1. なぜ空き家が多くなってきたのか その原因? 1 賃貸経営 ( 貸家 ) に関する認識不足 2 賃貸契約に関する問題 ( 借地借家法 ) 3 相続に関する問題 2. 賃貸経営に関る問題点と対策 1 不動産の賃貸経営を事業として認識しておられない 2 借入金に対する認識が甘い ( 相続税対策が主で

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相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

ラリーマン 相続税の申告は? 45 相続税の申告はどのようにすればよいのでしょうか 相続が開始したことを知った日 ( 通常は被相続人が死亡した日 ) の翌日から 10 か月以内に 被相続人の住所 地の所轄税務署に申告し 相続税を納付する必要があります 申告書を提出する人が 2 名以上いる場合は 共同

東京太郎様 Inheritance Report 相続診断書 弁護士法人 税理士法人リーガル東京 平成 30 年 8 月 20 日作成

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

相続税の総額の計算法定相続分であん分課税遺産総額実際の相続割合であん分超過累進税率の適用税価格の合計額の総額税額 基礎控除額遺産に係る相続税の基礎知識 (1) 相続税の計算過程 相続人が配偶者と子 2 人の場合課法定相続分 法定相続分 税額 算出税額 法定相続分 税額 相続税算出税額 税額控除相続人

2. 二世帯住宅と特定居住用宅地等 [1] 区分所有なし : 外階段 / 親族が取得する場合 Q. 被相続人 A が所有する宅地の上に A の所有する建物があり 1 階に A が居住し 2 階に子 B とその家族が居住しています ( 建物内部では行き来ができない構造 ) A と B は別生計です こ

第 1 問次の関連業法とコンプライアンスに関する各文章 ( 問 1~ 問 10) を読んで 正しいもの または適切なものには〇を 誤っているものまたは不適切なものには を 解答用紙に 記入しなさい ( 各 1 点 ) ( 問 1) 弁護士資格を有しない相続診断士が 事件性のある法律相談を無償で行うこ

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海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

上級相続診断士練習問題 < 注意事項 > 1 試験問題用紙は 問題用紙と解答用紙からなっています 解答はすべて解答用紙に記入してください 2 試験問題用紙は 問題用紙と解答からなっています 解答はすべて解答用紙に記入してください 3 問題数 (= 解答数 ) は合計 45 問です 本試験は試験時間

経 ViewPoint 営相談 相続時における小規模宅地等の特例の改正 谷口敬三相談部東京相談室 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 ( 以下 小規模宅地等の特例 ) は 一定の要件を満たす宅地等 ( 特定事業用等宅地等 特定居住用宅地等 貸付事業用宅地等 ) につ

第 5 章 N

おき 太郎様 Inheritance Report 相続診断書 税理士法人おき会計 平成 28 年 7 月 20 日作成

2011年税制改正のポイント

配偶者の税額軽減特例の有利な受け方 配偶者がいる場合の 相続税の具体的な計算例は以下の通りです 1. 設例 自宅 預貯金等の相続財産の遺産額 =2 億円 法定相続人 = 配偶者 + 子 2 人の合計 3 人 実際の遺産分割は 法定相続分の通りとする 未成年者控除 外国税額控除 生命保険金の非課税枠金

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

である 12 遺留分とは 遺言の内容にかかわらず一定の相続人が確実に受け取ることができる一定の 割合のことである 直系尊属のみが相続人である場合は 被相続人の財産の 1/3 その 他の場合には 被相続人の財産の 1/2 である ただし 兄弟姉妹には遺留分はない 13 相続の放棄は 被相続人の生前に行

Microsoft Word - 第58号 二世帯住宅の敷地にかかる小規模宅地等の特例

自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人のデータ 自宅の他に賃貸マンションと駐車場を所有している人の 法定相続人の数と相続財産および債務のデータから相続税を試算します 賃貸マンションについては全室が賃貸用かどうか 駐車場については舗装がしてあるかどうかで評価額が違ってくることがあります また

暦年課税の贈与を毎年する人のデータ 暦年課税の贈与は 現金を贈与するのか不動産を贈与するのかで違ってきます 土地は路線価方式または倍率方式で評価し建物は固定資産税評価額で評価しますので 現金での贈与の場合よりも税率は低くなります ただし不動産の贈与では 土地や建物の贈与または共有持分の贈与になります

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Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

配偶者がいる人の一次相続と二次相続のデータ 被相続人に配偶者がいる一次相続と 配偶者がいない二次相続の相続税シミュレーションを行います 配偶者の税額軽減は その節税効果が大きいために一次相続で相続税を大幅に減額することができますが 次の二次相続では想定外の相続税が発生することがあります 配偶者がいる

相続税に関するチェックリスト

給与所得控除額の改正前後の比較 改正前 改正後 給与等の収入金額給与所得控除額給与等の収入金額給与所得控除額 180 万円以下 収入金額 40% 65 万円に満たない場合は 65 万円 180 万円以下 収入金額 40%-10 万円 55 万円に満たない場合は 55 万円 180 万円超 360 万

12. 小規模宅地等の特例の見直し 1. 改正のポイント (3) 適用時期平成 30 年 4 月 1 日以後に相続又は遺贈により取得する宅地等に係る相続税について適用される ただし (2)1 の改正について 平成 30 年 3 月 31 日においての別居親族の要件を満たしていた宅地等を平成 32 年

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

原稿4.xls

土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

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平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

小規模宅地等の評価減の特例 1. 概要 居住用や事業用宅地を相続した場合 小規模とされる一定面積までを 50%~80% 評価減できる特例があります ( 措置法 69 条の 4) 区分宅地の区分事業や居住の見込減額割合対象面積 1 号特例特定事業用等宅地等 1 親族が相続して事業を継続 80% 400

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一戸建ての自宅を所有している人のデータ 東京都内やその近郊など路線価の高い宅地に一戸建ての自宅を所有し その他に預貯金や有価証券を保有している人の相続税シミュレーションになります 路線価が高いと自宅の敷地の面積が広くなくても その宅地の評価額は高額になりますので この宅地に対して小規模宅地等の特例が

1. 相続手続の流れ お客さま (1) ジャパンネット銀行へのご連絡 口座名義人の方 ( 被相続人様 ) がお亡くなりになりましたら 被相続人様のキャッシュカードをお手元にご用意のうえ カスタマーセンターにご連絡ください その際 以下の項目について確認させていただきます ご確認項目 1 被相続人様の

税金の時効 税務では 時効のことを更正 決定処分の期間制限 = 除斥期間 といいます その概要は 以下の通りです 1. 国税側の除斥期間 ( 通則法 70) 1 期限内申告書を提出している場合の所得税 相続税 消費税 税額の増額更正 決定処分の可能期間 : 法定申告期限から 3 年 2 無申告の場合

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2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

スライド 1

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〔問 1〕 Aは自己所有の建物をBに賃貸した

貸家建付地 貸家建付地とは 自分名義の土地に自分名義の建物を建設してその建物を他人に貸しているものです ( 財基通 26) 借家人には法律上の借家権が発生し 地主は立退料を支払わないと自由に土地建物を処分できません( 借地借家法 28) 貸家建付地の典型例は アパート マンションです このため 相続

相続人の居住用または事業用の宅地については2 割または5 割評価にするという小規模宅地等の評価減の特例があるが 平成 22 年度税制改正により 原則として申告期限まで居住または事業を継続していなければ適用が認められなくなっている 今回 基礎控除額が引き下げられることと合わせ 都市部の独居老人が亡くな

(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

1 まずは相続の基本的なお話しから 相続とは? 相続とは人が亡くなられた際に その人の財産を一定の身分関係にある誰かが承継することです 相続において 亡くなられた方を被相続人といい 被相続人の財産を承継する方を相続人といいます 誰が相続できますか? 相続人は民法で定められており法定相続人と呼ばれます

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

相続財産の評価P64~75

2 税額控除等の計算 ( 単位 : 円 ) 項目対象者計算過程金額 答案用紙 Chapter2 問題 3 課税価格の計算 Ⅰ 相続人及び受遺者の相続税の課税価格の計算 1 分割財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 2 みなし取得財産価額の計算 ( 単位 : 千円 ) 取得者財産の種類計算過程金額

個人版事業承継税制の創設について 現行税制上の事業承継支援特例を踏まえた検討

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

土地の譲渡に対する課税 農地に限らず 土地を売却し 譲渡益が発生すると その譲渡益に対して所得税又は法人税などが課税される 個人 ( 所得税 ) 税額 = 譲渡所得金額 15%( ) 譲渡所得金額 = 譲渡収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) 取得後 5 年以内に土地を売却した場合の税率は30

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2. 適用を受けるにあたっての 1 相続発生日を起算点とした適用期間の要件 相続日から起算して 3 年を経過する日の属する年の 12 月 31 日まで かつ 特例の適用期間である平成 28 年 4 月 1 日から平成 31 年 12 月 31 日までに譲渡することが必要 例 平成 25 年 1 月

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住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

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平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

144 第 2 章宅地等の評価第 3 個別事情のある宅地の評価 このような過小宅地を評価する場合 財産評価基本通達における原則評価 ( 奥行価格補正率や奥行長大補正率等 ) のみでは上記の要因が十分に考慮されているとは言い難く 市場価値である時価と大きく乖離しているケースが見受けられます よって 本

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

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平成 29 年度下半期における相続に関する相談状況について 平成 30 年 5 月 28 日静岡市駿河区稲川一丁目 1 番 1 号静岡県司法書士会会長杉山陽一静岡県司法書士会では 平成 14 年から15 年以上に亘り 面談及び電話による無料相談を実施してまいりました ( 平成 17 年からは 司法書

措置法第 69 条の 4(( 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例 )) 関係 ( 被相続人等の居住の用に供されていた宅地等の範囲 ) 69 の 4-7 措置法第 69 条の 4 第 1 項に規定する被相続人等の居住の用に供されていた宅地等 ( 以下 69 の 4-8 までにおいて 居

平成16年版 真島のわかる社労士

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目 次 最近における相続税の課税割合 負担割合及び税収の推移 1 地価公示価格指数と基礎控除(58 年 =100) の推移 2 最近における相続税の税率構造の推移 3 小規模宅地等の課税の特例の推移 4 相続税負担の推移( 東京都区部のケース ) 5 ( 補足資料 ) 相続税の概要 6 相続税の仕組

所得税確定申告セミナー

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(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

配偶者居住権の相続税評価額について 2018/12/28 田口税理士事務所 平成 30 年の民法改正により 配偶者の居住権を保護するために配偶者居住権が新設されましたが 相続税の評価にどう影響させるかについて 今回の税制改正大綱に記載されています まず 前提となる配偶者居住権について 説明します 1

102 第 4 章 農業 農地の承継時の特例 資価格は 国税庁 HPの路線価ページから確認できます なお 平成 30 年度税制改正において 対象となる農地の範囲等が改正されました 詳細は 後記 6を参照してください 3 適用要件 (1) 被相続人この特例の対象となる被相続人は 次のいずれかに該当する

(2) 被災代替住宅用地の特例について 特例の概要 被災住宅用地の所有者等が当該被災住宅用地の代替土地を平成 33 年 3 月 31 日までの間に取得した場合 当該代替土地のうち被災住宅用地相当分について 取得後 3 年度分 当該土地を住宅用地とみなし 住宅用地の価格 ( 課税標準 ) の特例を適用

A. 受贈者に一定の債務を負担させることを条件に 財産を贈与することを 負担付贈与 といいます 本ケースでは 夫は1 妻の住宅ローン債務を引き受ける代わりに 2 妻の自宅の所有権持分を取得する ( 持分の贈与を受ける 以下持分と記載 ) ことになります したがって 夫は1と2を合わせ 妻から負担付贈

2. 制度の概要 この制度は 非上場株式等の相続税 贈与税の納税猶予制度 とは異なり 自社株式に相当する出資持分の承継の取り扱いではなく 医療法人の出資者等が出資持分を放棄した場合に係る税負担を最終的に免除することにより 持分なし医療法人 に移行を促進する制度です 具体的には 持分なし医療法人 への

テキスト編 第 1 章相続税 贈与税とはなにか 目次 1 相続税が課税される理由 1 2 どれくらいの遺産がある場合 相続税は課税されるか 2 3 贈与税が課税される理由 3 4 相続税と贈与税の関係 4 第 2 章相続人と相続分 1 相続人と相続順位 5 2 相続の承認と放棄 14 3 相続人の相

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法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

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52 第 1 章親族第 1 親族一般 554) 遺贈はいつでも撤回ができるとする民法 1022 条も準用されます ( 最判昭 民集 判時 ) 死因贈与においても 遺贈と同様に贈与者の最終意思が尊重されるためです なお この撤回権は 贈与者本人のみが行使で

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1 増税時代の相続対策と資産承継 平成 26 年 4 月 27 日 ( 日 ) 浦和相続サポートセンター ヤマト税理士法人税理士 CFP 北村喜久則

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2. 改正の趣旨 背景 (1) 問題となっていたケース < 親族図 > 前提条件 1. 父 母 ( 死亡 ) 父の財産 :50 億円 ( すべて現金 ) 財産は 父 子 孫の順に相続する ( 各相続時の法定相続人は 1 名 ) 2. 子 子の妻 ( 死亡 ) 父及び子の相続における相次相続控除は考慮

( 図表 1-2) 課税割合 ( 課税対象被相続人数 / 被相続人全体 100(%) ( 注 ) 財務省公表資料による こうした中で 多くの相続税納税者にとって評価額が高額で相続税納税上の負担増が大きい一定の小 規模宅地については 課税強化への影響を緩和するため 相続税強化が行われた 2015 年に

服部法律事務所ニュース 遺言書について その4(相続税)

平成19年12月○日

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知って得する相続の基礎知識 空き家にしないための相続対策 平成 23 年 10 月 29 日 一般社団法人相続相談センター 専任コーディネーター 天谷晃一

1. なぜ空き家が多くなってきたのか その原因? 1 賃貸経営 ( 貸家 ) に関する認識不足 2 賃貸契約に関する問題 ( 借地借家法 ) 3 相続に関する問題 2. 賃貸経営に関る問題点と対策 1 不動産の賃貸経営を事業として認識しておられない 2 借入金に対する認識が甘い ( 相続税対策が主である ) 3. 賃貸契約に関する問題点と対策 (1) 貸家の現状と問題点 これまでの貸家の問題点は 建物をいったん借家人に貸すと 当初の契約期間が満了しても無償で建物を返してもらえない 貸家を持っておられても相続税の節税効果はありません 貸すことによって土地( 貸家建付地 ) や建物 ( 借家権 ) の評価減が受けられるのです 貸家について 一戸建て( 特に新しい建物 ) を貸す家主はありません したがって相続対策のため貸家を取り壊しアパートやワンルームマンションを建てて貸される (2) 新しく借地借家法が創設された 貸家については 平成 12 年 3 月 1 日から新しく 定期借家権 が創設された 借地については 平成 4 年 8 月 1 日に 定期借地権 が創設された (3) 新借地借家法により創設された借家権 平成 12.2.28 迄の契約は旧法を適用 平成 12.3.1 以後の新規契約 ( 定期借家権の活用が原則不可 ) ( 定期借家権の活用が可能 ) (4) 定期借家権とは何か 借家契約 の開始 借家契約 期間満了 契約期間の満了をもって 正当事由制度の 適用がなく 契約を終了させる

(5) 従来の借家権との相違 借家契約 借家契約 の開始期間満了 1 正当事由制度 当初の契約期間を終了 2 法定更新制度 させることは原則不可 4. 相続に関する問題点と対策 (1) 税制改正大綱で相続税の改正が予定されています 相続税の基礎控除が 60% 相当額に縮小することが掲げられている 現行 改正案 5,000 万円 +1,000 万円 相続人の数 3,000 万円 +600 万円 相続人の数 相続税が改正されますと多く京町家等の所有者が 相続時に新たな課税対象者となられる ことが予想されます 昨年の税制改正で相続税について小規模宅地の課税価格の特例( 評価減 ) の適用要件が強化された 居住用宅地等 被相続人と同居していた親族が申告期限まで引き続き所有し かつその家屋に居住して いる場合 240 m2まで 80% の評価減 事例 1m2250 千円の宅地 240m2の場合 250 千円 240m2=60,000 千円 250 千円 240m2 (1-0.8)=16,000 千円 ポイント 相続開始時に被相続人と同居している 事業用宅地等 ア. 被相続人の親族が 相続開始時から相続税の申告期限までに その宅地の上で被相続人が営んでいた事業を引き継ぎ 申告期限まで引き続いて宅地等を所有し かつ事業を営んでいる場合 400m2まで80% の評価減イ. 不動産貸付業等の事業用の場合 200m2まで50% の評価減

(2) 相続対策とは 1 相続税の節税対策 2 納税資金対策 3 財産継承対策 ( 紛争対策 ) (3) 相続対策の現状 ( 問題点 ) 1 借入金による節税対策が主である 2 相続財産の継承対策が不十分である 3 良き相談者がおられない (4) 相続対策についての誤った認識 1 相続対策は節税対策さえ行えばよい 事例 多額の借入金が招いた悲劇 甲さんは JRの駅から徒歩 5 分の所に約 1500m2の土地を所有 平成 12 年に地場の建設会社から相続税対策として賃貸マンションの建築を勧められ 4 階建て賃貸マンション (1 階はテナント ) を約 3 億円 ( 全額借入 ) で建築された それまでは貸駐車場として利用されていた ( 稼働率 80% 月間収入 160 千円 ) その後 テナントを含め空室が多くなり 賃料では金融機関への返済ができなくなってこられた 金融機関からも返済について強い要請がある 家族会議で売却を検討されたが120 百万程度でしか売却できず とても返済ができない [ ここが失敗 ] 相続税額について把握されていなかった事が原因 マンションを建築される時に 相続財産額と相続税がどの程度なのか試算されていなかった 甲さんは本物件以外に自宅が約 300m2 別の賃貸アパートの敷地が約 500m2を所有 平成 12 年で評価してみますと 相続税が約 8 百万円程度と推測されます 駐車場を約 100m2売却 ( 諦める ) されたら相続税の納付が可能だったのです 2 納税資金は相続人が考えればよい 事例 自分の代は財産を減らしたくない 甲さんは 相続対策として活用できる土地は活用( 賃貸マンション等を建築 ) をしておられるが相続税はゼロにはならない 甲さんは相続税は相続人が考えればよいと思っておられる 自分の代は先祖の財産を減らしていない

3 無駄となった相続対策 事例 無駄となった生前贈与 甲さんは節税対策として年間(1 月 1 日 ~12 月 31 日 )110 万円までの基礎控除を活用して配偶者や子供 孫等に生前贈与されてこられた その後贈与者が亡くなり 相続申告で税務当局から贈与事実が否認され贈与者の相続財産に加算されてしまった (5) 相続対策でもっとも大切なのは財産継承対策 ( 遺産分割対策 ) である 財産継承対策が不十分なため 財産 ( 貸家 ) が放置されたままになったり 消失 ( 売却 ) されてしまう 遺産分割対策を何もしないで相続を迎えると 法に従って遺産を分割 することになる 民法に従った遺産分割とは 1 民法上の相続人と相続割合は 誰が相続人になるかは 相続発生時点における戸籍の記載で決まります 同順位の共同相続人は基本的には均等の相続分を有する 2 遺産分割協議書を作成する 遺産分割協議書は相続人全員で遺産の分割について協議を行い 遺産分割協議書を作成する 相続人全員の署名と捺印( 実印 ) がいります 添付書類として印鑑証明書が必要です これでよいのか 相続人はそれぞれ自分の意見を主張する 寄与分や特別受益について主張 殆どのケースが相続人全員の要求を満たす資産構成になっていない [ 資産構成 ] 現金や預貯金のみの遺産であれば問題ない 分割及び売却が困難な不動産が中心 自社株式等 売却が困難な資産が中心 遺産分割について合意できない

3 相続紛争の解決として法律が用意している手段 相続人間で遺産分割がまとまらなかったら 相続問題は司法の判断に委ねられます 遺産分割の審判には重大な制限がある 審判では 法定相続分と異なる内容の審判をすることができない 避けるべきことは 相続を契機とする家族関係の崩壊 法定相続分による相続を打ち破る法的な相続対策が必要 法的な相続対策 遺言書 (6) 数次相続と問題点 数次相続とは 数次相続とは 相続が開始して遺産分割協議を終える前に相続人が亡くなり 新たな相続が開始することです 遺産分割の話し合いがつかなかったり相続が開始したが相続財産が基礎控除の範囲内で相続申告が必要でない場合に 相続財産である土地建物等の相続手続き ( 所有権の移転登記等 ) が行われず放置されたままで 数年経過後に次の相続が発生してしまう場合です 数次相続の問題点 土地建物等の名義を変更するには必ず遺産分割協議書が必要です 但し 遺言書がある場合は必要ありません 最初の相続で手続きを行わないで次の相続を迎えますと 相続手続が難しくなります その原因は法定相続人に変動があるからです 相続人が亡くなりますとその配偶者や子供が相続人となります 手続きされていない期間が長くなりますと ねずみ算的に相続人が増えて行きます そして相続人の関係がより複雑になります 相続手続きは出来るだけ早い時期にしておくべきです ポイント 相続手続きができなければ 京町家の活用が難しくなります 最終的には売却して財産分けをすることになります

5. 相続対策には遺言書の作成が不可欠です (1) 遺言書の効用と必要性 遺言書の効用 1 遺言者の意思どおり継承できます 相続申告や相続手続き( 不動産の登記 預貯金の名義変更や払い出し手続き等 ) が遺言書でできます 2 相続税の節税対策にもなります ( 一代飛しの相続対策 ) 遺言書の作成が必要な方 1 法定相続と異なる財産の配分を行いたい方 事業や農業等の後継者の指定が必要な方 配偶者に財産の殆どを相続させたい方 2 配偶者の相続税額の軽減などをスムーズに受けたい方 相続財産の分割協議が10ヶ月以内に調わない場合は 軽減措置を受けないで申告することになります 3 夫婦間に子供がおられない方 相続人は配偶者と被相続人の親族( 親 兄弟 甥 姪 ) になります 4 相続人に行方不明者がある方 5 被相続人や相続人に離婚歴があり子供がおられる方 6 相続権のない孫や兄弟に遺産分けをしたい方 孫の場合は一代飛ばしの相続対策になります 親の財産を家督相続し 兄弟姉妹に財産の一部を返したい方 7 相続人がおられない方 (2) 遺言書の種類 1 自筆遺言証書 遺言の全文 日付 氏名を自筆し捺印をする 2 公正遺言証書 公証人役場で公証人の筆記の上作成されます 2 名以上の証人の立ち会いが必要です 証人になれない人は 未成年者や推定相続人 受遺者及び配偶者並びに直系血族以外の人

3 遺言書のメリットデメリット 自筆遺言書 公正証書遺言 秘密 作成者以外はわからない 公証人や証人が内容について 知り得る 費用 かからない 費用がかかる ( 公証人費用 ) 証人 いらない 証人 2 名が必要 検認手続き 相続発生後に家庭裁判所で 検認手続きが必要 いらない 6. 相続対策や手続きに係わる専門家 (1) 専門家 相続対策に係わる専門家には 税理士 司法書士 土地家屋調査士 弁護士 不動産鑑定士 建築士 フアィナンシャル プランナー 宅地建物取引業者 不動産コンサルティング技能者等 (2) 専門家による連携が必要 相続対策や申告の手続きを行うには多くの専門家が何人も係わってきます そうした専門家の方々の連携プレーがあってはじめて 効果的な相続対策ができます ところが 現実の相続対策や相続開始後の手続きではそれぞれの専門家が各自の仕事をしているにすぎないことが多く 結果的には依頼者 ( 相続人等 ) が一番損をされることになります 事例 平成 7 年 3 月に母親が亡くなられた 課税遺産総額は約 8 億円 相続人は父親 ( 当時 72 才 ) と子供 2 人 ( 当時長男 48 才 次男 45 才 ) 配偶者の相続税の軽減の適用をフルに利用して約 129 百万円の相続税を納付 ( 不動産を売却 ) された 問題は相続税を129 百万円納付されながら 財産は全部父親が相続された その結果 父親が亡くなられると現時点の課税遺産総額は約 7 億円で 相続税が約 221 百万円になります もし 母親の相続の時に半分子供が相続されておられれば相続税は98 百万円ですみます 約 123 百万円の負担贈になります その後 色々な専門家( 司法書士や不動産業者 ) が相続手続きに関与されまたが 各専

門家は自分に与えられた仕事を進められた (3) 相続税の節税は相続が開始してからでもできます 相続税は 相続財産の評価によって安くできます 亡くなってからでも遅くはありません むしろ亡くなってから申告までが大切です ポイント 相続継承対策は相続開始前しかできません 相続対策や相続の手続き等 ( 申告等 ) については 全体を把握してもらう コーディネーターが必要です