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Transcription:

Katsumi Wakabayashi, Ph. D. Prof. Emer. Gunma University Technical consultant, Shibayagi Co. Ltd. Shibayagi Webiner 1

A. 測定とは何か 1. 定性的検出 : 最も手軽な方法で あるかないかを判定する結果は + または - で表現する 2. 定量的測定 : 絶対量 相対量 活性値など数量的に表現できるようにする ある ない 以外に どのくらいあるか という情報が加わる Measurement と Assay Measurement: 広い意味で 寸法 大きさ 広さ 長さ 厚さ 深さ 量 などを測ること または測って得られた数値 Assay : もともとの意味は 1 鉱石を試金する 金銀などの含有量を調べる 2 を分析 ( 評価 ) する 分析の結果 の含有量を示す試金 分析評価 分析物 試金物 ( 試金 ) 分析表 Determination of the purity of a substance or the amount of any particular constituent of a mixture (DorlandのMedical Dictionary) 混合物に含まれる或る特定の物質の量または純度を決定すること を意味する. これには物質の単離法を加えるか あるいは測定系のanalyte に対する特異性が高いことが要求される Shibayagi Webiner 2

3. 絶対量の測定と相対量の測定 絶対量とは その事物に固有の量 ( 広辞苑 ) ここでは 例えばグラムで表現できる質量など絶対量で表現できるもの : 例えばステロイド 甲状腺ホルモン ヒスタミンのような小分子物質は 100% 純粋なものが入手できるので 生物活性が安定しているものは重さ ( 正確には質量 ) で表現することが可能 相対量 : 例えば 力価 (potency) 活性値 (activity) あるいは 単位 (unit) 相対的にしか表現できないもの : タンパクホルモンとか酵素のような大分子物質は 100% 純粋なものが入手困難な場合がある. 生理活性を持っていて力価の異なる分子種が存在するような場合 不活性化されやすい場合 このような場合には生理活性を単位として表現するのがむしろ当を得ている また抗体なども抗原との結合を指標として測定すると重さではなく活性値とか力価 ( 単位重量あたりの活性値 ) で表現せざるを得ない Shibayagi Webiner 3

測定値の表現について アッセイの測定結果の表し方 : 重さ ( 質量 ) と濃度 重さで表現する場合 : 測定に用いたチューブ (tube) またはウェル (well) 当りの標準品の重さまたは単位例 )ng/tube ng/well とか mu/tube mu/well など 濃度で表現する場合 : 測定試料 ml または dl に含まれる標準品の重さまたは単位例 )pg/ml ng/dl など これを取り違えると大変な間違いを起こすことになる仮に試料を 100μl 使って測定した場合 pg/ml で表わすと pg/well の 10 倍の数値となる検量線の横軸に記されている表現のしかたに充分注意すること! Shibayagi Webiner 4

4. 標準物質 ( 標準品 ) について相対的にしか表現できないもの : 適当な基準を設けて それを [ 単位 ] として物差しに使う. タンパク ホルモンなどにはこの例が多い 単位 (U) について : ある一定の生物活性を単位 (unit ) として決めて行く場合生物活性を基にしている単位の決め方は 例えば PTH では 体重 8-16kg のイヌに 16-18 時間以内に血中 Ca 値 1mg/dl の上昇をもたらす量を 100USP ユニットと決めている. カルシトニンでは 体重 100g の絶食雄ラットに静注して 1 時間後に血漿 Ca 値を 10% 低下させる量を 10MRCmU と定義している 国際機関 ( 例えば WHO) が一定の標準品を作って その力価を mg 当り何単位と決めて配布する場合例 )NIH-LH-S1,NIH-FSH-S1 などのホルモンは 1 mg を以って 1 NIH-Unit としている いずれにしても実際には入手した国際標準品を自分の試料と比較することで測定値を計算する事になる Shibayagi Webiner 5

B. 測定法の評価 役に立つ測定法の要因 測定法は二つの面から評価される キットその本来の性能からみた評価目的とする物質を正確 かつ精密に測定できるかどうかという評価 Validity test (Assay validation) 測定系の有用性から見た評価特に臨床的に応用されることを目的とする場合には その評価はキットの売れ行きに影響するので 生産 販売者側からは重要な問題 Shibayagi Webiner 6

1. 診断マーカーとしての有用性から見た検討と評価例えばある疾患の臨床診断に用いようとする場合 診断法としての有用性から判定する 疾患 D と 健常者あるいは他の疾患 を考えたとき 感度 : D の患者の何パーセントが陽性に検出されるか?( 陽性の定義も重要 ) 特異性 : 陽性者の何パーセントが D の患者であるか? 感度 特異性が共に高い 有用性が高い Shibayagi Webiner 7

2. 正しくかつ精密に測定できるかどうかという性能の検討 評価 測定しようとする物質だけを 試料中の重さあるいは濃度として高い信頼性で決定できるかどうかという性能を調べる性能の評価のことはバリデート (validate) 或いはバリデーション (validation) と言われ そのテストを行うことを Validity test と言っている どのような評価法が必要かは 国際的な合意事項として ICH (International Conference of Harmonization, 日米 EU 三極医薬品承認審査ハーモナイゼーション国際会議 ) や第 14, 15 改正日本薬局方の参考情報 厚生労働省からの通達 ( 医薬審第 338 号 ) などで示されている Shibayagi Webiner 8

C. 免疫学的測定法とは何か? 免疫学的測定法 (Immunoassay) とは 強い親和性と良好な特異性を持つ抗体を結合試薬として利用した測定法である 抗体とは何か? 抗体 (antibody) は異物である抗原 (antigen) が体内に入ることによって免疫反応を起こし 形成されるタンパク質で抗原と特異的に結合する性質を持つものの総称 抗体はタンパク質としてはイムノグロブリン (Ig) に属する ( 抗体のほか 正常 γ グロブリン 骨髄腫タンパク質 J 鎖等も含まれる ) イムノグロブリンには G(IgG) M(IgM) A(IgA) D(IgD) E(IgE) のクラスがある 抗原とは何か? 免疫原性 (Immunogenicity) 結合能 (Avidity) 抗原 (Antigen) + + ハプテン (Hapten) - + Shibayagi Webiner 9

モノクローナル抗体 ( 単クローン性抗体 ) とポリクローナル抗体 ( 多クローン性抗体 ) の特徴 ポリクローナル抗体 : 通常の免疫法で作り出されたもの抗体産生細胞の多様性 可変部の構造が一定していないため抗原認識場所や親和性が多様な抗体ができる抗原認識部位が特定できず 他の構造類似の抗原との結合の可能性見かけの親和性が高くなるというボーナス効果がある抗体過剰領域では大分子集合体を形成することによって沈降反応を起こす モノクローナル抗体 : ハイブリドーマを作製し作り出されたもの単一クローンの抗体産生細胞が作り出す抗体 一次構造が均一であり 抗原を認識する場所が一定明確な特異性を持つ結合試薬として使用できる抗体過剰領域でも沈降反応を起こさない親和性は一般に高くない Shibayagi Webiner 10

抗体を作り出すには? ポリクローナル抗体 抗原 + 免疫補助剤 異種動物に注射 ( ハプテン性物質 - 担体タンパク質 )+ 免疫補助剤 動物に注射 ( 抗原の一部のアミノ酸配列に対応するペプチド - 担体タンパク質 ) 免疫免疫法 ; 皮内多数個所に繰り返し投与する方法 リンパ節に直接投与する方法など 免疫 一次免疫応答 ( 生体が初めて抗原に接した時の反応 ) 主として IgM クラスが産生される更に免疫を繰り返す 二次免疫応答免疫記憶 ( 註 ) が生じているため応答速度は速く 血中抗体価も著しく上昇する主として IgG クラスが産生される ( クラススイッチ ) 註 : 免疫記憶とは一次免疫によって寿命の長い特異的 T 及び B 細胞クローンが増加することによる Shibayagi Webiner 11

モノクローナル抗体 単一なクローンの抗体産生細胞を得るために マウスなどをまず免疫し その動物の脾臓から抗体産生細胞を取り出す培養系に持ちこんで 骨髄腫細胞 ( ミエローマ細胞 ) と融合させてから 細胞 ( ハイブリドーマ ) が 1 ウェル当り 1 個となるように希釈して培養を続ける ( クローン化 ) 培養液に分泌された抗体の性質を調べて望むような抗体を産生する細胞のみに絞り 増殖させ マウスの腹腔内に移植して更に増殖させ 腹水中に分泌された抗体を収穫する腫瘍細胞の増殖性と抗体産生細胞の機能とを併せ持ったハイブリドーマ ( 雑種腫瘍細胞 ) を巧みに利用することで可能となったものである Shibayagi Webiner 12

抗体をどう利用するのか? 免疫学的測定法では 抗体は特異性の高い結合試薬として使用する抗体は一般的には単離 精製せずに抗血清のまま あるいは IgG 分画として使用する特異性が高いので敢えて精製する必要はあまりない 抗体は溶液状態で使用する あるいは試験管やウェルの表面に吸着させ (coating) 測定対象物質である抗原を捉えるもの ( キャプチャー抗体 固相化抗体 ) として使用するこの場合 固相化する抗体の量を増やすために抗体の精製が行われる 更に非競合的測定系では酵素やビオチンなどで標識して キャプチャー抗体に結合した抗原量を測定するのに用いられる Shibayagi Webiner 13

抗原と抗体の反応 - 結合定数 (Ka) と解離定数 (Kd) Ag + Ab Ag-Ab この反応式に二つの見方がある Ag + Ab Ag-Ab ( 結合反応 ) その速度を Va とし Ag-Ab Ag + Ab ( 解離反応 ) その速度を Vd とすると Va=Vd となった時に反応は平衡状態となる平衡状態でのそれぞれの濃度をモル濃度で表すと [Ag] + [AB] [Ag-Ab] この時 Ka= [Ag-Ab]/[Ag][Ab] Ka: 結合定数, 単位 :M -1 Kd= [Ag][Ab]/[Ag-Ab] Kd: 解離定数, 単位 :M Kd=1/Ka の関係にある Ka の大きさポリクローナル抗体で 10 12 M -1 くらい Kd であらわせば 10-12 M(pM) モノクローナル抗体の場合 Ka は小さくなる Shibayagi Webiner 14

抗原 - 抗体濃度と結合率 Kd = 1 pm の場合 結合率 % 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 0.98 4.55 8.39 38.2 72.88 0.01 0.1 1 10 100 抗原 = 抗体濃度, pm 90.49 96.89 抗原と抗体を同じ濃度で混合した時の結合割合を計算した両者が 1nM 程度なら 100% 近く結合するのだが... Shibayagi Webiner 15

抗原と抗体の結合反応は可逆反応であるため イムノアッセイの測定感度の限界は 抗原と抗体の親和力 即ち結合定数 ( 或いは解離定数 ) に依存しているこの限界を克服することによって改善された測定法が生まれる Shibayagi Webiner 16

第 1 部終わり Shibayagi Webiner 17