3種類の贈与税非課税制度を使いこなす

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(2) 父母 ( 祖父母 ) から子 ( 孫 ) への住宅取得等資金の贈不 父母 ( 祖父母 ) など直系尊属から その子 ( 孫 ) へ居住用の家屋の新築 取得または増改築のための金銭 ( 住宅取得等資金 ) を贈不した場合 表の通りの金額について贈不税が非課税となります また 贈不税の基礎控除

税金読本(13-2)直系尊属からの贈与の贈与税非課税制度

教育資金の一括贈与に係る非課税特例の創設

住宅取得等資金贈与の非課税特例 教育資金一括贈与の非課税特例 結婚 子育て資金贈与の非課税特例 相続時精算課税制度 贈与者 贈与年の 1 月 1 日現在で 60 歳以上の父母または祖父母 受贈者 贈与者の直系卑属 ( 子 孫 ひ孫等 ) で贈与の年の 1 月 1 日現在 20 歳以上 受贈年の合計所

Ⅰ ワンルームマンション経営と節税 税務署 確定申告 税金還付 20 万 ~30 万円 ワンルーム家賃収入ローン元利返済サラリーマンマンション A 氏 1 戸所有月 70,000 円月 60,000 円 銀行 年 30,000 円 月 8,000 円 固定資産税 管理会社 1 ワンルームマンション投

2015 年 1 月いよいよ施行! 相続税増税の影響と対策 Part 1 相続税はどう変わる? 影響は? Part 2 相続税の負担を軽減するには?

税制改正を踏まえた生前贈与方法の検討<訂正版>

教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について

ご利用案内

教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置のポイント 1 平成 25 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31 日までの間に行われた 直系尊属 ( 祖父母 父母さまなど ) からの書面による贈与により取得したご資金を お孫さまなどの名義の口座にお預入れした場合に 実際に教育資金として支払わ

相続税の節税対策としての生前贈与 相続税 贈与税はともに相手に渡る財産の金額に対して累進的な税率により税金がかかりま す そこで 相続税の税率よりも低い税率で贈与をすれば 相続税の節税になります 下の 図で相続税と贈与税税率を確認して下さい 贈与税は 相続税に比べ 基礎控除額が低く さらに税率が高く

このうち 申告納税額がある方 ( 納税人員 ) は640 万 8 千人で は41 兆 4,298 億円 申告納税額は3 兆 2,037 億円となっており 平成 28 年分と比較すると 人数 (+0.6%) (+ 3.4%) 及び申告納税額 (+4.6%) はいずれも増加しました 所得者区分別の状況イ

他制度より圧倒的に自由度が高いNISA~「使いづらさ」とうまく付き合ってNISAを活用する方法を考える

相続の基礎 ~ 「相続」を学ぼう!! ~ 生前贈与①有価証券

2017 年度税制改正大綱のポイント ~ 積立 NISA の導入 配偶者控除見直し ~ 大和総研金融調査部研究員是枝俊悟

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Microsoft Word - 第53号 相続税、贈与税に関する税制改正大綱の内容

老後資金を形成するならどの制度?

基本資料1-平成25年税制改正ポイント(表紙).pdf

<ライフプランニング>

税調第18回総会 資料2-2

[2] 税率構造の見直し 相続税の税率構造が現行の6 段階から8 段階に変更されるとともに 最高税率が 50% から 55% に引き上げられることとなりました ただし 各法定相続人の取得金額が2 億円以下の場合の税率は と変わりありません この改正は 平成 27 年 1 月 1 日以後に相続または遺

4.住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合編

平成 25 年度税制改正解説相続税 ~ 基礎控除の引き下げ 税率構造の見直し等 法定相続人の数と基礎控除法定相続人の数と基礎控除 法定相続人の数 1 人 2 人 3 人 4 人 5 人 60,000 千円 70,000 千円 80,000 千円 90,000 千円 100,000 千円 36,000

相続税・贈与税の基礎と近年の改正点

第25回税制調査会 総25-1

5 適用手続 ⑴ 相続時精算課税の適用を受けようとする受贈者は 贈与を受けた財産に係る贈与税の申告期間内に 相続時精算課税選択届出書 ( 贈与者ごとに作成が必要 ) を贈与税の申告書に添付して 納税地の所轄税務署長に提出する ( 相法 21の92) なお 提出された当該届出書は撤回することができない

(2) みなし相続財産ものか13 第1 章12 2 課税される 相続財産 の範囲 海外にある財産も課税対象となる 贈与税の暦年課税適用財産も 3 年以内は課税対象となる 葬式費用 墓地や墓碑 仏壇 仏具等は非課税 相続税の課税対象となる相続財産は (1) 被相続人が亡くなったときに所有していた財産

3. 口座開設のお手続きに必要なもの 書類 ご準備 記入 捺印していただく方 贈与する方贈与を受ける方親権者 1 戸籍謄本または住民票の写し ( 原本 ) 2 3 本人確認資料 ( 原本 ) 4 贈与契約書 ( 原本 ) 教育資金管理特約申込書 教育資金非課税申告書 預金口座開設申込時のご確認シート

教育資金の一括贈与非課税措置の解説

なるほどNISA 第9回 財形貯蓄・確定拠出年金などとの違い

生命保険は資産運用・資産形成にも使える~拠出時の生命保険料控除と、資産形成の動機づけに着目する

スライド 1

未成年者控除 障害者控除の見直し 未成年者控除 障害者控除 6 万円 20 歳に達するまでの年数 6 万円 ( 特別障害者 :12 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 10 万円 20 歳に達するまでの年数 10 万円 ( 特別障害者 :20 万円 ) 85 歳に達するまでの年数 小規模宅地等につ

4.住宅取得等資金の非課税の適用を受ける場合編


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口座振替等の自振設定はできません 結婚 子育て資金ご入金以外の振込口座に指定はできません 付随取引のご留意点 結婚 子育て資金 預金利息 ATM 手数料のお引出し以外の受払いはできません 非課税措置の適用には 領収書等 の提出等が必要になります 詳しくは次頁以降をご参照ください 2. 口座開設のお手

Microsoft Word - 平成15年税制改正(2).doc

4. 平成 27 年度税制改正の概要 (1) 住宅の取得に関わる税制 登録免許税 不動産取得税 改正項目ヘ ーシ 改正内容 所有権保存登記 所有権移転登記 所有権の信託 抵当権設定の登記の軽減措置 税率の軽減措置 宅地評価土地の課税標準の軽減措置 軽減税率の適用期限を平成 27 年 3

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

2011年度税制改正大綱(相続・贈与税)

キャッシュカードのご利用 口座振替のご利用によるお引出しはできません 手数料無料 詳しくは 弊行店頭またはホームページ ( にてご確認ください 口座開設のお手続きに必要なもの必要なものご留意点 保険証 運転免許証 旅券 住民基本台帳カード ( 顔写真付 ) な 預金

法人会の税制改正に関する提言の主な実現事項 ( 速報版 ) 本年 1 月 29 日に 平成 25 年度税制改正大綱 が閣議決定されました 平成 25 年度税制改正では 成長と富の創出 の実現に向けた税制上の措置が講じられるともに 社会保障と税の一体改革 を着実に実施するため 所得税 資産税についても

1.一般の贈与の場合(暦年課税)編

贈与税の非課税特例 ①住宅取得等資金の贈与

記号 欄 税務署長 年 月 日提出 書きかた 住所地を所轄する税務署名を記入します 申告書の提出年月日を記入します 平成 年分 住所 氏名 及び フリガナ の中に 30 と記入します 住所 住所地の郵便番号及び電話番号を記入します 申告をする人の氏名及びフリガナを記入します フリガナの濁点 や半濁点

平成 31 年度住宅関連税制改正の概要 ( 一社 ) 住宅生産団体連合会 平成 31 年 3 月 (1) 住宅ローン減税の拡充 ( 所得税 個人住民税 ) 消費税率 10% が適用される住宅取得等をして 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までの間にその者の居住の用に

特別障害者一人につき 75 万円を所得から控除することができます 障害者控除は 扶養控除の適用がない16 歳未満の扶養親族を有する場合においても適用されます ⑶ 心身障害者扶養共済掛金の控除 P128 条例の規定により地方公共団体が実施するいわゆる心身障害者扶養共済制度による契約で一定の要件を備えて

平成29年 住宅リフォーム税制の手引き 本編_概要

1 1. 課税の非対称性 問題 1 年をまたぐ同一の金融商品 ( 区分 ) 内の譲渡損益を通算できない問題 問題 2 同一商品で 異なる所得区分から損失を控除できない問題 問題 3 異なる金融商品間 および他の所得間で損失を控除できない問題

Microsoft Word - 第67号 来年からの贈与税改正と相続時精算課税を選択する際の注意点

税法入門コース 相続税 学習スケジュール 回数学習テーマ内容 第 1 回 第 2 回 第 3 回 第 4 回 第 4 回 第 1 章 第 2 章 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 4 章 第 5 章 テーマ 1 相続税 贈与税とは? テーマ 2 用語の説明 テーマ 1 相続人となれる人は? テ

調査概要 調査方法 インターネット調査 調査目的 相続対策の実態 相続税 贈与税改正論への意識 関心などを把握し 今後の施策作りへの一助とする 調査対象者 歳以上の既婚者でお子様がいる方 サンプルソース 日経リサーチインターネットモニター 調査実施期間 14 年 5 月 23 日 ( 金 )~27

平成19年度市民税のしおり

教育資金贈与専用口座「未来」ご利用のご案内(商品概要説明書)

(3) 年金所得者公的年金等の収入金額が400 万円以下であり かつ その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20 万円以下である場合には 確定申告の必要はありません また 上記 (2) 又は (3) に該当する方であっても 医療費控除や住宅借入金

3. 住宅税制 消費税率の引上げに伴う一時の税負担の増加による影響を平準化し 及び緩和する観 点から 住宅税利について以下のとおり所要の措置を講じます 住宅ローン減税を平成 26 年 1 月 1 日から平成 29 年末まで 4 年間延長し その期間のうち平成 26 年 4 月 1 日から平成 29

(1) 相続税の納税猶予制度の概要 項目 納税猶予対象資産 ( 特定事業用資産 ) 納税猶予額 被相続人の要件 内容 被相続人の事業 ( 不動産貸付事業等を除く ) の用に供されていた次の資産 1 土地 ( 面積 400 m2までの部分に限る ) 2 建物 ( 床面積 800 m2までの部分に限る

1.修正申告書を作成する場合の共通の手順編

注 1 認定住宅とは 認定長期優良住宅及び認定低炭素住宅をいう 注 2 平成 26 年 4 月から平成 29 年 12 月までの欄の金額は 認定住宅の対価の額又は費用の額に含まれる消費税等の税率が 8% 又は 10% である場合の金額であり それ以外の場合における借入限度額は 3,000 万円とする

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土地建物等の譲渡損失は 同じ年の他の土地建物等の譲渡益から差し引くことができます 差し引き後に残った譲渡益については 下記の < 計算式 2> の計算を行います なお 譲渡益から引ききれずに残ってしまった譲渡損失は 原則として 土地建物等の譲渡所得以外のその年の所得から差し引くこと ( 損益通算 )

税制優遇は大きいが60歳まで引き出せないDC

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

内に 耐火建築物以外の建物についてはその購入の日以前 20 年以内に建築されたものであること 地震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準又はこれに準ずるものに適合する一定の中古住宅 を 平成 17 年 4 月 1 日以降に取得した場合には 築年数に関係なく適用が受けられます (56ページ 一

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

各 位 平成 26 年 3 月 28 日 株式会社大和ネクスト銀行 大和証券株式会社 ダイワの NISA 口座開設キャンペーン ( 第 2 弾 ) 大和ネクスト銀行円定期預金 金利優遇キャンペーン ( 第 3 弾 ) および ご家族 ご友人紹介キャンペーン ( 第 3 弾 ) 実施のお知らせ 大和証

この特例は居住期間が短期間でも その家屋がその人の日常の生活状況などから 生活の本拠として居住しているものであれば適用が受けられます ただし 次のような場合には 適用はありません 1 居住用財産の特例の適用を受けるためのみの目的で入居した場合 2 自己の居住用家屋の新築期間中や改築期間中だけの仮住い

相続税計算 例 不動産等の評価財産の課税評価額が 4 億 8 千万円 生命保険金の受取額が 2 千万円 現金 預金等が 4 千万円 ローン等の債務及び葬式費用等が 3 千万円である場合の相続税を計算します 相続人は妻と 2 人の子供の 3 人です ( 評価額を計算するには専門知識を要します 必ず概算

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

Microsoft Word - FP2級法改正情報 doc

平成27年度税制改正要望結果について

Microsoft Word 役立つ情報_税知識_.doc

付随取引のご留意点 口座振替等の自振設定はできません 教育資金ご入金以外の振込口座に指定はできません 教育資金 預金利息 ATM 手数料のお引出し以外の受払いはできません 非課税措置の適用には 領収書等 の提出等が必要になります 詳しくは次頁以降をご参照ください 2. 口座開設のお手続きに必要なもの

住宅取得等資金の贈与に係る贈与税の非課税制度の改正

3.相続時精算課税の適用を受ける場合編

問題 1 1 問題 1 1 納税義務者 相続税の納税義務者及び課税財産の範囲 課税価格 1 納税義務者 ⑴ 次に掲げる者は 相続税を納める義務がある 1 居住無制限納税義務者 ( 法 1 の 3 1 一 ) 相続又は遺贈により財産を取得した個人でその財産を取得した時において法施行地に住所を有するもの

設 拡充又は延長を必要とする理由 関係条文 租税特別措置法第 70 条の 2 第 70 条の 3 同法施行令第 40 条の 4 の 2 第 40 条の 5 同法施行規則第 23 条の 5 の 2 第 23 条の 6 平年度の減収見込額 百万円 ( 制度自体の減収額 ) ( - 百万円 ) 東日本大震

個人投資家の証券投資に関する意識調査(結果概要)

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2011年税制改正のポイント

平成16年度

「(仮)ちばぎん教育資金贈与口 普通預金」のご案内

受贈者ごとの非課税限度額 ( 注 1) 1 下記 2 以外の場合住宅用の家屋の種類 住宅用の家屋の新築等に係る契約の締結日 ( 注 3) 省エネ等住宅 ( 注 4) 左記以外の住宅 平成 27 年 12 月 31 日まで 1,500 万円 1,000 万円 平成 28 年 1 月 1 日から平成 3

月に締結 ) し それぞれについて教育資金非課税申告書を提出 ( 教育資金管理契約の締結日にそれぞれ提出 ) して 教育資金の非課税 の特例の適用を受けることはできますか 15 [Q2-8] 平成 25 年 4 月 1 日前に祖母から金銭等の贈与を受け 平成 25 年 4 月 1 日以後に金融機関等

障財源化分とする経過措置を講ずる (4) その他所要の措置を講ずる 2 消費税率の引上げ時期の変更に伴う措置 ( 国税 ) (1) 消費税の軽減税率制度の導入時期を平成 31 年 10 月 1 日とする (2) 適格請求書等保存方式が導入されるまでの間の措置について 次の措置を講ずる 1 売上げを税

1 各調整方式の比較 前提 : 法人実効税率 % 金融所得の税率 20% ( 配当軽課の場合の配当分の法人税率は 30%) 比較のポイント 適用税率 法人税率か所得税率か 金融所得課税一元化にマッチするか( 税率 損益通算 ) 簡素な制度か 特定口座への対応はか 法人の税負担は軽減されるか

相続税の改正 -平成23年度税制改正大綱

平成16年度

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3章第 1 節人口をめぐる現状と課題 主に対し 次世代育成支援のための行動計画の策定を義務づけ 年間の集中的 計画的な取組を推進している 年には 次世代育成支援対策推進法を一部改正した 改正内容としては主に 1 法律の有効期限を 年 3 月まで 年間延長 2 新たな認定 ( 特例認定 ) 制度の創設

Q1 市県民税 ( 住民税 ) とはどんな税金ですか? A1 その年の1 月 1 日現在 市内に住所がある個人に対し 前年中の所得 ( 給与 年金 営業 不動産 譲渡などの所得 ) に応じて課税されます また その年の1 月 1 日現在市内に住所がなくても 市内に事務所 事業所又は家屋敷があれば課税

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2019年度税制改正大綱(証券・金融税制)

2 引き続き居住の用に供している場合 とされる場合本人が 転勤などのやむを得ない事情により 配偶者 扶養親族その他一定の親族と日常の起居を共にしないこととなった場合において その家屋等をこれらの親族が引き続きその居住の用に供しており やむを得ない事情が解消した後は 本人が共にその家屋に居住することに

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Transcription:

なるほど金融 徹底活用! 投資優遇税制第 7 回第 1 部 6 贈与税 2015 年 10 月 16 日 全 7 頁 3 種類の贈与税非課税制度を使いこなす 住宅取得等資金 教育資金 結婚 子育て資金 金融調査部研究員是枝俊悟このシリーズでは 個人投資家の視点に立って 複数の制度を横断的に比較分析し 各制度の活用法を徹底研究します 第 1 部でこの制度はどのような場合に利用するべきか 制度 利用局面 の分析を行います 第 1 部の 6 回目は贈与税非課税制度について 住宅取得等資金 教育資金 結婚 子育て資金の 3 種類の贈与税非課税制度をどう活用していけばよいでしょうか 1. そもそも親族間の費用負担に贈与税はかかるのか 3 種類の贈与税非課税制度を検討する前に 贈与税の基本について整理しておきましょう 民法では配偶者 直系血族 兄弟姉妹などに相互扶養義務を課しています このため 扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるために贈与を受けた財産のうち 通常必要と認められるもの については 贈与税の課税対象としていません また 親などから子に結婚に際して家具などの新生活に必要な費用を贈与する場合も 通常は贈与税の課税対象となりません 扶養親族間の贈与と贈与税 教育費 生活費 住宅取得等資金 必要なときの贈与 原則非課税 原則非課税 住宅取得等資金の非課税制度 を用いれば非課税 前もっての贈与 教育資金の一括 結婚 子育て資金 住宅取得等資金の贈与非課税制度 をの一括贈与非課税制非課税制度 では前も 用いれば非課税 度 を用いれば非課税 っての贈与は不可 ( 出所 ) 法令等をもとに大和総研作成 Copyright C2015 Daiwa Institute of Research Ltd.

ただし 将来の生活費や教育費などに充てるための資金であっても 必要なときに贈与するのではなく 前もって贈与しその資金が預貯金となっている場合や 株式や家屋の購入費用に充てられた場合などについては 原則として贈与税が課税されます 一方で 非課税制度を利用すれば 直系尊属から直系卑属に教育資金や結婚 子育て資金を前もって贈与しても贈与税を非課税とできます なお 住宅取得等資金については 必要なときに贈与する場合であっても 原則として贈与税の課税対象となりますが 住宅取得等資金の非課税制度を利用すれば 直系尊属から直系卑属に贈与し翌年 3 月 15 日までにその住宅取得等資金に充てた場合に贈与税を非課税とすることができます しかし 住宅取得等資金については非課税制度を利用しても 前もって の贈与はできない点に注意が必要です 2.3 種類の贈与税非課税制度の概要 3 種類の贈与税非課税制度の概要は次の通りです 3 種類の贈与税非課税制度の概要 住宅取得等資金の 教育資金の 結婚 子育て資金の 非課税制度 一括贈与非課税制度 一括贈与非課税制度 使途 住宅取得等資金 教育資金 ( 本人の出生 ~30 歳まで ) 結婚 子育て資金 ( 子の小学校就学前まで ) 贈与者 受贈者の直系尊属 受贈者 20 歳以上の直系卑属 ( 所得制限あり ) 30 歳未満の直系卑属 ( 所得制限なし ) 20 歳以上 50 歳未満の直系卑属 ( 所得制限なし ) 贈与できる期間 2019 年 6 月 30 日まで 2019 年 3 月 31 日まで 非課税が適用される贈与の上限金額贈与の方法資金使途の確認方法 時期 住宅の種類等により異なる ( 最大 3,000 万円 ) 専用口座は特にない贈与税の申告書等を期日内に税務署に提出する 1,500 万円 1,000 万円贈与された資金を金融機関の専用口座で管理する領収書等を期日内に金融機関に提出する 贈与された資金を 贈与された年の 受贈者が 受贈者が 使用できる期間 翌年の 3 月 15 日まで 30 歳に達するまで 50 歳に達するまで 贈与後に贈与者が死亡した場合 残額には贈与税が課税される ( 出所 ) 法令等をもとに大和総研作成 相続財産に持ち戻さない 残額につき相続財産に 持ち戻す 2

3 種類の贈与税非課税制度には 住宅取得等資金 教育資金 結婚 子育て資金とそれぞれ目的が定められています ここでの 教育資金 は本人の出生から 30 歳までの教育資金を意味する一方 結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度における 子育て資金 は子の小学校就学前までの子育て資金を意味します 3 種類の贈与税非課税制度はそれぞれの条件を満たしていれば 併用が可能です 3. 住宅取得等資金の贈与税非課税制度 2019 年 6 月 30 日までに 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受け 一定の条件の下 住宅の新築 中古住宅の取得 増改築等 ( 以下 住宅取得等 ) を行った場合 一定額まで贈与税を非課税とすることができます 住宅取得等資金の贈与税が非課税となる贈与の上限金額は 当該住宅取得等の契約の時期 当該住宅の取得につき消費税率 10% が適用されるか否か 取得する住宅が一般住宅であるか 耐震 エコ バリアフリー住宅であるかにより異なります 非課税で贈与できる住宅取得等資金の上限金額 消費税率 10% 適用以 外の場合消費税率 10% 適用の 住宅取得等の契約の時期 2015 年 1 月 ~ 2015 年 12 月 2016 年 1 月 ~ 2016 年 9 月 2016 年 10 月 ~ 2017 年 9 月 2017 年 10 月 ~ 2018 年 9 月 2018 年 10 月 ~ 2019 年 6 月 一般住宅 1,000 万円 700 万円 500 万円 300 万円 耐震 エコ バリアフリー住宅 1,500 万円 1,200 万円 1,000 万円 800 万円 一般住宅 2,500 万円 1,000 万円 700 万円 耐震 エコ バリアフリー住宅 3,000 万円 1,500 万円 1,200 万円 場合 ( 注 ) 受贈者が東日本大震災の被災者の場合は 特例により上限金額が拡大される場合があります ( 出所 ) 法令をもとに大和総研作成 上限金額は 2016 年 10 月から 2017 年 9 月の間に耐震 エコ バリアフリー住宅の住宅取得等の契約を締結し 消費税率 10% が適用される場合に 最大の 3,000 万円となります これは 2017 年 4 月に消費税率を 8% から 10% へ引上げる際に 住宅需要の落ち込みを緩和すべく設けられた 1 年間限りのある種の 大盤振る舞い と言えます 2017 年 10 月からは非課税で贈与できる金額は最大 1,500 万円までと一気に半減するため 相続税 贈与税を意識しなければならない家庭において子や孫が住宅取得を考えているようなケースでは 2016 年 10 月から 2017 年 9 月までの贈与を検討すべきでしょう 4. 教育資金の一括贈与非課税制度 2019 年 3 月 31 日までに 直系尊属から 30 歳未満の直系卑属に教育資金の一括贈与を行った場合 1,500 万円まで贈与税を非課税とすることができます 3

非課税を適用するための贈与の方法としては 信託会社への信託 銀行等への預貯金の預入 証券会社等での有価証券の購入の3 種類の方法があり いずれも金融機関と教育資金管理契約を締結し 資金は特別の口座で管理される必要があります 受贈者が口座で管理される資金を教育資金に充てたときは 金融機関に領収書を提出する必要があり 金融機関はその金額を記録する 教育資金として認められる費用の範囲は 次のページの図表に示されます 受贈者が 30 歳に到達するなどにより教育資金管理契約が終了した際 口座に拠出された資金から金融機関が教育資金に充てたとして記録した金額を差し引いた残額がある場合 その額は贈与税の課税対象となります 5. 結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度 2019 年 3 月 31 日までに 直系尊属から 20 歳以上 50 歳未満の直系卑属に結婚 子育て資金の一括贈与を行った場合 1,000 万円まで贈与時に贈与税を非課税とすることができます 非課税を適用するための贈与の方法は教育資金の一括贈与非課税制度と同様 金融機関と結婚 子育て資金管理契約を締結し 資金は特別の口座で管理される必要があります 受贈者が口座で管理される資金を結婚 子育て資金に充てたときは 金融機関に領収書を提出する必要があり 金融機関はその金額を記録します 結婚 子育て資金として認められる費用の範囲は 次のページの図表に示されます 受贈者が 50 歳に到達するなどにより結婚 子育て資金管理契約が終了した際 口座に拠出された資金から金融機関が教育資金などに充てたとして記録した金額を差し引いた残額がある場合 その額は贈与税の課税対象となります 結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度には 住宅取得等資金の贈与税非課税制度や教育資金の一括贈与非課税度と異なり 贈与者死亡時の相続税持ち戻しの規定があります 結婚 子育て資金管理契約が終了する前に贈与者が死亡したときは 相続税の課税対象となります 課税対象となるのは 口座に拠出された資金から結婚 子育て資金支出額を控除した残額です この残額は 贈与者から相続によって取得したものとみなされ 相続税の課税対象となります 相続税の課税が行われた後は 資金使途の制限はなくなります 結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度には 贈与者死亡時の相続税持ち戻し規定があるため 相続税負担を軽減する目的でこの制度を利用するのはあまり有効ではありません 相続税負担の軽減を図りたい場合は 他の制度を活用すべきでしょう 4

教育資金 結婚 子育て資金として認められる費用 教育資金 [ 金額の上限なく金融機関が費用として記録するもの ] 1 学校等に直接支払われる入学金 授業料 ( 注入園料 ) ( 注 保育料 ) 施設整備費 入学試験料 在学証明料など 2 学用品の購入費 修学旅行費または学校給食費その他学校における教育に伴って必要な費用に充てるための金銭 ( 学校に直接支払った場合に限る ) [ 累計 500 万円までに限り金融機関が費用として記録するもの ] 3 学校等以外の者に支払われる金銭のうち以下の活動内容の費用 ( 社会通念上相当と認められるものに限る ) [ 活動内容 ] 学習 スポーツ 文化芸術活動 教養の向上のための活動 [ 費用 ] 月謝 謝礼 入会金 施設利用料 上記活動で使用する物品の費用のうち 上記の指導を行う者を通じて購入するもの ( 指導を行う者の名で領収書が出るものに限る ) 4 学用品の購入費 修学旅行費または学校給食費その他学校における教育に伴って必要な費用に充てるための金銭 ( 業者等を通じて支払ったもので 学生等の全部または大部分が支払うべきものと当該学校等が認めたものに限る ) 結婚 子育て資金 [ 金額の上限なく金融機関が費用として記録するもの ] 1 妊娠に関する費用 不妊治療に係る費用 妊婦健診に係る費用など ( 受贈者自身だけでなく受贈者の配偶者に係る費用も含まれる ) 2 出産に関する費用 病院等に支払った分娩費 入院費など( 受贈者自身だけでなく受贈者の配偶者に係る費用も含まれる ) 産後ケアに係る費用(1 度の出産につき 6 泊または 7 回が上限 受贈者自身だけでなく受贈者の配偶者に係る費用も含まれる ) 3 子育て ( 小学校就学前 ) に関する費用 病院等に支払った子( 小学校就学前 ) の医療費 予防接種代など 保育所 幼稚園等の保育料 ベビーシッターの費用など ( 注 ) [ 累計 300 万円までに限り金融機関が費用として記録するもの ] 4 結婚に関する費用 挙式代 結婚披露宴の会場費など 新居の家賃( 最大 3 年分 ) 礼金 敷金 引越費用など ( 結納式 新婚旅行 婚約指輪 結婚指輪などの費用は含まれない ) ( 注 ) 同一の費用に係る領収書等を 教育資金の一括贈与非課税制度 と 結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度 とで重複して金融機関に提出することはできません 6. お金に色はない を意識し制度を活用することも可能 子どもや孫に生前贈与をすること および親や祖父母から贈与を受けることを考えている場合 3 種類の贈与税非課税制度を有効活用できないか検討すべきでしょう 5

その際 3 種類の贈与税非課税制度には 住宅取得 教育 結婚 子育てとライフイベントに紐づけた特定の目的に合わせた名前が付けられていますが 実際には お金に色はない と考えることもできます 3 種類の贈与税非課税制度を使って贈与を行った場合 贈与された資金そのものは使途の制約を受けます ですが 住宅取得 教育 結婚 子育てなどの費用は 贈与を受けなかったとしてもある程度は必要になるものです 例えば もともと結婚式に 300 万円の自己負担を想定していた人が 結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度により 300 万円の贈与を受けたとします すると この人は贈与を受けた 300 万円は結婚式の費用に充てることとなるが 結婚式の費用に充てることを想定していた 300 万円の自己資金は自由に使えることになります 3 種類の贈与税非課税制度は 住宅取得 教育 結婚 子育てなどの制度が利用できるライフイベントがある際に ライフイベントに充てるべき資金を贈与することで 実質的には 自由に使える資金 を贈与できるという考え方もできます もっとも 住宅取得 教育 結婚 子育てというライフイベントは 贈与者にとってその目的のためなら資金を贈与したいという贈与の動機づけになる面も持っています 贈与を受ける側にとってみれば ライフイベントを契機として 親や祖父母から贈与を引き出すチャンスと捉えるのもよいのかもしれません 2015 年からの課税強化により 相続税の課税対象は大幅に拡大されました 将来的に相続税が課税されることが想定される家族においては 3 種類の贈与税非課税制度を有効活用しつつ 贈与税 相続税トータルの負担を軽減することができないかを検討するとよいでしょう 7. 贈与税非課税制度は所得税非課税制度ではない 3 種類の贈与税非課税制度を利用する際に気を付けたい点としては これらは贈与税非課税制度であって 運用益の所得税を非課税とする制度ではない点です 住宅取得等資金の贈与税非課税制度については 贈与された資金はすぐに住宅取得等資金に充てられるのであまり問題になりませんが 教育資金の一括贈与非課税制度や結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度で贈与された資金は 銀行や信託会社などの預貯金や信託商品として運用されることになります 1 これらは元本が確保される金融商品であるものの その金利水準は低水準となっており 利子には所得税が課税されます 教育資金の一括贈与非課税制度や結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度で贈与された資金は専用の口座で管理されますので NISA 口座やジュニア NISA 口座に拠出することはできません 贈与された資金を結婚や子育て 教育資金などに使うまでの間 もう少し高い期待リターン 1 法律上は 証券会社が教育資金一括贈与非課税制度や結婚 子育て資金一括贈与非課税制度を取り扱うことは可能ですが 実際には取り扱っている証券会社はほとんどありません 6

を想定できる金融商品で運用したい ( できれば運用益も非課税としたい ) と考える場合は 教育資金の一括贈与非課税制度や結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度を用いるのは得策ではありません 贈与された資金をより高い期待リターンが想定される方法で運用したい場合は 教育資金の一括贈与非課税制度や結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度は利用せず 年 110 万円までの贈与税の基礎控除の範囲で資金の贈与を行った上で 贈与を受けた人が NISA やジュニア NISA で上場株式や株式投信などを購入して運用するという方法が有効と考えられます 贈与税非課税制度のまとめ 親族間で教育費や生活費を 必要なとき に負担し合うことには贈与税はされません ただし 教育費や生活費に充てるべき資金でも 前もって 贈与すると原則贈与税の課税対象になります 前もっての贈与に対応するために 教育資金の一括贈与非課税制度と結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度が用意されました 住宅取得等資金については 必要なとき の贈与でも原則贈与税の課税対象になりますが住宅取得等資金の贈与税非課税制度を利用すれば 非課税での贈与が可能です 非課税とできる贈与額の上限は 2016 年 10 月から 2017 年 9 月の間に耐震 エコ バリアフリー住宅の住宅取得等の契約を締結し 消費税率 10% が適用される場合に 最大の 3,000 万円となります 3 種類の贈与税非課税制度は 住宅取得 教育 結婚 子育てなどの制度が利用できるライフイベントがある際に ライフイベントに充てるべき資金を贈与することで 実質的には 自由に使える資金 を贈与できるという考え方もできます 将来的に相続税が課税されることが想定される家族においては 3 種類の贈与税非課税制度を有効活用しつつ 贈与税 相続税トータルの負担を軽減することができないかを検討するとよいでしょう 教育資金の一括贈与非課税制度と結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度により贈与された資金は 教育資金や結婚 子育て資金として使われるまでの間 預貯金や元本確保型の信託商品で運用され 利子には所得税も課税されるので高いリターンは期待できません 贈与された資金をより高い期待リターンが想定される方法で運用したい場合は 教育資金の一括贈与非課税制度や結婚 子育て資金の一括贈与非課税制度は利用せず 基礎控除の範囲で資金の贈与を行った上で 贈与を受けた人が NISA やジュニア NISA で上場株式や株式投信などを購入して運用するという方法が有効と考えられます ( 次回から 第 2 部 利用局面 各制度の分析をスタートします ) 以上 7