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各部門精度管理調査結果報告 ( 細胞検査 ) はじめに 細胞検査における精度管理調査は 日々のスクリーニング作業において誤判定を起こさないよう 自施設の判定基準が他施設と十分な同一性を保持しているかを確認することを目的としている 平成 30 年度の精度管理調査はフォトサーベイ 10 問としてた 精度

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組織所見 ( 写真 4,5): 異型上皮細胞が間質および脂肪組織に索状, 管状に浸潤して おり, 浸潤性乳管癌 ( 硬癌 ) の所見である. 設問 2 78 歳, 女性. 左乳房上 C 領域の腫瘤 選択肢 1. 線維腺腫 2. 乳管内乳頭腫 3. 乳管癌 4. 小葉癌 5. 悪性リンパ腫 写真 4

H29千臨技サーベイ 集計結果

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平成28年度 千臨技細胞診検査研究班精度管理報告

乳腺40 各論₂ 化膿性乳腺炎 (suppulative mastitis) 臨床像 授乳の際に乳頭の擦過創や咬傷から細菌が侵入し, 乳房に感染症を生じるものである 乳汁 排出不良によって起こるうっ滞性乳腺炎とは区別する 起炎菌は連鎖球菌や黄色ブドウ球菌である 自発痛, 腫脹, 硬結, 圧痛, 発赤

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平成 30 年度青臨技細胞診精度管理調査報告書 八戸市立市民病院臨床検査科病理 須藤安史 はじめに 今年度の青臨技細胞診精度管理調査では フォトサーベイを実施した 評価対象問題では 各施設において細胞診業務を行う上で 日常遭遇する基本的な細胞像を適確に判定するための一定の水準と精度が保たれていること

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2. 分泌期内膜 3. 子宮内膜増殖症 4. 類内膜腺癌 G1 5. 漿液性腺癌 問題 6 43 歳 女性 不正出血 子宮内膜エンドサイト 1. 子宮内膜増殖症 2. 類内膜腺癌 G1 3. 類内膜腺癌 G3 4. 明細胞腺癌 5. 子宮内膜間質肉腫 問題 7 48 歳 女性 不正出血 子宮内膜吸引

平成 29 年度細胞検査サーベイ報告 細胞 ( フォトサーベイ ) はじめに 今回の細胞検査は例年どおりフォトサーベイを行った 昨年度同様 各設問につき判定区分と推定病変を設け 回答していただくようにした また回答状況をよりよく把握するために わからないとした理由や細胞所見などを書いていただける欄を

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問題 6 44 歳 女性 不正出血 子宮頸管 ブラシ擦過 1.NILM( 頸管腺細胞 ) 2.NILM( 扁平上皮化生細胞 ) 3.LSIL( 軽度異形成 ) 4.AIS ( 上皮内腺癌 ) 問題 7 49 歳 女性 腹部腫瘤 卵巣腫瘤 捺印 1. ブレンナー腫瘍 2. 顆粒膜細胞腫 3. 漿液性腺

設問1 子宮頚部擦過(TACAS)

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細胞学的検査 はじめに 参加申し込みのあった登録衛生検査所 9 施設, 一般病院等 50 施設を対象に実施した. 回答があったのは登録衛生検査所が 9 施設, 一般病院等が 50 施設で合計 59 施設, 回収率は 100% であった. また, 参加施設数は昨年に比して登録衛生検査所が同数であったが

症例4 消化器

図 1 乳管上皮内癌と小葉上皮内癌 (DCIS/LCIS) の組織像 a: 乳頭状増殖を示す乳管癌 (low grade).b: 篩状 (cribriform) に増殖する DCIS は, 乳管内に血管増生を伴わない時は,comedo 壊死を形成することがあるが, 本症例のように血管の走行があると,

愛知県臨床検査標準化ガイドライン 細胞診アトラス 愛知県臨床検査標準化協議会 AiCCLS : Aichi Committee for Clinical Laboratory Standardization Aichi Committee for Clinical Laboratory Standa

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問題 6 65 歳 女性 不正性器出血 子宮頸部 ブラシ擦過 1. HSIL( 中等度異形成 ) 2. HSIL( 上皮内癌 ) 3. AIS( 上皮内腺癌 ) 4. 非角化型扁平上皮癌 5. 小細胞癌 問題 7 75 歳 女性 不正性器出血 子宮内膜 ブラシ擦過 1. 角化型扁平上皮癌 2. 粘液

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院内がん登録について 院内がん登録とは がん ( 悪性腫瘍 ) の診断 治療 予後に関する情報を収集 整理 蓄積し 集計 解析をすることです 登録により収集された情報は 以下の目的に使用されます 診療支援 研修のための資料 がんに関する統計資料 予後調査 生存率の計測このほかにも 島根県地域がん登録

最初に事後指導項目規定をお示し致します これらは 陰性スメアに対して行っております まず 取り扱い項目は要医療 要治療の 2 項目あります 要医療扱いの細胞所見は 一つ目に 炎症を伴う強度細胞異型の見られるもの 二つ目として 萎縮像に炎症を伴った強度細胞異型の認められるもの 三つ目として 核異型の伴

8 整形外科 骨肉腫 9 脳神経外科 8 0 皮膚科 皮膚腫瘍 初発中枢神経系原発悪性リンパ腫 神経膠腫 脳腫瘍 膠芽腫 頭蓋内原発胚細胞腫 膠芽腫 小児神経膠腫 /4 別紙 5( 臨床試験 治験 )

ヒト慢性根尖性歯周炎のbasic fibroblast growth factor とそのreceptor

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16 岡山県臨床細胞学会 症 例 巨大嚢胞内の一部に良性乳管上皮を伴う男性乳癌の 1 例 成富真理, 畠 榮, 日野寛子, 高須賀博久, 物部泰昌 川崎医科大学附属川崎病院病理部 背景巨大嚢胞内腔側壁の一部に良性乳管上皮を伴う男性乳癌の1 例を経験したので, 細胞像を中心に報告する. 症例 70 代

日産婦誌61巻5号研修コーナー

d. ホジキンリンパ腫, 結節硬化型 e. 濾胞性リンパ腫 問 6. 骨髄穿刺吸引検体のクロットおよび塗抹標本. 増殖している細胞は? a. 前骨髄球 b. 形質細胞 c. 巨核球 d. 赤芽球 e. 単球 問 7. 肝臓の割面を示す. この患者の症状あるいは合併疾患として考えにくいものはどれか.

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福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

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例や経過観察して臨床的に推定 診断した症例は その診断に至る過程がわかるように説明し 考察すること 最終診断 簡潔に記載すること 貼付写真とシェーマによる説明 主要な超音波診断の根拠となり得る写真を数枚以内貼付すること 写真貼り付け方法は 紙焼き写真を糊付けしてもよいし 電子画像をコピー & ペース

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目次 全部位の概要 - 部位別登録数 - 年齢階級 部位別登録数 - 来院経路 部位別登録数 - 患者住所 部位別登録数 - 症例区分 部位別登録数 - 発見経緯 部位別登録数 部位別詳細

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( / ) 上記外来の名称 ストマ外来 対象となるストーマの種類 コロストーマとウロストーマ 4 大腸がん 腎がん 膀胱がん ストーマ管理 ( 腎ろう, 膀胱ろう含む ) ろう孔管理 (PEG 含む ) 尿失禁の管理 ストーマ外

平成29年度沖縄県がん登録事業報告 背表紙印字

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1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

れない 採取後 95% エタノールによって固定し パパニコロウ染色を実施した 標本は最初に細胞検査士によってスクリーニングされ 病理医によって確定診断された 細胞診標本の再評価は 著者と他 5 名の細胞検査士が行い病理医と評価した 判定はベセスダシステム 2001 に準拠し 上皮内腺癌の感度 scr

研究協力施設における検討例 病理解剖症例 80 代男性 東京逓信病院症例 1 検討の概要ルギローシスとして矛盾しない ( 図 1) 臨床診断 慢性壊死性肺アスペルギルス症 臨床経過概要 30 年前より糖尿病で当院通院 12 年前に狭心症で CABG 施行 2 年前にも肺炎で入院したが 1 年前に慢性

10,000 L 30,000 50,000 L 30,000 50,000 L 図 1 白血球増加の主な初期対応 表 1 好中球増加 ( 好中球 >8,000/μL) の疾患 1 CML 2 / G CSF 太字は頻度の高い疾患 32

バーチャルスライドセミナー 1 見なきゃ損するバーチャルスライド ピットフォールにはまり込むな! 症例番号 :3( 口腔擦過 ) 出題者田中瑞穂 ( 名古屋掖済会病院病理診断科 ) 症例番号 :4( 乳腺穿刺 ) 出題者今井律子 ( 公立西知多総合病院臨床検査科 ) 年齢 :70 歳代性別 : 男性

ベセスダシステム2001の報告様式 ーASC-US、ASC-Hの細胞像と臨床的意義ー

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1981 年 男 全部位 C00-C , , , , ,086.5 口腔 咽頭 C00-C

【参考文献】

第58回日本臨床細胞学会総会 スキルアップ講座 呼吸器(腺系以外)

4. 膵腫瘤存在診断 A) 確診 1 粋の明らかな異常エコー域 ( 注 ) 2 粋の異常エコー域が以下のいずれかの所見を伴うもの a) 尾側膵管の拡張 b) 膵内または膵領域の胆管の狭窄ないし閉塞 c) 膵の限局性腫大 B) 疑診 1 膵の異常エコー域 2 膵領域の異常エコー域 3 膵の限局性腫大

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

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目次 1 部位別登録件数 2 部位別 性別登録件数( 上位 10 部位 ) 3 部位別 年齢階層別登録件数( 上位 10 部位 ) 4 部位別 組織型別登録件数 5 部位別診断時ステージ分布( 主要 5 部位 ) 6 部位別 治療行為別登録件数( 上位 10 部位 行為別件数上位 5 項目 ) 7

筆頭演者の利益相反状態の開示 すべての項目に該当なし

子宮頚部異型上皮および0-Ia期治療方針

参考文献 1. Hampe, J.F. and Misdorp, W. (1974) Tumours and dysplasias of the mammary gland. Bull WHO 50: Moulton, JE, (1990) Tumors of the Mamma

慢性毒性試験及び発がん性試験評価書 ( 案 ) 資料 実験動物等における影響 (3) 慢性毒性試験及び発がん性試験 1 ア

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【登録総数】

高知赤十字病院医学雑誌第 2 2 巻第 1 号 年 5 原著 尿細胞診 Class Ⅲ(AUC) の臨床細胞学的検討 ~ 新報告様式パリシステムの適用 ~ 1 黒田直人 1 水野圭子 1 吾妻美子 1 賴田顕辞 2 奈路田拓史 1 和田有加里 2 宇都宮聖也 2 田村雅人

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第 6 回千葉乳房画像研究会教育講演資料 (2004/7/17) 2 カテゴリー 1: 異常なし (negative) カテゴリー 2: 良性 (benign) 乳房は左右対称で 腫瘤 構築の乱れも石灰化も存在しない 血管や点状の 1,2 個の石灰化 正常大の腋窩リンパ節 高濃度乳房をよく乳腺症とし

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

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D. 汗腺系腫瘍 413 c d e 図.14 汗管腫 (syringom) 2 5 mm c d e 腔の一端に, 短い尾のような上皮索をつける特徴的な像 オタマジャクシ様 (tdpole-like) またはコンマ状 (comm til) を呈する. 管腔は 2 層の壁細胞からなり, 周囲に結合組

Photo. 1 大脳皮質 / 圧挫標本 a) パパニコロウ染色 (Pap, 対物 40) 正常組織では, 神経細胞, 星膠細胞, 乏突起膠細胞がバランスよく出現しているが, 胞体や突起, 線維とも不明瞭である. 神経基質は微細な網目状構造として認める. b) GFAP 免疫染色 (GFAP, 対物

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7. 脊髄腫瘍 : 専門とするがん : グループ指定により対応しているがん : 診療を実施していないがん 別紙 に入力したが反映されています 治療の実施 ( : 実施可 / : 実施不可 ) / 昨年の ( / ) 集学的治療 標準的治療の提供体制 : : グループ指定により対応 ( 地域がん診療病

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がん登録実務について

1.中山&内田 P1-9

密封小線源治療 子宮頸癌 体癌 膣癌 食道癌など 放射線治療科 放射免疫療法 ( ゼヴァリン ) 低悪性度 B 細胞リンパ腫マントル細胞リンパ腫 血液 腫瘍内科 放射線内用療法 ( ストロンチウム -89) 有痛性の転移性骨腫瘍放射線治療科 ( ヨード -131) 甲状腺がん 研究所 滋賀県立総合病

平成20年度沖縄県医師会臨床検査精度管理調査

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表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 ): 施設 UICC-TNM 分類治療前ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 原発巣切除 ): 施設 UICC-TNM 分類術後病理学的ステージ別付表 食道癌登録数 ( 自施設初回治療 癌腫 UIC

10. がんの部位別死亡率で誤っている組み合わせはどれですか. A. 肺癌は男女共に増加傾向にある. B. 胃癌は男女共に減少傾向にある. C. 大腸癌は男女共に減少傾向にある. D. 女性の乳癌は増加傾向にある. 4.C.D E. 肝臓癌は男女共に減少傾向にある. 11. 核に陽性所見を示す抗体を

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

PDF/開催および演題募集のお知らせ

参考資料2 平成19年度被認定者に関する医学的所見等の解析及びばく露状況調査業務報告書 医学的所見等の解析調査編


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第 5 回九州臨床査技師会 細胞査精度管理調査結果報告書 はじめに今回で 5 回目となる九州臨床査技師会主催の病理 細胞査精度管理調査ですが この精度管理の目的は 個人や団の評価ではなく 九州地区の病理 細胞査に従事する臨床査技師の自己研鑽につながればという思いで事業を展開した 対象 ( 参加施設 ) および方法 1. 対象 ( 参加施設 ) 今回の参加施設は 九州全で 145 施設の協力が得られた 参加人数は 名の参加がみられ その内訳は 細胞査士 408 名 臨床査技師 56 名であった 2. 方法今回の細胞査部門の精度管理は 前回同様にフォトサーベイを実施した 設問数は全部で 30 問あり 2 枚のフォトに対して 回答欄の 5 つの選択肢から 最も適切だと思われるものを 1 つ選び 施設単位ではなく 個人単位での回答を求めた 問題に対する注意点として 年齢に関しては個人情報を重視し 真の年齢とは多少異なった形で問題用に作成してある 写真の倍率は撮影時の対物レンズの倍率を記した 正解と解説解説設問 1 年齢 性別 : 39 歳女性 : 子宮頸部綿棒擦過 臨床所見 : 不正出血 写真 : 左図 Pap 40 右図 Pap 100 回答欄 : 1. 頸管円柱上皮細胞 2. 高度異形成 3. 上皮内癌 4. 微小浸潤扁平上皮癌 5. 腺癌 正解 : 3. 上皮内癌組織診断 : 上皮内癌解説 : 背景に好中球を認め 傍基底細胞大から基底細胞大の細胞が集簇している N/C 比は高く裸核様で 多少の大小不同性を示しているが 単調性な像を呈しており 核は類円形で緊満感があり クロマチンは細顆粒状で密に充満し 核小も小型で数個有し 上皮内癌の像を示す ( 正解率 :96.6%)

設問 2 年齢 性別 22 歳 女性 子宮膣部綿棒擦過 臨床所見 外陰部潰瘍 疼痛 回 答 欄 1 ヘルペス感染細胞 2 修復細胞 再生上皮細胞 4 多核組織球 3 化生細胞 5 扁平上皮癌 正解 1. ヘルペス感染細胞 ヘルペス感染細胞 解説 臨床所見では 外陰部の潰瘍や疼痛を伴っている 細胞所見はシート状様の集塊で出現し ており 集塊内は多核から単核の細胞を多数認める 多核を形成している部分では核圧排像を 示し 全的にすりガラス状の核を呈していることから ヘルペス感染細胞の像を示す この像 は出現が修復細胞とまぎらわしいが 核所見が異なるので除外できる 正解率 97.0 設問 3 年齢 性別 36 歳 女性 子宮膣部ブラシ 臨床所見 不正出血 回 答 欄 1 化生細胞 2 頸管円柱上皮細胞 4 類内膜腺癌 3 上皮内腺癌 5 明細胞腺癌 正解 3. 上皮内腺癌 組織診断 上皮内腺癌 解説 比較的きれいな背景で 重積を示した集塊の細胞は 柵状配列を示している 集塊外層 では羽毛状を呈する所見も存在する 個々の細胞は N/C 比の高い類円形から楕円形の核で 核の大小不同もみられる 核小はあまり目立たないが 以上の所見より腺系の異常所見が示 唆され 選択肢の中からは上皮内腺癌を選択すべきである 正解率 91.2%

設問 4 年齢 性別 28 歳 女性 臨床所見 婦人科診 回 答 欄 1 炎症性変化 子宮頸部綿棒擦過 2 軽度異形成 4 上皮内癌 3 高度異形成 5 扁平上皮癌 正解 2. 軽度異形成 解説 きれいな背景を呈しており N/C 比の大きな表層型扁平上皮細胞が出現している 核は 増大し クロマチンの増量がみられ 軽度異形成を考慮する像である 正解率 97.0% 設問 5 年齢 性別 27 歳 女性 子宮膣部綿棒擦過 臨床所見 婦人科診 回 答 欄 1 壊死物質 2 カンジダ膣炎 4 クラミジア膣炎 3 ガードネレラ膣炎 5 トリコモナス膣炎 正解 5. トリコモナス膣炎 トリコモナス膣炎 解説 背景は好中球主の炎症性細胞がみられ それに混在するように ライトグリーンに好 染した西洋梨状あるいは不整形で 内部に好酸性の顆粒を呈したトリコモナス原虫が散見され る トリコモナス膣炎では 臨床的に黄色帯下や掻痒感 疼痛などを伴う場合がある 非常に 高い正解率であった 正解率 99.1%

設問 6 年齢 性別 : 61 歳女性 : 子宮内膜吸引 臨床所見 : 不正出血 写真 : 左図 Pap 20 右図 Pap 40 回答欄 : 1. 子宮内膜異型増殖症 2. 類内膜腺癌 G1 3. 類内膜腺癌 G3 4. 粘液性腺癌 5. 漿液性腺癌 正解 : 3. 類内膜腺癌 G3 組織診断 : 類内膜腺癌 G3 解説 : 血性の汚い背景の中に 結合性の緩い集塊がみられる 核もやや大型で 大小不同が著明で 明瞭な核小を呈する この設問は正解率が低く 類内膜腺癌 G1 と類内膜腺癌 G3 で回答が二分した結果であった 前者の類内膜腺癌 G1 の場合では 血管間質茎を伴った大型の乳頭状 樹枝状集塊で出現する傾向にあり 集塊結合性の低下や細胞異型から類内膜腺癌 G3 を選択するのが適切である ( 正解率 :53.0%) 設問 7 年齢 性別 : 34 歳女性 : 子宮内膜吸引 臨床所見 : 定期診 写真 : 左図 Pap 40 右図 Pap 100 回答欄 : 1. 増殖期子宮内膜 2. 分泌期子宮内膜 3. 子宮内膜増殖症 4. 類内膜腺癌 G1 5. 類内膜腺癌 G3 正解 : 1. 増殖期子宮内膜解説 : 大型な土管状の集塊で内膜腺細胞が出現しており 集塊の周囲には内膜間質細胞の付着した所見もみられる 集塊内の細胞は核密度が非常に高く 若干の重積性を伴っている また 集塊内の一部には核分裂像も認められる 以上の細胞像から増殖期子宮内膜と判定できる ( 正解率 :84.2%)

設問 8 年齢 性別 52 歳 女性 子宮内膜腫瘤捺印 臨床所見 不正出血 下腹部痛 回 答 欄 1 子宮内膜異型増殖症 2 類内膜腺癌 G1 4 明細胞腺癌 3 類内膜腺癌 G3 5 子宮内膜間質肉腫 正解 5. 子宮内膜間質肉腫 組織診断 子宮内膜間質肉腫 解説 多数の細胞が 結合性の緩い像で孤立散在性の出現を示している 細胞は紡錘形から長 楕円形で 細胞質はライトグリーンに淡染性である 核は類円形から紡錘形で多様性を呈し 核膜は薄く 一部に核分裂像も認められる 以上の所見より 非上皮性の悪性細胞が推定され 子宮内膜間質肉腫を選択するのが妥当である 正解率 97.8% 設問 9 年齢 性別 49 歳 女性 臨床所見 一側性腫瘍 子宮内膜症の合併 回 答 欄 1 顆粒膜細胞腫 卵巣腫瘍捺印 左図 Pap 60 右図 Pap 100 2 未分化胚腫 4 粘液性嚢胞腺癌 3 漿液性嚢胞腺癌 5 明細胞腺癌 正解 5. 明細胞腺癌 組織診断 明細胞腺癌 解説 明瞭な核小を伴う細胞が腺管状配列の集塊で出現している 集塊を構成する細胞の細 胞質は 明るく豊富な細胞質を呈し 核が細胞の表面近くに突出する hobnail pattern もみら れ 明細胞腺癌の特徴を備えている 正解率 96.6%

設問 10 年齢 性別 67 歳 男性 喀痰 臨床所見 右肺異常陰影 胸水貯留 回 答 欄 1 リンパ球の集簇 2 カルチノイド 4 腺癌 3 小細胞癌 5 非ホジキンリンパ腫 正解 3. 小細胞癌 組織診断 小細胞癌 解説 背景の一部には壊死性物質を認め 小型な細胞が散在性または疎な結合集塊の出現を示 し 一部にはインディアン ファイル状の配列もみられる 個々の細胞は 裸核様の非常に高 い N/C 比や濃縮状のクロマチンを示しており 小細胞癌の所見を呈する 正解率 95.7% 設問 11 年齢 性別 64 歳 男性 喀痰 臨床所見 血痰 重度喫煙者 回 答 欄 1 線毛円柱上皮細胞 4 腺癌 2 高度異型扁平上皮 3 扁平上皮癌 5 小細胞癌 正解 3. 扁平上皮癌 組織診断 扁平上皮癌 解説 背景の一部に壊死物質がみられ 細胞密度の高い細胞集塊がみられる 集塊は一定の方 向性へ流れるような配列を呈している 核の大小不同 核形不整 クロマチンの増量がみられ 粗なクロマチンや濃染核も混在していることから扁平上皮癌の細胞像が考慮できる 正解率 84.8%

設問 12 年齢 性別 : 54 歳男性 : 気管支洗浄液 臨床所見 : 白血病治療中 胸部びまん性陰影写真 : 左図 Pap 40 右図 Pap 100 回答欄 : 1. ヘルペス感染細胞 2. サイトメガロウイルス感染細胞 3. 白血病細胞 4. 扁平上皮癌細胞 5. 腺癌細胞 正解 : 2. サイトメガロウイルス感染細胞解説 : 背景はきれいで 少量の組織球やリンパ球に混在し 単核の核内に 好酸性で大型の核小様の封入様物質をもつ細胞が認められ サイトメガロウイルス感染細胞に特徴的なふくろうの目 owl eye の像を呈する この疾患は日和見感染の一つで 臨床所見にみられるように 白血病治療中などの免疫不全に陥った患者に発症する ( 正解率 :99.8%) 設問 13 年齢 性別 : 61 歳女性 : 気管支擦過 臨床所見 : 右肺異常陰影 写真 : 左図 Pap 40 右図 Pap 100 回答欄 : 1. 多核組織球 2. 線毛円柱上皮集塊 3. 腺癌 4. 腺様嚢胞癌 5. 粘表皮癌 正解 : 3 腺癌組織診断 : 腺癌解説 : 比較的重積性のある細胞集塊で出現している 集塊を構成する細胞は N/C 比は低いが 細胞質は泡沫状で淡く 一部の核には切れ込みや核縁の肥厚などを伴っている 集塊辺縁には線毛や刷子縁などはみられず 集塊を構成する細胞の均一性から腺癌を考慮する像である この症例は高分化腺癌の像で 異型性の乏しい所見を示し 注意を要する場合もある ( 正解率 :80.3%)

設問 14 年齢 性別 38 歳 女性 経気管支針穿刺 臨床所見 診にて右肺下葉へ境界明瞭な円形陰影 回 答 欄 1 過誤腫 2 硬化性血管腫 4 粘表皮癌 3 高分化腺癌 5 腺様嚢胞癌 正解 2. 硬化性血管腫 組織診断 硬化性血管腫 解説 左図の背景には ヘモジデリンを貪食した組織球が一部に存在し 紡錘形から繊維状の 血管を含む間葉由来の細胞集塊がみられ 右図では単核から 2 核を有し 一部に核内へ空胞を 呈したⅡ型肺胞上皮細胞が出現している これら種々の細胞構成から硬化性血管腫が推定でき る 硬化性血管腫は臨床的に 中年女性の肺野部へ偶然発見されることが多い 正解率 91.8% 設問 15 年齢 性別 73 歳 男性 臨床所見 右肺上葉に陰影 回 答 欄 1 線毛円柱上皮集塊 4 粘表皮癌 気管支擦過 2 扁平上皮癌 3 腺癌 5 腺様嚢胞癌 正解 4. 粘表皮癌 組織診断 粘表皮癌 解説 左図で背景は汚く 核中心性の扁平上皮化生細胞ないし扁平上皮癌細胞様の部分と 細 胞質に粘液を有した粘液産生腺癌細胞様の部分がみられる 右図の強拡大では 双方の細胞に 加え 両者の中間型が混在し 移行像を呈している 以上の所見より 粘表皮癌が考えられる 正解率 79.7%

設問 16 年齢 性別 61 歳 男性 気管支擦過 臨床所見 重度喫煙者 右上葉異常陰影 写 真 左図 Pap 100 右図 Pap 100 回 答 欄 1 扁平上皮癌 2 腺癌 3 小細胞癌 4 大細胞癌 5 多形癌 正解 5. 多形癌 多形癌 組織診断 多形癌 解説 左図では 重積のある集塊で出現しており 核の偏在傾向や核腫大 核の切れ込みなど もみられる 右図では 孤立散在性の出現で 核腫大した紡錘形 長楕円形の細胞を認める ともに異型性が強いが あきらかに異なった細胞像を呈しており 左図が腺癌 右図が紡錘細 胞癌を推定できる所見である これらの構成から 多形癌を選択する 正解率 72.1% 設問 17 年齢 性別 58 歳 男性 耳下腺腫瘤捺印 臨床所見 急速な発育を示す耳下腺腫瘤 頸部リンパ節腫大 左図 Pap 20 右図 Pap 100 回 答 欄 1 多形腺腫 2 ワルチン腫瘍 4 粘表皮癌 3 腺様嚢胞癌 5 唾液導管癌 正解 5. 唾液導管癌 組織診断 唾液導管癌 解説 背景に多量の壊死物質を認め 重積性のある乳頭状集塊から疎な結合で出現している 個々の細胞は 細胞質が豊富で核異型が強く あたかも乳腺の面疱癌を思わせる像を呈し 唾 液導管癌が考慮される 唾液導管癌は臨床的に 50 歳以降の男性 唾液腺に好発しやすく 急 速な発育を示す悪性度の高い疾患である 正解率 71.4%

設問 18 年齢 性別 48 歳 女性 臨床所見 膵部腫瘤 低血糖症状 回 答 欄 1 慢性膵炎 膵臓腫瘤捺印 2 腺癌 4 slid pseudopapillary tumor 3 内分泌腫瘍 5 非ホジキンリンパ腫 正解 3. 内分泌腫瘍 組織診断 内分泌腫瘍 解説 同形同大の小型類円形細胞が 疎な結合の平面的集塊から孤立散在性で出現している 集塊は一部にロゼット様配列を呈しており 細胞境界は不明瞭である 核は偏在傾向を示し クロマチンは粗顆粒状で増量 小型の核小を呈し 内分泌腫瘍の所見を示す これはインス リノーマの症例であった 膵島細胞腫瘍とカルチノイド腫瘍は神経内分泌腫瘍としてまとめら れる 正解率 80.2% 設問 19 年齢 性別 62 歳 男性 臨床所見 肝右葉に腫瘤 回 答 欄 1 良性肝細胞 肝穿刺吸引 2 高分化型肝細胞癌 4 肝内胆管癌 3 低分化型肝細胞癌 5 転移性腺癌 正解 2. 高分化型肝細胞癌 高分化型肝細胞癌 組織診断 高分化型肝細胞癌 解説 やや重積を伴った不規則な配列を示し 細胞境界が不明瞭な大型集塊で出現している 細胞質はライトグリーン好性の泡沫状で 核は類円形で一部に不整形もみられる クロマチン の増量や核内空胞も散見され 高分化型肝細胞癌の所見を呈する 正解率 84.5%

設問 20 年齢 性別 42 歳 女性 臨床所見 血尿 回 答 欄 1 良性尿路上皮細胞 2 マラコプラキア 4 尿路上皮癌 G3 自然尿 3 尿路上皮癌 G1 5 扁平上皮癌 正解 1. 良性尿路上皮細胞 解説 軽度の血性背景で 細胞質の豊富な大型の多辺形細胞 紡錘形細胞 小型円形細胞が混 在して出現している 異型性に乏しく これらは 尿路上皮の各層を構成している細胞であり 大型な多辺形細胞が被蓋細胞で 紡錘形細胞が中層 N/C 比の高い小型円形細胞が深層部を構 成する尿路上皮細胞である 正解率 71.1% 設問 21 年齢 性別 39 歳 男性 臨床所見 右精巣腫大 回 答 欄 1 精巣上皮細胞 4 絨毛癌 精巣腫瘤捺印 2 セミノーマ 3 奇形腫 5 非ホジキンリンパ腫 正解 2. セミノーマ 組織診断 セミノーマ 解説 背景にリンパ球を認め 疎な結合集塊から孤立散在性に大型の類円形細胞が多数出現し ている 細胞質は豊富で淡明な像を呈し 核は類円形で 大型で明瞭な核小が存在する 以 上の所見からセミノーマが考えられる セミノーマはリンパ球の浸潤を伴うため 背景に多数 のリンパ球を認めることが多く 腫瘍細胞の混在から 2 相性パターンを伴う腫瘍である 正 解率 98.3%

設問 22 年齢 性別 66 歳 男性 臨床所見 胸痛 胸水貯留 回 答 欄 1 リンパ球 胸水 2 反応性中皮細胞 4 小細胞癌 3 腺癌 5 非ホジキンリンパ腫 正解 4. 小細胞癌 組織診断 小細胞癌 肺 解説 N/C 比が極めて高い濃染核を呈する小型細胞が 相互封入の対細胞ないし孤立散在性で 多数出現している 核は類円形で 核縁は薄く クロマチンは細顆粒状で密に増量し 小型の 核小を数個認める これらの所見から小細胞癌が推定できる 正解率 81.7% 設問 23 年齢 性別 68 歳 男性 臨床所見 胸水貯留 胸膜の結節と腫瘤 回 答 欄 1 反応性中皮細胞 4 腺癌 胸水 左図 Pap 20 右図 Pap 100 2 多核組織球 3 扁平上皮癌 5 悪性中皮腫 正解 5. 悪性中皮腫 組織診断 悪性中皮腫 解説 臨床所見で胸膜の結節と腫瘤がみられる 細胞像は 球状集塊から平面的集塊で出現し ており 個々の細胞は 核中心性が主で 細胞質は中心部がライトグリーン好性の重厚感が あり 周辺部が薄く 中皮細胞由来が考えられる 細胞が非常に大型で 明瞭な核小 微絨 毛の異常な発達などの所見から 悪性中皮腫が推定される細胞所見である 正解率 91.4%

設問 24 年齢 性別 51 歳 女性 臨床所見 右乳房腫瘤 右腋窩リンパ節腫大 回 答 欄 1 線維腺腫 乳腺穿刺吸引 左図 Pap 20 右図 Pap 40 2 乳頭腺管癌 4 浸潤性小葉癌 3 充実腺管癌 5 浸潤性微小乳頭癌 正解 5. 浸潤性微小乳頭癌 組織診断 浸潤性微小乳頭癌 解説 小型から中型の比較的結合性の強い細胞集塊が認められる 集塊は 乳頭状あるいは腺 管状で構成されており 集塊内には筋上皮細胞を認めないことから悪性が示唆される それぞ れの集塊は外側に遊離縁を認め 浸潤性微小乳頭癌を考慮する像である 正解率 82.1% 設問 25 年齢 性別 49 歳 女性 乳腺穿刺吸引 臨床所見 右乳房腫瘤 マンモグラフィで spicula 像 回 答 欄 1 アポクリン化生細胞 4 硬癌 2 顆粒細胞腫 3 乳頭腺管癌 5 アポクリン癌 正解 2. 顆粒細胞腫 組織診断 顆粒細胞腫 解説 円形から多角形の豊富な細胞質を有する大型細胞が平面的に出現している 細胞境界は 比較的不明瞭で 核は円形ないし類円形で小さく 豊富な細胞質内には均一で微細な顆粒が充 満しており 背景にも飛散した像を呈し N/C 比は極めて低い 以上の所見から顆粒細胞腫が 推定される この疾患は 画像査で悪性と診断される場合がある 正解率 61.7%

設問 26 年齢 性別 64 歳 女性 臨床所見 左乳房腫瘤 回 答 欄 1 線維腺腫 乳腺穿刺吸引 左図 Pap 20 右図 Pap 100 2 葉状腫瘍 4 乳管内乳頭腫 3 腺筋上皮腫 5 乳頭腺管癌 正解 3. 腺筋上皮腫 腺筋上皮腫 組織診断 腺筋上皮腫 解説 左図は 細胞結合性の強い間質を伴う細胞集塊で出現しており 核密度の高い上皮部分 に異型性はみられない 核密度の低い部分が間質部分で 右図がその強拡大像である 細胞境 界は不明瞭で 核は大小不同を伴い 核形不整を示し しばしば核内細胞質封入がみられる 以上より 腺上皮細胞と筋上皮細胞がともに増殖を示す腺筋上皮腫が推定される 正解率 73.3% 設問 27 年齢 性別 45 歳 女性 臨床所見 有痛性甲状腺腫瘤 発熱 回 答 欄 1 亜急性甲状腺炎 2 慢性甲状腺炎 4 乳頭癌 甲状腺穿刺吸引 左図 Pap 20 右図 Pap 40 3 腺腫様甲状腺腫 5 髄様癌 正解 1. 亜急性甲状腺炎 解説 背景にリンパ球や好中球 組織球 線維芽細胞がみられ 多核巨細胞も存在し 肉芽腫 を思わせる細胞像を呈する シート状に出現した濾胞上皮細胞に異型性はみられず 亜急性甲 状腺炎の像を示す 正解率 92.0%

設問 28 年齢 性別 35 歳 女性 臨床所見 甲状腺腫瘤 回 答 欄 1 亜急性甲状腺炎 甲状腺穿刺吸引 2 慢性甲状腺炎 4 乳頭癌 3 腺腫様甲状腺腫 5 髄様癌 正解 2. 慢性甲状腺炎 慢性甲状腺炎 解説 多数の成熟リンパ球を背景に認め 上皮性結合を呈する細胞集塊がみられる 集塊の細 胞は 細胞質が広く豊富で 顆粒物質を有している 核は 大小不同の異型を伴っている 以 上の所見より 慢性甲状腺炎 橋本病 が考慮される 正解率 81.0% 設問 29 年齢 性別 44 歳 男性 臨床所見 圧痛 発熱を伴うリンパ節腫大 頸部リンパ節腫瘤捺印 回 答 欄 1 非特異性リンパ節炎 反応性リンパ節炎 3 壊死性リンパ節炎 4 ホジキンリンパ腫 2 結核性リンパ節炎 5 非ホジキンリンパ腫 正解 1. 非特異性リンパ 非特異性リンパ節炎 リンパ節炎 節炎 反応性リンパ 反応性リンパ節炎 リンパ節炎 節炎 組織診断 非特異性リンパ節炎 反応性リンパ節炎 解説 大小様々な大きさのリンパ球が出現している 出現細胞の構成から 小型リンパ球の割 合が主で それに中型や大型のリンパ球が混在した像を示す 単調性に乏しく 悪性疾患は 否定的な所見で 非特異性リンパ節炎 反応性リンパ節炎 が推定される 正解率 74.4%

設問 30 年齢 性別 : 58 歳女性 : 足底部皮膚捺印 臨床所見 : 鼠径部リンパ節腫大 写真 : 左図 Pap 40 右図 Pap 100 回答欄 : 1. 類表皮嚢胞 2. 扁平上皮癌 3. 腺癌 4. 悪性黒色腫 5. 悪性リンパ腫 正解 : 4. 悪性黒色腫組織診断 : 悪性黒色腫解説 : 背景に 茶褐色の顆粒を貪食した組織球であるメラノファージが存在する 疎な上皮様の結合性から孤立散在性で 類円形の細胞を認める 個々の細胞の細胞質には 背景にみられるメラノファージと同様に メラニン顆粒が存在する 核腫大や明瞭な核小を有し 核内細胞質封入を思わせるアピッツ小がみられ 悪性黒色腫の像を呈する ( 正解率 :99.4%) まとめ 1. 全 30 問の正解率の平均は 85.3% で 前回の第 4 回 (91.7%) と比較すると 低い結果を示した 2. 臓器別 ( 別 ) から正解率をとらえると 婦人科 (9 問 )90.3%% 呼吸器(7 問 )86.3% 消化器 (3 問 )78.7% 泌尿器 生殖器(2 問 )84.7% 腔液(2 問 )86.5% 乳腺(3 問 )72.4% 甲状腺 (2 問 )86.5% リンパ節 (1 問 )74.6% 皮膚 (1 問 )99.4% の結果で 全セクション 70% 以上の成績を示した 特に婦人科 皮膚では 90% 以上の高い正解率で 呼吸器 乳腺 リンパ節では 80% 以下の低い正解率を示していた ( 図 1) 1 0 0 9 0 8 0 7 0 6 0 5 0 4 0 3 0 2 0 1 0 0 婦人科 (9) 呼吸器 (7) 消化器 (3) 泌 生殖器 (2) 腔液 (2) 乳腺 (3) 甲状腺 (2) リンパ節 (1) 皮膚 (1) 図 1. 臓器別 ( 別 ) 正解率

3. 設問別からの正解率 ( 表 1) をみてみると 70% 以下の正解率を示したのは 設問 6 の子宮内膜 類内膜腺癌 G3(53.0%:246/) と設問 25 の乳腺 顆粒細胞腫 (61.7%:280/454) の二つで あった 表 1. 設問別正解率 回答参加数 () 回答率 ( %) 設問 1 1. 頸管円柱上皮細胞 6 1.3 2. 高度異形成 3 0.6 3. 上皮内癌 448 96.6 4. 微小浸潤扁平上皮癌 6 1.3 5. 腺癌 1 0.2 設問 2 1. ヘルペス感染細胞 450 97 2. 修復細胞 ( 再生上皮細胞 ) 14 3 3. 化生細胞 0 0 4. 多核組織球 0 0 5. 扁平上皮癌 0 0 設問 3 1. 化生細胞 1 0.2 2. 頸管円柱上皮細胞 33 7.1 3. 上皮内腺癌 423 91.2 4. 類内膜腺癌 6 1.3 5. 明細胞腺癌 1 0.2 設問 4 1. 炎症性変化 6 1.3 2. 軽度異形成 450 97 3. 高度異形成 6 1.3 4. 上皮内癌 1 0.2 5. 扁平上皮癌 1 0.2 設問 5 1. 壊死物質 0 0 2. カンジダ膣炎 1 0.2 3. ガードネレラ膣炎 2 0.4 4. クラミジア膣炎 1 0.2 5. トリコモナス膣炎 460 99.1 設問 6 1. 子宮内膜異型増殖症 8 1.7 2. 類内膜腺癌 G1 185 39.9 3. 類内膜腺癌 G3 246 53 4. 粘液性腺癌 10 2.2 5. 漿液性腺癌 15 3.2 設問 7 1. 増殖期子宮内膜 373 84.2 2. 分泌期子宮内膜 14 3.2 3. 子宮内膜増殖症 56 12.6 4. 類内膜腺癌 G1 0 0 5. 類内膜腺癌 G3 0 0 443 設問 8 1. 子宮内膜異型増殖症 4 0.9 2. 類内膜腺癌 G1 2 0.4 3. 類内膜腺癌 G3 3 0.6

4. 明細胞腺癌 1 0.2 5. 子宮内膜間質肉腫 454 97.8 設問 9 1. 顆粒膜細胞腫 2 0.4 2. 未分化胚腫 1 0.2 3. 漿液性嚢胞腺癌 8 1.7 4. 粘液性嚢胞腺癌 5 1.1 5. 明細胞腺癌 448 96.6 設問 10 1. リンパ球の集簇 12 2.6 2. カルチノイド 3 0.6 3. 小細胞癌 444 95.7 4. 腺癌 2 0.4 5. 非ホジキンリンパ腫 3 0.6 設問 11 1. 線毛円柱上皮細胞 4 0.9 2. 高度異型扁平上皮 26 5.7 3. 扁平上皮癌 385 84.8 4. 腺癌 32 7 5. 小細胞癌 7 1.5 454 設問 12 1. ヘルペス感染細胞 0 0 2. サイトメガロウイルスイルス感染細胞 463 99.8 3. 白血病細胞 0 0 4. 扁平上皮癌細胞 0 0 5. 腺癌細胞 1 0.2 設問 13 1. 多核組織球 7 1.5 2. 線毛円柱上皮集塊 8 1.6 3. 腺癌 366 80.3 4. 腺様嚢胞癌 13 2.9 5. 粘表皮癌 62 13.6 456 設問 14 1. 過誤腫 10 2.2 2. 硬化性血管腫 426 91.8 3. 高分化腺癌 21 4.5 4. 粘表皮癌 7 1.5 5. 腺様嚢胞癌 0 0 設問 15 1. 線毛円柱上皮集塊 1 0.2 2. 扁平上皮癌 16 3.5 3. 腺癌 76 16.4 4. 粘表皮癌 369 79.7 5. 腺様嚢胞癌 1 0.2 463 設問 16 1. 扁平上皮癌 4 0.9 2. 腺癌 25 5.4 3. 小細胞癌 1 0.2 4. 大細胞癌 99 21.4 5. 多形癌 334 72.1 463 設問 17 1. 多形腺腫 30 6.5

2. ワルチン腫瘍 27 5.8 3. 腺様嚢胞癌 1 0.2 4. 粘表皮癌 74 16 5. 唾液導管癌 330 71.4 462 設問 18 1. 慢性膵炎 2 0.4 2. 腺癌 1 0.2 3. 内分泌腫瘍 372 80.2 4. solid pseudopapillary tumor 47 10.1 5. 非ホジキンリンパ腫 42 9.1 設問 19 1. 良性肝細胞 5 1.1 2. 高分化型肝細胞癌 392 84.5 3. 低分化型肝細胞癌 37 8 4. 肝内胆管癌 17 3.7 5. 転移性腺癌 13 2.8 設問 20 1. 良性尿路上皮細胞 330 71.1 2. マラコプラキア 3 0.6 3. 尿路上皮癌 G1 120 25.9 4. 尿路上皮癌 G3 10 2.2 5. 扁平上皮癌 1 0.2 設問 21 1. 精巣上皮細胞 3 0.6 2. セミノーマ 456 98.3 3. 奇形腫 1 0.2 4. 絨毛癌 3 0.6 5. 非ホジキンリンパ腫 1 0.2 設問 22 1. リンパ球 0 0 2. 反応性中皮細胞 13 2.8 3. 腺癌 64 13.8 4. 小細胞癌 379 81.7 5. 非ホジキンリンパ腫 8 1.7 設問 23 1. 反応性中皮細胞 36 7.8 2. 多核組織球 2 0.4 3. 扁平上皮癌 1 0.2 4. 腺癌 1 0.2 5. 悪性中皮腫 424 91.4 設問 24 1. 線維腺腫 0 0 2. 乳頭腺管癌 68 14.7 3. 充実腺管癌 8 1.7 4. 浸潤性小葉癌 7 1.5 5. 浸潤性微小乳頭癌 381 82.1 設問 25 1. アポクリン化生細胞 86 18.9 2. 顆粒細胞腫 280 61.7 3. 乳頭腺管癌 1 0.2 4. 硬癌 0 0 5. アポクリン癌 87 19.2

454 設問 26 1. 線維腺腫 16 3.4 2. 葉状腫瘍 71 15.3 3. 腺筋上皮腫 340 73.3 4. 乳管内乳頭腫 32 6.9 5. 乳頭腺管癌 5 1.1 設問 27 1. 亜急性甲状腺炎 427 92 2. 慢性甲状腺炎 22 4.7 3. 腺腫様甲状腺腫 12 2.6 4. 乳頭癌 1 0.2 5. 髄様癌 2 0.4 設問 28 1. 亜急性甲状腺炎 4 0.9 2. 慢性甲状腺炎 376 81 3. 腺腫様甲状腺腫 37 8 4. 乳頭癌 6 1.3 5. 髄様癌 41 8.8 設問 29 1. 非特異性リンパリンパ節炎 ( 反応性リンパリンパ節炎 ) 345 74.4 2. 結核性リンパ節炎 2 0.4 3. 壊死性リンパ節炎 3 0.6 4. ホジキンリンパ腫 88 19 5. 非ホジキンリンパ腫 26 5.6 設問 30 1. 類表皮嚢胞 0 0 2. 扁平上皮癌 0 0 3. 腺癌 1 0.2 4. 悪性黒色腫 461 99.4 5. 悪性リンパ腫 2 0.4 まず 設問 6 の子宮内膜 類内膜腺癌 G3(53.0%:246/) では 回答が類内膜腺癌 G1( 39.9%:185/) とほぼ二分した結果となっていた 類内膜腺癌 G1 の場合では 大型の乳頭状集 塊や腺腔を伴った集塊で出現しやすく 乳頭状の場合 血管間質の茎などがみられる場合もあり ( 写 真 1) この設問では結合性の低下が著しく 出現様式から類内膜腺癌 G3 と選択して頂きたかった 症例 ( 写真 2) である この設問は より強拡大で 個々の細胞の異型性を強調すべきであったと 写真 1. 類内膜腺癌 G1 写真 2. 類内膜腺癌 G3

出題者側の反省課題も含まれた 次に 設問 25 の乳腺 顆粒細胞腫 61.7% 280/454 に関しては 回答がアポクリン化生細胞 18.9% 86/454 アポクリン癌 19.2% 87/454 を加えた 三つの回答にわかれた この疾患は N/C は小さく 豊富な細胞質を有し 細胞内には均一な顆粒が充満しており 今回 の回答結果で示されたように アポクリン化生細胞やアポクリン癌との鑑別を要する場合がある 顆粒細胞腫 写真 3 4 と比較して アポクリン化生細胞では 細胞境界が明瞭で 細胞質も厚く なる 写真 5 6 また アポクリン癌では核異型を伴い 顆粒も顆粒細胞腫と比べ明瞭でなく 顆粒細胞腫では顆粒は細胞質内へ全的にみられるのに対し アポクリン癌では顆粒を伴わない細 胞も存在する傾向にある 写真 7 8 三者の大きな鑑別点として 背景に飛散した顆粒があげら れ これらの所見より 鑑別は可能だと考える 乳腺の顆粒細胞腫は 臨床的に画像所見で悪性と 診断される場合もあり 注意を要する疾患で 今回 稀少例の設問として提示した 4 今回の精度管理調査は参加人数が 名で 前回 406 名 と比較すると増加傾向を示した 内 訳として 細胞査士 408 名 臨床査技師 56 名の構成であった 細胞査士の資格を取得して いない方に関しては この事業を機会に 細胞査士を目指すきっかけになれば幸いである 5 九州臨床査技師会主催の病理 細胞査精度管理調査の事業は 現在不定期に行われており 今後も複数年単位の間隔で定例化できればと考える また 今後の試みとして 精度管理だけでな く 血液査や一般査など他の分野で開催されている卒後セミナーも 新しい展開として取り入 れていきたい 写真 3. 顆粒細胞腫 弱拡大 写真 5. アポクリン化生細胞 弱拡大 写真 4. 顆粒細胞腫 強拡大 写真 6. アポクリン化生細胞 強拡大

写真 7. アポクリン癌 弱拡大 写真 8. アポクリン癌 強拡大 結語 最後に この精度管理事業に参加して頂いた九州臨床査技師会会員の方々をはじめ 本事業の作 成に携わった協力委員 発送から集計までご協力頂いた九州各県の病理 細胞査担当者 去る 10 月に熊本県にて開催された第 46 回九州医地区学査学会の枠内にて この事業の報告の機会を与え て頂いた熊本県臨床査技師会の方々に深く感謝したい 細胞査担当 細胞査担当 九州臨床査技師会 細胞査部門員 山城 篤 那覇市立病院 医療支援部査室 TEL 098-884-5111(内線 177) FAX 098-887-7950 E-mail yamashiro@nch.naha.okinawa.jp 協力委員 細胞査士 比嘉 盛治 中部徳洲会病院 嵯峨 彰太 那覇市立病院 古田 則行 がん研有明病院 伊藤 仁 東海大学医学部付属病院 細胞診専門医 仲里 巌 沖縄県立南部医療センター こども医療センター 九州各県病理 細胞査担当者 福岡県 笠原 稿 済生会八幡総合病院 佐賀県 豊岡 辰明 国立病院機構嬉野医療センター 大分県 丸田 淳子 野口病院 長崎県 今泉 利信 健康保険諫早総合病院 熊本県 島本 浩二 熊本市民病院 宮崎県 大野 招伸 宮崎大学医学部附属病院 鹿児島県 飯谷 弘美 今村病院分院