帯広農業高校特別講義 平成 24 年 7 月 11 日 バイオディーゼル燃料製造実習 ( 財 ) 十勝圏振興機構十勝産業振興センター産業支援課研究員西條大輔 バイオディーゼル燃料とは 再生可能なバイオマスバイオマスに由来由来するする軽油代替燃料 バイオマス : 生物由来の有機資源有機資源で化石資源化石資源を除いたもの ディーゼル機関 ( エンジン ) とは 日本国内ではでは主にバスバスやトラックトラックなどのなどの大型車大型車や列車 船舶船舶などになどに使われているわれている ガソリン車に比べ燃費燃費が優れ 二酸化炭素排出量二酸化炭素排出量が少ないなどのメリットメリットがあるがある 1
バイオディーゼル燃料の生成反応と製造方法 バイオディーゼル燃料生成反応 グリセリ植物油 + メタノール 脂肪酸メチルエステル ( バイオディーゼル燃料 ) グリセリン 脂肪酸メタノール脂肪酸メタノール脂肪酸 + メタノール脂肪酸メタノール + ン脂肪酸メタノール脂肪酸メタノール 100 15 ~ 30 90 ~ 100 25~40 + グリセリン メタノールの理論必要量は油に対しおおよそ 10% 程度であるが 反応を促進するため過剰に投入する 反応終了後は未反応メタノールも残存する 主な製造方法 アルカリアルカリ触媒法 ( 現在最も多く使われている ) 酸触媒法( 反応が遅い ) 酵素法 イオン交換膜 超臨界法 燃料製造工程のフロー図 ( アルカリ触媒法 ) 前処理工程反応工程精製工程 1 精製工程 2 廃食用油 メタノー粗製バイオディー廃食用油の前処理バイオディーゼル燃ル 触媒を混合し加ゼル燃料と副産物 ( 夾雑物 水分の料から不純物を除去熱攪拌 ( エステル交の粗製グリセリン除去 ) することで精製換反応 ) を分離 廃食用油 ( 前処理前 ) 廃食用油 ( 前処理後 ) 反応後 粗製バイオディーゼル燃料 バイオディーゼル燃料 粗製バイオディーゼル燃料 ( 上層 ) 粗製グリセリン ( 下層 ) 2
製造工程の一例 本日の製造フローと概要 ( 製造実習 ) 食用油と水酸化水酸化カリウムメタノールカリウムメタノール溶液の測り取り (10min) 食用油は 100g 程度 メタノール溶液は 20~30g 程度入れてください 手動でのでの攪拌 (5~10min) 強く攪拌した方が混合が良くなり 良い燃料ができます 静置 (60~90min) 比重差により 脂肪酸メチルエステルが上層にグリセリンが下層に分かれます グリセリン除去 (10min) 下層のグリセリンをピペットで除去します 精製 1(10~15min) 15min) 温水を 20g 程度測り取り バイオディーゼル燃料に入れて軽く攪拌します 静置 (15min) 攪拌後静置すると比重差により 脂肪酸メチルエステルが上層に水溶液が下層に分かれます 水溶液除去 (10min) 下層の水溶液をピペットで除去します 精製 2(10~15min) 15min) バイオディーゼル燃料に温水を 20g 入れて攪拌します 静置 (15min) 攪拌後静置すると比重差により 脂肪酸メチルエステルが上層に水溶液が下層に分かれます 水溶液除去 (10min) 下層の水溶液をピペットで除去します 脱水 (60min) 減圧加熱にて水分を除去する 燃料完成 3
バイオディーゼル燃料生成反応工程 反応条件 反応温度反応時間触媒濃度メタノールの量その他 メタノールの沸点が 64.5 であるため それより少し低い 60 程度の事例が多い 最初の 30 分で通常 80~90% 程度の生成率となる 実プラントでは 1~2 時間の場合が多い 廃食用油の状態により異なるが 通常は 2~3% 水酸化カリウムメタノール溶液程度で反応は進行する 原料の酸価が触媒量を増やす必要がある 廃食用油に対し 重量で 20% 程度の事例が多い ある程度までは メタノール量を増加させることで 純度の高い燃料を生成可能だが コストや精製工程等について検討が必要になる場合もある メタノールと油は混合性があまり良くないので 十分な混合が重要である 用語説明 メタノール ( メチルアルコール ) 無色液体 沸点は64.7 アルコールランプの原料 揮発性が強いので火気厳禁! 水酸化カリウム ( 苛性カリ ) 白色固体 強いアルカリ性で劇物 液体石鹸の原材料や配管詰まりの洗浄剤などに用いられる グリセリン保湿性が強く化粧品や水彩絵具に使われる 毒性も低いことから医療分野でも多様に用いられる アルコールであり可燃性があることから燃料として使用されることもある 硫酸無色液体 酸性の劇物 水に溶かすと発熱する 濃硫酸が皮膚に触れると火傷をする 化学薬品としてあらゆる分野で使用されている 4
バイオディーゼル燃料研究の推移 ディーゼルエンジンで最初に使用された燃料はピーナッツオイル (1900 年パリ万博 ) 1980 年代前半までは 油脂をそのまま燃料利用について検討されていた 高い粘性のため エンジンを改良しない限りは良好な燃焼状態が保てないとの結論に達した 1 1980 年代後半からメチルエステル交換したものが研究対象 日本では 1990 年から廃食用油を原料にした燃料製造の研究が行われている ( 欧米はバージン油が中心 ) 1 平成 8 年度廃食用油需要開拓緊急推進事業研究成果報告書 ( 財 ) 政策科学研究所 2 総合資源エネルギー調査会石油分科会石油部会燃料政策小委員会第二次中間報告書 バイオディーゼル燃料の生産量 世界各国の生産量 (2005) 順生産量国名位重量 (t) 比率 (%) 1 ドイツ 1,669,000 44.5 2 フランス 492,000 13.1 3 イタリア 396,000 10.6 4 アメリカ 250,000 6.7 その他 943,000 25.1 総計 3,750,000 100.0 表は Europian biodiesel board 統計値と BDI 社資料から作成 海外ではでは 大型大型プラントが多く 約 20 万 t/ 年のプラントもあるもある 国内は比較的小規模比較的小規模なプラントが多い 国内最大プラントは京都市京都市の 1500t/ 年 国内の生産量 ( 推計値 2003) 道内の生産量 ( 推計値 2006) 5000kL/ 年 ( 約 4500t/ 年に相当 ) ヒアリングに基づく 2003 年推計値 ( 第 11 回燃料政策小委員会資料 ) 700kL/ 年 ( 約 630t/ 年に相当 ) 新聞情報 ヒアリング等に基づき推計 (2006 年時点 ) 5
バイオディーゼル燃料製造原料について 油脂であればであれば ほとんどのものをほとんどのものを原料原料とできるがとできるが 油種油種によってはによっては低温流動性や酸化安定性酸化安定性の問題問題もあるもある 植物油 ( 主なもの ) 菜種油 : 一般的な原料 主にヨーロッパで使われている 大豆油 : 一般的な原料 主にアメリカで使われている パーム油 : よく使われる原料 東南アジア等でよく使われている 動物油脂あまり使用されていない 流動性等の問題がある 魚油高度不飽和脂肪酸が多く含まれており 酸化安定性が悪い 使用例はほとんどないが一部東南アジアで実験されている 廃食用油日本国内で取り組まれている事例のほとんどが廃食用油を利用したものである ヨーロッパの一部でも使用されている 廃食用油前処理工程 廃食用油に含まれる主な不純物と燃料製造への影響 遊離脂肪酸 水 夾雑物 アルカリ触媒との反応により石鹸を生成する 酸が多すぎるとできた石鹸が乳化剤となり 単なる中和反応から計算される以上の石鹸を生じる可能性がある 油の加水分解反応が起き脂肪酸が生成 詳細な影響は不明だが 触媒毒に成る可能性がある また 水分を含んでいる場合もあり 水と同じ影響がある可能性がある 一般的な前処理静置フィルター等による除去減圧加熱乾燥 水分や夾雑物等の除去 必要に応じて加温する場合もある 夾雑物等の除去 水分等の除去 6
バイオディーゼル燃料の品質 ~FAME 混合軽油強制規格及びニート規格 ( 案 )~ 経済産業省では 軽油にバイオディーゼル燃料を 5% 混ぜて使用する方向で規格検討 平成 18 年 4 月に軽油混合に関する強制規格とバイオディーゼル燃料規格案 ( ニート規格案 ) が出された 100% 利用のための規格ではないものの今後の燃料製造に向けた品質の基準になっていくと思われる ニート規格案は 平成 20 年 2 月に JIS 規格となった 出典 : 経済産業省ホームページ バイオディーゼル燃料製造及び利用に関連した留意点 車両へのへの影響特にB100を使用する際にはトラブル発生の危険があり注意すべき点がある 燃料の品質現状では経産省規格案を満たせていない例も多く 品質向上のための検討が必要 燃料の品質は車両トラブルにも関係する場合もある 副産物の利用使用用途が狭く 有効利用方法を模索していく必要がある ( 粗製グリセリン等 ) 低温流動性 0 以下での利用は留意する必要がある 油種による違いも大きく添加剤の使用や軽油との混合も検討すべきである 酸化安定性廃食用油由来であるため 酸化安定性は低い 長期保存をする場合は注意が必要 添加剤の使用についても検討する必要性がある 7
様々な事業所でのバイオディーゼル燃料の物性 事業所 バイオディーゼル燃料の品質 平成 18 年 4 月に経済産業省経済産業省からから軽油軽油に 5% 混ぜるぜる際のバイオディーゼルバイオディーゼル燃料規格案が出されたされた 100% 利用のためののための規格規格ではないもののではないものの今後今後の燃料製造燃料製造に向けたけた品質の基準基準になっていくとになっていくと思われるわれる 現状ではでは 規格案規格案を満たせていないたせていない燃料燃料が多い 脂肪酸メチルエステル含有量 密度 (15 ) 動粘度 (40 ) 酸価 (mg-koh/g) (wt%) (g/cm 3 ) (mm 2 /s) 1 93 - - - 2 89 - - 0.80 3 90 - - 0.35 4 87 - - 1.35 5 89 - - 1.63 6 94 0.885 4.5-7 95 0.887 4.8 0.18 8 86 0.889 5.7 0.04 9 92 - - 0.18 10 96 0.883 5.3-11 94 - - - 12 90 0.887 5.0 経産省規格案 96.5 以上 0.86-0.90 3.5-5.0 0.5 以下 バイオディーゼル燃料の凝固点と油種の相関 バイオディーゼル燃料燃料は 軽油軽油に比べてべて低温流動性低温流動性が悪く 何らかのらかの方法方法で改善改善が必要であるである 北海道北海道においてにおいてバイオディーゼルバイオディーゼル燃料燃料を 100% で使用使用するためにはするためには 添加剤の検討検討が必要必要であるがであるが 油種油種の選定選定も重要重要であるである 飽和脂肪酸量 (%) 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0 バイオディーゼル燃料製造条件油に対するメタノール量 :30% KOH メタノール溶液濃度 :2~2.4% 反応温度 :60 反応時間 :2 時間 菜種油 パーム油 大豆油 -15-10 -5 0 5 10 凝固点 ( ) 油脂を構成する脂肪酸には飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸があり 飽和脂肪酸の含有量が少ない方が低温流動性が良い傾向がある 8
廃食用油の性状と原料油としての適性 原料油脂の水分水分や酸価酸価は生成生成するする燃料燃料の性状性状に大きなきな影響影響を及ぼすぼす 酸価の燃料品質への影響 脂肪酸メチルエステル含有量 (%) 98 バイオディーゼル燃料条件油に対するメタノール量 :30% 96 KOHメタノール溶液濃度 :2~2.4% 反応温度 :60 94 反応時間 :2 時間 92 90 88 86 0 2 4 6 8 廃食用油の酸価 (KOH-mg/g) 水分の燃料品質への影響 脂肪酸メチルエステル含有量 (wt%) 98 バイオディーゼル燃料製造条件油に対するメタノール量 :30% 96 KOHメタノール溶液濃度 :2~2.4% 反応温度 :60 反応時間 :2 時間 94 92 90 88 86 0 500 1000 1500 2000 廃食用油中の水分量 (ppm) 反応条件と脂肪酸メチルエステル含有量 メタノール量と含有量 KOH 濃度と含有量 9