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平成 22 年度 経済産業省 環境対応技術開発等 化学物質による内分泌かく乱作用の試験 評価手法の 国際標準化及び有害性情報の整備 報告書 -1 = 国際標準化への貢献及び 今後の化学物質管理における必要な 有害性評価手法整備及び技術開発のあり方に関する検討 = 平成 23 年 3 月 一般財団法人化学物質評価研究機構

< 目次 > I. 国際標準化への貢献について... 1 1. レポーター遺伝子アッセイ... 1 1.1. 緒言... 1 2. 受容体結合試験... 6 2.1. 緒言... 6 3. 国際会議への参加 (OECD VMG-NA 会議 )... 9 4. 公開用データの整備... 12 II. 今後のリスク評価に必要な有害性情報 評価のあり方に関する検討... 13 1. 緒言... 13 2. 取組むべき課題の抽出... 15 2.1. キックオフ会議... 15 2.2. 国内有識者からのヒアリング... 17 2.3. 課題抽出のための検討会... 25 3. 化審法における変異原性評価等に関する検討... 27 3.1. 背景及び目的... 27 3.2. 化審法における変異原性の評価フローに関する検討... 29 3.3. 発がん性評価に関する検討... 35 3.4. 変異原性の評価フローを検討するために必要な情報収集... 40 4. 将来 社会的懸念が高まることが想定される課題に関する動向調査... 79 4.1. はじめに... 79 4.2. 子供などの脆弱集団を考慮したリスク評価に関する動向調査... 79 4.3. 混合物 複合暴露の評価に関する動向調査... 90 4.4. 内分泌かく乱作用物質評価に関する動向調査... 101 4.5. 化学物質過敏症に関する動向調査... 112 5. in vitro 試験法に関する調査... 117 5.1. はじめに... 117 5.2. 1: 米国 欧州における代替法開発等の海外動向... 117 5.3. 2: 有害性評価においてin vivo 試験での不足を補う技術... 148 5.4. 3:ADMEに関する方法論... 149 5.5. 4: 毒性及び創薬分野における最新技術の整理... 151 5.6. まとめ... 159 5.7. 今後必要な取組み... 159 5.8. 参考文献... 161 6. 28 日間反復投与毒性試験から得られる有害性情報の拡張に関する検討... 168 i/2

6.1. 背景... 168 6.2. 国内の動向... 168 6.3. 海外の動向... 172 6.4. まとめ... 180 7. 化審法で活用可能な非試験手法 ( 構造活性相関を含む ) について... 188 7.1. はじめに... 188 7.2. Health Canada/Environemnt Canadaにおける非試験法活用に関する情報収集... 189 7.3. US-EPAにおける非試験法活用に関する情報収集... 190 7.4. 非試験法に関する国際動向調査... 192 7.5. まとめ... 206 7.6. 今後必要な対応... 206 8. 今後の化学物質管理における必要な有害性評価手法整備及び技術開発のあり方に関する 検討まとめ... 208 成果報告書 -1: 別添資料... 209 別添資料 I-1:Draft Report of AR-STTA assay... 209 別添資料 I-4: 公開用データ... 209 別添資料 I-4-1:ER 結合試験 RBA... 209 別添資料 II-3-1: 変異原性 - 遺伝毒性評価に関する検討会資料 1... 209 別添資料 II-3-2: 変異原性 - 遺伝毒性評価に関する検討会資料 2... 209 別添資料 II-3-3: 発がん性評価に関する検討会資料... 209 ii/3

I. 国際標準化への貢献について 1. レポーター遺伝子アッセイ 1.1. 緒言化学物質の性ホルモン受容体に対する結合性 ( 受容体結合試験 ) 及び受容体を介する転写活性化試験 ( レポーター遺伝子アッセイ ) は内分泌かく乱作用発現における重要な作用メカニズムと考えられており OECD の非動物試験検証管理グループ会議 (VMG non-animal) において ガイドライン化を前提とした検証作業が進められている レポーター遺伝子アッセイについては 経済産業省事業の中で本機構が開発した手法である ER アゴニスト活性検出系について 正式に OECD テストガイドライン (OECD TG) として承認され OECD TG 455 として平成 21 年度に公表されている 平成 20 年度より本事業の中で ER アンタゴニスト活性検出系についての施設間バリデーション試験を開始した 施設間バリデーション試験としては 開始時の国内 3 施設に加え 海外の 2 施設 ( 韓国食品医薬品局 ベルギー VITO) を加えた 5 施設での実施となった 海外ラボの試験に関しては いずれもバリデーション資金の枯渇のため 途中離脱を余儀なくされた また 先に実施された国内 3 施設によるバリデーション試験において一部不備があったことが判明したため バリデーション要件を満足すべく更に 1 施設におけるバリデーション試験が計画され 今年度から JaCVAM の管轄下で試験が実施されている 本年度は 追加された 1 施設に対する技術指導と当該施設の実験結果に基づくプロトコールの修正を行った また 既にバリデーション試験の終了したヒトアンドロゲン受容体 (AR) アゴニスト / アンタゴニスト活性検出系について OECD に提出するための英文のバリデーションレポートを作成と OECD への提出を行った バリデーションレポートについては OECD 主導による専門家ピアレビューが実施されている 1.1.1 ER レポーター遺伝子アッセイ ( アンタゴニスト活性検出系 ) 今年度は 追加施設のバリデーション参加に際しての技術指導を実施し 得られた成績を基に 本実験系の許容基準の見直しを行った 1.1.1-1) 追加参加施設に対する技術指導追加参加施設には株式会社日吉 ( 滋賀県近江八幡市 ) が決定したことから 施設間バリデーション試験に先立って実施担当者に対する技術指導を行った 技術指導は 2010 年 10 月 8 日から 10 月 9 日の 2 日間で実施し 試験法の概要から試験手技 ( 細胞播種 化学物質調製 暴露 測定 結果の解析 ) について指導を行った 技術指導の実際のスケジュール及び内容は 下表に示す通りである スケジュール 1

10 月 8 日 9:30-10:00 概要説明 アッセイ説明 10:00-11:30 アッセイ - 細胞播種 - Cell Propagation (B-3) - Cell Seeding in 96-well plates (C-2, D-2) 各 2 プレート調製アンタゴニスト用 2 枚 細胞毒性用 2 枚 11:30-12:00 被験物質調製 (C-1, D-1) 昼食 13:00-14:30 アッセイ - 被験物質溶液希釈系列調製 暴露 - Chemical Exposure to Cells [Antagonist : Reference Chemicals] (C-3-2, D-1, D-2) 各 2plate 暴露調製アンタゴニスト用 2 枚 細胞毒性用 2 枚 14:30-17:30 バリデーション会議 10 月 9 日 10:00-10:30 スケジュール確認 10:30-12:00 アッセイ - 発光測定 細胞毒性試薬添加 - Luciferase Assay (C-4) - Cytotoxicity Assay using Cell Counting Kit-8 (C-5) 昼食 13:00-13:30 アッセイ - 吸光度測定 (C-5)---Measure the absorbance at 450 nm 13:30-14:30 データ解析及び議論 ( ) 内の番号は事前に配布しているワークシート番号に対応 株式会社日吉によるバリデーション試験は 他施設と同様に Task-1:Edge 効果の有無及びアゴニスト実験による実施能力の確認 Task-2:4 物質のアンタゴニスト実験による実施能力の確認 Task-3: ラボ内及びラボ間の試験結果の再現性を評価するためにコード化された物質による実験に分けて段階的に進められ 2010 年度現時点 (2011 年 3 月 ) で Task-2 まで終了している 1.1.1-2) 施設間バリデーション試験結果に基づく試験法許容基準の見直し Task-2 実験が終了している国内 3 施設の結果から 暫定アンタゴニスト試験用性能基準を定めていたが 新たに株式会社日吉にて Task-2 実験が終了したことから 株式会社日吉のデータも含めた国内 4 施設の結果を基に アンタゴニスト活性検出系における性能基準の見直しを行った 国内 4 施設のアンタゴニスト活性検出系における性能基準の測定結果を表 1.1.1 に示した 国内施設の全試行回数 (18 回 ) の結果から それぞれの平均 (±2SD) は Fold Induction が 9.4(4.1~ 14.8) RTA of 1nM E2 が 165.1(122.8~208.9) RTA of 1M OHT が 21.9(3.2~40.6) RTA of 100 M Dig. が-12.4(-23.5~-1.3) となった これらの結果から アンタゴニスト活性検出系の性能基準について見直しを行い 新基準 ( 表 1.1.2) を設定した 2

表 1.1.1 国内 4 施設のアンタゴニスト活性検出系の性能基準の測定結果 ( 全試行回数 :18 回 ) Fold-induction of Spike-in Control (25 pm of E2) RTA of 1 nm E2 RTA of 1 µm OHT RTA of 100 µm Dig. mean mean±2sd mean±2.5sd mean±3sd 9.4 4.1 ~ 14.8 2.7 ~ 16.1 1.4 ~ 17.4 165.9 122.8 ~ 208.9112.1 ~ 219.7101.3 ~ 230.4 21.9 3.2 ~ 40.6-1.5 ~ 45.3-6.2 ~ 49.9-12.4-23.5 ~ -1.3-26.3 ~ 1.5-29.1 ~ 4.2 表 1.1.2 更新されたアンタゴニスト活性検出系の性能基準 ( 新規が今回見直し分 ) Fold-induction of Spike-in Control (25 pm of E2) RTA of 1 nm E2 RTA of 1 µm OHT RTA of 100 µm Dig. 暫定 新規 mean±2sd >= 4 >= 4 4.1 ~ 14.8 >= 100% >= 100% 122.8 ~ 208.9 =< 39.4% =< 40.6% 3.2 ~ 40.6 =< 0% =< 0% -23.5 ~ -1.3 また 国内 4 施設のアンタゴニスト活性検出系の参照物質 (Reference Chemicals) の測定値の結果を表 1.1.3 に示した これらの結果から アンタゴニスト活性検出系の性能基準と同様に測定値の許容範囲の新基準 ( 表 1.1.4) を設定した これに伴い 株式会社日吉における Task-3 試験は こられの新基準に従って実施される予定である 3

表 1.1.3 国内 4 施設のアンタゴニスト活性検出系の参照物質の測定結果 ( 全試行回数 :18 回 ) 4-Hydroxytamoxifen Tamoxifen RU486 Fultamide mean mean±2sd mean±2.5sd mean±3sd log [lin.ic30] -9.10-9.58 ~ -8.63-9.70 ~ -8.51-9.82 ~ -8.39 log [lin.ic50] -8.72-9.36 ~ -8.09-9.52 ~ -7.93-9.68 ~ -7.77 log [var.ic50] -8.69-9.26 ~ -8.12-9.40 ~ -7.98-9.54 ~ -7.84 log [lin.ic30] -7.02-7.68 ~ -6.37-7.84 ~ -6.20-8.01 ~ -6.04 log [lin.ic50] -6.52-7.14 ~ -5.90-7.30 ~ -5.75-7.45 ~ -5.59 log [var.ic50] -6.49-7.21 ~ -5.78-7.39 ~ -5.60-7.57 ~ -5.42 log [lin.ic30] -5.76-6.10 ~ -5.41-6.19 ~ -5.32-6.28 ~ -5.23 log [lin.ic50] -5.33-5.57 ~ -5.10-5.63 ~ -5.04-5.69 ~ -4.98 log [var.ic50] -5.21-5.51 ~ -4.91-5.58 ~ -4.84-5.66 ~ -4.77 log [lin.ic30] - - - - log [lin.ic50] - - - - log [var.ic50] - - - - 表 1.1.4 更新されたアンタゴニスト活性検出系の参照物質の測定値の許容範囲 4-Hydroxytamoxifen Tamoxifen RU486 Fultamide ( 新規が今回見直し分 ) 暫定 新規 mean±2sd log [lin.ic30] -9.62 ~ -8.73-9.58 ~ -8.63-9.58 ~ -8.63 log [lin.ic50] -9.46 ~ -8.16-9.36 ~ -8.09-9.36 ~ -8.09 log [var.ic50] -9.32 ~ -8.20-9.26 ~ -8.12-9.26 ~ -8.12 log [lin.ic30] -7.55 ~ -6.84-7.68 ~ -6.37-7.68 ~ -6.37 log [lin.ic50] -7.08 ~ -6.26-7.14 ~ -5.90-7.14 ~ -5.90 log [var.ic50] -7.02 ~ -6.32-7.21 ~ -5.78-7.21 ~ -5.78 log [lin.ic30] -6.18 ~ -5.41-6.10 ~ -5.41-6.10 ~ -5.41 log [lin.ic50] -5.61 ~ -5.08-5.57 ~ -5.10-5.57 ~ -5.10 log [var.ic50] -5.56 ~ -4.86-5.51 ~ -4.91-5.51 ~ -4.91 log [lin.ic30] - - - log [lin.ic50] - - - log [var.ic50] - - - 1.1.2 ARレポーター遺伝子アッセイ ( アゴニスト / アンタゴニスト活性検出系 ) AR レポーター遺伝子アッセイ ( アゴニスト / アンタゴニスト活性検出系 ) に関してはバリデーションレポートを作成した AR レポーター遺伝子アッセイのバリデーションレポートは JaCVAM での内容確認を受けた後 2010 年 9 月に OECD に提出した ( 別添資料 I-1:Draft Report of AR-STTA assay) 本バリデーションレポートは 後述する OECD VMG-NA 会議 (2010 年 11 月 30 日 -12 月 2 日 パリ開催 ) において議論され OECD 主導で専門家によるピアレビューが行われることとなった 4

ピアレビュー課程に於いて プレバリデーション試験結果に含まれる化学物質 Fluoranthene によるレニラルシフェラーゼ活性の増強に関する疑問や DDT 等の一部化学物質の結果の区分に関する質問が寄せられたことから これら質問に対する対応を行った 今後 実施されたピアレビュー報告書が 2011 年 3 月に提出される予定である 5

2. 受容体結合試験 2.1. 緒言化学物質の性ホルモン受容体に対する結合性 ( 受容体結合試験 ) 及び受容体を介する転写活性化試験 ( レポーター遺伝子アッセイ ) は 内分泌かく乱作用発現における重要な作用メカニズムと考えられており OECD の非動物試験検証管理グループ会議 (VMG non-animal) において ガイドライン化を前提とした検証作業が進められている リコンビナントのヒトエストロゲン受容体 α(rherα) への結合試験の国際バリデーション試験及びバリデーションレポート作成に向けた作業が OECD のガイドライン化手順に沿って 米国環境保護庁 (US-EPA) のリードの下 欧州委員会 / 健康 消費者保護研究所 (EC/IHCP) Bayer( 欧州 ) 及び日本 ( 本機構 CERI) の 4 極との協力のもとに実施されている herα への結合試験に関しては FWA プロトコール ( 米 欧州で合同作成 ) CERI プロトコール ( 経済産業省事業の中で本機構が開発した手法 ) の 2 手法について実施されており 米国 3 施設 欧州 2 施設 日本 1 施設 (CERI) の計 6 施設による施設間バリデーションを実施している 2.1.1 rher 結合試験平成 14 年 3 月に開催された OECD 主催の内分泌かく乱作用評価のための第 1 回 VMG-NA 会議において US-EPAをリード ( 国 ラボ ) として ECVAM 及び本機構 (CERI) が参加することが決まり リコンビナントヒトエストロゲン受容体 α(recombinant human estrogen receptor α: rher) を用いた受容体結合試験のバリデーションをOECD 傘下のもと図 2.1.1に示す体制 (rher 結合試験 Validation Group) で実施している これまで プロトコールの最適化 被験物質の選定等について適宜開催される電話会議で報告 議論しながら進めてきた OECD VNG-NA 米国 ( リード国 ) US-EPA: リード 支援 Lab-1 Lab-2 Lab-3 日本 METI: 支援 CERI 欧州 ECVAM/IHCP: 支援 Bayer University of Konstanz 試験実施機関 図 2.1.1 rher 結合試験のバリデーション実施体制 (rher 結合試験 Validation Group) 6

rher 結合試験のバリデーション試験においては 表 2.1.2 に示す 2 種類のプロトコール FWA プロトコール ( 米 欧州で共同作成 ) CERI プロトコール ( 経済産業省事業の中で本機構が開発した手法 ) を使用している これは rher の供給源が 1 社に限定され その 1 社の独占市場になることを避けるためである 表 2.1.2 rher 結合試験のバリデーション試験で使用している試験プロトコール プロトコール呼称 開発機関 使用する rher の種類 FWA プロトコール Bayer と US-EPA の共同開発 rherα-ligand full-length (PanVera 社製 ) CERI プロトコール CERI GST 融合 rherα-ligand binding domain (CERI 製 ) これまでに VMG-NA 会議及び電話会議等を通じて プロトコールの至適化を実施し プロトコールの開発機関では 3 種の標準物質 (17β-estradiol Norethynodrel 及び Dibutyl Phthalate) を用いた試験で十分な再現性のある結果が得られることが確認されている 複数の試験機関が参加する施設間バリデーション試験は 以下に示す受容体特性試験及び 3 つの Task から構成されている 受容体結合試験は US-EPA により配布されたプロトコールに基づいて実施された 受容体特性試験 (Saturation Binding Analysis) の実施 Saturation analysis による使用する受容体特性の確認 Task-1 試験の実施参加する試験機関で実施する試験性能を確認のため 3 種の標準物質による競合結合試験の実施 Task-2 試験の実施各試験施設で実施する試験の再現性の確認 試験品質保証 (Quality Control) や性能基準 (Performance Standard) の構築などを行う 非コード化 9 物質 +3 種の標準物質の競合結合試験の実施 Task-3 試験の実施最終的な試験性能の評価 コード化 14 物質 + 3 種の標準物質の競合結合試験の実施 平成 21 年度に国内実施分の実験自体は FWA プロトコール及び CERI プロトコール共に Task-3 まで終了していたが リード機関である US-EPA へ送付するためのデータ解析が残っていたため 平成 22 年度本事業では 以下の実験データについて データ解析を行い 日本実施分のデータを US-EPA に送付した 7

FWA プロトコール 受容体特性試験 : 使用受容体量の決定 Saturation Binding Analysis のデータ Task-1: 標準物質 3 物質の競合結合試験のデータ Task-2: 非コード化 9 物質 + 標準物質 3 物質の競合結合試験のデータ Task-3: コード化 14 物質 + 標準物質 3 物質の競合結合試験のデータ CERI プロトコール 受容体特性試験 : 使用受容体量の決定 Saturation Binding Analysis のデータ Task-1: 標準物質 3 物質の競合結合試験のデータ Task-2: 非コード化 9 物質 + 標準物質 3 物質の競合結合試験のデータ Task-3: コード化 14 物質 + 標準物質 3 物質の競合結合試験のデータ なお 施設間データの解析に関しては 現在 US-EPA で実施されており 順次解析過程で判明した問題点等について 国際電話会議を通じて議論が実施されるが 本年度は 2010 年 4 月 10 月 (2 回 ) 11 月及び 2011 年 2 月の計 5 回電話会議が実施された 電話会議では 以下のような内容の議論がなされた 受容体結合曲線のカーブフィット際に問題となる測定ポイントの外れ値の処理について 受容体結合曲線のカーブフィットの際のパラメーターの固定について 受容体結合曲線の Hillslope の基準について リガンドデプレッション (Ligand depletion) の考慮の必要性について どこまでのデータを集計して 試験適合基準や 対照物質の測定値許容範囲を設定するか 受容体結合曲線のカーブフィットの際のパラメーターの固定について 陽性 陰性 equivocal といったカテゴリー分類をどのような基準で別けるのが最適か 今後のバリデーションレポートのまとめやテストガイドライン案の作成戦略について等 この中でも 陽性や陰性を偽陽性や偽陰性として判定することがないように カテゴリー分類を最適化することが最も重要であると考えられ 長い時間が費やされている この他 日本実施分のデータ解析に当たって その過程で生じた疑義の解決にあったって 実験データの再現性確認等のために 小規模の実験を実施し 問題解決に取り組んだ 今後 US-EPA での施設間データ解析を実施し 電話会議等により関係者間で協議を進めつつ US-EPA が中心となってバリデーションレポートが作成されていく また 試験適合基準や 参照物 8

質 (Reference Chemicals) の測定値の基準案等を含むテストガイドライン案の作成が順次進んでい く予定である この過程において 日本もプロトコールを提供したバリデーション参加国として 今後 も引き続き協力していく必要がある 3. 国際会議への参加 (OECD VMG-NA 会議 ) VMG-NA 会議は OECD テストガイドラインに関する検討を行っているテストガイドラインワーキンググループ内の内分泌かく乱物質のための作業部会 (EDTA:Task Force on Endocrine Disrupters Testing and Assessment) 下に設けられた組織であり OECD テストガイドライン化を前提として 新しく開発された試験法の検証作業に関し支援協力を行うことを目的としている 今回の会議はパリの OECD 本部で 2010 年 11 月 30 日 -12 月 2 日の日程で行われた 会議の内容及び結果は以下の通りである DRAFT AGENDA (Version 3) Tuesday 30 November 09h00-09h30 Opening of the Meeting, Explanation of OECD Procedures Agendaの承認とメンバー紹介が行われた 09h30-09h45 Introduction of the Special Activity on ED Testing by the Test Guidelines Programme and the EDTA AG PatricによりVMG-NAのこれまでの歴史と経過の説明が行われた 09h45-10h45 Update on Japanese activities 日本の進捗としてまず 国衛研の小野先生からHeLa-9903 STTAアンタゴニストの進捗を説明 VITO 及びKFDAのバリデーションからの途中離脱の原因を予算切れとラボの移設による時間的な問題と説明したが 該当各国からの異論等は出ず この点は理解されたものと思われる 現在 次のラボとして日吉がTask-1を実施しており 年度内にTask-3まで終了する見込みである旨 報告した 会議の最中に日吉からTask-1のデータが送付されてきてTask-1の終了が確認された ガイドラインとしては新規のガイドラインとする予定かとの質問に対して現行の TG455の改訂としたいと回答 次にAR Ecoscreenを用いるARTAアッセイのバリデーション報告書の概要について武吉から説明 最大の争点はバリデーションに用いた試験物質の数である OECD GD34には具体的な数には言及されていないものの十分な数の試験物質を用いることが要求点として記載されている 本バリデーションではアゴニスト アンタゴニストでそれぞれ5 物質を用いているが これが十分な数といえるかどうかの問題である 当方としてはこの実験が GD34 発行前に実施されている点と 限られた予算の中で最大限効率的に実験デザインを行った結果であることを主張 VMG-NAのメンバーの中にはプレバリデーションで十分な数のデータを取得しており acceptableとする意見もあったものの 技術移転性を確認するにはアゴニスト アンタゴニストともに強 弱まで幅広い物質を試験する必要があるとする意見があり 形勢は不利な状況であった 結果的にはVMGでは結論を出さず 現在進行中のピアレビューでの判断に委ねるということになった ピアレビューには西原先生参加いただいているため 情報を収集しながら対応を行う必要がある GRとの反応性について質問があったが この点はAR Ecoscreenの最大の特徴で MDA-kb2 cellと異なり プロモーターの至適化により GRに対する反応性を最小限に抑えていることを説明した この点は本法の重要な利点としてとらえたれたものと思われる ピアレビューコメントに対してはアゴニストバリデーションの時と同様にメンバーからサポートする体制を組むことになった 10h45-11h15 COFFEE/TEA BREAK 9

11h15-12h30 Availability of In Vitro Thyroid Assays In Vitro Thyroid Assaysに関する総論的解説の後 フランスから組み替えオタマジャクシを用いた甲状腺影響試験に関するプレゼンがあった 手法的にはTH-bZIP promoterの下流に GFP 遺伝子を連結したコンストラクトを安定的に組み込んだアフリカツメガエルのオタマジャクシ ( ふ化後 1 週齢 ) をマイクロプレートのウェルに入れて化学物質に暴露し GFPの蛍光を測定することによって被験物質の甲状腺ホルモンのアゴニスト及びアンタゴニスト活性を評価するというもの 非常に奇抜で面白いが 生きたオタマジャクシを用いることに対し これがin vitroといえるかどうかという疑問が呈された これに関し 特に欧州では魚類や両生類など卵生の生物が孵化した後 卵黄嚢から栄養を取っている間はvivoとしては扱わず 餌を食べるようになってからが vivo 試験の対象となるらしい 本法に関してはEcoのグループで扱うべきではないかなど否定的な意見が多く 提案者は怒って途中で帰ってしまった 本法は遺伝子組み換えを行ったカエルを用いる試験法であり 現在ではその輸出入には厳しい制限が課せられるため 恐らくフランス以外の国に導入すること自体が極めて困難であり 普及する可能性は非常に低いと思われる 12h30-13h45 LUNCH BREAK 13h45-14h15 Update on US activities 米国の状況報告として別セッションで報告される受容体結合試験 (FWA,CERI) のバリデーションが実施されており 再来年にかけてピアレビューが計画されていること チンパンジーの組み替えAR 蛋白を用いた96ウェルフォーマットの受容体結合試験の開発が進められており プレバリデーションは今年中に終了 来年早々にはプレバリデーションレポートが提出される予定であること 乳がん細胞株 (MDA-kb2) を用いたARレポーター遺伝子アッセイの開発が進められていることが報告された その他 ToxCastの進捗として現在 Phase IIが進行中であり その中ではPhase I 化合物に加えて 多くの農薬 工業化学物質 一般的に使われている化学物質や医薬品の検討が行われることが示された 14h15-14h30 Update on EU activities EUの開発状況がElise Grignardから報告された EUに現在提案されているin vitro 試験としてはラット組み替え蛋白を用いた受容体結合試験 PALM 細胞を用いたARレポーター遺伝子アッセイ ER-CALUXを用いたERレポーター遺伝子アッセイなどがあり これらの中で現在 PALM 細胞を用いたレポーター遺伝子アッセイのバリデーションが進められている PALM 細胞はフランスのInserm 社で開発されたMCF-7ベースの試験系である アンタゴニストの細胞毒性にはLDH 活性が適用されており 現在 16 物質を用いた3 施設による施設間再現性試験が実施されている 今後 GLP 下での再現性試験 自動化手法の評価などが計画されている 14h30-15h00 PBTG PBTG に関連して ICCVAM 中心に進められている MCF-7 の増殖試験の経過 LumiCELL を用いた ERTA アッセイの経過が報告された MCF-7 増殖アッセイには日本から日吉 韓国 FDA も参加しているが 韓国の方が巧くいって 日吉の結果が芳しくないようである また HeLa-9903 を用いる TG-455 の使用経験から試験法の問題点に関して Steve Levine が報告した それによると市販の血清を用いた場合 バックグランドが高くなり Fold が十分に得られないこと TG455 では化学物質を加える前のプレインキュベーションが 3 時間に設定されているが さらに延長した方が高い Fold が得られることから プレインキュベーションを 3 時間とした理由などについて質問があった これらの点に関しては以前に実験を行っていたラボから Gary Timm を通して当方に質問があり 解決していることではあるが 本試験系では血清の選択が極めて重要であり 市販の血清は概ね不適である点と Performance standard を満足する血清を作製 選別することが成功の鍵であること 3 時間のプレインキュベーションは細胞のダメージを回復させる最短且つ十分な Fold を得る頃ができる最短の時間であり この時間でアッセイを進めることで多検体処理が効率的に実施可能である旨回答した 15h00-15h30 COFFEE/TEA BREAK 15h30-18h00 Continued discussion on the PBTG Wednesday 1 December 09h00-10h30 Draft Steroidogenesis TG ドラフトガイドライン及びピアレビューコメントをみながら メンバーとのディスカッションを行いながら 訂正を行っていった 特にケミカルセレクション及び判定基準に議論が集中 最大三回の繰り返しを実施し どのような結果になった場合に ポジ ネガの判定になるのかが 解りにくく ケースを列挙して判定結果を例示することになった この話題が今回最も議論が白熱した話題であった 例えば三回の結果が一回目 (equivocal) 二回目 ( ネガティブ ) 三回目 ( ポ 10

ジティブ ) の場合などの評価に議論が集中 Equivocal は擬陽性であり 三回目の陽性結果で陽性が確認されたという判断になる 10h30-11h00 COFFEE/TEA BREAK 11h00-12h30 Continued Discussions on the Draft Steroidogenesis TG 12h30-13h45 LUNCH BREAK 13h45-14h45 Update on US hrerα-assay 日本 (CERI) も関与しているER 結合試験のバリデーション状況に関してEPAからOECDに出向しているShirlee Tanから報告された 特に議論などはなかったが 今後の予定としてデータ解析の終了が2011 年夏 ドラフトレポートが同秋 ピアレビューがEPA 主体 (EPAから外部委託 )) で2011-2012 年にかけて実施される予定とのこと 今後 当方としてはピアレビュー終了後にはHeLa-9903と同様にMTAの準備と蛋白の供給体制の構築を行っておく必要がある 14h45-15h15 COFFEE/TEA BREAK 15h15-16h15 Need for a new DRP on Species-specific differences イギリスを中心にワークショップの開催を計画することになった 16h15-17h00 Update on the DRP on Metabolism Miriam JacobsからDRP on Metabolismに関する報告が行われた 今後の予定として Metabolismを評価するための物質セット プロトコールとバッテリーの提案 データマイニングの方法の検討等を行う必要があることが報告された この提案は主として予算の獲得 (EU fundingが目的 ) のようで VMGからin vitro 試験に代謝系の利用することの必要性についてコメントペーパーを提出する方向となった 草稿の作成には VMG-NAメンバーからボランティアを募り実施することとなった 17h00-18h00 Presentation on Progress of the QSAR Group 前日の夕方 別途開催されたQSARグループ会合の報告として日本の化審法でQSARの利用を推進する考えがあるが ED-QSARは全く進展がなく 現時点ではQSARを規制に取り入れる具体的な予定はないこと EPAではER 結合性のQSARによる予測法の開発が進められていること 発がん性リスク軽減手法に関するワークショップでの発がん性予測にQSARを用いる試みがあることなどが報告された EFSAでのAdverse outcome pathway projectでのqsarの利用 化学物質のリスクアセスメントへのQSARの利用に関するワークショップの報告が主で技術的な報告はなし Thursday 2 December 09h00-09h30 Information Item OECDから翌週 (2010 年 12 月 6 日 -7 日 ) にワシントンDCで開催されるOECD Molecular Screening Projectの会合について紹介があった 09h30-10h30 Informal discussions on GD No.34 and identification of areas potentially needing additional validation guidance ヒトデータの利用に関してガイダンスドキュメントが必要か否かについて意見を求められたが 議論は収束しないまま終了 10h30-11h00 SPSFs 米国からAR bindingとartaのspsf 提出の提案があり バリデーションの方向性について 日本のARTAの進捗との関連性を指摘 協調する必要性が示された ケミカルセレクション等に於いて現バリデーションレポートを参考に選定する方向性が示された 11h00-11h30 COFFEE/TEA BREAK 12h00-13h00 Concluding Discussions PBTG working groupに日本から小島氏が参加 その他 甲状腺試験のワークグループに関してもボランティアを募ったが 日本からは不参加 次回のVMGの開催地はブダペスト ( ハンガリー ) で2011 年 11 月 30 日から12 月 2 日の3 日間開催予定で合意 13h00 MEETING ADJOURNED ( 会議終了 ) 11

4. 公開用データの整備これまでの経済産業省におけるエンドクリン関連事業で取得してきたデータは 順次 独立行政法人製品評価技術基盤機構 (NITE) の化学物質総合情報提供システム (CHRIP) で公開されている (http://www.safe.nite.go.jp/japan/db.html) 本年度は まだ公開されていない平成 16 年度以降のデータについて 公開用データの整備事業として公開用資料を作成した 内容としては ER/AR 結合試験については相対結合強度 (RBA) が算出されている物質 ER/AR レポーター遺伝子アッセイのアゴニスト活性検出系については PC50 値が アンタゴニスト活性系については IC50 値が算出されている物質についてグラフを作成した また 子宮増殖アッセイ及びハーシュバーガーアッセイについてもその試験結果の要約表を作成した グラフを作成した物質数及び当該グラフデータの別添資料番号を以下に示す In vitro 試験データ 試験項目 平成 16 年度陽性物質 平成 17 年度陽性物質 平成 18 年度陽性物質 陽性合計 ER 結合試験 RBA 24 0 17 41 ER レポーター遺伝子アッセイ PC50 9 2 5 16 AR 結合試験 RBA 32 1 18 51 AR レポーター遺伝子アッセイ PC50 AR レポーター遺伝子アッセイ IC50 1 0 0 1 10 2 3 15 別添資料番号 別添資料 I-4-1 別添資料 I-4-2 別添資料 I-4-3 別添資料 I-4-4 別添資料 I-4-5 In vivo 試験データ試験項目 平成 16 年度 平成 17 年度 平成 18 年度 合計 別添資料番号 子宮増殖アッセイ 14 9 11 34 別添資料 I-4-6 ハッシュバーガー別添資料 11 9 9 29 アッセイ I-4-7 作成データの例 12

II. 今後のリスク評価に必要な有害性情報 評価のあり方に関する検討 1. 緒言 2002 年 南アフリカ共和国のヨハネスブルグサミットで開催された持続可能な開発に関する世界首脳会議 (World Summit on Sustainable Development; WSSD) において 化学物質がヒトの健康及び環境に与える著しい有害影響を最小化する方法で使用 生産されることを2020 年 ( 平成 32 年 ) までに達成する という国際的な目標が合意された それ以降 欧州においては 化学物質の登録 評価 認可及び制限に関する規則 (Registration Evaluation Authorisation and Restriction of Chemicals;REACH) が2008 年に新たに施行され 日本においては2009 年に化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 ( 化審法 ) が改正された いずれも化学物質の有害性評価だけでなく 暴露評価を含めたリスク評価をしていくという これまでの化学物質管理からのパラダイムシフトが起こっている このような動きについては 化学物質管理規制を改正あるいは新たに導入しようという他の国々 ( 韓国 中国等 ) にも見られる このように化学物質管理のあり方が大きく変わったことで 今後新たに必要となる情報 評価等がある可能性がある そこで 本検討においてはニーズ シーズを踏まえた将来的な有害性評価手法整備のあるべき姿を検討するとともに それを実現するために必要な技術開発等のあり方に関する検討を行った 具体的には 以下に示すように まず 経済産業省との協議により決定した産業界 関係行政機関及び有識者メンバーによるキックオフ会議を開催し 本検討において取組むべき具体的課題を抽出した その後 抽出された課題について国内有識者からのヒアリングを行い その結果をもとに検討会で取組むべき課題とその他の調査について経済産業省と協議し 検討会を実施した キックオフ会議課題抽出国内有識者へのヒアリングヒアリング結果の報告検討会 特に優先度が高い項目 化審法における変異原性 / 遺伝毒性評価に関する検討 発がん性評価に関する検討 検討会 現状を把握するための調査 将来懸念が高まることが想定される課題に対する動向調査 化審法リスク評価スキームの高度化に資する有害性試験手法の調査 in vitro 試験の活用可能性に関する調査 28 日間反復投与毒性試験の応用技術に関する調査 化審法で活用可能な構造活性相関に関する調査 13

キックオフ会議 有識者ヒアリング 経済産業省との協議の結果 未だ具体的な評価の考えがまとめられていない改正化審法における変異原性 / 遺伝毒性に関する評価及び発がん性評価に関する検討が特に優先度の高い項目となり 産業界 関係行政機関及び有識者からなる検討会を開催し 検討を行った また 今後のあるべき姿を検討する上で現状を把握するための調査として 以下についての調査を行った < 現状を把握するための調査 > 将来懸念が高まることが想定される課題に対する動向調査 化審法リスク評価スキームの高度化に資する有害性試験手法の調査 in vitro 試験の活用可能性に関する調査 28 日間反復投与毒性試験の応用技術に関する調査 化審法で活用可能な構造活性相関に関する調査 14

2. 取組むべき課題の抽出 2.1. キックオフ会議化学物質管理における必要な有害性評価手法整備及び技術開発のあり方についての検討を開始するにあたり その具体的内容について 2010 年 6 月 14 日に経済産業省製造産業局第 3 会議室 ( 本館 4F 西 8 右 ) にて表 2-1 示すメンバーによるキックオフ会議を開催した 議題としたテーマを表 2-2に示す 表 2-1 参加メンバー 所属 氏名 ( 敬称略 ) 国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室長 広瀬明彦 社団法人日本化学工業協会常務理事 庄野文章 独立行政法人製品評価技術基盤機構 ( 化学物質管理センター所長 ) 辻信一 経済産業省化学物質管理課 ( 分析官 ) 及川信一 経済産業省化学物質管理課 ( 課長補佐 ) 飛騨俊秀 経済産業省化学物質管理課 ( 企画官 ) 福島隆 経済産業省化学物質管理課 ( 課長補佐 ) 浜口千絵 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係長 ) 常見知広 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 田崎孝典 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 半澤大介 スコープ : ヒト健康 表 2-2 キックオフ会議における論点 総論 : 欧米の毒性学に 既に日本が後れをとっていると言われており 今後更に後れていくのではないかという懸念もある こうした事態は 産業競争力や我が国の国際的信用の面でどのような問題を惹起することが懸念されるか 更に後れないために 又は同等を目指すために どのような取り組み ( 有害性評価手法の整備等 ) が必要か 技術開発としては何を実施していく必要があるか 米 TOXCAST OECD molecular screening 等の動きがあるが 日本の技術レベルをアップさせるために何が必要か ( 今秋 OECD-AOP workshop 開催 ) 改正化審法を円滑に運用するために どのような技術が必要か 動物代替試験法は どこで活用できるか 今後化審法で対応が求められる可能性が考えられる化学物質管理に係わる ( 社会的な ) 問題としてどのような問題が考えられるか その問題への対策を考える上で適切なリスク評価を行うことが必要と思われるが 現時点で利用できる試験法等により実施可能か 可能でないとすれば何が足りないか 各論 変異原性試験の結果から 発がん性試験を指示する場合の合理的な設定要件は何か 生殖発生毒性について 5~6 の OECD テストガイドラインが存在するが REACH においてはそのうち 3 つを引用している 日本における位置づけをどう考えるか 種差の問題 規制に必要なエンドポイントは何か 15

2.1.1 キックオフ会議における議論の概要 キックオフ会議においては表 2-2 に示すような ヒト健康影響を中心に化学物質管理にかかる 今後の技術開発のあり方について検討した 参加者から出た意見の概要を以下に示す 1) 日本における毒性学 日本の毒性学に遅れがあるわけではなく 創薬分野では先行している 創薬系で培われた知識が一般化学品に使われていないため 分野間に差がある レベルの問題よりもアプリケーション (IT 技術や規制 ) の問題である 2) 産業競争力や国際的信用への影響 データを持つ者が勝ち 三極で同一のデータが使える仕組み という構造が欲しい 国内でも QSAR 等の利用ができるようにして欲しい 3) 今後の有害性評価手法整備に必要な取組みは何か? 技術開発として何をしていくべきか? 28 日間反復投与試験データの再解析し 28 日間反復投与試験データから得られる情報を明確にする 28 日間反復投与試験に測定パラメーターを追加することで複数のエンドポイントの知見が得られるような手法を考えてはどうか? 28 日間反復投与試験でわからないことを in vitro 試験データで補うのもひとつの手段 4) TOXCAST OECD molecular screening 等の国際動向の中で日本に必要なものは何か? 世界で実施しておらず 日本ができること 例えば PB/PK 等 28 日間反復投与試験データの有効利用 ( 日本のデータ数は多い ) 5) 化審法における今後の問題点 リスク評価を実施するために必要な有害性情報が不足すること ( 医薬品等のような詳細なデータが必ずしも入手できるわけではない ) その様な中でどのように評価するのか? 複合暴露による毒性 複雑な評価試験系が導入される場合 新たな試験体系の導入は産業界の負担軽減にはなるが 規制当局側はその結果を評価するための人材等が必要となり 規制側の負担が増す可能性がある 判定フローのようなものが必要かもしれない 6) 変異原性試験結果の評価 Ames 試験 染色体異常試験の次に in vivo の小核試験で良いかという問題がある 7) 生殖発生毒性試験 生殖発生毒性は REACH OECD SIDS で必須であることから 今後検討する必要がある 8) 種差の問題 種差の問題は 28 日間反復投与試験で見逃すと怖い問題の一つである 16

9) 規制に必要なエンドポイントは何か REACH や OECD SIDS で必須であることからも生殖毒性は必要ではないか? 上述の結果から 表 2-3 に示す課題が抽出された 表 2-3 キックオフ会議から抽出された課題 現行の化審法のスクリーニング毒性試験 (Ames 試験 in vitro 染色体異常試験あるいはマウスリンフォーマ試験 28 日間反復と世毒性試験 ) でどの程度までの毒性の判断ができるのか? 化審法のスクリーニング毒性試験で取得する変異原性試験結果をどのように評価すればよいのか?( リスク評価を前提とした際の変異原性データの取扱い等 ) 28 日間反復投与毒性試験に費用が増えない程度でどのような検査項目を盛り込むことで評価範囲を拡充することができるか ( そのような項目があるのか?)? 28 日間反復投与毒性試験では評価できない項目が in vitro 試験で評価できるものとして何があるか? 化審法等で利用できる QSAR にはどのようなものがあるか? 今後新たに規制に必要となるエンドポイントは が何であるか? 2.2. 国内有識者からのヒアリングキックオフ会議で抽出された表 2-3 に示す課題について 表 2-4 に示す国内有識者からのヒアリングを行った 経済産業省と協議の上決定したヒアリングを行う際に提供した設問を表 2-5 に示す 表 2-4 ヒアリングを行った国内有識者 機関 氏名 日時 備考 独立行政法人産業技術総合研究所 江馬眞先生 7 月 30 日 ( 金 ) 全体 独立行政法人製品評価技術基盤機構 前川昭彦先生 8 月 17 日 ( 火 ) 全体 国立医薬品食品衛生研究所 吉田緑先生 8 月 18 日 ( 水 ) 全体 財団法人食品農医薬品安全性評価センター 林真先生 8 月 19 日 ( 木 ) 全体 名古屋市立大学 薬学部 今川正良先生 長田茂宏先生 8 月 20 日 ( 金 ) 遺伝毒性中心 国立医薬品食品衛生研究所 能美健彦先生本間正充先生 8 月 24 日 ( 火 ) 遺伝毒性中心 財団法人食品薬品安全センター 田中憲穂先生 9 月 7 日 ( 火 ) 遺伝毒性中心 花井リスク研究所 花井荘輔先生 9 月 13 日 ( 月 ) リスク評価中心 独立行政法人製品評価技術基盤機構 櫻谷祐企氏 山田隼氏 9 月 14 日 ( 火 ) QSAR 中心 名古屋市立大学 津田洋幸先生 9 月 16 日 ( 木 ) 発がん性評価中心 岩手大学 津田修治先生 9 月 30 日 ( 木 ) 全体 独立行政法人国立環境研究所環境リスク研究センター 青木康展先生 10 月 1 日 ( 木 ) 全体 日本バイオアッセイセンター研究センター 福島昭治先生 10 月 5 日 ( 火 ) 発がん性中心 17

表 2-5 ヒアリングを行う際に提供した設問 1 一般論 (1) リスク評価にも用いることを前提としたヒト健康影響に関わる毒性試験として 今後 必要と考えられる試験項目 ( エンドポイント ) 及びその理由は? (2) また 今後必要と考えられる試験項目 ( エンドポイント ) を効果的 効率的にスクリーニング又は最終評価するための in vitro 試験にはどのようなものがあるか? (3) 現行の化学物質審査規制法 ( 化審法 ) では Ames 試験 染色体異常試験 ( 又はマウスリンフォーマ試験 ;MLA 試験 ) 及び 28 日間反復投与毒性試験 ( 以下 化審法スク毒 ) が義務付けられている これらの試験結果から通常 分かること / 分からないことは何か? ( 特に一般的に長期試験の実施を要する毒性に関する知見に関連して 分かること / わからないこととは? 28 日間反復投与毒性に関しては 通常 発生毒性に関連する知見を得ることは明らかに困難なため それ以外の毒性に関してお気づきの点をお聞かせ下さい ) (4) 設問 2 における 分からないこと の中で今後重視すべきと考えられる毒性項目に関連する知見を得られるようにするには 従来試験法のどのような改良 修正方法がありうるか? (5) 従来のスク毒試験費用と同程度のコストで得られる各種毒性に係る情報 知見を最大化するには どのような方法 アプローチが考えられるか? 最大化することで必要としている情報としては 長期毒性等の社会的懸念の高い情報 (6) 化審法のスク毒結果から 更なる試験 (further test) 要求をする場合 どのようにすれば 当該物質について特に着目すべき有害性を特定できるか? ( スクリーニング毒性試験の後で直ちにフルセットの毒性試験を要求するのではなく 特に懸念される有害性に着目して更なる試験を要求する方が効果的 効率的と考えられるため ) (7) 化審法スク毒結果から どのような追加試験を要求することが可能であり合理的か?( 設問 11~15 と併せてご検討ください ) (8) Further test を要求する場合 有害性情報以外に考慮されるべき情報としては暴露情報 ( リスク評価用 ) があるが他に何か考えられるか? <Advanced 28 日間反復投与試験について > (1) 現在の化審法スク毒の 28 日間反復投与毒性試験の結果から 発現の可能性が疑われ その疑いに注目するに足ると考えられる毒性にはどのようなものがあるか? (2) また それらの毒性は Further test を必要とする知見となり得るが 具体的にどのような所見の例があるか? (3) 設問 8 を考察するに当たっては 過去の 28 日間反復投与毒性試験データの整理 解析が有用と思われるがどのような解析が良いか? (4) 現在の 28 日間反復投与毒性試験を高精度化し 更に多様な有害性情報を得るために追加する価値が高いと考えられる検査項目 (ex vivo 試験含む ) としてどのようなものがあるか ( 発生毒性以外で )? また その検査により得られる情報はどのようなものか? ( 例 : ホルモン測定 マイクロアレイ解析 マーカーたん白質分析等 ) < 長期毒性を指示する場合の考え方 > (1) 発がん性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? ( 現在は Ames 染色体異常試験又は MLA 試験しかないが それに加えるべきものはないか?) (2) 生殖毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 併合試験は生殖毒性の検出に十分か? 十分では無い場合 不足部分は何か? (3) 発生毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 併合試験は長期毒性としての発生毒性の検出に十分か? 十分では無い場合 不足部分は何か? (4) 神経毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 現状の 28 日間反復投与毒性試験の神経系への影響の検出感度は十分か? 十分では無い場合 不足部分は何か? (5) 設問 11~14 の発がん性等のエンドポイント以外で着目すべきエンドポイントとしてどのようなものが考えられるか?( 例えば免疫毒性等 ) 当該エンドポイントに関する長期等の毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 18

(6) 設問 11~15 の他に考慮すべき点がないか < 遺伝毒性について > (1) 遺伝毒性の情報をリスク評価に利用するためには NOEL/NOAEL につながるような定量化が必要なのではないか? 必要な場合 どのような方法があるか? (2) リスク評価において 生殖細胞変異原性 についての毒性スクリーニングは必須か? (3) GHS では 生殖細胞を用いる in vivo 変異原性試験の例として 哺乳類精原細胞を用いる染色体異常試験 (OECD483) が挙げられているが この試験法は十分に効果的か? (4) 生殖細胞を用いない 他の試験法をスクリーニング試験法とすることはできないか? (5) エピゲノミクスは新たな遺伝毒性と考えられるか? (6) 効果的 効率的な試験法としては どのようなものが考えられるか? < ヒトへの外挿について > (1) 動物試験結果をヒトへ外挿する際 種間差を導く大きな要因は ADME のうちどれか? (2) これまでに ADME の M( つまり 代謝 ) 以外の要因により 動物試験で見られた毒性はヒトでは起こらない と結論された例はあるか? (3) 試験動物種の ADME 情報はどの程度蓄積されているか? また 活用し易くデータベース化されているか? (4) 加えて ヒトとは異なる動態 所見についてデータベース化することは有害性評価において有効であるといえるか? (5) 実験動物種やヒトでの薬物代謝メカニズムに関する知見の蓄積や代謝物の推定手法の現状はどの程度か ( 有害性評価での利用に十分か? 不十分な場合 どのような点が不足しているか?)? また 今後 どのような進展が考えられるか (6) 実験動物種に特有の ADME に関する情報を効率的に取得できる方法はないか? (7) また ヒトへの外挿を考慮する上で有用な情報を提供する in vitro 試験はあるか? (8) ADME に関する我が国が強みを活かして取り組むべき技術開発課題としてはどのようなものが考えられるか? (9) ヒトへの外挿以外に ADME 情報はどのように活用することができるか? < 既存化学物質のスクリーニング毒性について > (1) 既存化学物質のリスク評価の前提となるヒト健康影響に関する有害性評価について どのような有害性項目に関する情報が得られるようにすべきか? (2) それらの情報セットは既存化学物質から優先評価化学物質を選定する際の最小限のデータセットという位置づけにすべきか? (3) あるいは 物質毎に必要なデータセットは異なると考えるべきか? であれば データセットを決定するためのストラテジーがあるか? (4) 既存化学物質に関して リスク評価を実施する物質を選定する際の有害性のランキング付けはどのような基準で行うべきか? (5) これまで 経済産業省 厚生労働省 環境省の検討では GHS に採用されている有害性の区分分けの根拠が数値で設定されている場合は原則的にそれに合わせることが提案されている一方 有害性データがない既存化学物質の有害性に関してはデファクト値をおいてスクリーニング評価を行い優先評価化学物質を選定する方針が検討されているが これ以外のアプローチはあるか? (6) 既存化学物質のスクリーニングにおいて 設問 20 の情報セットを取得するために利用できる十分効果的 効率的な既存の in vitro 試験にはどのようなものがあるか? (7) 適した in vitro 試験がない場合 どのような試験法を欧米に依存せずに我が国の強みを活かして開発することが望まれるか? (8) Further test をどのような考えに基づき要求すべきか? Further test を要求するためのストラテジー ( フロースキーム ) はどのようなものか 十分なものがないのであれば開発が必要なのではないか? 19

2.2.1 国内有識者からのヒアリング結果の概要 必ずしも表 2-5 に示す全ての項目について回答が得られたわけではないが 以下に 国内有 識者から得られた回答内容を示す リスク評価にも用いることを前提としたヒト健康影響に関わる毒性試験として 今後 必 要と考えられる試験項目 ( エンドポイント ) 及びその理由は? 総じて 現在ある有害性評価項目は全て必要との認識 特に 長期毒性試験 ( 慢性毒性 生殖 発生毒性 催奇形性 発がん性 神経毒性 免疫毒性 ) 当該試験項目 ( エンドポイント ) を効果的 効率的にスクリーニング又は最終評価するための in vitro 試験にはどのようなものがあるか? 確実に利用できるもはない 現行の化審法で義務付けられているスクリーニング毒性試験の結果から通常 分かること / 分からないことは何か?( 特に一般的に長期試験の実施を要する毒性に関する知見に関連して 分かること / わからないこととは?) Ames 試験 ; 毒性評価における最も基礎的な情報となる DNA との直接的相互作用を検出できる また 遺伝毒性 評価のための試験である 膨大なデータがあり 過去のデータとの比較が可能である 発がん性との比較で偽陰性が多いとされるが これは非変異発がん性物質があるためである In vitro 染色体異常試験 ; 染色体への直接的影響 ( マクロの DNA 損傷 ) が評価できる 遺伝毒性 評価のための試験である 発がん性との比較で偽陽性が多いとされるが 実施している試験用量に問題がある可能性がある 28 日間反復投与毒性試験 ; 全てではないが 長期毒性影響を示唆する所見がえられることがある 現在の課題は 新たな項目等を設けることよりも 試験実施機関の 質 の向上が大事である テストガイドラインに準拠し過ぎることなく とらえるべき毒性が見ら 20

れるような試験を実施する必要がある 実験の質 が悪いと 陰性の判定も困難になる 化審法では無影響量 (No Observed Effect Level;NOEL) という値のみで判断をしているが 毒性の種類と程度 を考慮する必要がある なお Ames 試験及び in vitro 染色体異常試験のいずれも 発がん性スクリーニングの試験との認識がある一方 現在ではそのスクリーニングレベル ( 検出力 ) が高くない (50-60%) という認識があること 及び非変異発がん性物質が多く見つかってきていることから議論が分かれるところであった スクリーニング試験については 現状を考慮した場合 化審法においては合理的且つ有効な試験セットであるとの認識であった 従来のスク毒試験費用と同程度のコストで得られる各種毒性に係る情報 知見 ( 長期毒性等の社会的懸念の高い情報 ) を最大化するには どのような方法 アプローチが考えられるか?/ 現行のスクリーニング毒性試験で 評価できないこと の中で今後重視すべきと考えられる毒性項目に関連する知見を得られるようにするには 従来試験法のどのような改良 修正方法がありうるか? 90 日の試験を実施するのもひとつの手段 28 日間反復投与試験で取得する生体サンプルからの遺伝子プロファイル マーカーを使う方法もあるが そもそもの 28 日間反復投与試験をきちんと実施する必要がある 例えば ガイドラインを最低限とし 必要と思われる試験項目を追加する等 バイオマーカー類については メカニズム的に毒性との関連性が明確になっている必要がある 規制利用には更なる学術的知見の蓄積が必要である 化審法のスク毒結果から 更なる試験 (further test) 要求をする場合 どのようにすれば 当該物質について特に着目すべき有害性を特定できるか? ケースバイケースである 化審法スク毒結果から どのような追加試験を要求することが可能であり合理的か? 遺伝子プロファイルの活用等もありえるが 通常の 28 日間反復投与試験試験で捉えるべきことは捉えることが肝要 現状 28 日間反復投与試験と長期毒性の間に据える試験がなく あったとしても最終結論ができずに長期試験が必要となる 中途半端な試験を実施するよりも In silico を活用してはどうか 21

既存化学物質のリスク評価の前提となるヒト健康影響に関する有害性評価について どのような有害性項目に関する情報が得られるようにすべきか? 優先評価化学物質を選定する際の最小限のデータセットという位置づけにすべきか?/ 既存化学物質のスクリーニングにおいて 必要なデータセットを取得するために利用できる十分効果的 効率的な既存の in vitro 試験にはどのようなものがあるか? ( 化審法における有害性評価の ) 最小のデータとしては Ames 試験 ( 意見複数 ) Ames 試験についてはハイスループット (HTS) 化が検討されている 新規の評価との平等性を考慮すると スクリーニング毒性データは必要のと意見あり 既存化学物質に関して リスク評価を実施する物質を選定する際の有害性のランキング付けはどのような基準で行うべきか? 毒性の内容と用量を考慮する NOEL だけでなく 質的変化 ( 毒性の種類と程度 ) も考慮すべきである 有害性データがない既存化学物質の有害性に関してはデフォルト値を置くスクリーニング評価を行い 優先評価化学物質を選定する方針が検討されているが これ以外のアプローチはあるか? デフォルト値を設定して選ばれた物質は 暫定的であれ 黒 と見なされる これを 白 評価にすることはこれまでの経験上困難であり 国民的理解を得るためには高額の試験を実施する必要性が出てくるだろう Ames 試験データ QSAR 暴露量 脆弱集団への影響 ( 例えば 乳児などが使用する器具等への用途 ) を考慮する方法 発がん性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 発がん性は遺伝子の変異のみを機序としない 非変異発がんもある 発がん性物質の一部を Ames 染色体異常試験で捉えられるが 全てではない ( 非変異発がんは発がんメカニズムの 50% との意見あり ) 非変異発がんを捉えるin vitro 試験候補として OECDで検討中のBhas 42 細胞を用いたトランスフォーメーション試験がある 22

in vitro 試験と長期の発がん性試験の間の試験候補として 中期発がん性試験 遺伝子プロファイルによる解析 CARCINOscreen ( 遺伝子プロファイルによる発 がん性予測システム ) がある 生殖毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験 法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 28 日間反復投与試験で生殖器系の重量変化がある場合 病理検査を必須とする 精巣毒性 : 精巣のステージ分析を実施 卵巣毒性 : 着床までの評価は可能 ( しかし それ以降のステージは繁殖が必要 ) 併合試験で生殖についてはある程度評価できている 下記の点で併合試験は中途半端との意見もある 反復投与として雌を十分に評価できていない 精子形成サイクルが見過ごされているケースがある ( 例 : 物質の標的への到達が遅く 交配時期には影響がなかった例として病理では精巣に重篤な影響があるが 生殖は成立していることがある ) 発生毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 現行の化審法のスクリーニング毒性では評価できないエンドポイントである 併合試験では例数が少なく 例数を増やさないと分からない部分がある 併合試験で生存児数が減った場合は以下のいずれかを実施することが望ましい 1 世代繁殖試験 + 器官形成期投与 ( 奇形がある場合 2 世代繁殖試験が必要 ) 2 世代繁殖試験 神経毒性試験結果の提出を指示する根拠として十分と考えられるスクリーニング試験法及びその試験結果としてはどのようなものが考えられるか? 28 日間反復投与試験の FOB(Functional Observation Battery; 機能観察評価 ) 観察では不十分 現象の一部として捉えられる行動異常などは変動が大きく 難しい部分がある 病変 ( 病理 ) を伴う FOB 観察結果であれば ある程度の意味はある ( 有機りん化合物等の場合 ) コリンエステラーゼ阻害等の生化学的検査も指標になり得る 23

DNT(Developmental Neurotyoxicity; 発生神経毒性 ) を評価する方法もあり こ れは 1 世代繁殖試験や 2 世代繁殖試験に組込むことは可能 遺伝毒性の情報をリスク評価に利用するためには NOEL/NOAEL につながるような定 量化にどのような方法があるか? ベンチマーク ドーズの利用は如何か? 意見 -1 ベンチマーク ドーズの必要は無い 安全係数に Ames や染色体異常試験の結果を反映させれば良い 例えば 安全係数が通常 10 であれば それを 20 にする等 意見 -2 ベンチマーク ドーズを設定する際には発がん性試験が必要なはず 化審法のスク毒で取得したデータのみでは利用できない 遺伝毒性に関しては in vitro 試験で強く出たからと言って in vivo 試験で強く出るというデータは無い 従って TD20 や比活性値等を利用することも Unreasonable そもそも Ames や染色体異常試験は定性的変化を見る試験であると認識すべきである 染色体異常試験で数的異常のように 閾値があると考えられる影響の場合には 例えば in vivo 小核で その影響が消える用量を求めるというのも一つの手段かもしれない ただし 閾値がないと考えられる場合 この考えは適用できない 意見 -3 定量化する手法ではなく 発がん性についての閾値の有無判断の材料とする リスク評価において 遺伝毒性の情報としての 生殖細胞変異原性 の毒性スクリーニングは必須か?/GHS では 生殖細胞を用いる in vivo 変異原性試験法は十分に効果的か?/ 生殖細胞を用いない 他の試験法をスクリーニング試験法にできないか? 実際にその様な物質がないため 不要である とする意見がある一方 国際整合性を考えれば必要かもしれないとの意見があった しかし GHS が推奨する試験は 非常に多くの動物が必要であり ( 非常に高額な試験 ) 標本作製に高い技術を要し 実施できる施設 人材がほとんどないため ほぼ実質的には実施困難 代わる手法としては 精子形成ステージの観察や精巣を用いた in vivo comet アッ 24

セイがある ヒトへの外挿について 種間差の要素には 主に以下の二つがあり ADME の違いよりも メカニズムが重要である ADME のうち種間差への関連性 M( 代謝 ) > A( 吸収 ) > D( 分布 ) or E( 排泄 ) の順で弱くなる リスク評価を実施する際の情報としては 血中濃度 の情報 ( 理想的には臓器における被験物質濃度である ) は 毒性を理解する上で重要 2.3. 課題抽出のための検討会 2.2. 国内有識者からのヒアリング の内容について 2010 年 9 月 30 日 ( 木 )( 経済産業省本館 4 階西 8 右 ( 第 3 会議室 )) に開催した検討会にて報告した 検討会の参加者を表 2-6 に示す 表 2-6 検討会メンバー 所属 氏名 ( 敬称略 ) 国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室長 広瀬明彦 花井リスク研究所 花井荘輔 独立行政法人製品評価技術基盤機構 ( 化学物質管理センター所長 ) 辻信一 厚生労働省医薬品食品局化学物質安全対策室 ( 衛生専門官 ) 大久保貴之 経済産業省化学物質管理課 ( 分析官 ) 及川信一 経済産業省化学物質管理課 ( 企画官 ) 福島隆 経済産業省化学物質安全室 ( 課長補佐 ) 宮地佳子 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 企画官 ) 五十嵐誠 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 課長補佐 ) 太田聡 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係長 ) 常見知広 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 半澤大介 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター安全審査課 ( 課長 ) 藤沢久 独立行政法人製品評価技術基盤機構リスク評価課 ( 専門官 ) 村田麻里子 独立行政法人製品評価技術基盤機構リスク評価課 ( 主任 ) 坂井るりこ まず 将来的な有害性評価手法整備のあるべき姿を検討するために 将来懸念が高まることが想定される課題に関する調査を行うこととなった この他 検討会において以下の項目について更なる調査を実施することとなった in vitro 試験の開発状況に関する調査 28 日間反復投与毒性試験を拡張するための最新技術等に関する調査 利用できる QSAR 関する調査 25

さらに 意見交換が必要な項目として以下が挙げられ 特に変異原性 / 遺伝毒性評価及び発がん性に着目して今後の検討会を進めることとなった < 変異原性 / 遺伝毒性関連 > Ames 試験 /in vitro 染色体異常試験を発がん性試験のスクリーニングと位置づけてよいのか? Ames 試験 /in vitro 染色体異常試験の結果を化審法においてどのように活用するのか? 遺伝毒性物質のリスク評価における扱い 化審法における生殖細胞変異原性試験の扱いについて < 発がん性 > In vitro 試験等のスクリーニング試験と発がん性試験 (1.5~2 年間 ) の間に据える試験にはどのようなものがあるか? 閾値問題を含めた発がん性物質のリスク評価の方法について < 生殖毒性 > 併合試験 ( 反復投与 / 生殖毒性試験 ) の位置付け 26

3. 化審法における変異原性評価等に関する検討 3.1. 背景及び目的 2009 年改正の前の 化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律 ( 化学物質審査規制法 ; 化審法 ) では 化学物質の性状( 分解性 蓄積性 ヒトへの長期毒性 動植物への毒性 ) 等に応じた規制を行ってきた 具体的には 図 3-1に示すように その性状に応じて第一種 第二種又は第三種監視化学物質あるいは第一種 第二種特定化学物質に指定し 必要な規制を実施してきた 2009 年 化学物質が ヒトの健康及び環境に与える著しい有害影響を最小化する方法で使用 生産されることを2020 年 ( 平成 32 年 ) までに達成する という2002 年のヨハネスブルグサミット (WSSD) での国際的合意 目標を達成すること等を目的として化審法が改正された この改正に伴い 図 3-2に示すように第二種特定化学物質を指定するプロセスが大きく変更されることとなった この変更に伴って必要となる有害性評価を含めた具体的な暴露評価手法 リスク評価手法については 独立行政法人製品評価技術基盤機構 (NITE) がそのスキーム原案を提案しているところである (NITE, 2008; 2009a; 2009b) しかしながら 変異原性物質の取り扱いについては表 3-1に示す課題が残されている また 2.3. 課題抽出のための検討会 で記載したように 産業界 関係行政機関及び有識者からなる検討会により 変異原性 / 遺伝毒性評価方法について検討することが合意された そこで 変異原性試験等から得られる結果をどのように評価し リスク評価体系の中に生かしていくべきかを検討するため 有識者及び関係行政担当者を招聘した研究会を開催し 化審法における変異原性の評価フロー及び発がん性評価に利用できる試験法についての検討を行った また その検討内用に必要な情報についてもあわせて調査を行った 本項では それらの結果を報告する 表 3-1 化審法における変異原性物質の取扱いに関して残されている課題 (NITE, 2009a, 2009b より抜粋 ) 変異原性についてはリスク評価手法がなく 変異原性試験結果をどのように判断するかも専門家以外では困難である (NITE, 2009a) 強い変異原性物質については 発がん性の可能性がありとして 本スキームで設定したデフォルト値( デフォルトスロープファクター及びデフォルトユニットリスク ) を用いてリスク評価を行うことも可能である しかし 強い をどのように定義するか 変異原性物質を発がん性物質とみなすことは妥当か デフォルト値を用いたリスク評価結果をどのように解釈するか等の問題がある (NITE, 2009a) 強い変異原性 を有するとしてリストアップされた優先評価化学物質のうち 前節 9.2.4で示した有害性評価値を導出する項目では評価 Ⅱの対象とはなっていない物質については さらなる評価の必要性の判断のために変異原性に係る有害性調査を行う必要がある 優先評価化学物質が有する有害性情報と 暴露の指標となる排出量等から 法第 10 条第 2 項に基づく有害性調査指示の必要性判断の基準等を 今後設定していく必要があるNITE (2009b) 27

年間 1 トン超 新規化学物質その他年間 1トン以下 政令で定める場合 ( 中間体等 ) 低懸念高分子化合物 上市前 事前審査 事前確認 上市後 既存化学物質 難分解性かつ低濃縮性 難分解性かつ低濃縮性 難分解性かつ高濃縮性かつ人への長期毒性又は高次捕食者への毒性あり 難分解性かつ高濃縮性 第 1 種監視化学物質 必要な場合 取扱状況の報告要求 必要な場合 有害性調査指示 人への長期毒性又は高次捕食動物への毒性あり 第 2 種監視化学物質 ヒトへの長期毒性の疑い 必要な場合 有害性調査指示 第 3 種監視化学物質 人への長期毒性又は高次捕食動物への毒性あり 動植物への長期毒性の疑い 第一種特定化学物質第二種特定化学物質図 3-1 化審法における審査 規制制度の概要 NITE (2009) 図表 1-1 化審法における審査 規制制度の概要 を改変 年間 1 トン超 新規化学物質その他年間 1トン以下 政令で定める場合 ( 中間体等 ) 低懸念高分子化合物 上市前 事前審査 事前確認 上市後 既存化学物質を含む一般化学物質製造量 輸入量の実績 用途情報の届出 難分解性かつ高濃縮性 監視化学物質 低リスク スクリーニング評価 有害性 製造 輸入状況等に基づく判断 ( 既知見 ) リスクが十分に低いと認められない 優先評価化学物質 難分解性かつ高濃縮性かつ人への長期毒性又は高次捕食者への毒性あり 必要な場合取扱状況の報告要求必要な場合有害性調査指示 低リスク 一次リスク評価 必要な場合 有害性情報 取扱状況の報告要求 必要な場合 有害性調査指示 人への長期毒性又は高次捕食動物への毒性あり 低リスク 二次リスク評価 人又は生活環境動植物への毒性被害のおそれのある環境残留 第一種特定化学物質 第二種特定化学物質 図 3-2 2009 年の改正による第二種特定化学物質指定までの流れ 28

3.2. 化審法における変異原性の評価フローに関する検討化審法における変異原性物質の評価手法に関する検討については 表 3-2 示す有識者及び関係行政担当者を招聘した検討会を開催し ( 平成 22 年 11 月 4 日及び12 月 3 日 ) 検討を行った 検討会の開催に際して使用した資料については別添資料 II-3-1 及び別添資料 II-3-2 に添付した 表 3-2 化審法における変異原性評価に関わる検討会メンバー 所属 氏名 11/4 12/3 財団法人食品農医薬品安全性評価センター ( センター長 ( 副理事長 )) 林真 * * 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部長 能美健彦 * * 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部第一室長本間正充 * * 財団法人食品薬品安全センター秦野研究所 田中憲穂 国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室長広瀬明彦 * * 花井リスク研究所花井荘輔 * 社団法人日本化学工業協会常務理事庄野文章 * 社団法人日本化学工業協会化学品管理部長 宇和川賢 * * 独立行政法人製品評価技術基盤機構 ( 化学物質管理センター所長 ) 辻信一 * * 厚生労働省医薬品食品局化学物質安全対策室 ( 衛生専門官 ) 大久保貴之 * * 環境省化学物質審査室 佐々木秀輝 * 経済産業省化学物質管理課 ( 分析官 ) 及川信一 * * 経済産業省 ( 企画官 ) 福島隆 * 経済産業省化学物質安全室 ( 課長補佐 ) 宮地佳子 * 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 企画官 ) 五十嵐誠 * * 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 課長補佐 ) 太田聡 * * 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係長 ) 常見知広 * * 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 田崎孝典 * * 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 半澤大介 * * 経済産業省化学物質リスク評価室中桐裕子 * * 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター安全審査課 ( 課長 ) 藤沢久 * * 独立行政法人製品評価技術基盤機構リスク評価課 ( 専門官 ) 村田麻里子 * * 独立行政法人製品評価技術基盤機構リスク評価課 ( 主任 ) 坂井るりこ * 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター小原裕子 * * 3.2.1 化審法における変異原性の評価フローに関する検討 を議論する上での前提化審法における変異原性の評価フローを検討する上で 以下の前提を参加者に説明した上で検討を依頼した 改正された化審法における変異原性データの取扱い( 検討会開催時点における案 ) について議論する 完全に乖離して議論することは困難であるが 発がん性 の評価とは分け 変異原性 に特化した議論を行う 発がん性 に関しては 変異原性 の検討以降の議論対象とする 化審法において 遺伝毒性 ではなく 変異原性 という言葉が用いられているため 用語として 29

は 変異原性 を用いる ただし 評価したいのはより広義の意味を持つ 遺伝毒性 である 生殖細胞変異原性の評価フローについては その評価手法に関するより現実的な科学的知見 方法が得られるようになるまでの間 中長期的課題として当面検討を保留する 以上から 検討会で議論するフローは化審法における変異原性の評価フローの大枠と位置づける ( 専門家判断が入らない 絶対的なものではない ) 検討会において当初想定した課題 ( 図 3-3) に関する議論等を提案した結果 効率的な議論を行うために事務局が評価体系に関する草案を作成することとなった < 当初想定した課題 ( 図 3-3 参照 )> 1 変異原性評価の初期段階において必要最小のデータセットとは何か? 2 1で想定した試験の結果に基づき どのような判断をすべきか?( 追加試験の要求か? 変異原性の結論か? 等 ) 3 2の結果 他の in vitro 試験が必要か? 4 in vivo 試験が必要な場合 どのような試験が必要か? 5 in vivo 試験を実施した結果として どのような変異原性の結論とすべきか? 6 生殖細胞変異原性 についてはどの段階で どのように評価すべきか? ( 注 : 本項目については 中長期的課題として 議論対象から外すこととした ) 7 得られた結果は有害性評価 リスク評価においてどのように利用できるか? 議論のポイントの整理 :1 変異原性評価体系 変異原性 の試験評価体系で想定される課題 バクテリアを用いる遺伝子突然変異試験 In vitro 染色体異常試験又は In vitro マウスリンフォーマ試験 (MLA) 1 初期段階で必要な最小データセットとは? 陰性 陰性 陽性 陰性 陰性 陽性 陽性 陽性 如何判断するか? 如何判断するか? 如何判断するか? 如何判断するか? 2 どのような判断をすべきか? ( 追加試験の要求? 変異原性の結論? 等 ) 3 他の in vitro 試験が必要か? In vivo 試験要求 4 どのような試験か? 陰性 陽性 如何判断するか? 如何判断するか? 例えば Genotoxic in somatic cells 強い遺伝毒性懸念あり 取締り評価対象 5 どのような変異原性の結論とすべきか? 6 生殖細胞変異原性 についてはどの段階で どのように評価すべきか? 有害性評価 リスク評価へ 7 得られた結果をどのように利用できるか? 図 3-3 当初想定した 変異原性の試験評価体系で想定される課題 30

3.2.2 化審法における変異原性の評価フローに関する検討会の結果 3.2.1 化審法における変異原性の評価フローに関する検討 を議論する上での前提 で示したように 効率的な議論を行うために事務局案として REACH や GHS に基づき 変異原性評価フローの草案を作成すると共に 以下の資料をメンバーに配布した 事務局草案を図 3-4 に示す なお 変異原性の評価フローの検討に当たって必要と考えられた情報については 3.2. 化審法における変異原性の評価フローに関する検討 にまとめた 遺伝毒性 / 変異原性評価に関わる OECD テストガイドライン 各国の変異原性 / 遺伝毒性分類カテゴリー / 判定フロー (GHS/IPCS/ 欧州 REACH/CLP /UK COM/ ドイツ MAK 及び BAT/ カナダ CEPA 等 ) 事務局草案及び上記の参考資料に基づき 1 化審法で要求できるようにするべき in vivo 試験とは? 2in vivo 試験を要求する際の考え方とは?( 強い変異原性を加味する必要性があるか? または 強い変異原性 に変わる考え方があるか?) 3in vitro 試験 2 種で陰性となった物質について 陰性 を確認する必要があるか? 4 化審法における一次リスク評価段階で必要な試験データとは及び5 暴露量と比較すべき指標とは? についての議論をお願いした 検討会の結果 得られた変異原性評価フロー案を図 3-5 に示す また 検討会後 各試験の位置付けについて事務局案を作成し 専門家による修正を受けた資料を表 3-3 に示す (Q)SAR 文献情報等 陰性 / 陰性 Ames 試験 優先評価化学物質のうち >10 t/y の物質 in vitro 染色体異常試験 or マウスリンフォーマ試験 (MLA) or (In vitro 小核試験 ) in vivo 試験が必要かどうか考慮する 生物学的利用能の確認 利用可能なデータの確認 適切な in vivo ( 追加 ) 試験の考慮 他の毒性試験への統合を考慮 in vitro 試験系で偽陰性となる ことが明らかな構造群について は 専門家判断により in vivo 試験を求めることがある In vivo 試験を実施する前に 陰性 / 陽性 陽性 / 陰性 陽性 / 陽性 >100t/y? hprt 試験 or 上記で MLA を実施していない場合 MLA 陽性 1 st in vivo test in vivo 小核試験 (TG) or in vivo 染色体異常試験 (TG) or [ in vivo コメットアッセイ * (TG 化中 )] in vivo 不定期 DNA 合成試験 (TG) in vivo トランスシ ェニックマウスを用いる遺伝子突然変異試験 (TG 化中 )or [in vivo コメットアッセイ * (TG 化中 )] [In vivo コメットアッセイ *] or In vivo 小核 / 染色体異常 & in vivo トランスシ ェニック / 不定期 DNA 合成試験 陰性 陰性 2 nd in vivo test 1st in vivo で得られた情報では不足があると専門家が判断した場合に実施 2nd in vivo 試験は 調査中に遺伝毒性の結論を出すことが必要な場合にのみ実施するべきである 陰性 更なる試験は不要 (not genotoxic) 陰性 試験終了 (not genotoxic) 陽性 陽性 試験終了 ( 体細胞において遺伝毒性あり ; genotoxic in somatic cells) 生殖細胞変異原性評価の必要性については専門家判断に拠る 遺伝毒性を判定する上で適切なin vivoデータがある場合 試験不要 フローに示す以外の信頼性のあるデータがある場合 専門家と協議した上で必要試験の選定又は判定を実施する * コメットアッセイ : 要求する試験 としての位置付けではなく 既存のデータとして評価に利用する位置付けとして 発がん性確認試験 ( 発がん性評価ストラテジーは別途 ) 他の懸念される毒性 ( 専門家判断による ) 図 3-4 変異原性評価フローの事務局草案 31

陰性 in vitro 試験 *1 Ames 試験 in vitro 試験 *1 染色体異常試験あるいはマウスリンフォーマ試験 陰性 陽性試験終了 in vivo 試験不定期 DNA 合成試験あるいは陰性トランスシ ェニックマウスを用いる遺伝子突然変異試験あるいは コメットアッセイ陰性陰性専門家判断に基づく 2nd in vivo 試験 あるいは陽性 陽性 陽性 in vivo 試験小核試験 染色体異常試験あるいは陰性 コメットアッセイ陽性 陽性試験終了あるいは あるいは陰性陰性 専門家判断に基づく 2nd in vivo 試験 変異原性 / 遺伝毒性あり ( 体細胞において変異原性あり ) 発がん性評価スキームへ 生殖細胞変異原性評価の必要性については専門家判断に拠る 図 3-5 検討会の結果から得られた 化審法における変異原性の評価フロー案 なお図 3-5 に示すフロー案については有識者メンバーからは以下の指摘もなされていることから 化審法における各試験法の位置づけ等については今後コンセンサスを得ていく必要がある UDS( 不定期 DNA 合成 ) 試験は感度が悪いため それだけで陰性とするのは難しく この試験も 2 nd in vivo 試験が必要になる可能性がある 逆にコメット試験は一般に感度が高いとされているため コメット試験で陰性の場合 さらなるin vivo 試験 (2 nd in vivo 試験 ) を要求するには専門家の判断が必要になる可能性がある ( 表 3-3 に示す通り ) つまり 2 nd in vivo 試験の実施に関しては 専門家判断が必要である in vitro 染色体異常試験あるいはマウスリンフォーマ試験が陽性になった場合 染色体異常誘発性を評価する上ではコメット試験は不要と考えられるが 専門家判断も選択肢のひとつとして残す Ames 試験又は in vitro の染色体異常試験あるいはマウスリンフォーマ試験において両試験系において陽性となり いずれか一方の in vivo 試験系において陽性の結果が得られた場合 原則的にそれ以上の試験を実施する必要はない いずれか一方の in vivo 試験系において陰性の結果が得られた場合 もう一方の試験系の in vivo 試験が必要となる なお 染色体異常陽性の結果を分類する意味で, 突然変異誘発性の有無を調べる必要性については 専門家判断に委ねる 32

試験を選定する際には変異原性試験データのみならず 一般毒性等の試験結果等も考慮して決定すべきである 表 3-3 化審法における変異原性の評価フロー ( 案 ) に用いられる各試験法の位置付け in vitro 試験 Ames 試験 (OECD TG-471) 化審法における事前審査において 10 トン超の物質に通常要求される試験 遺伝毒性( 突然変異誘発性 ) を評価する in vitro 試験 データがない場合に 必須の評価項目となる試験 ( つまり Ames 試験データは必須 ) ただし 突然変異誘発性 ( もしくは DNA 損傷性 ) について結論できる in vivo のデータがある場合 不要 ここでの in vivo 試験はトランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験をさすが コメット試験でも可能かは専門家により判断する 染色体異常試験 (OECD TG-473) 化審法における事前審査において 10 トン超の物質に通常要求される試験 (in vitro 染色体異常試験 あるいはマウスリンフォーマ試験のいずれかが実施される ) 遺伝毒性( 染色体異常性誘発能 ) を評価する in vitro 試験 データがない場合に 必須の評価項目となる試験のひとつ ( 通常 in vitro 染色体異常試験またはマウスリンフォーマ試験 または小核試験が必須となる ) ただし 当該物質の染色体異常誘発能について結論できる in vivo のデータがある場合 不要 ここでの in vivo 試験はコメット試験 不定期 DNA 合成試験 (UDS) 染色体異常試験 小核試験あるいはトランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験のいずれでもよい マウスリンフォーマ試験 (OECD TG-476) 化審法における事前審査において 10 トン超の物質に通常要求される試験 ( マウスリンフォーマ試験あるいは in vitro 染色体異常試験のいずれかが実施される ) 遺伝毒性( 突然変異誘発性 及び染色体異常誘発性 ) を評価する in vitro 試験 データがない場合に 必須の評価項目となる試験のひとつ ( 通常 in vitro 染色体異常試験 マウスリンフォーマ試験 または小核試験が必須となる ) ただし 遺伝毒性 ( 突然変異誘発性 及び染色体異常誘発性 ) について結論できる in vivo のデータがある場合 不要 ここでの in vivo 試験はコメット試験 不定期 DNA 合成試験 (UDS) 染色体異常試験 小核試験あるいはトランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験のいずれでもよい 33

in vivo 試験 不定期 DNA 合成試験 (UDS)(OECD TG486) 遺伝毒性(DNA 損傷性 ;DNA 付加体の除去修復 ) を評価できる in vivo 試験 DNA 損傷性 を評価できる他の in vivo 試験 ( コメット試験 ) が整備されるまでは この試験法が in vivo における遺伝毒性 (DNA 損傷 ) 評価試験 の最初の選択肢になる トランスジェニック動物を用いる遺伝子突然変異試験 ( ガイドライン案へのコメントが 2010 年末に終了し 2011 年の WNT 会議にガイドライン案が出移出される予定 リード国 ; カナダ ) 現在 OECD でテストガイドライン化作業が進められている 遺伝毒性 ( 突然変異誘発性 ) を評価できる in vivo 試験 テストガイドライン化された後は in vivo における突然変異評価試験 として最初の選択肢になり得る 通常 着目する臓器は肝臓 ただし 解析臓器の選択に当たっては, 一般毒性や発がん試験の結果 投与経路を考慮する必要がある 小核試験 (OECD TG-474) 遺伝毒性( 染色体異常誘発性 ) を評価する in vivo 試験 染色体の構造異常だけでなく 数的異常 ( 異数性 ) も検出することができる 血液組織 ( 骨髄 末梢血 ) を対象として試験を行う in vitro の染色体異常誘発能の評価試験で 陽性 の結果が得られた際 in vivo 試験として要求する試験の最初の選択肢 染色体異常試験 (OECD TG-475) 遺伝毒性( 染色体異常誘発性 ) を評価する in vivo 試験 血液組織 ( 骨髄 末梢血 ) を対象として試験を行う 化審法において 試験の求め または 調査指示 をする際 専門家判断により選ばれる試験法のひとつ コメットアッセイ ( バリデーション中 ;2011 年秋にバリデーション報告書が提出される予定 リード国 ; 日本 ) 遺伝毒性(DNA 損傷性 ) を評価する in vivo 試験 しかし 国内専門家からは下記の複数の意見あり DNA 損傷性 の ふるい としては有用 しかし 突然変異を見るには不十分 また 染色体異常 で構造異常であれば コメットで検出できるが 異数性細胞誘発物質 ( アニュージェン ) では検出 できない 試験実施を求める / 指示する場合には専門家の判断が必要 Ames 及び染色体異常の両方が陽性の場合の要求試験としては適切ではない 少なくとも 陰 性 の結果が出てきた場合 2 nd in vivo 試験を要求することになる ( 論議の必要有り ) 得られた結果にもよるが コメットアッセイの試験のみで in vivo における変異原性を評価できないことがある 試験時に着目すべき臓器は 原則 肝臓 ただし 一般毒性の結果等が入手できる場合 これらを考慮する必要がある 34

3.3. 発がん性評価に関する検討 3.2.2 化審法における変異原性の評価フローに関する検討会の結果 の図 3-5 に示すように 変異原性試験の結果 ( 体細胞において ) 遺伝毒性あり と判断された物質について 発がん性について評価する必要がある しかし 通常用いられるげっ歯類の発がん性試験は 1.5~2 年の投与期間及び膨大な数の動物を用いる高額な試験となる そこで 2.3. 課題抽出のための検討会 での課題ともなった in vitro 試験等のスクリーニング試験と発がん性試験の間に据える試験 について検討を行うこととした 検討に際して 最新のリスク評価手法が記載されている EHC240:Principles and Methods for the Risk Assessment of Chemcials in Food 及び ICH((International Conference on Harmonisation of Technical Requirements for Registration of Pharmaceuticals for Human Use; 日米 EU 医薬品規制調和国際会議 ) における発がん性評価手法について調査した結果 以下に示す試験法が 通常の発がん性試験と同水準には適用できないが代わりになる手法 スクリーニング又はメカニズムを検出するための手法として取り上げられていた in vitro 試験 遺伝毒性試験 形質転換試験 メカニズム試験 細胞増殖ギャップ結合による細胞間伝達への影響ホルモン受容体又は他の受容体への結合免疫抑制活性アポトーシスの抑制又は誘導活性血管新生 (angiogenesis) 又は血管新生因子分泌をさせる活性 in vivo 試験 発がん性試験 ( 伝統的な長期 / 生涯試験 ) 短期 / 中期バイオアッセイ イニチエーション / プロモーションモデル 新生児マウスモデル等 トランスジェニックのげっ歯類を用いた試験 Xpa-/-, p53+/-, Tg-rasH2 Tg.AC 等 in vivo での遺伝毒性試験 : 反復投与毒性試験 継続的な細胞増殖誘導の試験 免疫抑制活性の試験 トキシコキネティクス 作用機序に関する他の試験 e.g. オミクス研究 ( トキシコゲノミクス プロテオミクス メタボノ / メタボロミクス これらの試験法のうち 従来から知られている伊東法 ( 中期発がん性試験 ) に加え 現在 OECD へ提案されている Bhas-42 細胞を用いた形質転換試験及び 最新のオミクス技術を用いた発がん性評価法についての利用可能性を検討するため 産業界 関係行政機関及び有識者を招聘した検討会を開催した 上記の 3 手法についてはそれぞれ下記の専門家にプレゼンテーションを依頼した ( プレゼンテーション資料 ; 別添資料 II-3-3) 検討会参加者を表 3-4 に示す 35

Bhas-42 細胞を用いる発がん物質 in vitro 短期スクリーニング系の紹介 ( 財団法人食品薬品安全センター秦野研究所田中憲穂先生 ) マイクロアレイを用いた発がん性予測システム [CARCINOscreen ] ( 一般財団法人化学物質評価研究機構齋藤文代氏 ) The Ito s Medium Term Carcinogenicity Model ( 名古屋市立大学津田洋幸先生 ) 表 3-4 発がん性評価手法に関わる検討会メンバー 所属氏名 ( 敬称略 ) 財団法人食品薬品安全センター秦野研究所 名古屋市立大学 日本バイオアッセイ研究センター ( 所長 ) 東京農工大学 国立医薬品食品衛生研究所安全センター 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部長 国立医薬品食品衛生研究所総合評価研究室長 社団法人日本化学工業協会化学品管理部長 社団法人日本化学工業協会常務理事厚生労働省医薬品食品局化学物質安全対策室 ( 衛生専門官 ) 環境省化学物質審査室環境省化学物質審査室経済産業省化学物質管理課 ( 分析官 ) 経済産業省 ( 企画官 ) 経済産業省化学物質安全室 ( 課長補佐 ) 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 企画官 ) 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 課長補佐 ) 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係長 ) 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 経済産業省化学物質リスク評価室 ( 係員 ) 経済産業省化学物質リスク評価室独立行政法人製品評価技術基盤機構 ( 化学物質管理センター所長 ) 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター安全審査課 ( 課長 ) 独立行政法人製品評価技術基盤機構リスク評価課 ( 専門官 ) 独立行政法人製品評価技術基盤機構リスク評価課 ( 主任 ) 独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター 経済産業省化学物質安全室 一般財団法人化学物質評価研究機構 田中憲穂 津田洋幸 福島昭治 三森国敏 西川秋佳 能美健彦 広瀬明彦 宇和川賢 半沢昌彦大久保貴之池本忠弘佐々木秀輝及川信一 福島隆 宮地佳子 五十嵐誠 太田聡 常見知広 田崎孝典 半澤大介 中桐裕子辻信一 藤沢久 村田麻里子 坂井るりこ 小原裕子 奥本奈美 齋藤文代 36

3.3.1 主要な論点 Bhas-42 細胞を用いる発がん物質 in vitro 短期スクリーニング系の紹介 ( 財団法人食品薬品安全センター秦野研究所田中憲穂先生 ) Q. ras 遺伝子が組込まれているという理解でよいか? A. 良い Q. 通常 H-ras を入れたマウスを用いた実験では H-ras が化学物質の標的となって変異を起す この系では ras が入っていることで腫瘍化するようなことはないのか? A. 確認していない Q. S9 の添加は? A. 通常の in vitro の遺伝毒性などの試験のように簡単には添加できない 現在 OECD ガイドライン化を進めているが そこまで含めると煩雑になるため含めていない マイクロアレイを用いた発がん性予測システム [CARCINOscreen ] ( 一般財団法人化学物質評価研究機構齋藤文代氏 ) Q. 正答率が 90% 以上 (73 物質 ) とのことだが その検証において非変異且つ非発がん物質が少ないのではないか? A. 開発目的が Ames 試験で検出できない発がん性を見る であったため その様な物質の数は少なくなっている なお 陽性の物質が 6 割 陰性の物質が 4 割である Q. 外れた物質はどのような物質か? A. ひとつには CARCINOscreen のための遺伝子解析は F344 ラットに化学物質を投与した臓器サンプルを用いているが 発がん性がある と判断されているオリジナルの試験結果はマウスのものであり 種差による原因が考えられる もう一方は NTP や IARC では発がん性なしと評価されているが 実験データを見ると ゼロ の反応ではない また 遺伝子のプロファイル解析を比較すると発がん性物質のプロファイルに大変近いことから 本当は 発がん性物質なのではないかと考えている Q. 肝臓の遺伝子発現データを取得しての予測ではあるが 他臓器での発がん性を示唆するデータはあるか? A. 肝臓の発がん性を予測した場合 指標として計算している値が大きく出るが 37

他臓器での発がん性の場合 その値が小さくなる つまり レスポンスが弱くなる傾向がある Q. 動物試験は 2 用量で実施されていて プレゼンで示しているデータは全て高用量群の結果と理解してよいか もしそうであれば 低用量ではどのような反応だったか A. プレゼンで示したデータは高用量のものであるが ブラインド試験において 4~5 用量での試験を実施しており 予測指標として算出する値と用量相関性を示している Q. 最高用量の設定の根拠は何か 発がん性が見られることが分かっている用量か A. システム開発に用いたのは 発がん用量が既知の用量を用いているが ブラインド試験では 28 日間の最大耐用量を最高用量として実施している 結果として発がん性が検出でいていることから 現行の 28 日間反復投与試験の用量設定の手法で実施できると考えている The Ito s Medium Term Carcinogenicity Model ( 名古屋市立大学津田洋幸先生 ) Q. DEHP が伊東モデルでは検出できない理由として GST-P のプロモーター領域をつぶしてしまうから という説明があったが これは PPAR が関与していると理解してよいか A. 後付だが そうなる Q. そうであれば PPAR との相互作用等がない物質であることを確認した後 伊東モデルという流れがひとつ考えられる Q. すばらしい系であるが なぜ普及しないのか A. 肝臓を部分切除をするプロセスがあるためだと考えられる その操作自体は慣れればそれほど困難ではないが そのような繊細な操作が得意でない場合 やはり敬遠されると思われる その他 挙げられた指摘事項を以下に示す 発がん性試験スキームに行く前の遺伝毒性試験が不足していると考えている 現行の考えでは優先評価化学物質に選ばれた場合には in vivo 試験が実施される可能性があるが それ以外の物質についてはデータがない状態である データがない状態というのが問題である 38

今回プレゼンのあった手法に関することではないが 日本だけが独自に この手法 と決めて規制に取り入れるような形は避けるべきであり どの国でも受入れられる試験法 ( 検証され ガイドライン化されている試験 ) であるべきと考える 例えば伊東モデルは ICH で合意された手法である 化審法に取り入れる場合 ガイドライン化されたものを用いるべきである 追加試験が要求される際のトリガーをより明確化していくべきである 追加試験が要求される際のトリガーとなる考え方の明確化については 今後検討を進めていく必要がある 39

3.4. 変異原性の評価フローを検討するために必要な情報収集 3.4.1 調査の内容及び実施方法 3.2. 化審法における変異原性の評価フローに関する検討 で検討した 将来の化審法の変異原性分野の枠組みを検討するためには 変異原性の各試験法の位置付け 海外の化学物質管理規制における変異原性 / 遺伝毒性の位置づけ並びにその評価方法についての情報収集は重要である そこで 国内外の有識者に対するヒアリング 学会 講演会への参加及び論文等により以下に示すふたつのテーマについて調査し その一部について変異原性 / 遺伝毒性評価の検討会に情報提供を行った テーマ-1: 各種変異原性 / 遺伝毒性試験の整理変異原性 / 遺伝毒性はヒト健康影響に関する他の毒性エンドポイントとは異なる事情にある 即ち 多様な試験法が既に確立されている一方 試験結果が陽性となった場合に それがヒトの健康面でどのような表現型として現れるのか 一般的には理解し難いブラックボックスとなっている このため 評価体系を考える際には この点に留意することが重要である そこで 本検討会では 変異原性 / 遺伝毒性評価に用いられている試験法の特徴等について整理した テーマ-2: 変異原性 / 遺伝毒性評価に関わる海外の動向調査 1 生殖細胞変異原性に対する考え方及び判断基準となる試験の種類 2 評価ストラテジー及び試験要求に対する考え方 情報収集するために参加した学会等及びヒアリングを行った有識者をそれぞれ 表 3-5 及び表 3-6 に示す 表 3-5 情報収集を行った講演会等 会議名 場所 時期 日本環境変異原学会第 39 回大会 つくば国際会議場 ( エポカルつくば ) 2010 年 11 月 16 日 ILSI Japan 国際シンポジウム-リスク評価におけ国連大学ウ タントる TTC( 毒性学的懸念の閾値 ) の有用性国際会議場 東京 2010 年 12 月 9 日 40

表 3-6 ヒアリングを実施した国内の有識者 氏名 所属 専門 調査対象としての選定理由 能美健彦 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部部長 遺伝毒性 我が国の変異原性分野の専門家 本間正充 国立医薬品食品衛生研究所変異遺伝部第一室長 遺伝毒性 我が国の変異原性分野の専門家 森田健 国立医薬品食品衛生研究所安全情報部室長 遺伝毒性 我が国の各種毒性分野の専門家 IARC Monographs, Unit of Carcinogen Identification and Carcinogenicity, IARC Monographs の担当者であり 発が Dr. Robert A. Evaluation, WHO International Animal Toxicology, ん性 リスク評価の専門家 Baan Agency for Research on Cancer Epidemiology (IARC), Lyon, France Ms. Carolyn Vickers Dr. Richard Brown Mrs. Eva Sandberg Mr. Lars Nylund Mr. Frank Le Curieux Professor Dr. Diana Anderson Honorary Professor Dr. David Tweats Michael P. Holsapple, Ph.D. International Programme on Chemical Safety(IPCS), WHO, Geneva, Switzerland Department of Public Health and Environment, WHO, Geneva, Switzerland International Relations, European Chemicals Agency (ECHA), Helsinki, Finland Classification, European Chemicals Agency (ECHA), Helsinki, Finland Evaluation, European Chemicals Agency (ECHA), Helsinki, Finland School of Life Sciences, University of Bradford, UK Genetics, Institute of Life Science, School of Medicine, Swansea University; Genetic Toxicology Consultant; Director of Kirkstall Ltd. ILSI/HLSI 事務局長, A.T.S. Executive Director Genotoxicity, Mutagenicity, Toxicology, Risk Assessment Genotoxicity, Mutagenicity, Risk Assessment Chemical Safety Genotoxicity, Mutagenicity, Risk Assessment Chemical Safety, Risk Assessment Carsinogenicity, Animal Toxicology Genotoxicity, Mutagenicity, Risk Assessment 変異原性 WHO IPCS のチームリーダーであり 遺伝毒性 化学物質安全性 リスク評価分野の専門家 WHO 健康 環境部門で遺伝毒性分野の専門家 化学物質のリスク評価スキームの国際ハーモナイゼーション等の業務に係っている 欧州化学品庁で REACH 規則の変異原性専門家 欧州化学品庁で REACH 規則の変異原性専門家 欧州化学品庁で REACH 規則のリスク評価の専門家 発がん性 動物毒性分野の専門家 変異原性にも造詣が深い専門家 変異原性分野の専門家 Dr. Michael P. Holsapple は遺伝毒性の専門家であり 現在 ILSI/HLSI 事務局長を務めている 41

3.4.2 テーマ-1: 各種変異原性 / 遺伝毒性試験の整理 3.4.2-1) 化学物質の変異原性 / 遺伝毒性とは? GHS 改訂三版の 3.5 章 生殖細胞変異原性 では 突然変異 変異原性及び遺伝毒性は以下のように定義されている 本章における 変異原性 / 遺伝毒性 はこの定義に従って 広義に用いている A. 突然変異細胞内遺伝物質の量または構造の恒久的変化であり 表現型レベルで発現されるような経世代的な遺伝的変化と その根拠となっている DNA の変化 ( 例えば 特異的塩基対の変化及び染色体転座など ) の両方に適用される B. 変異原性及び変異原性物質 細胞または生物の集団における突然変異の発生を増加させる性質及びそのような性質をもつ物 質について用いられる C. 遺伝毒性及び遺伝毒性物質 ( より一般的な用語 ) DNA の構造や含まれる遺伝情報 または DNA の分離を変化させる物質あるいはその作用に適用される これには 正常な複製過程の妨害により DNA に損傷を与えるものや 非生理的な状況において ( 一時的に )DNA 複製を変化させるものもある 遺伝毒性試験結果は 一般的に変異原性作用の指標として採用される 3.4.2-2) DNA 損傷と修復メカニズム 3.4.2-1) 化学物質の変異原性 / 遺伝毒性とは? での定義される変異原性/ 遺伝毒性を発現するような化学物質の DNA への損傷作用と損傷に対する修復メカニズムを表 3-7 に示す 化学物質が DNA に対して反応性を持つ場合 DNA 損傷 DNA 修復 誤った複製 / 不完全な修復 / 誤った修復 突然変異や染色体異常の誘発 等のメカニズムで異常が生じ 経世代的影響や発がん等の悪影響を生体にもたらす可能性がある DNA 損傷 に関しては 様々なメカニズムが存在し 日常的にも生物の細胞内で DNA 損傷が生じている 例えば 脱プリン反応により ヒトの 1 個の細胞の DNA から 1 日に約 5000 個のプリン塩基が失われ また 脱アミノ反応により 1 個の細胞の DNA で 1 日に約 100 個のシトシンがウラシルに変換されているとされている このような DNA 損傷は外因性の化学物質の暴露によっても生じ 損傷によって引き起こされる DNA の変異が生殖細胞に及べば 生体に対して経世代的な悪影響を及ぼすことになる可能性がある 生体には DNA に損傷が発生した場合 ゲノム配列の変化を抑制し 正しい遺伝情報が次世代 ( 娘細胞 ) に伝達されるよう 細胞内には損傷を受けた DNA を修復するために表 3-7 のようなメカ 42

ニズムが備わっている しかしながら 損傷が修復されずに DNA が複製されるあるいは誤った修復が行われることで 突然変異や染色体異常のような DNA の構造や遺伝情報の変化が誘発される 変異原性 / 遺伝毒性試験は 化学物質と生体との反応の結果によって生じるこれらの変化を検出することで 経世代的影響や発がんの可能性を推定するために用いられる DNA 損傷 DNA 修復 誤った複製 / 不完全な修復 / 誤った修復 突然変異や染色体異常の誘発 表 3-7 化学物質が遺伝子に与える影響の種類 現象の種類 補足説明 付加体の形成 脱アミノ化の例 : シトシンの脱アミノによる塩基置換 塩基のアルキル化 シトシンの相補的塩基対はグアニンであるが シトシ DNA ヌクレオチドの酸化的損傷 ンの脱アミノによって生成したウラシルの相補的塩基 DNA の一本鎖切断 二本鎖切断 対はアデニンであるため DNA 複製によってグアニン 注 : DNA 鎖の切断では一本鎖切断と二本鎖 ではなく アデニンに変化し 塩基置換が生じる 切断が生じるが 生体に対して重篤な影 響を与える主な要因は二本鎖切断であ 脱プリンの例 : アデニンの脱プリンによるフレームシフト る アデニンの脱プリンによって 複製時に脱プリンの 脱アミノ化 箇所がとばされて次の塩基に移るためアデニン-チミ 脱塩基 ンの塩基対が欠失し フレームシフトが生じる ピリミジン二量体形成 化合物の塩基対間挿入 DNA 二本鎖切断 塩基の加水分解 放射線照射以外では 複製の誤り 酸化剤等によ など様々なメカニズムが存在 って生じる 直接修復 ( 回復 ) 一本鎖切断の修復 アルキル化修復等 DNAに生じた一本鎖切断は 通常 塩基除去修復 除去修復 やヌクレオチド除去修復により 損傷を受けていない 塩基除去修復 DNA 鎖を鋳型として破綻なく修復される short-patch 経路 :1~3 塩基 long-patch 経路 :20~30 塩基 二本鎖切断の修復 ヌクレオチド除去修復 修復のための鋳型となる姉妹染色分体が存在する ミスマッチ修復 DNA 複製の途中や直後 ( 細胞周期のS 期 G2 期 ) に DNA 損傷応答機構 は相同組換えと呼ばれる修復メカニズムにより もう一 非相同末端結合 (Non-homologous 方のDNA 二本鎖を修復の際の鋳型とすることで end-joining NHEJ) DNA 配列の変化を起こさない修復が可能である 相同組換え トランスリージョン DNA 合成 (TLS) DNA 複製の誤り DNA 修復前に DNA 複 誤りがちな修復 製が行われる ヒトのDNA 二本鎖切断修復ではNHEJが主な修復経 NHEJ 路である NHEJでは 切断されたDNA 二本鎖を直接つ TLS なぎ合わせる方法で修復が行われ DNA 末端を連結す NHEJ によるヌクレオチドの欠失や挿入 る際に ヌクレオチドの欠失や挿入が発生し ゲノム配列 突然変異 ( 遺伝情報 ) が変化する NHEJ による異なったゲノム同士の結合 異なるゲノム位置で二本鎖切断が生じた場合に 染色体転座 NHEJにより異なる染色体同士が連結されると 染色体の TLS で DNA 合成時に誤った塩基挿入 転座等の異常となる 突然変異 トランスリージョン DNA 合成では DNA 損傷部位を 乗り越え て DNA 合成が進むため 損傷部位に非相 補的な塩基対が形成される可能性がある 3.4.2-3) 変異原性 / 遺伝毒性評価に用いられる試験の種類表 3-7 の化学物質の変異原性 / 遺伝毒性発現メカニズムを 簡単に図示した ( 図 3-6) 細胞 43