【問】新ロゴマークの商標登録までに要する費用の取得価額算入の要否

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スライド 1

日本基準でいう 法人税等 に相当するものです 繰延税金負債 将来加算一時差異に関連して将来の期に課される税額をいいます 繰延税金資産 将来減算一時差異 税務上の欠損金の繰越し 税額控除の繰越し に関連して将来の期に 回収されることとなる税額をいいます 一時差異 ある資産または負債の財政状態計算書上の

b c.( 略 ) 2 不動産取得税の軽減に係るの発行信託会社等の地方税法附則第 11 条第 12 項に基づく不動産取得税の軽減のための同法施行令附則第 7 条第 12 項に規定するの発行等については 以下のとおり取り扱うものとする イ ロ.( 略 ) 載があること c d.( 略 ) 2 不動産取

3. 改正の内容 法人税における収益認識等について 収益認識時の価額及び収益の認識時期について法令上明確化される 返品調整引当金制度及び延払基準 ( 長期割賦販売等 ) が廃止となる 内容改正前改正後 収益認識時の価額をそれぞれ以下とする ( 資産の販売若しくは譲渡時の価額 ) 原則として資産の引渡

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

CONTENTS 第 1 章法人税における純資産の部の取扱い Q1-1 法人税における純資産の部の区分... 2 Q1-2 純資産の部の区分 ( 法人税と会計の違い )... 4 Q1-3 別表調整... 7 Q1-4 資本金等の額についての政令の規定 Q1-5 利益積立金額についての政

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2. 減損損失の計上過程 [1] 資産のグルーピング 減損会計は 企業が投資をした固定資産 ( 有形固定資産のほか のれん等の無形固定資産なども含む ) を適用対象としますが 通常 固定資産は他の固定資産と相互に関連して収益やキャッシュ フロー ( 以下 CF) を生み出すものと考えられます こうし

( 資産の部 ) ( 負債の部 ) Ⅰ 特定資産の部 1. 流動負債 366,211,036 1 年内返済予定 1. 流動資産 580,621,275 特定社債 302,000,000 信託預金 580,621,275 事業未払金 2,363, 固定資産 6,029,788,716 未払

法人税における役員特有の取扱いには 主に次のようなものがあります この取扱いは みなし役 員も対象となります 項目 役員給与 損金算入制限 過大役員給与 特有の取扱い 定期同額給与 ( 注 1) や事前確定届出給与 ( 注 2) など一定のもの以外は損金不算入 実質基準 ( 職務内容 収益状況など

下では特別償却と対比するため 特別控除については 特に断らない限り特定の機械や設備等の資産を取得した場合を前提として説明することとします 特別控除 内容 個別の制度例 特定の機械や設備等の資産を取得して事業の用に供したときや 特定の費用を支出したときなどに 取得価額や支出した費用の額等 一定割合 の

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改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

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Transcription:

新社名 新ロゴマークの商標登録までに生ずる費用の取得価額算入の要否 Profession Journal No.10(2013 年 3 月 14 日 ) に掲載 日本税制研究所研究員朝長明日香 問 当社は 来年度に行われる同業社 A 社との統合に伴い 現在 当社で使用している新社名 新ロゴマークを作り替えて 商標登録する予定です この新社名 新ロゴマークの制作費用は 商標権 として無形固定資産に計上するものと考えますが 商標登録までに生ずる調査費用 出願費用や弁理士に対する報酬などは 法人税基本通達 7-3-3の2( 固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示 )(1) ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用 として商標権の取得価額に算入しないこととしてよいのかという疑問が生じています 新社名 新ロゴマークの商標登録までに生ずる次の一連の費用の法人税法上の取扱いについて ご教授をお願い致します 登録済みの他の商標と同一又は類似するものでないかを調査するための調査費用 出願費用( 印紙代 弁理士への出願代理手数料及び電子化手数料 ) 早期審査費用 拒絶理由通知に応答するための意見書 補正書の作成 提出費用 登録費用( 印紙代及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料 ) なお 当社は 新社名 新ロゴマーク入りの商品を既にホームページ上に掲載しているため 早期審査を受ける条件を満たしていると考えています 回答( 要旨 ) これらのうち 登録費用 ( 印紙代 ( 登録免許税及び印紙税 ) 及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料 ) は 法人税法基本通達 7-3-3の2(1) ニ 登録免許税その他登記又は登録のために要する費用 に該当すると考えられるため 商標権の取得価額に算入しなくてもよいと考えます 出願費用 ( 印紙代 ( 印紙税 ) 弁理士への出願代理手数料及び電子化手数料) も 課税実務上 損金の額とすることが容認されているようです 登録費用及び出願費用以外の費用は 原則どおり 取得価額に算入する必要があると考えます

1 商標権の取得価額減価償却資産の取得価額に関しては 法人税法施行令 54 条 1 項各号に定めがあり 自己の建設 製作又は製造 ( 以下 建設等 といいます ) に係る減価償却資産の取得価額は 次のⅰとⅱの合計額とされています ( 法令 541 二 ) ⅰ 資産の建設等のために要した原材料費 労務費及び経費の額 ⅱ 資産を事業の用に供するために直接要した費用の額 法令上は 新社名 新ロゴマークの商標登録までに要した費用の額は すべて 商標権の取得価額を構成するとされている と考えてよいでしょう 2 取得価額に算入しないことができる費用商標権の取得価額に関する法令の規定は 上記 1で述べたとおりですが この規定に関し 法人税基本通達に次のような解釈が示されています 7-3-3の2( 固定資産の取得価額に算入しないことができる費用の例示 ) 次に掲げるような費用の額は たとえ固定資産の取得に関連して支出するものであっても これを固定資産の取得価額に算入しないことができる (1) 次に掲げるような租税公課等の額イ不動産取得税又は自動車取得税ロ特別土地保有税のうち土地の取得に対して課されるものハ新増設に係る事業所税ニ登録免許税その他登記又は登録のために要する費用 (2) (3) 省略 そして この通達に関しては 次のように解説が行われています 本通達の (1) の租税公課等は いずれも固定資産の取得に関連して納付するものであるから その取得価額に算入しなければならないのではないかという考え方があり得よう しかしながら もともとこれらの租税公課等は一種の事後費用であるうえ その性格も流通税的なものないしは第三者対抗要件を具備するための費用であって 必ずしも固定資産の取得原価そのものとはいいきれない面がある そこで これらの租税公課等を取得価額に算入するかどうかは法人の判断に任せることとされている ( 森文人編著 法人税基本通達逐条解説 六訂版 527 頁 ( 税務研究会出版局 ))

上記の通達及びその解説には そもそも上記 1の法令の解釈として妥当であるのか否かという点に多分に疑問が存すると言わざるを得ません 通達に関しては (1) イからニまでの租税公課を固定資産の取得価額に算入しないことができる理由は何か また これらの租税公課と 登記又は登録のために要する費用 は性格が大きく異なるにもかかわらず同様に固定資産の取得価額に算入しないことができるとした理由は何か というような疑問があります また 上記の解説に関しても 上記 (1) イからニまでの租税公課等の取扱いの原則と特例が明確ではなく ニ登録免許税その他登記又は登録のために要する費用 が 一種の事後費用である という根拠は何か そもそも 事後費用 か否かという時間軸を用いて取得価額となるのか否かということを判断することはできないのではないか また 流通税的なもの 第三者対抗要件を具備するための費用 が取得価額とならない理由は何か というような疑問点があります ただし このような根本的な疑問は 一応 措いて 上記の通達及び解説に則して本件の取扱いの検討を進めることとします 本件に関しては上記通達の (1) の ニ登録免許税その他登記又は登録のために要する費用 の範囲が問題となるわけでありますが 登記 又は 登録 とは 次のように定義されています 登記 一定の事項を広く公示するために 登記所に備える公簿( 登記簿 ) に記載することをいう ( 林修三他 法令用語小辞典 学陽書房 ) 登録 一定の法律事実又は法律関係を行政庁等に備える特定の帳簿に記載することをいう ( 同上 ) 要するに 登記 又は 登録 とは 公簿や帳簿に記載することをいうわけです また この 登記又は登録のために要する費用 に関しては 単独で掲げられているのではなく その他 という用語を用いて 登録免許税 と併記されていることからも分かるとおり 登記 登録 特許 免許 許可 認可 認定 指定及び技能証明 ( 以下 登記等 という ) について課する ( 登録免許税法 2) こととされている 登録免許税 と併記してよい内容のものを指すはずである という点にも留意する必要があります 上記 (1) においては イからニまで租税公課を列挙し その租税公課の中の 登録免許税 に併記した用語は 自ずと 登記等について課される 登録免許税 と併記してよい同種のものを指すものとなっているはずです

そして この 登記又は登録のために要する費用 に関しては もともとこれらの租税公課等は一種の事後費用であるうえ その性格も流通税的なものないしは第三者対抗要件を具備するための費用 であるため 固定資産の取得価額に算入しなくてもよい という考え方がとられているわけです このため 上記 (1) ニに関しては 公簿や帳簿に記載するために要する費用 で 一種の事後費用 かつ 流通税的なもの 又は 第三者対抗要件を具備するための費用 という要件に該当するものが 上記 (1) ニにおいて固定資産の取得価額に算入しなくてもよいとしているものと捉えることができるはずです 3 具体的な判定新社名や新ロゴマークなどを商標登録するまでの間に発生する費用の取扱いは 次のようになるものと考えます (1) 登録済みの他の商標と同一又は類似するものでないかを調査するための調査費用 調査 のための費用であって 登録 のために要する費用ではありません また 流通税的なもの 又は 第三者対抗要件を具備するための費用 とも言えません このため 法人税法基本通達 7-3-3の2(1) ニに含まれないことは 明らかです (2) 出願費用 ( 印紙代 弁理士への出願代理手数料及び電子化手数料 ) 出願 のための費用であって 登録 のための費用ではありません また 流通税的なもの 又は 第三者対抗要件を具備するための費用 とも言えません このため 法人税法基本通達 7-3-3の2(1) ニには含まれないということになるはずです しかし 課税実務上は この印紙税 出願手数料及び電子化手数料に関しては 損金とすることを容認しているケースが多いようです その理由は必ずしも明確ではありませんが 印紙税が租税公課であること そして 出願 を行わなければ 登録 も行われないという関係にあるためではないかと想定されます 仮に 登記又は登録のために要する費用 について前提を置かずにその用語のみを捉えるとすれば その範囲はかなり広くなる可能性があります 課税実務において 出願費用を損金とすることを容認するということであれば 細かな理由の是非等は別にして 特段 異論が出てくることはないものと考えられますが 税務執行当局の見解が明確でないことは事実であるから 何らかの形で税務執行当局の見解を明確にする方がよい と考えます

(3) 早期審査費用 早期審査 のための費用であって 登録 のための費用ではありません また 流通税的なもの 又は 第三者対抗要件を具備するための費用 とも言えません このため 法人税法基本通達 7-3-3の2(1) ニには含まれません (4) 拒絶理由通知に応答するための意見書 補正書の作成 提出費用 意見書 補正書の作成 提出 のための費用であって 登録 のための費用ではありません また 流通税的なもの 又は 第三者対抗要件を具備するための費用 とも言えません このため 法人税法基本通達 7-3-3の2(1) ニには含まれません (5) 登録費用 ( 印紙代及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料 ) 登録免許税と 登録 のための費用 ( 印紙税及び弁理士への成功報酬並びに登録手数料 ) であって 第三者対抗要件を具備するための費用 であり 法人税法基本通達 7-3-3の2(1) ニに含まれます