Microsoft Word orthopedics_and_plastic_surgery_qa.docx

Similar documents
5 月 22 日 2 手関節の疾患と外傷 GIO: 手関節の疾患と外傷について学ぶ SBO: 1. 手関節の診察法を説明できる 手関節の機能解剖を説明できる 前腕遠位部骨折について説明できる 4. 手根管症候群について説明できる 5 月 29 日 2 肘関節の疾患と外傷 GIO: 肘関節の構成と外側

2015 年度手術のうちわけ ( 実績 ) セキツイ脊椎 ナンブソシキ軟部組織 椎間板摘出術 35 アキレス腱断裂手術 40 内視鏡下椎間板摘出 4 腱鞘切開術 ( 関節鏡下によるものを含む ) 0 シュコンカン 脊椎固定術 椎弓切除術 椎弓形成術 ( 多椎間又は多椎弓の場合を含む )( 椎弓形成

10035 I-O1-6 一般 1 体外衝撃波 2 月 8 日 ( 金 ) 09:00 ~ 09:49 第 2 会場 I-M1-7 主題 1 基礎 (fresh cadaver を用いた肘関節の教育と研究 ) 2 月 8 日 ( 金 ) 9:00 ~ 10:12 第 1 会場 10037

対象 :7 例 ( 性 6 例 女性 1 例 ) 年齢 : 平均 47.1 歳 (30~76 歳 ) 受傷機転 運転中の交通外傷 4 例 不自然な格好で転倒 2 例 車に轢かれた 1 例 全例後方脱臼 : 可及的早期に整復

整形外科後期臨床研修プログラム

原因は不明ですが 女性に多く 手首の骨折後や重労働を行う人に多く見られます 治療は安静や飲み薬で経過を見ますが しびれが良くならない場合 当科では 小さな傷で神 経の圧迫をとる手術を行っており 傷は 3 ヶ月ぐらい経過するとほとんど目立ちません 手術 時間は約 30 分程度ですが 抜糸するのに約 1

10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

骨・関節を“診る”サブノート

Microsoft PowerPoint - 【逸脱半月板】HP募集開始150701 1930 2108 修正反映.pptx

情報提供の例

靭帯付 関節モデル ( 全 PVC 製 ) AS-6~AS-12 骨格の靭帯部分を 個別関節モデルとしてお買い求め頂けます 弊社カタログでは多くの選択肢の提案に努めています ご希望に合わせてお選び下さい ( 経済型関節モデル靭帯付 AJ-1~7 も良品です )

<4D F736F F D F8D9892C595CF90AB82B782D782E88FC781458D9892C595AA97A382B782D782E88FC75F8D9892C58CC592E88F705F2E646F63>

平成 29 年度九段坂病院病院指標 年齢階級別退院患者数 年代 10 代未満 10 代 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 70 代 80 代 90 代以上 総計 平成 29 年度 ,034 平成 28 年度 -

95_財団ニュース.indd

<90AE8C608A4F89C890568EBE8AB B91CE899E E C815B8367>

桜町病院対応病名小分類別 診療科別 手術数 (2017/04/ /03/31) D12 D39 Ⅳ G64 女性生殖器の性状不詳又は不明の新生物 D48 その他及び部位不明の性状不詳又は不明の新生物 Ⅲ 総数 構成比 (%) 該当無し Ⅰ 感染症及び寄生虫症 Ⅱ 新生物 C54 子宮体部

を優先する場合もあります レントゲン検査や細胞診は 麻酔をかけずに実施でき 検査結果も当日わかりますので 初診時に実施しますが 組織生検は麻酔が必要なことと 検査結果が出るまで数日を要すること 骨腫瘍の場合には正確性に欠けることなどから 治療方針の決定に必要がない場合には省略されることも多い検査です

<4D F736F F D F90D290918D64968C93E08EEEE1872E646F63>

両手 X 線のオーダー スクリーニング 両手正面 + 両手斜位

2012 年度リハビリテーション科勉強会 4/5 ACL 術後 症例検討 高田 5/10 肩関節前方脱臼 症例検討 梅本 5/17 右鼠径部痛症候群 右足関節不安定症 左変形性膝関節症 症例検討 北田 月田 新井 6/7 第 47 回日本理学療法学術大会 運動器シンポジウム投球動作からみ肩関節機能

1)表紙14年v0

平成 28 年度診療報酬改定情報リハビリテーション ここでは全病理に直接関連する項目を記載します Ⅰ. 疾患別リハビリ料の点数改定及び 維持期リハビリテーション (13 単位 ) の見直し 脳血管疾患等リハビリテーション料 1. 脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)(1 単位 ) 245 点 2

退院患者数 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 合計 24 年度 年度

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

表面から腫れがわかりにくいため 診断がつくまでに大きくなっていたり 麻痺が出るまで気付かれなかったりすることも少なくありません したがって 痛みがずっと続く場合には要注意です 2. 診断診断にはレントゲン撮影がもっとも役立ちます 骨肉腫では 膝や肩の関節に近い部分の骨が虫に食べられたように壊されてい

かかわらず 軟骨組織や関節包が烏口突起と鎖骨の間に存在したものを烏口鎖骨関節と定義する それらの出現頻度は0.04~30.0% とされ 研究手法によりその頻度には相違がみられる しかしながら 我々は骨の肥厚や軟骨組織が存在しないにも関わらず 烏口突起と鎖骨の間に烏口鎖骨靭帯と筋膜で囲まれた小さな空隙

2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

2-1整形.doc

頭頚部がん1部[ ].indd

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

(Carpus. Wikipedia Kienbock は外傷後の月状骨軟化症の X 線所見と臨床症状を詳細に報告した 彼は 外力により月状骨の血行が途絶 軟化 圧壊すると考えた 以来 Kienbock 病の病因に関しては大き

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

知っておきたい関節リウマチの検査 : 中央検査部医師松村洋子 そもそも 膠原病って何? 本来であれば自分を守ってくれるはずの免疫が 自分自身を攻撃するようになり 体のあちこちに炎 症を引き起こす病気の総称です 全身のあらゆる臓器に存在する血管や結合組織 ( 結合組織 : 体内の組織と組織 器官と器官

Case  A 50 Year Old Man with Back Pain,Fatigue,Weight Loss,and Knee Sweling

保発第 号

大腿骨頚部骨折

選考会実施種目 強化指定標準記録 ( 女子 / 肢体不自由 視覚障がい ) 選考会実施種目 ( 選考会参加標準記録あり ) トラック 100m 200m 400m 800m 1500m T T T T33/34 24

1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

第2回神戸市サッカー協会医科学講習会(PDF)F.pptx

TheShoulderJoint,2005;Vol.29,No.3: はじめに a 転位骨片を伴う関節窩骨折に対しては直視下に整復, 内固定を施行した報告が多いが, 鏡視下での整復固定の報告は比較的稀である. 今回我々は転位骨片を伴う関節窩骨折に腋窩神経麻痺を合併した1 例に対し,

2011ver.γ2.0

肩関節第35巻第3号

Ⅰ はじめに 柔道整復師が取り扱う骨折や脱臼などの外傷の治療の基本原則は非観血的療法である その中で通常は 観血的療法の適応となる外傷でも非観血的療法を行なう場合がある 今回は 観血的療法を選択すること が多い中手指節関節 以下 MCP関節 脱臼を伴った示指基節骨骨折に対し非観血的療法を行った症例を

< A815B B83578D E9197BF5F906697C38B40945C F92F18B9F91CC90A72E786C73>

5. 死亡 (1) 死因順位の推移 ( 人口 10 万対 ) 順位年次 佐世保市長崎県全国 死因率死因率死因率 24 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 悪性新生物 位 26 悪性新生物 350

P26 3. 肩関節複合体の関節運動肩複合体の関節運動 P27 図 15 P28 4. 肩関節複合体の運動に関与する筋肩複合体の運動に関与する筋 P28 (2) 下制 3 行目 鎖骨下神経 鎖骨下筋神経 P28 下から 1 行目長筋神経長胸神経 P29 図 17 ( 誤 ) 2

運動器検診マニュアル(表紙~本文)

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1


2 片脚での体重支持 ( 立脚中期, 立脚終期 ) 60 3 下肢の振り出し ( 前遊脚期, 遊脚初期, 遊脚中期, 遊脚終期 ) 64 第 3 章ケーススタディ ❶ 変形性股関節症ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

スライド 1

2/10 平成 23 年 12 月 31 日現在のスタッフは 常勤医 4 名 専攻医 5 名 計 9 名 名古屋大学医学部整形外科教室と連携して人事の交流を行っている 一般外来は新患 再来とも各 1 診で毎日行い 専門外来は小児整形外科 脊椎外科 関節外科 手の外科 リウマチ科 外傷科の専門医が週に

3009 及び 肩関節炎 肩の M0001,M0011,M0021,M0081,M0091,M0101, 障害 ( その他 ) M0111,M0121,M0131,M0141,M0151,M0161, 3010 M0162,M0181,M0201,M0202,M0211,M0212,

PowerPoint プレゼンテーション

末梢神経障害

椎間板の一部が突出した状態が椎間板ヘルニアです 腰痛やあしに痛みがあります あしのしびれやまひがある場合 要注意です 対応 : 激しい運動を控えましょう 痛みが持続するようであれば 整形外科専門医を受診して 検査を受けましょう * 終板障害 成長期では ヘルニアとともに骨の一部も突出し ヘルニア同様

第 43 回日本肩関節学会 第 13 回肩の運動機能研究会演題採択結果一覧 2/14 ページ / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学会 ポスター 運動解析 P / ポスター会場 第 43 回日本肩関節学

本研究の目的は, 方形回内筋の浅頭と深頭の形態と両頭への前骨間神経の神経支配のパターンを明らかにすることである < 対象と方法 > 本研究には東京医科歯科大学解剖実習体 26 体 46 側 ( 男性 7 名, 女性 19 名, 平均年齢 76.7 歳 ) を使用した 観察には実体顕微鏡を用いた 方形

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

2015 年 3 月 26 日放送 第 29 回日本乾癬学会 2 乾癬本音トーク乾癬治療とメトトレキサート 名古屋市立大学大学院加齢 環境皮膚科教授森田明理 はじめに乾癬は 鱗屑を伴う紅色局面を特徴とする炎症性角化症です 全身のどこにでも皮疹は生じますが 肘や膝などの力がかかりやすい場所や体幹 腰部

最近のおむつ諸問題 最近ではほとんど布おむつが使われなくなり 紙おむつとなりました しかし決しておむつの問題がなくなったわけではありません 最近の紙おむつをみると両サイドのテープで止める部分の幅が広いものがかなりあります このテープで股関節の両サイドをきつく止めると股関節の屈曲 ( 曲げる事 ) が

Microsoft Word 整形外科

<4D F736F F D20E9818BE58B95E599A8E381AEE7A9B4E59F8BE38281E5958FE9A18CE99B862E646F63>

33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

「             」  説明および同意書

関節リウマチ関節症関節炎 ( 肘機能スコア参考 参照 ) カルテNo. I. 疼痛 (3 ) 患者名 : 男女 歳 疾患名 ( 右左 ) 3 25 合併症 : 軽度 2 術 名 : 中等度 高度 手術年月日 年 月 日 利き手 : 右左 II. 機能 (2 ) [A]+[B] 日常作に

<4D F736F F D F96968FBD905F8C6F8FE18A5182C982E682E98EE882CC82B582D182EA81408DCF2E646F63>

がん登録実務について

CONTENTS はじめに 3 必修問題 7 第 14 回 8 第 15 回 13 第 16 回 19 第 17 回 25 第 18 回 31 第 19 回 37 第 20 回 43 第 21 回 49 第 22 回 56 第 23 回 63 解剖学 71 第 13 回 72 第 14 回 79 第

(4) 最小侵襲の手術手技である関節鏡視下手術の技術を活かし 加齢に伴う変性疾患に も対応 前述したようにスポーツ整形外科のスタッフは 日頃より関節鏡手技のトレーニングを積み重ねおります その為 スポーツ外傷 障害以外でも鏡視下手術の適応になる疾患 ( 加齢変性に伴う膝の半月板損傷や肩の腱板断裂など

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

rihabili_1213.pdf

0. はじめに 当院でこれまで行ってきたメディカルチェックでは 野球選手のケガに対するアンケート調査も行 ってきました (P.4 表 1 参照 ) アンケート調査で 肘 ( ひじ ) の痛みを訴えていた選手は 高校生で 86.7% 小学生で 41.1% でした また 小学生に対しては 超音波 ( エ


健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

健康た?よりNo106_健康た?より

PowerPoint プレゼンテーション

はじめに 緩和ケア期には四肢や顔面 体幹部に浮腫を発症することがあります また発症していたリンパ浮腫ががんの進行で悪化することもあります がんの進行を抑える抗癌剤の一部には 副作 用で重症の浮腫を来すことがあります 緩和ケア期の浮腫の要因 病態は複雑で 癌性疼痛や神経麻痺 しびれなど 浮腫を治療する

5. 乳がん 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専門 乳房切除 乳房温存 乳房再建 冷凍凝固摘出術 1 乳腺 内分泌外科 ( 外科 ) 形成外科 2 2 あり あり なし あり なし なし あり なし なし あり なし なし 6. 脳腫瘍 当該疾患の診療を担当している診療科名と 専

h29c04

IORRA32_P6_CS6.indd

1508目次.indd

< AE8C608A4F89C836362D322E696E6462>

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

BA_kanen_QA_zenpan_kani_univers.indd

リウマチ診療患者名簿

リハビリテーションを受けること 以下 リハビリ 理想 病院でも自宅でも 自分が納得できる 期間や時間のリハビリを受けたい 現実: 現実: リ ビリが受けられる期間や時間は制度で リハビリが受けられる期間や時間は制度で 決 決められています いつ どこで どのように いつ どこで どのように リハビリ

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

診療科 血液内科 ( 専門医取得コース ) 到達目標 血液悪性腫瘍 出血性疾患 凝固異常症の診断から治療管理を含めた血液疾患一般臨床を豊富に経験し 血液専門医取得を目指す 研修日数 週 4 日 6 ヶ月 ~12 ヶ月 期間定員対象評価実技診療知識 1 年若干名専門医取得前の医師業務内容やサマリの確認

6 腰椎用エクササイズパッケージ a. スポーツ選手の筋々膜性腰痛症 ワイパー運動 ワイパー運動 では 股関節の内外旋を繰り返すことにより 大腿骨頭の前後方向への可動範囲を拡大します 1. 基本姿勢から両下肢を伸展します 2. 踵を支店に 両股関節の内旋 外旋を繰り返します 3. 大腿骨頭の前後の移

手足のしびれ 脱力感 手指の使いにくさ ( ボタンがかけにくい 字を書きにくいなど : 巧緻運動障害という ) 歩きにくさが典型例での症状となる 進行例では四肢麻痺がより重症化し 膀胱障害 ( おしっこができらない 回数が多い 残尿感 失禁 ) や便秘が出現する 2) 臨床症状は 脊髄への圧迫の程度

一次サンプル採取マニュアル PM 共通 0001 Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital その他の検体検査 >> 8C. 遺伝子関連検査受託終了項目 23th May EGFR 遺伝子変異検

Microsoft Word - ①【修正】B型肝炎 ワクチンにおける副反応の報告基準について

膝蓋大腿関節 (PFJ) と大腿脛骨関節 (FTJ) Femur Tibia Patella

PT51_p69_77.indd

<4D F736F F F696E74202D208AD690DF838A D AAE90AC94C A2E >

cover

Microsoft PowerPoint - 指導者全国会議Nagai( ).ppt

[ 骨損傷の分類 (1) 外傷性骨折 正常な骨に外力が作用して骨組織の連続性が完全にまたは部分的に離断されたもの (2) 疲労性骨折 比較的軽度な負荷が繰り返し加わって発生下肢の疲労骨折は 10 代に好発 (16 歳にピークがある ) 中足骨 脛骨 腓骨 肋骨などに発生 (3) 病的骨折 骨に基礎疾

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

Transcription:

2013 年度整形 形成外科学卒試対策資料 文責 : 木下貴文 (2013 年度 6 年 ) 130904 前半部公開 130905 後半部 ( 形成外科以外 ) 公開 130906 一部修正 試験後コメントを追記 目次 A 手の外科 ( 穴埋め 11)(20 点 )... 2 B 股関節 ( 記述 3)(15 点 )... 7 C 関節リウマチ ( 多肢選択 5)(15 点 )... 12 D 骨軟部腫瘍 ( 列挙 5 記述 1)(15 点 )... 17 E 股関節 下肢の疾患 ( 正誤判定 10)(10 点 )... 20 F. 脊椎疾患 ( 記述 3)(15 点 )... 25 G. 肩 膝関節 ( 正誤判定 5 空欄補充 5)(10 点 )... 28 形成外科記述 4( は未着手 ) はじめに整形外科は大所帯で 内部でリウマチ班や腫瘍班など專門のグループに分かれていますが 各グループが出題するというやり方のようです 各分野の専門性が高く 知らないと答えられない問題が多いですね この資料では 2012 年卒試に対して解答と解説をしていこうと思います 私事ですが直前の週末から週明けまでずっと用事があって時間がとれず 試験 2 日前の夜中から資料作成をはじめました 普通に進めていると終わらないことは目に見えているので 今回はかなり略式のスタイルで書いていきたいと思います 試験を受けてみた感想記述式は別として 過去問の内容を少し変えて ( たとえば正誤判定を穴埋めにするなど ) 出題するパターンが多かったです 過去問で問われた内容を 周辺知識とともに理解しておくことが有益だと思います 主な参考資料 標準整形外科学第 10 版 医学書院 今日の診療プレミアム Vol.20 医学書院 4 年講義配布プリント 5 年ポリクリ配布プリント名古屋大学整形外科教室の 当院で扱う主な疾患 のページ 1

2013 年度整形外科卒試対策資料 A 手の外科 ( 穴埋め 11 11)( )(20 点 ) 以下の設問の () 内に適切な語句を入れなさい 1. 最も頻度の高い絞扼性神経障害は ( ) で 女性に多く認める傾向がある ( ) 神経の 障害で 代表的な症状は夜間から起床時の手のしびれ 疼痛である 手根管症候群 正中 手根管症候群 carpal tunnel syndrome 手根管は手根骨と横手根靭帯に囲まれたトンネルで 限られた空間を 9 本の指の屈筋腱と正中神経が通過している このため手根管の解剖学的狭小 ( 特に女性 ) 物理的負荷 炎症 浮腫などによって容易に手根管内圧が上昇し 正中神経の圧迫性ニューロパチーが起こる 右図 : 橋本クリニックドクターズノート ttp://www.hashimoto.or.jp/drnote/2008/12/post- 2.html 手根管症候群を純粋な 整形外科的疾患 と考えるのは少し無理があると思います 手の過度の使用もリスク因子ですが 多くの患者は 糖尿病 腎不全による血液透析 妊娠や甲状腺機能低下などによる浮腫などの病態を背景に 手根管のあたりに何か溜まったり腫れたりして発症するのです だからこそ中年女性に多いのだし また問題文の 夜間から起床時の手のしびれ は 関節リウマチの 朝のこわばり と同じで 寝ている間に何か溜まるから朝方に症状が出るのです 手をぷるぷる振ると改善することもあります だから手根管症候群は 半分くらいは内科系全身性病態の一発現形態である というのが私の理解です 主な絞扼性末梢神経障害の整理 疾患名 障害神経 狭窄部 症状 手根管症候群 正中神経 屈筋支帯と手根骨 1-3 指の感覚異常母指球筋萎縮 ( 猿手 ) 肘部管症候群 尺骨神経 内上顆 尺側手根屈筋の 尺側の手指のしびれ ( 高位 ) 上腕頭と尺骨頭 骨間筋と小指球筋の萎縮 Guyon 管 ( 尺骨 尺骨神経 手関節 鷲手 神経管 ) 症候群 ( 低位 ) 胸郭出口症候 腕神経叢 第 1 肋骨 鎖骨 斜角筋 尺側の腕のしびれ 頚部や前 群 鎖骨下動脈 胸部の痛み 2. 手根骨骨折の中でもっとも多いものは ( ) 骨折であり 偽関節になりやすい 2

舟状骨 舟状骨骨折は手根骨骨折の中で 70% 以上を占めます 舟状骨は下図の通り 母指側 橈骨側にある骨で 手関節伸展位で手をついたときに発症する他 パンチをする格闘技による圧力で骨折する場合もあります 臨床症状が軽度で また通常の2 方向の X 線では見逃されやすいため 診断が遅れて偽関節になることが比較的多いことでも知られます 舟状骨骨折を疑った場合は 4 方向で撮影します 偽関節 nonunion は 英語名称で分かる通り 骨折後に骨がくっつきませんでした ということ 様々な悪条件で骨癒合が妨げられ 骨癒合機転が停止してしまった状態です 1 大菱形骨 2 小菱形骨 3 舟状骨 4 有頭骨 5 月状骨 6 有鉤骨 7 三角骨 8 豆状骨 a: 指骨 b: 中手骨 c: 末節骨 d: 中節骨 e: 基節骨 手根骨 医学大辞典第 2 版 医学書院 3. 高齢女性が転倒して生じやすいものは ( ) 骨折であり 高齢社会で問題となる ( ) で 生じやすい代表的な骨折である 大腿骨頸部骨折 骨粗鬆症 高齢で運動機能や認知機能が低下すると転びやすい また高齢者 特に女性は骨粗鬆症が進んでいることが多いから 転倒や軽度の外力で骨折しやすい こうした特徴から 高齢者では橈骨下端骨折 大腿骨頸部骨折 椎体圧迫骨折が特に多いとされます 本問は 転倒 骨粗鬆症 からは橈骨下端骨折でも OK ですが 代表的 という文言から 大腿骨頸部骨折を答えるのが妥当でしょう 高齢者の大腿骨頸部骨折は患者の ADL 余命に与える影響が非常に大きく 寝たきりになることが多いことから 骨折後の予後は平均して1 年くらいと言われています 4. 肘の離断性骨軟骨炎とは別名 ( ) 肘と言われ 若年者に見られる 野球肘 離断性骨軟骨炎 Osteochondritis dissecans 12 15 歳の骨端線閉鎖前後の男子に好発 3

2013 年度整形外科卒試対策資料 骨端部の凸面で 骨軟骨片が母床より剥がれる 当初は骨端部とまだ繋がっており軽症状だが 離断が進んで骨軟骨片が不安定化すると関節腫張や運動時痛 運動制限などを生じる 進行して骨端部から遊離して 関節ねずみ となると症状はさらにひどくなる 肘 膝 足 股関節の順に好発 原因不明の発症も多いが 肘では少年野球の投球しすぎで起こることが多いから 肘の離断性骨軟骨炎を野球肘という 5. 分娩麻痺とは出産時の ( ) の損傷のことで 上肢の運動障害を呈する 腕神経叢 分娩時に肩や上肢を牽引することで腕神経叢が障害され 上肢の麻痺が生じるもの 巨大児 の頭位分娩や 骨盤位分娩がリスクになる 分娩技術の改良や帝王切開の頻度の増加により 重度の損傷例は減少している 6. キーンベック病は ( ) の骨壊死である 月状骨 キーンベック病 Kienboeck disease 月状骨軟化症とも呼ばれ 血流障害による月状骨の無腐性壊死 ( 虚血性壊死 ) である Kienboeck 先生が 1910 年に報告した 月状骨は尺側近位にある手根骨です ただし主に橈骨と関節をつくります 手を酷使する成人男性の利き手に好発 繰り返すストレスや微小骨折により血行障害が生じ 月状骨の軟化や圧潰が起こるとされる 整形外科的疾患のリスク部位としての手首ここまでで既に 手根管症候群 舟状骨骨折 Kienboeck 病 という手首回りの疾患が3 つ出ました 手首は解剖学的にボトルネック構造になっているのに加えて 手関節は可動性が大きくまた手をつくなどのストレスも多いため この周辺で特に圧迫や阻血による障害が多いようです 虚血性骨端壊死 ( 骨端症 ) 骨端部の阻血性 無腐性壊死の総称 人名がついた疾患が 30 種類以上あるが 代表的なものは以下 大腿骨頭のペルテス病 月状骨軟化症 ( キーンベック病 ) 足舟状骨のケーラー病 脛骨粗面のオズグッド-シュラッター病 離断性骨軟骨炎 7. ボールにぶつける等の外傷で生じる槌指は ( ) 関節の伸展障害を呈する DIP( 遠位指節間関節 ) 4

槌指 ( ついし つちゆび Mallet finger) 手指の DIP 関節 ( 第 1 関節 ) が曲がったまま自力では伸展できず 腫れもあるため木槌 (mallet) のようにみえる状態 突き指の一種で ボールなどが指先に当たったときに起こる (1) 指を伸展させる伸筋腱の切断 (2)DIP 関節内の骨折のいずれかで起こる 日本整形外科学会 マレット変形 ( 槌指 ) より改変引用 ttp://www.joa.or.jp/jp/public/sick/condition/m allet_finger.html 手指関節の整理 DIP(distal) 遠位指節間関節 ( 第 1 関節 ) OA( ヘバーデン結節 ) 槌指 ( 野球 ) PIP(proximal) 近位指節間関節 ( 第 2 関節 ) RA バレーやバスケ MP(metacarpal) 中手指節間関節 ( 第 3 関節 ) Skier s Boxer s 8. 小児期の肘の骨折等の原因で外反肘となり発症しやすい絞扼性神経障害は ( ) であり ( ) 神経の障害である 肘部管症候群 尺骨 肘の骨折 外板肘などから肘部管症候群が連想できればいいと思います 肘部管症候群 cubital tunnel syndrome 肘関節内側の肘部管で生じる 尺骨神経の絞扼性障害 以下の2つの原因が多いが 近年は前者が減り後者が増加している 1 小児期の上腕骨外顆骨折後に 後遺症として外反肘となり 成人後に麻痺が発症するもの ( 遅発性尺骨神経麻痺 ) 2 変形性肘関節症によるもの 9. 主に中高年の女性にみられる指の変形で DIP 関節に生じるものは ( ) である ヘバーデン結節 ( 指まがり症 ) DIP 関節の変形性関節症 手指 DIP 関節背側に硬い小結節を触知し イギリス人医師 Heberden にちなんで命名された 5

2013 年度整形外科卒試対策資料 ほとんどは閉経後の女性に発症 男女比 1:10 10. Skier s thumb は母指 ( ) 関節の側副靭帯損傷である MP 関節 ( 中手指節間関節 ) 競技種目ごとに特徴的な急性外傷 慢性外傷はたくさんあります 主な急性外傷のみ下に整理しておきますが いちいち覚えていたらきりがないですね スキーストックを握ったまま転倒するところを想像して PIP や DIP でなく母指付け根の MP 関節が障害されそうだ という程度の理解でいいのではないでしょうか 競技種目別に頻度の高い手の急性外傷野球指 ( 槌指 マレット指 ) 硬いボールの突き指 伸筋腱の断裂または骨折による DIP 関節の伸展障害 Skier s thumb スキーでストックを握ったまま転倒して手をついた時に生じる 母指 MP 関節の尺側側副靱帯損傷 Rugby finger ラガージャージをつかんだ状態で引っ張られることで生じる 深指屈筋腱皮下断裂による DIP 関節の屈曲障害 PIP 関節損傷バレーボールやバスケットボールなど比較的大きなボールでの突き指で生じる 側副靭帯 掌側板の損傷や付着部骨折 Boxer s knuckle 素人が拳で固いものを殴打したときに生じる MP 関節部伸筋腱脱臼 三角線維軟骨複合体ラケットスポーツなど道具を握っている手に回旋や尺屈ストレスが (TFCC) 損傷かかることで生じる手関節捻挫 11. 屈筋腱損傷の治療には手術とその後の ( ) が必要である 指の運動訓練 手指の屈筋腱 ( 指を屈曲させる腱 ) や伸筋腱の損傷の場合 治療は第一に腱の縫合で 縫 合できない場合に腱移植を考える 術後は外固定の上で早期リハビリテーション ( 指の運動訓 練 ) を行い 腱の周囲への癒着を防ぐ かつては 腱の縫合後に一定期間固定して腱の癒合を待ち そのあとに運動を行う治療が主体だったが 周囲への腱の癒着の問題があり 腱縫合を諦めて腱移植を行う場合もあった だが現在では できるだけ腱縫合を行い 術後は注意深く固定しての運動療法により 指を動かしながら治す方法が一般的になってきている このような治療方針の変更の経過があるから 術後の 指の運動訓練 を特に強調するための出題と思われる 指屈筋腱損傷の場合は 手関節と MP 関節を屈曲位に固定し 指の自動伸展とゴムバンドに寄る他動屈曲を行う方法 (Kleinert 法 ) が広く用いられている 6

B 股関節 ( 記述 3)(15 点 ) 1. 大腿骨近位部骨折の分類と治療法についてのべよ 学年解答は 随分と詳しく書かれていて感心します 整形外科志望ならばこれくらい知っておくべきなのでしょうが ちょっと情報量が多いですね ここでは 概要をつかむことを目的に もっとシンプルな整理を試みてみましょう 概要 ( 兼 解答例 ) (A) 主に交通事故など高エネルギー損傷による骨折 (1) 大腿骨頭骨折股関節脱臼骨折に伴って生じる 治療はまず徒手整復を行い 骨片の整復状態がよければ保存療法とする 整復が不良なら骨片の切除または観血的整復固定を行う 頚部骨折 寛骨臼骨折を伴う場合は そちらの治療も同時に行う (2) 大腿骨転子下骨折大腿骨の中で小転子より遠位 5cm の範囲の骨折 骨折型の分類には Seinsheimer の分類が用いられる 多くの場合は手術治療になり 正常なアラインメントで内固定を行う Seinsheimer の分類は細かいのでパス 骨折部に転位がなければ ( 元の形状のままズレていなければ ) 保存的治療が可能な場合がある しかし牽引下の長期安静が必要で骨癒合も得にくいため 手術できない全身状態の悪い患者以外には適用されない (B) 主に高齢者の低エネルギー損傷による骨折 (3) 頚部骨折 ( 内側骨折 関節内骨折 ) Garden 分類がよく用いられる 転位が少ないとき (Garden Ⅰ Ⅱ stage) は 積極的にスクリューでの内固定による骨接合術を行い 早期離床をはかる 転位が大きいとき (Garden Ⅲ Ⅳ stage) や高齢者で骨粗鬆症が進んだ場合は人工骨頭置換術を用いることが多い (4) 転子部骨折 ( 外側骨折 関節外骨折 ) Evans 分類に従って安定型と不安定型に分類されるが ほぼ全例で骨接合術を選択する 大腿骨近位部骨折は正直なところ面倒です 部位別に分けて その各々についてさらに細か い分類があったりします 細かいことは専門医にまかせて 概要だけつかんでおけばいい というの が私のスタンスです これは整形外科の試験なので それでいいかどうかは知りませんが 大腿部骨折は臨床的に大腿骨近位部骨折 骨幹部骨折 遠位部骨折に分類される 大腿骨近位部骨折はさらに 関節面に近い方から1 骨頭骨折 2 頸部骨折 3 頸基部骨折 4 転子部骨折 5 転子下骨折に分類される 15( 端の2つ ) は 交通事故など高エネルギー損傷によることが多い 234( 真ん中の3つ ) は 高齢者の転倒など低エネルギー損傷によることが多い 3は頚部 転子部の移行部 または両者にまたがった骨折 7

2013 年度整形外科卒試対策資料 右図 : 野々宮廣章 大腿骨近位部骨折 今日の診断指 針第 6 版 医学書院より引用 治療の選択肢は主に次の3つです 1 徒手的整復による保存的治療 骨折部位を物理的にくっつけて骨癒合を待ちます 2 観血的整復固定 ( 骨接合術 ) スクリューや髄内釘を骨の内部に挿入する内固定を行うことが多い 3 人工骨頭置換術 高齢者や骨粗鬆症の進行例 骨折部粉砕などで骨癒合が期待できない場合に行います 解答例は 治療法の選択に関連する最低限のみ説明しました 解剖学的な位置関係と受傷機転を整理して なぜこの場合にこの治療法を行うか ということを考えていくと有益だと思います 大腿骨頭骨折に対する Pipkin 分類と治療 大腿骨頭骨折のみ もう少し詳しく書いてみましょう 大腿骨頭骨折の評価と治療の選択に は Pipkin 分類を用います 定義 治療 TypeⅠ 骨折が骨頭窩より遠位 まず徒手整復を行い 骨片の整復状態がよければ保存 TypeⅡ 骨折が骨頭窩より近位 療法 整復が不良なら typeⅠは切除 typeⅡは観血的整 復固定を行う TypeⅢ Ⅰ Ⅱに加えて頚部骨折を伴う 頚部骨折と骨頭骨折の骨接合を行う 粉砕の高度な場合や高齢者では一次的人工骨頭置換を考慮する TypeⅣ Ⅰ Ⅱに加えて寛骨臼骨折を伴う 寛骨臼骨折の治療を行い 骨頭骨折はⅠ Ⅲに準じる まず解剖学的用語が不安ですよね 下は復習用です 骨頭骨折は高エネルギー損傷が多い ( 受傷者が比較的若い ) ということ また解剖学的にも頚部よりは癒合がしやすいということで 保存的治療の選択肢もあります 一方で 粉砕が激しい場合や高齢者では人工骨頭置換術まで行く場合もあり 状況に応じて治療法を使い分けることになります また受傷機転の関係で 頚部骨折や寛骨臼骨折を伴う場合もあります Type 分類にはこれも入っていますが これらはそれぞれ 頚部骨折 寛骨臼骨折 として処理されると考えて 深入りしないでいいと思います 寛骨臼骨折は骨盤骨折なので また面倒な話がたくさんありますから! 8

左図 :1 大腿骨頭 2 大腿骨頭窩 3 大腿骨頸 4 大転子 5 転子間稜 6 殿筋粗面 14 恥骨筋線 15 小転子右図 : 右寛骨 A: 内側より B: 外側より 1 上前腸骨棘 2 下前腸骨棘 3 寛骨臼 4 閉鎖孔 5 坐骨結節 6 小坐骨切痕 7 坐骨棘 8 大坐骨切痕 9 下後腸骨棘 10 上後腸骨棘 11 腸骨稜 12 腸骨窩 13 恥骨結節 a: 恥骨 b: 坐骨結 大腿骨 医学大辞典第 2 版 医学書院 寛骨 医学大辞典第 2 版 医学書院 折に関しては多くの分類法があるが Evans 分類に従って安定型と不安定型に分類されることが多い. 2. 変形性股関節症の診断をのべよ 変形性股関節症について以下に整理します 診断をのべよ なので 診断基準に加えて 問 診や身体所見なども解答に含めるといいと思います 概念 変 形性関節症は 様々な原因により起こる関節軟骨の変性 摩耗に続発し 骨の変形 破壊と滑膜の炎症が起き 疼痛や運動障害などを来す疾患 整形外科では 膝 肘 股関節 など 好発で機能的に重要な部位を別々に扱うことが多い 疫学 成 人に発生する股関節疾患のうちで最も頻度が高い 高齢者に多いが若年でも起こりうる 性別では女性に多い 問診 本 邦の変形性股関節症の多くは 原疾患に続発する二次性である 問診で次のような点を確認する 小児股関節疾患の既往歴 先天性股関節脱臼 Perthes 病 大腿骨頭すべり症など 外傷歴 特に股関節の外傷性脱臼骨折 労働やスポーツによる股関節の負荷 逆に 上記のような点がリスク因子となるから 他の変形性関節症と異なり若年発症が比較的多いのです 症状 鼠 径部 臀部 膝周囲の疼痛で緩やかに発症し 徐々に悪化することが多い 進行についれて歩行困難や関節可動域制限などが出現 9

2013 年度整形外科卒試対策資料 身体診察 運動時の鼠径部痛 跛行 特に Trendelenburg 徴候 ( 墜落性跛行 ) 歩行時に患肢に力をかけたとき 骨盤を固定する力が弱いために健側の骨盤が下降 ( 墜落 ) し 上体は患側に傾く 股関節の可動域制限 ( 特に内旋制限 ) 診断 単純 X 線 ( 両股関節で 各 2 方向 ) が最も重要 関節裂隙の狭小化 軟骨下骨の硬化像 関節面の変形 骨棘形成などをみる 血液生化 赤沈 (ESR)<20mm/ 時未満 化膿性関節炎や関節リウマチなどを鑑別するため MRI T1 強調でさまざまな異常像をみるが 大腿骨頭壊死症の除外のために有用 国際的にコンセンサスの得られた診断基準はないが 米国リウマチ学会による基準が代表的 米国リウマチ学会による変形性股関節症の基準 (1) 股関節に痛みがある ( 必須 ) (2)1 関節裂隙の狭小化 2 大腿骨頭あるいは臼蓋の骨棘形成 3 赤血球沈降速度 (ESR)< 20mm/ 時の 3 項目のうち 2 項目以上が該当する 治療 軽 症例では 安静 免荷 体重コントロールなどを指導し NSAIDs を処方 重症例では 手術治療 ( 骨切り術 人工骨頭置換術 ) を考慮する 3. 特発性大腿骨頭壊死症の診断基準をのべよ 以下整理していきます 解答は診断基準のところだけでいいでしょう 大腿骨頭壊死症の分類 症候性 : 壊死の原因が明らかなもの 外傷 大腿骨頭すべり症 骨盤部放射線照射 Perthes 病など 特発性 : 壊死の原因が明らかでないもの ステロイド性 ( ステロイド治療歴あり ) アルコール性 ( アルコール多飲歴あり ) 狭義の特発性 特発性大腿骨頭壊死症 大腿骨頭を栄養する血管の阻血性変化によって 大腿骨頭内に生じる骨壊死 骨髄壊死である 初期には無症状だが 壊死範囲が広く骨頭の圧潰が生じると股関節痛が生じる 10

大腿骨頭は関節面なので 栄養血管は頚部被膜から進入する この点が解剖学的な弱点となって Perthes 病 大腿骨頭壊死などの病態が起こる 公費対象の特定疾患である 特発性大腿骨頭壊死症は 好発年齢と性別は 働き盛りの男性 で 好発は 30-60 歳で男女比 2:1 診断 治療には厚生労働省の研究班による診断基準および病期 病型分類を用いる 診断基準 X 線所見が最も重要だが MRI を追加することが多い 骨シンチ 骨生検は適宜行う 以下の 6 項目のうち 2 項目以上を満たせば診断できる 1 X 線所見 : 関節裂隙狭小化を伴わない骨頭圧潰 2 X 線所見 : 骨頭内帯状硬化像 3 X 線所見 :crescent sign( 骨頭軟骨下骨折線 ) 4 骨シンチグラム : 骨頭での cold in hot 像 : 取り込みがない壊死巣 (cold) の周囲を 骨芽細胞による修復反応層 ( 取り込み増加 hot) が囲む所見 5 骨生検標本 : 骨壊死像 6 MRI:T1 強調像での骨頭内帯状低信号域 参考までに X 線所見を示します 黒矢印は骨頭の帯状硬化像で 白矢印では軽度圧潰あり ( 正直よく分かりません ) 関節裂隙は狭くなってないようです 神宮司誠也 特発性大腿骨頭壊死症 今日の診断指針第 6 版 医学書院より改変引用 治療 厚生労働省の病期 病型分類に従って治療方針を決定する ( 省略 ) 変形性股関節症と異なり 保存的治療は効果があまり期待できない 多くの症例で骨切り術や人工骨頭置換術などの外科治療に進む 11

2013 年度整形外科卒試対策資料 C 関節リウマチ ( 多肢選択 5)( )(15 点 ) この年度の問題は ここ 2-3 年の最新のトピックを扱う問題ばかりです 多くの教科書はあまり役に立ちません 講義やポリクリ時のプリントなどを見直すといいと思います 1 ヨーロッパおよび米国のリウマチ学会が提唱した 2010 年改訂関節リウマチ分類基準に関連して正しいものを 2 つ選べ a. 関節腫脹は 1 つでも関節リウマチと分類しうる b. 症状の持続期間として 3 か月は必須である c. 抗 CCP 抗体は重要な検査項目である d. 関節リウマチの特徴的な X 線所見は必須である e. 炎症反応 (CRP 赤沈 ) は考慮に入れない 解答 :a c 2010 年に発表された ACR/EULAR の RA 分類基準を右に示す 1 ヶ所以上の滑膜炎 ( 他の疾患では説明不可能なもの ) ただし DIP CMC 第 1MTP 関節は腫張関節数から除く スコア 6 以上で RA と診断 日本リウマチ学会 関節リウマチに対する ACR/EULAR による新たな関節リウマチ分類基準 より改変引用 ttp://www.ryumachi-jp.com/pdf/ra_acr_eular2010.pd f 下に従来の分類基準 (1987 年 ) を示します 両者を比較すると RA と判定する基準が随分と緩くなったことが分かります 旧基準では 症状が 6 週間以上続く という条件がついている項目が多く 発症から少なくとも 6 週間程度は経過を観察してから慎重に診断します 新しい基準では たとえば 2 週間前から手指の PIP 関節の1つに腫張がある 抗 CCP 抗体低値陽性 CRP 上昇 これだけで 6 点を超えて RA の治療を開始できます スコア 腫張関節数 =1 0 >1 大関節 1 1-3 小関節 2 4-10 小関節 3 >10 大小問わず 5 リウマトイド因子 or 抗 CCP 抗体 陰性 0 低値 2 高値 3 罹病期間 <6 週間 0 6 週間 1 急性炎症タンパク (CRP or ESR) 正常 0 異常 1 こうした急激な変化の背景には 関節リウマチの病態や治療戦略の大きな転換があります 以前は確定診断を慎重に行い 治療も副作用を考慮して少量からはじめて漸増していく という考え方が主流でした 現在では できるだけ早期に診断し 最初から強い治療を行うことで 関節破壊など病勢の進行を抑えることができることが分かり 治療戦略がかなり変わりました 12

今でも 発症からの期間が長く 漫然とステロイドを投与され 寛解と増悪を繰り返しながらだんだんと関節破壊が進行し ADL が低下している患者さんが多数いますが 新しい治療戦略では 関節破壊がほとんどない状態での寛解の維持が望めるようになっています また生物学的製剤 ( 抗 TNF-α 抗体など ) の登場で 最近では寛解期の休薬が話題になるほどです 2010 年の分類基準は以上のような背景を理解した上で眺めましょう 本問もこのポイントに関連して選択肢が作られています 関節破壊が進行する前に診断したいから ある程度進行しないと出ない X 線所見は不要 また関節腫脹が1つしかなくても 血液検査で関節リウマチによる炎症の存在が分かれば診断可能なのです 山本一彦 関節リウマチ 新臨床内科学第 9 版 医学書院 2. 関節リウマチ治療における生物学的製剤に関連して正しいものを選べ 正しいものをすべて選べられたら正解とする a. B 型肝炎のスクリーニングは重要である b. TNFα 阻害薬はメトトレキサートとの併用療法が推奨されている c. 潜在性結核患者についてはリファンピシンの予防投与が推奨されている d. 2 つの生物学的製剤を組み合わせた治療が推奨されている e. 関節破壊抑制効果に対するエビデンスはない 解答 :a b 関節リウマチの治療薬の中心は抗リウマチ薬 (DMARD) 特に MTX( メトトレキサート ) だが 近年は抗 TNFα 抗体などの生物学的製剤が登場し より強力な炎症抑制効果により関節リウマチの予後を改善してきた 日本では 2003 年に抗 TNFα 抗体が認可され 2013 年現在で 8 種類の生物学的製剤が関節リウマチに対して適用がある 13

2013 年度整形外科卒試対策資料 関節破壊抑制効果については 特に小関節について複数のエビデンスがある 現在の多くの生物学的製剤は 第一選択薬の MTX との併用で効果があるとされる ( 抗 TNF-α 抗体のレミケード エンブレルなど ) 一方で生物学的製剤単独での効果が認められているものもある ( 抗 IL-6R 抗体のアクテムラなど ) 生物学的製剤を複数組み合わせる治療は今のところ一般的ではない 効果が強いとは免疫反応を強く抑えることを意味し 副作用として問題となっているのが感染症の発生である 特に細菌性肺炎 ニューモシスチス肺炎 結核が問題となる 感染症が発生した場合は 投与を中止し感染症の治療を優先する 陳旧性結核の再燃や B 型肝炎既往感染の再燃の報告がある 既感染のスクリーニングを実施し 既感染者には抗結核薬イソニアジド (INH) B 型肝炎治療薬の核酸アナログの予防投与を行うことの効果が認められている 参照 : 大阪大学医学部免疫アレルギー内科 現在使用可能な生物学的製剤一覧 ttp://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/imed3/lab_2/page4/biologics.html 3. 関節リウマチの治療中の感染症として結核は重要である 結核についてただしいものを 3 つ選べ a. TNFα 阻害薬により発生頻度が増える b. 感染症法の 2 類感染症に分類され 診断確定したら直ちに届け出る必要がある c. 潜在性結核の検査としてクワォンティフェロンが有用である d. 結核の既往がある患者は TNFα 阻害薬の使用は禁忌である e. 70 歳以上の高齢者では既感染の割合は 40 歳以下の若年者より低い 解答 :a b c a. 生物学的製剤 ( 抗 TNF-α 抗体 ) の副作用として感染症が問題になっている b. 2007 年施行の改正感染症では 結核予防法が統合されて結核は2 類感染症となり 届け出も 2 日以内 から ただちに に変わった c. クォンティフェロン (QFT) は ツベルクリン反応と異なり BCG 接種の影響を受けず 結核菌感染の既往に対する特異性が高い 感度もそこそこ高く 潜在性結核のスクリーニングに有用である 結核菌特異蛋白刺激性遊離インターフェロン-γ ( クォンティフェロン (R)) は 全血を結核菌特異抗原とともに培養し 活性化された T リンパ球が産生するインターフェロンγを定量することで 結核菌に対する細胞性免疫反応を検出する d. ガイドラインの 投与禁忌 の項目には 3. 結核の既感染者 ただし 本剤による利益が危険性を上回ると判断された場合には 必要性およびリスクを十分に評価し 慎重な検討を行った上で本剤の開始を考慮する 14

とある そこで文言上はこの選択肢は としてもいいと思う ただし 結核の既往が疑われる場合 に 抗結核薬イソニアジド (INH) の予防投与を行いつつ生物学的製剤を投与することが認めら れている a b c の内容はより明確に正しいので 出題意図を考慮して d は外す e. 年齢別の結核既感染者は 結核が蔓延していた時期に成長した高齢者では多い 結核 対策の一応の成功もあり若年者では少なく 30 歳以下の 90% 以上は結核未感染である 参照 日本リウマチ学会 関節リウマチ (RA) に対する TNF 阻害薬使用ガイドライン (2012 年 改訂版 ) ttp://www.ryumachi-jp.com/info/guideline_tnf_120704.html 4. 非ステロイド性抗炎症薬 (NSAID) について正しいものを 2 つ選べ a. 生物学的製剤との併用は禁忌である b. プロトンポンプインヒビターは NSAID 潰瘍の予防に有用である c. 満月様顔貌 ( ムーンフェイス ) d. 関節リウマチにおける関節破壊抑制効果がある e. 腎機能障害 解答 :b 関節リウマチの治療薬は (1) 関節リウマチの治癒を目指す抗リウマチ薬 (MTX など ) や生物学的製剤 (2) 疼痛改善や短期的な管理を目的とする NSAIDs ステロイドに大きく分けられる a. 抗リウマチ薬 生物学的製剤に加えて NSAIDsを補助的に使用できる b. e. NSAIDs による COX-1 阻害により 胃粘膜の粘液産生低下による胃粘膜障害 腎糸球体血流量低下による腎障害 出血傾向などの副作用がある COX-2 選択性の高い薬 剤ならこれらの副作用は起こりにくい 胃粘膜障害に対しては プロトンポンプ阻害薬や H2 受容 体拮抗薬の併用が有効 NSAIDsによる出血傾向は 血栓予防という意味ではメリットでもある ( たとえば 心筋梗塞 脳梗塞の発症予防のためのアスピリン投与 ) c. 満月様顔貌はステロイドの副作用 d. NSAIDsは 疼痛やこわばりなどの症状緩和のために補助的に使用される 5. メトトレキサートは関節リウマチの治療薬として重要である メトトレキサートに関して正しいものを 2 つ選べ a. 速やかに胆汁に排泄される b. 催奇性もなく妊娠についても安全な薬剤である c. 現在 関節リウマチの治療第一選択薬としては使用できない d. 成人では週に 16mg までが承認用量である 15

2013 年度整形外科卒試対策資料 e. 葉酸投与は肝障害予防に有効であるとされる 解答 :d e メトトレキサート (MTX) は 葉酸代謝拮抗剤に分類される抗癌剤 抗リウマチ薬である 葉酸は核酸合成の補酵素として用いられる 葉酸代謝に関わる酵素を阻害することで ( いわば人為的に葉酸欠乏状態を引き起こすことで ) 細胞分裂が盛んな細胞の DNA 合成を障害することで効果を発揮する 以前は MTX の適応は NSAIDs および他の抗リウマチ薬により十分な効果が得られない場合に限る だったが 厚生労働省は 2011 年に以下の変更を承認した 1 第 1 選択薬としての使用を可能とし かつ 2 1 週間あたりの上限投与量を現行の 8mg から国際水準の 16mg に引き上げる 日本リウマチ学会は投与量引き上げを 10 年程前から訴えてきた なかなか承認されなかったのは MTX は抗癌剤としても使うような副作用の激しい薬剤なので 安全性確保のために慎重を期したという側面もある 以上より c. d. a. 主な薬物排泄経路は腎 尿か肝 胆道 便だが MTX は腎排泄である b. 葉酸欠乏で二分脊椎などの奇形リスクが上昇するため妊婦には禁忌 e. MTX の重篤な副作用として骨髄抑制 間質性肺炎 肝障害などがあり 注意深いモニターが必要 骨髄抑制と間質性肺炎は発症したら休薬だが 肝機能障害の場合は葉酸投与を行いつつ投与続行という選択肢がある 16

D 骨軟部腫瘍 ( 列挙 5 記述 1)( )(15 点 ) 次の設問に答えなさい ただし設問 7 は文章で説明しなさい 1: 骨に転移する頻度の多い癌を 3 つ挙げなさい 乳癌 肺癌 前立腺癌 骨腫瘍登録 (1964-1995) によると 全骨腫瘍 62 087 例中 骨転移が約 22%( 最多 ) 骨転移の原発巣の内訳は 乳癌 22% 肺癌 21% 前立腺癌 8% 腎癌 8% 胃癌 7% などとなっている 転位の好発部位は脊椎 腸骨 大腿骨 肋骨など 以下で この順位となる理由を少し考えてみます 参考までに臓器別罹患数 (2008 年 ) を示します 消化器系の癌は 直腸癌を除き肝転移が多い 肝癌からは肺転移が多い よって肺癌は相対的に多くなる 乳癌や前立腺癌が多いのは 罹患者数も多いことの他に 一般に進行が緩徐で 無症状で長期間経過して全身に転移することが多いことも理由である 前立腺癌と腎癌は ( なぜか?) 骨転移の頻度が非常に高い 2008 年の臓器別罹患数 ( 全国推計値 ) 1 位 2 位 3 位 4 位 5 位男性胃肺大腸前立腺肝臓女性乳房大腸胃肺子宮男女計胃大腸肺乳房前立腺 国立がん研究センター 最新がん統計 より表の一部を引用 ttp://ganjoho.jp/public/statistics/pub/statistics01.html 2: 小児 (15 歳以下 ) に発生することの多い原発性悪性骨軟部腫瘍を 3 つ挙げなさい 骨肉腫 Ewing 肉腫 横紋筋肉腫 4 年 骨軟部腫瘍 プリントより この 3 つ以外は挙げにくい 一般に骨軟部肉腫は化学療法へ の感受性が低いですが この 3 つは例外的に感受性が高いグループでもあります 3: 骨肉腫に使用することの多い抗がん剤を 3 種挙げなさい アドリアマイシン メトトレキサート シスプラチン イホスファミド 17

2013 年度整形外科卒試対策資料 骨肉腫に対しては 手術 ( 広範切除 ) と前後の補助化学療法を行う 骨肉腫に対しては以下の4 剤が有効とされ 複数を組み合わせた多剤併用療法を行う アドリアマイシン (ADM): 抗腫瘍抗生物質 メトトレキサート大量療法 (HD-MTX): 葉酸系代謝拮抗薬 シスプラチン (CDDP): 白金製剤 イホスファミド (IFO): アルキル化薬 NECO-95J プロトコールでは 術前に HD-MTX ADM CDDP を投与し 切除腫瘍の病理学的効果判定によって 術後化学療法に IFO を追加するかどうかを決める 4: 骨軟部腫瘍あるいは腫瘍類似疾患の中で 多部位に発生する ( 多発 ) ことが稀ではない腫瘍 ( あるいは疾患名 ) を 1 つ挙げなさい 骨軟骨腫 骨髄腫 神経線維腫症など 解答に迷ったら その名の通りの多発性骨髄腫を挙げておけば文句は言えないはず 多くの骨軟部腫瘍は単発のものが多いですが 一部は良性でも多発性の病変を作ることがあります 画像から腫瘍の種類を考える際に 単発か多発性かによって候補が絞れることがあります 骨腫瘍 : 骨軟骨腫 ( 良性 ) 内軟骨腫 ( 良性 ) 線維性骨異形成 ( 腫瘍類似疾患 ) 骨髄腫 ( 悪性 ) など 軟部腫瘍 : 神経線維腫症 ( 良性 ) 血管腫 ( 良性 ) など 腫瘍類似疾患腫瘍のように自律的に発育するわけではないが 病理学的または臨床的に腫瘍と類似した疾患の総称 過誤腫 ( 先天性組織奇形 ) 結節性筋膜炎 ( 炎症性疾患 ) 線維腫症 ( 増殖性病変 ) などが代表的 骨軟部では骨嚢腫 ガングリオンなど 5: 原因融合遺伝子が同定されている原発性悪性骨軟部腫瘍を 2 つ挙げなさい Ewing 肉腫 滑膜肉腫など 日本整形外科学会 軟部腫瘍診断ガイドライン に掲載されている 診断的意義が大きい特異的融合遺伝子は以下のとおり Ewing 肉腫以外は 専門家以外は名前を知らないような疾患ばかりです PNET/Ewing 肉腫 :EWS/FLI-1 EWS/ERG など 淡明細胞肉腫 :EWS/ATF 胞巣型横紋筋肉腫 :PAX3/FKHR PAX7/FKHR 粘液型 円形細胞型脂肪肉腫 :TLS/CHOP EWS/CHOP 滑膜肉腫 :SYT/SSX1 SYT/SSX2 日本整形外科学会 軟部腫瘍診断ガイドライン ttp://minds.jcqhc.or.jp/n/med/4/med0035/g0000097/0001 18

6: 骨肉腫は成長期年齢児の長管骨骨幹端部に発症することが多い 手術治療時に切除 再建に関して留意すべきことを述べなさい (3 点 ) 骨肉腫の治療は 術前化学療法で腫瘍を小さくしてから 広範切除で腫瘍をとり 術後化学療法で転移巣をたたくというプロトコルが一般的である この時 重要な血管や手足を動かす神経を残すことが可能ならば 切断術ではなく患肢温存手術を選ぶことができる しかし長管骨骨幹端部にできた骨肉腫の広範囲切除では 成長軟骨板を残すことは難しいことが多い したがって 成長期前や成長期中の小児に患肢温存手術を行った場合 患肢の成長が障害されて 脚長に健肢と差ができて 歩行など日常生活に支障が出ることになる そこで 次の3つの選択肢がある 1 切除術を行い 機能維持のための何らかの処置を行う 義足 関節固定術 膝回転形成術など 2 切除術を行い 延長可能な人工関節で置換する 3 患肢温存手術を行い 創外固定を用いた脚延長術などを行う それぞれにメリット デメリットがあり 患児や家族とよく相談して方針を決める 切除術は見た目は悪いが 義足が進歩して 大腿切断でもスポーツができる 関節固定術は重労働ができ耐久性に優れているが 関節がまったく曲がらないのでトイレや座席に座るときに困る 膝関節周囲の骨肉腫の場合で 腫瘍の部分を大きく取って足関節を膝の機能として代用させる膝回転形成術は 見た目は最も悪いが 機能的には前二者よりも優れている 人工関節置換は 見た目はよいが機能や耐久性に問題があり スポーツは制限され 感染や破損による交換が必要になることもある 患肢温存手術後に創外固定による脚延長術を行う方法は 適用可能な場合には望ましい選択肢である 治療期間は長くなる 参照 : 石井猛 骨肉腫 今日の整形外科治療指針第 5 版 医学書院 国立がんセンター がんの冊子小児の骨肉腫 より ttp://ganjoho.jp/public/qa_links/brochure/odjrh3000000puq6-att/osteosarcoma01.pdf 19

2013 年度整形外科卒試対策資料 E 股関節 下肢の疾患 ( 正誤判定 10 10)( )(10 点 ) 正しいものに を 正しくないものに をつけなさい 1. 管状骨の長径は内軟骨性骨化で 横径は膜性骨化で成長する 解答 : 言葉の定義の問題 骨発生と成長は膜性骨化 軟骨内骨化の2つの様式がある 膜性骨化は皮質骨を作る機能 結合組織中に直接骨組織が形成される 骨膜で行われ 皮質骨の横径拡大をもたらす 軟骨内骨化は 海綿骨を作る機能 硝子軟骨の鋳型が石灰化され骨に置き換わる 一次 / 二次骨化中心と成長軟骨板で行われ 長軸方向の成長をもたらす 2. 小児期の骨端線損傷による骨の短縮や変形は 大腿骨遠位の骨端線傷害で最も著しい 解答 : 長管骨の両端には骨端線 ( 成長軟骨板 ) が存在し 長軸方向の成長 ( マクロにみれば身長の伸び ) の中心となる場所である ではどの部分の骨端線損傷が 成長障害や変形という点で影響が大きいか 最も負荷がかかり かつ最も成長が著しいところということで 膝周囲の骨端線の損傷が臨床的に最も問題となる 大腿骨遠位の骨端線は下肢全体の長軸方向の成長のうち 40% を占めるとされ 短縮や変形による大腿骨遠位骨折による骨端線損傷は 短縮や変形などの後遺症が出やすい 大腿骨遠位と脛骨近位のどちらの影響が大きいかは 調べても分かりませんでした 大腿骨近位 脛骨遠位 だと明らかに にできます 学年解答は問題文を間違えてるみたいですね 参照 : 王寺享弘 大腿骨遠位部の骨折 今日の整形外科治療指針第 5 版 医学書院 3. 長管骨骨端線の片側を抑制して下肢骨の変形を矯正する治療法もある 解答 : この話 ポリクリⅠで聞きましたよね こんな方法があるのか! と驚いた記憶があります 下肢の脚長不等に対して 長い方の脚の成長を抑制する方法 ( 骨端軟骨発育抑制術 ) と 短い脚を長くする方法 ( 骨延長術 ) がある 前者はもちろん成長期の間の治療法である 脚長差が 3cm 以内は装具 ( 足底板など ) で 3cm 以上で手術を考慮 下肢の変形 (O 脚や X 脚など ) に対しては 次の3つの選択肢がある 装具による矯正 成長期がまだ続く場合は 骨端線の一部を抑制して矯正を促す 成長期が残り少ないまたは終了後は 変形矯正手術 20

参照 : 名大整形外科 下肢 ttp://ortho.med.nagoya-u.ac.jp/leg.html 4. 仮骨延長術は短縮した骨を延長するだけでなく 変形した骨を伸ばしながら矯正することもできる 解答 : 仮骨延長術長管骨の両端をピンなどで創外固定器に固定し その間を手術的に骨切りする 両端を長軸方向に牽引して 骨切り部に形成された幼若な仮骨が成熟して骨化する前に 1 日 1mm を数回に分けて引き延ばす こうして仮骨形成が繰り返されて 長管骨の長軸方向への延長が可能になる この方法の原理として 組織を緩徐に伸張させることにより 皮膚や血管などすべての組織が新生することが知られている これを distraction histogenesis( 伸張性組織新生 ) といい 1951 年にロシアの医師イリザロフが発見したのでイリザロフ原理ともいう なお仮骨延長術には イリザロフ法 という呼び方もある 右図 : 鈴木茂夫 骨延長 [ 術 ] 今日の整形外科治療指針第 5 版 医学書院 以上の原理から 牽引方向を 3 次元的に微調整することで 単なる延長ではなく立体的な矯 正も可能であることは予測がつく 実際にイリザロフ法によって 複雑な変形に対する立体的な 矯正が行われている 5. 仮骨延長術は骨以外の組織も同時に伸長される複合組織形成術であるが 最も伸長しにくい組織は神経である 解答 : 仮骨延長術の合併症として問題となるのは 腱の伸長不全による 隣接する関節の拘縮である 骨延長が 5cm を超えると関節拘縮が顕著になり 運動訓練により解決できない場合は腱延長術を行うこともある イリザロフ法により神経障害 ( 知覚鈍麻や運動麻痺 ) が出ることはあるが 多くは軽度で一時的である 正常な成長で脚が伸長するのに従って神経も伸び また末梢神経損傷に対して軸索が延長して再生する このように 神経細胞は新生こそ稀だが 軸索はある程度可変性があるようだ 6. 先天性股関節脱臼は徒手整復により治療するのが一般的である 解答 : 21

2013 年度整形外科卒試対策資料 先天性股関節脱臼 先天性に関節弛緩がある不安定な股関節を背景に 周産期の外力により脱臼が成立するものが多い 出生後の外力で脱臼する場合もある 新生児の 0.1% 程度に発症する 女児に多く (1:5) 両側脱臼例も多い 先天性股関節脱臼の家族歴 骨盤位がリスク因子 代表的な症状として 開排制限 ( 股の開きが悪い ) 徒手的な整復時のクリックサイン ( カクッという感じが手に伝わる ) がある 症状に加えて X 線 エコーなどで診断する 出生からの時間によって段階的な治療を行う 生後 3ヶ月まではは 着衣 寝具 抱き方などを指導して経過観察 多くの例で股関節の安定性が改善する 頸定後に脱臼がまだ認められる場合 リーメンビューゲル装具 ( 右図 ) で整復する 装具で整復できない場合は 約 1ヶ月の入院でオーバーヘッド牽引を行う それでも整復困難な場合は 手術による整復が必要となる 右図 : 佐賀整肢学園こども発達医療センター リーメンビューゲル装具 より ttp://www.saganet.ne.jp/saseishi/top.htm l 7. ペルテス病は就学前後の小柄な男児に多く 壊死部への骨移植により治療する 解答 : 前半は正しいが後半が間違い Perthes 病 概念 虚 血性骨端壊死 ( 骨端症 ) の1つで 成長期に起こる大腿骨近位骨端部の虚血性壊死 骨壊死を放置すると 大腿骨頭の圧潰と変形が起こり 成長後に下肢長短縮や変形性股関節症となる恐れがある 疫学 4-7 歳の 小柄 (= 骨年齢が遅延 ) で活発な男児に多い ( 男女比 5:1) 症状 軽 度の股関節や大腿痛 跛行 股関節の可動域制限など 検査 X 線や MRI などで骨端核の壊死像を認める 治療 軽 症例はギプスや装具による保存的治療 重症例では骨切り術を行う 22

骨移植骨欠損部修復や関節固定などの目的で 自家骨 同種骨 ( 他人 ) 異種骨 ( 他の動物 ) の骨を移植すること 以下のような局面で用いられる 移植後 移植した骨片は移植部の骨と一体化する 腫瘍 感染症 重症外傷などの骨欠損に対し 補填と骨格再建を行う 短縮した骨の延長 人工関節置換術のインプラント固定時ペルテス病では大人の骨頭壊死と違い年齢的に修復機転が働くため 骨移植の適応はない 8. 大腿骨頭すべり症は思春期に生じやすく 治療は後方へ転位した大腿骨頭を整復するのが原則である 解答 : 少し厄介な問題です 整復 とは徒手的整復だけでなく 装具や 観血的整復 つまり骨切り術など手術による整復も含みます 大腿骨頭すべり症では 原則として観血的な固定や位置の修正を行います しかし治療目的としては 元通りの位置にすることではなく すべりの伸展を止めて 変形性股関節症や骨頭壊死などの合併症を防ぐことに主眼が置かれます より具体的には 正常の位置に戻す ことに拘らず 多少ずれてても固定する ことを選びます 整復 には 元の正常な位置に戻す という意味を含むため 問題文の文言は< 主張として強すぎる>< 治療目的から微妙に外れている>と考えられ 題意を推測して不正解だとみなします 大腿骨頭すべり症 slipped capital femoral epiphysis 概念 骨 端線閉鎖前の思春期に 大腿骨近位の成長軟骨板が解離して 骨端が骨幹端に対して 後内側に転位 ( ずれ ) が生じた状態 病因は不明だが 内分泌異常や転倒などで成長軟骨板の強度が低下して起こると考えられている 進行性で 緊急性を要する疾患である 疫学 中 学生前後 肥満男児に多い ( 男女比 2:1) 頻度は約 8 人 /10 万で 好発年齢は growth spart の時期と一致 症状 股 関節の疼痛 可動域制限 ( 内旋制限 ) 跛行 高度な変形や大腿骨頭壊死の合併で 成長後に変形性股関節症をきたすことがある 診断 正 側二方向の X 線画像で診断 CT や MRI も有用 治療 診 断後はすみやかに入院して安静とし 転位の程度により以下の観血的治療を行う 1 安定型で 骨端の移動が小さく 関節適合性が損なわれていない場合 : スクリューですべり位置のまま骨端線固定術を行う 23

2013 年度整形外科卒試対策資料 2 安定型で 骨端の移動が大きく 関節適合性が損なわれている場合 : 転子部で矯正骨切り術を行う 3 不安定型 : 専門医による緊急の治療が必要 安定するまで整復できれば 骨端固定術を行う 整復できなければ骨切り術を行う 9. 先天性内反足ではアキレス腱切腱をしばしば行うが 乳児ではアキレス腱は再生される 解答 : 先天性内反足 congenital clubfoot 出生時に足の変形拘縮 ( 後足部の内反と尖足 前足部の内転と回外 ) を呈する先天性疾患 まず保存的治療 生後できるだけ早くギプス療法を開始 用手的な矯正とギプス巻き直しを 1 週間毎に繰り返し 2-3 ヶ月で徐々に変形を矯正する その後 矯正位を保持するために装具を用いる 矯正が不十分な場合は手術治療を行う アキレス腱延長 靭帯や関節包の解離 関節の解離などを行い 適切な配列に矯正してギプス固定する 乳児期には アキレス腱を切断しても3 週間程度で再生し 機能的障害を残さないことが知られている 10. 筋性斜頸では胸鎖乳突筋が短縮しているため できるだけ早期に手術で筋を切除する 解答 : 先天性筋性斜頚 congenital nital muscular torticollis 胸鎖乳突筋に瘢痕化 線維化が起こって短縮し 頚部の可動域が制限され斜頚位 ( 頭部を患側に傾け 顔面を健側に回旋 ) を呈する先天性疾患 原因として 子宮内の肢位により胸鎖乳突筋が損傷され コンパートメント症候群が発生するという説が有力視されている 典型的な臨床症状を有する筋性斜頚の罹患率は 0.1% 初産婦 頭位分娩 難産で発生率が高い 先天性股関節脱臼や内反足などの奇形と合併することがある 生後 5 日頃に胸鎖乳突筋の腫瘤が出現し 生後 2-3 週間で最大となり 頚部可動域制限 斜頚位が現れる 約 90% の例で自然治癒するため 乳児期までは生活指導を行って経過観察する 1 歳をすぎても斜頚位が残存する場合に 整容的手術 ( 胸鎖乳突筋部分摘出術など ) の適応となる 24

F. 脊椎疾患 ( 記述 3)(15 点 ) 1. L3/L4 L4/L5 L5/S1 椎間板ヘルニアの 障害を受ける神経根とその症状 反射 筋力 知覚の障害を述べなさい 脳神経外科の時に作った表をコピペします ついでに頚椎も 高位神経根感覚障害運動障害 筋力低下反射異常 C4-5 C5 上腕外側 肩の外転 ( 三角筋 上腕二頭筋 ) C5-6 C6 前腕外側 肘屈曲 手関節背屈 ( 上腕二頭筋 手根伸筋 ) C6-7 C7 中指 肘伸展 手関節掌屈 ( 手根屈筋 指伸展 ) 三角筋腱反射 上腕二頭筋腱反射 腕橈骨筋腱反射 上腕二頭筋腱反射 上腕三頭筋腱反射 C7-T1 C8 前腕内側手指 T1-2 T1 上腕内側手指 高位神経根感覚障害運動障害 筋力低下反射異常 L3-4 L4 大腿 下腿内側足内反 ( 大腿四頭筋 ) 膝蓋腱反射 L4-5 L5 下腿外側 足背内側 L5-S1 S1 下腿 足背外側 足底 足趾背屈 ( 前頚骨筋 長母指伸筋 長趾伸筋 ) 足外反 足底屈 ( 下腿三頭筋 長母趾屈筋 長趾屈筋 ) アキレス腱反射 2. 頸椎椎間板ヘルニア 腰椎椎間板ヘルニアの治療方法について説明せよ 頚椎と腰椎のヘルニアを示差的に説明させるのが出題意図だろうか 頚椎のヘルニアでは 後方への突出で頚髄圧迫症状 後側方への脱出で神経根症状をきたす 腰椎のヘルニアでは 後側方への脱出で片側の神経根症状が出る場合が多い なお脊髄は L1-2で終わり それより下位は馬尾である 頚椎椎間板ヘルニア神経根症であれば自然治癒の可能性があり まず保存的治療を行う 急性期の治療は局所安静が重要で 頚椎カラーが効果的 NSAIDsや筋弛緩薬を使用 疼痛が強い場合は硬膜外ブロックや神経根ブロックを考慮する 安静や投薬で症状が改善しない場合 入院での安静 ブロック治療 持続牽引を行う 4ヶ月経過しても疼痛が改善しない場合は 手術を考慮する 25

2013 年度整形外科卒試対策資料脊髄症では多くの例で保存的治療が無効であり 手術適応になる 術式は前方除圧固定術が一般的 前方からアクセスして病変のある椎間板を完全切除し 腸骨から採取した骨移植で椎体間を埋める 腰椎椎間板ヘルニアまず保存的治療を行う 腰椎椎間板ヘルニアの多くは保存的治療で自然消退する 以下のような場合には 3-6 ヶ月で自然消退する可能性がある ヘルニアのサイズが大きい 脱出遊離型 T2 強調画像にて高輝度もしくは造影効果あり 疼痛の強い急性期には 楽な姿勢で安静を保たせる NSAIDsや筋弛緩薬を使用 腰部軟性コルセットの装着も効果的 疼痛が強い場合は硬膜外ブロックや神経根ブロックを考慮する 急性痛が落ち着いたら理学療法 ( 温熱療法 電気療法 腰椎牽引療法 体操療法 ) を開始する 膀胱直腸障害や重篤な下肢麻痺がある場合は 早期に手術を行う (48 時間以内 ) 保存的治療を3ヶ月程度続けても疼痛が軽快しない場合は 手術を検討する Love 変法が一般的 片側の椎弓や椎間関節内側部の部分切除により開窓し 神経組織をよけてヘルニア腫瘤を摘出する 3. 靭帯骨化症 ( 後縦靭帯骨化症 黄色靭帯骨化症 ) について述べなさい カルシウム沈着による骨化は様々な靭帯で起こる可能性がありますが 脊髄が通る椎孔の前方 ( 後縦靱帯 ) と後方 ( 黄色靭帯 ) の骨化 肥厚は 脊髄圧迫のために特に臨床的に問題となります 右図 : 伊藤隆 解剖学講義改訂 2 版 南山堂 P227 脊柱靭帯骨化症 概念 椎 体周辺の靭帯 後縦靱帯や黄色靭帯に カルシウムが新着して骨化 肥厚し 脊柱管の狭小化により脊髄圧迫症状をきたす 後縦靭帯骨化症 (OPLL; ossification of posterior longitudinal ligament) 黄色靭帯骨化症 (OLF; ossification of ligamentum flavum) 疫学 東 洋人の中高年男性に多い 原因は不明だが 遺伝的要因があり 糖尿病や肥満患者に好発することが分かっている OPLL OLF はともに公費対象の特定疾患である 26

症状 脊 髄圧迫の症状として 感覚障害 ( 四肢のしびれ ) 運動障害 ( 特に箸が使いにくいなど手の巧緻性障害 歩行障害など ) 深部腱反射の亢進などをきたす 膀胱直腸障害が出現する例もある 検査 単純 X 線側面像 単純 CT MRI にて OPLL または OLF による脊髄圧迫所見をみる 治療 無症状または症状が軽度の場合は保存的治療 一般に脊髄症状に対しては NSAIDs 投与や運動器リハビリなどの保存的治療は有効でない 頚椎 OPLL では頚椎カラーによる頚部安静や頭蓋牽引により進行を防ぐことが可能な場合がある 脊髄症状が進行した場合に 除圧手術を行う OPLL の除圧手術には前方法 ( 前方除圧固定術 ) 後方法 ( 椎弓形成術 ) がある OLF の除圧手術は 椎弓切除術が一般的 27

2013 年度整形外科卒試対策資料 G. 肩 膝関節 ( 正誤判定 5 空欄補充 5 )(10 点 ) 正しいものに 誤っているものに をつけよ (1. 5.) また空欄に正しい語句を入れよ (6. 10.) 1. 半月板損傷では損傷部を縫合することで治癒することが多い 解答 : 半月板損傷に対する治療は 軽症例では保存的治療を行う 症状があり日常生活に支障がある場合は手術適応となり 損傷部位や年齢により (1) 縫合術 (2) 部分切除術を選択する 縫合術を選択できるのは 血行が存在する半月板の辺縁部 ( 外縁 1/4) に 半月板の線維方向に沿った断裂が存在する時 半月板損傷の患者では 若年者のスポーツ外傷による半月板辺縁部の損傷が多く 関節鏡下の半月板縫合術を行う 一方 (1) 中高年で半月板に変性がある場合 (2) 断裂が半月板の内縁 3/4 にある場合 (3) 断裂方向が半月板の線維に沿わない場合は 部分切除術を行う 解答は微妙です 実際には縫合での治癒が期待できず切除術を選択する場合も多いです 部分切除術と縫合術のどちらの症例数が多いかのデータが見つかりません しかし以下の理由より おそらく正解とみなしていいと思います 半月板損傷は若年者のスポーツ外傷が多く 若年者のスポーツ外傷では縫合術の適用となる型の損傷が多い 半月板機能温存のためには縫合術の方が有利 従来は部分切除術が多かったが 近年は可能な限り縫合術を行う方向になっている また技術や機器の進歩により 縫合術を適用できる症例が増加している 以上の2 点から 出題者の教育的意図としては 縫合術が多くなっている という点を答えさせたいのだと推測します 参照 小林保一 半月 [ 板 ] 損傷 今日の整形外科治療指針第 5 版 医学書院 右図 : 伊藤隆 解剖学講義改訂 2 版 南山堂 P157 2. 上腕二頭筋腱の短頭は肩関節内に入り肩甲骨関節窩に付着する 解答 : 上腕二頭筋は長頭 短頭がある 長頭は肩関節内で肩甲骨関節窩に付着 28

短頭は烏口突起に付着する 右図 : 伊藤隆 解剖学講義改訂 2 版 南山堂 P87 3. 上肢を下垂位から 180 度拳上する際には 肩甲上腕関節が約 120 度動き 肩甲骨が約 60 度回旋する 解答 : 肩甲上腕リズム (scapulo humeral rhythm) 上肢を挙上するとき 肩甲上腕関節の外転と肩甲骨の上方回旋が起こる この両者の回転角度の比率は 2:1 の割合となることが知られている このことを肩甲上腕リズムという 上肢を下垂位から 180 外転すると 肩関節は 120 外転 肩甲骨は 60 上方回旋する (2:1 の割合 ) 4. 膝前十字靭帯損傷はトップアスリートでも保存的に治療されることが多い 解答 : 一般に十字靭帯損傷は 保存的治療によって損傷組織が治癒する見込みはきわめて少ない 前十字靭帯損傷では 今後スポーツを行わないような活動度が低い症例では 急性期の疼痛が軽快した後に 筋力強化や日常動作の指導を行って膝くずれ ( 立位や歩行時に膝が無意識に折れ曲がる現象 ) を避けるようにする 一方 スポーツの継続を希望する症例では 関節鏡視下の靭帯再建術によって前十字靭帯の機能回復をはかる. また後十字靭帯損傷では 他の靭帯損傷の合併がない単独損傷の場合には 膝関節全体としての機能回復をめざして 大腿四頭筋の筋力訓練を中心とした保存的治療が選択される場合が多い. 5. 膝半月板損傷の理学所見として McMurray test が重要である 解答 : 29

2013 年度整形外科卒試対策資料 McMurray test は 膝半月板損傷の誘発試験として有名 患者には仰臥位になってもらい 膝を最大屈曲位として膝内外の関節裂隙に手指を当て 下腿に回旋ストレスを加えながら膝を伸展させる 半月板損傷がある場合は疼痛が誘発され 半月板の動きやクリックを感知する (McMurray test 陽性 ) 6. 関節軟骨が骨ごと剥離してしまう ( ) は 若年者に多い 解答 : 離断性骨軟骨炎 A-4 で解説済み 7. 変形性関節症の治療に用いられる関節注射薬は ( ) である 解答 : ヒアルロン酸ナトリウム 生体の関節液中にも含まれるヒアルロン酸を関節内に注入することで 関節液の粘弾性や潤滑性などを高めて 疼痛を緩和する 変形性膝関節症に適応があり 保存的治療の一環として行う 2010 年に発売された新薬の サイビスクディスポ は 週 1 回 連続 3 回投与で 6 ヶ月間効果が持続することが確認されているという 8. 反復性肩関節前方亜脱臼の治療では ( )lesion を修復することが重要である 解答 :Bankert 反復性肩関節脱臼 亜脱臼 外傷性の大きな外力により肩関節の脱臼や亜脱臼によって肩関節の解剖学的破綻が生じ その後も脱臼や亜脱臼を繰り返すもの 初回脱臼後の反復性肩関節脱臼への移行率は 若年者ほど頻度が高く (10 20 歳代では 50% 以上 ) 30 歳代以上では頻度が低下する (10 20%) 関節唇靭帯複合体 ( 右図の白 ) が関節窩 ( 青 ) から剥がれた病変を Bankart lesion といい これが反復性肩関節脱臼をきたす主な原因である 外傷に起因する肩関節の前方不安定性があり MRI または MRA で Bankart lesion を認める場合 反復性肩関節脱臼と診断できる 根治治療には 関節鏡下で Bankart lesion の修復を行う Bankart は英国の整形外科医で 20 世紀初頭にこの病変 lesion を治療することで反復性脱臼が治癒すると発表した 30

右図 : 京都下鴨病院 鏡視下バンカート修復術 脱臼制動術 より図の一部を引用 ttp://www.shimogamo.jp/operation_shoulder_01.html 9. 腱板とは ( ) 筋腱 ( ) 筋腱 ( ) 筋腱 ( ) 筋腱の 4 つの腱より構成され 肩関節の安定性に重要な働きを担っている 解答 : 肩甲下筋 棘上筋 棘下筋 小円筋 肩甲骨から上腕骨結節部に向かう 4 つの筋 ( 肩甲下筋 棘上筋 棘下筋 小円筋 ) の腱は合体して 1 つの腱となり これを腱板 rotator cuff と呼ぶ 腱板は肩峰や烏口肩峰靭帯と接しており 肩の動作により摩耗や損傷を受けやすい そのため腱板断裂 五十肩 ( 肩関節周囲炎 ) 石灰沈着性腱板炎など 腱板を病変の場とする疾患がいくつか存在する 右図 : 船橋整形外科病院 肩関節の疾患と手術 より ttp://www.fff.or.jp/seikei/sportsmedical_center/sho ulder01.html 10. 腱板断裂の原因として腱板の機能不全による大結節と肩峰の ( ) がある 解答 : インピンジメント インピンジメント impingement は衝突を意味する 肩峰下は可動性が大きく解剖学的に狭小な構造となっているため ある構造物と構造物が肩関節の動きに伴って擦れたりぶつかったりして いずれか または両者が障害されることがよくある こうした病態を総称して 肩峰下インピンジメント症候群 と呼ぶ 具体的には以下の様な病態がある 肩峰と腱板が 肩の挙上時に擦れて炎症になる 肩峰に骨棘ができ 肩の挙上時に大結節 ( 上腕骨頭の腱板付着部位 ) とぶつかる 問題文は 腱板の機能不全 たとえば肩峰との摩擦による局所的な炎症で形状が変化し 肩の挙上時の動きが少し変化するなどの理由で 正常ではぶつからない大結節と肩峰が衝突し そのことが腱板をさらに損傷する というロジックだと考えられる インピンジメント A がインピンジメント B を インピンジメント B がインピンジメント C を起こしているというわけである 31