リオナ 錠 250mg ( クエン酸第二鉄水和物 ) 第 2 部 CTD の概要 ( サマリー ) 日本たばこ産業株式会社
目次 略号及び用語の定義一覧... 3... 4 参考文献... 7 2
略号及び用語の定義一覧 略号及び用語 定義 CKD 慢性腎臓病 CKD-MBD 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常 Cl クロル FGF-23 線維芽細胞増殖因子 -23 JSDT 日本透析医学会 PTH 副甲状腺ホルモン 3
生体内のリンの恒常性は, 上部消化管からの食事由来のリン吸収, 骨への取り込み, 骨からの遊離, 腎臓からの排泄と近位尿細管での再吸収により保たれている しかし, 慢性に進行する種々の腎疾患により腎機能が低下した慢性腎臓病 (Chronic Kidney Disease: CKD) 患者では, 腎機能の低下とともに尿中へのリン排泄が徐々に低下し, 生体内のリンは過剰となり, 血中リン濃度は上昇する 1), 2) CKD ステージが早期の段階では, 副甲状腺ホルモン (Parathyroid Hormone: PTH) や線維芽細胞増殖因子 -23(Fibroblast Growth Factor-23: FGF-23) などが代償的に上昇することで, 近位尿細管でのリンの再吸収が抑制されることにより, 血清リン濃度は正常範囲内 (2.5~ 4.5 mg/dl) に保たれる 2), 3) しかしながら,CKD ステージの後期では, 腎臓からのリン排泄能が大きく低下することから, 血清リン濃度が正常範囲を超えるような高リン血症を来たす 4), 5) 血液透析患者, 腹膜透析患者及び保存期 CKD 患者では, 腎機能の低下とそれに伴う体内リン貯留による FGF-23 の増加, さらに腎臓での活性型ビタミン D 3 の産生低下, 低カルシウム血症とこれらに伴う PTH の分泌亢進が引き起こされ, 二次性副甲状腺機能亢進症, ひいては線維性骨炎等の腎性骨異栄養症が誘発される これらを発症すると患者の日常生活動作でも容易に骨折を引き起こし,QOL(Quality of Life: 生活の質 ) が低下する 6) さらに, カルシウム リン積の上昇した状態では, 血管, 結膜, 心臓, 肺, 腎臓などの臓器や関節周囲にリン酸カルシウムが沈着し, 異所性石灰化を誘発する 特に血管壁での石灰沈着は動脈硬化の原因となり, 心血管合併症を発症する危険性が高くなることが指摘されている 7) 血液透析患者では, 年齢や性別が合致した一般集団と比較すると, 心血管イベントの発症率は 10~20 倍高いと報告されており 8), 9), 本邦の血液透析患者においても, 血清リン濃度が高いと死亡リスクが高いことが確認されている 10) また, 保 11), 存期 CKD 患者における高リン血症と血管石灰化 12) や死亡リスク 4), 13) - 17) との関連が報告されている 以上の背景から, 日本透析医学会 (The Japanese Society for Dialysis Therapy: JSDT) が発行した 慢性腎臓病に伴う骨 ミネラル代謝異常(Chronic Kidney Disease-Mineral and Bone Disorder: CKD-MBD) の診療ガイドライン ( 以下, CKD-MBD の診療ガイドライン (JSDT) ) では, 骨 ミネラル代謝異常や二次性副甲状腺機能亢進症の発展予防と進展の抑制, 心血管イベント及び死亡リスクの低減を目的に血清リン濃度の管理目標値が設定されており, 血液透析患者及び腹膜透析患者は 3.5~6.0 mg/dl に, 保存期 CKD 患者に対しては血清リン濃度を各施設の基準値内に維持することを推奨している 10) 現在, 血液透析患者, 腹膜透析患者及び保存期 CKD 患者では, 血清リン濃度を管理するために, 低蛋白食等による食事療法 ( リン摂取制限 ) が行われている 18) しかし, 極端な食事療法は栄養障害をもたらす懸念がある 19) また, 血液透析, 腹膜透析を受けている CKD 患者では, 透析療法によるリンの除去量にも限界がある 20) このような状況から, 食事療法や透析療法のみで血清リン濃度が管理できない場合に, 消化管からの食事由来のリンの吸収を抑えるリン吸着薬による薬物療法を行うことが CKD-MBD の診療ガイドライン (JSDT) で推奨されている 10) 現在, 本邦にて使用されている主な高リン血症治療薬は, カルシウム含有リン吸着薬とカルシウム非含有リン吸着薬に大別され, 前者としては沈降炭酸カルシウム ( カルタン など ), 後者と 4
してはポリマーであるセベラマー塩酸塩 ( レナジェル, フォスブロック ), ビキサロマー ( キックリン ) 並びに非ポリマーである炭酸ランタン水和物 ( ホスレノール ) が挙げられる 沈降炭酸カルシウムは, 高カルシウム血症を惹起し, 異所性石灰化や臓器機能不全を助長することが懸念されており 21) - 23), CKD-MBD の診療ガイドライン (JSDT) では, 沈降炭酸カルシウムの投与量はおおむね 1 日 3 g を上限とするのが妥当としている 10) また, 沈降炭酸カルシウムは胃酸分泌抑制薬との併用により血清リン濃度の低下作用が減弱することが知られている 10) セベラマー塩酸塩は, 便秘や腹部膨満などの胃腸障害の発現頻度が高く, 腸管穿孔などの重篤な症状を引き起こすことが懸念されている 24), 25) また, セベラマー塩酸塩は Cl を含んでおり, 血中 Cl の上昇に伴う重炭酸イオン濃度の低下を来たし, 過塩素血症性アシドーシスを惹起することが知られている 26) 便秘などの胃腸障害の発現頻度の低減を目指して開発されたビキサロマーに関しても, セベラマー塩酸塩と同様にポリマーであり, 消化器系副作用の懸念は払拭されていない 炭酸ランタン水和物は悪心, 嘔吐などの発現頻度が高いことが知られている また, 生体内非必須金属元素のランタンが消化管から一部吸収されるため, 長期服用時における骨組織などへの蓄積が懸念されているが, 現時点では, ランタンの体内への蓄積による影響は不明である 27) CKD-MBD の診療ガイドライン (JSDT) では, 血清リン濃度及び血清カルシウム濃度に応じて, これらリン吸着薬を単独あるいは併用して治療を行うことが推奨されている 10) しかしながら, 本邦において保存期 CKD 患者に対し適応を取得しているリン吸着薬は, 沈降炭酸カルシウムのみであり, 保存期 CKD 患者は他のリン吸着薬による治療選択肢がない CKD-MBD の診療ガイドライン (JSDT) に従った血清リン濃度及び血清カルシウム濃度に応じた治療を可能にするために, 保存期 CKD 患者に対しても治療選択肢としてカルシウム非含有リン吸着薬が求められている 10) したがって, 血液透析患者, 腹膜透析患者 CKD 患者並びに保存期 CKD 患者に適応でき, かつ安全性プロファイルの改善されたリン吸着薬は依然として強く望まれている リオナ 錠は,JTT-751( クエン酸第二鉄水和物 ) を有効成分とする製剤である JTT-751 は, 鉄とリン酸との結合作用 28) に着目して, 消化管内での食事由来のリン酸を鉄と結合させて難溶性の沈殿を形成させることで, リンの吸収を抑制する新規のリン吸着薬であり, ミシガン大学の Dr. Hsu らにより, クエン酸第二鉄がリン吸着薬になり得る可能性が見出された 29) クエン酸第二鉄は, 米国では 一般に安全と認められる物質 (Substances Generally Recognized as Safe,GRAS) であり, 食品添加物として使用することが許可されている鉄化合物である 日本においても食品添加物として 1957 年に承認されており, 安全性上の懸念は少ない化合物である JTT-751 はカルシウム非含有 非ポリマーのリン吸着薬であるため, カルシウム製剤で認められる高カルシウム血症の懸念がなく, ポリマーのリン吸着薬で認められる便秘や, 腸管穿孔などの重篤な胃腸障害の発現リスクが低いと考えられる JTT-751 は生体内必須元素である鉄を主成分としており, 炭酸ランタン水和物服用時に懸念されるような, 生体内非必須金属元素の吸収に伴う安全性上の懸念は少ない したがって,JTT-751 は血清リン濃度低下作用を示すことが期待され, 安全性上の懸念が少ない, 優れた新規のリン吸着薬になり得ると考えられる 米国及び欧州では,Keryx Biopharmaceuticals( 以下,Keryx) 社が年月に中国を除く全世界における開発権を取得し, KRX-0502 として開発を開始し, 末期腎不全患者における高リ 5
ン血症治療を適応症として,2013 年下半期の承認申請を予定している また, 透析導入前の CKD 患者に対する試験を実施中である 本邦においては,Keryx 社より日本における開発権及び製造 販売権を日本たばこ産業株式会社及び鳥居薬品株式会社が取得し, 年 月より臨床開発を日 本たばこ産業株式会社が開始した 6
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