面では 物理の法則に基づいた実験データの解釈を反復して行うことで 学習内容の意味や科学的な概念の価値に気付き 結果から考察する力を身に付けていくことができる このように 生徒自らがICTを活用しながら探究活動を進めていく中で 学習に対して興味をもち 積極的に学習に取り組むことができるような活用内容を考えた (2) 生徒自らによるICT 活用を取り入れた授業実践ア ICT 活用のための教室環境各班のノート型コンピュータを無線 LANによる教室内のみのネットワークで接続し 常時 情報共有を可能にすることで 各グループ活動の充実を図りながら グループ間の情報交換が活発にできる学習環境を実現した ( 表 2 図 3) また 教師用コンピュータをネットワークに接続することで 各班への助言や思考を深めさせる発問を即座に投げかけるなど 全体のみならず生徒一人ひとりへの充実した指導を可能とした ICT 機器 ネットワーク環境 生徒活用アプリケーションソフト 表 2 授業実践における ICT 環境 教師用コンピュータ 2 台 プロジェクタ 2 台常設スクリーン 1 台ホワイトボード ( 可動スクリーンとして使用 ) 各班 1 台のノート型コンピュータ無線 LAN アクセスポイント ( 外部接続なし ) デジタルカメラ 無線 LAN による全データ共有 デジタルノートソフト OneNote 表計算ソフト Excel 生徒用 PC 教師用 PC 無線 LAN による全データの共有 生徒用 PC 生徒用 PC 生徒用 PC は各班の実験台に 1 台設置 図 3 教室環境 ( ネットワーク ) のイメージ イ生徒自らによるICT 活用を取り入れた授業デザイン原籍校機械科第 3 学年の 40 人のクラスで 物理 Ⅰ の探究活動の授業実践を 2 回実施した 探究の過程において 生徒自らによるICTの三つの活用内容 ( 表 1) を基盤として 生徒がどのようにICTを活用していくかについて授業デザインを考えた 1 回目は 力学的エネルギー保存の法則 の単元において 振り子の運動に関する探究活動 を実施した 1 班 5 6 人のグループの7 班編成とし 各班 1 台のノート型コンピュータを用い探究活動を進めた 探究活動では デジタルノートソフト OneNote を活用し 実験計画等について意見や情報を記録するとともに グループ間の情報交換が活発にできるような活動を行った また 表計算ソフト Excel を活用し 実験データを効率的に処理し 探究的にデータを分析していく活動を行った ( 表 3) 2 回目は 熱量の保存 の単元において 比熱に関する探究活動 を実施した 1 回目の実践を踏まえ 生徒全員がICTを有効に活用しながら活動することができる班編成として 1 班 4 人のグループの 10 班編成とした また グループ構成は 生徒の実態調査を基に 情報 - 4 -

機器に関心の高い生徒が必ず入るようにするなど 生徒それぞれの特性を考慮した 2 回目の活動では 1 回目の探究活動で行ったICT 活用内容に加え 日常生活で生徒が比較的頻繁に使っているデジタルカメラの活用を取り入れた 動画撮影機能を生かして実験の記録をし 振り返りに活用することで 探究的に実験を進めることができるようにした ( 表 4) 表 3 生徒自らによるICT 活用における活動内容 ( 振り子の運動に関する探究活動の場合 ) ICT 活用内容探究の過程環境活動内容 情報交換を深める 実験計画 実験の工夫 改善 データ分析を深める 実験データの分析 内容理解を深める 実験結果による考察 無線 LAN 接続による全データの共有 デジタルノートソフト OneNote を用い 班で実験方法の工夫と改善点について話し合う 他班と意見を共有し全体で話し合う 表計算ソフト Excel を用い 実験データから単位を換算し 即座にグラフ化を行う 表計算ソフト Excel を用い 全班の実験データを統合し一つのグラフを作成することから 法則の意味を明らかにしていく ICT 活用内容探究の過程環境活動内容 情報交換を深める 実験計画 データ分析を深める 実験データの分析 内容理解を深める ウ授業内容 実験結果による考察 ( ア ) 振り子の運動に関する探究活動 無線 LAN 接続による全データの共有 表 5 振り子の運動に関する探究活動におけるICT 活用時探究の過程学習活動 学習内容 ICT 活用場面活用機器等 - 5 - デジタルノートソフト OneNote を用い 各班の実験レポートを作成し グループ活動の発表をする 表計算ソフト Excel を用い 各班で実験データから熱量の計算をする デジタルカメラの動画撮影機能により 実験の様子を記録する 実験を振り返ることで誤差の原因等を考える 本授業実践 ( 全 3 時間 ) の探究活動における ICT 活用の概要を表 5 に示す また 第 2 時 の授業の一部を表 6 に示す 第 1 時 第 2 時 課題の設定 仮説の設定 実験計画 予備実験 実験の工夫 改善 本実験 データ分析 表 4 生徒自らによる ICT 活用における活動内容 ( 比熱に関する探究活動の場合 ) 振り子の運動において力学的エネルギーは保存されているか調べる という課題を設定する 振り子の運動において力学的エネルギーが保存されているならば 振れ始めの最上点の高さ h と最下点の速さ υ には υ 2 =2gh の関係が成り立つ という仮説を立てる 仮説を検証するための実験方法 ( 高さ h と速さ υ の測定方法 ) を考える 考えた実験方法で実際に実験してみる 予備実験の結果から より正確な実験をするための実験方法を再考し 改善していく 工夫 改善された実験方法により 再度実験を行う 実験結果のグラフ化により 仮説の関係式が成立しているか検証を行う 学習の振り返り 物理法則の確認 ( 教師 ) グループ間の情報交換 ( 生徒 ) 意見や活動の記録 ( 生徒 ) グループ間の情報交換 ( 生徒 ) 意見や活動の記録 ( 生徒 ) 実験データの効率的な処理 ( 生徒 ) プレゼンテーションソフト PowerPoint デジタルノートソフト OneNote デジタルノートソフト OneNote デジタルカメラの静止画 デジタルノートソフト OneNote 表計算ソフト Excel

第 3 時 考察 更なる課題の発見 実験結果のグラフを基に 各班の実験誤差や実験方法の違いについて考える 考察を基に 自らの実験を振り返り 更なる疑問を見出す 実験データによる考察 ( 生徒 ) デジタルノートソフト OneNote 表計算ソフト Excel 学習活動 学習内容 < 展開 1> (20 分 ) 実験 生徒の ICT 活用 振り子の運動を正確に測定するには どのような工夫が必要か考えよう 前時の予備実験と 家庭学習で考えた 実験計画の改善案を基に 実験の方法を話し合う ( OneNote の全班共通の実験シートに 意見を書く ) 表 6 生徒の活動の実際 ( 展開部分の一部抜粋 ) は生徒作成のコンピュータ画面を示す 全班の意見を OneNote を共有することにより 実験を準備する上で 考えるべき注意点に気付く デジタルノートソフト OneNote のシート画面 ( 全班が共通に問題と捉えた事項について 全班で意見交換を行う ) 振れ始めの最上点 A h[cm] 最下点 B υ[km/h] 振り子の最上点の高さと最下点の速さを正確に測定するためには どのような実験方法がよいか 班の意見をまとめながら実験の準備をする 各班で OneNote を活用して情報交換を行い 実験計画の改善に生かしていく ( 実験が順調に進んでいる班の発表を行う ) 実験をしてデータをとる < 展開 2> (20 分 ) 実験データ処理 データ処理のため 各班の実験処理シート ( Excel ファイル ) にデータ入力する Excel ファイルでのデータ入力で 単位の換算とグラフの作成を行う より正確に測定できる実験方法を工夫するために OneNote の情報を参考にしながら 何度も実験を繰り返している 各班で考えた意見や気付いたことを共通のシートに書き込んでいる 簡単な言葉で 会話と同じように記録することで OneNote を情報交換の手段として積極的に活用している また 班同士が意見を言い合いながら 思考を深めている 即座に単位の換算とグラフができることで データの意味を理解し 実験の見通しをもつ 表計算ソフト Excel のデータ処理シート画面 Excel の関数とグラフ作成の機能により 実験データの入力と同時に 単位の換算と グラフの作成ができている - 6 -

高さと速さのグラフから 力学的エネルギーの保存について どのような関係が分かるだろうか 全班のデータを統合し 一つの 表計算ソフト Excel のデータ統合シート画面グラフを作成する 再度 実験をしながら すぐにグラフ化を行い データ数を増やしていく グラフの結果から力学的エネルギーの法則を確認する 実験データから作成できるグラフの結果により 速さと高さの関係を理解していく 仮説を検証することで 力学的エネルギーの法則について確認する 各班の実験結果を統合し 一つのグラフを作成している グラフのプロットの色が各班を示す データを共有することで グラフから法則をより明確に 見出すことができる 常設スクリーンのグラフを見ながら 実験データを解釈し 次に必要なデータの実験を考えていく ( イ ) 比熱に関する探究活動 本授業実践 ( 全 3 時間 ) の探究活動における ICT 活用の概要を表 7 に示す 第 2 時の授業に おける生徒の活動の一部を表 8 に示す 第 1 時 表 7 比熱に関する探究活動における ICT 活用 時 探究の過程 学習活動 学習内容 ICT 活用場面 活用機器等 課題の設定 金属の比熱を実験により調べる という課題を設定する 学習の振り返り プレゼンテー 物理の基本概念や ションソフト 仮説の設定 法則の確認 ( 教師 ) PowerPoint 第 2 時 第 3 時 実験計画 実験 高温の物体を水につけたときの水温変化から その物体の比熱を求めることができる という仮説を設定する 各班で実験方法や生徒の役割分担等を話し合う より正確な実験のための工夫を考える 計画に基づき実験を行う 実験の様子を動画で記録する グループ間の情報交換 意見や活動の記録 ( 生徒 ) 意見や活動の記録 ( 生徒 ) データ分析結果から熱量計算を行い 比熱を求める 熱量計算等 ( 生徒 ) 考察 更なる課題の発見 実験中の動画記録を基に 各班の実験誤差や実験方法の違いについて考える 考察を基に 自らの実験を振り返り 更なる疑問を見出す データ及び記録による考察 ( 生徒 ) デジタルノートソフト OneNote デジタルカメラの静止画 デジタルカメラの動画 デジタルノートソフト OneNote 表計算ソフト Excel 学習活動 学習内容 ( 展開 )(35 分 ) 実験 表 8 生徒の活動の実際 ( 展開部分の一部抜粋 ) は生徒作成のコンピュータ画面を示す 生徒の ICT 活用 高温の物体を水につけ 熱平衡になったときの 水温を測定し 温度変化から物体の比熱を求めよう t 2 t 1 熱湯につけたおもり 水 一定になった水温 t - 7 -

実験の方法と注意点を確認する 実験計画を立て 自己の役割を理解した上で 実験に取り組むことができるように話し合う 各班の実験レポートを OneNote を活用し作成する 実験計画に従って 実験を行う 実験の振り返りに必要な画像や動画を記録しておく デジタルカメラを使って 実験の様子を動画で撮影する デジタルノートソフト OneNote の実験レポート画面 実験結果の処理方法について理解する ( Excel による実験シートの活用方法を確認する ) 実験を動画で撮影したファイルをレポートに貼り付けることで 何度も再生できるようにしている 実験の測定データをコンピュータに入力し 比熱を求める 実験道具の設置の様子をデジタルカメラで撮影し 画像として貼り付けている Excel によるデータ処理として比熱の計算をした画面をレポートに貼り付けている 比熱の測定は 正しくできただろうか 理論値との誤差の原因はどこにあるのだろうか 理論値と実験値を比較し 誤 デジタルカメラによる記録を確認し 自分たちの行動を振り返る 差の原因を考える 誤差の少ない班の実験の様子を確認するため デジタルカメラの記録を見る 誤差の考察から 実験計画と結果のつながりを理解する 実験レポートとして 動画やデータ分析のシートを活用しながら 実験の考察を活発に行う 他班の実験の動画を確認し比較することで 実験方法の違いに気付き考察を深めていく 実験計画や工夫を記録した実験レポート画面 実験の手順や担当する生徒の名前 使用する道具等を記入している 各班のレポートを比較することで 実験計画と結びつけて考察を深めることができる - 8 -

(3) 生徒自らによるICT 活用の効果ア探究活動の成果に関する考察 ( ア ) 自己評価シートに基づく効果の分析 2 回の探究活動の授業実践を行った後 生徒の自己評価アンケートを実施した アンケートの質問内容は 授業目標の達成について問う質問と 自らICTを活用したことの効果について問う質問で構成した 図 4にアンケート結果の一部を示す 授業目標に関する質問に対する回答からは 全てにおいて高い評価が得られ 意欲的に授業に参加し 探究することができたという達成感や有能感をもっていることが分かった また ICT 活用を取り入れた探究活動を行ったことで グループ活動やデータ処理に対する高い評価が得られ ほとんどの生徒が ICT 活用の効果を実感していることが分かった 生徒自らによる ICT 活用を取り入れた授業デザインの柱である 情報交換を深める データ処理を深める 内容理解を深める の三つの活用の効果が認められた 1 回目 振り子 の探究活動の結果 2 回目 比熱 の探究活動の結果 1ICT を活用することで 他のグループの実験の様子や結果を知ることができた 2ICT を活用することで 情報交換やデータ処理により考えることができた 3ICT を活用することで ループでの考え方の変化等 振り返ることができた 図 4 ICT 活用に関する自己評価シート結果 ( イ ) 理解度確認テストに基づく効果の分析 授業実践の効果を分析する方法として 授業への関わりや理解度を客観的に捉えるため のテストを実施した 特に 2 回目の授業実践の 比熱に関する探究活動 においては ICT 活用の効果について詳細な分析を行うために 確認テストを 活動前 活動後 及び 1 週間後 の 3 回実施した 確認テストは 物理法則の基本概念の理解を問う問題と 活動内容の理解を問う問 題に加え 物理概念と実験 を関連付けて考えること ができるかどうかという 思考を問う問題等からな る 図 5 に 3 回の確認テ ストの結果を示す 確認テストの結果から 生徒自らが ICT を活用し ながら探究活動を行ったこ とにより 授業に対して 正答率 - 9 - 図 5 理解度確認テストの結果

前向きな姿勢と積極的な活動が実現し 内容への理解や思考力が高まることが確認できた ま た 各項目の実施時期による正答率の変化から 以下のような傾向が確認できた ICT 活用により思考しながら獲得できた内容については 定着の度合いが高い ICT を活用することで グループ活動が活発になり 探究活動に対する理解や考察が深ま るだけでなく 定着も高くなる ICT を活用しながら探究活動を進めていくことで 物理現象に対する興味や関心の高まり が 1 週間後も持続している さらに 興味 関心の内容に関する自由記述の生徒の回答を分析すると 表 9 のように分類 できた 探究活動直後は 更なる実験 に対する関心が多かったが 時間の経過とともに 実社会や実生活との関連への関心 が高くなっており 学校で学習した内容を日常生活に照 らし合わせて考えることができるように なっていることが分かる この結果は 学習内容に対する意欲の高まりに加え 学習を自らの問題と捉えていることを示 しており 主体的な態度の育成に結び付 いたと考えられる イ主体的な態度への変容に関する考察 表 9 興味 関心の内容の分類 主体的な態度を育てるためには 学習活動や学習内容に対する内発的動機付けの高まりが必要 であると考えられることから 生徒の学習に対する態度が主体的なものに変容しているかどうか を検証するために 事前に生徒の実態把握として実施したアンケートを 2 回の授業実践後に再 度実施した 授業前後のアンケート結果の比較を図 6 7 に示す 理科に対する学習意欲についてのアンケート結果 ( 図 6) から 科学と理科学習に対する価値 に対する認識が高まっていることや 将来との関わりや実用性といった日常生活との関わりに対 する意識が大きく伸びていることが分かった このことから 理科学習を自らの問題として結び 付けて捉えるように変容しており 学習意欲が内発的な動機付けへと高まっていることが確認で きた また 理科の授業に対する態度についてのアンケート結果 ( 図 7) から 授業における様々 な学習活動に対して積極的に活動できるようになったことが分かった 特に 授業実践前には消 極的で苦手な学習活動であった発表や計算等の項目の伸びが大きく 前向きな姿勢への変容が確 実に現れる結果が得られた 興味 関心の内容 探究活動後 1 週間後 更なる実験への意欲 17 人 5 人 熱現象への関心と意欲 10 人 10 人 実社会 実生活との関連 4 人 16 人 熱現象についてどのようなことに興味 関心がありますか という問いに 自由記述で回答した内容を分類したものである % % 強くあてはまる 及び あてはまる の回答の割合 図 6 理科に対する学習意欲の変容 - 10 - 積極的に取り組んでいるか に対して 強くあてはまる 及び あてはまる の回答の割合 図 7 理科授業に対する態度の変容

このように 生徒自らが ICTをどのように活用することが有効であるかといった観点から 得意な活動を ICTで生かす 苦手意識のある活動を ICTで補う という方針で設計した授業デザインの有効性が確認できた そして 生徒自らがICTを活用し探究活動を行ったことにより 生徒の主体的な態度が育つことが実証できた (4) 生徒自らによるICT 活用モデルの構築ア生徒自らによるICT 活用を取り入れた探究活動のプロセス探究活動において 生徒自らがICTを活用し 情報交換を深める データ分析を深める 内容理解を深める という活動を進めていく授業実践を行った 情報を共有し即座に伝え合うことのできる共有化や即時性 データをグラフや画像に変換できる可視化 記録等を振り返ることのできる保存性といった様々なICTの特長を有効に活用することで 生徒の授業に対する態度が主体的なものへと変容することが確認できた 実践の成果を基に 探究の過程を 3 段階で捉え 各段階における効果的な生徒のICT 活用について再検討した 生徒のICT 活用の具体場面と生徒の変容の関連付けから 生徒自らによるICT 活用を取り入れた探究活動のプロセス ( 図 8) としてまとめた 1 課題に気付く段階 2 課題を解決する段階 3 次への課題へ発展する段階 探究の過程 課題の設定 仮説の設定 実験の計画 予備実験の実施 実験の工夫 改善 実験データの分析 結果の考察 実社会 実生活との関連 更なる疑問 生徒の I C T 活用 情報交換を深める データ分析を深める内容理解を深める 基盤となる ICT スキル グループ内での意見交換 他班との情報交換 他班とのデータの比較 実験結果の共有 考察に関する情報交換 実験データの処理方法の検討 実験データの計算処理 実験データの解釈 実験データのグラフ化 科学の基本的な概念や原理 実験データの処理方法の理解 実験結果の振り返りと推論法則の理解 学習内容の確認と反復 考えや実験計画 実験の記録 ( 文字入力による記録 静止画 動画撮影による記録 ) 情報取得 ソフトウェアの基礎的操作 ICT の主な特長共有化 即時性 保存性 視覚化 効率性 共有化 保存性再現性 正確性 共有化 生徒の変容課題解決への意欲の高まり学習内容の理解の深まり学習に対する主体的な態度 図 8 生徒自らによる ICT 活用を取り入れた探究活動のプロセス イ教科学習における生徒自らによる ICT 活用モデル 教科指導における ICT 活用の実際を調べるために原籍校の教師を対象として行った 授業 における ICT 活用に関するアンケート の結果によると ICT 活用による効果を認めてい るものの 教科内容との関連付けや活用場面の設定に約半数の教師が問題を感じていることが 分かった そこで 授業実践の成果を踏まえ 主体的な態度の育成につながる授業デザインの ための手だてとして 理科のみならず他の教科にも対応した一般的なモデルを考えた モデル が提示されることで 見通しをもった授業設計や授業展開が可能になるものと思われる 一般 的なモデルを組み立てるために 生徒自らによる ICT 活用を取り入れた授業デザインの構想 により整理することができた探究活動のプロセスの各段階を 教科学習における学習課題の解 決の流れとして対応させて捉えることで 図 9 に示すような 教科学習における生徒自らによ る ICT 活用モデル を構築した 生徒自らによる ICT 活用を授業で実践していくためには モデルに示すように段階的に計 画していくことが必要である まず 最初の段階として ICT の特長と教科学習をつなぐこ - 11 -

とで ICT 活用のよさに気付き 学習内容への興味 関心が深まっていく 次に ICT 活用により教科学習を深めていく段階を経て 教科学習に生かすことができる その段階に高められることで 生徒の教科学習への態度が主体的なものへと変容するものと考える 興味 関心の高まり ICT の特長と教科学習をつなぐ 学習課題の認識 理解の深まり ICT で教科学習を深める 学習課題の解決 主体的な態度 ICT を教科学習に生かす 次への学習課題の発見 図 9 教科学習における生徒自らによる ICT 活用モデル 3 研究のまとめと今後の課題 (1) 研究のまとめ 探究活動の実践を通して 生徒自らによる ICT 活用を授業に仕組むことで 生徒の物理に 対する意欲と意識が変容し 授業への取組が主体的な態度へと育っていくことが分かった ま た 授業実践の結果から ICT の特長と効果が様々な学習活動に対応していることが確認で き 生徒自らによる ICT 活用を取り入れた探究活動のプロセス ( 図 8) としてまとめるこ とができた 実践例から考えられたプロセスを適用することで あらゆる探究活動において ICT を活用することの有効な場面を想定し 具体的な活用方法を考えることが可能である さらに 探究活動のプロセスを教科学習に対応させ 他教科にも有効な 教科学習における生 徒自らによる ICT 活用モデル ( 図 9) を構築した 生徒の主体的な態度が育つための授業展 開について 有効な手だての提供となるものと考える (2) 今後の課題 本研究において 生徒の主体的な態度が育つための効果的な ICT 活用の手だてとして 生 徒自らが ICT を活用することに視点を当て 授業実践を行った 実践を踏まえ 更に ICT 活用の効果を高めていくためには ICT の特長と学習課題の関連付けを一層明確にし 確立 していくことが重要である また 生徒が ICT を活用するためには 生徒自身がその有効性 に気付き スキルを習得していくことも必要である そして 生徒の学習に対する態度を主体 的なものへと変容させるためには 授業の中で日常的に ICT を導入し 段階的 継続的に実 践を重ねていくことが重要である さらに 教科学習における ICT 活用の授業デザインの視点について研究を深めることで 生徒自らによる ICT 活用モデルをより実践的なものとし あらゆる教科で有効な手だての提 供となりうる体系的なモデルとして確立していきたいと考えている 引用文献 *1 文部科学省 高等学校学習指導要領解説理科編 2009 p3 *2 文部科学省 高等学校学習指導要領 2009 p8 *3 文部科学省 高等学校学習指導要領解説理科編 2009 p12 参考文献 独立行政法人メディア教育開発センター 教育の情報化の推進に資する研究報告書 2007 文部科学省 教育の情報化ビジョン ~21 世紀にふさわしい学びと学校の創造を目指して ~ 2011 文部科学省 教育の情報化に関する手引 2010 文部科学省 高等学校学習指導要領解説理科編 2009 下條隆嗣 初等中等教育用理科教科書の学習材機能の向上に関する調査研究研究成果報告書第 Ⅰ 巻 2010 櫻井茂男 内発的動機づけに関する自己評価モデルの実証研究 1986 市川伸一 学ぶ意欲の心理学 PHP 研究所 2001 浅海健一郎 臨床心理学における 主体性 概念の捉え方に関する一考察 九州大学心理学研究第 2 巻 2001 西之園晴夫 授業の過程 第一法規 1981-12 -